特開2015-43737(P2015-43737A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-43737(P2015-43737A)
(43)【公開日】2015年3月12日
(54)【発明の名称】油ちょう食品用品質改良剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/01 20060101AFI20150213BHJP
【FI】
   A23L1/01 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-177431(P2013-177431)
(22)【出願日】2013年8月29日
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中森 慶祐
(72)【発明者】
【氏名】神山 大介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一哉
【テーマコード(参考)】
4B035
【Fターム(参考)】
4B035LC05
4B035LC16
4B035LE20
4B035LG04
4B035LG21
4B035LK19
4B035LP24
(57)【要約】
【課題】ステアロイル乳酸ナトリウムを有効成分とし、油ちょう食品の老化防止効果に優れた油ちょう食品用品質改良剤を提供する。
【解決手段】ステアロイル乳酸ナトリウム及び賦形剤を含有する液状組成物を乾燥して粉末化することにより得られることを特徴とする油ちょう食品用品質改良剤。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアロイル乳酸ナトリウム及び賦形剤を含有する液状組成物を乾燥して粉末化することにより得られることを特徴とする油ちょう食品用品質改良剤。
【請求項2】
下記の測定方法により測定される分散度が1.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の油ちょう食品用品質改良剤。
[測定方法]
1)100ml容ガラス製ビーカー(内径50mm;高さ70mm)に20℃の水47.5gを仕込み、これに同温度の試料を2.5g加え、同温度条件下にて、攪拌機(商品名:スリーワンモータ;型式:FBL−600;新東科学社製;38mm径3枚羽根型攪拌翼1段装着)を用いて500rpmで60秒間撹拌し、混合液を作製する。
2)目開き250μmのステンレス製のストレーナーに1)の混合液を流し込み、該ストレーナー上に残った残渣を回収する。
3)2)の残渣をガラスシャーレ(内径70mm;高さ20mm)内に静置して105℃で2時間熱風乾燥した後、該ガラスシャーレに残った乾燥物の重量(g)を測定し、その値を分散度とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油ちょう食品用品質改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小麦粉等を主原料とする生地を油ちょうして得られるドーナツ等の油ちょう食品においては、食感が軟らかく、口どけのなめらかなものが特に好まれる傾向にある。こうした消費者の嗜好への対応や、流通過程における経時的な食感の変化(老化)の抑制といった観点から、油ちょう食品の品質改良の要望が高まっている。
【0003】
油ちょう食品の品質改良方法としては、例えばアルギン酸エステルを含有する生地改良剤を添加するドーナツ類の食感改良方法等が知られている(特許文献1)。しかしこの方法では揚げたての食感を軟らかくすることはできるものの、時間の経過に伴う老化を抑制することができず、実用上満足できるものとは言えない。
【0004】
油ちょう食品の老化を抑制する方法としては、老化抑制に効果のある乳化剤を添加するという方法があり、特にステアロイル乳酸ナトリウム(以下、「SSL」とも記載する)をアメリカンドッグ用バッターミックスに添加する方法等が知られている(特許文献2)。しかしこの方法によっても揚げたての食感を維持できるのは数時間に留まり、十分な老化防止効果を得るには至っていない。
【0005】
こうした状況から、より優れた老化防止効果の得られる油ちょう食品の老化抑制方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−208703号公報
【特許文献2】特開2013−059270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ステアロイル乳酸ナトリウムを有効成分とし、油ちょう食品の老化防止効果に優れた油ちょう食品用品質改良剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、特定の製造方法により得られたSSL製剤は、非加熱の水に対する分散性に優れ、かつSSLそのものを添加する場合に比べて、優れた油ちょう食品の老化防止効果及び食感改良効果を奏することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、次の(1)及び(2)から成っている。
(1)ステアロイル乳酸ナトリウム及び賦形剤を含有する液状組成物を乾燥して粉末化することにより得られることを特徴とする油ちょう食品用品質改良剤。
(2)下記の測定方法により測定される分散度が1.0以下であることを特徴とする前記(1)に記載の油ちょう食品用品質改良剤。
[測定方法]
1)100ml容ガラス製ビーカー(内径50mm;高さ70mm)に20℃の水47.5gを仕込み、これに同温度の試料を2.5g加え、同温度条件下にて、攪拌機(商品名:スリーワンモータ;型式:FBL−600;新東科学社製;38mm径3枚羽根型攪拌翼1段装着)を用いて500rpmで60秒間撹拌し、混合液を作製する。
2)目開き250μmのステンレス製のストレーナーに1)の混合液を流し込み、該ストレーナー上に残った残渣を回収する。
3)2)の残渣をガラスシャーレ(内径70mm;高さ20mm)内に静置して105℃で2時間熱風乾燥した後、該ガラスシャーレに残った乾燥物の重量(g)を測定し、その値を分散度とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の油ちょう食品用品質改良剤は、油ちょう食品の老化防止効果及び食感改良効果に優れている。
本発明の油ちょう食品用品質改良剤は、非加熱の水に対する溶解性に優れた粉末製剤であるため、油ちょう食品の製造において他の粉末原料とともに簡便に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で用いられるSSLは、ステアロイル基を親油性基、乳酸のカルボニウムイオンを親水性基とするナトリウム塩を主成分とするものであって、SSLとして公知のものであれば特に制限はない。例えば、ステアロイル基を主たるアシル基とするアシル化乳酸及びアシル化ラクトイル乳酸(ステアロイル乳酸等)とこれらのナトリウム塩、ステアリン酸を主成分とする脂肪酸及びそのナトリウム塩、縮合乳酸類及びそのナトリウム塩を含む混合物がSSLとして市販されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0012】
本発明の油ちょう食品用品質改良剤は、SSL及び賦形剤を含有する液状組成物を乾燥して粉末化することにより製造できる。その好ましい方法の概略を以下の1)〜4)の工程に示す。
1)水100質量部に賦形剤(粉末化基材)として加工澱粉2〜30質量部及び加工澱粉以外の賦形剤10〜50質量部を加え、これを60〜90℃に加熱しながら溶解して水溶液を得る。
2)SSL10〜100質量部を60〜80℃に加熱しながら溶融して溶融液を得る。
3)1)の水溶液に2)の溶融液を加え、70〜90℃に加熱しながら攪拌機を用いて撹拌・分散して液状組成物を得る。
4)3)の液状組成物を乾燥し、粉末状の油ちょう食品用品質改良剤(以下、「SSL製剤」ともいう)を得る。
【0013】
なお、上記2)の工程において、SSLと共に「SSL以外の乳化剤及び/又は食用油脂」を使用しても良い。
【0014】
上記加工澱粉としては、例えば澱粉とコハク酸のアルケニル誘導体とのエステルであるアルケニルコハク酸エステル化澱粉が好ましく用いられる。アルケニルコハク酸エステル化澱粉としては、例えばオクテニルコハク酸エステル化澱粉、デセニルコハク酸エステル化澱粉、ドデセニルコハク酸エステル化澱粉、テトラデセニルコハク酸エステル化澱粉、ヘキサデセニルコハク酸エステル化澱粉、及びオクタデセニルコハク酸エステル化澱粉、並びにこれら澱粉をα化又は加水分解等の処理をしたものが挙げられる。これらの中でも、とりわけα化オクテニルコハク酸エステル化澱粉又はその塩が好ましい。
【0015】
アルケニルコハク酸エステル化澱粉は、加水分解の度合いにより、また加水分解をする時期、即ちエステル化反応の前か後かにより、水溶液としたときの粘度が異なる。上記製造方法においては、粉末状のSSL製剤に流動性を付与するため、例えば(a)15質量%に調整した水溶液の粘度(以下、単に「粘度」ともいう)が5ミリパスカル秒以上100ミリパスカル秒未満のアルケニルコハク酸エステル化澱粉と(b)粘度が100〜250ミリパスカル秒の範囲内となるアルケニルコハク酸エステル化澱粉を選択して用いることが好ましい。(a)のアルケニルコハク酸エステル化澱粉としては、粘度が5ミリパスカル秒以上100ミリパスカル秒未満のオクテニルコハク酸エステル化澱粉が好ましい。具体的には、例えば市販品のカプシュールST(商品名;粘度7ミリパスカル秒;日本エヌエスシー社製)、ハイキャップ100(商品名;粘度7ミリパスカル秒;日本エヌエスシー社製)、ピュリティーガムBE(商品名;粘度24ミリパスカル秒;日本エヌエスシー社製)等を挙げることができる。また、(b)のアルケニルコハク酸エステル化澱粉としては、粘度が100〜250ミリパスカル秒のオクテニルコハク酸エステル化澱粉が好ましい。具体的には、例えば市販品のエヌクリーマー46(商品名;粘度245ミリパスカル秒;日本エヌエスシー社製)等を挙げることができる。
【0016】
上記粘度は、第8版食品添加物公定書記載「28.粘度測定法」の「第2法回転粘度計法」に準じて測定される。
【0017】
上記(a)及び(b)のアルケニルコハク酸エステル化澱粉の使用比率(質量比)には特に制限はなく、1:99〜99:1の任意の比率で使用してよい。
【0018】
上記加工澱粉以外の賦形剤としては、例えば、乳蛋白(例えば、酸カゼイン、カゼインナトリウム等)、植物性蛋白(大豆蛋白、小麦蛋白、エンドウ蛋白等)又はこれらの分解物、糖類、澱粉類、増粘多糖類・ガム質等が挙げられる。糖類としては、例えばブドウ糖、果糖、麦芽糖、乳糖、ショ糖、デキストリン、コーンシロップ等が挙げられる。また、澱粉類としては、例えばコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉等が挙げられる。また、増粘多糖類・ガム質としては、例えばキサンタンガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、アラビアガム、ペクチン、大豆多糖類等が挙げられる。これらの中でも、特にデキストリンが好ましい。
【0019】
デキストリンとしては、例えば、DE(Dextrose equivalent)値が3〜28のデキストリンが好ましく用いられる。このようなデキストリンとしては、パインデックス#2(松谷化学工業社製;DE値11)、パインデックス#3(松谷化学工業社製;DE値25)、パインデックス#4(松谷化学工業社製;DE値19)、M.P.D(松谷化学工業社製;DE値25)、サンデック#30(三和澱粉工業社製;DE値3)、サンデック#150(三和澱粉工業社製;DE値17)、サンデック#300(三和澱粉工業社製;DE値28)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0020】
上記2)の工程においてSSL以外の乳化剤を使用する場合、その種類に特に制限はないが、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びレシチン等が挙げられる。ここで、グリセリン脂肪酸エステルには、グリセリンと脂肪酸のエステルの他、グリセリン有機酸脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステル等が含まれる。グリセリン有機酸脂肪酸エステルには、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル及びグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル等が含まれる。
【0021】
また、上記2)の工程において食用油脂を使用する場合、その種類に特に制限はないが、食用に適する動物性、植物性の油脂及びそれらの硬化油、エステル交換油、分別油等が挙げられる。植物性油脂としては、例えばサフラワー油、大豆油、綿実油、コメ油、ナタネ油、オリーブ油、パーム油、ヤシ油等が挙げられる。これらの油脂は、一種類で用いても良いし、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0022】
上記攪拌機としては、例えばTKホモミクサー(プライミクス社製)又はクレアミックス(エムテクニック社製)等の高速回転式分散・乳化機、もしくは、ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ社製)等の均質化・湿式微細粒化装置が好ましく用いられる。該分散・乳化機の操作条件としては、例えば実験室用の小型機では、回転数2000〜20000rpm、攪拌時間1〜30分間を例示できる。
【0023】
上記液状組成物の乾燥方法としては、例えば、噴霧乾燥、ドラム乾燥、ベルト乾燥、真空乾燥あるいは真空凍結乾燥等が挙げられ、中でも、乾燥及び粉末化が同時に実施可能な噴霧乾燥が好ましい。
【0024】
噴霧乾燥を行うための装置に特に制限は無く、噴射式噴霧乾燥装置又は回転円盤式噴霧乾燥装置等、公知の装置を使用することができる。また、噴霧乾燥装置の操作条件としては、例えば分散液を加圧ノズル式噴霧乾燥装置に供給し、熱風入口温度120〜200℃、好ましくは140〜190℃、排気温度60〜140℃、好ましくは70〜90℃の条件下で噴霧乾燥し、乾燥物をサイクロンで捕集することにより、粉末状のSSL製剤を得ることができる。
【0025】
上記製造方法により製造されるSSL製剤100質量%中の各成分の含有量に特に制限はないが、例えばSSLが10〜60質量%、好ましくは25〜55質量%、加工澱粉が3〜30質量%、好ましくは5〜15質量%、加工澱粉以外の賦形剤が5〜60質量%、好ましくは25〜50質量%となるように調製するのが好ましい。
【0026】
また、上記2)の工程において「SSL以外の乳化剤及び/又は食用油脂」を使用する場合、SSL製剤100質量%中のSSL以外の乳化剤及び食用油脂の含有量に特に制限はないが、例えばSSL以外の乳化剤が1〜30質量%、好ましくは1〜15質量%、食用油脂が1〜30質量%、好ましくは1〜15質量%となるように調整するのが好ましい。
【0027】
本発明のSSL製剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で他の任意の成分を含んでも良い。そのような成分としては、例えば、酸化防止剤、調味料、香辛料、増粘剤、安定剤、pH調整剤(例えばクエン酸、酢酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、リン酸及びこれらの塩等)等が挙げられる。
【0028】
また、本発明のSSL製剤は、非加熱の水に対する分散性に優れている。具体的には、本発明のSSL製剤は、下記方法により測定される分散度が1.0以下である。
【0029】
[測定方法]
1)100ml容ガラス製ビーカー(内径50mm;高さ70mm)に20℃の水47.5gを仕込み、これに同温度の試料を2.5g加え、同温度条件下にて、攪拌機(商品名:スリーワンモータ;型式:FBL−600;新東科学社製;38mm径3枚羽根型攪拌翼1段装着)を用いて500rpmで60秒間撹拌し、混合液を作製する。
2)目開き250μmのステンレス製のストレーナーに1)の混合液を流し込み、該ストレーナー上に残った残渣を回収する。
3)2)の残渣をガラスシャーレ(内径70mm;高さ20mm)内に静置して105℃で2時間熱風乾燥した後、該ガラスシャーレに残った乾燥物の重量(g)を測定し、その値を分散度とする。
【0030】
本発明のSSL製剤の使用対象である油ちょう食品としては、穀粉類(例えば小麦粉、米粉、そば粉等)を主原料とし、その他に例えば糖類(例えば砂糖、黒糖、液糖、蜂蜜等)、膨張剤(例えばベーキングパウダー、重曹、イーストパウダー)、卵、油脂(例えばショートニング、マーガリン)等を加えてなる生地(例えばドウ又はバッター)をそのまま、又はこれにより他の具材を包んで、多量の油脂を熱媒体に用いて調理した食品であれば特に制限はない。ここで、油ちょう食品について「穀粉類を主原料とする」とは、例えば、油ちょう食品の生地原材料100質量%中、穀粉類を10質量%以上、好ましくは20質量%以上含有することをいう。
【0031】
上記油ちょう食品としては、例えばケーキドーナツ、イーストドーナツ、揚げパン、かりんとう、麻花、サーターアンダギー、チュロス、揚げまんじゅう、アメリカンドッグ、ピロシキ、フリッター、天ぷら、カツレツ、揚げピザ等が挙げられる。
【0032】
本発明のSSL製剤の使用目的に特に制限はないが、例えば油ちょう食品の食感改良、及び油ちょう食品に対する老化防止効果の付与等が挙げられる。従って、本発明のSSL製剤は、油ちょう食品の食感改良剤及び/又は油ちょう食品の老化防止剤として使用できる。
【0033】
本発明のSSL製剤を油ちょう食品に使用する際の添加量に特に制限はないが、穀粉類100質量部に対し通常0.05〜3.0質量部、好ましくは0.1〜1.0質量部であることが、ソフトで口どけの良い食感を維持する観点から好ましい。
【0034】
以下に本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
[実施例1]
[油ちょう食品用品質改良剤の調製]
1L容ビーカーに水600gを仕込み、これにオクテニルコハク酸エステル化澱粉(商品名:ピュリティーガムBE;日本エヌエスシー社製)20g、オクテニルコハク酸エステル化澱粉(商品名:エヌクリーマー46;日本エヌエスシー社製)20g及びデキストリン(商品名:パインデックス#2;DE値11;松谷化学工業社製)140gを加え、80℃で加熱溶解して水溶液を得た。
次いで、500mL容ビーカーにSSL(商品名:ポエムSSL−100;理研ビタミン社製)220gを仕込み、80℃で加熱溶解した溶融液を上記1L容ビーカー中の水溶液に加え、80℃で加熱しながら、攪拌機(商品名:TKホモミクサー;プライミクス社製)を用いて10000rpmで10分攪拌し、液状組成物1000gを得た。
その後、上記液状組成物を噴霧乾燥機(商品名:スプレードライヤーL−8i型;大川原化工機社製)を用いて熱風入口温度175℃、排気温度80℃の条件で噴霧乾燥し、粉末状のSSL製剤300g(実施品1;SSL含有量55質量%)を作製した。
【0036】
[実施例2]
[油ちょう食品用品質改良剤の調製]
実施例1のSSL220gに替えて、SSL(商品名:ポエムSSL−100;理研ビタミン社製)160g、パーム油(商品名:RPO;植田製油社製)20g及びグリセリンコハク酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムB−10;理研ビタミン社製)40gを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施し、粉末状のSSL製剤300g(実施品2;SSL含有量40質量%)を作製した。
【0037】
[試験例1]
[20℃の水に対する分散度の測定]
上述した実施例1及び2で作製したSSL製剤(実施品1及び2)について、下記測定方法により20℃の水に対する分散度を測定した。なお、対照として、市販のSSL(市販品A;商品名:ポエムSSL−100;理研ビタミン社製)についても同様に分散度を測定した。結果を表1に示す。
【0038】
[測定方法]
1)100ml容ガラス製ビーカー(内径50mm;高さ70mm)に20℃の水47.5gを仕込み、これに同温度の試料を2.5g加え、同温度条件下にて、攪拌機(商品名:スリーワンモータ;型式:FBL−600;新東科学社製、38mm径3枚羽根型攪拌翼1段装着)を用いて500rpmで60秒間撹拌し、混合液を作製する。
2)目開き250μmのステンレス製のストレーナーに1)の混合液を流し込み、該ストレーナー上に残った残渣を回収する。
3)2)の残渣をガラスシャーレ(内径70mm;高さ20mm)内に静置して105℃で2時間熱風乾燥した後、該ガラスシャーレに残った乾燥物の重量(g)を測定し、その値を分散度とする。
【0039】
【表1】
【0040】
ここで、上記分散度は、その値が低い程、20℃の水に対する分散性が高いことを意味する。従って、表1の結果から、実施例のSSL製剤(実施品1及び2)は、市販のSSLに比べて非加熱の水に対する分散性に優れていることが明らかである。
【0041】
[試験例2]
[ケーキドーナツによる評価]
(1)原材料
1)薄力粉(商品名:バイオレット;日清製粉社製)
2)強力粉(商品名:カメリヤ;日清製粉社製)
3)グラニュー糖(商品名;フジ日本精糖社製)
4)殺菌液卵(商品名:エクセルエッグHV;キューピータマゴ社製)
5)マーガリン(商品名:パンテオンDX;ミヨシ油脂社製)
6)ベーキングパウダー(商品名:BP(M);オリエンタル酵母工業社製)
7)SSL(実施品1、2及び市販品A)
【0042】
(2)原材料の配合及び使用量
上記原材料を用いて作製したケーキドーナツ1〜4の配合割合を表2に示した。ここで、表2の配合割合は、使用する小麦粉(薄力粉及び強力粉の総量)を100質量部として表記した。また、ケーキドーナツの製造に使用した小麦粉の全量は500gとした。
【0043】
【表2】
【0044】
なお、表2の配合割合は、ケーキドーナツ1、2及び3に添加されるSSLの量が、小麦粉100質量部に対し、約0.2質量部となるように調整されている。また、対照として、ケーキドーナツ4にはSSLを添加していない。
【0045】
(3)ケーキドーナツの作製
5コート縦型ミキサー(型式:万能混合攪拌機5DMr;ビーター装着;品川工業所社製)を用いてグラニュー糖、食塩、マーガリン及びSSLを撹拌し、これら原材料をすり合わせた後、これに殺菌液卵、水を加えて均一になるまで撹拌し、さらに薄力粉、強力粉、ベーキングパウダーを加え、低速で3分間混合しケーキドーナツ生地を得た。得られたケーキドーナツ生地を、麺棒を用いて8mm厚に圧延し、外径13mm、内径7mmの型で円盤状にくり抜き、180℃のドーナツオイル(商品名:アメリカーナDX−TL;ADEKA社製)で1分30秒フライ後反転させ、さらに1分30秒フライした。これを30分室温で冷却後、ポリエチレン製袋に密封し、ケーキドーナツ1〜4を得た。
【0046】
(4)評価方法及び結果
得られたケーキドーナツ1〜4を冷蔵(5℃)で保管し、1日後及び3日後にケーキドーナツの食感(ソフト感、口どけ)について官能評価を行った。評価は表3の評価基準により、10名のパネラーで行った。結果はそれぞれ10名の評点の平均値を求め、下記基準にて記号化した。結果を表4に示す。
◎:極めて良好 平均値3.5以上
○:良好 平均値2.5以上、3.5未満
△:やや悪い 平均値1.5以上、2.5未満
×:悪い 平均値1.5未満
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
表4の結果から、本発明のSSL製剤(実施品1及び2)を添加したケーキドーナツ1及び2は、製造から1日後及び3日後においてソフト感及び口どけが「○」以上の評価であり、老化が十分に抑制されていた。これに対し、市販のSSL(市販品A)を添加したケーキドーナツ3及びSSL無添加のケーキドーナツ4は、経時的にソフト感及び口どけが著しく悪化し、満足できる結果は得られなかった。
【0050】
[試験例3]
[イーストドーナツによる評価]
(1)原材料
1)強力粉(商品名:カメリヤ;日清製粉社製)
2)殺菌液卵(商品名:エクセルエッグHV;キューピータマゴ社製)
3)グラニュー糖(商品名;フジ日本精糖社製)
4)ショートニング(商品名:スーパーアトランタ;Jオイルミルズ社製)
5)ベーキングパウダー(商品名:BP(M);オリエンタル酵母工業社製)
6)ドライイースト(商品名:レギュラーイースト;オリエンタル酵母工業社製)
7)イーストフード(商品名:C・オリエンタルフード;オリエンタル酵母工業社製)
8)SSL(実施品1、2及び市販品A)
【0051】
(2)原材料の配合及び使用量
上記原材料を用いて作製したイーストドーナツ1〜4の配合割合を表5に示した。ここで、表5の配合割合は、使用する小麦粉(強力粉)を100質量部として表記した。また、イーストドーナツの製造に使用した小麦粉の全量は2000gとした。
【0052】
【表5】
【0053】
なお、表5の配合割合は、イーストドーナツ1、2及び3に添加されるSSLの量が、強力粉100質量部に対し、約0.2質量部となるように調整されている。また、対照として、イーストドーナツ4にはSSLを添加していない。
【0054】
(3)イーストドーナツの作製
20コート縦型ミキサー(型式:HPI−20M型;ステンレスフック装着;関東混合機工業社製)を用いてショートニング以外の原材料を低速で3分、中高速で3分混合した後、ショートニングを加えて捏上温度が27℃になるように低速で3分、高速で6分混合した。得られた生地について、フロアタイムを28℃で60分取った後、ガス抜きを行い、80gに分割し、ベンチタイムを室温で20分取った。その後生地を円盤状に成型し、37℃、相対湿度60%で45分間ホイロ(型式:サンキャビネットTCH−2660N型;三幸機械社製)で発酵した。発酵後の生地を180℃のドーナツオイル(商品名:アメリカーナDX−TL;ADEKA社製)で2分フライし、反転してさらに2分30秒フライした。これを30分室温で冷却後、ポリエチレン製袋に密封し、イーストドーナツ1〜4を得た。
【0055】
(4)評価方法及び結果
得られたイーストドーナツ1〜4を冷蔵(5℃)で保管し、1日後及び3日後にイーストドーナツの食感(ソフト感、口どけ)について官能評価を行った。評価は、表6の評価基準により、10名のパネラーで行った。結果はそれぞれ10名の評点の平均値を求め、下記基準にて記号化した。結果を表7に示す。
◎:極めて良好 平均値3.5以上
○:良好 平均値2.5以上、3.5未満
△:やや悪い 平均値1.5以上、2.5未満
×:悪い 平均値1.5未満
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】
表7の結果から、本発明のSSL製剤(実施品1及び2)を添加したイーストドーナツ1及び2は、製造から1日後及び3日後においてソフト感及び口どけが「○」以上の評価であり、老化が十分に抑制されていた。これに対し、市販のSSL(市販品A)を添加したイーストドーナツ3及びSSL無添加のイーストドーナツ4は、経時的にソフト感及び口どけが著しく悪化し、満足できる結果は得られなかった。