【解決手段】吸収コア4a、4bと、吸収コアを被覆し、又は吸収コアに積層されるコアラップシート10a、10bと、コアラップシートの少なくとも一方の面を覆う液透過性の外層シート2と、を有する吸収性物品200であって、コアラップシートは、表面にカルボキシル基又はカルボキシレート基を有する酸化セルロース繊維に対し、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属粒子を担持してなる金属担持セルロース繊維を含む薄葉紙からなる。
吸収コアと、前記吸収コアを被覆し、又は前記吸収コアに積層されるコアラップシートと、前記コアラップシートの少なくとも一方の面を覆う液透過性の外層シートと、を有する吸収性物品であって、
前記コアラップシートは、表面にカルボキシル基又はカルボキシレート基を有する酸化セルロース繊維に対し、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属粒子を担持してなる金属担持セルロース繊維を含む薄葉紙からなる吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品(パンツ型紙おむつ)200の外観図である。吸収性物品200は、吸水性を有する吸水性物品本体部20と、吸水性物品本体部20を内部に保持してパンツ形状をなす外装体100とを備えている。
外装体100には、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなり、スパンボンドやエアースルー製法で製造された不織布を用いることができる。又、外装体100は、少なくとも外装シートと内装シートとを有する2枚以上のシートを積層して構成することが好ましい。
吸水性物品本体部20は細長く、長手方向中央部付近がやや幅狭になっていて、吸収性物品200の股間に配置されている。
【0009】
図2は、
図1のA−A線に沿う吸水性物品本体部20の断面図である。吸水性物品本体部20は、身体接触側表面(
図2の上面)を形成する液透過性の親水性表面シート(トップシート、外層シート)2と、液不透過性のバックシート6と、親水性表面シート2とバックシート6の間に配置され、高吸水性樹脂と接着剤とを有する吸収コア4a、4bと、を含んで構成されている。又、各吸収コア4a、4bは、それぞれコアラップシート10a、10bで被覆されている。さらに、吸水性物品本体部20の両側部が撥水性のサイドシートからなる立体ギャザー30として立ち上がって尿等の横漏れを防止する。
なお、本実施形態では、それぞれコアラップシート10a、10bで被覆された各吸収コア4a、4bは、吸収コア4aが親水性表面シート2側を向くように積層されていて、吸収コア4aの幅に比べて吸収コア4bの幅がおよそ1/2になっている。
1つの吸水性物品本体部20につき、吸収コアとそれを包むコアラップシートは1つでもよく、複数でもよい。
【0010】
親水性表面シート2は不織布からなり、着用者の皮膚に接するため、感触が柔らかで、皮膚に刺激を与えない材料から形成されるとよい。親水性表面シート2は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどの合成繊維による、エアースルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布などが使用できる。特に液戻り量の少ないエアースルー不織布が好適である。
バックシート6は、吸水性物品本体部20内において保持している液体などが下着に漏れないような防水性を有する液不透過性の材料から形成されていればよく、通気性のポリエチレンフィルムなどの薄いプラスチックフィルムとすることができる。また、バックシート6として透湿性のフィルムを用い、ムレを低減してもよい。
【0011】
吸収コア4a、4bは、木材フラッフパルプのような親水性繊維(フラッフ)と、高吸水性樹脂(SAP)の粒子とを混合して形成することができる。また、SAPをシート状とした、いわゆるSAPシートを使用してもよい。親水性繊維としては、木材パルプフラッフの代わりに、合成繊維、ポリマー繊維などを使用してもよい。また、親水性繊維として抗菌性の繊維を配合しても良い。
【0012】
次に、本発明の特徴部分であるコアラップシート10a、10bについて説明する。
コアラップシート10a、10bは、表面にカルボキシル基又はカルボキシレート基を有する酸化セルロース繊維に対し、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属粒子を担持してなる金属担持セルロース繊維を含む薄葉紙からなる。
この金属担持セルロース繊維は、セルロース繊維表面にカルボキシル基又はカルボキシレート基を導入した酸化セルロース繊維に対し、金属化合物水溶液を接触させることによって得ることができる。また、コアラップシート10a、10bの製造方法としては、酸化セルロース繊維を含む原料を抄造したシートに上記金属化合物水溶液を接触させる方法の他、予め酸化セルロース繊維に金属を担持させ、この金属担持セルロース繊維を含む原料を抄造する方法を例示することできる。
【0013】
上記酸化セルロース繊維は、N−オキシル化合物を触媒に用いて木材パルプなどのセルロース繊維を酸化することにより製造できる。この酸化反応により、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、表面にカルボキシル基またはカルボキシレート基を有する酸化セルロース繊維が得られる。原料のセルロースは天然セルロースが好ましい。上記酸化反応は、水中で行うことが好ましい。反応におけるセルロース繊維の濃度は特に限定されないが、5質量%以下が好ましい。N−オキシル化合物の量は、反応系に対し0.1〜4mmol/L程度であればよい。反応には公知の共酸化剤を用いてもよい。共酸化剤の例には、ジ亜ハロゲン酸またはその塩が含まれる。共酸化剤の量は、N−オキシル化合物1molに対して1〜40molが好ましい。
反応温度は4〜40℃が好ましく、室温がより好ましい。反応系のpHは8〜11が好ましい。酸化の度合いは、反応時間、N−オキシル化合物の量等により適宜調整できる。
このようにして得た酸化セルロース繊維は、表面に酸基が存在し、内部にはほとんど酸基は存在しない。これはセルロース繊維が結晶性であるため、酸化剤が繊維の内部にまで拡散しにくいためと考えられる。
【0014】
カルボキシル基とは−COOHで表される基をいい、カルボキシレート基とは−COO−で表される基をいう。カルボキシレート基のカウンターイオンは特に限定されない。後述するように金属ナノ粒子がカルボキシレート基とのイオン結合を介して形成する場合はこの金属イオンがカウンターとなる。カルボキシル基またはカルボキシレート基を合わせて「酸基」ともいう。
酸基の含有量は、特開2008−001728号公報の段落0021に開示されている方法によって測定できる。すなわち、精秤した乾燥セルロース試料を用いて0.5〜1質量%のスラリー60mLを調製し、0.1mol/Lの塩酸水溶液によってpHを約2.5とする。その後、0.05mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して電気伝導度測定を行う。測定はpHが約11になるまで続ける。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階を示すまでに消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下式を用いて酸基量X1を求める。
X1(mmol/g)=V(mL)×0.05/セルロースの質量(g)
【0015】
上記セルロース繊維の酸基の量は、0.2〜2.2mmol/gが好ましい。酸基の量が0.2mmol/g未満であると、セルロース繊維表面に存在する金属粒子の量が十分でなく、消臭及び抗菌機能に劣る場合がある。酸基の量が2.2mmol/gを超えると、金属粒子の凝集が起こり、消臭及び抗菌機能に劣る場合がある。
【0016】
次に、上記酸化セルロース繊維に対し、上記金属の化合物を含む水溶液を接触させ、酸化セルロース繊維のカルボキシル基またはカルボキシレート基(酸基)と金属化合物とを結合させる。金属化合物はカルボキシル基と配位結合や水素結合を形成していればよい。また、金属化合物に由来する金属イオンが、カルボキシレート基とイオン結合を形成していてもよい。本工程においては、金属化合物が分子レベルで酸基と結合していると考えられるため、金属ナノ粒子は形成されていない。
金属化合物水溶液とは、金属塩または有機金属化合物の水溶液である。金属塩の例には、錯体(錯イオン)、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、および酢酸塩が含まれる。金属塩は水溶性であることが好ましい。
金属化合物の接触方法に関しては、予め調製したセルロース繊維の分散液と金属化合物水溶液を混合してもよく、セルロース繊維を含む分散液を基材の上に塗布して膜とし、当該膜に金属化合物水溶液を滴下して含浸させてもよい。このとき、膜は基板上に固定されたままであってもよいし、基板から剥離された状態であってもよい。
金属化合物水溶液の濃度は特に限定されないが、セルロース繊維100質量部に対して10〜80質量部が好ましく、30〜60質量部がより好ましい。
金属化合物を接触させる時間は適宜調整してよい。接触させる際の温度は特に限定されないが20〜40℃が好ましい。また、接触させる際の液のpHは2.5〜13が好ましい。
【0017】
次に、上記のように得られた酸化セルロース繊維に結合した金属化合物を還元することによって金属粒子が形成される。この機構は明らかでないが、以下のように推察される。還元反応により酸基と結合していた金属化合物または金属化合物由来のイオンは還元されて金属となる。このとき、生成した金属は、酸化セルロース繊維の表面に担持される。同様に生成した近隣の金属同士は一体化するので、粒子が成長してナノ粒子が形成される。一方、セルロース繊維の近傍に存在するものの酸基と結合せずに存在していた金属化合物等も還元されて金属を生成する。この金属は、速やかにセルロース繊維表面の金属と一体化して金属粒子を形成する。
還元反応は、公知の方法で行ってよいが、金属化合物を還元しつつ、金属化合物と酸基との結合を開裂しないように行うことが好ましい。このような還元方法の例には、水素による気相還元法、および水素化ホウ素ナトリウム水溶液などの還元剤を用いた液相還元法が含まれる。気相還元における時間、温度等の条件は適宜調整されるが、例えば50〜60℃で1〜3時間程度反応すればよい。気相還元反応は、酸化セルロース繊維が水や溶媒を含んでいない状態で行うことが好ましい。還元反応においては、膜は基板上に固定されたままであってもよいし、基板から剥離された状態であってもよい。液相還元の場合は、上記分散液から膜を得て、これを乾燥してあるいは乾燥しないまま還元反応に供することができる。また、分散液を乾燥することなく液相還元反応に供することもできる。液相還元における反応温度は4〜40℃が好ましく、室温がより好ましい。
【0018】
金属粒子は、セルロース繊維表面に存在する酸基を接点としてセルロース繊維表面に担持されている。すなわち、金属粒子は、セルロース繊維表面に存在する酸基を介してセルロース繊維表面に固定されている。固定化に係る化学結合は、配位結合、水素結合、またはイオン結合が好ましい。結合の状態は、X線光電子分光分析もしくは赤外分光分析により解析できる。
金属粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡像またはX線回折から求められる。本発明においては、金属粒子の平均粒子径は透過型電子顕微鏡像から求めた場合に、平均粒子径が1〜50nmの範囲にあることが好ましい。具体的に平均粒子径は、セルロース繊維の透過型電子顕微鏡像を準備し、その像から、複数の金属粒子の一次粒子の円相当径を求め、これらの値を平均して求められる。
金属粒子として、Ag及びCuの群から選ばれる1種以上を用いることにより、抗菌機能が付与される。一方、セルロース繊維の酸基のすべてに金属粒子が結合することはなく、残存した酸基が臭い成分であるアンモニアを中和することにより、消臭機能が発揮される。
【0019】
コアラップシート10a、10bは、セルロース繊維を含む抄紙原料を抄紙してなる。上記セルロース繊維以外の抄紙原料としては、例えば針葉樹パルプ(NBKP)又は広葉樹パルプ(LBKP)などのバージンパルプや、古紙から再生した古紙パルプを用いることができる。これらパルプは衛生用紙の要求品質に合わせて、適宜所定の種類及び配合割合で適宜配合される。抄紙原料は、要求品質及び操業の安定のために様々な薬品を添加(内添)してもよく、これら薬品としては、柔軟剤、嵩高剤、染料、分散剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、歩留向上剤などが挙げられる。
コアラップシート10a、10b中の上記金属担持セルロース繊維の含有割合は、5wt%以上とすること好ましい。上記金属担持セルロース繊維の含有割合が10wt%未満であると、セルロース繊維表面に存在する金属粒子の量が十分でなく、消臭及び抗菌機能に劣る場合がある。コアラップシート10a、10bが上記金属担持セルロース繊維のみから成っていてもよい。
【0020】
得られたコアラップシート10a、10bの坪量を例えば7〜40g/m
2とすることができる。又、コアラップシート10a、10bの強度として、GMT値{(DMD×DCD)
1/2}を60〜420(N/m)とすることができる。
DMD及びDCDは、それぞれコアラップシート10a、10bの乾燥時のMD方向及びCD方向の引張り強さをであり、JIS P8113に従って測定する。但し、測定時の試料幅は25mmとし、DMD及びDCDの単位は「N/m」とする。
【0021】
コアラップシート10a、10bは、公知の抄紙法により製造することができる。まず、金属担持セルロース繊維(又は金属を担持する前の酸化セルロース繊維)と、パルプとを適宜混合してなる抄紙原料を原料タンクから供給し、さらに白水により希釈して紙料を調製する。この紙料を脱気スクリーニング除塵後、ファンポンプでストックインレットに送る。ストックインレットは、抄紙機のワイヤー全幅に、均一でフロック(小さな塊)がなく、流れ縞を生じないように繊維をよく分散させた紙料を、適正な濃度、速度、角度でワイヤー上に供給する。ストックインレットとしては、高所に大気開放で設置されるヘッドボックス、加圧式、ハイドローリック式などがあるがいずれを採用しても良い。そして、ストックインレットからワイヤー及びフェルトの間に紙料をジェット吐出し、フェルト上にシート(ウェブ、湿紙)を形成する。
【0022】
ワイヤー及びフェルトの間に形成されたウェブは、プレッシャーロールでヤンキードライヤーに密着転送される。次に、ウェブはヤンキードライヤー及びヤンキードライヤーフードにより乾燥され、さらにクレーピングドクターによりクレーピング処理されながらヤンキードライヤーから剥がされ、リールドラムを介してリールに巻き取られる。ヤンキードライヤーは、ウェブを乾燥させるための鋳鉄又は鋳鋼製のドラムであり、外径は一般には2.4〜6mである。
ここで、クレーピングは、紙を縦方向(マシン走行方向)に機械的に圧縮してクレープと称される波状の皺を形成する方法であり、衛生用紙に嵩(バルク感)、柔らかさ、吸水性、表面の滑らかさ、美観(クレープの形状)などを付与する。そして、ヤンキードライヤーとリールの速度差(リールの速度≦ヤンキードライヤーの速度)により、クレーピングドクターでクレープが形成される。クレープの特性は、上記速度差にもよるが、ヤンキードライヤー上の原紙の坪量が7〜40g/m
2であれば、リール上での坪量は概略9〜50g/m
2となり、ヤンキードライヤー上の坪量より大きくなる。
ヤンキードライヤーとリール14の速度差に基づくクレープ率は次式により定義される。
クレープ率(%)=100×(ヤンキードライヤー速度(m/分)−リール速度(m/分))÷リール速度(m/分)
クレープの品質やクレーピングの操業性は、クレープ率によってほぼ決まり、本発明において、クレープ率は10〜50%の範囲が好適である。
【0023】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
吸収性物品は、上記したパンツ型紙おむつに限られず、例えば生理用ナプキンのように細長い片状であって、局部に当てるタイプであってもよい。又、上記した実施形態では、液透過性の外層シート2が吸収コア4aの片面(身体接触側表面)のみを覆ったが、吸収コアの両面を液透過性の外層シートで覆い、吸収性物品の表面と裏面の両方の面から尿等を吸収可能としてもよい。
又、上記コアラップシートは、吸収コアを被覆するものにかぎらず、吸収コアの表面に積層して使用してもよい。又、吸収コアを複数積層する場合には、各吸収コアの間にコアラップシートを介装してもよい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は勿論これらの例に限定されるものではない。
【0025】
<実験A>
NBKPからなるパルプ繊維(セルロース)16gを準備し、1600gの水に分散させた。この分散液に0.2gの2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)、および共酸化剤として2gの次亜塩素酸ナトリウムを加え、室温で2時間撹拌し、酸化反応を行い、酸化セルロース繊維(TEMPO酸化セルロース繊維)の分散液を得た。このTEMPO酸化セルロース繊維はその表面にカルボキシル基またはカルボキシレート基を有する。金属粒子を担持する前のTEMPO酸化セルロース繊維の酸基量は1.6mmol/gであった。
上記操作にて得られたTEMPO酸化セルロース繊維を、坪量が18g/m2になるように、丸型手抄き機にて抄紙し、シリンダードライヤー(105℃)で乾燥させ、直径約16cmの丸型シートを作製した。
次にこのシートを200ppmのAg化合物水溶液に含浸させ、ろ紙を重ねて余分な水溶液を取り除き、50℃の送風乾燥機で15分乾燥させた。その後、Ag化合物水溶液を含浸・乾燥したシートを200ppmの還元剤溶液に含浸させ、ろ紙を重ねて余分な水溶液を取り除き、50℃の送風乾燥機で15分乾燥させ、シート中の酸化セルロース繊維にAgナノ粒子を担持させた。酸化セルロース繊維に対する金属粒子の担持量は5.75mg/gであった。なお実施例3は、Agの代わりにCuを用いた。
次に、この金属担持セルロース繊維を含むシートと、パルプとを、表1に示す配合比で配合してパルプスラリーを調製し、抄紙して実施例1〜3のコアラップシートを得た。
比較例1として、市販のティシュペーパーをコアラップシートとして準備した。
比較例2として、ゼオライト担持セルロース繊維(商品名セルガイア(登録商標))にAg粒子を10wt%担持させたものを抄紙してコアラップシートを製造した。
【0026】
<坪量>
得られたコアラップシートの坪量を、JIS P 8124に従って測定した。
<紙厚>
得られたコアラップシートを10プライ(枚)重ねたときの紙厚(mm/10枚)をピーコック型紙厚計(商品名)にて測定した。測定圧力は3.7kPaとした。
<引張り強さ>
得られたコアラップシートの乾燥時のMD方向及びCD方向の引張り強さを、JIS P8113に従って測定した。試料幅は25mmとした。なお、乾燥時のMD方向及びCD方向の引張り強さをそれぞれDMD及びDCDで表す。
又、得られたコアラップシートの湿潤時のMD方向の引張り強さ(WMN)を、JIS P8135に従って測定した。試料幅は25mmとした。
<吸水速度>
JIS S3104 6.5(旧JIS)に従って測定した。
具体的には、以下のように測定した。まず、1滴の滴下量が0.1mlとなるように調整されたピペットを準備した。コアラップシートの試験片を保持枠に取り付け、試験片上10mmの高さから温度20±1℃の蒸留水をピペットで0.1ml滴下した。水滴が試験片に到達してから水の鏡面反射が完全になくなるまでの時間をストップウォッチで0.1秒単位で測定した。試験を5回行い、その平均値を吸水速度(秒)として評価した。
【0027】
<ハンドフィール>
パネラー10名により、コアラップシートの手の触感、及び肌触りの評価を行った。次の基準で評価した。
◎:非常に良い
△:普通
×:悪い
<リント(紙粉)>
JIS B9923(タンブリング法)に準じてコアラップシートの発塵試験を行い、パーティクルカウンター(リオン製、製品名「KC−01D1」)にて測定を行った。次の基準で評価した。評価が良いほど紙粉が少ない。
◎:非常に良い
○:普通
△:やや悪い
×:悪い
【0028】
<消臭効果>
5cm×5cmのコアラップシートの試験片が4枚入ったコック付きガスバッグに、アンモニア水溶液(アンモニア水2mL:水2mL)の飽和ガスを1.2mL注射器で挿入し、さらにエアーポンプにて空気を1.5L充填した。上記飽和ガスは、アンモニア水溶液が入っている密閉容器の気相から採取した。飽和ガス及び空気を充填後のガスバッグ中のアンモニアガス濃度は80〜90ppmであった。次に、検知管に吸引器とゴムチューブを繋ぎ、ゴムチューブをガスバッグに繋いだ。そして、空気を充填してから15分経過後のガスバッグ内のアンモニアガス濃度を測定した。
◎:非常に良い 残存濃度が初期の1/3以下
○:普通 残存濃度が初期の1/2〜3/1
×:悪い 残存濃度が初期の1/2以上
<抗菌性>
ハロー試験により評価した。大腸菌を含んだ寒天培地を作製し、その上にコアラップシートの試料を載せ、37℃で17時間培養後、試料の周りにできた試験菌の「生育阻止帯」の有無を確認した。次の基準で評価した。
○:生育阻止帯が認められ抗菌性を有する。
×:生育阻止帯の認められず、抗菌性を認めない。
【0029】
得られた結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1から明らかなように、各実施例の場合、消臭及び抗菌機能を有すると共に強度が高く、紙粉が少なくなった。
【0032】
一方、市販品である比較例1の場合、消臭及び抗菌機能が得られなかった。
ゼオライト担持セルロース繊維(商品名セルガイア(登録商標))にAg粒子を担持させたものを抄紙した比較例2の場合、ほぼ同じ坪量の実施例1に比べて強度が低下して紙粉が多く発生したと共に、ハンドフィールも劣った。
【0033】
<実験B>
一般のパルプ(セルロース繊維)であるNBKP、上記ゼオライト担持セルロース繊維(商品名セルガイア(登録商標))、及び上記TEMPO酸化セルロース繊維を用いたパルプスラリーを、角形手抄機により抄紙して坪量18±0.5g/m2のシート1〜4を作成した。なお、紙力増強剤は添加しなかった。
得られた各シートにつき、実験Aと同様に、坪量、紙厚、引張り強さを測定した。坪量と紙厚から密度を算出し、坪量と引張り強さから裂断長を算出した。なお、引張り強さは試料幅25mm幅で測定し、裂断長は次式より求めた。又、シート1については、強度が低いため、シートを3枚重ねて引張り強さを測定し、3で割って1枚当りの引張り強さに換算した。
裂断長(km)=引張り強さ(kgf)×1000/{秤量(g/m
2)×試料幅(mm)}
得られた結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
表2から明らかなように、シート1よりシート2,3の方が強度は高い。これは、TEMPO酸化セルロース繊維の製造過程で叩解処理の様な作用が働くためと考えられる。従って、一般のパルプ(NBKP等)とTEMPO酸化セルロース繊維とを混合した抄紙原料を抄紙した実施例1の強度は、一般のパルプを抄紙した比較例1と同等の強度となる。
一方、ゼオライト担持セルロース繊維を10wt%含むシート4の場合、シート1に比べて強度が約20%低下した。これは、セルロース繊維内でゼオライトが結晶化しているため、繊維が膨張し、セルロース繊維の扁平化を阻害し、繊維間の水素結合が減少したためと考えられる。また、ゼオライト担持セルロース繊維が短繊維分を多く含むためとも考えられる。