【課題】従来から粉粒体の微細化はミルを使用して行われてきたが、ミルによる微細化では、ミクロンレベル又はナノレベルの粉砕はできなかった。本発明は、比較的容易にミクロンレベル又はナノレベルの微細化を可能にする装置と、製造した微細化物含有水の使用方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1本が粉粒体を有する2本の水流34を衝突させることにより前記粉粒体を微細化する。両水流は両水流の流速の和に等しい速度で衝突するが、その衝撃は単独の水流が静止面に衝突する際の数倍から十数倍に達し、各水流に最大限の衝撃が与えられ、水流中の粉粒体が微細化する。
円筒体の先端側を半球状に成形しその中央に小孔を形成し、前記2個の小孔を対向させて直線状に配置した2本の供給管と、当該前記2本の供給管のそれぞれの基端側に形成された、接線方向から微細化する粉粒体を有する水流を供給する水流供給口、及び水流取出口を含んで成る装置を用いて、少なくとも一本が活性汚泥法で使用する活性汚泥と殺菌対象を有する汚泥を含有する2本の水流を、上記水流供給口から供給管内に供給して旋回しながら供給管内を移動させて上記小孔に到達させ、上記2個の小孔から噴出した旋回流を直線状の水流として衝突させることにより前記活性汚泥を活性化するとともに、前記殺菌対象を微細化することを特徴とする活性汚泥の処理方法。
円筒体の先端側を半球状に成形しその中央に小孔を形成し、前記2個の小孔を対向させて直線状に配置した2本の供給管と、当該前記2本の供給管のそれぞれの基端側に形成された、接線方向から微細化する粉粒体を有する水流を供給する水流供給口、及び水流取出口を含んで成る装置を用いて、少なくとも一本が粉粒体状の汚染物質を含む排水である2本の水流を、上記水流供給口から供給管内に供給して旋回しながら供給管内を移動させて上記小孔に到達させ、上記2個の小孔から噴出した旋回流を直線状の水流として衝突させることにより前記汚染物質を微細化することを特徴とする排水の処理方法。
【背景技術】
【0002】
現在各種工業において粉粒体(塊状体)が使用されている。この粉粒体は粒径が数ミリに達する物から極微レベルで数個の分子が会合しているものまで幅広い粒径で存在している。
これらの粉粒体は、数ミリの場合はミクロンレベルに、ミクロンレベルの場合はナノレベルまで微細化することが望ましい場合が多い。
例えば活性汚泥法による汚水処理の場合、塊状の活性汚泥(微生物)を曝気槽で汚水と接触させて、汚水中の汚濁物質を消化して汚水の浄化が行われる。この場合、前記塊状の活性汚泥(微生物)が会合せずに微細化されその径が小さいほど、微生物と汚濁物質の接触効率が向上して汚水浄化が促進される。
【0003】
従来の活性汚泥法では、曝気槽内を攪拌して微生物と汚濁物質の接触効率を向上させることを意図しているが、攪拌だけでは活性汚泥自体には殆ど変化が生じることがなく、処理効率に僅かな改良が見られるにすぎない。
活性汚泥法以外の各種排水処理方法でも、排水中の汚濁物質は塊状体又は粉粒体として存在していることが多く、この塊状体又は粉粒体をより微細化できれば、排水浄化はより簡便に行うことができる。
【0004】
更に塊状の原料物質を使用して各種化学物質を製造するプラントでは、塊状の原料物質を粉粒体まで粉砕し、溶媒に溶解又は懸濁させ、更にこの溶媒に他の反応物質を添加し、攪拌することにより所定の化学反応を進行させるようにしている。
しかし通常の粉砕では微細化に限度があり、前記化学プラントでは長時間加熱攪拌して原料溶解を行いかつ反応を進行させなければならず、時間とコストのロスになっている。前記原料の粉砕を更に微細なレベルまで行えれば、低加熱及び短時間で反応を進行させることができるが、現状では適切な粉砕手段がなく、長時間加熱が必須になっている。
【0005】
又マンションやオフィスビルなどの建物では給水や冷暖気の循環のための配管が内壁、床、天井などに配設されている。これらの配管を長期間使用し続けると、その内面が腐食して配管内の水や気体が汚染されることがある。これらを防止するためには、前記配管内面に防錆用被膜を被覆形成すれば良いが、長い配管内面に被膜形成を行うことは困難であり、被膜形成は実際上、行われていない。
更に石油タンカーの空になった油槽にはバラスト水が満たされてタンカーのバランスを調整して、タンカーの運行の安全が図られている。この油槽の内面は汚濁物質を多く含んだ原油で汚染され易く、又原油と置換されるバラスト水は海水が使用され、塩や藻類による前記油槽内面の腐食や汚染が起こり、それらの対策が要請されている。
【0006】
例えば特許文献1には、バラスト水で衝撃を与えて微生物や細菌を微細化することは開示されているが、バラスト水や原油による油槽の汚染あるいは汚染の防止についての開示はない。
更に食用ソースは香辛料等の粉粒体を多く含んでいるが、これらの成分をより微細化できれば成分が分散した嗜好性に優れたソースを提供できる。従来のソースの粉粒体を更に微細化すること自体は比較的容易であるが、ソースは比較的安価な商品であり、微細化のために多くの手間と高コストを掛けることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
塊状体や粉粒体の微細化に関しては、各種ミルによる粉砕が殆どであり、ミルにより粉砕では、微細化に限界があり、ある程度以上の微細化は不可能であった。特にミクロンレベルやナノレベルの粉砕を行うことはできない。
このように塊状体や粉粒体の高度の微細化が要請されているにも拘らず、従来の微細化法は当該要請には応えられていない。
従って本発明は、比較的簡単に塊状体や粉粒体を高度に微細化できる方法と装置、及びこれにより得られた微細化物含有水を処理する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明方法は、少なくとも一本が微細化する粉粒体を有する2以上の水流を衝突させることにより前記粉粒体を微細化することを特徴とする微細化物含有水の製造方法であり、本発明装置は、円筒体の先端側を半球状に成形しその中央に小孔を形成し、前記2個の小孔を対向させて直線状に配置した2本の供給管と、当該前記2本の供給管のそれぞれの基端側に形成された、接線方向から微細化する粉粒体を有する水流を供給する水流供給口、及び水流取出口を含んで成ることを特徴とする微細化物含有水の製造装置である。
このようにして得られる微細化物含有水は、例えば微細化した還元剤を有する還元剤含有水として配管内面やタンカーの油槽内面に還元剤被覆膜を形成するために使用できる。更に本発明装置や方法は、活性汚泥法において活性汚泥や殺菌対象を微細化し、更に排水中の汚濁物質を微細化して、それぞれ処理効率を向上させるために使用できる。又化学プラント等における化学物質の溶解促進にも利用できる。
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明では、少なくとも一本が微細化する粉粒体を有する2本以上の水流を衝突させる。これにより前記粉粒体同士が互いに衝突し、あるいは前記粉粒体が高速水流と衝突して微細化される。なお本発明では従来の塊状体と粉粒体を合わせて「粉粒体」と称し、この粉粒体の微細化前の粒径は通常数十ナノメートルから数センチである。本発明は、特に既に微細化されている粉粒体を更に微細化することを意図している。
【0011】
本発明では、このように少なくとも1本が粉粒体を有する複数の水流を衝突させる。水流の数は2本として、互いに180°で衝突させること、つまり正面衝突させることが望ましい。これにより両水流が両水流の流速の和に等しい速度で衝突し、その衝撃は単独の水流が静止面に衝突する際の数倍から十数倍に達し、各水流に最大限の衝撃が与えられ、水流中の粉粒体が微細化し、微細化された物質が水溶性である場合には水流中への溶解が促進される。
【0012】
前記水流の本数や衝突角度はこれに限定されず、3本の水流を120°で衝突させたり、4本の水流を90°で衝突させたりすることも可能であり、更に2本の水流を180°以外の角度で衝突させることも可能である。いずれの場合でも、粉粒体を有する水流が静止面に衝突する場合よりかなり大きな衝撃が各水流に与えられ、粉粒体の微細化が促進される。
【0013】
本発明における2本以上の水流は可能な限り速い速度で衝突することが望ましい。そのためには、衝突直前に小径の孔やスリットを通過させることが望ましい。
しかし単に速度を最大限に増加させるのではなく、2本の水流の場合、両水流の性質に僅かに差異を生じさせても良く、例えば一方の流速を他方より遅くしたり、両水流中の粉粒体の粒径を異ならせたりすることができる。大径の粉粒体と小径の粉粒体が衝突すると、両者のバランスが崩れて微細化が進行しやすくなると推測できる。
【0014】
前記水流は、2本の直線状の円筒体の各一方端を対向させて直線状に配置し、前記2本の管の他端側からポンプで水流を送り込み、前記対向端側で衝突させても良いが、この方法では高速な水流を得にくい。従って本発明の微細化物含有水の製造装置は次の形態を有することが望ましい。
つまり比較的大径の円筒体の先端側を半球状に成形しその中央に小孔を形成した供給管2本を、前記2個の小孔を対向させて直線状に配置し、前記2本の供給管のそれぞれの基端側に接線方向から、粉粒体を有する水流を供給することが望ましい。これらの水流は旋回しながら供給管の内壁に接触し先端側に向けて加速しながら移動して前記小孔から高速で噴出し、対向する小孔から噴出した2本の水流が両小孔間の空間で衝突して、互いに激しい衝撃を与え合う。
【0015】
前記円筒体はその内壁を先端以外が等径になるよう成形しても良いが、基端側から先端側に向けて内向き傾斜させておくと、加速が促進され、より高速で水流同士の衝突が実現する。
この衝撃により前述した通り、水流中の粉粒体が微細化される。
【0016】
このように得られる微細化物含有水は水流取出口から装置外に取り出されるが、この水流取出口に1又は2以上の通孔を有する邪魔板を設置しても良い。この邪魔板は、水流取出しの抵抗となり、水流を前記小孔間の空間に長時間滞留させることができる。
これとは逆に、邪魔板を設置した前記水流取出口からポンプ等で吸引して微細化物含有水を取出しても良い。
このような構成の装置を使用すると、前述した通り、原料の粉粒体より微細化した粉粒体を有する微細化物含有水が得られる。
【0017】
本発明装置の操業に必要なエネルギーは、基本的には水流を生成させて装置本体に供給するエネルギーのみであり、非常に経済的である。
本発明の粉粒体には、(1)排水処理用の活性汚泥又はそれに含まれる汚濁物質、(2)排水に含まれる汚濁物質、(3)下水やし尿に含まれる汚濁物質、(4)化学プラントなどで使用される化学物質、(5)配管内又はタンカーの油槽内に還元被膜を形成するための還元剤、(6)湖沼水、河川水あるいは海水中の汚濁物質、(7)浴場水中の汚濁物質、(8)熱交換器冷却水やボイラー水中の汚濁物質、及び(9)製紙洗浄水中の汚濁物質などがある。但し本発明の粉粒体はこれらに限定されない。
【0018】
(1)の活性汚泥又はそれに含まれる汚濁物質が粉粒体である場合には、例えば処理ライン中の曝気槽に前記微細化物含有水製造装置本体を沈めておく。前記曝気槽に供給される排水(廃水)には、雑菌、カビ、廃薬品などの汚濁物質が含まれているが、装置本体では前記活性汚泥や前記汚濁物質が微細化された微細化物含有水が、前記装置の水流取出口から曝気槽内に供給される。活性汚泥と汚濁物質は互いに大きい表面積を有することが接触面積を増加させて処理効率向上に繋がるが、本態様では、両者とも微細化されているため、活性汚泥が十分に汚濁物質に接触してその分解を促進する。更に前記装置内で汚濁物質を含む水流が大きな衝撃の下で衝突するため、前記雑菌等が衝撃により死滅して処理効率が上昇することもある。なお雑菌以外に活性汚泥の微生物も死滅するほど衝撃が強い場合には、供給する水流の速度を下げるような調節が必要になる。なお活性汚泥法では、前記装置は曝気槽に沈めずに曝気槽前の配管に接続しても良い。
この水流の速度調節は、粉粒体が、前述の(2)〜(9)の場合には不要である。
【0019】
前述の(4)や(5)の化学物質(還元剤)の微細化により、十分に溶解又は懸濁した溶液又は懸濁液が得られる。前記化学物質が難溶性の場合には、水流衝突により化学物質が微細化して従来より遥かに短時間及び低コストで所望の液が得られる。
難溶性の還元剤を溶解又は懸濁した液は、マンションやオフィスビルなどの建物の給水や冷暖気の循環のための配管内を流し、あるいは原油を抜き取ったタンカーの油槽にバラスト水として供給すことに使用でき、これにより配管や油槽の内面に還元被膜を形成して配管や油槽を保護するために使用できる。
汚濁物質に分類される粉粒体は、微細化された汚濁物質の分離や分解が容易になり、水の浄化を円滑に行うことができる。
【0020】
本発明では、粉粒体の微細化に加えて、前記微細化装置の前後いずれかに、タンクレスラインを設置して微細化した粉粒体の処理や反応などを促進しても良く、前記タンクレスライン内は高温高圧に維持することが望ましい。本発明における高温とは、一般に50℃以上、高圧とは、1MPa以上を意味する。
特に臨界状態(水の場合、375℃以上、22MPa以上)では、液体でも気体でもない超臨界流体となり、その優れた特性を利用して抽出、精製、洗浄、調製、加工、機能化、反応の促進などを実行できる。例えば排水の場合、対象とする排水を第1発明装置を通してナノバブルと接触させるだけでも、ナノバブルの有する殺菌力で排水の清浄化は進行するが、ナノバブルと接触している排水をそのまま高温高圧のタンクレスラインに導入すると、排水とナノバブルの接触が更に十分に進行して処理効率が上昇する。
前記タンクレスラインの長さは、1mから300mの範囲とし、内径は5mmから100mmとすることが好ましいが、これらに限定されない。長さが例えば10mを超える場合は、タンクレスラインを折り返して設置スペースの減少を図ることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、少なくとも1本が粉粒体を有する2以上の水流を衝突させることにより前記粉粒体を微細化するという簡単な操作により、微細化物含有水の製造を可能にしている。 このような粉粒体を有する複数の水流を衝突させると、衝突角度にもよるが、各水流が最大で各水流の流速の和に等しい速度で衝突する。その際の衝撃は、単に1本の水流が衝撃面に衝突する際の2倍になるのではなく、衝突速度の増加に応じて指数級数的に増大して各水流に最大限の衝撃が与えられる。これにより粉粒体の微細化が促進される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明に係る微細化物含有水製造装置の一例を添付図面に基づいて説明するが、これは本発明を限定するものではない。
図1は、本発明に係る微細化物含有水製造装置の一例を示す部分縦断面図、
図2は、
図1の装置の部分分解斜視図、
図3は
図1の装置の3枚の案内板と3枚のスペーサーの側面図(ボルト孔は省略)である。
【0024】
横向き円筒形の外筒1はその上面中央に上向きに折曲げられた微細化物含有水の案内管2を有し、その案内管2の上端縁には外向きに水平フランジ3が接合されている。
この水平フランジ3の上面にはやや小径で4個(1個のみを図示)の通孔4を有する邪魔板5が位置し、この邪魔板5上には水平フランジ6付きの微細化物含有水水取出(噴出)口7が設置され、前記両水平フランジ3、6をボルト8で締め付けることにより、前記微細化物含有水取出口7を前記外筒1に固定している。
【0025】
前記外筒1の両端の外周側には、上部が半円状に湾曲する支持板9が接合され、この支持板9と前記外筒1との接合部の円孔10には内筒取付板(フランジ)11が嵌め込まれている。この内筒取付板11の中央の円孔12には、先端側が半球状の噴出部13として成形された円筒状の旋回内筒14の基端部外縁が接合され、更に前記噴出部13先端中央には小径の噴出孔15が形成されている。なお両噴出部13の両噴出孔15、15′のうち、
図1の左方の噴出孔15の径は右方の噴出孔15′の径より小さくなるように成形されている。両噴出孔の孔径は同一でも構わない。
【0026】
前記支持板9及び内筒取付板11の外側面には、
図3に示す3枚の案内板と3枚のスペーサーが積層されている。前記支持板9及び内筒取付板11に接触する第1スペーサー16は、前記内筒14に対応する円孔17が形成され、この第1スペーサー16に接触する第1案内板18には、前記第1スペーサー16の円孔17に対応しかつ上下の接線方向に切り込み19が形成された旋回流形成孔20が穿設されている。
【0027】
この第1案内板18の外側には、前記切り込み19の先端部に対応する個所に左右1対の縦方向の切り欠き21を有する第2スペーサー22が接している。この第2スペーサー22の外側には、両上端部が前記1対の切り欠き21と整合し、全体的に上向き「コ」字状に成形された通孔23が形成された第2案内板24が接触している。
この第2案内板24の外側には、前記通孔23の下部の水平孔の一部と重なるように円孔25が形成された第3スペーサー26が接触している。この第3スペーサー26の外側には、前記円孔25に対応する個所に、粉粒体含有水の水流の供給口27を有する第3案内板28が接触している。
【0028】
これらの3枚の案内板18、24、28と3枚のスペーサー16、22、26はそれぞれに穿設されたボルト孔29にボルト30を締着することにより互いに一体化され、かつ前記支持板9に固定されている。
なお31は旋回内筒14の周囲に接合され、かつその外縁が前記外筒1内壁に密着するよう構成した遮蔽板である。
【0029】
このような構成を有する微細化物含有水製造装置による微細化物含有水製造の要領を説明する。
微細化すべき物質、例えば活性汚泥を含む2本の水流32、32′を
図1の左右の第3案内板28のそれぞれの供給口27から供給する。これらの水流のうち左方の水流32は、第3スペーサー26の円孔25を通って第2案内板24の通孔23に達し、ここで
図3に示したように左右に分かれてこの通孔23の両側の縦方向の溝に供給される。これらの水流は第2スペーサー22の切り欠き21を通って第1案内板18の両切り込み19の先端部に供給される。両水流はこの切り込み19の先端部から旋回流形成孔20にその接線方向から高速供給され、第1スペーサー16の円孔17から旋回内筒14内に達し、旋回内筒14の内壁に沿って気泡33を有する旋回流34を形成する。
【0030】
この旋回流34は前記内筒14先端の噴出部13に達し、半球状内壁に接触しながら速度を速めながら、前記噴出孔15から他方の噴出孔15′に向けて噴出する。
右方の供給口27から供給された水流も同様にして旋回流として噴出孔15′に達し、噴出孔15′から他方の噴出孔15に向けて噴出する。
左右の旋回流34は直線状の水流として、内筒14内の両噴出孔15、15′の中間で衝突する。この衝突の衝撃は2本の旋回流34の速度の倍になるのではなく、指数級数的に増大する。従って両水流中に含まれる気泡33は水流衝突による衝撃で微細化し、同時に前記粉粒体も微細化する。
【0031】
更に図示の例とは異なり、半球状の噴出部13以外の内筒14の内壁を噴出部13方向に向けて内向き傾斜させて噴出孔15、15′から噴出する水流の速度を増大させても良い。
なお前述の邪魔板5は使用しなくても良く、邪魔板により生成する微細化物含有水の装置内での滞留を促進するのとは逆に、微細化物含有水取出口7からポンプ等で吸引して微細化物含有水の取出しを促進しても良い。
【0032】
図4は、
図1〜3に例示した微細化物含有水製造装置を湖沼に設置した例を示す概略図である。
図示の例では、
図1に示した微細化物含有水製造装置41を湖沼42の底面43に設置してある。湖沼水には、藻や河川から流れ込んだ汚濁物質が含まれている。
湖沼の水面44には筏45を浮かべてあり、この筏45には水流生成ポンプ46が搭載されている。このポンプ46には湖沼水汲上げ管47と水流供給管48が接続され、当該水流供給管48の先端は分岐されて、前記装置41の左右1対の気泡水流の供給口27に接続されている。
【0033】
前記ポンプ46を作動させると、湖沼水汲上げ管47から湖沼水を汲み上げて空気の気泡を含有する気液混合水とし、前記水流供給管48を通して前記装置41の供給口27に供給する。当該両供給口27に供給された2本の水流は、
図1と同様にして互いに衝突して多数の微細気泡35を形成するとともに、前記汚濁物質を微細化した微細化物含有水を生成し、これを微細化物含有水循環口49から湖沼42中に循環させる。この微細化物含有水は湖沼水中の汚濁物質を微細化して分解を促進するとともに富化酸素を供給して湖沼水の酸化殺菌を行い、更に湖沼水全体を攪拌する。
【0034】
これにより湖沼水の浄化を実施できる。この浄化作業で必要中エネルギーはポンプ駆動のためのエネルギーのみであり、前記筏45にソーラーパネルや風力発電機を積んでおき、これらで発生するエネルギーをポンプ駆動エネルギーとして使用すると、人為的なエネルギーなしに湖沼水の浄化を達成できる。
本装置は常時作動させる必要はなく、間欠的に運転させても良い。特に得られる水力及び風力エネルギーが常時作動に不足する場合は、間欠運転とすることが好ましい。
又図示の例と異なり、ポンプを湖底に沈めずに筏45の上に設置し、このポンプに湖沼水を供給して微細化物含有水を生成し、この溶解水を筏の板の間から湖沼に噴出させても良い。
【0035】
図5は、本発明に係る微細化物含有水製造装置の他の例を示す部分縦断面図、
図6は、
図5の平面図、
図7は
図5のA−A線縦断側面図である。
外形が直方体状の微細化物含有水製造装置51は、中央部の装置本体52とその両側面に固定された1対の端面部材53から成っている。装置本体52の高さ方向の中央やや上部には当該装置本体52を横方向に貫通する旋回内筒取付孔54が、又前記装置本体52の下部近傍には当該装置本体52を横方向に貫通する水流供給用通孔55がそれぞれ形成されている。
前記旋回内筒取付孔54の中央上面には、微細化物含有水取出口56が穿孔されている。前記水流供給孔55の中央には外側(
図5の前後)に向けて1対の水流供給口57が穿孔されている。
【0036】
前記装置本体52の左右両端の外周近傍には長円形の段部58が形成されている。
先端側が半球状の噴出部59として成形された円筒状の旋回内筒60基端部外縁に溶接されかつ前記段部58の内方形状と同じ外形を有するよう成形された内筒取付板(フランジ)61が接合され、更に前記噴出部59先端中央には小径の噴出孔62が形成されている。
前記内筒取付板61には、旋回内筒60の基端の開口と同じ径の円孔63を有するパッキン64が密着している。このパッキン64の外面には、前記旋回内筒取付孔54の空間と前記水流供給孔55の空間を連結する凹部65が内面に形成された前記端面部材53が密着し、前記装置本体52、前記内筒取付板61、前記パッキン63及び前記端面部材53が複数のボルト66で締着され一体化している。
【0037】
前記凹部65内の空間は、
図7に示すように、前記水流供給孔55から前記水流供給孔55を経て供給される水流を、
図7の左右に分流するように構成され、更に分流された水流を上方向に導く第1導管67を第2導管68を有している。第1導管67はその中の水流を前記旋回内筒60の上縁部に接線方向から供給できるよう成形され、第2導管68はその中の水流を前記旋回内筒60の下縁部に接線方向から供給できるよう成形されている。なお両導管67、68の前記旋回内筒60との接続部は先細状として旋回内筒60へ供給される水流が加速されるようにしている。
【0038】
旋回内筒60に供給された粉粒体を有する水流は
図1〜3の装置の場合と同様にして旋回内筒60の内壁に沿って気泡33と粉粒体を有する旋回流34を形成し、更に前記噴出孔62から他方の噴出孔に向けて噴出し、他方の水流と衝突し、水流衝突による衝撃で水流中の気泡は更に微細化し、粉粒体は微細化する。
図8は、本発明に係る微細化物含有水製造装置の更に他の例を示す分解斜視図である。 外形が直方体状の微細化物含有水製造装置71は、中央部の装置本体72とその両側面に固定された左右各3対の第1案内板73、第2案内板74及び第3案内板75、及び第3案内板75に接触する左右1対の端面部材76から成っている。
【0039】
前記第1案内板73には、上部の第1補助孔77と下部の第1微細化物含有流供給孔78が形成されている。前記第2案内板74には、第2補助孔79と下部の第2微細化物含有流供給孔80が形成されている。前記第3案内板75には、第3補助孔81と下部の第3微細化物含有流供給孔82が形成されている。前記第2案内板74の第2補助孔78には、
図5及び6と同じ構成の旋回内筒83の基端部が嵌合されている。左右両端の端面部材76には内側に面した微細化物含有流供給溝84が形成され、この溝84は、下端中央が前記第3微細化物含有流供給孔82に連結され、前後方向に延びた後、上向きに折り曲げられ、再度内向きに折り曲げられて、前記第3補助孔81に接線方向から連結されている。
【0040】
装置本体72の前面及び後面のそれぞれ中央下部には微細化物含有流供給口85が、それぞれ本体72の上面には、微細化物含有水取出(噴出)口86が設置されている。
前記第1〜第3微細化物含有流供給孔は、微細化物含有流供給路を形成し、前記微細化物含有流供給孔85から供給される微細化物含有流を、前記微細化物含有流供給路から端面部材76へ供給する。ここで微細化物含有流は、前記溝84に沿って第3補助孔81に接線方向から供給されて、第3案内板81の第3補助孔81から前記旋回内筒83内壁に向けて旋回流を形成する。
この旋回流は前記旋回内筒83の先端の半球部の噴出孔から噴出し、両噴出孔から噴出する微細化物含有流が衝突して衝撃を生じさせ、前述した通り、微細化物含有水が得れ、この微細化物含有水が取出(噴出)口86から取り出される。
【0041】
図9は、本発明に係る微細化物含有水製造装置の更に他の例を示す縦断面図、
図10は、
図9の装置の分解斜視図である。
【0042】
横向き円筒形の筒形本体91はその上面中央に円孔が形成され、微細化物含有水取出口92を構成している。この取出口92には図示を省略したが、例えば通孔を有する邪魔板を位置させても良い。
【0043】
前記筒形本体91の両端縁部には、中央の円孔93と周縁部の複数のボルト孔94と下部の水流供給孔95を有する2枚の第1円形パッキン96がそれぞれ当接している。この2枚の第1円形パッキン96のそれぞれには同じ位置に円孔93とボルト孔94と水流供給孔95を有する供給管設置用円盤97が当接し、各円盤97の円孔93には、先端側が半球状の噴出部98として成形された円筒状の供給管(旋回内筒)99のそれぞれの基端部外縁が接合され、更に前記噴出部8先端中央には小径の噴出孔100が形成されている。なお両噴出部98の両噴出孔100の孔径を同一にしたが、孔径を異ならせても良い。 この供給管設置用円盤97が前記第1円形パッキン96と当接することにより、前記供給管99が前記筒形本体91内の円筒形の空間101に位置するよう構成されている。
【0044】
前記供給管設置用円盤97の外面側には、前記第1円形パッキン96と同一構成の第2円形パッキン102が当接している。
この第2円形パッキン102には、円盤状の蓋体103が当接し、前記ボルト孔94にボルト104を貫通させ締着することにより、前記筒形本体91と、両側の蓋体103を一体化している。当該蓋体103の内面側には、
図10の例では3個の先端が細く成形された円弧状の案内片105が突出形成されている。
【0045】
前記筒形本体91の中央下面には、上向きに水流供給口106が穿孔され、この水流供給口106は筒形本体91の内壁内で左右に分岐し、前記蓋体103に向かう水流供給路107を形成している。
前記蓋体103内の空間は前記供給管99内と連通している。
【0046】
このような構成を有する微細化物含有水製造装置による微細化物含有水製造の要領を説明する。
粉粒体を含む水流108を水流供給口106から筒形本体91の内壁内に供給する。この水流108は水流供給路107に達して左右に分岐し、この分岐流109はそれぞれ水流供給路107内を左右の蓋体103に向かって流れ、蓋体103内で前記案内片105の外形表面に案内されて螺旋状に流れながら、前記供給管99内に進入する。この水流は気泡110と前記粉粒体を含み、供給管99内面に沿って高速の旋回流111として進行する。
【0047】
この旋回流111は前記供給管99先端の噴出部98に達し、半球状内壁に接触し速度を速めながら、前記噴出孔100から筒形本体91の空間101に向けて噴出する。噴出時の旋回流111には外向きの力が加わっており、噴出孔100もある程度の大きさを有するため、旋回流111は他方の噴出孔100に向かうだけでなく、外側にも向かって放射状に噴出する。
左右の旋回流111は直線状や放射状の水流として、筒形本体91の空間101内の両噴出孔100の中間で衝突する。この衝突の衝撃は2本の旋回流111の速度の倍になるのではなく、指数級数的に増大する。従って両水流中に含まれる気泡110は水流衝突による衝撃で更に微細化し、かつ粉粒体も微細化する。
更に図示の例とは異なり、半球状の噴出部98以外の供給管99の内壁を噴出部98方向に向けて内向き傾斜させて噴出孔100から噴出する水流の速度を増大させても良い。
【0048】
図11a〜cは、
図9及び10に例示した微細化物含有水製造装置の蓋体の他の例を示す概略図である。
図11aは蓋体103aの案内片105aの数を2とした例、
図11bは蓋体103bの案内片105bの数を4とした例、
図11cは蓋体103cの案内片105cの数を5として例である。
いずれの蓋体103a〜cを使用しても当該蓋体に供給された水流が案内片の外形表面に沿って螺旋状に進行して旋回流を生成させるが、案内片の数の多い
図11cの蓋体103cで最も効率良く旋回流が生成する。
【0049】
図12は、本発明に係る微細化物含有水製造装置にタンクレスラインを接続した例を示す部分縦断面図である。
微細化物含有水製造装置121の微細化物含有水取出口122に接続された補助管123の他端側に、タンクレスライン124が接続されている。このタンクレスライン124は、オイルバス125内に収容され、図示の例では3回折り返されている。このオイルバス125内には、電熱線126が収容され、オイルバス125内のオイルを加熱している。
この微細化物含有水製造装置121に、例えば比較的径の大きい粉粒状の汚染物質を含む排水を供給し、前述の通りノズルから噴出させ衝突させると、汚染物質が微細化して表面積が増大するとともに、空気がナノバブルとして排水中に溶解する。このナノバブルが排水に接触して汚染物質を分解する。又微細化した汚染物質にナノバブルが付着して浮上するため、汚染物質の浮上分離が可能になる。
次いでこの排水は微細化物含有水取出口122からタンクレスライン124に導かれる。
タンクレスライン124内は高温高圧に維持されているため、排水中のナノバブルが汚染物質と更に効率良く反応して汚染物質がほぼ完全に除去され、より以上の処理を行うことなく放流できる。
前記タンクレスライン124は折り返されているため、コンパクト化されていて、僅かな設置面積で排水処理を実施できる。