(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-44735(P2015-44735A)
(43)【公開日】2015年3月12日
(54)【発明の名称】誘電体組成物及びこれを用いた積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
C04B 35/468 20060101AFI20150213BHJP
C01G 23/00 20060101ALI20150213BHJP
H01B 3/12 20060101ALI20150213BHJP
H01G 4/12 20060101ALI20150213BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20150213BHJP
【FI】
C04B35/46 D
C01G23/00 C
H01B3/12 303
H01G4/12 358
H01G4/30 301E
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-200345(P2014-200345)
(22)【出願日】2014年9月30日
(62)【分割の表示】特願2012-279670(P2012-279670)の分割
【原出願日】2012年12月21日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0108744
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カン、サン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドー ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、チャン ハク
【テーマコード(参考)】
4G031
4G047
5E001
5E082
5G303
【Fターム(参考)】
4G031AA04
4G031AA05
4G031AA06
4G031AA07
4G031AA08
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4G031AA12
4G031AA32
4G031BA09
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4G047CA05
4G047CA07
4G047CB05
4G047CC02
4G047CD03
4G047CD08
5E001AB03
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
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5E001AE05
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5G303AA01
5G303AA10
5G303AB01
5G303AB05
5G303BA12
5G303CA01
5G303CB03
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5G303CB25
5G303CB26
5G303CB32
5G303CB35
5G303CB39
5G303CB40
(57)【要約】
【課題】本発明は、誘電体組成物及びこれを用いた積層セラミック電子部品に関する。
【解決手段】本発明は、ABO
3で表現されるペロブスカイト構造を有する誘電体グレインを含み、上記誘電体グレインの中心からグレイン境界(grain boundary)方向に仮想の直線を引いたとき、上記誘電体グレインの中心から0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量がBサイトを占めるイオン100at%に対して0.5〜2.5at%である誘電体組成物を提供する。本発明による誘電体組成物を用いた積層セラミック電子部品は、信頼性に優れ、且つ高い誘電率を確保することができる効果がある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ABO3で表現されるペロブスカイト構造を有する誘電体グレインを含み、前記誘電体グレインの中心からグレイン境界(grain boundary)方向に仮想の直線を引いたとき、前記誘電体グレインの中心から前記グレイン境界までの距離を1としたときに、前記誘電体グレインの中心からの距離が0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量はBサイトを占めるイオン100at%に対して0.5〜2.5at%である、誘電体組成物。
【請求項2】
前記誘電体グレインの中心から0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量は、前記誘電体グレインの中心での希土類元素の含量に対して0.05〜2.0倍である、請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項3】
前記Aは、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)及びカルシウム(Ca)からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項1または2に記載の誘電体組成物。
【請求項4】
前記Bは、チタニウム(Ti)及びジルコニウム(Zr)からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項1から3の何れか1項に記載の誘電体組成物。
【請求項5】
前記希土類元素は、3価イオンを含む、請求項1から4の何れか1項に記載の誘電体組成物。
【請求項6】
前記希土類元素は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテニウム(Lu)からなる群から選択された一つ以上である、請求項1から5の何れか1項に記載の誘電体組成物。
【請求項7】
前記誘電体グレインは、BamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1−XCax)m(Ti1−yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1−xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)又は前記希土類元素のうち一つ又はそれ以上が一部固溶されたBamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1−XCax)m(Ti1−yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1−xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項1から6の何れか1項に記載の誘電体組成物。
【請求項8】
平均厚さが0.48μm以下の誘電体層を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体内で前記誘電体層を介して対向するように配置される内部電極と、
を含み、
前記誘電体層は、請求項1から7の何れか1項に記載の誘電体組成物を含む、積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記誘電体層の誘電率は4000以上である、請求項8に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電特性及び電気的特性に優れた誘電体組成物及びこれを用いた積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト粉末は、強誘電体セラミック材料で、積層セラミックキャパシタ(MLCC)、セラミックフィルター、圧電素子、強誘電体メモリ、サーミスタ(thermistor)、バリスター(varistor)などの電子部品の原料として用いられている。
【0003】
チタン酸バリウム(BaTiO
3)は、ペロブスカイト構造を有する高誘電率物質で、積層セラミックキャパシタの誘電体材料として用いられている。
【0004】
近年、電子部品産業の軽薄短小化、高容量化、高信頼性化等の傾向に伴い、強誘電体粒子には小サイズと優れた誘電率及び信頼性が求められている。
【0005】
誘電体層の主成分であるチタン酸バリウム粉末の粒径が大きいと、誘電体層の表面粗さの増加によってショート率増加及び絶縁抵抗不良の問題が発生する可能性がある。
【0006】
これにより、主成分であるチタン酸バリウム粉末の微粒化が求められている。
【0007】
しかしながら、チタン酸バリウム粉末が微粒化され、積層セラミック電子部品の誘電体層の厚さが薄くなるにつれ、容量低下、ショート不良及び信頼性不良等の問題をもたらす可能性がある。
【0008】
これにより、誘電体層の誘電率を確保し且つ信頼性に優れた積層セラミック電子部品の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】日本特開2008−239407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、誘電特性及び電気的特性に優れた誘電体組成物及びこれを用いた積層セラミック電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、ABO
3で表現されるペロブスカイト構造を有する誘電体グレインを含み、上記誘電体グレインの中心からグレイン境界(grain boundary)方向に仮想の直線を引いたとき、上記誘電体グレインの中心から0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量はBサイトを占めるイオン100at%に対して0.5〜2.5at%である誘電体組成物を提供する。
【0012】
上記誘電体グレインの中心から0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量は、上記誘電体グレインの中心での希土類元素の含量に対して0.05〜2.0倍であることができる。
【0013】
上記Aは、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)及びカルシウム(Ca)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0014】
上記Bは、チタニウム(Ti)及びジルコニウム(Zr)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0015】
上記希土類元素は、3価イオンを含むことができる。
【0016】
上記希土類元素は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテニウム(Lu)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0017】
上記誘電体グレインは、Ba
mTiO
3(0.995≦m≦1.010)、(Ba
1−XCa
x)
m(Ti
1−yZr
y)O
3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Ba
m(Ti
1−xZr
x)O
3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)又は上記希土類元素のうち一つ又はそれ以上が一部固溶されたBa
mTiO
3(0.995≦m≦1.010)、(Ba
1−XCa
x)
m(Ti
1−yZr
y)O
3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Ba
m(Ti
1−xZr
x)O
3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0018】
本発明の他の実施形態は、平均厚さが0.48μm以下の誘電体層を含むセラミック本体と、上記セラミック本体内で上記誘電体層を介して対向するように配置される内部電極と、を含み、上記誘電体層はABO
3で表現されるペロブスカイト構造を有する誘電体グレインを含み、上記誘電体グレインの中心からグレイン境界(grain boundary)方向に仮想の直線を引いたとき、上記誘電体グレインの中心から0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量はBサイトを占めるイオン100at%に対して0.5〜2.5at%である誘電体組成物を含む積層セラミック電子部品を提供する。
【0019】
上記誘電体グレインの中心から0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量は、上記誘電体グレインの中心での希土類元素の含量に対して0.05〜2.0倍であることができる。
【0020】
上記Aは、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)及びカルシウム(Ca)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0021】
上記Bは、チタニウム(Ti)及びジルコニウム(Zr)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0022】
上記希土類元素は、3価イオンを含むことができる。
【0023】
上記希土類元素は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテニウム(Lu)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0024】
上記誘電体層の誘電率は4000以上であることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明による誘電体組成物を用いた積層セラミック電子部品は、信頼性に優れ、且つ高い誘電率を確保することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態によるコア‐シェル構造の誘電体グレインを概略的に示す概略図である。
【
図3】本発明の他の実施形態による積層セラミックキャパシタを概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態によるコア‐シェル構造の誘電体グレインを概略的に示す概略図である。
【0029】
図2は、
図1のS領域の拡大図である。
【0030】
図1及び
図2を参照すると、本発明の一実施形態による誘電体組成物はABO
3で表現されるペロブスカイト構造を有する誘電体グレイン10を含み、上記誘電体グレインの中心cからグレイン境界(grain boundary)b方向に仮想の直線を引いたとき、上記誘電体グレインの中心cから0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量はBサイトを占めるイオン100at%に対して0.5〜2.5at%であることができる。
【0031】
以下では、本発明の一実施形態による誘電体組成物について詳細に説明する。
【0032】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、ABO
3で表現されるペロブスカイト構造を有する誘電体グレイン10を含むことができる。
【0033】
また、上記Aは、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)及びカルシウム(Ca)からなる群から選択された一つ以上を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0034】
上記Bは、特に制限されず、上記ペロブスカイト構造においてBサイトに位置できる物質であれば良く、例えば、チタニウム(Ti)及びジルコニウム(Zr)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0035】
上記誘電体グレインは、Ba
mTiO
3(0.995≦m≦1.010)、(Ba
1−XCa
x)
m(Ti
1−yZr
y)O
3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Ba
m(Ti
1−xZr
x)O
3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)又は上記希土類元素のうち一つ又はそれ以上が一部固溶されたBa
mTiO
3(0.995≦m≦1.010)、(Ba
1−XCa
x)
m(Ti
1−yZr
y)O
3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Ba
m(Ti
1−xZr
x)O
3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)からなる群から選択された一つ以上を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0036】
一般に、誘電体組成物に含まれる誘電体グレインが微粒化され、これを用いた積層セラミック電子部品の誘電体層の厚さが薄くなるにつれ、ショート不良及び信頼性不良等の問題をもたらす可能性がある。
【0037】
また、微粒化された誘電体粉末を用いたスラリー製造の際に分散が困難であるという問題があり、これにより、上記誘電体組成物を用いて製造された積層セラミック電子部品の信頼性が低下するという問題がある。
【0038】
上記の信頼性低下問題を改善するためには、希土類元素が完全固溶されたペロブスカイト構造を有する酸化物を母材とする誘電体グレインを用いることが好ましい。
【0039】
即ち、積層セラミック電子部品の誘電体層の厚さが薄くなるにつれて発生するショート不良及び信頼性不良等の問題を解決するためには、ペロブスカイト構造を有する誘電体グレイン内部の希土類元素の含量分布を調節することが求められる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体グレインの中心cからグレイン境界(grain boundary)b方向に仮想の直線を引いたとき、上記誘電体グレインの中心cから0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量は、Bサイトを占めるイオン100at%に対して0.5〜2.5at%であることができる。
【0041】
上記誘電体グレイン10は、コア1‐シェル2構造を有することができる。
【0042】
上記希土類元素の含量は、上記誘電体グレインの中心からグレイン境界(grain boundary)方向に仮想の直線を引いたとき、上記誘電体グレインの中心から0.75〜0.95に該当する領域での含量であることができる。
【0043】
図1には、上記誘電体グレインの中心からグレイン境界(grain boundary)方向に仮想の直線を引いたときの上記誘電体グレインの中心から0.75〜0.95に該当する領域を示している。
【0044】
上記誘電体グレインの中心からグレイン境界(grain boundary)方向への仮想の直線は、例えば、シェルが最も厚い領域の方に引くことがより好ましいが、特に制限されるものではない。
【0045】
上記希土類元素の含量がBサイトを占めるイオン100at%に対して0.5〜2.5at%を満足するように調節することにより、上記誘電体グレインを含む誘電体組成物を用いた積層セラミック電子部品のショート不良及び信頼性不良等の問題を解決することができる。
【0046】
上記希土類元素の含量がBサイトを占めるイオン100at%に対して0.5at%未満の場合は、従来のコア‐シェル構造と同じ形態を有することになるため、信頼性改善効果が得られない。
【0047】
また、上記希土類元素の含量がBサイトを占めるイオン100at%に対して2.5at%を超える場合は、所望の高誘電率が得られないという問題がある。
【0048】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体グレイン10の中心から0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量は、上記誘電体グレインの中心cでの希土類元素の含量に対して0.05〜2.0倍であることができる。
【0049】
上記誘電体グレイン10の中心から0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量を上記誘電体グレインの中心cでの希土類元素の含量に対して0.05〜2.0倍に調節することにより、高誘電率を確保すると共に信頼性に優れた積層セラミック電子部品を具現することができる。
【0050】
上記誘電体グレイン10の中心から0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量が上記誘電体グレインの中心cでの希土類元素の含量に対して0.05倍未満の場合は、信頼性向上効果が得られない。
【0051】
上記誘電体グレイン10の中心から0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量が上記誘電体グレインの中心cでの希土類元素の含量に対して2.0倍を超える場合は、所望の高誘電率が得られない。
【0052】
上記誘電体グレインの中心cでの希土類元素の含量は、特に制限されず、例えば、Bサイトを占めるイオン100at%に対して0.05〜2.0at%であることができる。
【0053】
上記希土類元素は、3価イオンを含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0054】
上記希土類元素は、特に制限されず、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテニウム(Lu)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0055】
本発明の一実施形態による誘電体組成物に含まれる誘電体グレインは、下記の方法により製造されることができる。
【0056】
ペロブスカイト粉末はABO
3の構造を有する粉末で、本発明の一実施形態では、上記金属酸化物がBサイト(site)に該当する元素供給源であり、上記金属塩がAサイト(site)に該当する元素の供給源である。
【0057】
まず、金属塩と金属酸化物を混合してペロブスカイト粒子核を形成させることができる。
【0058】
上記金属酸化物は、チタニウム(Ti)又はジルコニウム(Zr)からなる群から選択された一つ以上であることができる。
【0059】
チタニアとジルコニアの場合、加水分解が非常に容易であるため、別途の添加剤なしに純水と混合すると、含水チタニウム、含水ジルコニウムがゲル状に沈殿される。
【0060】
上記含水形態の金属酸化物を洗浄して不純物を除去することができる。
【0061】
より具体的には、上記含水金属酸化物を加圧でフィルターして残留溶液を除去し、純水を注ぎながらフィルタリングすることにより粒子の表面に存在する不純物を除去することができる。
【0062】
次に、上記含水金属酸化物に純水と酸又は塩基を添加することができる。
【0063】
フィルター後に得られた含水金属酸化物粉末に純水を入れて高粘度攪拌機で攪拌し、0℃〜60℃で0.1〜72時間維持して含水金属酸化物スラリーを製造することができる。
【0064】
製造したスラリーに酸や塩基を加えることができる。上記酸や塩基は解こう剤として用いられ、含水金属酸化物の含量に対して0.00001〜0.2モルで添加することができる。
【0065】
上記酸は一般的なものであれば特に制限されず、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、蟻酸、酢酸、ポリカルボキシ酸等があり、これらを単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0066】
上記塩基は一般的なものであれば特に制限されず、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又はテトラエチルアンモニウムヒドロキシド等があり、これらを単独又は混合して用いることができる。
【0067】
上記金属塩は、水酸化バリウム又は水酸化バリウムと希土類塩の混合物であることができる。
【0068】
上記希土類塩としては、特に制限されず、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、又はルテニウム(Lu)等を用いることができる。
【0069】
上記ペロブスカイト粒子核を形成させる段階は60℃〜150℃で行われることができる。
【0070】
次に、上記ペロブスカイト粒子核を水熱反応器に投入し水熱処理して水熱反応器内で粒成長させることができる。
【0071】
次に、上記水熱反応器内に金属塩水溶液を高圧ポンプを用いて投入して混合液を製造し上記混合液を加熱することによりABO
3で表現されるペロブスカイト構造を有する誘電体グレインが得られる。
【0072】
上記金属塩水溶液は、特に制限されず、例えば、硝酸塩及び酢酸塩からなる群から選択された一つ以上であることができる。
【0073】
図3は、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを概略的に示す斜視図である。
【0074】
図4は、
図3のB‐B'線に沿う断面図である。
【0075】
図3及び
図4を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品としての積層セラミックキャパシタ100は、平均厚さが0.48μm以下の誘電体層11を含むセラミック本体110と、上記セラミック本体110内で上記誘電体層11を介して対向するように配置される内部電極21、22と、を含み、上記誘電体層11はABO
3で表現されるペロブスカイト構造を有する誘電体グレイン10を含み、上記誘電体グレインの中心cからグレイン境界(grain boundary)b方向に仮想の直線を引いたとき、上記誘電体グレインの中心cから0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量はBサイトを占めるイオン100at%に対して0.5〜2.5at%である誘電体グレインを含むことができる。
【0076】
以下、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品について説明するにあたり、特に、積層セラミックキャパシタを例に挙げて説明するが、これに制限されるものではない。
【0077】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタにおいて、「長さ方向」は
図1の「L方向」、「幅方向」は「W方向」、「厚さ方向」は「T方向」と定義する。ここで、「厚さ方向」は誘電体層を積み上げる方向、即ち、「積層方向」と同じ概念として用いる。
【0078】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層11を形成する原料は、十分な静電容量が得られるものであれば特に制限されず、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)粉末であることができる。
【0079】
上記チタン酸バリウム(BaTiO
3)粉末を用いて製造された積層セラミックキャパシタは、常温誘電率が高く、絶縁抵抗及び耐電圧特性に非常に優れるため信頼性が向上することができる。
【0080】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタは、上記誘電体グレインの中心cからグレイン境界(grain boundary)b方向に仮想の直線を引いたとき、上記誘電体グレインの中心cから0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量がBサイトを占めるイオン100at%に対して0.5〜2.5at%である誘電体グレインを含むことにより、常温誘電率が高く、絶縁抵抗及び耐電圧特性に非常に優れるため信頼性が向上することができる。
【0081】
上記誘電体層11を形成する材料としては、チタン酸バリウム(BaTiO
3)等のパウダーに本発明の目的に応じて多様なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤等が添加されたものを用いることができる。
【0082】
上記誘電体層11の平均厚さは、特に制限されず、例えば、0.48μm以下であることができる。
【0083】
本発明の一実施形態による誘電体組成物は、上記のように誘電体層11の平均厚さが0.48μm以下の場合にさらに優れた効果を示す。即ち、上記誘電体組成物を用いた積層セラミックキャパシタの誘電体層の平均厚さが0.48μm以下の場合に信頼性に優れるという効果がある。
【0084】
また、上記誘電体層11の誘電率は、特に制限されず、例えば、4000以上であることができる。
【0085】
それ以外の特徴は上述した本発明の一実施形態による誘電体グレインの特徴と重複するため、ここでは省略する。
【0086】
上記第1及び第2の内部電極21、22を形成する材料は特に制限されず、例えば、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)のうち一つ以上の物質からなる導電性ペーストを用いて上記第1及び第2の内部電極を形成することができる。
【0087】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタは、上記第1の内部電極21と電気的に連結された第1の外部電極31、及び上記第2の内部電極22と電気的に連結された第2の外部電極32をさらに含むことができる。
【0088】
上記第1及び第2の外部電極31、32は静電容量形成のために上記第1及び第2の内部電極21、22と電気的に連結され、上記第2の外部電極32は上記第1の外部電極31と異なる電位に連結されることができる。
【0089】
上記第1及び第2の外部電極31、32は、静電容量形成のために上記第1及び第2の内部電極21、22と電気的に連結されることができる材質であれば特に制限されず、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)及び銀‐パラジウム(Ag‐Pd)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0090】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明がこれに制限されるものではない。
【0091】
本発明の実施例では、ABO
3で表現されるペロブスカイト構造を有する誘電体グレインを含み、上記誘電体グレインの中心からグレイン境界(grain boundary)方向に仮想の直線を引いたとき、上記誘電体グレインの中心から0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量がBサイトを占めるイオン100at%に対して0.5〜2.5at%である誘電体組成物を製作した。
【0092】
比較例では、同一組成の誘電体グレインを含む誘電体組成物を製作するにあたり、上記のような本発明の数値範囲を外れるように製作したことを除いては、上記実施例と同一に製作した。
【0093】
下記の表1は、誘電体グレインの位置別希土類元素の含量による静電容量及び誘電損失を比較したものである。
【0094】
上記静電容量及び誘電損失の評価は、LCR meterを用いて上記誘電体組成物を熱処理して1時間が経過した後に1kHz、0.5Vで測定する方式で行われ、信頼性の評価は、130℃、8V、4時間の条件で40個の試料に対して不良個数を測定する方式で行われた。
【0095】
上記静電容量は最小容量として2.68を基準に試料の容量を測定して良好と不良を区分した。
【0097】
上記表1を参照すると、試料1、3〜7、9、10、12〜14及び16は、本発明の数値範囲を満足する誘電体グレインを用いて製作した積層セラミックキャパシタであり、静電容量も高く、信頼性にも優れることが分かる。
【0098】
これに対し、試料2、8、11、15及び17は、本発明の数値範囲を外れるものであり、静電容量又は/及び信頼性に問題があることが分かる。
【0099】
以上のことから、本発明の他の実施形態による積層セラミックキャパシタは、ABO
3で表現されるペロブスカイト構造を有する誘電体グレインを含み、上記誘電体グレインの中心からグレイン境界(grain boundary)方向に仮想の直線を引いたとき、上記誘電体グレインの中心から0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量がBサイトを占めるイオン100at%に対して0.5〜2.5at%である誘電体組成物を含むことにより、常温誘電率が高く、高容量及び信頼性に非常に優れることが分かる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0101】
1 コア
2 シェル
10 誘電体グレイン
11 誘電体層
21 第1の内部電極
22 第2の内部電極
31、32 第1及び第2の外部電極
100 積層セラミックキャパシタ
110 セラミック本体
c 誘電体グレインの中心
b 誘電体グレインの境界
【手続補正書】
【提出日】2014年10月1日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ABO3で表現されるペロブスカイト構造を有する誘電体グレインを含み、前記誘電体グレインの中心での希土類元素の含量はBサイトを占めるイオン100at%に対して0.05〜2.0at%であり、前記誘電体グレインの中心からグレイン境界(grain boundary)方向に仮想の直線を引いたとき、前記誘電体グレインの中心から前記グレイン境界までの距離を1としたときに、前記誘電体グレインの中心から0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量は、前記誘電体グレインの中心での希土類元素の含量に対して0.5〜2.0倍である、誘電体組成物。
【請求項2】
前記Aは、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)及びカルシウム(Ca)からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項3】
前記Bは、チタニウム(Ti)及びジルコニウム(Zr)からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項1又は2に記載の誘電体組成物。
【請求項4】
前記希土類元素は、3価イオンを含む、請求項1から3の何れか1項に記載の誘電体組成物。
【請求項5】
前記希土類元素は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテニウム(Lu)からなる群から選択された一つ以上である、請求項1から4の何れか1項に記載の誘電体組成物。
【請求項6】
前記誘電体グレインは、BamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1−XCax)m(Ti1−yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1−xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)又は前記希土類元素のうち一つ又はそれ以上が一部固溶されたBamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1−XCax)m(Ti1−yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1−xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項1から5の何れか1項に記載の誘電体組成物。
【請求項7】
平均厚さが0.48μm以下の誘電体層を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体内で前記誘電体層を介して対向するように配置される内部電極と、
を含み、
前記誘電体層は、請求項1から6の何れか1項に記載の誘電体組成物を含む、積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記誘電体層の誘電率は4000以上である、請求項7に記載の積層セラミック電子部品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明の一実施形態は、ABO
3で表現されるペロブスカイト構造を有する誘電体グレインを含み、
上記誘電体グレインの中心での希土類元素の含量はBサイトを占めるイオン100at%に対して0.05〜2.0at%であり、上記誘電体グレインの中心からグレイン境界(grain boundary)方向に仮想の直線を引いたとき、上記誘電体グレインの中心から0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量は
上記誘電体グレインの中心での希土類元素の含量に対して0.5〜2.0倍である誘電体組成物を提供する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
本発明の他の実施形態は、平均厚さが0.48μm以下の誘電体層を含むセラミック本体と、上記セラミック本体内で上記誘電体層を介して対向するように配置される内部電極と、を含み、上記誘電体層はABO
3で表現されるペロブスカイト構造を有する誘電体グレインを含み、
上記誘電体グレインの中心での希土類元素の含量はBサイトを占めるイオン100at%に対して0.05〜2.0at%であり、上記誘電体グレインの中心からグレイン境界(grain boundary)方向に仮想の直線を引いたとき、上記誘電体グレインの中心から0.75〜0.95に該当する領域での希土類元素の含量は
上記誘電体グレインの中心での希土類元素の含量に対して0.5〜2.0倍である誘電体組成物を含む積層セラミック電子部品を提供する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0096
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0096】
【表1】
*:比較例