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特開2015-44911クラム脱水工程用喰込み性改良剤及びゴム状重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-44911(P2015-44911A)
(43)【公開日】2015年3月12日
(54)【発明の名称】クラム脱水工程用喰込み性改良剤及びゴム状重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/28 20060101AFI20150213BHJP
   C08C 3/00 20060101ALI20150213BHJP
【FI】
   C08G65/28
   C08C3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-175751(P2013-175751)
(22)【出願日】2013年8月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】田中 優己
(72)【発明者】
【氏名】宮田 努
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA12
4J005AA21
(57)【要約】
【課題】
クラム脱水工程において、喰込み性に優れ、短時間に脱水できるクラム脱水工程用喰込み改良剤を提供することである。
【解決手段】
一般式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物(a)を含有してなることを特徴とするクラム脱水工程用喰込み性改良剤を用いる。

{H(OA)n-}m Q (1)

Qは3〜6価のアルコール又は非還元性の二糖類若しくは三糖類の水酸基からm個の水素原子を除いた反応残基、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは1〜100の整数、mは1〜6の整数を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物(a)を含有してなることを特徴とするクラム脱水工程用喰込み性改良剤。

{H(OA)n-}m Q (1)

Qは3〜6価のアルコール又は非還元性の二糖類若しくは三糖類の水酸基からm個の水素原子を除いた反応残基、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは1〜100の整数、mは1〜6の整数を表す。
【請求項2】
請求項1に記載されたクラム脱水工程用喰込み性改良剤の存在下で、ゴム状重合体及び有機溶媒からなる溶液又はスラリーにスチームを導入することにより有機溶媒をスチームストリッピングしてクラム分散体を得るストリッピング工程と、
クラム分散体を脱水してゴム状重合体からなるクラムを得る脱水工程とを含むことを特徴とするゴム状重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクラム脱水工程用喰込み性改良剤及びゴム状重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラム脱水工程用分散剤として、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアルケニールエーテル、ポリアルキレングリコールアルキルアリールエーテル、ポリアルキレングリコールアルケニールアリールエーテル、ポリアルキレングリコールポリアルキレンアリールエーテル、ポリアルキレングリコールポリアルケニーレンアリールエーテル、ポリオキシエチレンジ(オレイルフェニール)エーテル及びエチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドのブロック共重合体より成る群より選択される一種の化合物又は二種以上の混合物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭54−1741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の分散剤では、クラム脱水工程において、喰込み性が不十分であり、脱水に長時間を要するという問題がある。
本発明の目的は、クラム脱水工程において、喰込み性に優れ、短時間に脱水できるクラム脱水工程用喰込み性改良剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のクラム脱水工程用喰込み性改良剤の特徴は、一般式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物(a)を含有してなる点を要旨とする。
【0006】

{H(OA)n-}m Q (1)
【0007】
Qは3〜6価のアルコール又は非還元性の二糖類若しくは三糖類の水酸基からm個の水素原子を除いた反応残基、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは1〜100の整数、mは1〜6の整数を表す。
【0008】
本発明のゴム状重合体の製造方法の特徴は、上記のクラム脱水工程用喰込み性改良剤の存在下で、ゴム状重合体及び有機溶媒からなる溶液又はスラリーにスチームを導入することにより有機溶媒をスチームストリッピングしてクラム分散体を得るストリッピング工程と、
クラム分散体を脱水してゴム状重合体からなるクラムを得る脱水工程とを含む点を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のクラム脱水工程用喰込み性改良剤を用いると、クラム脱水工程において、クラムの脱水機への喰込み性に優れ、短時間に脱水できる。
【0010】
本発明のゴム状重合体の製造方法によると、上記のクラム脱水工程用喰込み性改良剤を用いるので、クラムの脱水機への喰込み性に優れ、短時間に脱水できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
反応残基(Q)を構成することができる3〜6価のアルコール及び非還元性の二糖類又は三糖類のうち、3価アルコールとしては、脂肪族トリオール、脂環式トリオール及び芳香族トリオールが含まれる。
脂肪族トリオールとしては、炭素数3〜6の脂肪族トリオールが含まれ、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールオクタン及びヘキサントリオール等が挙げられる。
【0012】
脂環式トリオールとしては、炭素数6〜15の脂環式トリオールが含まれ、トリヒドロキシシクロヘキサン、トリヒドロキシジシクロヘキサン及びトリヒドロキシジシクロへキシルジメチルメタン等が挙げられる。
【0013】
芳香族トリオールとしては、炭素数6〜15の芳香族トリオールが含まれ、トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシビフェニル及びトリヒドロキシジフェニルジメチルメタン等が挙げられる。
【0014】
4価アルコールとしては、脂肪族テトラオール、脂環式テトラオール及び芳香族テトラオールが含まれる。
脂肪族テトラオールとしては、炭素数5〜8の脂肪族テトラオールが含まれ、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン及びソルビタン等が挙げられる。
【0015】
脂環式テトラオールとしては、炭素数6〜15の脂環式テトラオールが含まれ、テトラヒドロキシシクロヘキサン、テトラヒドロキシジシクロヘキサン及びテトラヒドロキシジシクロへキシルジメチルメタン等が挙げられる。
【0016】
芳香族テトラオールとしては、炭素数6〜15の芳香族テトラオールが含まれ、テトラヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシビフェニル及びテトラヒドロキシジフェニルジメチルメタン等が挙げられる。
【0017】
5価アルコールとしては、脂肪族ペンタオール、脂環式ペンタオール及び芳香族ペンタオールが含まれる。
脂肪族ペンタオールとしては、炭素数9〜12の脂肪族ペンタオールが含まれ、トリグリセリン及びキシリトール等が挙げられる。
【0018】
脂環式ペンタオールとしては、炭素数6〜12の脂環式ペンタオールが含まれ、ペンタヒドロキシシクロヘキサン、ペンタヒドロキシジシクロへキサン、ペンタヒドロキシジシクロへキシルジメチルメタン及びヒドロキノン−β−D−グルコシド等が挙げられる。
【0019】
芳香族ペンタオールとしては、炭素数6〜15の芳香族ペンタオールが含まれ、ペンタヒドロキシベンゼン、ペンタヒドロキシビフェニル及びペンタヒドロキシジフェニルジメチルメタン等が挙げられる。
【0020】
6価アルコールとしては、脂肪族ヘキサオール、脂環式ヘキサオール及び芳香族ヘキサオールが含まれる。
脂肪族ヘキサオールとしては、炭素数6〜12の脂肪族ヘキサオールが含まれ、ソルビトール、テトラグリセリン及びジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0021】
脂環式ヘキサオールとしては、炭素数6〜15の脂環式ヘキサオールが含まれ、ヘキサヒドロキシシクロヘキサン、ヘキサヒドロキシジシクロヘキサン及びヘキサヒドロキシジシクロへキシルジメチルメタン等が挙げられる。
【0022】
芳香族テトラオールとしては、炭素数6〜15の芳香族ヘキサオールが含まれ、ヘキサヒドロキシベンゼン、ヘキサヒドロキシビフェニル及びヘキサヒドロキシジフェニルジメチルメタン等が挙げられる。
【0023】
反応残基(Q)を構成することができる3〜6価のアルコール及び非還元性の二糖類又は三糖類のうち、非還元性の二糖類又は三糖類としては、二つまたは三つの単糖がともにヘミアセタール水酸基によって結合している糖類が含まれ、蔗糖、トレハロース、ラフィノース及びゲンチアノース等が挙げられる。
【0024】
これらの3〜6価のアルコール又は非還元性の二糖類若しくは三糖類のうち、喰込み性の観点から、非還元性の二糖類又は三糖類が好ましく、さらに好ましくは蔗糖(微粉末化した精製ザラメ糖もしくはグラニュー糖等)である。
【0025】
反応残基(Q)は、3〜6価のアルコール又は非還元性の二糖類若しくは三糖類と炭素数2〜4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシド等)との反応により構成される反応残基等が含まれ、3〜6価のアルコール又は非還元性の二糖類若しくは三糖類の全ての水酸基が必ずしも反応に供するわけではなく(アルキレンオキシドの使用量が少ないときや、水酸基の化学構造環境の相違等)、3〜6価のアルコール又は非還元性の二糖類若しくは三糖類の水酸基の数とmとが必ずしも一致しない。
【0026】
炭素数2〜4のオキシアルキレン基(OA)としては、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン及びこれらの混合等が含まれる。これらのうち、喰込み性の観点から、オキシプロピレン、オキシプロピレンを含有する混合物及びオキシブチレンが好ましく、さらに好ましくはオキシプロピレン及びオキシプロピレンを含有する混合物である。
【0027】
n個のOAは、同じでも異なっていてもよく、また、m個のH(OA)nは同じでも異なっていてもよい。
【0028】
nは、1〜200の整数が好ましく、さらに好ましくは8〜150、特に好ましくは12〜100の整数である。この範囲であると喰込み性がさらに良好となる。
【0029】
(OA)n中に複数種類のオキシアルキレン基を含む場合、オキシアルキレンの順序は特に限定されず、ブロック状、ランダム状及びこれらの組合わせの何れでもよい。
【0030】
mは、1〜6の整数が好ましく、さらに好ましくは2〜4である。この範囲であると喰込み性がさらに良好となる。m及びnを乗じた数(OAの総数を意味する;m×n)は、喰込み性の観点から、1〜1200が好ましく、さらに好ましくは2〜600、特に好ましくは3〜300である。
【0031】
ポリオキシアルキレン化合物(a)の曇点(℃)は、10〜100が好ましく、さらに好ましくは20〜80℃である。この範囲であると、喰込み性がさらに良好となる。
【0032】
曇点は、ISO1065−1975(E)、「エチレンオキシド系非イオン界面活性剤−曇り点測定法」の中の「測定法B」に準じて測定される値である。すなわち、まず25重量%のブチルジグリコール(ブタノールのエチレンオキシド2モル付加物)水溶液に、測定試料を10重量%になるように溶解し、この測定試料溶液の約5ccを試験管に採り、試験管中に温度計を入れて攪拌しながら徐々に加熱するとついには試料溶液が白濁する。測定試料溶液が完全に白濁する温度を読みとり、これを曇点とするものである。
【0033】
ポリオキシアルキレン化合物(a)は公知の方法(特開2003−268291号公報、特開平9−117607号公報等)で製造できる。
【0034】
ポリオキシアルキレン化合物(a)としては、グリセリンのプロピレンオキシド/エチレンオキシド付加物、ジグリセリンのプロピレンオキシド付加物、ソルビトールのプロピレンオキシド/エチレンオキシド付加物、ソルビトールのプロピレンオキシド付加物、蔗糖のプロピレンオキシド付加物、蔗糖のプロピレンオキシド/ブチレンオキシド付加物、ラフィノースのプロピレンオキシド/ブチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールのプロピレンオキシド付加物、テトラヒドロキシシクロヘキサンのエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、トリグリセリンのプロピレンオキシド付加物及びテトラグリセリンのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0035】
本発明の喰込み性改良剤は、ポリオキシアルキレン化合物(a)以外に、必要に応じ、他の添加剤{溶媒、消泡剤、分散剤、乳化剤、浸透剤、反応停止剤、酸化防止剤、分散助剤、その他(軟化剤、補強剤、可塑剤、無機顔料、着色剤、導電性付与剤、帯電防止剤、難燃剤)}等を本発明の効果が損なわれない範囲で含んでいてもよい。
【0036】
溶媒としては、水、炭素数1〜6のアルコール(エチルアルコール、メチルアルコ−ル、エチレングリコール及びジエチレングリコール等)及び炭素数1〜6のケトン(メチルイソブチルケトン及びアセトン等)並びにこれらは混合溶媒等が挙げられる。消泡剤としては、公知の消泡剤が含まれ、脂肪酸エステル、シリコーンオイル及び/又はポリエーテル等を含む消泡剤が挙げられる。分散剤としては、公知のクラム分散剤が含まれ、ポリアクリル酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体及び/又はジイソブチレン−マレイン酸ナトリウム等が挙げられる。乳化剤、浸透剤としては、高級アルコール硫酸エステル類及び/又は脂肪族アミン及び脂肪族アマイドの硫酸塩等のアニオン性界面活性剤、脂肪族の第4級アンモニウム塩類及び/又はアルキルピリジニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル化合物及び/又はポリオキシアルキレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤、高級アルキルアミノプロピオン酸塩及び/又は高級アルキルジメチルベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。反応停止剤としては、水、エタノール、リン酸及び/又は酢酸等が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系安定剤、リン系安定剤及び/又はイオウ系安定剤等が挙げられる。分散助剤としては、カルシウム、バリウム、コバルト及び/又はニッケル等の金属イオンが挙げられる。
【0037】
本発明の喰込み性改良剤に、ポリオキシアルキレン化合物(a)以外の他の添加剤を含有させる場合、ポリオキシアルキレン化合物(a)と他の添加剤とを均一混合(均一溶解又は均一混合)することにより得られる。
【0038】
本発明のクラム脱水工程用喰込み性改良剤をクラム脱水工程で使用する場合、喰込み性改良剤の使用量(重量%)は、ゴム状重合体の重量に基づいて、0.005〜3が好ましく、さらに好ましくは0.01〜2、特に好ましくは0.05〜1である。この範囲であると、喰込み性がさらに良好となる。
【0039】
ゴム状重合体は、単一単量体の重合により得られたゴム状重合体又は二種以上の単量体の共重合により得られるゴム状重合体が含まれ、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、ポリペンテナマー、ポリピペリレン及びブタジエン−ピペリレン共重合体等が挙げられる。これらのうち、喰込み性改良剤の効果をより発現できるという観点から、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体及びイソブチレン−イソプレン共重合体が好ましく、さらに好ましくはスチレン−ブタジエン共重合体及びスチレン−イソプレン共重合体、特に好ましくはスチレン−ブタジエン共重合体である。
【0040】
本発明のゴム状重合体の製造方法において、ストリッピング工程において、上記のクラム脱水工程用喰込み性改良剤の存在下で、ゴム状重合体及び有機溶媒からなる溶液又はスラリーにスチームを導入することにより有機溶媒をスチームストリッピングしてクラム分散体を得るが、スチームストリッピングの方法は公知の方法(新ポリマー製造プロセス、工業調査会、1994)がそのまま適用できる。
【0041】
ストリッピング工程において、必要に応じて、他の添加剤{消泡剤、分散剤、乳化剤、浸透剤、反応停止剤、酸化防止剤、分散助剤、その他(軟化剤、補強剤、可塑剤、無機顔料、着色剤、導電性付与剤、帯電防止剤、難燃剤)}等を本発明の効果が損なわれない範囲で存在させてもよい。
【0042】
脱水工程において使用される脱水機としては、遠心型脱水機、圧縮型脱水機{ロール、バンバリー式脱水機及びスクリュー型脱水機等}等が挙げられる。これらのうち、喰込み性改良剤の効果をより発現できるという観点から、圧縮型脱水機が好ましく、さらに好ましくはロール及びスクリュー型脱水機であり、特に好ましくはスクリュー型脱水機である。
【実施例】
【0043】
次に、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下、特記しない限り部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0044】
<実施例1>
加熱、冷却、滴下及び攪拌が可能な耐圧反応容器に、グリセリン{試薬特級、和光純薬工業(株)製}1モル部(92部)、水酸化カリウム{試薬特級、和光純薬工業(株)製}23.3部を均一混合した後、加圧窒素置換しながら100℃に昇温した。その後、減圧下(0.013MPa以下;以下同じである。)で1時間脱水し、150℃に昇温した後、この温度でプロピレンオキシド(PO)30モル部(1740部)を0.4MPa以下に保ちつつ滴下した。引き続き、エチレンオキシド(EO)170モル部(7480部)を0.2MPa以下に保ちつつ滴下させた後、25時間同温度で撹拌した。次いで90℃に冷却した後、イオン交換水222部(以下、得られた反応物の2.5%とする。)を加えた後、アルカリ吸着剤{キョーワード600、協和化学工業(株)製、「キョーワード」は同社の登録商標である。}445部(以下、得られた反応物の5.0%とする。)を加え、同温度にて1時間撹拌して、水酸化カリウムをアルカリ吸着剤に吸着させた。次いで、同温度で、ヌッチェ、吸引瓶及びNo.2濾紙{東洋濾紙(株)製}を用いてアルカリ吸着剤をろ別した{以下、イオン交換水、アルカリ吸着剤を加え、撹拌した後、アルカリ吸着剤をろ別した操作を「アルカリ吸着処理」と略する。}。得られたろ液を減圧下120℃にて脱水処理して、本発明の喰込み性改良剤(j1)[グリセリン/PO30モル/EO170モル重合物、曇点92℃]を得た。
【0045】
<実施例2>
「グリセリン1モル部(92部)、水酸化カリウム23.3部、(EO)170モル部(7480部)、イオン交換水222部、アルカリ吸着剤445部」を、「ジグリセリン1モル部(166部)、水酸化カリウム4.8部、(EO)0モル部(0部)、イオン交換水48部、アルカリ吸着剤95部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の喰込み性改良剤(j2)[ジグリセリン/PO30モル重合物、曇点36℃]を得た。
【0046】
<実施例3>
「グリセリン1モル部(92部)、水酸化カリウム23.3部、(PO)30モル部(1740部)、(EO)170モル部(7480部)、イオン交換水222部、アルカリ吸着剤445部」を、「ソルビトール1モル部(182部)、水酸化カリウム8.2部、(PO)8モル部(464部)、(EO)60モル部(2640部)、イオン交換水82部、アルカリ吸着剤164部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の喰込み性改良剤(j3)[ソルビトール/PO8モル/EO60モル重合物、曇点100℃]を得た。
【0047】
<実施例4>
「グリセリン1モル部(92部)、水酸化カリウム23.3部、(PO)30モル部(1740部)、(EO)170モル部(7480部)、イオン交換水222部、アルカリ吸着剤445部」を、「ソルビトール1モル部(182部)、水酸化カリウム15部、(PO)100モル部(5800部)、(EO)0モル部(0部)、イオン交換水150部、アルカリ吸着剤299部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の喰込み性改良剤(j4)[ソルビトール/PO100モル重合物、曇点32℃]を得た。
【0048】
<実施例5>
実施例1と同様な耐圧反応容器にグラニュー糖の1モル部(342部)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)1000部を仕込み、加圧窒素置換した。次いで100℃にて攪拌しながら、(PO)8モル部(464部)を0.2MPa以下に保ちつつ滴下させた後、10時間同温度で攪拌した。次いで減圧下同温度にてDMFを留去させ、ベース−1[蔗糖/PO8モル重合物]を得た。
なお、蔗糖の3個の第1級水酸基のみに(PO)が反応する(したがって、一般式(1)におけるmは3である。以下に続く(BO)も他の水酸基には反応しない)。
【0049】
実施例1と同様な耐圧反応容器にベース−1[蔗糖/PO8モル重合物]1モル部(806部)及び水酸化カリウム3部を仕込み、120℃にて減圧脱水してから100℃にてブチレンオキシド(BO)4モル部(288部)を0.2MPa以下に保ちつつ滴下させた後、5時間同温度で攪拌した。次いでアルカリ吸着処理し、本発明の喰込み性改良剤(j5)[蔗糖/PO8モル/BO4モル重合物、曇点59℃、DMF含有量1.5ppm]を得た。
なお、DMF含有量は、ガスクロマトグラフィー(内部標準/検量線方式)を用いて定量した(以下,同様である。)。
【0050】
<実施例6>
実施例1と同様な耐圧反応容器にベース−1[蔗糖/PO8モル重合物]1モル部(806部)及び水酸化カリウム6.5部を仕込み、120℃にて減圧脱水してから100℃にて(PO)32モル部(1856部)を0.4MPa以下に保ちつつ滴下させた後、11時間同温度で攪拌した。次いでアルカリ吸着処理し、本発明の喰込み性改良剤(j6)[蔗糖/PO40モル重合物、曇点44℃、DMF含有量0.7ppm]を得た。
【0051】
<実施例7>
実施例1と同様な耐圧反応容器にラフィノース{試薬特級、}1モル部(504部)、DMF1000部を仕込み、加圧窒素置換した。次いで100℃にて攪拌しながら、(PO)30モル部(1740部)を0.4MPa以下に保ちつつ滴下させ、さらに(BO)3モル部(216部)を0.2MPa以下に保ちつつ滴下させた後、15時間同温度で攪拌した。次いで減圧下同温度にてDMFを留去させ、本発明の喰込み性改良剤(j7)[ラフィノース/PO30モル/BO3モル重合物、曇点38℃、DMF含有量1.0ppm]を得た。
なお、ラフィノースの3個の第1級水酸基のみに(PO)、(BO)が反応する(したがって、一般式(1)におけるmは3である。)。
【0052】
<実施例8>
実施例1と同様な耐圧反応容器にベース−1[蔗糖/PO8モル重合物]1モル部(806部)及び水酸化カリウム14.5部を仕込み、120℃にて減圧脱水してから100℃にて(PO)87モル部(5046部)を0.4MPa以下に保ちつつ滴下させた後、14時間同温度で攪拌した。次いでアルカリ吸着処理し、本発明の喰込み性改良剤(j8)[蔗糖/PO95モル重合物、曇点32℃、DMF含有量0.4ppm]を得た。
【0053】
<実施例9>
実施例1と同様な耐圧反応容器にベース−1[蔗糖/PO8モル重合物]1モル部(806部)及び水酸化カリウム37.1部を仕込み、120℃にて減圧脱水してから100℃にて(PO)242モル部(14036部)を0.4MPa以下に保ちつつ滴下させた後、35時間同温度で攪拌した。次いでアルカリ吸着処理し、本発明の喰込み性改良剤(j9)[蔗糖/PO250モル重合物、曇点22℃、DMF含有量0.5ppm]を得た。
【0054】
<実施例10>
ベース−1[蔗糖/PO8モル重合物]をアルカリ吸着処理し、本発明の喰込み性改良剤(j10)[蔗糖/PO8モル重合物、曇点83℃、DMF含有量2.5ppm]を得た。
【0055】
<実施例11>
実施例1と同様な耐圧反応容器にベース−1[蔗糖/PO8モル重合物]1モル部(806部)及び水酸化カリウム17部を仕込み、120℃にて減圧脱水してから100℃にて(PO)102モル部(5916部)を0.4MPa以下に保ちつつ滴下させた後、25時間同温度で攪拌した。次いでアルカリ吸着処理し、本発明の喰込み性改良剤(j11)[蔗糖/PO110モル重合物、曇点26℃、DMF含有量0.3ppm]を得た。
【0056】
<比較例1>
ポリエチレングリコール(EO付加モル数11)ノニルフェニルエーテル(BULAUNON Nー511、青木油脂工業(株)、1%水溶液の曇点72℃;特許文献1の実施例1の分散剤に類似)を比較用の喰込み性改良剤(h1)とした。
【0057】
実施例及び比較例で得た喰込み性改良剤(j1)〜(j11)及び(h1)を用いて、以下のようにして応力測定試験を行い、これらの結果を以下に示す。
【0058】
<評価用水溶液(喰込み性改良剤水溶液)の調製>
110mLガラス瓶に評価試料(実施例及び比較例で得た喰込み性改良剤)0.1gと、イオン交換水99.9gとを投入した後、スターラーピース及びマグネチックスターラーにて30分混合し、評価試料(喰込み性改良剤)を均一溶解させて、評価用水溶液(喰込み性改良剤水溶液)を得た。
【0059】
<クラム分散体の調製>
スチレンブタジエンゴム{Nipol NS116R 日本ゼオン(株)製}を10mgの塊になるように切りとり、全量で100mg(塊10個分)を評価用水溶液(喰込み性改良剤水溶液)100gに投入して30分間、80℃にて混合撹拌してクラム分散体を得た。
【0060】
<応力測定方法>
ANTONPAAR社製粘弾性測定装置MCR301を用いて、測定台を80℃に調整した後、クラム分散体からクラムを10mg(塊1個分)を取り出し、測定台上にのせてから、パラレルプレート(PP25;プレート径25mm)をのせて(ギャップ位置d=1mm)、ひずみ100%、角周波数10(1/s)の条件下120秒かけてひずみを生じさせた際の応力を測定し、120秒後の応力(Pa)を読み取った。この操作を10mgの塊10個分について繰り返し、10個のデータの平均値を算出した。これらの結果を表1に示す。数値の大きい方が喰込み性が高いことを意味し好ましい。
【0061】
クラム分散体のゴム状重合体の表面には評価試料(喰込み性改良剤)が吸着しており、これを金属プレートで挟み、ひずみを生じさせた際の応力を測定することによって、クラムが脱水機表面の金属と接触した際の抵抗力(すなわち、喰込み性)と相関があると考えられる。すなわち、応力値が小さければ、クラムの脱水機表面における抵抗力が小さく、クラムが脱水機へ入り込みにくいことを示し、一方、応力値が大きいほどクラムの脱水機表面における抵抗力が大きく、クラムが脱水機へ入り込みやすく喰込み性が良好であると考えられる。
【0062】
【表1】
【0063】
本発明の喰込み性改良剤(実施例1〜11)の120秒後の応力は大きく、比較用の喰込み性改良剤(比較例1)に比べ、喰込み性が優れることが示唆された。