特開2015-45775(P2015-45775A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-45775ジャケット内部からの付着物排出方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-45775(P2015-45775A)
(43)【公開日】2015年3月12日
(54)【発明の名称】ジャケット内部からの付着物排出方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/24 20060101AFI20150213BHJP
【FI】
   G02B23/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-177507(P2013-177507)
(22)【出願日】2013年8月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511284063
【氏名又は名称】エヌジーケイ・ケミテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000209773
【氏名又は名称】池袋琺瑯工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】田中 貢
(72)【発明者】
【氏名】水野 元重
(72)【発明者】
【氏名】中田 浩
【テーマコード(参考)】
2H040
【Fターム(参考)】
2H040AA02
2H040DA15
2H040DA17
2H040DA57
(57)【要約】
【課題】ジャケットの内部に発生した付着物を剥離したのち、容易に外部に排出することができるジャケット内部からの付着物排出方法及び装置を提供する。
【解決手段】圧力容器の外周に形成されたジャケット2の内部に発生した付着物を剥離し落下させる。次に、ジャケット2の底部に形成された一方のノズル4から流動用高圧水噴射ノズル23によって流動用高圧水をジャケット2内に噴射しつつ、噴射方向を回転するように変えることによってジャケット内に流動する旋回流を形成する。次に、ジャケット2の底部に形成された他方のノズル3から水とともに付着物を排出する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器の外周に形成されたジャケットの内部に発生した付着物を剥離したのち、ジャケットの底部に形成された一方のノズルから流動用高圧水をジャケット内に噴射しつつ、噴射方向を回転するように変えることによってジャケット内に流動する旋回流を形成し、ジャケットの底部に形成された他方のノズルから水とともに付着物を排出することを特徴とするジャケット内からの付着物排出方法。
【請求項2】
前記他方のノズルから撹拌用高圧水をジャケット内に噴射し、水と付着物とを撹拌しながら排出することを特徴とする請求項1記載のジャケット内からの付着物排出方法。
【請求項3】
前記一方のノズルからの流動用高圧水の噴射と、他方のノズルからの排出を交互に行うことを特徴とする請求項1記載のジャケット内からの付着物排出方法。
【請求項4】
圧力容器の外周に形成されたジャケットの内部に発生した付着物を剥離したのち外部に排出する装置であって、ジャケットの底部に形成された一方のノズルからジャケット内に挿入され、噴射方向を回転するように変えることができる流動用高圧水噴射ノズルと、ジャケットの底部に形成された他方のノズルに接続された排水ホースとを備えたことを特徴とするジャケット内からの付着物排出装置。
【請求項5】
流動用高圧水噴射ノズルが、スイベルジョイントによって回転可能に支持されたものであることを特徴とする請求項4記載のジャケット内からの付着物排出装置。
【請求項6】
前記他方のノズルに撹拌用高圧水噴射ノズルを配置したことを特徴とする請求項4記載のジャケット内からの付着物排出装置。
【請求項7】
前記他方のノズルの排水ホースの入口にも撹拌用高圧水噴射ノズルを配置したことを特徴とする請求項6記載のジャケット内からの付着物排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力容器の外周に形成されたジャケットの内部に発生した付着物を剥離したのち、ジャケットの直胴部や底部に堆積した付着物を外部に排出するためのジャケット内部からの付着物排出方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬液反応槽などとして用いられる大型の圧力容器は、内部温度を最適温度に制御するために、内側容器の外周にジャケットが形成されている。このジャケットの内部にブラインなどの冷媒やスチームなどの熱媒を供給して循環させることにより、内側容器の内部温度を制御している。圧力容器のサイズは、直径が2〜3m、高さが2〜5m程度のものが一般的である。
【0003】
これらの冷媒や熱媒は鋼鉄製の内側容器の外周面やジャケットの内周面と反応してこれらを徐々に腐食させ、長期間の使用中に酸化物を主体とする付着物を生じる。また、ブライン中のエチレングリコールを養分とした菌の繁殖等によって、付着物が生じたりする。このほか、工業用水に含まれるスケール成分が内側容器の外周面やジャケットの内周面に付着物を生じることもある。
【0004】
このような付着物を放置しておくとジャケット内の冷媒や熱媒の流動が阻害され、熱交換率が低下して生産性の低下を招く。また、圧力容器は法令により壁面の板厚を確保することが求められているが、これらの付着物は超音波探傷子による正確な板厚測定を妨げる。
【0005】
従って定期的にこのような付着物をジャケット内部から除去することが望まれるのであるが、内側容器の外周面とジャケットの内周面との隙間は多くの場合100mm以下であるうえ、湾曲部分があるため手が入らず、手作業による除去は困難である。従って従来はメンテナンス時には溶接されたジャケットを切断して内部を清掃し、再びジャケットを溶接していたが、この場合にはメンテナンス後に圧力容器として再度認定を受け直す必要があり、手続が煩雑であるという問題があった。
【0006】
そこで本発明者等は、自走式ロボットに付着物の切削手段を搭載し、ジャケット内部の付着物を取り除く装置を開発し、特許文献1として公開済みである。しかしこの特許文献1に記載の装置によって付着物を壁面等から剥離しても、剥離した付着物はジャケットの底部や直胴部に落下して堆積するのみであり、外部に排出することは容易ではない。すなわち、付着物は砂粒状あるいは剥片状のものであって流動性に乏しいため、ジャケットの底部に形成された内径が数十mmのノズルから完全に排出することは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−109215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、ジャケットの内部に発生した付着物を剥離したのち、堆積した付着物を容易に外部に排出することができるジャケット内部からの付着物排出方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するためになされた本発明のジャケット内からの付着物排出方法は、圧力容器の外周に形成されたジャケットの内部に発生した付着物を剥離したのち、ジャケットの底部に形成された一方のノズルから流動用高圧水をジャケット内に噴射しつつ、噴射方向を回転するように変えることによってジャケット内に流動する旋回流を形成し、ジャケットの底部に形成された他方のノズルから水とともに付着物を排出することを特徴とするものである。
【0010】
なお請求項2のように、前記他方のノズルから撹拌用高圧水をジャケット内に噴射し、水と付着物とを撹拌しながら排出することが好ましく、請求項3のように、前記一方のノズルからの流動用高圧水の噴射と、他方のノズルからの排出を交互に行うことが好ましい。
【0011】
また上記の課題を解決するためになされた本発明のジャケット内からの付着物排出装置は、圧力容器の外周に形成されたジャケットの内部に発生した付着物を剥離したのち外部に排出する装置であって、ジャケットの底部に形成された一方のノズルからジャケット内に挿入され、噴射方向を回転するように変えることができる流動用高圧水噴射ノズルと、ジャケットの底部に形成された他方のノズルに接続された排水ホースとを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
なお請求項5のように、流動用高圧水噴射ノズルが、スイベルジョイントによって回転可能に支持されたものであることが好ましく、また請求項6のように、前記他方のノズルに撹拌用高圧水噴射ノズルを配置した構造であることが好ましい。さらに請求項7のように、前記他方のノズルの排水ホースの入口にも撹拌用高圧水噴射ノズルを配置した構造であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のジャケット内からの付着物排出方法によれば、一方のノズルから流動用高圧水をジャケット内に噴射しつつ噴射方向を回転させることによりジャケット内に流動する旋回流を形成し、ジャケットの底部に形成された他方のノズルから水とともに付着物を排出する。このため単独では流動性が悪い付着物を流動させながら確実に外部に排出させることができる。このとき排出側のノズルにおいても撹拌用高圧水をジャケット内に噴射し、水と付着物とを撹拌させれば、よりスムーズに排出可能となる。
【0014】
また本発明のジャケット内からの付着物排出装置によれば、流動性が悪い付着物をジャケット内部から確実に外部に排出させることができ、特に請求項5のように流動用高圧水噴射ノズルをスイベルジョイントによって回転可能に支持した構造としておけば、高圧水の噴射方向を容易に変えることが可能であり、より確実に旋回流を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】洗浄対象となる圧力容器の断面図である。
図2】付着物剥離手段の説明図である。
図3】実施形態の付着物排出装置の全体構成図である。
図4】付着物流動ユニットを示す部分断面図である。
図5】旋回流を示す概念図である。
図6】付着物排出ユニットを示す断面図である。
図7】付着物排出時における二つのノズル部分の構明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は洗浄対象となる圧力容器の断面図である。図示のように圧力容器は内側容器1の下半部外周にジャケット2を備えている。ジャケット2の底部には2個のノズル3、4が形成されており、またジャケット2の上部にも2個のノズル5、6が形成されている。これらのノズル3、4及びノズル5、6はそれぞれ互いに反対側の位置に設けられている。なお7は内側容器1の内部の撹拌手段、8は温度検出手段である。
【0017】
前記したように、内側容器1の外面とジャケット2の内面との間隙は100mm以下である。しかもジャケット2の形状は図示のように外周部は円筒状であるが、底部は湾曲した複雑な形状である。このため本発明では、図2に示すように、ジャケット2の底部のノズル3の一方から可撓性のあるスプリングワイヤ9を挿入し、その先端に出没自在に搭載されたカメラ10で付着物の位置を確認しつつ、剥離用高圧洗浄ノズル11によりジャケット内部の付着物を壁面から剥離する。剥離された付着物はジャケット2の底部や直胴部に落下し堆積する。剥離用高圧水の水圧は15〜21MPaであり、図3に示される高圧洗浄機18、19から給水される。
【0018】
なお、スプリングワイヤ9の挿入方向を容易に変更することができるように、ノズル3の下部にアダプタ12が装着され、その下方にスイベルジョイント13が取り付けられている。スイベルジョイント13は上側管14と下側管15とを自由に回転させることができる継手であり、それ自体は市販品を用いることができる。このスイベルジョイント13に上端を屈曲させたガイドパイプ16を取付け、その内部にスプリングワイヤ9を挿通しておく。このような構成とすれば、スイベルジョイント13を回転させることによりガイドパイプ16を自由に回転させることができ、スプリングワイヤ9の挿入方向を容易に変更することができる。なお17はアダプタ12に接続された排水ホースである。
【0019】
このようにして付着物を剥離したのちに、堆積した付着物の取り出しが行なわれる。図2に示した剥離ユニットはノズル3から取外され、替りに図6に示す付着物排出ユニットが取付けられる。この付着物排出ユニットはスイベルジョイント27に上端を屈曲させたガイドパイプ28を取付け、その内部に撹拌用高圧水噴射ノズル29を配置したものである。付着物剥離ユニットとは異なりこの高圧水噴射ノズル29はスプリングワイヤを備えておらず、ガイドパイプ28の内部を貫通している高圧水パイプの先端に取付けられている。この高圧水噴射ノズル29はノズル3の周囲の付着物を水とともに撹拌して流動性を高めるためのものである。なお、排水ホース17の入口にも撹拌用高圧水噴射ノズル30を設け、アダプタのT字部分における付着物の詰まりを防止している。図3に示すように、排水ホース17は排出ポンプユニット29に接続され、ノズル3から水と付着物とを吸引して排出ピット21に排出する。
【0020】
図3に示した他方のノズル4には、付着物流動ユニットが取付けられている。その詳細は図4に示す通りであり、ノズル4の下方にスイベルジョイント22が取付けられ、その内部に流動用高圧水噴射ノズル23が設けられている。この流動用高圧水噴射ノズル23は、例えば角柱状または円柱状の頭部の側面に噴出口を開口させたものであり、この噴出口がジャケット2の底部の半径方向に流動用高圧水を噴射する。流動用高圧水噴射ノズル23はスイベルジョイント22を一方向に回転させることにより回転し、図5に示すようにジャケット2内に流動する旋回流を形成する。剥離され堆積していた付着物はこの旋回流に乗って流動し、反対側に位置するノズル3の方に移動する。
【0021】
この付着物流動ユニットに流動用高圧水を給水するために、図3に示すようにポンプユニット24と流動水タンク25が連結ホース26により接続されている。この流動用高圧水の水圧は、0.2〜1MPaである。また給水量は0.1〜1.0m/分程度であるが、ジャケット2の大きさに応じて適宜決定することができる。
【0022】
図7に付着物排出時におけるノズル3とノズル4の構成を示した。ノズル4の流動用高圧水噴射ノズル23から流動用高圧水を噴射して図5に示すような旋回流を形成し、流動させる。その際に、ノズル3の撹拌用高圧水噴射ノズル29によりその周囲を撹拌することが好ましい。この流動用高圧水噴射ノズル23からの流動用高圧水の噴射量は、ジャケット2の下鏡部分(直胴部より下側の部分)の容積程度とすることが好ましい。次に流動用高圧水の噴射を停止し、排出ポンプユニット20を動作させて流動状態にある付着物と水とを排水ホース17を通じて吸引し、排出ピット21に排出する。このとき、前記したように撹拌用高圧水噴射ノズル29,30から撹拌用高圧水を噴射し、流動性を高めて閉塞を防止する。このように流動用高圧水の噴射と排水とは交互に間欠的に行われ、数回繰り返すことによりジャケット2内からほぼ完全に付着部を外部に排出することができる。なお流動用高圧水の噴射と排水のタイミングは付着物の性状及び量に応じて適宜設定すればよいが、例えば30秒間隔で交互に行なえばよい。
【0023】
以上に説明したように、本発明のジャケット内部からの付着物排出方法及び装置によれば、剥離された付着物をジャケットの内部からほぼ完全に排出することができる。しかもその所要時間は数分で十分であるから、従来よりも作業能率を大幅に向上させることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 内側容器
2 ジャケット
3 ノズル
4 ノズル
5 ノズル
6 ノズル
7 撹拌手段
8 温度検出手段
9 スプリングワイヤ
10 カメラ
11 剥離用高圧洗浄ノズル
12 アダプタ
13 スイベルジョイント
14 上側管
15 下側管
16 ガイドパイプ
17 排水ホース
18 高圧洗浄機
19 高圧洗浄機
20 排出ポンプユニット
21 排出ピット
22 スイベルジョイント
23 流動用高圧水噴射ノズル
24 ポンプユニット
25 流動水タンク
26 連結ホース
27 スイベルジョイント
28 ガイドパイプ
29 撹拌用高圧水噴射ノズル
30 撹拌用高圧水噴射ノズル
図1
図3
図2
図4
図5
図6
図7