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特開2015-47723超高分子量ポリエチレン製板材及びそれを用いた摺動部材ならびに超高分子量ポリエチレン製板材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-47723(P2015-47723A)
(43)【公開日】2015年3月16日
(54)【発明の名称】超高分子量ポリエチレン製板材及びそれを用いた摺動部材ならびに超高分子量ポリエチレン製板材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20150217BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20150217BHJP
【FI】
   B32B27/32 E
   B29C65/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-179412(P2013-179412)
(22)【出願日】2013年8月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】久保田 修市
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AK01C
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CB03C
4F100GB51
4F100JA04A
4F100JA07B
4F100JA07C
4F100JA08B
4F100JA08C
4F100JB16A
4F100JK01A
4F100JK09
4F100JL12C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F211AA06
4F211AD24
4F211TA01
4F211TA06
4F211TD11
4F211TD14
4F211TH20
4F211TJ30
4F211TN75
4F211TQ01
(57)【要約】
【課題】超高分子量ポリエチレンを用いて所望の形状の部材、部品を製造することができる超高分子量ポリエチレン製板材を提供すること。
【解決手段】超高分子量ポリエチレン製板材10は、板状の芯材16と、芯材16の厚さ方向の両面に配置された第1、第2のシート12、14を備えている。芯材16は第1、第2のシート12、14よりも強度、剛性を有すると共に高い融点を有し塑性変形可能な材料からなり、その厚さ方向に貫通する複数の貫通部1602が形成されている。第1のシート12は、分子量が50万以上の超高分子量ポリエチレンから形成されている。第2のシート14は、熱溶融した際に前記第1のシート12に溶着可能な合成樹脂から形成されている。第1、第2のシート12、14は、それらの部分が貫通部1602に充填された充填部分20を介して互いに溶着され芯材16と一体化されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の芯材と、前記芯材の厚さ方向の両面に配置された第1、第2のシートを備え、
前記芯材は前記第1、第2のシートよりも強度、剛性を有すると共に高い融点を有し塑性変形可能な材料からなり、その厚さ方向に貫通する複数の貫通部が形成され、
前記第1のシートは、分子量が50万以上の超高分子量ポリエチレンから形成され、
前記第2のシートは、熱溶融した際に前記第1のシートに溶着可能な合成樹脂から形成され、
前記第1、第2のシートは、それらの部分が前記貫通部に充填された充填部分を介して互いに溶着され前記芯材と一体化されている、
ことを特徴とする超高分子量ポリエチレン製板材。
【請求項2】
前記第2のシートは、前記第1のシートと同一の超高分子量ポリエチレンから形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の超高分子量ポリエチレン製板材。
【請求項3】
前記芯材は、金属材材料で形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の超高分子量ポリエチレン製板材。
【請求項4】
前記第1のシートの厚さは、前記第2のシートの厚さよりも大きい寸法で形成されている、
ことを特徴とする請求項1から〜3の何れか1項記載の超高分子量ポリエチレン製板材。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項記載の超高分子量ポリエチレン製板材からなる摺動部材であって、
前記芯材は、前記複数の貫通部が形成された貫通領域部と、前記貫通領域部に接続され被取り付け部が形成された取り付け領域部とを有し、
前記第1、第2のシートは前記貫通領域部と同一の輪郭を有して前記貫通領域部を覆うように前記貫通領域部の両面に配置されている、
ことを特徴とする摺動部材。
【請求項6】
請求項1から4の何れか1項記載の超高分子量ポリエチレン製板材からなる摺動部材であって、
前記超高分子量ポリエチレン製板材は円筒状にプレス加工またはロール加工され、円筒部を有する滑り軸受けを構成している、
ことを特徴とする摺動部材。
【請求項7】
前記円筒部の軸方向の少なくとも一部の全周に、前記円筒部の半径方向に弾性変形可能な凹凸が形成されている、
ことを特徴とする請求項6記載の摺動部材。
【請求項8】
前記円筒部の軸方向の端部に、環板状に拡がる鍔部が設けられ、
前記鍔部の周方向に間隔をおいた複数箇所に、前記円筒部の軸方向に弾性変形可能な凹凸が設けられている、
ことを特徴とする請求項6または7記載の摺動部材。
【請求項9】
分子量が50万以上の超高分子量ポリエチレンからなる第1のシートと、熱溶融した際に前記第1のシートに溶着可能な合成樹脂からなる第2のシートとを用意し、
前記第1、第2のシートよりも強度、剛性を有すると共に高い融点を有し塑性変形可能な材料からなり、その厚さ方向に貫通する複数の貫通部が形成された板状の芯材を用意し、
前記芯材の厚さ方向の両面に前記第1、第2のシートを重ね、
前記第1、第2のシートを熱により溶融して圧着し、
前記圧着の際に、溶融した前記第1、第2のシートの部分を前記貫通部に流動させて前記貫通部に充填させ、前記貫通部に充填された充填部分を介して前記第1、第2のシートを互いに溶着し前記芯材と一体化するようにした、
ことを特徴とする超高分子量ポリエチレン製板材の製造方法。
【請求項10】
前記第2のシートは、前記第1のシートと同一の超高分子量ポリエチレンからなる、
ことを特徴とする請求項9記載の超高分子量ポリエチレン製板材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高分子量ポリエチレン製板材及びそれを用いた摺動部材ならびに超高分子量ポリエチレン製板材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子量が50万以上(多くは100万〜700万)の超高分子量ポリエチレンは、金属よりも耐摩耗性に優れるため、各種の部材が摺動する箇所に使用される摺動部材として好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010/101214
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、超高分子量ポリエチレンは、分子量を50万以上に高めたポリエチレンであり、溶融しても粘度が高い。そのため、所望の形状に射出成形できず、従来、超高分子量ポリエチレンを用いた所望の形状の部材、部品を製造することができなかった。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、超高分子量ポリエチレンを用いて所望の形状の部材、部品を製造することができる超高分子量ポリエチレン製板材及びそれを用いた摺動部材ならびに超高分子量ポリエチレン製板材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため請求項1記載の発明は、板状の芯材と、前記芯材の厚さ方向の両面に配置された第1、第2のシートを備え、前記芯材は前記第1、第2のシートよりも強度、剛性を有すると共に高い融点を有し塑性変形可能な材料からなり、その厚さ方向に貫通する複数の貫通部が形成され、前記第1のシートは、分子量が50万以上の超高分子量ポリエチレンから形成され、前記第2のシートは、熱溶融した際に前記第1のシートに溶着可能な合成樹脂から形成され、前記第1、第2のシートは、それらの部分が前記貫通部に充填された充填部分を介して互いに溶着され前記芯材と一体化されていることを特徴とする超高分子量ポリエチレン製板材である。
請求項2記載の発明は、前記第2のシートが、前記第1のシートと同一の超高分子量ポリエチレンから形成されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記芯材が、金属材材料で形成されていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、前記第1のシートの厚さが、前記第2のシートの厚さよりも大きい寸法で形成されていることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、前記芯材が、前記複数の貫通部が形成された貫通領域部と、前記貫通領域部に接続され被取り付け部が形成された取り付け領域部とを有し、前記第1、第2のシートは前記貫通領域部と同一の輪郭を有して前記貫通領域部を覆うように前記貫通領域部の両面に配置されていることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、前記超高分子量ポリエチレン製板材からなる摺動部材であって、前記超高分子量ポリエチレン製板材は円筒状にプレス加工またはロール加工され、円筒部を有する滑り軸受けを構成していることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、前記円筒部の軸方向の少なくとも一部の全周に、前記円筒部の半径方向に弾性変形可能な凹凸が形成されていることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、前記円筒部の軸方向の端部に、環板状に拡がる鍔部が設けられ、前記鍔部の周方向に間隔をおいた複数箇所に、前記円筒部の軸方向に弾性変形可能な凹凸が設けられていることを特徴とする。
請求項9記載の発明は、超高分子量ポリエチレン製板材の製造方法であって、分子量が50万以上の超高分子量ポリエチレンからなる第1のシートと、熱溶融した際に前記第1のシートに溶着可能な合成樹脂からなる第2のシートとを用意し、前記第1、第2のシートよりも強度、剛性を有すると共に高い融点を有し塑性変形可能な材料からなり、その厚さ方向に貫通する複数の貫通部が形成された板状の芯材を用意し、前記芯材の厚さ方向の両面に前記第1、第2のシートを重ね、前記第1、第2のシートを熱により溶融して圧着し、前記圧着の際に、溶融した前記第1、第2のシートの部分を前記貫通部に流動させて前記貫通部に充填させ、前記貫通部に充填された充填部分を介して前記第1、第2のシートを互いに溶着し前記芯材と一体化するようにしたことを特徴とする。
請求項10記載の発明は、前記第2のシートが、前記第1のシートと同一の超高分子量ポリエチレンからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、第1、第2のシートは、充填部分を介して芯材と一体化されている。また、芯材は塑性変形可能であるため、超高分子量ポリエチレン製板材を所望の形状に加工することが可能となり、加工された所望の形状は、芯材により維持される。
したがって、超高分子量ポリエチレン製板材を所望の形状に加工することで得られた部材、部品の肉厚方向の一方の面は、第1のシートであり耐摩耗性に優れる超高分子量ポリエチレンシートとなっており、従来製造することができなかった所望形状の超高分子量ポリエチレン製の部材、部品を製造することが可能となる。
請求項2記載の発明によれば、貫通部における第1、第2のシートの溶着性を確保し、第1、第2のシートの芯材との一体化を図る上で有利となる。
請求項3記載の発明によれば、鋼材などの金属材料は、安価で簡単に入手できるため、超高分子量ポリエチレン製板材のコストダウンを図る上で有利となる。
請求項4記載の発明によれば、超高分子量ポリエチレン製板材から形成される部材、部品に要求される耐摩耗性に、第1のシートの厚さで対応することが可能となる。
請求項5記載の発明によれば、取り付け領域部を介して装置や機械の使用箇所に超高分子量ポリエチレン製板材を取り付けることができるので、超高分子量ポリエチレン製板材を所望の箇所に簡単に配置する上で有利となる。
請求項6記載の発明によれば、超高分子量ポリエチレン製板材を、円筒部を有する滑り軸受けとして使用できる。
請求項7記載の発明によれば、滑り軸受けで軸を回転可能に支持する際に、締め代を凹凸で吸収でき、軸受孔内のがたつきを防止する上で有利となる。
請求項8記載の発明によれば、鍔部で円筒部の軸方向の位置決めを行なえ、鍔部の凹凸により滑り軸受けの軸方向のがたつきを吸収する上で有利となる。
請求項9記載の発明によれば、超高分子量ポリエチレン製板材を簡単に確実に製造できる。
請求項10記載の発明によれば、貫通部における第1、第2のシートの溶着性を確保し、第1、第2のシートの芯材との一体化を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態の超高分子量ポリエチレン製板材の説明図で、(A)は超高分子量ポリエチレン製板材の斜視図、(B)は同分解斜視図、(C)は同部分の断面図である。
図2】第2の実施の形態の超高分子量ポリエチレン製板材の斜視図である。
図3】超高分子量ポリエチレン製板材から得られた摺動部材の説明図で、(A)は摺動部材の斜視図、(B)は同分解斜視図、(C)は同断面正面図である。
図4】超高分子量ポリエチレン製板材から得られた滑り軸受けの説明図で、(A)は滑り軸受けの斜視図、(B)は同断面正面図である。
図5】(A)は超高分子量ポリエチレン製板材から得られた円筒部に凹凸を有する滑り軸受けの斜視図、(B)は同部分の断面図である。
図6】超高分子量ポリエチレン製板材から得られた円筒部に凹凸を有する滑り軸受けの斜視図である。
図7】超高分子量ポリエチレン製板材から得られ円筒部に鍔部が設けられた滑り軸受けの斜視図である。
図8】超高分子量ポリエチレン製板材から得られた円筒部と鍔部に凹凸を有する滑り軸受けの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
まず、図1を参照して第1の実施の形態から説明する。
超高分子量ポリエチレン製板材10は、第1のシート12と第2のシート14と板状の芯材16とを備え、第1のシート12と第2のシート14は、芯材16の厚さ方向の両面に配置されている。
【0009】
第1のシート12は、超高分子量ポリエチレンで形成されている。
第2のシート14は、熱溶融した際に第1のシート12に溶着可能な合成樹脂で形成されている。
このような合成樹脂として、第1のシート12を構成する超高分子量ポリエチレンと同一の超高分子量ポリエチレン、第1のシート12を構成する超高分子量ポリエチレンと分子量が異なる超高分子量ポリエチレン、分子量が50万に満たないポリエチレンなどが使用可能である。しかしながら、熱溶融した際の溶着性を考慮すると、第2のシート14に、第1のシート12を構成する超高分子量ポリエチレンと同一の超高分子量ポリエチレンを用いることが好ましい。
なお本発明で言う分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で測定された重量平均分子量を意味する。
【0010】
芯材16は板状を呈し、その厚さ方向に貫通する複数の貫通部1602を有している。
芯材16を構成する材料は、超高分子量ポリエチレン製板材10を所望の形状に加工した際にその形状を維持するため、第1、第2のシート12、14よりも強度、剛性を有することが必要である。
また、芯材16を構成する材料は、第1、第2のシート12、14を溶融して圧着する際に溶融しないように、第1、第2のシート12、14よりも高い融点を有することが必要である。
また、芯材16を構成する材料は、所望の形状に加工できるように塑性変形可能であることが必要である。
したがって、芯材16は第1、第2のシート12、14よりも強度、剛性を有すると共に高い融点を有し塑性変形可能な材料で形成されている。このような材料として鋼材などの金属材料や、アラミド繊維、フェノール繊維などの合成樹脂材料、ガラス繊維などの無機材料が使用可能である。
本実施の形態では、芯材16として金属材料を用いている。芯材16は専用に製作してもよいが、芯材16として市販品である金網やパンチングメタルなどが使用可能である。
第1、第2のシート12、14は、それらの部分が貫通部1602に充填された充填部分20を介して互いに溶着され芯材16と一体化されている。
【0011】
ここで超高分子量ポリエチレン製板材10の製造方法について説明する。
芯材16の厚さ方向の両面に第1、第2のシート12、14を重ねる。
次に、第1、第2のシート12、14を熱により溶融し、圧着する。
そして、圧着の際に、溶融した第1、第2のシート12、14の部分を貫通部1602に流動させて貫通部1602に充填させ、貫通部1602に充填された充填部分20を介して第1、第2のシート12,14を互いに溶着し芯材16と一体化する。
このような製造方法により、超高分子量ポリエチレン製板材10が簡単に確実に製造される。
本実施の形態では、第2のシート14を、第1のシート12を構成する超高分子量ポリエチレンと同一の超高分子量ポリエチレンで形成しているので、貫通部1602における第1、第2のシート12、14の溶着性を確保し、第1、第2のシート12、14の芯材16との一体化を図る上で有利となっている。
【0012】
第1の実施の形態の超高分子量ポリエチレン製板材10によれば、第1、第2のシート12、14は、充填部分20を介して互いに溶着され芯材16と一体化されている。
また、芯材16は塑性変形可能であるため、プレス加工やロール加工などの種々の機械的加工により、通常の金属板と同様に、超高分子量ポリエチレン製板材10を所望の形状に加工することが可能となり、加工された所望の形状は、芯材16により維持される。
したがって、超高分子量ポリエチレン製板材10を、平坦な平板状、曲面状、円筒状、L字状、V字状など、あるいはそれら形状の組み合わせにより、所望の形状に加工することが可能となる。
そして、超高分子量ポリエチレン製板材10から得られた所望の形状の部材、部品は、その肉厚方向の両面に、芯材16と一体化された第1、第2のシート12、14が位置している。
すなわち、得られた部材、部品の肉厚方向の両面は、耐摩耗性に優れる超高分子量ポリエチレンシートとなっている。
したがって、各種装置、機械の耐摩耗箇所に使用される所望形状の超高分子量ポリエチレンシートからなる部材、部品を製造することが可能となり、従来製造することができなかった所望形状の超高分子量ポリエチレン製の部材、部品を製造することが可能となる。
【0013】
なお、本実施の形態では、第1、第2のシート12、14に共に超高分子量ポリエチレンを用いた場合について説明したが、超高分子量ポリエチレン製板材10から得られた部材、部品の肉厚方向の一方の面のみに耐摩耗性が要求される場合、その面に第1のシート12を位置させ、第2のシート14に、熱溶融した際に第1のシート12に対して溶着可能で耐摩耗性のない合成樹脂を用いてもよい。
【0014】
次に、図2を参照して第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同様な箇所、部材に同一の符号を付してその説明を省略する。
第2の実施の形態では、第1のシート12の厚さT1が、第2のシート14の厚さT2よりも大きい寸法で形成されている。
第2の実施の形態は、超高分子量ポリエチレン製板材10から得られた部材、部品の肉厚方向の一方の面に要求される耐摩耗性に対応させ、第1のシート12の厚さT1を決定したものである。
したがって、第1のシート12の厚さT1を適宜決定することで、部材、部品に要求される耐摩耗性に対応することが可能となる。
【0015】
次に、図3を参照して第3の実施の形態について説明する。
以下の実施の形態は、超高分子量ポリエチレン製板材10から得られた耐摩耗性に優れる摺動部材10Aである。
第3の実施の形態で用いる超高分子量ポリエチレン製板材10の芯材16は、金属製板材で形成されている。
金属製板材は、複数の貫通部1602が形成された貫通領域部16Aと、貫通領域部16Aの両側に位置し取り付け孔(被取り付け部)1604が形成された取り付け領域部16Bとを有している。
第1、第2のシート12、14は共に超高分子量ポリエチレンからなり貫通領域部16Aと同一の輪郭を有し、貫通領域部16Aを覆うように貫通領域部16Aの両面に配置され、熱溶着によりそれらシートの部分が貫通部1602に充填された充填部分20を介して貫通領域部16Aと一体化されている。
摺動部材10Aは取り付け孔1604を介して取り付け領域部16Bが装置や機械の適宜箇所に取着され、耐摩耗性に優れる超高分子量ポリエチレンからなる第1のシート12の表面が摺動面として機能し、あるいは、耐摩耗性に優れる超高分子量ポリエチレンシートからなる第1、第2のシート12、14の双方の表面が摺動面として機能する。
【0016】
次に、図4を参照して第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態で用いる超高分子量ポリエチレン製板材10の第1、第2のシート12、14は、共に超高分子量ポリエチレンからなり、芯材16は、金網またはパンチングメタルなどのような、全面に厚さ方向に貫通する複数の貫通部1602が形成された金属製板材で形成されている。
図4(A)に示すように、平板状の超高分子量ポリエチレン製板材10が、プレス加工、または、ロール加工により円筒状に加工されることで、円筒部1002を有する摺動部材10Bが形成され、符号1004は超高分子量ポリエチレン製板材10の端部の合わせ面を示す。
摺動部材10Bは、円筒部1002の内周面が、耐摩耗性に優れる超高分子量ポリエチレンからなる第1のシート12で形成された滑り軸受け10Bである。
【0017】
次に、図5を参照して第4の実施の形態について説明する。
第4の実施の形態は、第3の実施の形態の変形例である。
第3の実施の形態で用いる超高分子量ポリエチレン製板材10の芯材16は、弾性を有する金属製板材で、円筒部1002の全域に、ローレット加工あるいはインデント加工を施すことにより、円筒部1002の半径方向に弾性変形可能な凹凸1006を設けた滑り軸受け10Cとなっている。本実施の形態では、円筒部1002の全域に、大径部1002Aと、大径部1002Aよりも直径の小さい小径部1002Bとを軸方向に交互に並べて設けている。
このように、円筒部1002に凹凸1006を設けると、軸受孔に滑り軸受け10Cを挿入し、滑り軸受け10Cで軸を回転可能に支持する際に、締め代を凹凸1006で吸収でき、軸受孔内のがたつきを防止する上で有利となる。
なお、凹凸1006は、円筒部1002の軸方向の一部の全周にのみ設けてもよく、あるいは、軸方向に間隔をおいた2箇所の全周のみに設けてもよいが、本実施の形態のように、凹凸1006を円筒部1002の全域に設けると、締め代を凹凸1006で吸収し、軸受孔内のがたつきを防止する上でより有利となる。
【0018】
次に、図6を参照して第5の実施の形態について説明する。
第5の実施の形態は、第4の実施の形態の変形例であり、第5の実施の形態は、円筒部1002の半径方向に弾性変形可能な凹凸1006の構成が第4の実施の形態と異なっている。
第5の実施の形態の凹凸1006は、円筒部1002の軸方向に延在する凸部1002Cと凹部1002Dとが周方向に交互に並べられて構成されている。
このような第5の実施の形態の滑り軸受け10Dによっても、軸受孔に滑り軸受け10Cを挿入し、滑り軸受け10Dで軸を回転可能に支持する際に、締め代を凹凸1006で吸収でき、軸受孔内のがたつきを防止する上で有利となる。
【0019】
次に、図7を参照して第6の実施の形態について説明する。
第6の実施の形態は、第3の実施の形態の変形例である。
第5の実施の形態は、第3の実施の形態の円筒部1002に、プレス加工により鍔部1008を設けたものであり、円筒部1002の軸方向の位置決めに使用される鍔部1008を有する滑り軸受け10Eとなっている。
鍔部1008は、円筒部1002と反対に位置する面が第1のシート12で形成され、円筒部1002側に位置する面が第2のシート14で形成されている。
【0020】
次に、図8を参照して第7の実施の形態について説明する。
第7の実施の形態は、第6の実施の形態の変形例である。
第7の実施の形態の滑り軸受け10Fは、第6の実施の形態の円筒部1002に、円筒部1002の半径方向に弾性変形可能な凹凸1006を設けると共に、第6の実施の形態の鍔部1008にプレス加工により、円筒部1002の軸方向に弾性変形可能な凹凸1010を設けたものである。
円筒部1002に設ける凹凸1006は、例えば、図5に示すように、大径部1002Aと、大径部1002Aよりも直径の小さい小径部1002Bとを軸方向に交互に並べて構成してもよく、図6に示すように、円筒部1002の軸方向に延在する凸部1002Cと凹部1002Dとが周方向に交互に並べて構成してもよい。この実施の形態では、凹凸1006を、円筒部1002の軸方向に延在する凸部1002Cと凹部1002Dとを周方向に交互に並べて構成している。
また、鍔部1008に設ける凹凸1010は、鍔部1008の中心を通り鍔部1008の直径方向に延在する凸部1002Eと凹部1002Fを鍔部1008の周方向に並べて構成してもよく、あるいは、鍔部1008の中心を中心とした環状の凸部と環状の凹部とを半径方向に交互に並べて構成してもよい。この実施の形態では、凹凸1010を、鍔部1008の中心を通り鍔部1008の直径方向に延在する凸部1002Eと凹部1002Fを鍔部1008の周方向に並べて構成している。
第7の実施の形態の滑り軸受け10Fによれば、滑り軸受け10Fで軸を回転可能に支持する際に、締め代を凹凸1006で吸収でき、軸受孔内のがたつきを防止する上で有利となり、また、鍔部1008で円筒部1002の軸方向の位置決めを行なうことは無論のこと、鍔部1008の凹凸1010により滑り軸受け10Fの軸方向のがたつきを吸収する上で有利となる。
なお、凹凸1010は、鍔部1008の周方向に間隔をおいた複数箇所に設けてもよいが、本実施の形態のように、凹凸1010を鍔部1008の全域に設けると、滑り軸受け10Fの軸方向のがたつきを吸収する上でより有利となる。
【符号の説明】
【0021】
10……超高分子量ポリエチレン製板材
10A……摺動部材
10B、10C……滑り軸受け
1002……円筒部
1004……合わせ面
1006……凹凸
1008……鍔部
12……第1のシート
14……第2のシート
16……芯材
1602……貫通部
16A……貫通領域部
16B……取り付け領域部
1604……取り付け孔
20……貫通部に充填された充填部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8