特開2015-48019(P2015-48019A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-48019(P2015-48019A)
(43)【公開日】2015年3月16日
(54)【発明の名称】鞍乗型車両用シートおよび鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/01 20130101AFI20150217BHJP
   B62J 1/28 20060101ALI20150217BHJP
【FI】
   B62K5/00 C
   B62J1/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-182417(P2013-182417)
(22)【出願日】2013年9月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118201
【弁理士】
【氏名又は名称】千田 武
(72)【発明者】
【氏名】石毛 伸吾
【テーマコード(参考)】
3D011
【Fターム(参考)】
3D011AA07
3D011AD21
(57)【要約】
【課題】車両が旋回する際に、車両の運転者が自身の重心を移動させる操作を補助する。
【解決手段】本発明の着座シート100は、3輪または4輪の鞍乗型車両1における車体フレーム3の上方に設けられ、運転者が跨って乗るシート本体101と、鞍乗型車両1が旋回する際の走行状態を検出する操舵角センサ21および車速センサ23からの信号に応じて、車体フレーム3に対するシート本体101の角度を調整する角度調整機構103とを備える。また、角度調整機構103は、シート本体101における鞍乗型車両1の旋回中心側を、旋回中心の外側よりも低くするように車体フレーム3に対するシート本体101の角度を調整する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3輪または4輪の鞍乗型車両における車体の上方に設けられ、運転者が跨って乗る鞍型シート本体と、
前記鞍乗型車両が旋回する際の走行状態を検出する検出部からの信号に応じて、前記車体に対する前記鞍型シート本体の角度を調整する角度調整機構と
を備えることを特徴とする鞍乗型車両用シート。
【請求項2】
前記角度調整機構は、前記鞍乗型車両を操舵する操舵部の角度および当該鞍乗型車両の速度に応じて、前記車体に対する前記鞍型シート本体の角度を調整することを特徴とする請求項1記載の鞍乗型車両用シート。
【請求項3】
前記角度調整機構は、前記鞍型シート本体における前記鞍乗型車両の旋回中心側を、当該旋回中心の外側よりも低くするように前記車体に対する当該鞍型シート本体の角度を調整することを特徴とする請求項1または2記載の鞍乗型車両用シート。
【請求項4】
前記角度調整機構は、前記鞍乗型車両が旋回する際に前記車体が傾斜する向きとは反対の向きに前記鞍型シート本体を傾斜させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の鞍乗型車両用シート。
【請求項5】
前記角度調整機構は、前記鞍型シート本体の下方であって上端が当該鞍型シート本体に接続され下端が前記車体に接続されながら伸縮するとともに、互いに前記鞍乗型車両の車幅方向における異なる位置に設けられる複数の高さ調整機構を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の鞍乗型車両用シート。
【請求項6】
前記角度調整機構は、前記車体に固定されかつ前記鞍乗型車両の車幅方向における前記鞍型シート本体の中央部を回転可能に支持する支持部を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の鞍乗型車両用シート。
【請求項7】
3輪または4輪の鞍乗型車両用の車体と、
前記車体の上方に設けられ、運転者が跨って乗る鞍型シート本体と、
前記鞍乗型車両が旋回する際の走行状態を検出する検出センサと、
前記検出センサからの信号に応じて、前記車体に対する前記鞍型シート本体の相対位置を調整する位置調整機構と
を備えることを特徴とする3輪または4輪の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両用シートおよび鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ATV(All Terrain Vehicle)は、砂地や泥濘地等の悪路走行を目的とした車両であり、鞍乗型車両、全地形走行車両、或いはバギー車などと呼ばれる場合もある。このATVは、一般的に左右一対の前輪および/または左右一対の後輪を備え、四輪あるいは三輪の鞍乗型車両として構成される。
【0003】
例えば特許文献1に記載の鞍乗型車両は、ライダーが跨乗する鞍型の着座シートの左右両側下部に、ライダーの足を載せるフットボードを備える。そして、このフットボードには、ライダーの足底を載せるフットレストが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−68818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、鞍乗型車両において旋回走行を行う際、鞍乗型車両およびその運転者は遠心力を受けることから、運転者はこの遠心力に対し自らバランスをとる必要がある。すなわち、運転者は、旋回中心に対する外側の足をフットボードに対して突っ張り、上体を旋回中心側に傾けるなどして、運転者の重心を移動させることが必要となる。このように運転者の重心位置、すなわち運転者の姿勢に応じて、鞍乗型車両の旋回半径が変化するなど、運転者はよりアクティブに鞍乗型車両の操縦を楽しむことができる。
【0006】
しかしながら、この運転者が重心移動を行う際には、例えば旋回速度に応じて移動量を調整することが必要となるなど、高い操作技術が必要とされる。また、例えば初めて鞍乗型車両を運転する運転者は、重心移動のために走行中の鞍乗型車両上で姿勢を変えることに対して、恐怖心を覚えることもある。
本発明は、車両が旋回する際に、車両の運転者が自身の重心を移動させる操作を補助することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明は、3輪または4輪の鞍乗型車両における車体の上方に設けられ、運転者が跨って乗る鞍型シート本体と、前記鞍乗型車両が旋回する際の走行状態を検出する検出部からの信号に応じて、前記車体に対する前記鞍型シート本体の角度を調整する角度調整機構とを備えることを特徴とする鞍乗型車両用シートである。
ここで、前記角度調整機構は、前記鞍乗型車両を操舵する操舵部の角度および当該鞍乗型車両の速度に応じて、前記車体に対する前記鞍型シート本体の角度を調整するとよい。
また、前記角度調整機構は、前記鞍型シート本体における前記鞍乗型車両の旋回中心側を、当該旋回中心の外側よりも低くするように前記車体に対する当該鞍型シート本体の角度を調整するとよい。
また、前記角度調整機構は、前記鞍乗型車両が旋回する際に前記車体が傾斜する向きとは反対の向きに前記鞍型シート本体を傾斜させるとよい。
また、前記角度調整機構は、前記鞍型シート本体の下方であって上端が当該鞍型シート本体に接続され下端が前記車体に接続されながら伸縮するとともに、互いに前記鞍乗型車両の車幅方向における異なる位置に設けられる複数の高さ調整機構を備えるとよい。
また、前記角度調整機構は、前記車体に固定されかつ前記鞍乗型車両の車幅方向における前記鞍型シート本体の中央部を回転可能に支持する支持部を備えるとよい。
他の観点から捉えると、本発明は、3輪または4輪の鞍乗型車両用の車体と、前記車体の上方に設けられ、運転者が跨って乗る鞍型シート本体と、前記鞍乗型車両が旋回する際の走行状態を検出する検出センサと、前記検出センサからの信号に応じて、前記車体に対する前記鞍型シート本体の相対位置を調整する位置調整機構とを備えることを特徴とする3輪または4輪の鞍乗型車両である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両が旋回する際に、車両の運転者が自身の重心を移動させる操作を補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態の鞍乗型車両の概略構成を示す図である。
図2】着座シートの概略構成を示す図である。
図3】制御装置の構成を示すブロック図である。
図4】旋回走行時の鞍乗型車両を説明するための図である。
図5】旋回走行時の着座シートの動作を説明するための図である。
図6-1】(a)は着座シートの第1の変形例を説明するための図であり、(b)は着座シートの第2の変形例を説明するための図である。
図6-2】(c)は着座シートの第3の変形例を説明するための図であり、(d)は着座シートの第4の変形例を説明するための図である。
図7】着座シートの他の動作例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<鞍乗型車両1>
図1は、本実施の形態の鞍乗型車両1の概略構成を示す図である。
本実施の形態の鞍乗型車両1は、車体の一例である車体フレーム3と、車体フレーム3の前後に設けられたそれぞれ左右一対の前輪5および後輪7と、車体フレーム3の前後に設けられ前輪5および後輪7をそれぞれ懸架する前輪懸架装置9および後輪懸架装置11とを備える。
【0011】
また、鞍乗型車両1は、操舵部の一例であり前輪5の上方に設けられる操舵用のステアリングバー13と、鞍乗型車両用シートの一例でありステアリングバー13の後方で車体フレーム3の上方に設けられ運転者50(図4参照)が跨って乗る鞍型の着座シート100と、前輪5および後輪7の間に設けられ運転者50の足を載せるフットボード17とを備える。また、鞍乗型車両1は、車体フレーム3の略中央位置に、前輪5および後輪7へ駆動力を供給するエンジン(不図示)と、エンジンからの駆動力を前輪5および後輪7へ伝達するプロペラシャフト等の駆動伝達装置19(図2参照)とを備える。
【0012】
さらに、鞍乗型車両1は、運転者50がステアリングバー13を操舵する角度(操舵角)を検出し操舵角信号を出力する操舵角センサ21と、鞍乗型車両1の速度(車速)を検出し車速信号を出力する車速センサ23と、これら操舵角センサ21および車速センサ23からの検出信号(操舵角信号および車速信号)に基づき着座シート100を制御する制御装置25(後述)とを備える。なお、操舵角センサ21および車速センサ23は検出部および検出センサの一例である。
【0013】
ここで、前輪5および後輪7は、それぞれ鞍乗型車両1の前方からみると略矩形状である(図2参照)。さらに説明をすると、この前輪5および後輪7は、所謂バルーンタイヤであり、広幅で低圧の特殊タイヤである。前輪5および後輪7は、路面の凹凸を低圧のタイヤが変形して吸収し、路面が軟弱であっても広幅のタイヤで沈み込みを抑えることができる。
また、図示の例においては、鞍乗型車両1は、鞍乗型車両1が左右に曲がりながら進む際(旋回時)に、左右の駆動輪に生じる回転数の差を吸収させる差動装置(ディファレンシャルギア)を備えない構成である。
【0014】
<着座シート100>
図2は、着座シート100の概略構成を示す図である。なお、図2は、鞍乗型車両1の前方から着座シート100およびその周辺部材をみた概念図である。
本実施形態の着座シート100は、シート本体101と、このシート本体101を支持しながら車体フレーム3に対するシート本体101の角度を調整する角度調整機構103とを備える。なお、角度調整機構103は、車体フレーム3に対するシート本体101の相対位置を調整する位置調整機構として捉えることもできる。
【0015】
鞍型シート本体の一例であるシート本体101は、運転者50が跨って乗るいわゆる鞍型のシートを構成する。
角度調整機構103は、車幅方向(図2における左右方向)で互いに離間して設けられた第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107を備える。この第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107は、それぞれシート本体101の下方に設けられ、一端(図中上側端部)がシート本体101と接続され、他端(図中下側端部)が車体フレーム3と接続されている。
【0016】
なお、図示の例における第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107が、それぞれ一端(図中上側端部)にヒンジ111,113を備える。そして、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107は、このヒンジ111,113を介して、シート本体101に回転可能に支持される。このことにより、シート本体101に対する第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の角度が変更可能となる。
【0017】
また、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107は、それぞれ油圧ポンプ(不図示)を備える。第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107は、それぞれの油圧ポンプを駆動し油圧を調整することで伸縮可能である(図中矢印A1,A2参照)。付言すると、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107は、油圧ポンプを各々制御することにより、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の伸縮量(軸方向長さ)を互いに異ならせることが可能である。
【0018】
<制御装置25>
図3は、制御装置25の構成を示すブロック図である。
制御装置25は、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の制御を行う際の演算処理を行うCPU(不図示)と、このCPUにて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROM(不図示)と、CPUの作業用メモリ等として用いられるRAM(不図示)とを備える。この制御装置25は、車体フレーム3に設けられる(図2参照)。
【0019】
ここで、制御装置25は、操舵角センサ21からの操舵角信号および車速センサ23からの車速信号が入力される入力部251と、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の伸縮量を規定したテーブルを記憶する記憶部253と、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の伸縮量を決定する伸縮量決定部255と、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107へ制御信号を出力する出力部257とを備える。
【0020】
ここで、記憶部253は、予め、操舵角および車速の組み合わせと、それぞれの組み合わせにおける第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の伸縮量との関係を規定したテーブルを記憶する。
また、伸縮量決定部255は、入力部251が受け付けた操舵角信号および車速信号と、記憶部253に記憶されたテーブルとに基づき、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の伸縮量を決定(算出)する。
【0021】
<鞍乗型車両1の旋回動作>
図4は、旋回走行時の鞍乗型車両1を説明するための図である。図5は、旋回走行時の着座シート100の動作を説明するための図である。なお、図5は、鞍乗型車両1の前方から着座シート100およびその周辺部材をみた概念図である。
【0022】
次に、図1乃至図5を参照しながら、鞍乗型車両1が旋回走行を行う際の動作について説明をする。
まず、鞍乗型車両1は、エンジン(不図示)の駆動力が、駆動伝達装置19を介して前輪5および後輪7へと伝達されることにより走行する。
【0023】
ここで、鞍乗型車両1が直進している際には、図2に示すように、車体フレーム3およびシート本体101は、原則として車幅方向において傾斜せず、水平方向に沿って配置される。なお、この鞍乗型車両1が直進している際のステアリングバー13の操舵角を、直進角度とする。
また、エンジン(不図示)が駆動している際、制御装置25は、操舵角センサ21からの操舵角信号および車速センサ23からの車速信号を監視する。
【0024】
そして、図4に示すように、運転者50がステアリングバー13を直進角度から左右に操舵することによって、鞍乗型車両1は旋回を開始する(図4の矢印B参照)。
鞍乗型車両1が旋回走行を行うと、鞍乗型車両1および運転者50は遠心力を受ける。すなわち、鞍乗型車両1および運転者50は、旋回中心側から旋回中心の外側に向かう向き(図4の矢印C参照)に力を受ける。
【0025】
そして、図5に示すように、遠心力を受けることにともない、車体フレーム3は、旋回中心の外側(図5における右側)が旋回中心側(図5における左側)と比較して低くなる(沈み込む)ように傾斜する。いわば、車体フレーム3は、旋回中心の外側に向けて倒れる。
一方、制御装置25は、操舵角センサ21を介してステアリングバー13の操舵角の変化を検知すると、角度調整機構103を駆動させる。このことにより、シート本体101は、旋回中心側(図5における左側)が旋回中心の外側(図5における右側)と比較して低くなる(沈み込む)ように傾斜する。いわば、シート本体101は、車体フレーム3が傾斜する向きとは反対の向き、すなわち旋回中心側に向けて倒れる。
【0026】
シート本体101の傾斜を具体的に説明すると、まず制御装置25の入力部251が、鞍乗型車両1が旋回を開始した際の操舵角信号および車速信号を、操舵角センサ21および車速センサ23から受け付ける。そして、伸縮量決定部255が、入力部251が受け付けた操舵角信号および車速信号と、記憶部253に記憶されたテーブルとに基づき、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の伸縮量を決定する。
【0027】
そして、出力部257が、決定した伸縮量に基づき、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107に制御信号を出力する。この制御信号を受けた第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107は、それぞれの油圧ポンプ(不図示)を駆動させながら、伸縮する。図5に示す例においては、旋回中心側(図5における左側)に位置する第2油圧ダンパ107の長さが、旋回中心の外側(図5における右側)に位置する第1油圧ダンパ105よりも短くなる。
【0028】
そして、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107が駆動することにより、シート本体101が旋回中心側に倒れこむとともに、シート本体101上に乗る運転者50の重心が旋回中心側に向けて移動する(図4の矢印D参照)。このようにシート本体101が傾斜し運転者50の重心が移動することで、遠心力と対向する向きに力(いわゆる旋回力)が加わることとなり、鞍乗型車両1の旋回半径が小さくなるなど鞍乗型車両1の旋回がより円滑になる。また、運転者50による重心の移動が、旋回力に応じて円滑に行えるようになる。
【0029】
そして、旋回する鞍乗型車両1のステアリングバー13の操舵角が直進角度に戻ることにより、鞍乗型車両1は直進を開始するとともに、図2に示すように、車体フレーム3およびシート本体101は水平方向に沿って配置される。
【0030】
さて、上述のように車体フレーム3は、鞍乗型車両1が旋回走行時に旋回中心の外側に倒れこむように傾斜する。この車体フレーム3が傾斜する分、車体フレーム3が傾斜しない場合と比較して、車体フレーム3上に設けられたシート本体101に乗る運転者50は、より大きく重心を移動させることが必要となる。
しかしながら、本実施形態においては、上述のように角度調整機構103がシート本体101を傾斜させることにより、運転者50が重心を移動させる操作が簡易となる。さらに説明をすると、角度調整機構103を備えない場合と比較して、本実施形態においては角度調整機構103が運転者50の重心を移動させるため、運転者50自身が重心を移動させる移動量が低減され、あるいは運転者50が重心を移動させる操作が必要なくなる。
【0031】
さて、旋回時に鞍乗型車両1および運転者50に加わる遠心力は、鞍乗型車両1の走行状態、すなわち上記の例でいえば操舵角および車速に応じて変化する。したがって、上述のように記憶部253が記憶するテーブルにおいては、操舵角が大きくなるに従い、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の軸方向長さの差が大きくなるように、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の伸縮量(軸方向長さ)が定められている。また、車速が大きくなるに従い、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の長さの差が大きくなるように、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の伸縮量(軸方向長さ)が定められている。
このことにより、旋回時に鞍乗型車両1および運転者50に加わる遠心力に応じて、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の伸縮量が調整される。
【0032】
なお、図5に示すように、鞍乗型車両1が旋回する際、前輪5および後輪7は、それぞれの回転軸が路面に沿った向きの姿勢のままである。すなわち、鞍乗型車両1は、例えば図示の鞍乗型車両1とは異なる2輪車のように、車輪の回転軸を路面に対して傾斜させ車輪の側面を路面に接触させながら旋回するものではない。
【0033】
<変化例1>
図6−1および図6−2の(a)乃至(d)は、それぞれ着座シート100の第1の変形例乃至第4の変形例を説明するための図である。
さて、上述の実施形態においては、角度調整機構103として、着座シート100が車幅方向で互いに離間して設けられた第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107を備える構成を説明したが、この構成に限定されない。
【0034】
例えば、図6−1(a)に示す第1の変形例においては、着座シート200が、シート本体201と、車幅方向で互いに離間して設けられるとともにそれぞれモータ(不図示)からの駆動力を受けて駆動するラックアンドピニオン205,207とを備える。また、図示の例におけるラックアンドピニオン205,207は、それぞれ一端(図中上側端部)にヒンジ211,213を備える。
そして、この着座シート200においては、ラックアンドピニオン205,207がそれぞれ駆動することにともない、シート本体201が車幅方向において傾斜する。
【0035】
また、図6−1(b)に示す第2の変形例においては、着座シート300が、シート本体301と、車幅方向で互いに離間して設けられる第1油圧ダンパ305および第2油圧ダンパ307を有するシート角調整機構303と、支持部の一例でありシート本体301の下方にてシート本体301を車幅方向に回転可能に支持する支点309とを備える。
【0036】
ここで、図示の例における第1油圧ダンパ305および第2油圧ダンパ307は、それぞれ一端(図中下側端部)にヒンジ311,313を備える。そして、第1油圧ダンパ305および第2油圧ダンパ307は、このヒンジ311,313を介して、車体フレーム3に回転可能に支持される。このことにより、車体フレーム3に対する第1油圧ダンパ305および第2油圧ダンパ307の角度が変更可能となる。
また、この支点309は、シート本体301における車幅方向の中央部に設けられるとともに、車体フレーム3に固定される。
【0037】
そして、この着座シート300においては、第1油圧ダンパ305および第2油圧ダンパ307がそれぞれ伸縮することにともない、支点309を中心として回転しながらシート本体301が車幅方向において傾斜する。
【0038】
また、図6−2(c)に示す第3の変形例においては、着座シート400が、シート本体401と、車幅方向で互いに離間して設けられるとともにそれぞれの一端がシート本体401と接続され他端が車体フレーム3と接続されるスプリング405,407と、シート本体401の下方にてシート本体401における車幅方向の中央部に設けられた従動ギア409と、車体フレーム3に回転可能に支持されるとともにモータ(不図示)の駆動を受けて回転する駆動ギア410とを備える。
【0039】
ここで、図示の例におけるスプリング405,407は、それぞれ一端(図中下側端部)にヒンジ411,413を備える。そして、スプリング405,407は、このヒンジ411,413を介して、車体フレーム3に回転可能に支持される。このことにより、車体フレーム3に対するスプリング405,407の角度が変更可能となる。
また、従動ギア409はシート本体401に対して固定されている。そして、この従動ギア409が駆動を受けて回転することにともないシート本体401も従動ギア409を中心として回転する。
この着座シート400においては、駆動ギア410が駆動することにともない、従動ギア409が回転することで、シート本体401が車幅方向において傾斜する。
【0040】
また、図6−2(d)に示す第4の変形例においては、着座シート500が、シート本体501と、シート本体501の下方にてシート本体501に固定して設けられるガイドピン505と、車体フレーム3に対して固定されガイドピン505を車体フレーム3の車幅方向に案内するガイドレール507と、車体フレーム3に対して固定されシート本体501を車幅方向に押圧する油圧シリンダ509とを備える。
そして、この着座シート500においては、油圧シリンダ509を駆動させることにより、車体フレーム3に対してシート本体501を車幅方向に移動させる(図中矢印E参照)。
【0041】
なお、この変形例においては、上述の実施形態あるいは変形例とは異なり、車体フレーム3に対するシート本体501の角度を変更するものではない。しかしながら、この変形例のように車体フレーム3に対してシート本体501を車幅方向に移動させることによって、シート本体501に乗る運転者50の重心を移動させてもよい。
【0042】
<変形例2>
図7は、着座シート100の他の動作例を説明するための図である。
さて、上述の実施形態においては、角度調整機構103が駆動することにより、シート本体101を車幅方向で傾斜させることを説明した。
【0043】
しかしながら、図7に示すように、シート本体101の上面(座面)を、車幅方向において水平方向に維持するように角度調整機構103を駆動させてもよい。さらに説明をすると、鞍乗型車両1が旋回する際に、車体フレーム3は旋回中心の外側に倒れこむように傾斜するが、この車体フレーム3上に設けられたシート本体101は車幅方向に傾斜しないように角度調整機構103が駆動してもよい。
【0044】
<その他>
さて、上記の説明においては、前輪5および後輪7を特殊タイヤであるバルーンタイヤとして説明をしたが、この構成に限定されるものではない。例えば、所謂通常のタイヤとして、普通自動車に用いられるタイヤのような路面との接触面が路面から押圧されたように扁平した形状のタイヤや、自動2輪車に用いられるタイヤのような路面と接触する部分が路面に向けて突出する向きに湾曲した形状のタイヤを用いてももちろんよい。
【0045】
また、上記の説明においては、鞍乗型車両1の走行状態を検出する手段として、操舵角センサ21および車速センサ23を備え、これらの検出信号に基づきシート本体101を傾斜させる制御を行うことを説明したが、この構成に限定されるものではない。例えば、鞍乗型車両1の横方向の加速度を検出する横Gセンサ、ヨーレイトを検出するためのヨーレイトセンサ、車体の高さを検出するための車高センサ、あるいはシート本体101の傾斜を検出するセンサの検出信号などに基づいて、シート本体101を傾斜させる制御を行ってももちろんよい。
【0046】
また、上記の説明においては、制御装置25が、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の伸縮量を規定したテーブルを参照しながら第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の伸縮量を決定したが、この構成に限定されるものではない。例えば次のように、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の伸縮量を決定してもよい。
まず、制御装置25は、鞍乗型車両1の走行状態を検出する検出信号をもとに、旋回力の大きさを算出(演算)する。そして算出された旋回力に基づき、運転者50の重心を移動させるべき量(移動量)を算出する。この算出された移動量が得られるように、第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107の伸縮量を決定する。
【0047】
さて、角度調整機構103の第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107は、それぞれが伸縮することにともない、支持する領域におけるシート本体101の高さが変化する。したがって、角度調整機構103は、シート本体101の高さを調整する高さ調整機構として捉えることもできる。
【0048】
また、上記の説明においては、鞍乗型車両1は、差動装置を備えない構成として説明をしたが、差動装置を備える構成であってももちろんよい。
また、上記の説明においては、制御装置25が車体フレーム3に設けられることを説明したが、制御装置25が着座シート100に設けられる構成であってもよい。
【0049】
また、上記の説明においては、シート本体101を車幅方向に傾斜させることを説明したが、車体フレーム3に対するシート本体101の角度を変更するものであればよい。例えば、シート本体101を前後方向に傾斜させる構成であってもよい。シート本体101を前後方向に傾斜させることにより、運転者50の重心が前後方向において移動し、前輪5および後輪7に加わる荷重が調整される。さらに説明をすると、シート本体101を前後方向に傾斜させる構成としては、例えば第1油圧ダンパ105および第2油圧ダンパ107を前後方向で互いに離間して設ける構成であってもよい。
【0050】
また、図6−2(d)に示す変形例においては、シート本体501を車幅方向に移動させることを説明したが、シート本体501を前後方向に移動させる構成であってもよい。
さらに、車体フレーム3に対するシート本体501の角度を変更するとともに、車体フレーム3に対してシート本体501を車幅方向に移動させる、あるいは、車体フレーム3に対してシート本体501を前後方向に移動させる構成であってもよい。さらにまた、車体フレーム3に対するシート本体501の角度を変更するとともに、車体フレーム3に対してシート本体501を、車幅方向および前後方向に移動させる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…鞍乗型車両、3…車体フレーム、5…前輪、7…後輪、13…ステアリングバー、21…操舵角センサ、23…車速センサ、25…制御装置、50…運転者、100…着座シート、101…シート本体、103…角度調整機構、105…第1油圧ダンパ、107…第2油圧ダンパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7