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特開2015-48322ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体、その製造方法並びにそれを用いたトリフルオロメチル基含有化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-48322(P2015-48322A)
(43)【公開日】2015年3月16日
(54)【発明の名称】ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体、その製造方法並びにそれを用いたトリフルオロメチル基含有化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 3/06 20060101AFI20150217BHJP
   C07C 69/76 20060101ALI20150217BHJP
   C07C 67/307 20060101ALI20150217BHJP
   C07C 255/50 20060101ALI20150217BHJP
   C07C 253/30 20060101ALI20150217BHJP
   C07C 205/11 20060101ALI20150217BHJP
   C07C 201/12 20060101ALI20150217BHJP
   C07C 43/247 20060101ALI20150217BHJP
   C07C 41/22 20060101ALI20150217BHJP
   C07D 233/32 20060101ALI20150217BHJP
   C07D 213/26 20060101ALI20150217BHJP
   C07D 213/61 20060101ALI20150217BHJP
   C07D 241/12 20060101ALI20150217BHJP
   C07B 39/00 20060101ALN20150217BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150217BHJP
【FI】
   C07F3/06CSP
   C07C69/76 Z
   C07C67/307
   C07C255/50
   C07C253/30
   C07C205/11
   C07C201/12
   C07C43/247
   C07C41/22
   C07D233/32
   C07D213/26
   C07D213/61
   C07D241/12
   C07B39/00 B
   C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-180007(P2013-180007)
(22)【出願日】2013年8月30日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、先導的物質変換領域(ACT−C)、「エン反応と関連技術の展開、炭素−フッ素結合の活性化による(触媒的)不斉CCFの開発、および炭素−水素結合の活性化による触媒的(不斉)フルオロメチル化反応の開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】591180358
【氏名又は名称】東ソ−・エフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】三上 幸一
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄三
(72)【発明者】
【氏名】根岸 千幸
(72)【発明者】
【氏名】相川 光介
【テーマコード(参考)】
4C055
4H006
4H039
4H048
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA02
4C055BA13
4C055CA01
4C055CA02
4C055CA39
4C055DA01
4C055FA03
4C055FA32
4C055FA34
4C055FA37
4H006AA02
4H006AC24
4H006BA05
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM71
4H006BP30
4H006GP03
4H006KA31
4H006QN30
4H039CA10
4H039CA41
4H039CD20
4H039CD90
4H048AA01
4H048AA02
4H048AA03
4H048AB81
4H048AC90
4H048VA11
4H048VA20
4H048VA32
4H048VA66
4H048VB10
4H048VB90
(57)【要約】
【課題】室温下において安定で、反応試剤として有用なビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体、その製造方法並びにそれを用いたトリフルオロメチル基含有化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】有機溶媒中、ジアルキル亜鉛、トリフルオロメチルハライド及びN,N’−ジメチルプロピレンウレアを反応させた後、析出物をろ過または溶媒留去することにより、下記式(1)
(CF32Zn・(DMPU)2 (1)
(式中、DMPUはN,N’−ジメチルプロピレンウレアを示す)
で表されるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体を得、次いで、銅(I)触媒下、置換芳香族ヨージドと反応させトリフルオロメチル基含有化合物を得る方法を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記、式(1)
(CF32Zn・(DMPU)2 (1)
(式中、DMPUはN,N’−ジメチルプロピレンウレアを示す)
で表されるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体。
【請求項2】
ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体が粉末である、請求項1記載のビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体。
【請求項3】
有機溶媒中、ジアルキル亜鉛、トリフルオロメチルハライド及びN,N’−ジメチルプロピレンウレアを反応させた後、析出物をろ過または溶媒留去することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の式(1)で表されるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU粉末の製造方法。
【請求項4】
下記、式(1)
(CF32Zn・(DMPU)2 (1)
(式中、DMPUはN,N’−ジメチルプロピレンウレアを示す)
で表されるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体からなる高熱安定性トリフルオロメチル化剤。
【請求項5】
請求項1に記載の式(1)で表されるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体及び下記一般式(2)
【化1】
(式中A及びBは各々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜6の直鎖、分岐若しくは環式のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3〜6の直鎖、分岐若しくは環式のアルコシキ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基又はトリフルオロメチル基を示し、C及びDは各々独立して炭素原子または窒素原子を示す)
で表される置換芳香族ヨージドを、銅(I)触媒存在下、反応させることを特徴とする下記一般式(3)
【化2】
(式中、A、B、C及びDは前記一般式(2)と同じである。)
で表されるトリフルオロメチル基含有化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリフルオロメチルハライド、ジアルキル亜鉛及びN,N’−ジメチルプロピレンウレア(以下、DMPUと略す)より調製される取り扱いが容易なビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体、その製造方法並びにそれを用いたトリフルオロメチル基含有化合物の製造方法に関する。トリフルオロメチル基含有化合物は医農薬及び電子材料の合成中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、固体のビス(トリフルオロメチル)亜鉛粉末としては、トリフルオロメチルヨージド及びジアルキル亜鉛より調製されるビス(トリフルオロメチル)亜鉛に、グライム、ジグライムまたはピリジンを配位させた錯体等が知られている(例えば非特許文献1参照)。
しかしながら、非特許文献1に記載のビス(トリフルオロメチル)亜鉛は熱安定性が低く、グライムを配位させた錯体は室温下で分解してしまう。最も熱安定性が高いジグライムとの錯体においても110℃と低く、満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】エル,ホルスト(L.Horst)ら, Journal of Fluorine Chemistry, (1984年), 26(4), 435〜444頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ビス(トリフルオロメチル)亜鉛を安定化でき、その取扱いも容易となる化合物を提供するとともに、トリフルオロメチル化剤としての用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決する方法について鋭意検討した結果、2分子のN,N’−ジメチルプロピレンウレアと錯体を形成したビス(トリフルオロメチル)亜鉛を粉末として取り出すことができ、その熱安定性が高く、安定であることを見出した。さらに該化合物がトリフルオロメチル化剤として使用可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち本発明は、下記、式(1)
(CF32Zn・(DMPU)2 (1)
(式中、DMPUはN,N’−ジメチルプロピレンウレアを示す。)
で表されるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体であり、粉末として取り出すことができる。
【0007】
また本発明は、有機溶媒中、ジアルキル亜鉛、トリフルオロメチルハライド及びN,N’−ジメチルプロピレンウレアを反応させた後、析出物をろ過または溶媒留去する、前記式(1)で表されるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の製造方法である。
また本発明は、前記式(1)で表されるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体及び下記一般式(2)
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、A及びBは各々独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜6の直鎖、分岐若しくは環式のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3〜6の直鎖、分岐若しくは環式のアルコシキ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基又はトリフルオロメチル基を示し、C及びDは各々独立して炭素原子または窒素原子を示す。)
で表される置換芳香族ヨージドを、銅(I)触媒存在下、反応させる、下記一般式(3)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、A、B、C及びDは前記一般式(2)と同じである。)
で表されるトリフルオロメチル基含有化合物の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、ビス(トリフルオロメチル)亜鉛を安定化でき、工業的に利用可能なビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体が提供できる。粉末とすることで、その取扱いも容易となる。
ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体は、トリフルオロメチル化剤として種々の有機化合物の合成に貢献できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の式(1)で表される(CF32Zn・(DMPU)2は、有機溶剤中、ジアルキル亜鉛、トリフルオロメチルハライド及びDMPUを、所定時間反応を行なった後、残渣をろ取または溶剤を留去することにより得られる固体を、ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体に不活性なジエチルエーテル等の溶剤で洗浄、乾燥することにより製造される。
【0014】
反応に用いられるジアルキル亜鉛、トリフルオロメチルハライド及びDMPUを加える順序は特に制限されるものではないが、DMPUを有機溶媒に加え、その後トリフルオロメチルハライドをバブリング等しながら、あるいはせずに供給し、ジアルキル亜鉛を滴下等しながら行えばよい。
反応によりビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体が生成するが、通常、生成した錯体は固体として析出する。ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体を含む生成物はこの後、反応液から残渣をろ紙や適当なフィルタ等によりろ取し、または溶剤を留去することで、ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体を含む固体を得ることができる。
【0015】
得られたビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体を含む固体は、ジエチルエーテル等の溶剤と接触させ、ろ取または溶剤留去等、本分野で通常用いられる方法により洗浄することができる。さらに、本分野で通常用いられる方法により乾燥することで、ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の固体粉末を得ることができる。
この粉末は通常、白色の色調である。後記するように、DSC(示差走査熱量測定)による測定では、160〜180℃(Top:169℃)に発熱ピークが認められ、150℃以下では安定である。これに対し、ビス(トリフルオロメチル)亜鉛のグライム錯体では室温下で分解、ジグライムとの錯体においても安定な温度としては110℃と低く(非特許文献1参照)、本発明によるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体は極めて安定である。
【0016】
本発明によるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の製造に適用可能なジアルキル亜鉛としては、具体的にはジメチル亜鉛またはジエチル亜鉛を挙げることができる。
本発明によるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の製造に適用可能なトリフルオロメチルハライドとしては、具体的には、トリフルオロメチルブロミドまたはトリフルオロメチルヨージドを挙げることができ、反応に具するジアルキル亜鉛に対して、1.2〜40モル倍量、好ましくは2.0〜20モル倍量使用する。
【0017】
本発明によるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の製造において、使用するDMPUは、ジアルキル亜鉛に対して、1.1〜5.0モル量、好ましくは1.5〜4.0モル量使用する。
本発明によるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の製造において、適用可能な有機溶剤としては、反応に不活性なものであればあらゆるものが適用可能であるが、具体的には例えば、ジエチルエーエル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素類が挙げられ、反応に具するジエチル亜鉛に対して3〜30重量倍量使用する。また、ジエチル亜鉛を所定の濃度含有する該溶液を購入し、反応に用いても良い。
【0018】
本発明によるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の製造における反応温度及び時間は−80〜40℃の温度範囲で、1〜100時間の反応時間である。反応温度−20℃以上で反応を行う場合は、使用するトリフルオロメチルヨージドの沸点が−22.5℃のため、加圧系で反応を実施しても良い。
本発明によるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の製造の後処理としては、窒素またはアルゴン気流下中でろ過または減圧下溶剤を留去の後、1〜20重量倍量のエーテルまたはヘキサンで洗浄、乾燥することにより本発明のビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体を得ることができる。
【0019】
本発明において用いられる一般式(2)で表される置換芳香族ヨージドとしては、具体的には例えば、2−フルオロフェニルヨージド、3−フルオロフェニルヨージド、4−フルオロフェニルヨージド、2−クロロフェニルヨージド、3−クロロフェニルヨージド、4−クロロフェニルヨージド、2−ブロモフェニルヨージド、3−ブロモフェニルヨージド、4−ブロモフェニルヨージド、2−メチルフェニルヨージド、3−メチルフェニルヨージド、4−メチルフェニルヨージド、2−エチルフェニルヨージド、3−エチルフェニルヨージド、4−エチルフェニルヨージド、4−n−プロピルフェニルヨージド、4−iso−プロピルフェニルヨージド、4−シクロプロピルフェニルヨージド、4−n−ブチルフェニルヨージド、4−iso−ブチルフェニルヨージド、4−tert−ブチルフェニルヨージド、4−n−ペンチルフェニルヨージド、4−シクロペンチルフェニルヨージド、4−n−ヘキシルフェニルヨージド、4−シクロヘキシルフェニルヨージド、2−メトキシフェニルヨージド、3−メトキシフェニルヨージド、4−メトキシフェニルヨージド、2−エトキシフェニルヨージド、3−エトキシフェニルヨージド、4−エトキシフェニルヨージド、4−n−プロポキシフェニルヨージド、4−iso−プロポキシフェニルヨージド、4−シクロプロポキシフェニルヨージド、4−n−ブトキシフェニルヨージド、4−iso−ブトキシフェニルヨージド、4−tert−ブトキシフェニルヨージド、4−n−ペントキシフェニルヨージド、4−シクロペントキシフェニルヨージド、4−n−ヘキシルオキシフェニルヨージド、4−シクロヘキシルオキシフェニルヨージド、2−ヨード安息香酸メチル、3−ヨード安息香酸メチル、4−ヨード安息香酸メチル、2−ヨード安息香酸エチル、3−ヨード安息香酸エチル、4−ヨード安息香酸エチル、2−シアノフェニルヨージド、3−シアノフェニルヨージド、4−シアノフェニルヨージド、2−ニトロフェニルヨージド、3−ニトロフェニルヨージド、4−ニトロフェニルヨージド、2,4−ジニトロフェニルヨージド、4−シアノ−3−(トリフルオロメチル)フェニルヨージド、2−ヨードピリジン、5−ブロモ−2−ヨードピリジン、2−ヨードピラジン等が挙げられる。
【0020】
本発明の一般式(3)で表されるトリフルオロメチル基含有化合物としては、具体的には例えば、2−フルオロベンゾトリフルオリド、3−フルオロベンゾトリフルオリド、4−フルオロベンゾトリフルオリド、2−クロロベンゾトリフルオリド、3−クロロベンゾトリフルオリド、4−クロロベンゾトリフルオリド、2−ブロモベンゾトリフルオリド、3−ブロモベンゾトリフルオリド、4−ブロモベンゾトリフルオリド、2−メチルベンゾトリフルオリド、3−メチルベンゾトリフルオリド、4−メチルベンゾトリフルオリド、2−エチルベンゾトリフルオリド、3−エチルベンゾトリフルオリド、4−エチルベンゾトリフルオリド、4−n−プロピルベンゾトリフルオリド、4−iso−プロピルベンゾトリフルオリド、4−シクロプロピルベンゾトリフルオリド、4−n−ブチルベンゾトリフルオリド、4−iso−ブチルベンゾトリフルオリド、4−tert−ブチルベンゾトリフルオリド、4−n−ペンチルベンゾトリフルオリド、4−シクロペンチルベンゾトリフルオリド、4−n−ヘキシルベンゾトリフルオリド、4−シクロヘキシベンゾトリフルオリド、2−メトキシベンゾトリフルオリド、3−メトキシベンゾトリフルオリド、4−メトキシベンゾトリフルオリド、2−エトキシベンゾトリフルオリド、3−エトキシベンゾトリフルオリド、4−エトキシベンゾトリフルオリド、4−n−プロポキシベンゾトリフルオリド、4−iso−プロポキシベンゾトリフルオリド、4−シクロプロポキシベンゾトリフルオリド、4−n−ブトキシベンゾトリフルオリド、4−iso−ブトキシベンゾトリフルオリド、4−tert−ブトキシベンゾトリフルオリド、4−n−ペントキシベンゾトリフルオリド、4−シクロペントキシベンゾトリフルオリド、4−n−ヘキシルオキシベンゾトリフルオリド、4−シクロヘキシルオキシベンゾトリフルオリド、2−トリフルオロメチル安息香酸メチル、3−トリフルオロメチル安息香酸メチル、4−トリフルオロメチル安息香酸メチル、2−トリフルオロメチル安息香酸エチル、3−トリフルオロメチル安息香酸エチル、4−トリフルオロメチル安息香酸エチル、2−シアノベンゾトリフルオリド、3−シアノベンゾトリフルオリド、4−シアノベンゾトリフロライド、2−ニトロベンゾトリフルオリド、3−ニトロベンゾトリフルオリド、4−ニトロフェニルベンゾトリフルオリド、2,4−ジニトロベンゾトリフルオリド、4−シアノ−1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、2−(トリフルオロメチル)ピリジン、5−ブロモ−2−(トリフルオロメチル)ピリジン、2−(トリフルオロメチル)ピラジン等が挙げられる。
【0021】
本発明の一般式(3)で表されるトリフルオロメチル基含有化合物の製造方法としては、反応に不活性な溶剤中、一般式(1)で表されるビス(トリフルオロメチル)亜鉛粉末、一般式(2)で表される置換芳香族ヨージド、銅(I)触媒を仕込み、所定の温度、時間、反応を行う。
本発明の一般式(3)で表されるトリフルオロメチル基含有化合物の製造で、一般式(1)で表されるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の使用量としては、使用する一般式(2)で表される置換芳香族ヨージドに対して、1.0〜3.0モル量の範囲が好ましい。
【0022】
本発明の一般式(3)で表されるトリフルオロメチル基含有化合物の製造で使用可能な溶剤は、反応に不活性なものでれば特に規定はないが、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア等の非プロトン性極性溶剤が好ましく、反応に使用する一般式(2)で表される置換芳香族ヨージドに対して、1〜50重量倍量使用することが好ましい。
【0023】
本発明の一般式(3)で表されるトリフルオロメチル基含有化合物の製造で使用する銅(I)触媒としては、具体的には例えば、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、トリフロオロメタンスルホン酸銅(I)、チオフェン−1−カルボン酸銅(I)が挙げられ、反応に使用する一般式(2)で表される置換フェニルヨージドに対して、0.1〜150モル%使用することが好ましい。
【0024】
本発明の一般式(3)で表されるトリフルオロメチル基含有化合物の製造の反応温度及び時間は、通常、30〜100℃の温度範囲で、12〜48時間の反応時間で、さらに好ましくは40〜80℃の温度範囲で20〜30時間の温度範囲である。
本発明の一般式(3)で表されるトリフルオロメチル基含有化合物の製造後の後処理としては、衆知の方法で実施可能で、例えば、5%塩酸を添加、エーテルで抽出、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過、濃縮することにより、粗製の一般式(3)で表されるトリフルオロメチルベンゼン誘導体を得、さらに必要に応じて、蒸留精製、シリカゲルカラムクロマトグラフィーでの精製等を行っても良い。
【実施例】
【0025】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例1 ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・(ジメチルプロピレンウレア)2錯体の調製
撹拌子を備えた50mlの丸底二口フラスコに、アルゴン雰囲気下、ヘキサン(15ml)及びN,N’−ジメチルプロピレンウレア(2.41ml、20mmol、以下DMPUと略す)を入れ、撹拌しながら−60℃に冷却した。次いでこれに、トリフルオロメチルヨージド(9.8g、50mmol)をバブリングして供給した後、ジエチル亜鉛(1.0M−ヘキサン溶液、10ml、10mmol)を滴下した。同温度で20分撹拌の後、−20℃で72時間反応を行った。
【0026】
反応終了後、余剰のトリフルオロメチルヨージド及び未反応のジエチル亜鉛を減圧下、留去することにより粗製のビス(トリフルオロメチル)亜鉛・(DMPU)2錯体を白色固体として得、次いでジエチルエーテル(15ml×3回)で洗浄、減圧乾燥することによりビス(トリフルオロメチル)亜鉛・(DMPU)2錯体を白色固体として得た(4.15g、収率90%)。
1H−NMR(300MHz,DMF−d7)δ3.25(t,8H)、2.84(s,12H)、1.94(quin,4H)。
19F−NMR(282MHz,DMF−d7)δ−42.8(s,3F)。
熱安定性は、DSC測定において、160〜180℃(Top:169℃)に発熱ピークが認め
られ、150℃以下では安定であった。なお、非特許文献1では、グライム錯体は20℃で分解し、ジグライム錯体は110℃で分解と記載されており、本発明のDMPU錯体は熱安定が優れていることが判明した。
実施例2 2−(トリフルオロメチル)安息香酸エチルの調製
【0027】
【化3】
【0028】
撹拌子及びセプタムラバーを備えた試験管に、アルゴン気流下、ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・(DMPU)2錯体(92mg、0.2mmol)、塩化銅(I)(1.9mg、0.01mmol)、DMPU(0.2ml)及び2−ヨード安息香酸エチル(0.1mmol、16.6μl)を入れた後、セプタムラバーをスクリューキャップに交換し、50℃で24時間反応を行った。反応終了後、冷却の後、反応液を内部標準物質としてベンゾトリフルオリドを用いた19F−NMRでの定量の結果、目的物の2−(トリフルオロメチル)安息香酸エチルの収率は82%であった。
実施例3〜8 各種トリフルオロメチル基含有化合物の調製
実施例2と同じ反応装置を用い、2−ヨード安息香酸エチルに替えて、表1に示した基質を用いた以外実施例2と同じ反応操作を行い、目的物のトリフルオロメチル基含有化合物を得た。結果を表1中に示した。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例9 4−(トリフルオロメチル)アニソールの調製
【0031】
【化4】
【0032】
撹拌子及びセプタムラバーを備えた試験管に、アルゴン気流下、ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・(DMPU)2錯体(92mg、0.2mmol)、チオフェン−1−カルボン酸銅(I)(19.1mg、0.10mmol)、DMPU(1.0ml)及び4−ヨードアニソール(23.4mg、0.1mmol)を入れた後、セプタムラバーをスクリューキャップに交換し、50℃で24時間反応を行った。反応終了後、冷却の後、反応液を内部標準物質としてベンゾトリフルオリドを用いた19F−NMRでの定量の結果、目的物の4−(トリフルオロメチルアニソールの収率は74%であった。
実施例10 4−ニトロベンゾトリフルオリドの調製
【0033】
【化5】
【0034】
実施例9の4−ヨードアニソールに替えて4−ニトロフェニルヨージドを用いた以外、実施例9と同じ反応操作を行い、目的物の4−ニトロベンゾトリフルオリドを収率99%で得た。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明により、室温下において安定で取り扱いが容易なビス(トリフルオロメチル)亜鉛粉末が提案でき、工業的にそれを用いた各種トリフルオロメチル基含有化合物の製造が可能となった。