【解決手段】グルカン、アルギン酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択される少なくとも一つの多糖類と、過ヨウ素酸またはその塩とを接触させて、酸化的開裂により生じたアルデヒド基を含む繰り返し単位を全繰り返し単位中、1.0モル%以上含有する変性多糖類を生成する工程と、変性多糖類とアミノ基含有化合物とを接触させ、変性多糖類を分解する工程とを有する、多糖類の分解方法。
グルカン、アルギン酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択される少なくとも一つの多糖類と、過ヨウ素酸またはその塩とを接触させて、酸化的開裂により生じたアルデヒド基を含む繰り返し単位を全繰り返し単位中、1.0モル%以上含有する変性多糖類を生成する工程と、
前記変性多糖類とアミノ基含有化合物とを接触させ、変性多糖類を分解する工程とを有する、多糖類の分解方法。
前記アミノ酸が、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、チロシン、バリン、およびシステインからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項2に記載の多糖類の分解方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、セルロースに代表される難溶性の多糖類は、溶媒への溶解性や、分解性が悪い。そのため、非特許文献1では、セルラーゼなどの酵素を利用して細胞を培養した後、生体外でセルロールを分解する方法が使用されており、生体内への応用が困難である。
そのため、多糖類を細胞培養用の足場材料などに適用した後であっても、生体内においてこの足場材料に使用された多糖類を容易に分解し得る多糖類の分解方法が求められている。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、簡便な手順により多糖類を容易に分解し得る、多糖類の分解方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、容易に分解し得る変性セルロースを用いた細胞培養用担体およびマイクロ粒子を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、過ヨウ素酸またはその塩で変性した変性多糖類が、アミノ基含有化合物によって容易に分解し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、以下に示す手段により上記課題を解決し得る。
【0007】
(1) グルカン、アルギン酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択される少なくとも一つの多糖類と、過ヨウ素酸またはその塩とを接触させて、酸化的開裂により生じたアルデヒド基を含む繰り返し単位を全繰り返し単位中、1.0モル%以上含有する変性多糖類を生成する工程と、
前記変性多糖類とアミノ基含有化合物とを接触させ、変性多糖類を分解する工程とを有する、多糖類の分解方法。
(2) 前記アミノ基含有化合物が、アミノ酸、および、タンパク質からなる群から選択される少なくとも1つを含む、(1)に記載の多糖類の分解方法。
(3) 前記アミノ酸が、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、チロシン、バリン、およびシステインからなる群から選択される少なくとも1種を含む、(2)に記載の多糖類の分解方法。
(4) 後述する一般式(1)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して1.0モル%以上含有する変性セルロースを含む細胞培養用担体。
(5) 後述する一般式(1)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して1.0モル%以上含有する変性セルロースを含むマイクロ粒子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡便な手順により多糖類を容易に分解し得る、多糖類の分解方法を提供することができる。
また、本発明によれば、容易に分解し得る変性セルロースを用いた細胞培養用担体およびマイクロ粒子を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の多糖類の分解方法、並びに、細胞培養用担体およびマイクロ粒子の好適態様について説明する。
まず、本発明の特徴点について詳述する。
本発明の特徴点は、上述したように、所定の多糖類を過ヨウ素酸またはその塩で処理して得られるアルデヒド基を含む繰り返し単位を有する変性多糖類を、アミノ基含有化合物と接触させる点が挙げられる。該態様において多糖類の分解が生じる詳細なメカニズムは不明だが、以下のように推測される。まず、変性多糖類中のアルデヒド基と、アミノ基含有化合物とが反応して、いわゆるシッフ塩基結合(−N=CH−)を形成し、該結合が多糖類の主鎖の分解に寄与していると推測される。なお、該主鎖の分解が進行するためには、変性多糖類中のアルデヒド基を含む繰り返し単位が所定量以上必要となる。
【0010】
以下では、まず、多糖類の分解方法について詳述する。
多糖類の分解方法は、変性多糖類を生成する工程(生成工程)と、変性多糖類を分解する工程(分解工程)とを少なくとも備える。以下、工程毎に使用される材料、および、手順について詳述する。
【0011】
<生成工程>
生成工程は、グルカン、アルギン酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択される多糖類と、過ヨウ素酸またはその塩とを接触させて、酸化的開裂により生じたアルデヒド基を含む繰り返し単位を全繰り返し単位中、1モル%以上含有する変性多糖類を生成する工程である。該工程によって、細胞培養用担体やマイクロ粒子などに使用可能な変性多糖類が得られる。
以下では、まず、本工程で使用される材料(多糖類、過ヨウ素酸またはその塩、など)について詳述し、その後、工程の手順を詳述する。
【0012】
(多糖類)
本工程で使用される多糖類は、グルカン、アルギン酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択される少なくとも一つを含む。これら多糖類には、以下式(A)で表されるジオール構造が部分構造として含まれており、スキーム1に示すように、後述する過ヨウ素酸またはその塩と接触(反応)させることによって酸化的開裂して、2つのアルデヒド基が生成する。なお、スキーム1中、*は結合位置を示す。
【0014】
なお、グルカンとは、グルコースを構成糖とする多糖類であり、α−グルカンおよびβ−グルカンを含む。より具体的には、α−グルカンとしては、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、プルラン、デキストランなどが挙げられる。また、β−グルカンとしては、セルロース、ラミナラン、リケナンなどが挙げられる。
【0015】
(過ヨウ素酸またはその塩)
過ヨウ素酸は、分子式H
5IO
6で表される化合物である。
過ヨウ素酸の塩(過ヨウ素酸塩)としては、過ヨウ素酸ナトリウム(メタ過ヨウ素酸ナトリウム)NaIO
4、パラヨウ素酸ナトリウムNa
3H
2IO
6および過ヨウ素酸カリウムKIO
4などが挙げられる。
【0016】
(工程の手順)
本工程では、上記多糖類と、過ヨウ素酸またはその塩とを接触させることができれば、手順は特に制限されない。例えば、溶媒の存在下、多糖類と、過ヨウ素酸またはその塩とを接触(反応)させる方法(以後、溶液法とも称する)が挙げられる。つまり、溶液中で、多糖類と、過ヨウ素酸またはその塩とを混合する方法が挙げられる。
該溶液を調製する手順は特に制限されず、多糖類を含む溶液に過ヨウ素酸またはその塩を添加する方法や、過ヨウ素酸またはその塩を含む溶液に多糖類を添加する方法などが挙げられる。なお、過ヨウ素酸またはその塩を添加する場合、その添加方法は特に制限されないが、一括で添加しても、分割して添加してもよい。
上記溶媒の種類は特に制限されず、公知の溶媒(水または有機溶媒)を使用することができる。なお、多糖類は、溶液中に溶解していても、分散していてもよい。
【0017】
溶液中における多糖類の含有量は特に制限されないが、反応がより効率的に進行する点で、溶液全量に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
また、溶液中における過ヨウ素酸およびその塩の合計含有量は特に制限されないが、反応がより効率的に進行する点で、溶液全量に対して、1〜75質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。
【0018】
上記溶液法の場合における処理温度(反応温度)は特に制限されず、使用される多糖類の種類により最適な温度が選択されるが、反応がより効率的に進行する点で、20〜70℃が好ましく、25〜50℃がより好ましい。
処理時間(反応時間)は特に制限されず、反応性および生産性のバランスがより優れる点で、0.5〜48時間が好ましく、1〜24時間がより好ましい。
【0019】
なお、接触時の多糖類の形態は特に制限されず、粉末であっても、膜であっても、多孔体であってもよい。なお、多孔体は、細胞培養用の担体(足場:スキャホールド)として使用可能である。
多糖類を含む多孔体の形成方法は特に制限されず、公知の方法が採用される。例えば、多糖類、塩(例えば、食塩)、およびイオン性液体を含む組成物に加熱処理を施し、ゲルを得る工程と、得られたゲルを水または有機溶媒(例えば、エタノールなどのアルコール系溶媒)で洗浄して、塩およびイオン性液体を抽出して、多孔体を得る工程とを備える方法が挙げられる。
【0020】
なお、上記手順で使用されるイオン性液体とは、陽イオンと陰イオンとの特殊な組み合わせで、25℃の常温でも液状状態でかつ安定した塩のことをいう。イオン性液体としては、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、イミダゾリウムなどが挙げられる。より具体的には、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ペンチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチルピリジニウム、1−ブチルピジリニウム、1−ヘキシルピリジニウムなどが挙げられる。
【0021】
(変性多糖類)
上記手順で得られた多糖類は、上述したスキーム1に示すように、過ヨウ素酸またはその塩による酸化的開裂により生じたアルデヒド基を含む繰り返し単位を含む変性多糖類である。つまり、2つのアルデヒド基を含む繰り返し単位を有する変性多糖類が得られる。なお、繰り返し単位とは、いわゆる単糖ユニットを意図する。
変性多糖類の全繰り返し単位中における、酸化的開裂により生じたアルデヒド基を含む繰り返し単位(以後、繰り返し単位Xとも称する)の含有量は、1.0モル%以上であり、多糖類の分解がより効率的に進行する点で、1.5モル%以上が好ましく、2.0モル%以上がより好ましい。なお、上限は特に制限されず、100モル%であるが、反応性および生産性などの点から、50モル%以下の場合が多い。
繰り返し単位Xの含有量が1.0モル%未満の場合、分解が効率よく進行せず、所望の効果が得られない。
上記繰り返し単位Xの含有量は、ヨウ素酸化還元滴定によって測定する。より具体的には、変性多糖類を含む溶液中に、ヨウ素とでんぷんとを加えて、その後、チオ硫酸ナトリウム水溶液を用いて滴定する方法である。
【0022】
例えば、多糖類としてセルロースを用いた場合は、上記繰り返し単位Xとしては、以下式(1)で表される繰り返し単位(糖ユニット)を含む変性セルロース(アルデヒド変性セルロース)が生成される。
【0024】
<分解工程>
分解工程は、上記生成工程で得られた変性多糖類とアミノ基含有化合物とを接触させ、変性多糖類を分解する工程である。
以下では、まず、本工程で使用される材料(アミノ基含有化合物など)について詳述し、その後、工程の手順を詳述する。
【0025】
(アミノ基含有化合物)
アミノ基含有化合物とは、アミノ基(−NH
2)を有する化合物を意図する。該化合物であれば、上述した変性多糖類に作用して、分解を促すことができる。
アミノ基含有化合物の種類は特に制限されず、アミノ基を有する低分子化合物であっても、アミノ基を有する高分子化合物であってもよい。なお、低分子化合物とは分子量が1000以下の化合物であり、高分子化合物としては分子量が1000超の化合物である。
アミノ基含有化合物中におけるアミノ基の数は特に制限されず、1個でも、複数(2個以上)であってもよい。
【0026】
アミノ基含有化合物の具体例としては、例えば、アミノ酸、ポリアミン、タンパク質(例えば、アルブミン、グロブリン)などが挙げられる。なかでも、多糖類の分解がより効率的である点で、アミノ酸が好ましい。
アミノ酸としては、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、チロシン、バリン、システインが挙げられる。なかでも、多糖類の分解がより効率的である点で、グリシン、アラニンが好ましい。
【0027】
(工程の手順)
本工程では、変性多糖類とアミノ基含有化合物とを接触させることができれば、手順は特に制限されない。例えば、溶媒の存在下、変性多糖類とアミノ基含有化合物とを接触させる方法(以後、溶液法とも称する)が挙げられる。つまり、溶液中で、変性多糖類とアミノ基含有化合物とを混合する方法が挙げられる。
該溶液を調製する手順は特に制限されず、変性多糖類を含む溶液にアミノ基含有化合物を添加する方法や、アミノ基含有化合物を含む溶液に変性多糖類を添加する方法などが挙げられる。
上記溶媒の種類は特に制限されず、公知の溶媒(水または有機溶媒)を使用することができる。なお、多糖類は、溶液中に溶解していても、分散していてもよい。
【0028】
溶液中における変性多糖類の含有量は特に制限されないが、分解がより効率的に進行する点で、溶液全量に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
また、溶液中におけるアミノ基含有化合物の合計含有量は特に制限されないが、分解がより効率的に進行する点で、溶液全量に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
溶液中における、変性多糖類とアミノ基含有化合物との質量比(変性多糖類の質量/アミノ基含有化合物の質量)は特に制限されないが、分解がより効率的に進行する点で、0.1〜10が好ましく、0.5〜5がより好ましい。
【0029】
上記溶液法の場合における処理温度(反応温度)は特に制限されず、使用される多糖類の種類により最適な温度が選択されるが、分解がより効率的に進行する点で、10〜50℃が好ましく、25〜40℃がより好ましい。
処理時間(反応時間)は特に制限されず、分解性および生産性のバランスがより優れる点で、0.5〜48時間が好ましく、1〜24時間がより好ましい。
【0030】
上記2つの工程を経ることにより、多糖類は分解される。
本発明の多糖類の分解方法は、少なくとも上記生成工程および分解工程を有していればよく、その間に他の工程が含まれていてもよい。よって、例えば、生成工程において、多糖類を含む多孔体を用いて上記生成工程を実施した後、得られた多孔体を用いて細胞培養用担体(細胞培養用足場)として使用し、その後、上記分解工程の処理を施してもよい。
特に、生体内においてはアミノ酸、タンパク質などのアミノ基含有化合物が多数存在するため、例えば、上記変性多糖類を含む多孔体を細胞培養用担体として利用して細胞を培養した後、得られた担体を直接体内に配置した場合でも、担体がアミノ基含有化合物によって分解され、自然と体内から排出される。つまり、上記変性多糖類は、生体内において分解可能である。
【0031】
(用途)
上記変性多糖類(特に、上記変性セルロース)は、生体内に多数存在するアミノ酸、タンパク質などのアミノ基含有化合物との接触により分解のスイッチが入る材料であり、様々な用途に適用することができる。
例えば、上述したように、上記変性多糖類を含む細胞培養用担体として用いることができる。言い換えると、上記変性多糖類は、細胞培養用の足場材料として用いることができる。
細胞培養用担体として用いる場合、該担体は多孔体であることが好ましい。なお、その場合、多孔体の平均孔径は、細胞培養の点から、10〜300μm程度が好ましい。上記平均孔径は、少なくとも100個の孔の孔径(直径)を測定して、算術平均した値である。なお、孔が真円状でない場合は、長径を孔径とする。
また、細胞培養用担体以外にも様々な用途に適用することができ、例えば、ドラッグデリバリーシステムに使用されるマイクロ粒子や、人工骨や、などに使用することができる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
<実施例A>
<実施例A1>
セルロースメンブラン(再生セルロース透析膜(エーディア株式会社))(1g)を、過ヨウ素酸ナトリウム水溶液(過ヨウ素酸ナトリウムの含有量は、水溶液全量に対して、2.5質量%。溶媒は、水)に浸漬させ、50℃で1時間(以後、接触時間Xとも称する)攪拌を実施した。反応終了後、水でセルロースメンブランを洗浄し、さらに25℃で乾燥処理を実施した。
得られた変性セルロースメンブランの変性セルロース中における、酸化的開裂により生じたアルデヒド基を含む繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、1.1モル%であった。
なお、該繰り返し単位の含有量は、ヨウ素酸化還元滴定によって測定した。
【0034】
得られた変性セルロースメンブランを、グリシンを含む水溶液(グリシンの含有量は、水溶液全量に対して、15質量%。溶媒は、水)に浸漬させ、25℃で16時間静置した。
静置後、変性セルロースメンブランの重量を測定したところ、グリシンを含む水溶液中に浸漬させる前と比較して、変性セルロースメンブランの質量減少率(%){100−(浸漬後の質量/浸漬前の質量)×100}は、100%であった。
【0035】
<実施例A2〜A7>
接触時間Xおよびグリシンの含有量を後述する表1に示すように変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、セルロースメンブランの分解を実施した。各実施例における、質量減少率の結果は、表1にまとめて示す。
【0036】
<実施例A8>
過ヨウ素酸ナトリウム水溶液中の過ヨウ素酸ナトリウムの含有量を2.5質量%から5質量%に、グリシンの含有量を15質量%から5質量%に変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、セルロースメンブランの分解を実施したところ、質量減少率は100%であった。
【0037】
<実施例A9〜A16>
接触時間Xおよびグリシンの含有量を後述する表1に示すように変更した以外は、実施例A8と同様の手順に従って、セルロースメンブランの分解を実施した。各実施例における、質量減少率の結果は、表1にまとめて示す。
【0038】
<実施例A17>
過ヨウ素酸ナトリウム水溶液中の過ヨウ素酸ナトリウムの含有量を2.5質量%から1質量%に変更した以外は、実施例A7と同様の手順に従って、セルロースメンブランの分解を実施したところ、質量減少率は100%であった。
【0039】
<比較例A1>
過ヨウ素酸ナトリウム水溶液中の過ヨウ素酸ナトリウムの含有量を5質量%から1質量%に変更した以外は、実施例A8と同様の手順に従って、セルロースメンブランの分解を実施したところ、質量減少率は10.6%であった。
【0040】
表1中の「繰り返し単位Xの含有量」は、各実施例および比較例で得られた変性セルロース中における、酸化的開裂により生じたアルデヒド基を含む繰り返し単位の含有量(全繰り返し単位に対する含有量)を表す。
【0041】
【表1】
【0042】
上記表1に示すように、本発明の分解方法によれば、セルロースメンブランが効率よく分解した。
一方、繰り返し単位Xの含有量が所定値より少ない比較例A1においては、十分な分解が進行しなかった。
【0043】
<実施例B>
<実施例B1>
セルロース粉末(シグマ製)(1g)およびNaCl(0.2g)を、1−ブチル−3−メチルアミダゾリウムクロライド(5g)に添加して溶解させ、その後、100℃で24時間加熱処理を施した。その後、型内(直径10mm×厚み2mm)に溶液を流し込み、室温で7日間静置して、ゲルを得た。
得られたゲルを水で洗浄することにより、溶液中のNaClおよび1−ブチル−3−メチルアミダゾリウムクロライドを抽出し、セルロースからなる多孔体(平均孔径:250μm)を得た。
得られた多孔体(1g)を、過ヨウ素酸ナトリウム水溶液(過ヨウ素酸ナトリウムの含有量は、水溶液全量に対して、5質量%。溶媒は、水)に浸漬させ、50℃で1時間攪拌を実施した。反応終了後、水で多孔体を洗浄し、さらに25℃で乾燥処理を実施した。
得られた多孔体に含まれる変性セルロース中における、酸化的開裂により生じたアルデヒド基を含む繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、1.5モル%であった。
なお、該繰り返し単位の含有量は、ヨウ素酸化還元滴定によって測定した。
【0044】
得られた多孔体を、グリシンを含む水溶液(グリシンの含有量は、水溶液全量に対して、5質量%。溶媒は、水)に浸漬させ、25℃で16時間静置した。
静置後、多孔体の重量を測定したところ、グリシンを含む水溶液中に浸漬させる前と比較して、多孔体の質量減少率(%){100−(浸漬後の質量/浸漬前の質量)×100}は、100%であった。
【0045】
<実施例B2>
過ヨウ素酸ナトリウム水溶液中の過ヨウ素酸ナトリウムの含有量を5質量%から10質量%に変更した以外は、実施例B1と同様の手順に従って、多孔体の分解を実施したところ、質量減少率は100%であった。
【0046】
<実施例B3>
過ヨウ素酸ナトリウム水溶液中の過ヨウ素酸ナトリウムの含有量を5質量%から15質量%に変更した以外は、実施例B1と同様の手順に従って、多孔体の分解を実施したところ、質量減少率は100%であった。
【0047】
<実施例B4>
過ヨウ素酸ナトリウム水溶液中の過ヨウ素酸ナトリウムの含有量を5質量%から20質量%に変更した以外は、実施例B1と同様の手順に従って、多孔体の分解を実施したところ、質量減少率は100%であった。
【0048】
<実施例B5>
過ヨウ素酸ナトリウム水溶液中の過ヨウ素酸ナトリウムの含有量を5質量%から25質量%に変更した以外は、実施例B1と同様の手順に従って、多孔体の分解を実施したところ、質量減少率は100%であった。
【0049】
<比較例B1>
過ヨウ素酸ナトリウム水溶液中の過ヨウ素酸ナトリウムの含有量を5質量%から1質量%に変更した以外は、実施例B1と同様の手順に従って、多孔体の分解を実施したところ、質量減少率は5%であった。
【0050】
表2中の「繰り返し単位Xの含有量」は、各実施例および比較例で得られた変性セルロース中における、酸化的開裂により生じたアルデヒド基を含む繰り返し単位の含有量(全繰り返し単位に対する含有量)を表す。
【0051】
【表2】
【0052】
上記表2に示すように、本発明の分解方法によれば、セルロースからなる多孔体が効率よく分解した。
一方、繰り返し単位Xの含有量が所定値より少ない比較例B1においては、十分な分解が進行しなかった。