(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-48470(P2015-48470A)
(43)【公開日】2015年3月16日
(54)【発明の名称】発泡成形体の製造方法、発泡剤ペレット
(51)【国際特許分類】
C08J 9/06 20060101AFI20150217BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20150217BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20150217BHJP
C08K 5/092 20060101ALI20150217BHJP
B29C 47/00 20060101ALI20150217BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20150217BHJP
【FI】
C08J9/06CER
C08L101/00
C08K3/26
C08K5/092
B29C47/00
B29K105:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-183367(P2013-183367)
(22)【出願日】2013年9月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】大野 慶詞
(72)【発明者】
【氏名】佐野 尊
【テーマコード(参考)】
4F074
4F207
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA18
4F074AA20
4F074AA21
4F074AA24
4F074AA26
4F074AA32
4F074BA03
4F074BA29
4F074CA22
4F074DA02
4F074DA03
4F207AB02
4F207AC01
4F207AG20
4F207KA01
4F207KA11
4F207KF03
4J002BB031
4J002BB121
4J002BB171
4J002BC031
4J002DE206
4J002EF066
4J002FD326
(57)【要約】
【課題】発泡成形体の発泡倍率を高めることができる、発泡成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明によれば、重曹及びクエン酸と有機溶剤を含む混合物に圧縮力を加えて形成した発泡剤ペレットと、原料樹脂とをそれぞれ押出機に投入し混練してなる混練樹脂を、前記押出機から押し出して発泡成形体を成形することを特徴とする発泡成形体の製造方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重曹及びクエン酸と有機溶剤を含む混合物に圧縮力を加えて形成した発泡剤ペレットと、原料樹脂とをそれぞれ押出機に投入し混練してなる混練樹脂を、前記押出機から押し出して発泡成形体を成形することを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
前記有機溶剤は、炭素数が1〜6のモノヒドロキシアルコールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重曹と前記クエン酸の合計に対する前記有機溶剤の割合は、2〜25質量%である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物は、分散剤を含む、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記原料樹脂に対する前記発泡剤ペレットの割合は、0.1〜10質量%である、請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の方法。
【請求項6】
重曹及びクエン酸と有機溶剤を含む混合物に圧縮力を加えて形成した発泡剤ペレット。
【請求項7】
前記有機溶剤は、炭素数が1〜6のモノヒドロキシアルコールを含む、請求項6に発泡剤ペレット。
【請求項8】
前記混合物は、分散剤を含む、請求項6又は請求項7に記載の発泡剤ペレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学発泡剤を用いた発泡成形体の製造方法、及び、発泡剤ペレットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡成形体を得る方法として重曹とクエン酸(又はクエン酸塩)とを使用した無機系化学発泡剤を用いる方法が知られている(特許文献1参照)。この化学発泡剤は、酸(クエン酸)と塩基(重曹)との化学反応により炭酸ガスを発生させ、そのガスにより熱可塑性樹脂を発泡させるというものである。重曹、クエン酸は、それぞれ粉末状態で使用することもできるが、取り扱い性の観点から、重曹とクエン酸とを1つのマスターバッチとして、当該マスターバッチを原料樹脂と混練して成形するのが一般的である。
【0003】
しかし従来のマスターバッチ作製方法では、その作製過程で発生する熱と混練により重曹とクエン酸が反応し、十分な発泡性能を得る事ができなかった。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献2では、重曹マスターバッチと、当該重曹マスターバッチとは別に形成されたクエン酸マスターバッチと、原料樹脂と、をそれぞれ押出機に投入し混練してなる混合樹脂を、前記押出機から押し出して発泡成形体を成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−225638号公報
【特許文献2】特開2012−67256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の方法によれば、特許文献1の方法に比べて、発泡倍率を高めることができ、見掛け密度が小さい発泡成形体を提供することが可能になっている。
【0007】
しかし、発泡成形体の用途によって見掛け密度をさらに小さくすることが求められており、そのために、発泡倍率を高めることが求められている。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、発泡成形体の発泡倍率を高めることができる、発泡成形体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、重曹及びクエン酸と有機溶剤を含む混合物に圧縮力を加えて形成した発泡剤ペレットと、原料樹脂とをそれぞれ押出機に投入し混練してなる混練樹脂を、前記押出機から押し出して発泡成形体を成形することを特徴とする発泡成形体の製造方法が提供される。
【0010】
本発明者らは従来技術とは発想を転換して、重曹及びクエン酸をベース樹脂と共に混練してマスターバッチを作成する代わりに、重曹及びクエン酸と有機溶剤を含む混合物に圧縮力を加えて形成した発泡剤ペレットを使用することを思いついた。そして、この発泡剤ペレットと原料樹脂とを用いて発泡成形体を成形してみたところ、特許文献1〜2の何れよりも、発泡倍率が高くなるという驚きの結果が得られた。このような結果が得られた理由は完全には明らかになっていないが、(1)特許文献1〜2の方法ではマスターバッチを作製するための混練時に重曹とクエン酸が高温にさらされることによって重曹が分解されたり、重曹がクエン酸と反応したりする場合があると考えられるが、本発明では重曹とクエン酸が高温にさらされないので、上記分解や反応が抑制される点、(2)特許文献2では、押出機内において、重曹マスターバッチと、クエン酸マスターバッチと、原料樹脂とを混練しているので、押出機内において重曹とクエン酸が離れて存在しており、両者間の反応が不十分になる場合があると考えられるが、本発明では、重曹及びクエン酸と有機溶剤を含む混合物を圧縮成形して形成した発泡剤ペレットを用いるので、重曹とクエン酸の間の反応が効率的に進む点、(3)特許文献1〜2では、マスターバッチを作成する際にベース樹脂を用いているが、このベース樹脂は、溶融張力などの物性の点において、必ずしも発泡成形に適したものではないので、その分だけ発泡倍率が低下する場合があると考えられるが、本発明では、ベース樹脂を用いていないので、樹脂の組成が発泡成形に最適化される点、の少なくとも3点において、本発明は、従来技術よりも優れており、このことが、本発明において発泡倍率が高くなった理由であると推測される。
【0011】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記有機溶剤は、炭素数が1〜6のモノヒドロキシアルコールを含む。
好ましくは、前記重曹と前記クエン酸の合計に対する前記有機溶剤の割合は、2〜25質量%である。
好ましくは、前記混合物は、分散剤を含む。
好ましくは、前記原料樹脂に対する前記発泡剤ペレットの割合は、0.1〜10質量%である。
また、本発明によれば、重曹及びクエン酸と有機溶剤を含む混合物に圧縮力を加えて形成した発泡剤ペレットが提供される。
好ましくは、前記有機溶剤は、炭素数が1〜6のモノヒドロキシアルコールを含む。
好ましくは、前記混合物は、分散剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例で使用したディスクダイを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0014】
本発明の一実施形態の発泡成形体の製造方法は、重曹及びクエン酸と有機溶剤を含む混合物に圧縮力を加えて形成した発泡剤ペレットと、原料樹脂とをそれぞれ押出機に投入し混練してなる混練樹脂を、前記押出機から押し出して発泡成形体を成形することを特徴とする。
以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0015】
1.発泡剤ペレット
発泡剤ペレットは、重曹及びクエン酸と有機溶剤を含む混合物に圧縮力を加えることによって形成することができる。
重曹及びクエン酸は、例えば粉末状のものであり、重曹粉末及びクエン酸粉末の平均粒径は、ペレット化が可能なものであれば特に限定されず、例えば20〜1000μmであり、50〜300μmが好ましい。これらの平均粒径は、具体的には例えば、20、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、1000μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本明細書において、「平均粒径」は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0016】
クエン酸に対する重曹の質量比は、特に限定されないが、例えば、1〜100であり、好ましくは1〜8である。この質量比が小さすぎると発泡倍率が低くなりやすく、また、この質量比を必要以上に大きくしても発泡倍率のさらなる向上は見込めず、重曹が無駄になるからである。この質量比は、具体的には例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、20、50、100であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
有機溶剤の種類は、特に限定されないが、炭素数が1〜6のモノヒドロキシアルコールを使用した場合に、発泡剤ペレットの強度が比較的高くなり且つ発泡剤ペレット表面のベタつきが小さくなるので、発泡剤ペレットを押出機への供給する際に、割れたり、搬送経路中の配管に付着したりするといった問題が生じにくいので好ましい。上記モノヒドロキシアルコールとしては、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、i−ブタノール等アルコール、又はこれらの混合物を挙げることができる。なお、本発明者による実験によると、ヒドロキシル基が有さない有機溶剤を用いた場合、ペレットの強度が不十分になりやすく、ヒドロキシル基を2つ以上有する有機溶剤を用いた場合、ペレット表面がベタつきやすくなるという問題が生じやすい。なお、有機溶剤は、適切な強度を有する発泡剤ペレットを形成可能である限り、炭素数が1〜6のモノヒドロキシアルコール以外の成分を含んでもよく、その場合、有機溶剤全体に対する、炭素数が1〜6のモノヒドロキシアルコールの割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。この割合は、具体的には例えば、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
重曹とクエン酸の合計に対する有機溶剤の割合は、特に限定されないが、2〜25質量%が好ましく、3〜20質量%がさらに好ましい。この割合が小さすぎると、発泡剤ペレットの強度が不十分になりやすく、この割合が大きすぎると、発泡剤ペレットがベタつきやすくなるので好ましい。この割合は、具体的には例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
上記混合物は、分散剤を含んでもよい。分散剤を添加することによって発泡倍率をさらに高めることができる。分散剤としては、12−ヒドロキシステアリン酸のCa,Zn,MG,Al,Ba,Li,Na塩などの金属石鹸が好ましい。重曹とクエン酸の合計に対する分散剤の割合は、特に限定されないが、0.1〜1が好ましい。この割合が小さすぎると分散剤を添加の効果が十分に得られず、大きすぎると、分散剤がネットワークを構成し樹脂の発泡倍率を上がりにくくなる傾向があるからである。この割合は、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、上記混合物には、着色剤や酸化防止剤等の機能材料を添加してもよい。
【0020】
上記混合物に対して圧縮力を加えて発泡剤ペレットを形成する方法は、特に限定されないが、一例では、押出造粒機を用いて上記混合物に対して圧縮力を加えながら所定径の穴を有するディスクダイから上記混合物を押し出してストランドを形成し、このストランドを所望長さ(例:5mm程度)で切断することによって発泡剤ペレットを形成することができる。余分な有機溶剤を揮発させるために、ストランド又は発泡剤ペレットに対してエアーを吹きつけることが好ましい。上記ディスクダイの穴径(直径)は、例えば1〜5mmであり、2〜4mmが好ましい。ディスクダイの穴径は、発泡剤ペレットが原料樹脂と同程度の大きさになるように適宜選択される。この穴径は、具体的には例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0021】
2.発泡成形体の成形方法
上記発泡剤ペレットと、原料樹脂とをそれぞれ押出機に投入し混練してなる混練樹脂を、前記押出機から押し出すことによって混練樹脂を発泡させることができる。混練中に発泡剤ペレット中の重曹とクエン酸が反応して二酸化炭素が生成され、混練樹脂が押出機から押し出されると混練樹脂に含まれている二酸化炭素が膨張して混練樹脂が発泡される。発泡させた混練樹脂の成形方法は、特に限定されず、ブロー成形であっても射出成形であってもよい。ブロー成形の場合、混練樹脂は、円筒状に押し出されてパリソンが形成され、このパリソンを分割金型で挟み込んだ状態で金型内にエアーを吹き込むことによってパリソンを金型内で膨張させて金型の内面形状に沿った形状のブロー成形品が形成される。
【0022】
原料樹脂に対する発泡剤ペレットの割合は、原料樹脂の種類、ブロー成形温度、所望の見掛け密度によって適宜調整されるが、0.1〜10質量%であり、0.5〜5質量%が好ましい。この割合は、具体的には例えば、0.1、0.2、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
発泡成形体の発泡倍率は、特に限定されないが、例えば、1.8倍以上であり、2.8倍以上が好ましい。従来技術では成形条件を種々工夫しても発泡倍率を2.7倍よりも大きくすることができなかったが、本実施形態では、適量の上記発泡剤ペレットを用いることによって、発泡倍率を2.8以上にすることに成功した。発泡倍率の上限は、特に規定されないが、例えば4倍である。発泡倍率は、具体的には例えば、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4倍であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
原料樹脂は、単独で用いるのみならず、2種類以上を混合して用いても良い。例えば、主原料の特性が損なわれない範囲で、ポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、ブテン系樹脂、スチレン系樹脂等の他の樹脂成分を必要に応じて混合しても良い。
【0025】
尚、必要に応じて気泡調整剤を用いて気泡径を調整することができる。代表的なものとしては、タルク、シリカ、ゼオライト、モレキュラーシーブ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等の無機系気泡調整剤がある。これらの無機系気泡調整剤は気泡生成時の核となり、気泡をより微細にすることができる。その他の気泡調整剤としては発泡助剤として使用する有機酸の有機酸塩を気泡調整剤として用いる方法がある。これらは緩衝作用により、酸・塩基反応を穏やかにし、気泡の過度の成長を抑えることができる。
【実施例】
【0026】
1.有機溶剤の影響
発泡剤ペレットを作製する際に使用する有機溶剤の種類を種々変更して、発泡剤ペレットを作製し、有機溶剤が発泡剤ペレットの強度及びベタ付き度に与える影響を調べた。
【0027】
重曹粉末(平均粒子径50〜200μm程度のもの)/クエン酸粉末(平均粒子径50〜200μm程度のもの)を85/15(質量比)で混合した混合粉末100質量部に対して、表1に示す有機溶剤を8質量部添加して得られた混合物を
図1に示すディスクダイ(穴径φ3mm、有効厚み6mm)1上に載置させ、混合物上でローラーを120rpmで回転させることによって混合物に対して圧縮力を加えてディスクダイ1の穴から押し出した。押し出されたストランドをディスクダイ1の下側に配置されたカッター2を回転させることによって、長さが5mmになるように切断してペレットにすると共に、カッター2の下側に配置されたコンプレッサーから2kgf/cm
2のエアーをペレットに吹きつけた。外気温は25℃で統一した。
【0028】
得られたペレットが使用に耐えうるものであるかどうかの評価を行った。その結果を表1に示す。
表1から明らかなように、No.1〜4で示す有機溶剤を用いた場合には、実使用に耐える強度を有する発泡剤ペレットが得られた。一方、No.5〜6の有機溶剤を用いた場合には、一応は、発泡剤ペレットが形成されたが、押出機のホッパーへの供給時に砕けてしまった。No.7の有機溶剤を用いた場合には、発泡剤ペレットを形成することができるが、乾燥に時間がかかり過ぎて実使用に耐えるものではなかった。No.8の有機溶剤を用いた場合には、時間をかけて乾燥させても有機溶剤を十分に揮発させることができず、押出機への輸送中に配管の壁面に付着してしまった。No.9の有機溶剤を用いた場合には、時間をかけても乾燥が進まず、発泡剤ペレットが得られなかった。
以上より、有機溶剤として炭素数が1〜6のモノヒドロキシアルコールを用いた場合に、最も良好な結果が得られた。
【0029】
【表1】
【0030】
2.発泡剤ペレットの作製
2−1.発泡剤ペレットA
表1のNo.1と同様の条件で発泡剤ペレットAを作製した。
【0031】
2−2.発泡剤ペレットB
重曹粉末/クエン酸粉末/分散剤を28/22/50(質量比)で混合した混合粉末100質量部に対して、エタノールを16質量部添加して得られた混合物を用いた以外は、発泡剤ペレットAと同様の方法で発泡剤ペレットBを作製した。なお、分散剤としては、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(日東化成工業株式会社、商品名:MS−6)を使用した。
【0032】
3.重曹マスターバッチ/クエン酸マスターバッチの作製
重曹マスターバッチ(重曹MB)は、低密度ポリエチレン(融点106℃、MFR14g/10min)に重曹粉末をドライブレンドし、二軸押出機にて混練したものとした。尚、重曹は、重曹MB全体の40質量%を占めるように混合した。
クエン酸マスターバッチ(クエン酸MB)は、低密度ポリエチレン(融点106℃、MFR14g/10min)にクエン酸粉末をドライブレンドし、二軸押出機にて混練したものとした。尚、クエン酸は、クエン酸MB全体の40質量%を占めるように混合した。
質量比が、重曹MB:クエン酸MB=6:1となるように、重曹MBとクエン酸MBとをドライブレンドしたものを使用した。
【0033】
4.重曹及びクエン酸マスターバッチの作製
重曹及びクエン酸マスターバッチ(重曹及びクエン酸MB)は、低密度ポリエチレン(融点106℃、MFR14g/10min)に重曹粉末及びクエン酸粉末を質量比6:1でドライブレンドし、二軸押出機にて混練したものとした。尚、重曹及びクエン酸は、重曹及びクエン酸MB全体の40質量%を占めるように混合した。
【0034】
5.発泡成形体の作製
原料樹脂100質量部に対して表2に示す種類及び量の発泡剤を添加したものを押出機に供給し、アキュムレータヘッドを介して重力方向に発泡パリソンを押出した。アキュムレータで溶融樹脂を溜める際は、アキュムレータ内で溶融樹脂が発泡しない程度に加圧した。次いで、得られた発泡パリソンを金型で挟み、吹き込み針にて金型内に0.05MPaの圧縮空気を送り込み、ダクト形状の中空発泡成形体を形成した。成形体は肉厚1.5〜2.0mmとなるように形成した。発泡前の原料樹脂の比重と、得られた発泡成形体の比重をそれぞれ測定し、(発泡前の原料樹脂の比重)/(発泡成形体の比重)から発泡倍率を算出した。平均気泡径は、押出方向と直交する断面について、肉厚を測定する直線を引き、その直線と交差する気泡の長手寸法を測定し、その平均値から求めた。得られた結果を表2に示す。
【0035】
原料樹脂としては、WB140/BC8/DF605=75/20/5(質量比)を用いた。
WB140:プロピレン単独重合体(ボレアリス社製、商品名:Daploy WB140)
BC8:プロピレン単独重合体(日本ポリプロ社株式会社製、商品名:ノバテックPP)
DF605:ポリエチレン系エラストマー(三井化学株式会社製、商品名:タフマー)
【0036】
【表2】
【0037】
表2に示すように、従来のマスターバッチを用いた比較例1〜10では、マスターバッチの添加量を変化させても2.7倍を超える発泡倍率を達成することはできなかった。一方、発泡剤ペレットを用いた実施例1〜10では、発泡剤ペレットの添加量を最適化することによって2.8倍を超える発泡倍率が達成できた。また、分散剤を含む発泡剤ペレットBを用いた実施例6〜10では、発泡剤ペレットの添加量を最適化することによって発泡倍率をさらに高めることができた。
【0038】
また、発泡剤ペレットAについての実施例と、発泡剤ペレットBについての実施例の比較から、分散剤を添加することによって、気泡を微細化できることが確認された。