(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-48852(P2015-48852A)
(43)【公開日】2015年3月16日
(54)【発明の名称】ダブルソレノイドバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 35/04 20060101AFI20150217BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20150217BHJP
【FI】
F16K35/04
F16K31/06 305R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-178519(P2013-178519)
(22)【出願日】2013年8月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(72)【発明者】
【氏名】林 文也
(72)【発明者】
【氏名】松村 憲一
【テーマコード(参考)】
3H064
3H106
【Fターム(参考)】
3H064AA04
3H064BA06
3H064BA09
3H064BA15
3H064CA05
3H064DA08
3H106DA08
3H106DA25
3H106DA35
3H106DC09
3H106EE25
3H106EE34
3H106EE35
3H106GC01
(57)【要約】
【課題】ディテント機構を少ない部品点数により組立容易なものとして低コストでの製造を可能にし、しかも弁部材の位置の保持力を調整可能なソレノイドバルブを提供する。
【解決手段】弁孔2内において流路の切換を行う弁部材3が軸線方向の2位置に切り換えられるが、該2位置における弁部材3の位置保持が安定的でないダブルソレノイドバルブにおいて、弁孔2と弁部材3との間にディテント機構20Aを設ける。該ディテント機構は、弁孔内周面に円周溝21を設けて、ゴム弾性を有するリング状のディテント部材22収容すると共に、弁部材3の外周面における切換2位置間に台状部23を設け、その両端肩部を、ディテント部材の突出部22dを係止させる係止部23aとする。円周溝は平行する一対の溝側壁21aと底壁21bを備え、ディテント部材は、その溝側壁に対面する側壁22aがその溝側壁に接してその姿勢を保持可能なものとする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ボディを貫通する弁孔内において流路の切換を行う弁部材がその軸線方向の2位置に切り換えられ、それらの切換2位置における弁部材の軸線方向位置の保持が安定的でないダブルソレノイドバルブにおいて、
上記弁孔と弁部材との間にディテント機構が設けられ、
該ディテント機構は、上記弁孔内周面に円周溝を設けて、ゴム弾性を有する素材によって構成されたリング状のディテント部材を該円周溝に収容すると共に、弁部材の外周面における上記切換2位置間に台状部を設けて、該台状部の両端肩部を、上記円周溝からのディテント部材の突出部に係止させる切換2位置用の係止部とし、
上記ディテント部材を収容する円周溝は、深さ方向に平行する一対の溝側壁と該溝側壁の内底間をつなぐ底壁を備えたものとして構成し、該円周溝に収容するディテント部材は上記一対の溝側壁に対面する側壁を有し、該側壁の全部または一部が上記溝側壁に接してその姿勢を保持可能なものとしている、
ことを特徴とするダブルソレノイドバルブ。
【請求項2】
上記円周溝に収容したディテント部材が、該円周溝の底壁との間に隙間を有し、該ディテント部材における上記円周溝からの突出部の上記台状部に対する乗り上げが、ディテント部材自体の周方向の伸長のみによって行われ、その伸長力によって弁部材の保持力を調整可能にしている、
ことを特徴とする請求項1に記載のダブルソレノイドバルブ。
【請求項3】
上記円周溝に収容したディテント部材が、その円周の複数個所に、上記円周溝から突出して弁部材の台状部に乗り上げる部分的な乗り上げ部を有し、該乗り上げ部の長さの総和及び接触圧の強さによってディテント部材による弁部材の保持力を調整可能にしている、
ことを特徴とする請求項1に記載のダブルソレノイドバルブ。
【請求項4】
上記円周溝に収容したディテント部材が、該円周溝の底壁に接すると共に、上記円周溝から突出して全周において弁部材の台状部に乗り上げる突出部を有するものとして構成され、且つ、該ディテント部材の側壁に上記円周溝の溝側壁に接する放射方向の複数のリブを突設し、該リブ間におけるディテント部材の側壁と円周溝の溝側壁との間に形成される空間を、ディテント部材における上記突出部の台状部への乗り上げによる該ディテント部材の径方向の圧縮に伴う厚さ増大を吸収するための空間とした、
ことを特徴とする請求項1に記載のダブルソレノイドバルブ。
【請求項5】
弁孔内周面のディテント部材を収容する円周溝が、上記弁ボディと、該弁ボディの軸線方向の一端に上記弁孔の延長部を内設して連結したアダプタプレートとの間において、弁ボディと該アダプタプレートの一方または双方の接触面を切除して形成されている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダブルソレノイドバルブ。
【請求項6】
弁ボディを貫通する弁孔内において流路の切換を行う弁部材がその軸線方向の2位置に切り換えられ、それらの切換2位置における弁部材の軸線方向位置の保持が安定的でないダブルソレノイドバルブにおいて、
上記弁孔と弁部材との間にディテント機構が設けられ、
該ディテント機構は、上記弁部材の外周面に円周溝を設けて、ゴム弾性を有する素材によって構成されたリング状のディテント部材を収容すると共に、弁孔内周面における上記切換2位置間に台状部を設けて、該台状部の両端肩部を、上記円周溝からのディテント部材の突出部を係止させる切換2位置用の係止部とし、
上記ディテント部材を収容する円周溝は、深さ方向に平行する一対の溝側壁と該溝側壁の内底間をつなぐ底壁を備えたものとして構成し、該円周溝に収容するディテント部材は上記一対の溝側壁に対面する側壁を有し、該側壁の全部または一部が上記溝側壁に接してその姿勢を保持可能なものとしている、
ことを特徴とするダブルソレノイドバルブ。
【請求項7】
上記弁部材の円周溝に収容したディテント部材が、その円周の複数個所に、上記円周溝から突出して弁孔内周面の台状部に乗り上げる部分的な乗り上げ部を有し、該乗り上げ部の長さの総和及び接触圧の強さによってディテント部材による弁部材の保持力を調整可能にしている、
ことを特徴とする請求項6に記載のダブルソレノイドバルブ。
【請求項8】
上記弁部材の円周溝に収容したディテント部材が、該円周溝の底壁に接すると共に、上記円周溝から突出して全周において弁孔内周面の台状部に乗り上げる突出部を有するものとして構成され、且つ、該ディテント部材の側壁に上記円周溝の溝側壁に接する放射方向の複数のリブを突設し、該リブ間におけるディテント部材の側壁と円周溝の溝側壁との間に形成される空間を、ディテント部材における上記突出部の台状部への乗り上げによる該ディテント部材の径方向の圧縮に伴う厚さ増大を吸収するための空間とした、
ことを特徴とする請求項6に記載のダブルソレノイドバルブ。
【請求項9】
弁部材の外周面の円周溝に収容したディテント部材の該円周溝からの突出部を係止させる切換2位置用の係止部が、上記弁ボディの軸線方向の一端に上記弁孔の延長部を内設して連結したアダプタプレートにおける該弁孔の延長部の内周面に、上記切換2位置間の台状部を設けることにより、該台状部の両端肩部に形成されている、
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のダブルソレノイドバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁部材が弁ボディの弁孔内において2位置に切り換えられるようにしたダブルソレノイドバルブに関するものであり、特に、何らかの原因により弁部材がその切換位置から移動するのを抑制して、弁部材の動作の安定性を確保できるようにしたディテント機構を有するダブルソレノイドバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
弁ボディの弁孔内において周囲にシール部を有する弁部材がその軸線方向の2位置に切り換えられるようにしたダブルソレノイドバルブは、従来から極めて一般的に知られているものである。このダブルソレノイドバルブで、特に、弁部材がメタルシールのスプールにより形成されたものでは、該弁部材と弁孔内面との間の摩擦抵抗が小さいので、各切換位置における弁部材の保持を安定させるためには、弁部材をその切換位置に保持するディテント機構を付設する必要がある。
【0003】
この弁部材の切換位置への位置決め保持の安定化は、弁部材がメタルシールのスプールである場合に限られるものではなく、例えば、弁部材の周囲からゴム弾性を有するシール部材を突出させてそれを弁孔内面に摩擦接触させるようなバルブの場合でも、上記シール部材が弁孔内面に摩擦接触して位置保持されるために、弁部材の位置を切り換えた後にソレノイドへの通電を絶つと、衝撃的な外力等により弁部材がその切換位置から移動する可能性がない訳ではなく、弁部材が不測の原因で移動するのを抑制し、欧州安全規格(ISO13849−1)カテゴリー1に対応させる場合などには、上述のようなディテント機構に相当するものを付設する必要がある。
【0004】
上記ディテント機構としては、一例として挙げる特許文献1に開示されているように、スプールに周溝を設けたり、スプールの外周の等分複数位置に凹球面状の凹部を設け、一方、弁孔の内周においては、上記スプールの周溝或いは凹部に対応させたスプールの位置決め保持位置に、それぞれ背後からコイルスプリングで押圧された鋼球を出没自在に配設し、上記周溝或いは凹部に該鋼球の突出部分を嵌入させてスプールを切換位置に安定的に保持するものが一般的である。
しかしながら、このようなディテント機構では、その設置のために部品点数が多くなるだけでなく、弁孔内面に弾性的に突出する鋼球の保持構造を弁ボディに付設したり、スプールの外周に前記周溝や凹部を加工したりする必要があり、それらが製造コストを大きく押し上げることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−22123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、ディテント機構を少ない部品点数により組立容易のものとして構成することにより、低コストでの製造を可能にし、しかも、弁部材の切換位置の保持力を多様に調整可能にしたダブルソレノイドバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明によれば、弁ボディを貫通する弁孔内において流路の切換を行う弁部材がその軸線方向の2位置に切り換えられ、それらの切換2位置における弁部材の軸線方向位置の保持が安定的でないダブルソレノイドバルブにおいて、上記弁孔と弁部材との間にディテント機構が設けられ、該ディテント機構は、上記弁孔内周面に円周溝を設けて、ゴム弾性を有する素材によって構成されたリング状のディテント部材を該円周溝に収容すると共に、弁部材の外周面における上記切換2位置間に台状部を設けて、該台状部の両端肩部を、上記円周溝からのディテント部材の突出部に係止させる切換2位置用の係止部とし、上記ディテント部材を収容する円周溝は、深さ方向に平行する一対の溝側壁と該溝側壁の内底間をつなぐ底壁を備えたものとして構成し、該円周溝に収容するディテント部材は上記一対の溝側壁に対面する側壁を有し、該側壁の全部または一部が上記溝側壁に接してその姿勢を保持可能なものとしていることを特徴とする第1のダブルソレノイドバルブが提供される。
【0008】
また、本発明に係る上記第1のダブルソレノイドバルブの好ましい実施形態においては、上記円周溝に収容したディテント部材が、該円周溝の底壁との間に隙間を有し、該ディテント部材における上記円周溝からの突出部の上記台状部に対する乗り上げが、ディテント部材自体の周方向の伸長のみによって行われ、その伸長力によって弁部材の保持力を調整可能にしているものとして構成され、或いは、上記円周溝に収容したディテント部材が、その円周の複数個所に、上記円周溝から突出して弁部材の台状部に乗り上げる部分的な乗り上げ部を有し、該乗り上げ部の長さの総和及び接触圧の強さによってディテント部材による弁部材の保持力を調整可能にするものとして構成される。
【0009】
更に、本発明に係る上記第1のダブルソレノイドバルブの好ましい実施形態においては、上記円周溝に収容したディテント部材が、該円周溝の底壁に接すると共に、上記円周溝から突出して全周において弁部材の台状部に乗り上げる突出部を有するものとして構成され、且つ、該ディテント部材の側壁に上記円周溝の溝側壁に接する放射方向の複数のリブを突設し、該リブ間におけるディテント部材の側壁と円周溝の溝側壁との間に形成される空間を、ディテント部材における上記突出部の台状部への乗り上げによる該ディテント部材の径方向の圧縮に伴う厚さ増大を吸収するための空間として構成される。
【0010】
本発明に係る上記第1のダブルソレノイドバルブの好ましい実施形態においては、弁孔内周面のディテント部材を収容する円周溝が、上記弁ボディと、該弁ボディの軸線方向の一端に上記弁孔の延長部を内設して連結したアダプタプレートとの間において、弁ボディと該アダプタプレートの一方または双方の接触面を切除して形成される。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明によれば、弁ボディを貫通する弁孔内において流路の切換を行う弁部材がその軸線方向の2位置に切り換えられ、それらの切換2位置における弁部材の軸線方向位置の保持が安定的でないダブルソレノイドバルブにおいて、上記弁孔と弁部材との間にディテント機構が設けられ、該ディテント機構は、上記弁部材の外周面に円周溝を設けて、ゴム弾性を有する素材によって構成されたリング状のディテント部材を収容すると共に、弁孔内周面における上記切換2位置間に台状部を設けて、該台状部の両端肩部を、上記円周溝からのディテント部材の突出部を係止させる切換2位置用の係止部とし、上記ディテント部材を収容する円周溝は、深さ方向に平行する一対の溝側壁と該溝側壁の内底間をつなぐ底壁を備えたものとして構成し、該円周溝に収容するディテント部材は上記一対の溝側壁に対面する側壁を有し、該側壁の全部または一部が上記溝側壁に接してその姿勢を保持可能なものとしていることを特徴とする第2のダブルソレノイドバルブが提供される。
【0012】
また、本発明に係る上記第2のダブルソレノイドバルブの好ましい実施形態においては、上記弁部材の円周溝に収容したディテント部材が、その円周の複数個所に、上記円周溝から突出して弁孔内周面の台状部に乗り上げる部分的な乗り上げ部を有し、該乗り上げ部の長さの総和及び接触圧の強さによってディテント部材による弁部材の保持力を調整可能にしているものとして構成し、或いは、上記弁部材の円周溝に収容したディテント部材が、該円周溝の底壁に接すると共に、上記円周溝から突出して全周において弁孔内周面の台状部に乗り上げる突出部を有するものとして構成され、且つ、該ディテント部材の側壁に上記円周溝の溝側壁に接する放射方向の複数のリブを突設し、該リブ間におけるディテント部材の側壁と円周溝の溝側壁との間に形成される空間を、ディテント部材における上記突出部の台状部への乗り上げによる該ディテント部材の径方向の圧縮に伴う厚さ増大を吸収するための空間としたものとして構成される。
【0013】
本発明に係る上記第2のダブルソレノイドバルブの好ましい実施形態においては、弁部材の外周面の円周溝に収容したディテント部材の該円周溝からの突出部を係止させる切換2位置用の係止部が、上記弁ボディの軸線方向の一端に上記弁孔の延長部を内設して連結したアダプタプレートにおける該弁孔の延長部の内周面に、上記切換2位置間の台状部を設けることにより、該台状部の両端肩部に形成される。
【発明の効果】
【0014】
以上に詳述した本発明のダブルソレノイドバルブによれば、弁部材に対するディテント機構を少ない部品点数により組立容易のものとして構成することにより、低コストでの製造を可能にし、しかも、弁部材の切換位置の保持力を多様に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るダブルソレノイドバルブの第1実施例についての全体的構成を示す概要図である。
【
図2】上記第1実施例における要部(
図1のX部)の拡大縦断面図である。
【
図3】
図2におけるa−a位置での拡大横断面図である。
【
図4】上記第1実施例におけるディテント部材の変形例を示す
図2と同様な位置での拡大縦断面図である。
【
図5】
図4におけるb−b位置での拡大横断面図である。
【
図6】上記第1実施例におけるディテント部材の他の変形例を示す
図2と同様な位置での拡大縦断面図である。
【
図7】
図6におけるc−c位置での拡大横断面図である。
【
図8】本発明に係るダブルソレノイドバルブの第2実施例についての全体的構成を示す概要図である。
【
図9】上記第2実施例における要部(
図8のY部)の拡大縦断面図である。
【
図10】
図9におけるd−d位置での拡大横断面図である。
【
図11】上記第2実施例におけるディテント部材の変形例を示すところの
図9と同様な位置での拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係るダブルソレノイドバルブの第1実施例の全体的構成の概要を示している。このダブルソレノイドバルブは、複数部材の連結により構成した弁ボディ1に、それを長手方向に貫通する弁孔2を備え、その長手方向の中央部に、該弁ボディ1の供給ポートPに通じる供給流路10を連通させ、弁孔2におけるその供給流路10の両側に二つの出力ポートA,Bに通じる出力流路11a,11bを連通させると共に、弁孔2におけるそれらの出力流路11a,11bの各弁孔端側に、弁ボディ1の二つの排気ポートEA,EBに連なる排気流路12a,12bをそれぞれ連通させて、上記弁孔2内に上記流路を切り換える弁部材3を軸線方向に摺動自在に嵌挿している。
【0017】
上記弁部材3は、供給ポートPに連通する上記供給流路10を二つの出力流路11a,11bのいずれか一方に連通させると共に、他方の出力流路11a,11bをそれに隣接する排気流路12a,12bに連通させるための2位置に切換え可能なもので、上記弁部材3には、それを上記2位置にそれぞれ駆動するための駆動機構を付設している。
上記弁部材3の駆動機構としては、弁ボディ1の軸線方向の一端側にアダプタブロック4aが、また、上記弁ボディ1の他端側には、後述するアダプタプレート5を介してアダプタブロック4bがそれぞれ連結配置され、それらのアダプタブロック4a,4b内においては、それぞれ弁部材3の端部に当接してそれを駆動するピストン6a,6bを、それぞれのピストン室7a,7b内に摺動自在に収容している。
【0018】
これらのピストン6a,6bが摺動自在に収容された上記ピストン室7a,7bは、ピストンにおける弁部材3の端部の当接面側とは反対側の区画室が、この5ポートソレノイドバルブの一端側に固定されている周知の一対のパイロット電磁弁8a,8bの各パイロット出力ポート(図示省略)にそれぞれ連通されている。
【0019】
更に具体的に説明すると、上記パイロット電磁弁8aを通電により駆動すると、そのパイロット出力ポートからのパイロットエアが、ピストン6aを収容したアダプタブロック4a内の通路(図示省略)を経てピストン室7aに導入され、その際、パイロット電磁弁8bが非通電であれば、ピストン室7bがパイロット電磁弁8bを通して大気に開放されていて、パイロット電磁弁8aからのパイロットエアがピストン6aを介して弁部材3を押圧するので、該弁部材3が
図1において右端に達する第1の切換位置まで駆動される。その結果、供給ポートPに連なる供給流路10が出力ポートAに連通する出力流路11a側に開き、出力ポートAに接続されている所要の流体圧回路にエア供給される。
【0020】
逆に、上記パイロット電磁弁8aへの通電を絶ち、上記パイロット電磁弁8bを駆動すると、出力流路11aが排気流路12aに連通して、出力ポートAに接続されている流体圧回路の圧力エアが排気されると共に、パイロット電磁弁8bのパイロット出力ポートからのパイロットエアが、アダプタブロック4a、弁ボディ1、アダプタプレート5、及びアダプタブロック4b内の通路(図示省略)を経て、ピストン室7bに導入され、該パイロットエアがピストン6bを介して弁部材3を押圧するので、該弁部材3が
図1において左端に達する第2の切換位置まで駆動される。その結果、供給ポートPに連なる供給流路10が出力ポートBに連通する出力流路11b側に開き、出力ポートBに接続されている所要の流体圧回路に圧力エアが供給される。
【0021】
前述したように、上記基本的構成を有するダブルソレノイドバルブにおいては、図示の弁部材3のように、その周囲からゴム弾性を有するシール部材9を突出させてそれを弁孔2の内面に摩擦接触させるようにした場合においても、パイロット電磁弁8a,8bへの通電を行っていない状態での弁部材3の切換位置への位置決め保持は、必ずしも安定的なものではなく、そのため、上記ダブルソレノイドバルブにおいて弁部材3が不測の原因で移動するのを抑制するためには、ディテント機構に相当するものを付設する必要がある。
【0022】
本発明は、
図1のような基本的構成のダブルソレノイドバルブ、つまり、弁ボディを貫通する弁孔内において流路の切換を行う弁部材がその軸線方向の2位置に切り換えられ、それらの切換2位置における弁部材の軸線方向位置の保持が安定的でないものに付設するディテント機構を、少ない部品点数により組立容易のものとして構成することにより、低コストでの製造を可能にし、しかも、弁部材の切換位置の保持力を多様に調整可能にするものであり、以下においては、上記
図1のダブルソレノイドバルブにおける弁孔2と弁部材3との間に配設するディテント機構20A〜20Cの構成例について、
図2〜
図7を参照して詳細に説明する。
【0023】
まず、
図2は上記
図1のダブルソレノイドバルブにおけるX部の構成を拡大して示し、
図3は、
図2におけるa−a位置での横断面形状を示すものである。また、
図4及び
図6は、上記
図1のダブルソレノイドバルブにおけるX部に置き換えて用いるディテント機構20B,20Cの構成を拡大して示し、
図5は
図4におけるb−b位置での横断面形状を、
図7は
図6におけるc−c位置での横断面形状を示している。
【0024】
これらのディテント機構20A〜20Cにおいて共通する構成は、上記弁孔2の内周面に円周溝21を設けて、ゴム弾性を有する素材によって構成されたリング状のディテント部材22を該円周溝21に収容すると共に、弁部材3の外周面における上記切換2位置間に台状部23を設けて、該台状部23の両端肩部を、上記円周溝21からのディテント部材22の突出部22dに係止させる切換2位置用の係止部23aとして構成している。なお、弁部材3における台状部23の肩部がディテント部材22の突出部22dから離れる方向への弁部材3の移動は、該弁部材3の端部がピストンに当接することにより制限されるものである。
【0025】
上記ディテント部材22を収容する円周溝21は、深さ方向に平行する一対の平面状の溝側壁21aと該溝側壁21aの内底間をつなぐ平坦な底壁21bを備えたものとして構成し、一方、該円周溝21に収容するディテント部材22は上記一対の溝側壁21aに対面する一対の側壁22aと平坦な円環状の外周壁22bを有し、該側壁22aの全部、または該側壁22aの一部に突設した放射方向の複数のリブ22cが上記溝側壁21aに接するようにして、その姿勢を安定的に保持させている。
【0026】
なお、上記ディテント部材がシール用のOリングのように断面円形状である場合には、それに対して弁部材3における台状部23の肩部が圧接したときに該ディテント部材が回転したり変形したりすることによって、弁部材3の停止位置を不安定にする可能性もあるが、ディテント部材22が上記一対の側壁22aを有するものとすると、弁部材3を停止させる際の該ディテント部材22の姿勢や弁部材3の停止位置を安定化させることができる。また、上記ディテント部材22の円周溝21からの突出部22dは、その断面形状を
図2,4,6に図示しているような円弧状のものとしてもよいが、上記弁部材における台状部23の肩部の形状に合わせることにより、より正確に弁部材3の停止位置を安定化させることができる。
【0027】
また、上記ダブルソレノイドバルブにおいては、弁ボディ1とアダプタブロック4bとの間に、弁孔2の延長部2aを内設したアダプタプレート5を、上記弁ボディ1の一部をなすものとして設けている。これは、上記円周溝21の加工及び該円周溝21に対するディテント部材22の組付けを容易にするためのものであり、図示の例では、該ディテント部材22を収容する円周溝21を、上記弁ボディ1と、該弁ボディ1の軸線方向の一端に弁孔2の延長部2aを内設して連結したアダプタプレート5との間において、弁ボディ1に連結した該アダプタプレート5の接触面を切除することにより形成している。なお、上記円周溝21は、弁ボディ1とアダプタプレート5の一方または双方の接触面を切除して形成することもできる。また、弁ボディ1に対する円周溝21の加工及び該円周溝21に対するディテント部材22の組付けが容易であれば、上記アダプタプレート5を設ける必要はない。
【0028】
次に、上記ディテント機構20A〜20Cのそれぞれに特有の構成について個別的に説明するに、まず、ディテント機構20Aでは、上記円周溝21に収容したディテント部材22が、該円周溝21の底壁21bとの間にほぼ一定間隔の隙間25を有し、該ディテント部材22における上記円周溝21からの突出部22dの上記台状部23に対する乗り上げが、ディテント機構20Cのように、ディテント部材22の圧縮を伴うものに比して、ディテント部材自体の周方向の伸長のみによる大径化によって行われるようにし、その伸長力によって弁部材の保持力を調整可能にしている。このディテント機構20Aは、弁部材3の保持力が比較的低くてもよい場合に適し、構造が簡単・安価で、組立性においてもすぐれている。
【0029】
これに対し、
図4及び
図5に示す上記ディテント機構20Bでは、円周溝21に収容したディテント部材22が、その円周の複数個所に、上記円周溝21から突出して弁部材3の台状部23に係止し、流路の切換時にはそれに乗り上げる部分的な乗り上げ部22eを有し、該乗り上げ部22eの長さの総和、該乗り上げ部22eの分散の程度、及び台状部23に乗り上げるときの接触圧の強さ等によって、ディテント部材22による弁部材3の保持力を調整可能にしている。
【0030】
また、
図6及び
図7に示す上記ディテント機構20Cでは、上記円周溝21に収容したディテント部材22が、該円周溝21の底壁21bに接すると共に、上記円周溝21からの突出部22dが全周において弁部材3の台状部23に係止し、更にそれに乗り上げるものとして構成され、且つ、該ディテント部材22の側壁22aに、上記円周溝21の溝側壁21aに接する放射方向の複数のリブ22cを突設し、該リブ22c間におけるディテント部材22の側壁22aと円周溝21の溝側壁21aとの間に形成される空間を、ディテント部材22における上記突出部22dの台状部23への乗り上げによる該ディテント部材の径方向の圧縮に伴う厚さ増大を吸収するための空間としている。
このディテント機構20Cでは、ディテント部材22における上記突出部22dの台状部23への乗り上げにより該ディテント部材22がその径方向に圧縮され、それに伴うディテント部材22の厚さ増大を、上記リブ22cの間の空間で吸収するため、ディテント部材22による弁部材3の保持力を高める場合に有効なものである。
【0031】
図8は、本発明に係るダブルソレノイドバルブの第2実施例の全体的構成の概要を示している。
図1のダブルソレノイドバルブにおけるディテント機構20A〜20Cでは、前述したように、弁孔2の内周面に円周溝21を設けてそれにディテント部材22を収容すると共に、弁部材3の外周面に台状部23を設け、該台状部23の両端肩部をディテント部材22の突出部22dを係止させる係止部23aとして構成しているが、
図8のダブルソレノイドバルブにおいては、それとは逆に、弁部材3の外周面に円周溝31を設けてそれにディテント部材32を収容し、一方、弁孔2の内周面に台状部33を設け、該台状部33の両端肩部を、ディテント部材32の突出部32dを係止させる係止部33aとして構成している。
【0032】
しかしながら、その他の構成は
図1のダブルソレノイドバルブと実質的に変わるところがないので、
図8においては、
図1のダブルソレノイドバルブと同一の部分または相当部分に同一符号を付して、それらの構成についての説明は、前述した
図1のダブルソレノイドバルブについての説明を援用してここではそれを省略する。また、
図1のダブルソレノイドバルブにおいて用いるディテント機構20A〜20Cに共通する構成として先に説明したディテント機構やアダプタプレート5に関する構成も、
図8のダブルソレノイドバルブにおいては、円周溝と台状部との設置位置が反転している点を除いて変わるところがないので、それらの説明を省略し、以下においては、
図8のダブルソレノイドバルブにおける弁孔2と弁部材3との間(Y部)に配設する
図9及び
図10に示すディテント機構20D、及び該ディテント機構20Dに代えて
図8のY部において用いるディテント機構20Eについて詳細に説明する。
【0033】
まず、
図9〜
図12に示すディテント機構20D,20Eでは、上述した円周溝と台状部との設置位置の反転に伴い、弁部材3の外周面の円周溝31に収容したディテント部材32に、その円周溝31から突出する突出部32d、或いは部分的な乗り上げ部32eが設けられ、それらを係止させる切換2位置用の係止部33aが、上記弁ボディ1の軸線方向の一端に連結したアダプタプレート5における該弁孔2の延長部2aの内周面における切換2位置間の台状部33の両端肩部に形成されている。
【0034】
そして、
図9及び
図10に示すディテント機構20Dでは、上記弁部材3の円周溝31に収容したディテント部材32が、その円周の複数個所に、上記円周溝31から突出して弁孔2の内周面の台状部33に乗り上げる部分的な乗り上げ部32eを有し、該乗り上げ部32eの長さの総和及び接触圧の強さによってディテント部材32による弁部材3の保持力を調整可能にしている。
【0035】
また、
図11及び
図12に示すディテント機構20Eでは、上記弁部材3の円周溝31に収容したディテント部材32が、該円周溝31の底壁31bに接すると共に、上記円周溝31から突出して全周において弁孔2の内周面の台状部33の両端係止部33aに係止し、或いはそれに乗り上げる突出部32dとするものとして構成され、且つ、該ディテント部材32の側壁32aに上記円周溝31の溝側壁31aに接する放射方向の複数のリブ32cを突設し、該リブ32c間におけるディテント部材32の側壁32aと円周溝31の溝側壁31aとの間に形成される空間を、ディテント部材32における上記突出部32dが台状部33へ乗り上げたときに、該ディテント部材32の径方向の圧縮で生じる厚さ増大を吸収するための空間としている。
【符号の説明】
【0036】
1 弁ボディ
2 弁孔
3 弁部材
20A〜20E ディテント機構
21,31 円周溝
21a,31a 溝側壁
21b,31b 底壁
22,32 ディテント部材
22a,32a 側壁
22d,32d 突出部
23,33 台状部
23a,33a 係止部