【解決手段】四方切換弁1は、一対のピストン部21、22が副弁室16、17内の圧力差に応じて移動されると、これらに連結部材50によって連結された弁体40もスライド移動され、弁本体10の流体入口孔13と連通された主弁室15に対して、弁座部30のEポート32又はCポート34が開閉される。そして、連結部材50における一対のピストン部21、22と弁体40との間の連結部分51、52が、弁本体10の軸線L方向に延在する柱状に形成され、Eポート32又はCポート34が主弁室15に対して開かれたとき、連結部分51又は連結部分52が、弁本体10の円筒部11の内周面及び弁座部30の弁座面31との間に間隔をあけてEポート32又はCポート34の正面に配置される。
(a)筒状に形成され、周壁部に流体入口孔が設けられた弁本体と、(b)前記弁本体内に当該弁本体の軸方向に移動可能に設けられ、前記弁本体内の空間を前記流体入口孔に連通される中央の1つの主弁室及びその両側の2つの副弁室に区画する一対のピストン部と、(c)前記主弁室内に前記流体入口孔と対向して設けられ、当該主弁室に面する弁座面に前記流体入口孔と前記主弁室を通じて連通される弁ポートが少なくとも1つ形成された弁座部と、(d)前記弁ポートを前記主弁室に対して開閉するように前記弁座面上を前記弁本体の軸方向にスライド移動可能に設けられた弁体と、(e)前記一対のピストン部と前記弁体とを連結する連結部材と、を備え、前記2つの副弁室内の圧力差に応じた前記一対のピストン部の移動に伴って前記弁体がスライド移動される流路切換弁であって、
前記連結部材における前記一対のピストン部と前記弁体との間の連結部分が、前記弁本体の軸方向に延在する柱状に形成され、
前記弁ポートの少なくともいずれかが前記主弁室に対して開かれたとき、前記連結部分が、前記弁本体の内周面及び前記弁座部の弁座面との間に間隔をあけて前記開かれた弁ポートの正面に配置されることを特徴とする流路切換弁。
(a)筒状に形成され、周壁部に流体入口孔が設けられた弁本体と、(b)前記弁本体内に当該弁本体の軸方向に移動可能に設けられ、前記弁本体内の空間を前記流体入口孔に連通される1つの主弁室及び当該主弁室に隣接する1つの副弁室に区画するピストン部と、(c)前記主弁室内に前記流体入口孔と対向して設けられ、当該主弁室に面する弁座面に前記流体入口孔と前記主弁室を通じて連通される弁ポートが少なくとも1つ形成された弁座部と、(d)前記弁ポートを前記主弁室に対して開閉するように前記弁座面上を前記弁本体の軸方向にスライド移動可能に設けられた弁体と、(e)前記ピストン部と前記弁体とを連結する連結部材と、を備え、前記主弁室内の圧力と前記副弁室内の圧力との差に応じた前記ピストン部の移動に伴って前記弁体がスライド移動される流路切換弁であって、
前記連結部材における前記ピストン部と前記弁体との間の連結部分が、前記弁本体の軸方向に延在する柱状に形成され、
前記弁ポートの少なくともいずれかが前記主弁室に対して開かれたとき、前記連結部分が、前記弁本体の内周面及び前記弁座部の弁座面との間に間隔をあけて前記開かれた弁ポートの正面に配置されることを特徴とする流路切換弁。
前記連結部分を前記弁ポートの正面方向から見たときに、前記連結部分における前記弁本体の軸方向に直交する方向の大きさが、前記弁ポートにおける前記弁本体の軸方向に直交する方向の大きさより小さくされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流路切換弁。
前記連結部分における前記弁本体の軸方向に直交する断面形状が、前記弁ポートの正面方向に長い楕円形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の流路切換弁。
前記連結部分における前記弁本体の軸方向に直交する断面形状が、前記弁ポートの正面方向に長い菱形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の流路切換弁。
前記連結部分における前記弁本体の軸方向に直交する断面形状が、前記弁ポートの正面方向と長辺が平行な矩形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の流路切換弁。
【背景技術】
【0002】
従来の流路切換弁として、例えば、特許文献1に開示された四方切換弁がある。このような従来の流路切換弁の一例を、
図4(a)〜(c)に示す。図示の流路切換弁800は、円筒状の弁本体801と、弁本体801内に収容された弁座部855と、弁座部855上をスライド移動可能に設けられた弁体810と、弁本体801内の空間を中央部の主弁室851aと両側の2つの副弁室851b、851cとに仕切る一対のピストン854a、854bと、弁体810と一対のピストン854a、854bとを連結する連結部材853と、を備えている。
【0003】
弁本体801は、その周壁部に高圧側配管856dが設けられている。弁座部855は、弁本体801内に開口されたEポート855a、Sポート855b及びCポート855cが弁本体801の軸方向に並べて設けられている。
【0004】
弁体810は、椀状凹部811aを形成するドーム部811と、摺動部812とを有している。弁体810は、弁座部855に重ねて配置されている。そして、弁体810は、連結部材853により一対のピストン854a、854bに接続されているので、副弁室851b、851c内の圧力に応じた一対のピストン854a、854bの移動に伴って、弁本体801の軸方向にスライド移動される。
【0005】
弁体810が一方向(
図4(a)の左方向)にスライド移動されることにより、椀状凹部811aがEポート855a及びSポート855bに重ねられてこれらを互いに接続する。同時に、連結部材853に形成された一方の貫通穴853aがCポート855cの正面に間隔を開けて重ねられて、弁体810内の空間を通じて高圧側配管856dとCポート855cとを互いに接続する。
【0006】
または、弁体810が一方向と反対の他方向(
図4(a)の右方向)にスライド移動されることにより、椀状凹部811aがSポート855b及びCポート855cに重ねられてこれらを互いに接続する。同時に、連結部材853に形成された他方の貫通穴853bがEポート855aの正面に間隔を開けて重ねられて、弁体810内の空間を通じて高圧側配管856dとEポート855aとを互いに接続する。
【0007】
この流路切換弁800では、冷媒などの流体が、弁本体801に設けられた高圧側配管856dから弁本体801内の主弁室851aに流れ込み、当該主弁室851aから連結部材853に設けられた一方の貫通穴853aを通じてCポート855cに流れ、又は、他方の貫通穴853bを通じてEポート855aに流れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した流路切換弁800では、
図4(a)〜(c)において矢印で模式的に示すように、高圧側配管856dから弁本体801の主弁室851aに流れ込んだ流体が主弁室851a内で分散し、当該流体の一部が弁本体801の周壁部内側に沿って連結部材853に設けられた貫通穴853a、853bに向けて進んだり、流体の他の一部が当該主弁室851aの中央部分を連結部材853に設けられた貫通穴853a、853bに向けて直行して進んだりするので、貫通穴853a、853bを通過する際に多くの方向から進んできた流体の流れがぶつかりあってその流れに乱れが生じて、連結部材853が流体のスムースな流れが阻害されてしまい、流路切換弁800を流れる流体の流量を低減させてしまうという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、流体の流量が低減してしまうことを抑制できる流路切換弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された発明は、上記課題を解決するために、(a)筒状に形成され、周壁部に流体入口孔が設けられた弁本体と、(b)前記弁本体内に当該弁本体の軸方向に移動可能に設けられ、前記弁本体内の空間を前記流体入口孔に連通される中央の1つの主弁室及びその両側の2つの副弁室に区画する一対のピストン部と、(c)前記主弁室内に前記流体入口孔と対向して設けられ、当該主弁室に面する弁座面に前記流体入口孔と前記主弁室を通じて連通される弁ポートが少なくとも1つ形成された弁座部と、(d)前記弁ポートを前記主弁室に対して開閉するように前記弁座面上を前記弁本体の軸方向にスライド移動可能に設けられた弁体と、(e)前記一対のピストン部と前記弁体とを連結する連結部材と、を備え、前記2つの副弁室内の圧力差に応じた前記一対のピストン部の移動に伴って前記弁体がスライド移動される流路切換弁であって、前記連結部材における前記一対のピストン部と前記弁体との間の連結部分が、前記弁本体の軸方向に延在する柱状に形成され、前記弁ポートの少なくともいずれかが前記主弁室に対して開かれたとき、前記連結部分が、前記弁本体の内周面及び前記弁座部の弁座面との間に間隔をあけて前記開かれた弁ポートの正面に配置されることを特徴とする流路切換弁である。
【0012】
請求項2に記載された発明は、上記目的を達成するために、(a)筒状に形成され、周壁部に流体入口孔が設けられた弁本体と、(b)前記弁本体内に当該弁本体の軸方向に移動可能に設けられ、前記弁本体内の空間を前記流体入口孔に連通される1つの主弁室及び当該主弁室に隣接する1つの副弁室に区画するピストン部と、(c)前記主弁室内に前記流体入口孔と対向して設けられ、当該主弁室に面する弁座面に前記流体入口孔と前記主弁室を通じて連通される弁ポートが少なくとも1つ形成された弁座部と、(d)前記弁ポートを前記主弁室に対して開閉するように前記弁座面上を前記弁本体の軸方向にスライド移動可能に設けられた弁体と、(e)前記ピストン部と前記弁体とを連結する連結部材と、を備え、前記主弁室内の圧力と前記副弁室内の圧力との差に応じた前記ピストン部の移動に伴って前記弁体がスライド移動される流路切換弁であって、前記連結部材における前記ピストン部と前記弁体との間の連結部分が、前記弁本体の軸方向に延在する柱状に形成され、前記弁ポートの少なくともいずれかが前記主弁室に対して開かれたとき、前記連結部分が、前記弁本体の内周面及び前記弁座部の弁座面との間に間隔をあけて前記開かれた弁ポートの正面に配置されることを特徴とする流路切換弁である。
【0013】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記連結部分を前記弁ポートの正面方向から見たときに、前記連結部分における前記弁本体の軸方向に直交する方向の大きさが、前記弁ポートにおける前記弁本体の軸方向に直交する方向の大きさより小さくされていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載された発明において、前記連結部分における前記弁本体の軸方向に直交する断面形状が、円形状であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載された発明において、前記連結部分における前記弁本体の軸方向に直交する断面形状が、前記弁ポートの正面方向に長い楕円形状であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項6に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載された発明において、前記連結部分における前記弁本体の軸方向に直交する断面形状が、前記弁ポートの正面方向に長い菱形であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項7に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載された発明において、前記連結部分における前記弁本体の軸方向に直交する断面形状が、前記弁ポートの正面方向と長辺が平行な矩形状であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載された発明によれば、弁本体内に一対のピストン部で区画された1つの主弁室とその両側の2つの副弁室を有し、これら2つの副弁室内の圧力差に応じて一対のピストン部が移動される。これら一対のピストン部の移動に伴って当該一対のピストン部間に連結部材によって連結された弁体がスライド移動され、弁本体の流体入口孔と連通された主弁室に対して弁座部の弁ポートが開閉される。そして、連結部材における一対のピストン部と弁体との間の連結部分が、弁本体の軸方向に延在する柱状に形成され、弁ポートの少なくともいずれかが主弁室に対して開かれたとき、連結部分が、弁本体の内周面及び弁座部の弁座面との間に間隔をあけて主弁室に対して開かれた弁ポートの正面に配置される。このようにしたことから、流体入口孔から主弁室に流れ込んだ流体は、連結部材の連結部分に当たることにより概ね均等に二手に分かれて整流され、連結部分と弁本体の内周面及び弁座部の弁座面との間を流路として弁ポートに向かう。そのため、流体が多くの方向に分散することを抑制することができるので、流体が弁ポートに流入する際に生じる流れの乱れを抑制することができる。したがって、流体のスムースな流れが阻害されることを抑えて、流路切換弁を流れる流体の流量が低減してしまうことを抑制できる。
【0019】
請求項2に記載された発明によれば、弁本体内に1つのピストン部で区画された1つの主弁室とそれに隣接する1つの副弁室を有し、これら主弁室内の圧力と副弁室内の圧力との差に応じてピストン部が移動される。このピストン部の移動に伴って当該ピストン部に連結部材によって連結された弁体がスライド移動され、弁本体の流体入口孔と連通された主弁室に対して弁座部の弁ポートが開閉される。そして、連結部材におけるピストン部と弁体との間の連結部分が、弁本体の軸方向に延在する柱状に形成され、弁ポートの少なくともいずれかが主弁室に対して開かれたとき、連結部分が、弁本体の内周面及び弁座部の弁座面との間に間隔をあけて主弁室に対して開かれた弁ポートの正面に配置される。このようにしたことから、流体入口孔から主弁室に流れ込んだ流体は、連結部材の連結部分に当たることにより概ね均等に二手に分かれて整流され、連結部分と弁本体の内周面及び弁座部の弁座面との間を流路として弁ポートに向かう。そのため、流体が多くの方向に分散することを抑制することができるので、流体が弁ポートに流入する際に生じる流れの乱れを抑制することができる。したがって、流体のスムースな流れが阻害されることを抑えて、流路切換弁を流れる流体の流量が低減してしまうことを抑制できる。
【0020】
請求項3に記載された発明によれば、連結部分を弁ポートの正面方向から見たときに、連結部分における弁本体の軸方向に直交する方向の大きさが、弁ポートにおける弁本体の軸方向に直交する方向の大きさより小さくされている。このようにしたことから、連結部分により流体の流動が妨げられることを抑えて、流体の流量が低減してしまうことを抑制できる。
【0021】
請求項4に記載された発明によれば、連結部分における軸方向に直交する断面形状が、円形状である。このようにしたことから、流体が連結部分の表面に沿って流れやすくなるので、流体のスムースな流れが阻害されることをさらに抑えて、流路切換弁を流れる流体の流量が低減してしまうことをさらに抑制できる。
【0022】
請求項5に記載された発明によれば、連結部分における軸方向に直交する断面形状が、弁ポートの正面方向に長い楕円形状である。このようにしたことから、流体が連結部分の表面に沿って流れやすくなるので、流体のスムースな流れが阻害されることをさらに抑えて、流路切換弁を流れる流体の流量が低減してしまうことをさらに抑制できる。
【0023】
請求項6に記載された発明によれば、連結部分における軸方向に直交する断面形状が、弁ポートの正面方向に長い菱形である。このようにしたことから、流体が連結部分の表面に沿って流れやすくなるので、流体のスムースな流れが阻害されることをさらに抑えて、流路切換弁を流れる流体の流量が低減してしまうことをさらに抑制できる。
【0024】
請求項7に記載された発明によれば、連結部分における軸方向に直交する断面形状が、弁ポートの正面方向と長辺が平行な矩形状である。このようにしたことから、連結部分の横断面形状が弁ポートの正面方向と長辺が直交する矩形状の場合に比べて、連結部分により流体の流動が妨げられることを抑えて、流体の流量が低減してしまうことを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の流路切換弁の一実施形態の四方切換弁について、
図1(a)〜(c)を参照して説明する。本実施形態の四方切換弁は、例えば、空気調和機等の冷凍サイクルに用いられる。
【0027】
図1(a)は、本発明の一実施形態の四方切換弁の縦断面図であり、(b)は、(a)の線Lに沿う一部断面図(弁本体及び一対のピストン部のみ断面)で有り、(c)は、(a)の線Kに沿う断面図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は、
図1(a)における上下に対応しており、各部材の相対的な位置関係を示すものであって、絶対的な位置関係を示すものではない。
【0028】
各図に示すように、四方切換弁1は、弁本体10と、一対のピストン部21、22と、弁座部30と、弁体40と、連結部材50と、D継手管61と、E継手管62と、S継手管63と、C継手管64と、を備えている。
【0029】
弁本体10は、例えば、真鍮やステンレスを材料として構成されており、円筒形状の円筒部11と略円形皿形状の2つのキャップ部12a、12bとを一体に有している。キャップ部12a、12bはそれぞれ円筒部11の端部を塞ぐように当該円筒部11にろう付けや溶接等により取り付けられている。円筒部11及びキャップ部12a、12bの中心軸が弁本体10の軸線Lとなっている。円筒部11の中央部における後述する弁座部30と対向する箇所には、流体入口孔13が形成されている。弁本体10のキャップ部12a、12bには、図示しないパイロット弁に接続された導管65、66がそれぞれ接続されている。円筒部11は、周壁部の一例である。
【0030】
一対のピストン部21、22は、例えば、主にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を材料として構成されており、後述する連結部材50により互いに連結されている。一対のピストン部21、22は、弁本体10内に互いに軸線L方向に対向するように配置され、また軸線L方向に移動可能とされている。一対のピストン部21、22は、弁本体10内に配置されることにより、弁本体10の円筒部11内の空間を、中央の主弁室15と、主弁室15の両側の2つの副弁室16、17とに区画している。副弁室16、17は、それぞれ2つのキャップ部12a、12b内の空間を含む。
【0031】
弁座部30は、例えば、真鍮やステンレスを材料として構成されており、主弁室15内において流体入口孔13と対向して配置され、弁本体10の円筒部11にろう付けや溶接等により固定されている。弁座部30には、流体入口孔13に向く平面状の弁座面31が形成されている。また、弁座部30には、弁座面31に開口されかつ弁本体10の軸線L方向に並べて配置された同一形状の平面視円形のEポート32、Sポート33及びCポート34が設けられている。Eポート32及びCポート34は、弁ポートの一例である。
【0032】
弁体40は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)などの比較的硬質の合成樹脂を材料として構成されている。弁体40は、略半楕円体形状のドーム部41と、このドーム部41の下部外周に鍔状に形成された摺動部42とを有している。ドーム部41の内側には椀状凹部41aが形成されている。椀状凹部41a内には、この椀状凹部41aの開口部41bを横断するように補強ピン43が差し渡されている。摺動部42の下面42aは、弁座面31に摺接される。弁体40は、弁座面31上に弁本体10の軸線L方向に摺動可能に配設されている。弁体40は、後述する連結部材50を介して一対のピストン部21、22と連結されており、これら一対のピストン部21、22の移動に伴って弁座面31上を軸線L方向にスライド移動される。
【0033】
具体的には、図示しないパイロット弁の動作により、導管65、66を通じて、例えば、
図1(a)左側の副弁室16が低圧にされ、
図1(a)右側の副弁室17が高圧にされると、一対のピストン部21、22が図中左方向に移動し、これら一対のピストン部21、22の移動に伴って、弁体40も図中左方向に移動する。これとは逆に、パイロット弁の動作により、例えば、副弁室16が高圧にされ、副弁室17が低圧にされると、一対のピストン部21、22が図中右方向に移動し、これら一対のピストン部21、22の移動に伴って、弁体40も図中右方向に移動する。
【0034】
弁体40は、一方向(
図1(a)において左方向)にスライド移動されることにより、弁座部30のEポート32とSポート33とを椀状凹部41aにより連通するとともに、Cポート34を主弁室15に露出させる。換言すると、弁体40は、主弁室15に対してEポート32及びSポート33を閉じ、Cポート34を開く。また、弁体40は他方向(
図1(a)において右方向)にスライド移動されることにより、弁座部30のSポート33とCポート34とを椀状凹部41aにより連通するとともに、Eポート32を主弁室15に露出させる。換言すると、弁体40は、主弁室15に対してEポート32を開き、Sポート33及びCポート34を閉じる。
【0035】
連結部材50は、例えば、上記弁体40と一体成形されたPPS樹脂製の2つの柱状の連結部分51、52を有している。連結部分51、52は、それぞれの一端部51a、52aが弁体40のドーム部41に一体に固定されており、それぞれの他端部51b、52bが、一対のピストン部21、22にねじ等により固定されている。連結部分51、52は、弁本体10の円筒部11の内径より細い柱状に形成されている。また、連結部分51、52は、弁本体10の円筒部11の内周面及び弁座部30の弁座面31との間に間隔をあけて配置されている。本実施形態において、連結部分51、52は、それらの軸心が弁本体10の軸線Lに重なるように配置されている。連結部分51、52は、PPS樹脂製以外にも、例えば、ステンレスを材料として柱状に形成され、インサート成形により弁体40と一体に構成されていてもよい。
【0036】
また、本実施形態において、連結部分51、52は、軸方向に直交する断面形状(即ち、横断面形状)が円形状に形成されている。このように連結部分51、52の横断面形状を円形状にすることで、連結部分51、52における流体上流側の面(
図1(c)において上方向を向く面)が曲面状となり、かつ、連結部分51、52における側面(
図1(c)において左右方向を向く面)が曲面状となる。そのため、流体上流側の面が平面状である構成や、側面に角を有している構成に比べて、連結部分51、52の流体上流側の面での流体の剥離を抑制し、かつ、側面での流体の剥離を抑制することができる。したがって、流体の流量の低減を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態において、連結部分51、52の径は、Eポート32及びCポート34の径より小さくされている。換言すると、連結部分51、52をEポート32及びCポート34の正面方向(
図1(a)、(c)に示す軸線Lに直交する線K方向)から見たときに、連結部分51、52における弁本体10の軸線L方向に直交する方向(
図1(b)の上下方向)の大きさが、Eポート32及びCポート34における当該方向の大きさより小さくされている。
【0038】
また、本実施形態において、
図1(c)に示すように、四方切換弁1を弁本体10の軸線L方向から見たときに、流体入口孔13、連結部分52(又は連結部分51)及びCポート34が、線Kに沿って一列に配置されている。
【0039】
D継手管61、E継手管62、S継手管63及びC継手管64は、流体が内側を流れる銅製等の配管である。D継手管61は、主弁室15と連通するように、流体入口孔13に取り付けられている。E継手管62は、弁座部30のEポート32と連通するように、その一端部が弁本体10の円筒部11を貫通して取り付けられている。S継手管63は、弁座部30のSポート33と連通するように、その一端部が弁本体10の円筒部11を貫通して取り付けられている。C継手管64は、弁座部30のCポート34と連通するように、その一端部が弁本体10の円筒部11を貫通して取り付けられている。
【0040】
S継手管63は、図示しない圧縮機の吸入口に接続され、D継手管61は、図示しない圧縮機の吐出口に接続されている。C継手管64は図示しない室外熱交換器に接続され、E継手管62は、図示しない室内熱交換器に接続されている。室外熱交換器と室内熱交換器は絞り装置を介して接続されている。このC継手管64から室外熱交換器、絞り装置、室内熱交換器及びE継手管62からなる経路と、S継手管63から圧縮機及びD継手管61からなる経路とにより、冷凍サイクルが構成されている。
【0041】
図示しない圧縮機で圧縮された高圧冷媒はD継手管61から主弁室15内に流入する。
図1の冷房運転の状態では、主弁室15内に流入した高圧冷媒である流体はCポート34を経て図示しない室外熱交換器に流入される。また、弁体40を切り換えた暖房運転の状態では、高圧冷媒はEポート32から図示しない室内熱交換器に流入される。すなわち、冷房運転時には、圧縮機から吐出される冷媒(流体)はC継手管64、室外熱交換器、絞り装置、室内熱交換器、E継手管62の順に流れる。このとき室外熱交換器は凝縮器(コンデンサ)、室内熱交換器は蒸発器(エバポレータ)として機能する。また、暖房運転時には冷媒(流体)は逆に流れ、室内熱交換器が凝縮器、室外熱交換器が蒸発器として機能する。
【0042】
次に、本実施形態の動作について、図を参照して説明する。
【0043】
図1(a)〜(c)に示すように、弁体40が上記一方向にスライド移動されて、Cポート34が主弁室15に対して開かれると、連結部材50の連結部分52が、弁本体10の円筒部11の内周面及び弁座部30の弁座面31との間に間隔をあけてCポート34の正面に配置される。このとき、図中矢印で模式的に示すように、流体入口孔13から主弁室15に流入した流体は、弁体40のドーム部41表面に沿って流れて、連結部材50の連結部分52に至ると概ね均等に二手に分かれて当該連結部分52をまわり込むようにして流れ、Cポート34に至る。
【0044】
同様に、弁体40が上記他方向にスライド移動されて、Eポート32が主弁室15に対して開かれると、連結部材50の連結部分51が、弁本体10の円筒部11の内周面及び弁座部30の弁座面31との間に間隔をあけてEポート32の正面に配置される。このとき、流体入口孔13から主弁室15に流入した流体は、弁体40のドーム部41表面に沿って流れて、連結部材50の連結部分51に至ると概ね均等に二手に分かれて当該連結部分51をまわり込むようにして流れ、Eポート32に至る。
【0045】
このように、流体は連結部分51、52によって均等に二手に分かれるように整流されるので、流体が多くの方向に分散されることが抑制される。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の四方切換弁1は、弁本体10が、筒状に形成され、円筒部11に流体入口孔13が設けられている。一対のピストン部21、22が、弁本体10の円筒部11内にその軸線L方向に移動可能に設けられ、弁本体10の円筒部11内の空間を流体入口孔13に連通される中央の1つの主弁室15及びその両側の2つの副弁室16、17に区画している。弁座部30が、主弁室15内に流体入口孔13と対向して設けられ、当該主弁室15に面する弁座面31に流体入口孔13と主弁室15を通じて連通されるEポート32及びCポート34が形成されている。弁体40が、Eポート32及びCポート34を主弁室15に対して開閉するように弁座面31上を弁本体10の軸線L方向にスライド移動可能に設けられている。連結部材50が、一対のピストン部21、22と弁体40とを連結している。2つの副弁室16、17内の圧力差に応じた一対のピストン部21、22の移動に伴って弁体40がスライド移動される。そして、連結部材50における一対のピストン部21、22と弁体40との間の連結部分51、52が、弁本体10の軸線L方向に延在する柱状に形成されている。Eポート32又はCポート34が主弁室15に対して開かれたとき、連結部分51又は連結部分52が、弁本体10の円筒部11の内周面及び弁座部30の弁座面31との間に間隔をあけてEポート32及びCポート34のうちの主弁室15に対して開かれた一方の正面に配置される。
【0047】
また、四方切換弁1は、連結部分51、52をEポート32及びCポート34の正面方向から見たときに、連結部分51、52における弁本体10の軸線L方向に直交する方向の大きさが、Eポート32及びCポート34における弁本体10の軸線L方向に直交する方向の大きさより小さくされている。
【0048】
また、四方切換弁1は、連結部分51、52における軸方向に直交する断面形状が、円形状である。
【0049】
以上より、本実施形態によれば、弁本体10内に一対のピストン部21、22で区画された1つの主弁室15とその両側の2つの副弁室16、17を有し、これら2つの副弁室16、17内の圧力差に応じて一対のピストン部21、22が移動される。これら一対のピストン部21、22の移動に伴って当該一対のピストン部21、22間に連結部材50によって連結された弁体40がスライド移動され、弁本体10の流体入口孔13と連通された主弁室15に対して、弁座部30のEポート32又はCポート34が開閉される。そして、連結部材50における一対のピストン部21、22と弁体40との間の連結部分51、52が、弁本体10の軸線L方向に延在する柱状に形成され、Eポート32又はCポート34が主弁室15に対して開かれたとき、連結部分51又は連結部分52が、弁本体10の円筒部11の内周面及び弁座部30の弁座面31との間に間隔をあけてEポート32及びCポート34のうちの主弁室15に対して開かれた一方の正面に配置される。このようにしたことから、流体入口孔13から主弁室15に流れ込んだ流体は、連結部材50の連結部分51又は連結部分52に当たることにより概ね均等に二手に分かれて整流され、連結部分51又は連結部分52と弁本体10の円筒部11の内周面及び弁座部30の弁座面31との間を流路としてEポート32又はCポート34に向かう。そのため、流体が多くの方向に分散することを抑制することができるので、流体がEポート32又はCポート34に流入する際に生じる流れの乱れを抑制することができる。したがって、流体のスムースな流れが阻害されることを抑えて、四方切換弁1を流れる流体の流量が低減してしまうことを抑制できる。
【0050】
また、連結部分51、52をEポート32及びCポート34の正面方向から見たときに、連結部分51、52における弁本体10の軸線L方向に直交する方向の大きさが、Eポート32及びCポート34における当該方向の大きさより小さくされている。このようにしたことから、連結部分51又は連結部分52により流体の流動が妨げられることを抑えて、流体の流量が低減してしまうことを抑制できる。
【0051】
また、連結部分51、52における軸方向に直交する断面形状(横断面形状)が、円形状である。このようにしたことから、連結部分51、52における流体上流側の面(
図1(c)において上方向を向く面)が曲面状となり、かつ、連結部分51、52における側面(
図1(c)において左右方向を向く面)が曲面状となる。そのため、連結部分51、52における流体上流側の面が平面状でなく、且つ、側面に角を有していないため、連結部分51、52の流体上流側の面及び側面での流体の剥離を抑制することができる。これにより、流体が連結部分51、52の表面に沿って流れやすくなるので、流体のスムースな流れが阻害されることをさらに抑えて、四方切換弁1を流れる流体の流量が低減してしまうことをさらに抑制できる。
【0052】
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の流路切換弁はこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0053】
例えば、上述した各実施形態において、横断面形状を円形状とした連結部分51、52を有する連結部材50を備えた構成であったが、これに限定されるものではない。
【0054】
連結部材50に代えて、
図2(a)に示すように、横断面形状を線K方向に長い楕円形状とした連結部分51A、52Aを有する連結部材50Aを備えた構成としてもよい。このように連結部分51A、52Aの横断面形状を楕円形状にしても、連結部分51A、52Aにおける流体上流側の面(
図2(a)において上方向を向く面)が曲面状となり、かつ、連結部分51A、52Aにおける側面(
図2(a)において左右方向を向く面)が曲面状となる。そのため、連結部分51、52における流体上流側の面が平面状でなく、且つ、側面に角を有していないため、連結部分51、52の流体上流側の面及び側面での流体の剥離を抑制することができる。これにより、流体の流量の低減を抑制することができる。連結部材の連結部分の横断面形状として、
図2(a)に示す楕円形状、又は、
図1(c)に示す円形状が好ましい。
【0055】
または、
図2(b)に示すように、横断面形状を線K方向に長い角が丸められた長方形(即ち、楕円形状(略楕円形状を含む))とした連結部分51B、52Bを有する連結部材50Bを備えた構成としてもよい。このようにすることで、流体が連結部分51A、52A(又は、連結部分51B、52B)の表面に沿って流れやすくなるので、流体のスムースな流れが阻害されることをさらに抑えて、四方切換弁1を流れる流体の流量が低減してしまうことをさらに抑制できる。
【0056】
または、連結部材50に代えて、
図2(c)に示すように、横断面形状を線K方向に長い菱形とした連結部分51C、52Cを有する連結部材50Cを備えた構成としてもよい。このようにすることで、流体が連結部分51C、52Cの表面に沿って流れやすくなるので、流体のスムースな流れが阻害されることをさらに抑えて、四方切換弁1を流れる流体の流量が低減してしまうことをさらに抑制できる。
【0057】
または、連結部材50に代えて、
図2(d)に示すように、横断面形状を線K方向と長辺が平行な矩形状とした連結部分51D、52Dを有する連結部材50Dを備えた構成としてもよい。このようにすることで、連結部分の横断面形状が線K方向と長辺が直交する矩形状の場合に比べて、連結部分51D、52Dにより流体の流動が妨げられることを抑えて、流体の流量が低減してしまうことを抑制できる。上記以外にも、連結部分の横断面形状を、例えば、流線形状とした構成としてもよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、弁本体10内に一対のピストン部21、22で区画された1つの主弁室15とその両側の2つの副弁室16、17を有し、これら2つの副弁室16、17内の圧力差に応じて一対のピストン部21、22が移動される構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、
図3に示すように、上述した実施形態において、弁本体10及び連結部材50に代えて弁本体10A及び連結部材50Aを備え、ピストン部21及び導管65を省略し、ピストン部22を主弁室15側に押圧する圧縮ばね18を副弁室17内に配置した構成の四方切換弁1Aとしてもよい。
【0059】
この四方切換弁1Aの弁本体10Aは、上述した実施形態の円筒部11におけるキャップ部12a寄りの部分を一部切断して蓋部材11aで塞ぐとともにキャップ部12b寄りの部分を圧縮ばね18の圧縮時長さの分だけ延長した円筒部11Aと、キャップ部12bと、を有している。連結部材50Aは、弁体40の椀状凹部41aにより弁座部30のEポート32とSポート33とが連通されたときに蓋部材11aに突き当たり弁体40のスライド移動を規制するストッパ部55と、連結部分52と、を有している。
【0060】
四方切換弁1Aは、弁本体10A内に1つのピストン部22で区画された1つの主弁室15と当該主弁室15に隣接する1つの副弁室17とを有している。そして、主弁室15内の圧力によりピストン部22を押圧する力と、副弁室17内の圧力によりピストン部22を押圧する力に圧縮ばね18によりピストン部22を押圧する力を加えた力、との差に応じてピストン部22が移動される。この四方切換弁1Aは、圧縮ばね18を有することにより、主弁室15内の圧力と副弁室17内の圧力とが等しいときでも、圧縮ばね18によりピストン部22を主弁室15側に移動させることができる。なお、四方切換弁1Aの組み込まれるシステム等において主弁室15内の圧力と副弁室17内の圧力とが等しくなる状態が存在しない場合には、圧縮ばね18を省略した構成としてもよい。また、四方切換弁1Aにおいて、弁本体40の弁本体10A内でのスライド移動をガイドするガイド部材を設けてもよい。このガイド部材は、例えば、円形環状に形成され、外周縁の径が円筒部11Aの内径と略同一でかつ内周縁の径がストッパ部55の外径と略同一に形成されている。そして、ガイド部材は、内周縁内にストッパ部55を挿通した状態で当該ストッパ部55に固定され、弁本体40のスライド移動とともに弁本体10A内を移動するように構成されている。または、ガイド部材は、内周縁内にストッパ部55を移動可能に挿通した状態で外周縁が円筒部11Aの内周面に固定され、弁本体40のスライド移動とともにストッパ部55がガイド部材の内周縁内を移動するように構成されていてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態では流路切換弁として四方切換弁1について説明するものであったが、この構成に限定されるものではない。例えば、上述した四方切換弁1において、Sポート33及びS継手管63を省略した構成の三方切換弁としてもよい。または、Sポート33及びS継手管63に加えて、Eポート32及びE継手管62(又は、Cポート34及びC継手管64)を省略して、Cポート34(又は、Eポート32)を開閉する流路開閉弁としてもよい。本発明の目的に反しない限り、切り換える流路の数については任意である。なお、流路開閉弁は、流路切換弁に含む。
【0062】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の流路切換弁の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。