【課題】ロール・トゥ・ロール方式の露光装置において、マスク板のパターン面の除塵を自動的に、かつ、露光動作に影響を与えることなく、マスク板のパターン面の除塵を行うことができるようにする。
【解決手段】基板Wを保持する露光テーブル241を有し、z軸に沿って基板Wとともに昇降可能な露光ステージ240と、マスク板210の後方側の端部からx軸に沿って所定間隔離間した第1位置(後方側)とマスク板210の前方側の端部からx軸に沿って所定間隔離間した第2位置(前方側)との間を、往復動する際の可動範囲として、当該可動範囲内を進行しながらマスク板210のパターン面Mを除塵する動作を行うマスク除塵部230と、マスク除塵部230の往復動を制御するマスク除塵部制御装置400と、露光ステージ240の昇降を制御する露光ステージ制御装置500とを備える。
送り出し部と巻き取り部との間に架け渡されている長尺シート状の基板を間欠的に所定量ずつ搬送させて行く過程で、前記基板の感光面とマスク板のパターン面とを対面させて、前記基板の感光面を露光する露光装置であって、
前記基板がx軸及びy軸によって形成されるxy平面におけるx軸に沿って前記巻き取り部に向かう側を前方側とし、当該前方側とは反対側を後方側としたとき、
前記基板を挟んで前記マスク板と対向する位置に配置され、xy平面に直交するz軸に沿って前記基板とともに昇降可能な露光ステージと、
x軸に沿った往復動が可能で前記露光ステージとともにz軸に沿って昇降可能であり、かつ、前記基板の感光面からz軸に沿って離間した状態で前記マスク板の側に位置するように前記露光ステージに設けられ、少なくとも、前記マスク板の前記後方側の端部からx軸に沿ってさらに後方側に所定間隔離間した第1位置と前記マスク板の前記前方側の端部からx軸に沿ってさらに前方側に所定間隔離間した第2位置との間の範囲を、前記往復動する際の可動範囲として、当該可動範囲内を進行しながら前記マスク板のパターン面を除塵する動作を行うマスク除塵部と、
前記マスク除塵部を前記往復動させるためのマスク除塵部駆動機構部と、
前記マスク除塵部駆動機構部を制御することによって前記マスク除塵部の前記往復動を制御するマスク除塵部制御装置と、
前記露光ステージをz軸に沿って昇降可能とするための露光ステージ駆動機構部と、
前記露光ステージ駆動機構部を制御することによって前記露光ステージの昇降を制御する露光ステージ制御装置と、
を有し、
前記基板の感光面を露光する際には、
前記マスク除塵部制御装置は、前記マスク除塵部が、前記第1位置又は前記第2位置に達した状態となるように前記マスク除塵部駆動機構部を制御し、
前記露光ステージ制御部は、前記マスク除塵部が、前記第1位置又は前記第2位置に達した状態において、前記露光ステージをz軸に沿って移動させて前記基板の感光面と前記マスク板のパターン面とが接触又は近接した状態となるように前記露光ステージ駆動機構部を制御することを特徴とする露光装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記したように、特許文献1に記載されている露光装置900においてマスク板950(上側マスク板951及び下側マスク板952)の各パターン面を除塵する際は、上側マスク板のパターン面及び下側マスク板のパターン面の除塵がし易いように、各パターン面と基板との間隔をあけるように、基板及び上側のマスク板を移動させる操作を行った上で、上側マスク板のパターン面及び下側マスク板のパターン面の除塵を行う。また、特許文献1に記載の露光装置900においては、マスク板のパターン面を除塵するための除塵装置は特に設けられていないため、マスク板のパターン面の除塵は、作業者が手作業で行うものと考えられる。このため、マスク板におけるパターン面の除塵を行う際に多くの手間がかかる。
【0012】
また、特許文献1に記載されている露光装置900においては、マスク板におけるパターン面の除塵を行う際には、露光動作を停止させる必要がある。このため、本来、高速で効率的な露光が可能となるはずのロール・トゥ・ロール方式の露光装置において、マスクの除塵のために、高速化及び効率化が大きく損なわれることとなる。特に、より高品質な露光を行おうとする場合には、マスクの除塵は、頻繁に行うことが求められるため、マスクの除塵を行うたびに、上記したような工程をその都度行う必要があり、高速化及び効率化がより大きく損なわれることとなる。
【0013】
なお、この明細書において、「露光動作」というのは、「長尺シート状の基板を間欠的に所定量ずつ搬送させて行く過程で、基板の感光面とマスク板のパターン面とを対面させて、基板の感光面を露光する動作」をいう。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ロール・トゥ・ロール方式の露光装置において、マスク板のパターン面の除塵を自動的に行うことができ、しかも、当該ロール・トゥ・ロール方式の露光装置が行う露光動作に影響を与えることなく、マスク板のパターン面の除塵を行うことができる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[1]本発明の露光装置は、送り出し部と巻き取り部との間に架け渡されている長尺シート状の基板を間欠的に所定量ずつ搬送させて行く過程で、前記基板の感光面とマスク板のパターン面とを対面させて、前記基板の感光面を露光する露光装置であって、前記基板がx軸及びy軸によって形成されるxy平面におけるx軸に沿って前記巻き取り部に向かう側を前方側とし、当該前方側とは反対側を後方側としたとき、前記基板を挟んで前記マスク板と対向する位置に配置され、xy平面に直交するz軸に沿って前記基板とともに昇降可能な露光ステージと、x軸に沿った往復動が可能で前記露光ステージとともにz軸に沿って昇降可能であり、かつ、前記基板の感光面からz軸に沿って離間した状態で前記マスク板の側に位置するように前記露光ステージに設けられ、少なくとも、前記マスク板の前記後方側の端部からx軸に沿ってさらに後方側に所定間隔離間した第1位置と前記マスク板の前記前方側の端部からx軸に沿ってさらに前方側に所定間隔離間した第2位置との間の範囲を、前記往復動する際の可動範囲として、当該可動範囲内を進行しながら前記マスク板のパターン面を除塵する動作を行うマスク除塵部と、前記マスク除塵部を前記往復動させるためのマスク除塵部駆動機構部と、前記マスク除塵部駆動機構部を制御することによって前記マスク除塵部の前記往復動を制御するマスク除塵部制御装置と、前記露光ステージをz軸に沿って昇降可能とするための露光ステージ駆動機構部と、前記露光ステージ駆動機構部を制御することによって前記露光ステージの昇降を制御する露光ステージ制御装置と、を有し、前記基板の感光面を露光する際には、前記マスク除塵部制御装置は、前記マスク除塵部が、前記第1位置又は前記第2位置に達した状態となるように前記マスク除塵部駆動機構部を制御し、前記露光ステージ制御部は、前記マスク除塵部が、前記第1位置又は前記第2位置に達した状態において、前記露光ステージをz軸に沿って移動させて前記基板の感光面と前記マスク板のパターン面とが接触又は近接した状態となるように前記露光ステージ駆動機構部を制御することを特徴とする。
【0016】
本発明の露光装置は、マスク除塵部は、x軸に沿った方向においてマスク板よりも広い範囲(第1位置と第2位置との間の範囲)を可動範囲として、当該可動範囲を進行することによってマスク板のパターン面を除塵するような構成としている。そして、基板の感光面を露光する際には、マスク除塵部が、第1位置又は前記第2位置に達した状態において、露光ステージをz軸に沿って移動させて基板の感光面とマスク板のパターン面とが接触又は近接した状態となるようにして露光を行うようにしている。これにより、本発明の露光装置によれば、ロール・トゥ・ロール方式の露光装置でおいても、マスク板のパターン面の除塵を自動的に行うことができ、しかも、当該ロール・トゥ・ロール方式の露光装置が行う露光動作に影響を与えることなく、マスク板のパターン面の除塵を行うことができる。
【0017】
[2]本発明の露光装置においては、前記マスク除塵部は、前記基板を間欠的に所定量ずつ搬送させている間に前記マスク板のパターン面を除塵する動作を行うことが好ましい。
【0018】
このように、基板を搬送させている間にマスク板のパターン面を除塵する動作を行うため、ロール・トゥ・ロール方式の露光装置が行うもともとの露光動作に影響を及ぼすことなく、マスク板のパターン面を除塵することができる。これにより、ロール・トゥ・ロール方式の露光装置がもともと有している露光動作速度を維持することができる。
【0019】
[3]本発明の露光装置においては、前記マスク除塵部が前記可動範囲内を前記前方側に進行する動作を前方進行動作とし、前記マスク除塵部が前記可動範囲内を前記前方側に進行する動作を後方進行動作としたとき、前記マスク除塵部は、前記前方進行動作及び前記後方進行動作それぞれにおいて前記マスク板のパターン面を除塵する動作を行い、前記前方進行動作及び前記後方進行動作それぞれにおいて前記マスク板のパターン面を除塵する動作は、前記基板を間欠的に所定量ずつ搬送させて行く間に交互に行うことが好ましい。
【0020】
このように、マスク除塵部は、当該マスク除塵部の可動範囲を前方進行動作及び後方進行動作する際に、前方進行動作及び後方進行動作それぞれにおいてマスク板のパターン面を除塵する動作を行う。また、前方進行動作及び後方進行動それぞれにおいてマスク板のパターン面を除塵する動作は、基板が間欠的に所定量ずつ搬送されて行く動作の間に交互に行っている。このため、基板の搬送動作と、マスク除塵部の除塵動作とを無駄なく効率的に行うことができる。また、露光動作を間欠的に行う際に、露光動作と露光動作との間には必ずマスク板のパターン面が除塵されることとなるため、常に、マスク板のパターン面が除塵された状態で露光することができる。
【0021】
[4]本発明の露光装置においては、前記マスク除塵部は、少なくとも表面に粘着力を有するロール状をなしており、前記マスク除塵部が前記マスク板のパターン面を除塵する動作は、前記マスク板のパターン面に接触した状態で回転して行く動作であることが好ましい。
これにより、マスク板のパターン面を効率よく、かつ、確実に除塵することができる。
【0022】
[5]本発明の露光装置においては、前記マスク除塵部は、前記マスク板のパターン面に接触した状態となると、バネの伸張力によって前記パターン面を押圧する力が働くように前記露光ステージに設けられていることが好ましい。
【0023】
このため、マスク除塵部をパターン面に適切な押圧力で接触させることができ、接触させる際の押圧力の制御などを高精度に行う必要がない。また、マスク除塵部とパターン面との間隔(z軸に沿った間隔)も高精度に調整する必要がなく、マスク除塵部とパターン面との間隔(z軸に沿った間隔)の調整作業を軽減することができる。
【0024】
[6]本発明の露光装置においては、前記マスク除塵部が前記マスク板に対してx軸及びz軸に沿ってそれぞれ離間している位置から前記マスク除塵部を前記マスク板のパターン面に接触させる際においては、マスク除塵部制御装置は、前記マスク除塵部が前記マスク板のパターン面におけるx軸に沿った端部付近に対向する位置に達するように前記マスク除塵部駆動機構部を制御し、前記露光ステージ制御部は、前記マスク除塵部が前記マスク板のパターン面におけるx軸に沿った端部付近に対向する位置に達すると、前記マスク除塵部を前記マスク板のパターン面におけるx軸に沿った端部付近に接触させるように前記露光ステージ駆動機構部を制御することが好ましい。
【0025】
このように、マスク除塵制御装置及び露光ステージ制御装置は、マスク除塵部がマスク板のパターン面におけるx軸に沿った端部付近に対向する位置に達したときに、マスク除塵部をマスク板のパターン面におけるx軸に沿った端部付近に接触させるようにマスク除塵部駆動機構部及び露光ステージ駆動機構部をそれぞれ制御するようにしている。このため、マスク除塵部がx軸に沿って進行する際に、マスク除塵部がマスク板の端部をx軸に沿ったマスク除塵部の進行方向に押してしまうという動作が生じない。これにより、マスク板の位置ずれを防止することができ、また、マスク板の端部における角部などが破損してしまうことも防止できる。
【0026】
[7]本発明の露光装置においては、前記マスク除塵部は、前記マスク板のパターン面におけるy軸方向に沿った吸引口を有し、吸引によって前記マスク板のパターン面を除塵する吸引式のマスク除塵部であって、前記吸引式のマスク除塵部が前記マスク板のパターン面を除塵する動作は、前記マスク板のパターン面との間に所定の空隙を有した状態で吸引力を発揮しながら前記マスク板のパターン面に沿ってx軸方向に沿って進行して行く動作であることが好ましい。
マスク除塵部として、このような吸引式マスクの除塵部を用いることによっても、上記[1]〜[3]の発明によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0027】
[8]本発明の露光装置においては、前記基板の少なくとも前記感光面を除塵する基板除塵部を有することが好ましい。
これにより、マスク板のパターン面の除塵だけではなく、基板の少なくとも感光面の除塵も行うことができる。
【0028】
[9]本発明の露光装置においては、前記基板除塵部は、少なくとも表面に粘着力を有するロール状をなし、前記基板の少なくとも感光面に接触した状態で設けられており、前記基板を間欠的に所定量ずつ搬送させる際の前記基板の搬送に伴って回転することが好ましい。
【0029】
これにより、マスク板のパターン面を効率よく、かつ、確実に除塵することができる。また、基板を搬送させている間に基板の少なくとも感光面を除塵する動作を行うため、ロール・トゥ・ロール方式の露光装置が行うもともとの露光動作に影響を及ぼすことなく、基板の少なくとも感光面を除塵することができる。これにより、ロール・トゥ・ロール方式の露光装置がもともと有している露光動作速度を維持することができる。なお、除塵機能を有する2つのロールで基板を挟み込むような構成としてもよく、このような構成とすることにより、基板の両面を同時に除塵することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0032】
[実施形態1]
図1は、実施形態に係る露光装置10を説明するために示す全体的な構成図である。なお、
図1は、実施形態1係る露光装置10を模式的に示すものであり、実施形態に係る露光装置10を説明する上で特に必要としない構成要素については図示が省略されている。また、
図1は模式図であるため、実際の構成要素の寸法を同一比率で縮小したものとはなっておらず、構成要素が誇張されて描かれていたり、より縮小されて描かれていたりしている。
【0033】
実施形態に係る露光装置10は、
図1に示すように、長尺シート状の基板Wをx軸及びy軸によって形成されるxy平面におけるx軸に沿って間欠的に所定量ずつ搬送する搬送機構部100と、搬送機構部100によって間欠的に所定量ずつ搬送される基板Wの感光面Aを露光する露光部200と、これら搬送機構部100及び露光部200を収納している露光装置筐体300と、露光部200におけるマスク除塵部230(後述する。)を制御するマスク除塵部制御装置400と、露光部200における露光ステージ240(後述する。)を制御する露光ステージ制御装置500とを有している。実施形態に係る露光装置10は、これらの構成要素の他に、図示は省略するが、マスク板210及び基板Wなどに帯電している静電気を除電する除電部なども設けられている。
【0034】
搬送機構部100は、長尺シート状の基板Wを送り出す送り出し部110と、露光部200によって露光された露光済みの基板Wを巻き取る巻き取り部120と、基板Wをx軸に沿って間欠的に所定量ずつ搬送させる間欠送り機構部130と、露光部200よりも送り出し部110の側に配置され、基板Wの感光面Aを除塵する基板除塵部140と、搬送路上に設けられる送りローラー151,152とを有している。なお、送り出し部110及び巻き取り部120は、それぞれがロール状をなしているため、以下、送り出しローラー110、巻き取りローラー120という。
【0035】
このように、実施形態に係る露光装置10は、送り出しローラー110に巻き取られている基板Wを間欠的に所定量ずつ搬送させて行く過程で、露光部200によって基板Wの感光面Aを露光させたのち、露光済みの基板Wを巻き取りローラーで巻き取る「ロール・トゥ・ロール(Roll to Roll)」方式の露光装置である。なお、この明細書においては、基板Wがx軸に沿って巻き取り部120に搬送されて行く側を前方側とし、当該前方側とは反対側を後方側として説明する。
【0036】
搬送機構部100における間欠送り機構部130は、例えば、固定クランパ―131を開放して、送りクランパ―132によって基板Wをクランプして所定量だけ送り、所定量だけ送ったのちは固定クランパ―で基板Wをクランプし、その後、再び、固定クランパ―131を開放して、送りクランパ―132によって基板Wをクランプして所定量だけ搬送し、所定量だけ搬送したのちは固定クランパ―で基板Wをクランプするという動作を順次繰り返す。これによって、基板Wを間欠的に所定量ずつ送ることができる。なお、間欠送り機構部130の構成は、このような構成のものに限られるものではなく、種々の構成の間欠送り機構部を採用することができる。
【0037】
また、基板除塵部140は、送り出しローラー110から送り出された基板Wを除塵するものであり、表面に粘着力を有するロール状をなしており、実施形態に係る露光装置10においては粘着力を有する部材(例えば、粘着力を有するゴムなど)をロール状に形成したものを用いている。
【0038】
このように、基板除塵部140がロール状をなしていることから、基板除塵部140を「基板除塵ローラー140」ともいう。なお、基板除塵ローラー140は粘着力を有するものであるが、その粘着力は、基板Wの感光面Aに存在する塵埃をくっつけて取り去ることができる程度であり、基板Wの感光面Aに悪影響を及ぼすことのない程度の粘着力であるとする。なお、基板Wの感光面Aというのは、基板Wにフォトレジストなどが塗布されている面であり、フォトレジストはすでに乾いた状態にあるものとする。
【0039】
基板除塵ローラー140は、基板Wを挟むように2個のローラー141,142によって構成されている。なお、基板Wの感光面Aの除塵を行うことを主として考えれば、感光面側のローラー141のみが基板除塵機能を有するものであってもよいが、2個のローラー141,142に基板除塵機能を持たせることにより、基板Wの感光面Aだけではなく、感光面Aとは反対側の面の除塵も可能となる。このため、基板Wの感光面Aと反対側の面に位置するローラー142にも基板除塵機能を有することが好ましい。
【0040】
図2は、実施形態に係る露光装置10における露光部200の構成を説明するために示す図である。
図2(a)は
図1における露光部200を送り出しローラー110の側からx軸に沿って見た場合の側面図であり、
図2(b)は
図2(a)におけるa−a矢視平面図である。
図2を参照して露光部200について説明する。
【0041】
露光部200は、図示しない光源と、透明ガラスなどの透光性部材でなり所定の厚みを有するマスク板210と、パターン面Mを下向きにした状態でマスク板210を保持するマスク板保持部220と、パターン面Mを除塵する動作を行うマスク除塵部230と、基板Wを挟んでマスク板210と対向する位置に配置され、xy平面に直交するz軸に沿って昇降可能な露光ステージ240と、マスク除塵部230をx軸に沿って往復動させるためのマスク除塵部駆動機構部250と、露光ステージ240をz軸に沿って昇降させるための露光ステージ駆動機構部260とを有している。
なお、実施形態1に係る露光装置10においては、マスク板210のx軸沿った長さとマスク板保持部220のx軸の沿った長さは、同じ長さL1(
図1参照。)であるとする。また、マスク板保持部220は、z軸に沿って所定の厚みを有しているものとする。
【0042】
マスク除塵部230は、表面に粘着力を有するロール状をなしている。実施形態に係る露光装置10においては粘着力を有する部材(例えば、粘着力を有するゴムなど)をロール状に形成したものを用いている。
【0043】
このように、マスク除塵部230がロール状をなしていることから、マスク除塵部230を「マスク除塵ローラー230」ともいう。なお、マスク除塵ローラー230は粘着力を有するものであるが、その粘着力は、マスク板210のパターン面Mに存在する塵埃をくっつけて取り去ることができる程度であり、マスク板210のパターン面Mに悪影響を及ぼすことのない程度の粘着力であるとする。
【0044】
露光ステージ240は、露光テーブル241を有している。露光テーブル241は、マスク板210のパターン面Mに基板Wを介して対向するように配置されており、基板Wを下側から保持する役目をなしている。
【0045】
また、露光ステージ240には、y軸に沿った方向に突出している棚部242L,242Rがx軸に沿って左右両側に形成されている。棚部242L,242Rには、マスク除塵ローラー230をx軸に沿って往復動させるためのマスク除塵部駆動機構部250が設けられている。
【0046】
マスク除塵部駆動機構部250は、棚部242L.242Rにそれぞれ敷設されているガイドレール251L,251Rと、これらガイドレール251L,251R上をスライド可能なスライダー252L,252Rと、スライダー252L,252Rをx軸に沿って往復動させるためのボールネジ253L,253Rと、スライダー252L,252Rに固定され、マスク除塵ローラー230の回転軸231を左右両側において回転自在に支持するマスク除塵ローラー支持部254L,254Rと、ボールネジ253L,253Rを回転駆動するためのモーター(図示せず。)とを有している。なお、モーターはサーボモーターを用いることができる。
【0047】
マスク除塵部駆動機構部250がこのような構造となっているため、ボールネジ253L,253Rが、それぞれ同期した状態で時計方向又は反時計方向に回転することにより、スライダー252L,252Rは、x軸に沿って往復動し、それによって、マスク除塵ローラー230も、x軸に沿って往復動する。なお、マスク除塵ローラー230は、マスク除塵部駆動機構部250によって、露光ステージ240のx軸に沿った一端部240aと他端部240bとの間のうちの所定範囲を可動範囲(後述する。)として、当該可動範囲内を往復動する。
【0048】
例えば、ボールネジが253L,253Rが反時計方向(前方側を見たときの反時計方向)に回転することにより、スライダー252L,252Rは、x軸に沿って前方側に進行し、それによって、マスク除塵ローラー230も、x軸に沿って前方側に進行する。
【0049】
また、ボールネジが253L,253Rが時計方向(前方側を見たときの時計方向)に回転することにより、スライダー252L,252Rは、x軸に沿って後方側に進行し、それによって、マスク除塵ローラー230も、x軸に沿って後方側に進行する。
このように構成されているマスク除塵部駆動機構部250は、マスク除塵部制御装置400によって制御され、それによって、マスク除塵ローラー230が制御される。
【0050】
ところで、マスク除塵ローラー支持部254L,254Rには、マスク除塵ローラー230を回転自在に支持するためのU字状の軸受け溝が255(
図1参照。)がそれぞれ形成されている。当該軸受け溝255は、上端側が開口となっており、マスク除塵ローラー230は、回転軸231を軸受け溝255の開口から落とし入れることによって、軸受け溝255で回転自在に支持された状態となる。
【0051】
このような構造であるため、マスク除塵ローラー230は、マスク除塵ローラー支持部254L,254Rに容易に着脱自在となり、マスク除塵ローラー230の掃除や交換などのメンテナンスを容易に行うことができる。なお、マスク除塵ローラー230は、動力によって回転するものではなく、空回りするようにマスク除塵ローラー支持部254L,254Rに支持されている。
【0052】
また、マスク除塵ローラー支持部254L,254Rは、スライダー252L,252Rにガイドピン256とバネ257とによって支持されており、マスク除塵ローラー支持部254L,254Rにz軸に沿って下方向に押圧力を与えると、当該押圧力に対してはバネ257の伸張力による抗力が働くようになっている。このため、マスク除塵ローラー支持部254L,254Rに支持されているマスク除塵ローラー230をマスク板210のパターン面Mに当接させると、マスク除塵ローラー230はバネ257の伸張力によって所定の押圧力でマスク板210のパターン面Mに接触することとなる。
【0053】
一方、露光ステージ240は、露光ステージ駆動機構部260によって、z軸に沿って昇降可能となっている。露光ステージ駆動機構部260は、露光ステージ240に固定されている昇降台261と、昇降台261をz軸に沿って昇降させるための露光ステージ用のボールネジ263と、ボールネジ263を回転駆動するためのモーター(図示せず。)とを有している。なお、モーターはサーボモーターを用いることができる。
【0054】
このように構成されている露光ステージ駆動機構部260は、ボールネジ263を時計方向又は反時計方向に回転させることにより、露光ステージ240をz軸に沿って昇降させることができる。なお、露光ステージ駆動機構部260によって露光ステージ240を昇降させると、露光ステージ240だけではなく、搬送機構部100全体も昇降するようになっている。
【0055】
これにより、例えば、ボールネジ263を反時計方向(z軸に沿って上方を見たときの反時計方向)に回転させると、露光ステージ240がz軸に沿って上昇するとともに、搬送機構部100も露光ステージ240とともに上昇する。なお、「搬送機構部100も露光ステージ240とともに上昇する」ということは、送り出しローラー110、巻き取りローラー120、間欠送り機構部130、基板除塵ローラー140及び基板Wが露光ステージ240とともに上昇するということである。
【0056】
一方、ボールネジ263を時計方向(z軸に沿って上方を見たときの時計方向)回転させると、露光ステージ240がz軸に沿って下降するとともに搬送機構部100も露光ステージ240とともに下降する。なお、「搬送機構部100も露光ステージ240とともに下降する」ということは、送り出しローラー110、巻き取りローラー120、間欠送り機構部130、基板除塵ローラー140及び基板Wが露光ステージ240とともに下降するということである。
このように構成されている露光ステージ駆動機構部260は、露光ステージ制御装置500によって駆動制御される。
【0057】
なお、マスク除塵部駆動機構部250に設けられているボールネジ253L,253Rは、マスク除塵部230(マスク除塵ローラー230)を駆動するためのボールネジであるため、マスク除塵部用ボールネジ253L,253Rという場合もある。また、露光ステージ駆動機構部260に設けられているボールネジ263は、露光ステージ240を駆動するためのボールネジであるため、露光ステージ用ボールネジ263という場合もある。
【0058】
図3は、実施形態に係る露光装置10におけるマスク除塵部制御装置400及び露光ステージ制御装置500の構成を示す図である。
図3(a)はマスク除塵部制御装置400の構成を示し、
図3(b)は露光ステージ制御装置500の構成を示している。
【0059】
マスク除塵部制御装置400は、
図3(a)に示すように、マスク除塵部用ボールネジ253L,253Rをそれぞれ駆動するマスク除塵部用ボールネジ駆動部(サーボモーターなど)410と、マスク除塵ローラー230の進行を制御するための制御プログラム及びユーザーの設定情報などを記憶している記憶部420と、記憶部420の記憶内容に基づいてマスク除塵部用ボールネジ駆動部410を制御することにより、マスク除塵ローラー230の前方側又は後方側への進行を制御する進行制御部430とを有している。
【0060】
露光ステージ制御装置500は、
図3(b)に示すように、露光ステージ用ボールネジ263を駆動する露光ステージ用ボールネジ駆動部(サーボモーターなど)510と、露光ステージ240の昇降を制御するための制御プログラム及びユーザーの設定情報などを記憶している記憶部520と、記憶部520の記憶内容に基づいて露光ステージ用ボールネジ駆動部510を制御することにより、露光ステージ240の上昇又は下降を制御する昇降制御部530とを有している。
【0061】
なお、
図3においては、マスク除塵部制御装置400及び露光ステージ制御装置500それぞれに記憶部(記憶部420及び記憶部520)を設けるようにしたが、1つの記憶部を共用するようにしてもよい。
【0062】
図4〜
図7は、実施形態に係る露光装置10の動作を説明するために示す図である。
図4(a)〜
図4(d)、
図5(a)〜(c)、
図6(a)〜
図6(d)及び
図7(a)〜
図7(c)はそれぞれの工程を示す図である。なお、
図4〜
図7は露光部200におけるマスク除塵ローラー230の動作を主に説明するために示す図である。このため、
図1に示す構成要素のうち、搬送機構部100は図示が省略されており、また、露光部200においても、露光ステージ駆動機構部260などは図示が省略されている。また、露光部200において
図1及び
図2において付されている符号のうち省略されている符号もある。
【0063】
なお、
図4〜
図7において、マスク除塵ローラー230を進行させるための制御は、
図3(a)に示したマスク除塵部制御装置400によって行われ、露光ステージ240を昇降させるための制御は、
図3(b)に示した露光ステージ制御装置500によって行われる。
【0064】
実施形態に係る露光装置10においては、基板Wは搬送機構部100によって間欠的に所定量ずつ搬送されており、1回分の搬送がなされると、基板Wの感光面Aにおいて露光対象となる複数の感光領域(これをA1,A2,・・・で表す。)のうちのある1つの感光領域(例えば、感光領域A1とする。)が、露光テーブル241上においてマスク板210のパターン面Mと対面する位置となる。そして、感光領域A1がマスク板210のパターン面Mと対面する位置で基板Wの搬送が一旦停止した状態となり、この状態で露光を行うことによって、感光領域A1にパターンが転写される。
【0065】
そして、感光領域A1の露光が終了すると、基板Wが再び所定量だけ搬送され、基板Wの感光面Aにおいて次の感光領域(例えば、感光領域A2とする。)が、露光テーブル241上においてマスク板210のパターン面Mと対面する位置となる。そして、感光領域A2がマスク板210のパターン面Mと対面する位置で基板Wの搬送が一旦停止した状態となり、この状態で露光を行うことによって、感光領域A2にパターンが転写される。このような動作を繰り返し行う。
【0066】
このような動作を行う過程で、基板Wは基板除塵ローラー140によって除塵され、マスク板210のパターン面Mはマスク除塵ローラー230によって除塵される。基板除塵ローラー140による基板Wの除塵及びマスク除塵ローラー230によるマスク板210のパターン面Mの除塵は、基板Wが搬送されている間に行われる。なお、基板除塵ローラー140による基板Wの除塵は、基板Wが搬送されるごとに基板除塵ローラー140が回転することにより行うことができるため、ここでは、マスク除塵ローラー230による除塵動作について説明する。
【0067】
図4(a)はマスク除塵ローラー230が除塵動作を開始する前の状態であり、このような状態となっているときのマスク除塵ローラー230の位置を初期位置という。このとき、基板Wは既に搬送動作を開始しているものとする。
【0068】
マスク除塵ローラー230が
図4(a)に示す初期位置にあるときにおいては、当該マスク除塵ローラー230のx軸に沿った位置(回転軸231のx軸に沿った位置)x1は、マスク板210の後方側の端部(後方側端部という。)210aからx軸に沿ってさらに後方側に所定間隔だけ離間した位置(第1位置x1ともいう。)となっている。
【0069】
また、マスク除塵ローラー230のz軸に沿った位置(マスク除塵ローラー230における円周上の上方側頂点P1のz軸に沿った位置)z2は、マスク板210のパターン面Mの位置z1よりも下方側に所定間隔だけ離間した位置となっているものとする。
マスク除塵ローラー230がこのような初期位置にあるときには、当該マスク除塵ローラー230はマスク板210のパターン面Mに非接触となっている。
【0070】
マスク除塵ローラー230が
図4(a)に示す初期位置にある状態から、x軸に沿って前方側に所定量だけ進行し、マスク板210の後方側端部210a付近の平面部、すなわち、パターン面Mにおける後方側端部e1付近に対向する位置x2に達すると(
図4(b)参照。)、露光ステージ240がz軸に沿って所定量上昇し、マスク除塵ローラー230がマスク板210のパターン面Mにおける後方側端部e1付近に接触する(
図4(c)参照。)。その後、マスク除塵ローラー230は、マスク板210のパターン面Mに接触した状態でx軸に沿って前方(矢印x方向)に進行して行く。
【0071】
このとき、マスク除塵ローラー230は、バネ257の伸張力が働いた状態で、
図4(c)に示すように、マスク板210のパターン面Mに接触した状態で回転しながら進行して行く。これにより、マスク板210のパターン面Mに存在する塵埃を、マスク除塵ローラー230の側に付着させることができ、それによって、マスク板210のパターン面Mを除塵できる。
【0072】
このように、マスク除塵ローラー230がマスク板210のパターン面Mに接触した状態においては、当該マスク除塵ローラー230は、バネ257の伸張力でマスク板210のパターン面Mを押圧した状態となっている。このため、マスク除塵ローラー230がマスク板210のパターン面Mに接触する際のマスク板210に対する押圧力などの制御は特に行う必要はない。
【0073】
なお、マスク除塵ローラー230は粘着力を有するものであるが、その粘着力は、マスク板210のパターン面Mに存在する塵埃をくっつけて取り去る程度のものであるため、マスク板210のパターン面Mに形成されているパターンなどに悪影響を及ぼすことはない。
【0074】
このようにして、マスク除塵ローラー230が、マスク板210のパターン面Mに接触した状態で回転しながら前方側に進行して、マスク板210の前方側の端部(前方側端部という。)210b、すなわち、マスク板210のパターン面Mにおける前方側端部e2付近に達すると(
図4(d)参照。)、露光ステージ240は、
図4(d)の状態からz軸に沿って下降する(
図5(a)参照。)。このときのマスク除塵ローラー230のz軸に沿った位置(円周上の上方側頂点P1のz軸に沿った位置)は、
図4(a)と同じ位置z2である。なお、露光ステージ240が所定だけ下降すると、当該露光ステージ240の下降とともに搬送機構部100全体も所定量だけ下降する。
【0075】
そして、マスク除塵ローラー230は、さらに前方に進み、マスク板210の前方側端部210b(パターン面Mの前方側端部e2)からx軸に沿って前方側に所定間隔離間した位置x4(第2位置x4ともいう。)に達する(
図5(b)参照。)。
【0076】
マスク除塵ローラー230がx軸に沿って
図4(a)に示す第1位置x1から
図5(b)に示す第2位置x4に進行するまでの動作は、基板Wが搬送されている間に行われる。このため、長尺シート状の基板Wを所定量ずつ間欠的に所定量ずつ搬送して露光を行うといった露光装置10が行うもともとの露光動作に影響を及ぼすことなく、マスク板210のパターン面Mを除塵することができる。なお、基板除塵ローラー140による基板Wの除塵も基板Wの搬送中に行うことができるため、基板W及びマスク板210のパターン面Mの除塵を行うことによる時間のロスは発生しない。
【0077】
このように、マスク除塵ローラー230が、
図5(b)に示す位置x4(第2位置x4)に達すると、露光ステージ240が所定量だけ上昇する(
図5(c)参照。)。露光ステージ240が所定量だけ上昇すると、当該露光ステージ240の上昇とともに搬送機構部100全体も所定量だけ上昇する。
【0078】
なお、露光ステージ240が所定量だけ上昇する際、マスク除塵ローラー230は、マスク板210の前方側端部210b(パターン面Mの前方側端部e2)からx軸に沿って前方側に所定間隔離間した位置x4(第2位置x4)に達しているため、マスク除塵ローラー230はマスク板210及びマスク板保持部220に当接してしまうことがない。また、マスク除塵ローラー230は、図示していない他の構成要素にも当接しないようになっているものとする。これにより、露光ステージ240は、
図5(c)に示すように上昇することができる。
【0079】
露光ステージ240の上昇量は、基板の感光面A(この時点においては感光領域A1とする。)がマスク板210のパターン面Mに近接または接触するようになる程度の上昇量である。
図5(c)に示すように、基板Wの感光領域A1がマスク板210のパターン面Mに近接または接触する状態となると、この状態で露光を行う。これにより、基板Wの感光領域A1にパターンが転写される。
【0080】
なお、露光を行う際における基板Wの感光面とマスク板210のパターン面Mとの間は密着させるようにしてもよいが、わずかな空隙(例えば、1/100mm〜4/100mm程度)が存在する程度の間隔を設けるようにしてもよい。
【0081】
このように、基板Wの感光面とマスク板の210パターン面Mとの間に、わずかな空隙(例えば、1/100mm〜4/100mm程度)を設けることにより、基板W側にわずかな塵埃が残存していたとしても、残存している塵埃がマスク板210のパターン面Mに付着してしまうといったことを防止ができる。
【0082】
そして、露光が終了した後、基板Wの間欠的な搬送動作が再開され、基板Wは所定量だけ搬送される。このように、基板Wの間欠的な搬送動作が再開されると、露光ステージ240は、
図5(c)の状態から
図6(a)に示すようにz軸に沿って下降する。なお、露光ステージ240が所定だけ下降すると、当該露光ステージ240の下降とともに搬送機構部100全体も所定量だけ下降する。なお、このときのマスク除塵ローラー230のx軸に沿った位置は、
図5(b)と同じ位置(第2位置x2)である。
【0083】
その後、
図6(a)に示す位置から、マスク除塵ローラー230は、x軸に沿って後方側に所定量だけ進行し、マスク板210の前方側端部210b付近の平面部、すなわちマスク板210のパターン面Mにおける前方側端部e2付近に対向する位置x2に達すると(
図6(b)参照。)、露光ステージ240がz軸に沿って所定量上昇し、マスク除塵ローラー230がマスク板210のパターン面Mにおける前方側端部e2付近に接触する(
図6(c)参照。)。その後、マスク除塵ローラー230は、マスク板210のパターン面Mに接触した状態でx軸に沿って後方側(矢印x’方向)に進行して行く。
【0084】
このとき、マスク除塵ローラー230は、バネ257の伸張力が働いた状態でマスク板210のパターン面Mに接触した状態で回転しながら進行して行く。これにより、マスク板210のパターン面Mに存在する塵埃を、マスク除塵ローラー230の側に付着させることができ、それによって、マスク板210のパターン面Mを除塵できる。
【0085】
このようにして、マスク除塵ローラー230は、マスク板210のパターン面Mに接触した状態で回転しながら後方側に進行し、やがて、マスク板210のパターン面Mにおける後方側端部e1付近に達する(
図6(d)参照。)。すると、露光ステージ240は、
図6(d)の状態から下降する(
図7(a)参照。)。このときのマスク除塵ローラー230のz軸に沿った位置(円周上の上方側頂点P1のz軸に沿った位置)は、
図4(a)と同じ位置z2である。なお、露光ステージ240が所定だけ下降すると、当該露光ステージ240の下降とともに搬送機構部100全体も所定量だけ下降する。
【0086】
そして、マスク除塵ローラー230は、さらに後方側に進み、マスク板210における後方側端部210a(パターン面Mの後方側端部e1)からx軸に沿って後方側に所定間隔離間した位置x1(第1位置x1)に達する(
図7(b)参照。)。
【0087】
マスク除塵ローラー230が
図5(b)に示す第2位置x4から
図7(b)に示す第1位置x1に進行するまでの動作は、基板Wが搬送されている間に行われる。このため、長尺シート状の基板Wを所定量ずつ間欠的に所定量ずつ搬送して露光を行うといった露光装置10が行うもともとの露光動作に影響を及ぼすことなく、マスク板210のパターン面Mを除塵することができる。
【0088】
このように、マスク除塵ローラー230が、
図7(b)に示すように、位置x1(第1位置x1)に達すると、露光ステージ240が所定量だけ上昇する(
図7(c)参照。)。これは、
図5(c)と同様の動作である。このとき、露光ステージ240の上昇に伴って搬送機構部100全体も所定量だけ上昇する。
図7(c)に示すように、基板Wの感光面(感光領域A2とする。)がマスク板210のパターン面Mに近接または接触する状態となると、この状態で、露光を行う。これにより、基板Wの感光領域A2にパターンが転写される。
【0089】
この場合も、露光ステージ240が所定量だけ上昇する際には、マスク除塵ローラー230は、マスク板210の後方側端部210a(パターン面Mの後方側端部e1)からx軸に沿って後方側に所定間隔離間した位置x1(第1位置x1)に達しているため、マスク除塵ローラー230はマスク板210及びマスク板保持部220に当接してしまうことがない。また、マスク除塵ローラー230は、図示していない他の構成要素にも当接しないようになっているものとする。これにより、露光ステージ240は、
図7(c)に示すように上昇することができる。
【0090】
そして、露光が終了した後、露光ステージ240は、
図7(c)の状態から下降する。このとき、基板Wの間欠的な搬送動作も再開されており、基板Wは所定量だけ搬送される。なお、露光が終了した後、露光ステージ240が、
図7(c)の状態から下降したときの状態は、
図4(a)と同じ状態となる。この状態から、再び、
図4(b)〜
図4(d)、
図5(a)〜
図5(c)、
図6(a)〜
図6(d)及び
図7(a)〜
図7(c)を順次行って
図4(a)に戻るといった動作を繰り返し行う。
【0091】
このように、実施形態に係る露光装置10においては、マスク除塵ローラー230は、第1位置x1と第2位置x4との間を、往復動する際の可動範囲として、当該可動範囲内を進行しながらマスク板210のパターン面Mを除塵する動作を行う。そして、マスク除塵ローラー230が可動範囲内を前方側に進行する動作を前方進行動作とし、マスク除塵ローラー230が可動範囲内を後方側に進行する動作を後方進行動作としたとき、マスク除塵ローラー230は、前方進行動作及び後方進行動作それぞれにおいてマスク板210のパターン面Mを除塵する動作を行う。また、前方進行動作及び後方進行動作それぞれにおいてマスク板210のパターン面Mを除塵する動作は、基板Wが間欠的に所定量ずつ搬送されて行く動作の間に交互に行われる。このため、マスク除塵動作を効率的に行うことができる。
【0092】
ところで、マスク除塵ローラー230が、マスク板210に対してx軸及びz軸に沿ってそれぞれ離間している位置となっている状態(
図4(a)参照。)から、マスク除塵ローラー230が、マスク板210のパターン面Mに接触した状態(
図4(c)参照。)になる際には、
図4(a)から
図4(c)に示すように、マスク除塵ローラー230は直接的にマスク板210のパターン面Mに接触する。
【0093】
このため、マスク除塵ローラー230がマスク板210の後方側端部210aを前方側に押してしまうことがなくなり、マスク板210の位置ずれを防止することができるとともに、マスク板210の後方側端部210aにおける角部などの破損を防止することができる。
【0094】
なお、
図4(c)においては、マスク除塵ローラー230がパターン面Mに接触したときのx軸に沿った位置x2は、マスク板210の後方側端部210a(パターン面Mの後方側端部e1)に一致した位置となっているが、必ずしも、マスク板210の後方側端部210a(パターン面Mの後方側端部e1)に一致した位置とする必要はなく、マスク板210の後方側端部210a付近の平面部、すなわち、パターン面Mの後方側端部e1付近(例えば、パターン面Mにおいて実際にパターンが形成されているパターン形成領域の後方側端部)としてもよい。要は、マスク板210の後方側端部210aを前方側に押してしまったり、マスク板210の後方側端部210aにおける角部などを破損させたりすることがない位置で、かつ、マスク板210のパターン面Mにおけるパターン形成領域を確実に除塵できる位置であればよい。
【0095】
また、マスク除塵ローラー230が、第2位置x4から後方側に進行する場合においても、マスク除塵ローラー230が、マスク板210に対してx軸及びz軸に沿ってそれぞれ離間した位置となっている状態(
図6(a)参照。)から、マスク除塵ローラー230がマスク板210に接触した状態(
図6(c)参照。)になる際には、
図6(a)から
図6(c)に示すように、マスク除塵ローラー230が直接的にマスク板210のパターン面Mに接触する。
【0096】
このため、マスク除塵ローラー230がマスク板210の前方側端部210bを後方側に押してしまうことがなくなり、マスク板210の位置ずれを防止することができるとともに、マスク板210の前方側端部210bにおける角部などの破損を防止することができる。
【0097】
なお、
図6(c)においては、マスク除塵ローラー230がパターン面Mに接触したときのx軸に沿った位置x3は、マスク板210の前方側端部210b(パターン面Mの前方側端部e2)に一致した位置となっているが、この場合も、マスク板210の前方側端部210b(パターン面Mの前方側端部e2)に一致した位置とする必要はなく、マスク板210の前方側端部210b付近の平面部、すなわち、パターン面Mの前方側端部e2付近(例えば、パターン面Mにおいて実際にパターンが形成されているパターン形成領域の前方側端部)としてもよい。要は、マスク板210の前方側端部210bを後方側に押してしまったり、マスク板210の前方側端部210bにおける角部などを破損させたりすることがない位置で、かつ、マスク板210のパターン面Mにおけるパターン形成領域を確実に除塵できる位置であればよい。
【0098】
以上説明したように実施形態に係る露光装置10によれば、マスク除塵ローラー230によって、マスク板210のパターン面Mを除塵する動作は、基板Wが搬送されている間に自動的に行われる。また、マスク除塵ローラー230によるマスク板210のパターン面Mの除塵だけでなく、基板除塵ローラー140により基板Wの除塵を行うことができる。なお、基板除塵ローラー140が基板Wを除塵する動作も、基板Wが搬送されている間に自動的に行われる。このため、ロール・トゥ・ロール方式の露光装置においてもともと行われている露光動作に影響を及ぼすことはなく、マスク板210のパターン面M及び基板Wの除塵を行うことができる。これにより、もともとの露光動作速度を維持することができる。
【0099】
また、実施形態に係る露光装置10においては、マスク除塵ローラー230はバネ257の伸張力によってマスク板210のパターン面Mに所定の押圧力与えた状態で接触するような構造となっている。このため、マスク除塵ローラー230をパターン面Mに適切な押圧力で接触させることができ、接触させる際の押圧力の制御などを高精度に行う必要がない。また、マスク除塵ローラー230とパターン面Mとの間隔(z軸に沿った間隔)も高精度に調整する必要がなく、マスク除塵ローラー230とパターン面Mとの間隔(z軸に沿った間隔)の調整作業を軽減することができる。それにより、実施形態に係る露光装置10によれば、マスク板210のパターン面Mを除塵するための機構全体を簡単化することができる。
【0100】
なお、本発明は上記した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0101】
(1)上記実施形態においては、ボールネジ253L.253Rを左右両側のスライダー252L,252Rに設け、両者を同期させた状態で回転させることで、マスク除塵ローラー230をx軸に沿って往復動させるようにしたが、ボールネジは左右のいずれかのみとしてもよい。例えば、
図2(a)における右側のスライダー252Rのみにボールネジ253Rを設ける場合には、左側のスライダー252Lは右側のスライダー252Rの進行に連動してガイドレール251L上を進行することとなる。このような構造としても、マスク除塵ローラー230をx軸に沿って往復動させることが可能となる。
【0102】
また、1つのボールネジで左右両側のスライダー252L,252Rを駆動する場合、1つのボールネジは、左側のスライダー252Lと右側のスライダー252Rとの中間位置にx軸に沿って配置するようにしてもよい。このようにすることで、1つのボールネジで左右両側のスライダー252L,252Rバランスよく駆動させることができる。
【0103】
(2)上記実施形態においては、マスク除塵部駆動機構部250は、ボールネジを使用してマスク除塵ローラー230をx軸に沿って往復動させるような機構としたが、マスク除塵ローラーをx軸に沿って往復動させるような機構は種々の機構を採用することができる。また、露光ステージ駆動機構部260も、同様に、ボールネジを使用して露光ステージ240を昇降させるような機構としたが、露光ステージ240をz軸に沿って昇降動させるような機構は種々の機構を採用することができる。
【0104】
(3)上記実施形態においては、マスク除塵ローラー230は、マスク除塵ローラー230全体が粘着力を有する部材でなるものとして説明したが、これに限られるものではなく、マスク除塵ローラー230の表面のみが粘着力を有するようなものであってもよい。例えば、合成樹脂などから円筒体の表面に粘着力を有する部材を巻き付けたものであってもよく、また、円筒体の表面に粘着層が形成されているものであってもよい。基板除塵ローラー140も同様である。
【0105】
(4)上記実施形態においては、基板Wの感光面Aが上向きに配置され、マスク板210のパターン面Mが下向きに配置されている露光装置を例示したが、これに限られるものではなく、その逆の配置であってもよい。すなわち、基板Wの感光面Aが下向きに配置され、マスク板210のパターン面Mが上向きに配置されている露光装置であってもよい、
【0106】
(5)上記実施形態においては、露光部200において基板Wの感光面Aを露光させる際に、基板Wの感光面Aとマスク板210のパターン面Mとの間にわずかな空隙を設けた状態で露光させるようにした場合を例示したが、必ずしも、基板Wの感光面Aとマスク板210のパターン面Mとの間にわずかな空隙を設ける必要はなく、基板Wの感光面Aとマスク板210のパターン面Mとを密着させた状態で露光させるようにしてもよい。
【0107】
(6)上記実施形態においては、マスク除塵部は、前方進行動作及び後方進行動作それぞれにおいてマスク板210のパターン面Mを除塵する動作を行うようにしたが、前方進行動作及び後方進行動作のいずれか一方のみにおいて除塵を行うようにしてもよい。
【0108】
(7)上記実施形態においては、マスク除塵部としては、粘着力を有する部材でなるローラー(マスク除塵ローラー230)を用いて、マスク板210のパターン面Mに存在する塵埃を、マスク除塵ローラー230の粘着力により除塵する場合を例示したが、これに限られるものではない。例えば、マスク除塵部は、真空吸引によって除塵するものであってもよい。このように、マスク除塵部は、真空吸引によって除塵するものとした場合の露光装置を本発明の露光装置の変形例として説明する。
【0109】
本発明の露光装置の変形例は、マスク除塵部230は、マスク板210のパターン面Mにおけるy軸方向に沿った吸引口を有し、吸引によってマスク板210のパターン面Mを除塵する吸引式のマスク除塵部であって、吸引式のマスク除塵部がマスク板210のパターン面Mを除塵する動作は、マスク板210のパターン面Mとの間に所定の空隙を有した状態で吸引力を発揮しながらマスク板210のパターン面Mに沿ってx軸方向に沿って進行して行く動作を行うものである。
【0110】
なお、マスク除塵部が真空吸引によって除塵するものであっても、露光装置の全体的な構成は、上記した実施形態において説明した露光装置と同様の構成とすることができる。なお、真空吸引によって除塵するマスク除塵部を、下記の説明においては、吸引式マスク除塵部とする。
【0111】
このような吸引式マスク除塵部を、例えば、
図1に示す露光装置に適用した場合において簡単に説明する。吸引式マスク除塵部は、マスク板210の幅方向(
図1においてy軸に沿った方向)に細長い吸引口を有している。このような吸引式マスク除塵部は、マスク除塵ローラー230と同様にマスク除塵ローラー支持部254L,254Rに取り付けることができる。このとき、吸引式マスク除塵部の吸引孔はマスク板210のパターン面Mに対向可能となるように上向きとする。
【0112】
そして、除塵を行う際においては、
図4〜
図7とほぼ同様の動作を行えばよい。但し、吸引式マスク除塵部及び吸引式基板除塵部は、マスク板210のパターン面Mに対してそれぞれ非接触の状態で除塵するため、吸引式マスク除塵部をマスク板210のパターン面Mに接触させる必要はない。従って、
図4(a)に示す初期位置において、吸引式マスク除塵部の吸引口とマスク板210のパターン面Mとのz軸に沿った間隔を適切に設定しておけば、z軸に沿った位置はそのままの状態で、吸引式マスク除塵ローラーをx軸に沿って往復動させればよい。
【0113】
また、吸引式マスク除塵部は、マスク板210のパターン面Mに対して非接触の状態で除塵するものであるため、マスク除塵ローラー230のように、バネ257による伸張力でマスク板210のパターン面Mに接触させる構造は不要である。
【0114】
このような吸引式マスク除塵部を用いることによっても、上記実施形態と同様に、基板Wを間欠的に所定量ずつ搬送させる間に、マスク板210のパターン面Mを除塵することができる。なお、基板除塵部140においても、同様に吸引式の基板除塵部を用いることができる。
【0115】
(8)上記実施形態においては、
図1に示すように、マスク除塵部制御装置400及び露光ステージ制御装置500は、露光装置筐体300の内部に収納されている例が示されているが、露光装置筐体300の外部に設けられていてもよい。
【0116】
(9)上記実施形態においては、
図1に示すように、マスク板210のx軸沿った長さとマスク板保持部220のx軸に沿った長さは、同じ長さL1としているが、必ずしも、同じ長さである必要はなく、露光ステージ240の上昇に伴ってマスク除塵ローラー230が上昇する際、マスク除塵ローラー230の上昇を妨げとならなければ、マスク板保持部220のx軸に沿った長さは、マスク板210よりも長くてもよい。
送り出し部と巻き取り部との間に架け渡されている長尺シート状の基板を間欠的に所定量ずつ搬送させて行く過程で、前記基板の感光面とマスク板のパターン面とを対面させて、前記基板の感光面を露光する露光装置であって、
前記基板がx軸及びy軸によって形成されるxy平面におけるx軸に沿って前記巻き取り部に向かう側を前方側とし、当該前方側とは反対側を後方側としたとき、
前記基板を挟んで前記マスク板と対向する位置に配置され、xy平面に直交するz軸に沿って前記基板とともに昇降可能な露光ステージと、
x軸に沿った往復動が可能で前記露光ステージとともにz軸に沿って昇降可能であり、かつ、前記基板の感光面からz軸に沿って離間した状態で前記マスク板の側に位置するように前記露光ステージに設けられ、少なくとも、前記マスク板の前記後方側の端部からx軸に沿ってさらに後方側に所定間隔離間した第1位置と前記マスク板の前記前方側の端部からx軸に沿ってさらに前方側に所定間隔離間した第2位置との間の範囲を、前記往復動する際の可動範囲として、当該可動範囲内を進行しながら前記マスク板のパターン面を除塵する動作を行うマスク除塵部と、
前記マスク除塵部を前記往復動させるためのマスク除塵部駆動機構部と、
前記マスク除塵部駆動機構部を制御することによって前記マスク除塵部の前記往復動を制御するマスク除塵部制御装置と、
前記露光ステージをz軸に沿って昇降可能とするための露光ステージ駆動機構部と、
前記露光ステージ駆動機構部を制御することによって前記露光ステージの昇降を制御する露光ステージ制御装置と、
を有し、
前記マスク除塵部は、少なくとも表面に粘着力を有するロール状をなしており、
前記マスク除塵部が前記マスク板のパターン面を除塵する動作は、前記マスク板のパターン面に接触した状態で回転して行く動作であり、
前記マスク除塵部が前記マスク板に対してx軸及びz軸に沿ってそれぞれ離間している位置から前記マスク除塵部を前記マスク板のパターン面に接触させる際においては、
マスク除塵部制御装置は、
前記マスク除塵部が前記マスク板のパターン面におけるx軸に沿った端部付近に対向する位置に達するように前記マスク除塵部駆動機構部を制御し、
前記露光ステージ制御装置は、
前記マスク除塵部が前記マスク板のパターン面におけるx軸に沿った端部付近に対向する位置に達すると、前記マスク除塵部を前記マスク板のパターン面におけるx軸に沿った端部付近に接触させるように前記露光ステージ駆動機構部を制御し、
前記基板の感光面を露光する際には、
前記マスク除塵部制御装置は、前記マスク除塵部が、前記第1位置又は前記第2位置に達した状態となるように前記マスク除塵部駆動機構部を制御し、
前記露光ステージ制御装置は、前記マスク除塵部が、前記第1位置又は前記第2位置に達した状態において、前記露光ステージをz軸に沿って移動させて前記基板の感光面と前記マスク板のパターン面とが接触又は近接した状態となるように前記露光ステージ駆動機構部を制御することを特徴とする露光装置。