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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-50464(P2015-50464A)
(43)【公開日】2015年3月16日
(54)【発明の名称】リニア高電子移動度トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20150217BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20150217BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20150217BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20150217BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20150217BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20150217BHJP
【FI】
   H01L29/80 H
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 618E
   H01L29/78 301B
   H01L29/78 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-176940(P2014-176940)
(22)【出願日】2014年9月1日
(31)【優先権主張番号】61/873,306
(32)【優先日】2013年9月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/029,586
(32)【優先日】2013年9月17日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】599034594
【氏名又は名称】トライクイント・セミコンダクター・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TriQuint Semiconductor,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ツァーン、フア クエン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ツオ−ミン
(72)【発明者】
【氏名】ソーニヤー、ポール
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高移動度トランジスタ(HEMT)などの集積回路(IC)の構造配置、製造方法およびシステムを提供する。
【解決手段】集積回路(IC)デバイスシステムに含まれるICデバイス100は、基板104の上に形成される窒化ガリウム(GaN)バッファ層112と、GaNバッファ層112の上に形成される窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層116と、AlGaN層116の上に形成される窒化インジウムアルミニウムバリア層124と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に形成される窒化ガリウム(GaN)バッファ層と、
前記GaNバッファ層の上に形成され、約15%未満のアルミニウム濃度を有する窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層と、
前記AlGaN層の上に形成される窒化インジウムアルミニウム(InAlN)バリア層と、を備え、
前記AlGaN層は、前記InAlNバリア層よりも厚みが小さい装置。
【請求項2】
前記InAlNバリア層の上に形成されるゲート絶縁体をさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ゲート絶縁体の上に形成され、前記InAlNバリア層と容量結合するゲートをさらに備える請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記AlGaN層は、窒化アルミニウムガリウム(AlGa1−xN)を含み、xはアルミニウムとガリウムの相対量を表す請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記AlGaN層は、一定したアルミニウム含有量を有し、xは約0.04である請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記AlGaN層のアルミニウム濃度は、前記GaNバッファ層に近接するAlGaN層の部分における約0%から、前記InAlNバリア層に近接する前記AlGaN層の部分における約15%に向けて段階的となる請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記AlGaN層は、約40〜60Åの厚さを有する請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記AlGaN層は、約40Åまたは約50Åの厚さを有する請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記AlGaN層の上に形成される窒化アルミニウム(AlN)層をさらに備え、
前記InAlNバリア層は、前記AlN層の上に形成される請求項1に記載の装置。
【請求項10】
該装置は、高電子移動度トランジスタ(HEMT)を構成する請求項1に記載の装置。
【請求項11】
基板の上に、窒化ガリウム(GaN)バッファ層を形成するステップと、
前記GaNバッファ層の上に、約40〜60Åの厚さの窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層を形成するステップと、
前記AlGaN層の上に、窒化インジウムアルミニウム(InAlN)バリア層を形成するステップと、
前記InAlNバリア層の上に、ゲート、ソースおよびドレインを形成するステップと、を備える方法。
【請求項12】
前記InAlNバリア層の上にゲート絶縁体を形成するステップをさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ゲートを形成するステップは、前記ゲート絶縁体の上にゲートを形成するステップを備える請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記AlGaN層は、窒化アルミニウムガリウム(AlGa1−xN)を含み、
xは、0〜0.15の値であり、アルミニウムとガリウムの相対量を表す請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記AlGaN層は、一定したアルミニウム含有量を有し、xは約0.04である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記AlGaN層を形成するステップは、前記GaNバッファ層に近接するAlGaN層の部分における約0%から、前記InAlNバリア層に近接する前記AlGaN層の部分における約15%に向けて段階的となるアルミニウム濃度を有する前記AlGaN層を形成するステップを備える請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記AlGaN層を形成するステップは、約40〜60Åの厚さの前記AlGaN層を形成するステップを備える請求項11に記載の方法。
【請求項18】
無線周波数(RF)信号を送信および受信するトランシーバと、
前記トランシーバに内蔵または結合される高電子移動度トランジスタ(HEMT)と、を備え、
前記HEMTは、
基板と、
前記基板の上に形成される窒化ガリウム(GaN)バッファ層と、
前記GaNバッファ層の上に形成され、約15%未満のアルミニウム濃度を有する窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層と、
前記AlGaN層の上に形成される窒化インジウムアルミニウム(InAlN)バリア層と、を含むシステム。
【請求項19】
前記HEMTを含むRFパワー増幅器をさらに備える請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記HEMTを含む低ノイズパワー増幅器をさらに備える請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記HEMTを含むパワーコンディショナをさらに備える請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連文献]
本出願は、2013年9月3日に出願された米国仮出願第61/873,306号、発明の名称「リニア高電子移動度トランジスタ」の優先権の利益を享受する。その仮出願は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示の実施の形態は、広く集積回路の分野に関し、特に、リニア高電子移動度トランジスタおよび製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)は、異なるバンドギャップを有する二つの半導体材料の間に形成されるヘテロ接合を一般に含む。高移動度電荷キャリアは、例えばワイドバンドギャップ層(例えば、n型ドナー供給層)およびナローバンドギャップ層のヘテロ接合を用いて生成されうる。ワイドバンドギャップの窒化物トランジスタの場合、自発分極および圧電分極により、ワイドバンドギャップ層へのドーピングなしに電荷を誘起できる。電流は、これらの層の界面における極めて狭いチャネルに主に限定され、ソース端子およびドレイン端子間を流れる。この電流は、ゲート端子に印加される電圧により制御される。
【発明の概要】
【0004】
ヘテロ構造の電界効果トランジスタは極超短波(UHF)からミリ波まで適切なパワー性能を発揮しうるが、従来型のデバイスは、デバイスの非線形性に起因したリニアな増幅動作の提供に関する課題に直面しうる。リニア増幅が求められる状況においてこれらのトランジスタを採用する場合、トランジスタの非線形特性を補償するために外部回路を設けなければならないかもしれない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
添付の図面とともに以下の詳細な説明を読むことによって、実施の形態は容易に理解されるであろう。この説明を容易にするために、同様の参照符号は同様の構造的要素を指し示す。添付の図面において実施の形態は例示として示され、限定を目的としない。
【0006】
図1】様々な実施の形態に係る集積回路(IC)を模式的に示す断面図である。
【0007】
図2】様々な実施の形態に係るICデバイスの電子分布を示すグラフである。
【0008】
図3】様々な実施の形態に係るICデバイスのバンド図を示すグラフである。
【0009】
図4】様々な実施の形態に係るICデバイスの電子分布を示すグラフである。
【0010】
図5】様々な実施の形態に係るICデバイスのバンド図を示すグラフである。
【0011】
図6】様々な実施の形態に係るゲート電圧の関数としての相互コンダクタンスを示すグラフである。
【0012】
図7】様々な実施の形態に係る集積回路デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
【0013】
図8】様々な実施の形態に係るICデバイスを含むシステムの例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施の形態は、例えば高移動度トランジスタ(HEMT)などの集積回路(IC)の構造配置、製造方法およびシステムを提供する。
【0015】
以下の詳細な説明において、本明細書の一部をなす添付の図面には参照符号が付され、同様の部分には同様の番号が一貫して付され、本開示の主題が実施されうる実施の形態は、例示を目的として示される。本開示の範囲を逸脱しない限りにおいて、他の実施の形態が利用され、かつ、構造的または論理的変更がなされうるものと理解されるべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、実施の形態の範囲は、添付の請求項およびそれと同等の記載によって定義される。
【0016】
本開示において、「Aおよび/またはB」の語は、「A」、「B」または「AおよびB」を意味する。本開示において、「A、Bおよび/またはC」の語は、「A」、「B」、「C」、「AおよびB」、「AおよびC」、「BおよびC」または「A、BおよびC」を意味する。
【0017】
説明において、「一実施の形態において」または「実施の形態において」の語を用いることがある。これらは、一以上の同一のまたは異なる実施の形態を指し示す。さらに、「備える」、「含む」、「有する」およびこれらと同様の用語は、本開示の実施の形態に関して用いる場合に、同義である。
【0018】
「結合される」の語は、ここでは、派生的に用いられる。「結合される」は、以下に示す一以上の内容を意味しうる。「結合される」は、二以上の要素が物理的または電気的に直接接触することを意味しうる。しかしながら、「結合される」は、二以上の要素が互いに間接的に接触しつつ互いに協働または相互作用することも意味し、また、一以上の他の要素が、上述の意味で互いに結合された要素間において結合または接続されることを意味しうる。
【0019】
様々な実施の形態において、「第2層の上に形成される第1層」の語は、第2層の上方に第1層が形成されることを意味し、第1層の少なくとも一部が、第2層の少なくとも一部に直接接触(例えば、物理的および/または電気的な直接接触)または間接接触(例えば、第1層と第2層の間に一以上の他の層を有する)することを意味しうる。
【0020】
図1は、様々な実施の形態に係るICデバイス100の断面を模式的に示す。ICデバイス100は、例えば、HEMTデバイスであってもよい。
【0021】
ICデバイス100は、基板104の上に作られてもよい。基板104は、その上にスタック層(または、単純にスタック108)が堆積される支持材料を主に含む。一実施の形態において、基板104は、シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)、酸化アルミニウム(Al)または「サファイア」、窒化ガリウム(GaN)および/または窒化アルミニウム(AlN)を含む。他の実施の形態における基板104として、適切なII−VI族およびIII−V族の半導体材料系を含む他の材料を用いることができる。一実施の形態において、基板104は、その上にGaNバッファ層112の材料をエピタキシャル成長させることのできる、いかなる材料または材料の組み合わせから構成されてもよい。
【0022】
基板104の上に形成されるスタック108は、一以上のヘテロ接合/ヘテロ構造を形成する異なる材料系のエピタキシャル成長された層を含んでもよい。スタック108の層は、その場(in situ)で形成されてもよい。つまり、スタック108は、製造装置(例えばチャンバ)内の基板104の上に形成されてもよく、スタック108を構成する層は、製造装置から基板104を除去することなく形成(例えばエピタキシャル成長)されてもよい。
【0023】
一実施の形態において、ICデバイス100のスタック108は、基板104の上に形成されるGaNバッファ層112を含む。GaNバッファ層112は、基板104とスタック108の他の層との間の結晶構造転移を与えてよく、それによってバッファ層または分離層として機能する。例えば、GaNバッファ層112は、基板104と他の格子不整合材料との間の応力緩和を提供してもよい。GaNバッファ層112は、基板104とエピタキシャルに結合されてもよい。他の実施の形態において、AlNなどの核形成層(不図示)が基板104とGaNバッファ層112の間に介在してもよい。
【0024】
いくつかの実施の形態において、GaNバッファ層112は、約1〜2μmの厚さを有してもよい。本明細書において、層の厚さは、基板104の主面に実質的に垂直な方向の層の寸法を示す。GaNバッファ層112は、他の実施の形態において、別の適切な材料および/または厚さを有してもよい。いくつかの実施の形態において、GaNバッファ層112は、アンドープであってもよい。
【0025】
スタック108は、GaNバッファ層112の上に形成される窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層116と、AlGaN層116の上に形成されるAlN層120と、AlN層120の上に形成される窒化インジウムアルミニウム(InAlN)バリア層124と、InAlNバリア層の上に形成されるゲート絶縁体126と、をさらに含んでもよい。
【0026】
ICデバイス100は、ゲート絶縁体126の上に形成されるゲート128をさらに含んでもよい。ゲート128は、ICデバイス100の接続端子として機能してもよい。ゲート128は、ゲート絶縁体126と直接結合してもよい。ゲート128は、主に金属などの導電性材料で構成される。いくつかの実施の形態において、ゲート128は、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、モリブデン(Mo)、金(Au)および/またはアルミニウム(Al)であってもよい。
【0027】
ICデバイス100は、ゲート絶縁体126の上に形成されるソース132およびドレイン136をさらに含んでもよい。いくつかの実施の形態において、ソース132およびドレイン136は、スタック108の一以上の層を貫通して延びてもよく、例えば、オーミックリセス(ohmic recess)を行うことにより基板104に至るまで延びてもよい。ソース132およびドレイン136は、オーミックコンタクトであってもよい。ソース132およびドレイン136は、標準的に成長されるコンタクトよりも相対的に低い接触抵抗を提供しうる再成長コンタクトであってもよい。実施の形態において、ソース132およびドレイン136の接触抵抗は、約0.01Ω・mmであってもよい。
【0028】
ソース132およびドレイン136は、金属などの導電性材料でそれぞれ構成されてもよい。一実施の形態において、ソース132およびドレイン136のそれぞれは、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、金(Au)および/またはシリコン(Si)を含んでもよい。他の実施の形態において、他の材料を用いることができる。
【0029】
ヘテロ接合は、InAlNバリア層124とGaNバッファ層112の間に形成されうる。InAlNバリア層124は、GaNバッファ層112のバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有しうる。InAlNバリア層124は、移動電荷キャリアを供給するワイドバンドギャップ層であってよく、GaNバッファ層112は、移動電荷キャリアのためのチャネルを提供するナローバンドギャップ層であってよい。
【0030】
AlGaN層116は、InAlNバリア層124とGaNバッファ層112の間に位置して線形性(リニア性)を改善してもよい。具体的に、AlGaN層116は、AlGaN層116において分極が誘起するチャネル(polarization-induced channel)を促し、ICデバイス100の動作中(例えば、ゲート128に電圧が印加されるとき)に、チャネルと垂直に広がる三次元電子ガス(3DEG)の形成をもたらす。これは、ソース132とドレイン136の間で電流(例えば、移動電荷キャリア)が流れることを可能としうる。この広がった電子ガスは、ゲート電圧プロファイルに対して実質的に一定な相互コンダクタンスをもたらしうる。結果として、ICデバイス100は、よりリニアな動作および低減されたAM/AM(amplitude modulation;振幅変調)ひずみと関連しうる。
【0031】
AlN層120は、下に位置する層(例えばAlGaN層116)の粗い表面に起因する合金散乱を低減させることにより電子移動度を増強させるために用いられてもよい。
【0032】
ゲート絶縁体126は、存在する場合に、InAlNバリア層124とゲート128の間の絶縁層として機能し、ゲート128はゲート絶縁体126を介してInAlNバリア層124と容量結合しうる。これにより、金属絶縁体半導体(MIS)構造または金属酸化物半導体構造を形成してもよい。様々な実施の形態において、ゲート絶縁体126は、より低いゲートリークおよびより高い絶縁破壊電圧の提供を助けてもよい。より低いゲートリークおよびより高い絶縁破壊電圧に加えて、この構造は、ゲート電圧の幅広い振幅範囲にわたって実質的に一定な利得gを比較的小さなゲート−ソース間容量の変化で実現するという利点を有しうる。これは、比較的小さなAM/PM(phase modulation;位相変調)ひずみに対応する。ゲート絶縁体126は、比較的低い温度、例えば500℃〜600℃で成長させた、その場で成長する(in-situ grown)GaNまたはAlNでありうる。低い温度での成長により、非常に高い抵抗を伴う多結晶質構造を有する材料をもたらす。ゲート絶縁体126は、GaN、AlNまたはAl、酸化ランタン(La)、窒化シリコン、酸化シリコンまたはいかなる他の適切な誘電材料を含んでもよい。
【0033】
いくつかの実施の形態において、ゲート絶縁体126は、約50Å未満、例えば18Åの厚さを有してもよく、InAlNバリア層124は、約80Åの厚さを有してもよく、AlN層120は、約10Åの厚さを有してもよく、AlGaN層116は、約40〜60Åの厚さを有してもよい。
【0034】
様々な実施の形態において、AlGaN層116は、一定のまたは段階的なアルミニウム含有量を有してもよい。例えば、一実施の形態において、AlGaN層116は、AlGa1−xNに従った材料濃度を有してもよい。ここで、xはアルミニウムとガリウムの相対量を表す値である。いくつかの実施の形態において、xの値は、約0〜0.15である。一定のアルミニウム含有量を有する一実施の形態において、AlGaN層116は、層の厚さ全体を通してAl0.04Ga0.96Nである相対的な材料濃度を有してもよい。この実施の形態において、AlGaN層116は、例えば、約40Åの厚さを有してもよい。段階的なアルミニウム含有量を有する一実施の形態において、xは、GaNバッファ層112に近接するAlGaN層116の部分において0であってもよく、AlN層120に近接するAlGaN層116の部分において約0.15となるように段階的に増加してもよい。この実施の形態において、AlGaN層116は、例えば、約50Åの厚さを有してもよい。他の実施の形態においては、他の値となるxまたは他の段階的な構造を用いることができる。
【0035】
図2は、様々な実施の形態に係るICデバイス(例えばICデバイス100)の電子分布を示すグラフ200である。特に、グラフ200は、第1のICデバイスの電子分布204と、第2のICデバイスの電子分布208を示す。グラフ200の測定において、第1のICデバイスは、30Åのゲート絶縁体(例えばGaNキャップ)と、0.17のインジウム濃度を有する80ÅのInAlNバリア層と、10ÅのAlN層と、0.04のアルミニウム濃度を有する40ÅのAlGaN層とを含んでもよい。第2のICデバイスは、ゲート絶縁体を含まない点を除いて、第1のICデバイスと同様であってもよい。
【0036】
図3は、様々な実施の形態に係るICデバイス(例えばICデバイス100)のバンド図を示すグラフ300である。特に、グラフ300は、図2について上述した第1のICデバイスのバンド図304と、図2について上述した第2のICデバイスのバンド図308を示す。
【0037】
図2および図3の電子分布およびバンド図は、従来型のデバイスに関連するものと比べて、垂直方向に広がったより幅の広い電子分布を示している。これは、高い無線周波数(RF)入力駆動レベルにおいて、増大された線形性およびパワー性能をもたらしうる。
【0038】
図4は、様々な実施の形態に係るICデバイス(例えばICデバイス100)の電子分布を示すグラフ400である。特に、グラフ400は、第1のICデバイスの応答プロファイル404と、第2のICデバイスの応答プロファイル408を示す。グラフ400の測定において、第1のICデバイスは、30Åのゲート絶縁体(例えばGaNキャップ)と、0.17のインジウム濃度を有する80ÅのInAlNバリア層と、10ÅのAlN層と、0〜0.15の段階的なアルミニウム濃度を有する50ÅのAlGaN層とを含んでもよい。第2のICデバイスは、ゲート絶縁体を含まない点を除いて、図4の第1のICデバイスと同様であってもよい。
【0039】
図5は、様々な実施の形態に係るICデバイス(例えばICデバイス100)のバンド図を示すグラフ500である。特に、グラフ500は、図4について上述した第1のICデバイスの応答プロファイル504と、図4について上述した第2のICデバイスの応答プロファイル508を示す。
【0040】
図2および図3の応答プロファイルと同様、図4および図5の応答プロファイルは、従来型のデバイスに関連するものと比べて、垂直方向に広がったより幅の広い電子分布を示している。
【0041】
図6は、いくつかの実施の形態に係るゲート電圧の関数としての相互コンダクタンスgを示すグラフ600である。特に、グラフ600は、リニアICデバイス(例えばICデバイス100)に関連しうる応答プロファイル604を示し、従来型のデバイスに関連しうる応答プロファイル608と対比される。図示されるように、応答プロファイル604は、応答プロファイル608と比べて、より幅広く、かつ、より一定な相互コンダクタンスgをゲート電圧に対して示している。このようにして、ICデバイス100は、従来型のデバイスと比べて、改善されたデバイス線形性およびより高い出力パワーレベルを伴ってもよい。
【0042】
図7は、様々な実施の形態に係るICデバイス(例えば図1のICデバイス100)の製造方法700を示すフローチャートである。方法700は、基板(例えば基板104)の上にバッファ層(例えばGaNバッファ層112)を形成するステップ704と、バッファ層の上にAlGaN層(例えばAlGaN層116)を形成するステップ708と、AlGaN層の上にAlN層(例えばAlN層120)を形成するステップ712と、AlN層の上にバリア層(例えばInAlNバリア層124)を形成するステップ716と、バリア層の上にゲート絶縁体(例えばゲート絶縁体126)を形成するステップ720と、ゲート、ソース、ドレイン(例えば、ゲート128、ソース132、ドレイン136)をそれぞれ形成するステップと、を含む。いくつかの実施の形態において、ゲートがゲート絶縁体の上に形成される一方で、ソースおよびドレインはスタックのより低い層の上に形成されてもよい。様々な実施の形態におけるこれらの層の間に、他の層が挟まれて形成されてもよい。
【0043】
様々な実施の形態において、一以上の層は、分子線エピタキシャル成長法(MBE)、原子層エピタキシャル成長法(ALE)、化学ビームエピタキシャル成長法(CBE)および/または有機金属化学気相成長法(MOCVD)によってエピタキシャル成長されることにより形成されてもよい。他の実施の形態において、他の適切な堆積技術を用いることができる。スタックの各層の材料および/または厚さは、図1のICデバイス100に関連して既に説明した実施の形態に適合してもよい。
【0044】
ソースおよびドレインは、再成長プロセスにより形成され、低減された接触抵抗または低減されたオン抵抗を有するオーミックコンタクトを提供してもよい。再成長プロセスでは、ソースおよびドレインが形成されるべき領域において材料が選択的に除去(例えばエッチング)されてもよい。層が選択的に除去されている領域において、高濃度にドープされた材料(例えばn++材料)が堆積されてもよい。いくつかの実施の形態において、ソースおよびドレインの高濃度にドープされた材料は、バッファ層またはバリア層に用いられる材料と同様の材料であってもよい。例えば、バッファ層がGaNを含む系において、シリコン(Si)が高濃度にドープされたGaNベースの材料が選択的に除去された領域に400〜700Åの厚さでエピタキシャルに堆積されてもよい。高濃度にドープされた材料は、MBE、ALE、CBEもしくはMOCVD、または、これらの適切な組み合わせによりエピタキシャル成長させることができる。他の実施の形態において、他の材料、他の厚さまたは他の堆積技術を高濃度にドープされた材料のために用いることができる。例えばチタン(Ti)および/または金(Au)を含む一以上の金属を、高濃度にドープされた材料の上に、例えばリフトオフプロセスを用いて1000Å〜1500Åの厚さで形成/堆積させることができる。他の実施の形態において、他の材料、他の厚さおよび/または他の技術を一以上の金属のために用いることができる。
【0045】
いくつかの実施の形態において、ソースおよびドレインは、不純物(例えばシリコン)を導入して高濃度にドープされた材料をソースおよびドレインに提供する注入技術を用いる注入プロセスにより形成されてもよい。注入後、ソースおよびドレインは、高い温度(例えば1100−1200℃)でアニールされる。再成長プロセスは、注入後のアニールに伴う高い温度を避けることが好ましいかもしれない。
【0046】
ゲートは、ゲート絶縁体の上に導電性材料を堆積することにより、ゲート絶縁体の上に形成されてもよい。ゲート材料は、例えば、蒸着、原子層成長法(ALD)および/または化学気相成長法(CVD)を含む、いかなる適切な堆積プロセスにより堆積させることができる。
【0047】
様々な工程は、請求項に係る主題の理解を最も助ける態様で、複数の別個の工程として順に説明される。しかしながら、説明の順序は、これらの工程が必然的に順序依存であることを示唆するものとして解釈されるべきではない。特に、これらの工程は、説明の順序で実施されないかもしれない。説明される工程は、説明される実施の形態とは異なる順序で実施されるかもしれない。追加の実施の形態では、様々な追加的な工程が実施されるかもしれないし、および/または、説明される工程が削除されるかもしれない。
【0048】
デバイス100などのInAlN/GaNベースのデバイスは、例えばAlGaN/GaN構造の他の従来型のデバイスと比べて多くの優位性を伴うかもしれない。例えば、AlNバリア層において約17%のインジウム濃度を与えることにより、所望の格子整合が生じるかもしれない。これにより歪みが低減され、信頼性の増大、より高い自発分極電荷密度、より高い電子濃度のためのより大きなバンドギャップ不連続、および、より高い電子飽和速度につながるかもしれない。これらの全ては、他のデバイスよりも高い電流容量に貢献しうる。これは、モバイルワイヤレス、基地局、ケーブルテレビ、ミリ波通信などのためのリニアパワー増幅器および低ノイズ増幅器において特に有用となりうる。
【0049】
ICデバイス(例えばICデバイス100)は、様々な装置およびシステムに組み入れられてもよい。図8は、例示的なシステム800のブロック図を示す。図示されるように、システム800は、いくつかの実施の形態において無線周波数(RF)パワー増幅器(PA)モジュールでありうるPAモジュール802を含む。システム800は、図示されるようにパワー増幅器モジュール802に結合されるトランシーバ804を含んでもよい。パワー増幅器モジュール802は、ICデバイス、例えば、本明細書にて説明されるICデバイス100を含んでもよい。
【0050】
パワー増幅器モジュール802は、トランシーバ804からのRF入力信号RFinを受信してもよい。パワー増幅器モジュール802は、RF入力信号RFinを増幅してRF出力信号RFoutを提供してもよい。RF入力信号RFinおよびRF出力信号RFoutの双方は、図8においてそれぞれTx−RFinおよびTx−RFoutと示される送信チェーンの一部であってもよい。
【0051】
増幅されたRF出力信号RFoutは、アンテナ構造808を介してRF出力信号RFoutの無線(OTA;over-the-air)送信を生じさせるアンテナスイッチモジュール(ASM)806に提供されてもよい。ASM806はまた、アンテナ構造808を介してRF信号を受信し、受信したRF信号Rを受信チェーンに沿ってトランシーバ804に結合させてもよい。いくつかの実施の形態において、トランシーバ804は、例えば低ノイズ増幅器にICデバイス100を追加的/代替的に含んでもよい。
【0052】
様々な実施の形態において、アンテナ構造808は、ダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、パッチアンテナ、ループアンテナ、マイクロストライプアンテナ、その他、RF信号のOTA送信および/または受信に適した、いかなる種類のアンテナを含む、一以上の方向性および/または無指向性のアンテナを有してもよい。
【0053】
いくつかの実施の形態において、システム800は、ICデバイス100などのICデバイスを追加的/代替的に含むパワーコンディショナ810を含んでもよい。パワーコンディショナ810は、PAモジュール802およびトランシーバ804や、これらに限られないシステム800の様々な構成要素に結合されて電力を供給してもよい。これらの実施の形態において、ICデバイス100は、例えば交流(AC)−直流(DC)コンバータ、DC−DCコンバータ、DC−ACコンバータやこれらと同様のもの等のパワーコンディショニング用途を含むパワースイッチ用途のための効果的なスイッチデバイスを提供してもよい。
【0054】
様々な実施の形態において、システム800は特に無線周波数の高いパワーおよび高い周波数におけるパワー増幅のために有用である。例えば、システム800は、地上波通信、衛星通信、レーダシステム、場合によっては様々な産業用途および医療用途の中の一以上のいずれかの用途に適しているかもしれない。より具体的には、様々な実施の形態において、システム800は、レーダデバイス、衛星通信デバイス、携帯端末、携帯電話の基地局、ラジオ放送またはテレビ放送の増幅システムの中から選択される一つであってもよい。
【0055】
特定の実施の形態が本明細書において説明のために例示され記載されたが、本開示の範囲を逸脱しない限りにおいて、同様の目的を達成すると意図される幅広い種類の代替的および/または等価な実施の形態または実施が、本明細書に示され記載された実施の形態の代わりとなってもよい。本出願は、本明細書において議論された実施の形態のいかなる改造または変更をもカバーすることを意図する。したがって、本明細書に記載される実施の形態は、請求項またはそれと同等の記載によってのみ限定されることが明白に意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】
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