【解決手段】上部開放の有底容器である第1、第2の容器10、20を設け、それぞれ横向きの開口12、22を形成し、各開口12、22を対向させて連結すると、各開口12、22が水密に連通する。
透明な熱可塑性プラスチック材料によって成形する第1、第2の容器を備えてなり、前記第1、第2の容器は、それぞれ横向きの開口を有する上部開放の有底容器であって、前記第1、第2の容器に形成する連結機構を介して前記各開口を対向させるようにして連結すると、前記各開口が水密に連通することを特徴とする培養容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、細胞培養用のウェルは、共通の容器本体上に形成されているから、各細胞種の培養環境を個別に設定することができず、必要な研究データが得られないことがあるという問題があった。たとえば、がん細胞の増殖により腫瘍が増大すると、その中心部が低酸素環境となるため血管新生が誘導されるが、血管新生の誘導に関与するサイトカインやエクソソームなどの分泌因子や、それらの挙動等に関する研究には、低酸素環境を含むさまざまな培養環境下で培養されるがん細胞や正常細胞間の相互作用の観察が不可欠である。また、共通の本体上のウェルは、フィルタによって個別に隔離することができないため、サイトカインやエクソソームなどの分泌因子の同定に本質的に不向きであるという問題もあった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、連結可能な第1、第2の容器を組み合わせることによって、たとえば任意の環境下で個別に培養された細胞間の相互作用を観察するだけでなく、分泌因子の同定や、細胞、臓器、微生物などの対象物の培養、再生、製造、観察などに好適な培養容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、透明な熱可塑性プラスチック材料によって成形する第1、第2の容器を備えてなり、第1、第2の容器は、それぞれ横向きの開口を有する上部開放の有底容器であって、第1、第2の容器に形成する連結機構を介して各開口を対向させるようにして連結すると、各開口が水密に連通することをその要旨とする。
【0008】
なお、各開口は、上方が円弧の半円状に形成することができる。
【0009】
また、第1の容器には、開口を囲む筒体を外向きに形成してもよく、第2の容器には、第1の容器との連結時に筒体を位置決めするガイド部を形成してもよく、第2の容器は、開口の前面にフィルタを保持してもよく、フィルタを支持する支持ロッドを開口に設けてもよい。
【0010】
さらに、第1、第2の容器は、それぞれ底面を別体の透明板としてもよく、それぞれ引剥し可能なフィルムを介して各開口を閉じてもよく、それぞれ各開口とともに内部を2室に分割してもよい。
【0011】
なお、第1、第2の容器は、一対の横向きの開口を対称形に設ける第3の容器を介して連結することができ、第1、第2、第3の容器は、それぞれ内部を複数室に分割し、各室ごとに各開口を設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
かかる発明の構成によるときは、第1、第2の容器は、たとえば互いに独立に個別の環境下に置き、それぞれの環境下で細胞培養が可能である。一方、第1、第2の容器は、それぞれの開口を対向させて連結機構を介して連結すると、各開口が水密に連通する。そこで、第1、第2の容器に共通の液体培地を注入すると、第1、第2の容器内の培養細胞からの分泌物質が液体培地を介して交流するから、さらに培養を継続することにより、異なる環境下で培養された細胞間の相互作用を観察することができる。なお、第1、第2の容器は、たとえばポリスチレンのような透明な熱可塑性プラスチック材料により成形し、プラズマ処理などの親水化処理を内表面に施すことにより、細胞や、臓器、微生物などの対象物が定着し易く、観察し易いという利点がある。また、第1、第2の容器は、フィルタを介して連結することにより、分泌因子の同定にも好適に使用することができる。
【0013】
各開口は、上方が円弧の半円状に形成することにより、下側の直線部分と、第1、第2の容器の底面との間の空間を対象物の培養、再生、製造、観察などに用いる有効空間として利用することができる。なお、各開口の形状は、正確な半円である必要はなく、半円より大きくても小さくても構わないが、半円より大きくする方が有効開口面積を大きくできる点で有利である。
【0014】
第1の容器の開口を囲む外向きの筒体は、第1、第2の容器を連結すると、たとえば先端が第2の容器の開口のまわりに当接し、双方の開口を容易に水密に連通させることができる。なお、このとき、第2の容器に形成するガイド部は、第1の容器の筒体の先端を位置決めし、筒体と、第2の容器の開口との相対的な位置関係を適切に設定することができる。ただし、第2の容器の開口にも外向きの筒体を形成し、第1の容器の筒体を位置決めするガイド部は、第2の容器の筒体の先端に形成してもよい。
【0015】
第2の容器の開口の前面に保持するフィルタは、たとえば第1、第2の容器内の培養細胞間の相互作用に寄与する分泌物質、すなわち分泌因子をサイズによって分画し、その同定解析などに貢献する。なお、フィルタの透過孔径は、たとえば直径約30〜100nmといわれるエクソソームのサイズなどを考慮して選定することができる。また、フィルタを支持する支持ロッドを第2の容器の開口に設ければ、開口を大きくしてもフィルタを安定に保持することができる。
【0016】
第1、第2の容器の底面を透明板とすることにより、透明板を介して対象物を顕微鏡観察する際に有利である。透明板は、薄いため、光の透過性が一層良好であり、高倍率による顕微鏡観察が容易である。
【0017】
引剥し可能なフィルムを介して第1、第2の容器の各開口を閉じれば、フィルムを引き剥して除去することにより第1、第2の容器内の液体培地を一気に連通させることができ、液体培地を追加注入して開口を連通させる場合のような対象物の擾乱や、分泌因子の希釈などに起因する不具合の可能性を排除することができる。
【0018】
第1、第2の容器の内部を2室に分割すれば、たとえば各室にて同一条件で培養する正常細胞、がん細胞の比較試験やスクリーニングなどに有効に使用することができる。
【0019】
一対の横向きの開口を対称形に設ける第3の容器を介在させて第1、第2の容器を連結すると、たとえば3種以上の培養細胞間の相互作用を観察することができる。ただし、第3の容器は、1個以上の任意の数を直列に連結して第1、第2の容器の間に介在させることができる。なお、第3の容器の開口は、それぞれ第1、第2の容器の各開口に適合するものとする。また、第3の容器は、基本的に第1、第2の容器と同様の材質、形状、大きさに形成し、第1、第2の容器の連結機構と組み合わせる連結機構を形成するものとする。
【0020】
第1、第2、第3の容器のそれぞれの内部を複数室に分割すると、たとえば各室ごとに異なる細胞種を収納して同一条件で培養することができ、比較試験やスクリーニングなどの目的に一層有効である。なお、このときの第1、第2、第3の容器は、各室ごとに各開口を設けるから、各室の開口ごとに適切なフィルタを装着することにより、たとえば培養細胞からの分泌因子による比較試験を効率よく実行することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0023】
培養容器は、第1、第2の容器10、20を備えてなる(
図1)。ただし、以下には、主として細胞培養の用途を例示して説明するものとする。
【0024】
第1の容器10は、上部開放の有底容器であって(
図1、
図2)、長方形の箱形の容器本体11の長軸方向の一端面に横向きの開口12を設け、開口12側の端面の左右の側壁の延長方向に一対の係合部13、13を突設して構成されている。ただし、
図2(A)は、第1の容器10の斜視図であり、
図2(B)〜(D)は、それぞれ開口12側の正面図、上面図、側面図である。
【0025】
開口12は、上方が円弧の半円状に形成されている。また、開口12のまわりには、開口12を囲む筒体15が外向きに形成されている。筒体15は、開口12の径と同一内径の円筒状に形成され、筒体15内には、開口12の下側の直線部分に沿って水平の仕切板15aが付設されている。ただし、仕切板15aの下側の筒体15の下半部は、開口12、筒体15を形成する容器本体11の端面によって閉じられている(
図3(A))。ただし、
図3(A)、(B)は、それぞれ
図2(B)のX1 −X1 線、X2 −X2 線矢視相当拡大断面図である。
【0026】
係合部13、13は、容器本体11の左右の側壁に対し、筒体15を挟むようにして突設されている(
図2、
図3)。各係合部13は、容器本体11の底面近くから、筒体15の最高位置付近までの高さを有し、筒体15の長さより十分大きい突出長さを有する。また、各係合部13の先端には、前後の斜面13b、13cを介して山形の係合リブ13aが内向きに形成されている。
【0027】
第2の容器20は、上部開放の有底容器であって(
図1、
図4)、長方形の箱形の容器本体21の長軸方向の一端面に横向きの開口22を設け、左右の側壁の開口22側の端面寄りに上下方向の係合溝23、23を形成して構成されている。ただし、
図4(A)は、第2の容器20の開口22側の正面図であり、同図(B)、(C)は、それぞれ上面図、側面図である。
【0028】
容器本体21は、第1の容器10の容器本体11と同大に形成されている。また、開口22は、第1の容器10の開口12と対応するようにして開口12と同形同大に形成されている。開口22を形成する端面上には、開口22の左右両側から下側にかけて、上部開放のU字状のガイド部24が形成されている。ガイド部24の上端は、開口22より十分高く延長されており、ガイド部24の上部の間隔、下部の円弧部の内側の曲率半径は、いずれも第1の容器10の筒体15の外径に適合している。
【0029】
ガイド部24は、内向きに断面L字状に形成することにより、容器本体21の端面との間にポケット24aを形成している(
図4(B))。ポケット24aは、ガイド部24の全長に形成されており、ガイド部24の上端から下向きに直線的に狭くなっているとともに(
図5(A))、ガイド部24の下部の円弧部において、左右の端部から中央部にかけて滑らかに狭くなっている(
図5(B))。ただし、
図5(A)、(B)は、それぞれ
図4(A)のX1 −X1 線、X2 −X2 線矢視相当拡大断面図であり、
図5(C)は、
図5(B)の要部拡大図である。
【0030】
係合溝23、23は、第1の容器10の係合部13、13に対応している(
図1、
図5(B)、(C))。各係合溝23は、容器本体21の底面から、係合部13の上縁相当の高さにまで延びている。各係合溝23は、開口22を形成する端面側が高い左右非対称の断面台形状に形成されており、開口22側の端面との間には、頂部23a、斜面23bが形成されている。ただし、各係合溝23の断面形状は、頂部23aを高くしないで左右対称の台形状としてもよい(
図5(C)の二点鎖線)。また、各係合溝23の上端を規定する縦長の長方形の突部23cは、これを削除してもよい(
図4(A)、(B)の各二点鎖線)。
【0031】
第1、第2の容器10、20は、第1の容器10の係合部13、13、第2の容器20の係合溝23、23を介し、それぞれの開口12、22を対向させるようにして、分離可能に連結することができる(
図6、
図7)。すなわち、係合部13、13、係合溝23、23は、第1、第2の容器10、20を連結する連結機構となっている。また、第1、第2の容器10、20を連結すると、第1の容器10の筒体15の先端は、仕切板15aとともに、第2の容器20の開口22のまわりに当接し、開口12、22を水密に連通させることができる。ただし、
図6(A)は、連結状態の第1、第2の容器10、20の斜視図であり、
図6(B)〜(D)は、それぞれ上面図、側面図、底面図である。また、
図7(A)、(B)は、それぞれ
図6(B)のX1 −X1 線、
図6(C)のX2 −X2 線矢視相当拡大断面図である。
【0032】
第1、第2の容器10、20を連結するには、図示しない共通の平面上において筒体15、ガイド部24を対向させ(
図8(A))、第1、第2の容器10、20を接近させる方向に力を加える(同図の矢印方向)。このとき、係合部13、13は、先端の斜面13b、13bを介して容器本体21の左右の角部に係合する。そこで、第1、第2の容器10、20をそのまま直線的に近付けると、各係合部13の先端の係合リブ13aが斜面23bに乗り上げて前進し(
図8(B))、各係合部13が外向きに弾性変形する(同図の矢印方向)。
【0033】
したがって、各係合部13がさらに前進して係合リブ13aが係合溝23の頂部23aを乗り越えると(
図8(C))、係合リブ13aが係合溝23内に落ち込むとともに、頂部23aが係合リブ13aの後方の斜面13cの中途に掛かって停止する。なお、このときの筒体15は、ガイド部24を介して正しく位置決めされ(
図7)、筒体15の先端が開口22のまわりに当接することにより、第1、第2の容器10、20の接近限を規定している。よって、第1、第2の容器10、20は、斜面13cの中途に頂部23aが係合することにより、各係合部13の弾性復元力によって互いに接近する方向に力を受け、筒体15の先端のシール性が破れるおそれがない。
【0034】
以上のようにして連結された第1、第2の容器10、20は、同形同大の浅い被せ形式の蓋41、41により容器本体11、21の上方を閉じることができる(
図9(A))。なお、各蓋41は、前後左右に軸対称に形成されている。また、第1、第2の容器10、20は、水平方向に相対的に傾けるようにして一方の係合部13を係合溝23から外すことにより(
図9(B)の矢印方向)、簡単に分離させることができる。ただし、
図9(A)、(B)は、それぞれ全体斜視図、
図7(B)相当の動作図である。
【0035】
第1、第2の容器10、20、蓋41、41は、それぞれたとえば透明なポリスチレンにより一体成形されている。また、第1、第2の容器10、20は、少なくとも容器本体11、21の内表面に親水化処理が施されている。
【0036】
なお、第1、第2の容器10、20は、フィルタ42を介して連結することができる(
図10)。フィルタ42は、第2の容器20のガイド部24のポケット24aに収納するようにして開口22の前面に保持し(
図10(A))、第1の容器10の筒体15、仕切板15aの先端により容器本体21の端面に押し付けて固定することができる(同図(B))。フィルタ42は、たとえばアドバンテック東洋(株)扱いのディスポーザブルメンブレンフィルターユニット(製品名「DISMIC」)に内蔵のメンブレンフィルタや、同社扱いの製品名「ウルトラフィルター」などの適切な透過孔径のものを選定して使用することができる。
【0037】
第1、第2の容器10、20は、互いに連結することなく、それぞれ独立の培養環境下において任意の細胞C1 、C2 を個別に培養することができる(
図11(A))。このとき、培地L1 、L2 は、それぞれ容器本体11、21の開口12、22の下側に注入するものとする。必要十分な培養時間の経過により、細胞C1 、C2 からの分泌物質E1 、E2 が培地L1 、L2 中に放出される。ただし、細胞C1 、C2 は、同一の細胞種であってもよく、異なる細胞種であってもよい。また、第1、第2の容器10、20の培養環境は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。培地L1 、L2 についても同様である。
【0038】
そこで、第1、第2の容器10、20を連結すると、開口12、22が水密に連通するから(
図11(B))、その後、容器本体11、21に共通の液体培地L3 を十分なレベルにまで注入すると、容器本体11、21内の分泌物質E1 、E2 が開口12、22内の液体培地L3 を介して交流し、その後の培養時間の経過とともに細胞C1 、C2 間の相互作用が発現される。したがって、容器本体11、21内の細胞C1 、C2 を観察することにより、細胞C1 、C2 間の相互作用を観察し、研究することができる。なお、培地L1 、L2 は、互いに同質であってもよく、異質であってもよい。また、液体培地L3 は、培地L1 、L2 と同質であってもよく、異質であってもよい。
【0039】
一方、フィルタ42を介して第1、第2の容器10、20を連結すると(
図11(C))、フィルタ42の透過孔径により、たとえば容器本体11側の大サイズの分泌物質E1 が容器本体21側に移動せず、容器本体21側の小サイズの分泌物質E2 だけがフィルタ42を通して容器本体11側に移動することができる。したがって、たとえば細胞C1 、C2 間の相互作用の原因因子の同定解析などに有効に利用することができる。
【0040】
なお、第1、第2の容器10、20は、互いに対向させるようにして連結して水密に連通させる横向きの開口12、22を備える容器本体11、21であれば、必ずしも同形同大に形成する必要がなく、長方形以外の多角形や半月形などの任意の形状に形成してもよい。
【0041】
第2の容器20は、容器本体21の底面を別体の薄い透明板25とすることができる(
図12)。透明板25は、容器本体21の底部周縁の枠体25aの下面に貼着されており、薄いことにより培養細胞の観察が一層容易である。透明板25は、熱可塑性プラスチック材料の他、ガラス板や石英板などとしてもよい。また、透明板25は、剛性の板状であってもよく、可撓性のフィルム状であってもよい。なお、第1の容器10についても、同様に容器本体11の底面を薄い透明板とすることができる(図示省略)。ただし、
図12(A)、(B)は、それぞれ第2の容器20の斜視図、同図(A)の半断面図である。
【0042】
第1、第2の容器10、20は、Oリング43を介して連結することができる(
図13)。第1の容器10の筒体15の先端内周側には、Oリング43用の段状のシート部15bが形成されている。筒体15は、Oリング43を介して第2の容器20の開口22側の端面に当接し、開口12、22を一層確実に水密に連通させることができる。ただし、
図13(A)、(B)は、それぞれ分解斜視図、同図(A)の連結部分の拡大縦断面図である。
【0043】
第1、第2の容器10、20は、第1の容器10側の筒体15を第2の容器20側の筒体26に圧入して連結してもよい(
図14)。筒体26は、開口22を囲む円筒状に形成されている。また、筒体15の外面は、中間に環状の係合リブ15cを有する先細のテーパ状に形成され、筒体26の内面は、筒体15の外面に適合するテーパ状に形成するとともに、中間に環状の係合溝26aが形成されている。そこで、筒体15を筒体26に圧入すると、係合リブ15cが係合溝26aに弾発的に係合して抜止めされ、係合リブ15c付きの筒体15、係合溝26a付きの筒体26は、第1、第2の容器10、20を連結する連結機構となっている。ただし、
図14(A)、(B)は、それぞれ分解斜視図、同図(A)の連結部分の拡大縦断面図である。
【0044】
第1、第2の容器10、20は、弱接着のフィルム44、44を介し、それぞれの開口12、22を閉じることができる(
図15)。各フィルム44は、それぞれ容器本体11、21の内面側に引剥し可能に弱接着されて開口12、22を閉じている。なお、各フィルム44は、有害なコンタミネーションを防止するために、接着剤や粘着剤を使用することなく、たとえば熱接着により弱接着することが好ましい。ただし、
図15(A)は、全体斜視図であり、同図(B)、(C)は、それぞれ別の模式動作説明図である。
【0045】
第1、第2の容器10、20にそれぞれ液体培地L3 を同レベルに十分に注入し(
図15(B)の上図)、双方のフィルム44、44を同時に除去すると(同図の下図)、開口12、22を介して液体培地L3 を双方向に連通させることができる。また、第1、第2の容器10、20にそれぞれ液体培地L3 を異なるレベルに注入し(
図15(C)の上図)、双方のフィルム44、44を同時に除去すると(同図の下図)、開口12、22を介して高レベル側の液体培地L3 を低レベル側に流出させて同レベルにすることができる。いずれの場合も、液体培地L3 による第1、第2の容器10、20の連通タイミングを厳密に規定することができるから、たとえば第1、第2の容器10、20内の培養細胞間の相互作用の時間的変化データを詳細に観測する上で便利である。また、第1、第2の容器10、20に外部から液体培地L3 を追加注入する場合に比して、第1、第2の容器10、20内の培養細胞に与える擾乱や、培養細胞からの分泌因子の希釈などの問題を少なくすることができる。
【0046】
第1の容器10の開口12、筒体15には、水平の仕切板15a上に垂直の仕切板15dを設け、第2の容器20の開口22には、フィルタ42用の垂直の支持ロッド27を設けてもよい(
図16)。
【0047】
仕切板15dは、筒体15、仕切板15aと同一長さであり、支持ロッド27は、仕切板15dの板厚と同一幅である。なお、支持ロッド27は、容器本体21の開口22側の端面より僅かに後退させて立設されており、支持ロッド27の表面には、断面山形の水平リブ27a、27aが形成され、各水平リブ27aは、頂部が容器本体21の端面と一致するような高さに設定されている。そこで、ガイド部24のポケット24aを介して開口22の前面に保持するフィルタ42は、筒体15、仕切板15a、15d、支持ロッド27の水平リブ27a、27aを介し、実質的な透過面積を減少させることなく開口22の前面に安定に支持することができる。ただし、
図16(A)、(B)は、それぞれ分解斜視図、同図(A)の連結部分の拡大縦断面図である。
【0048】
なお、支持ロッド27は、筒体15、仕切板15a、15dとともにフィルタ42を開口22の前面に支持することができる限り、必ずしも仕切板15dに対応させる必要がなく、垂直方向以外に傾けて2本以上を設けてもよい。また、支持ロッド27は、水平リブ27aに代えて、図示以外の任意の形態のリブや突部などを表面に形成してもよい。
【0049】
第1、第2の容器10、20は、それぞれ容器本体11、21の長軸方向の仕切板16、28を介して容器本体11、21を左右に2分してもよい(
図17)。ただし、
図17において、仕切板16は、開口12、筒体15を2分する垂直の仕切板15dと一体に形成し、開口12とともに容器本体11の内部を底面から上端部にまで左右に2分するものとし、仕切板28は、開口22とともに容器本体21の内部を左右に2分するものとする。すなわち、仕切板16、28は、それぞれ容器本体11、21を2室に分割することができ、たとえば各室において同一条件で培養する異なる細胞種の比較試験などの用途に殊に便利である。
【0050】
第1、第2の容器10、20は、第3の容器30を介して連結することができる(
図18)。第3の容器30の長方形の箱形の容器本体31の一端面には、第2の容器20の開口22、ガイド部24、左右の係合溝23、23と同形同大の開口32、ガイド部34、左右の係合溝35、35が形成されている。また、第3の容器30の容器本体31の他端面には、第1の容器10の開口12、仕切板15a付きの筒体15、左右の係合部13、13と同形同大の開口36、仕切板37a付きの筒体37、左右の係合部33、33が形成されている。すなわち、第3の容器30の容器本体31は、一対の横向きの開口32、36が対称形に設けられている。ただし、
図18には、筒体15、37が図示されておらず、係合溝23、23、35、35は、それぞれの一方のみが図示されている。また、容器本体31は、容器本体11、21と同大の長方形に形成されている。
【0051】
そこで、第1、第2、第3の容器10、20、30は、それぞれ個別に細胞を培養し、互いに連結して3種以上の培養細胞間の相互作用を観察することができる(
図19)。ただし、
図19は、2個の第3の容器30、30を介して第1、第2の容器10、20を連結する態様を図示している。すなわち、第1、第2の容器10、20間に介在させる第3の容器30は、1個以上の任意の数にすることができる。
【0052】
第1、第2、第3の容器10、20、30は、それぞれ容器本体11、21、31の内部を仕切板17、17、29、29、38、38を介して3室に分割することができる(
図20)。
【0053】
第1の容器10の各室の一端面には、開口12、仕切板15a付きの筒体15が形成され、第2の容器20の各室の一端面には、開口22、ガイド部24が形成されている。また、第3の容器30の各室の一端面には、開口32、ガイド部34が形成され、他端面には、開口36、仕切板37a付きの筒体37が形成されている。第1の容器10の開口12、12…側の端面の左右には、係合部13、13が形成され、第2の容器20の開口22、22…側の端面の左右の側壁には、係合溝23、23が形成されている。また、第3の容器30の開口32、32…側の端面の左右の側壁には、係合溝35、35が形成され、開口36、36…側の端面の左右には、係合部33、33が形成されている。すなわち、第1、第2の容器10、20は、それぞれ各室ごとに横向きの開口12、22が形成され、第3の容器30は、各室ごとに一対の横向きの開口32、36が対称形に形成されている。ただし、
図20には、各筒体15、37が図示されておらず、係合溝23、23、35、35は、それぞれの一方のみが図示されている。
【0054】
そこで、第1、第2、第3の容器10、20、30は、各室を利用してそれぞれ個別に細胞を培養し、互いに連結して3×n種以上の培養細胞間の相互作用を観察することができる(
図21)。また、第1、第2の容器10、20の各室ごとに開口12、22があり、第3の容器30の各室ごとに開口32、36があるから、たとえば各開口22、32の前面に適切なフィルタを保持することにより、培養細胞からの分泌因子による大規模な比較試験を一挙に実施することができる。ただし、n≧1は、第1、第2の容器10、20間に介在させる第3の容器30の数であり、
図21には、n=2の態様が図示されている。また、
図20、
図21において、第1、第2、第3の容器10、20、30は、それぞれ2室以上の任意の複数室に分割することができる。
【0055】
第1、第2の容器10、20の容器本体11、21は、それぞれ有底円筒状に形成することができる(
図22)。ただし、
図22(A)、(B)は、それぞれ分解斜視図、連結状態斜視図である。
【0056】
第1の容器10において、横向きの開口12を囲む仕切板15a付きの筒体15には、第2の容器20と連結するために、内向きの係合リブ13a付きの係合部13、13が左右に付設されている。また、筒体15の先端外周側には、Oリング43用の段状のシート部15bが形成されている。一方、第2の容器20において、横向きの開口22を囲む筒体26には、筒体15の仕切板15aに対応する仕切板26bが形成され、筒体26の先端には、Oリング43とともに筒体15の先端部を収納して位置決めする円形のガイド部24が形成されている。また、ガイド部24の左右には、第1の容器10側の係合部13、13に対応する係合ブロック23d、23dが形成されており、係合部13、13は、先端部の係合リブ13a、13aを介して係合ブロック23d、23dに弾発的に係合し、第1、第2の容器10、20を分離可能に連結することができる。すなわち、係合部13、13、係合ブロック23d、23dは、第1、第2の容器10、20を連結して開口12、22を水密に連通させる連結機構となっている。
【0057】
なお、第1、第2の容器10、20を連結するとき、ガイド部24内にフィルタ42を収納して保持させると(
図22(A)の二点鎖線)、フィルタ42を開口22の前面に保持し、フィルタ42を介して開口12、22を連通させることができる。また、
図22の第1、第2の容器10、20は、たとえば
図15〜
図17の箱形の容器本体11、21に対する各種のオプションを適用することができるものとし、
図18、
図19に倣って、有底円筒状の容器本体31の第3の容器30の1個または2個以上と組み合わせてもよいものとする。なお、第1、第2の容器10、20は、
図22(B)の連結状態において、それぞれ図示しない被せ形式の蓋により上方を閉じることができる。
【0058】
以上の説明において、第1、第2の容器10、20は、第3の容器30と組み合わせることなく、または第3の容器30と組み合わせることにより、細胞培養の用途に限らず、たとえば細胞、臓器、微生物などの対象物の培養、再生、製造、観察などの実験研究用としても、好適に使用可能である。