特開2015-51576(P2015-51576A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大建工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015051576-木質繊維の製造方法 図000003
  • 特開2015051576-木質繊維の製造方法 図000004
  • 特開2015051576-木質繊維の製造方法 図000005
  • 特開2015051576-木質繊維の製造方法 図000006
  • 特開2015051576-木質繊維の製造方法 図000007
  • 特開2015051576-木質繊維の製造方法 図000008
  • 特開2015051576-木質繊維の製造方法 図000009
  • 特開2015051576-木質繊維の製造方法 図000010
  • 特開2015051576-木質繊維の製造方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-51576(P2015-51576A)
(43)【公開日】2015年3月19日
(54)【発明の名称】木質繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27K 5/00 20060101AFI20150220BHJP
【FI】
   B27K5/00 FZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-185334(P2013-185334)
(22)【出願日】2013年9月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】森下 滋
(72)【発明者】
【氏名】後藤 裕次郎
(72)【発明者】
【氏名】竹市 靖規
【テーマコード(参考)】
2B230
【Fターム(参考)】
2B230AA30
2B230BA05
2B230BA17
2B230CC21
2B230DA02
2B230EA20
2B230EA30
2B230EB02
2B230EB13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】化学的変性を受けない高品質の木質繊維を簡易に製造する方法を提供する。
【解決手段】木質材料1を繊維化して木質繊維を作製するに当たり、木質材料内に液化二酸化炭素を注入して、前記木質材料内にドライアイスを形成し、内部にドライアイスが形成された前記木質材料に衝撃を与えることにより、前記木質材料内のドライアイスを急激に昇華・膨張させて前記木質材料に前記ドライアイスの膨張による衝撃を与え、それにより前記木質材料を微細化して木質繊維1Aを作製し、前記微細化された木質繊維を回収する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質材料を繊維化して木質繊維を作製する方法であって、
木質材料内に液化二酸化炭素を注入して、前記木質材料内にドライアイスを形成する工程と、
内部にドライアイスが形成された前記木質材料に衝撃を与えることにより、前記木質材料内のドライアイスを急激に昇華・膨張させて前記木質材料に前記ドライアイスの膨張による衝撃を与え、それにより前記木質材料を微細化して木質繊維を作製する工程と、
前記微細化された木質繊維を回収する工程と、を備える、木質繊維の作製方法。
【請求項2】
前記木質材料内に液化二酸化炭素を注入する工程が、加圧下液化二酸化炭素に木質材料を浸漬することによって行われる請求項1記載の木質繊維の作製方法。
【請求項3】
前記木質材料内に液化二酸化炭素を注入する工程が、液化二酸化炭素を前記木質材料に噴射することによって行われる請求項1記載の木質繊維の作製方法。
【請求項4】
前記内部にドライアイスが形成された木質材料に衝撃を与えることが、前記木質材料に物体を衝突させることにより行われる請求項1記載の木質繊維の作製方法。
【請求項5】
前記内部にドライアイスが形成された木質材料に衝撃を与えることが、前記木質材料を物体に衝突させることにより行われる請求項1記載の木質繊維の作製方法。
【請求項6】
前記内部にドライアイスが形成された木質材料に衝撃を与えることが、前記木質材料をドライアイスと混合して混合物を得、前記混合物を固めて塊状体を形成し前記塊状体を物体に衝突させることにより行われる請求項1記載の木質繊維の作製方法。
【請求項7】
前記物体が予め加熱される請求項5又は6に記載の木質繊維の作製方法。
【請求項8】
前記物体が、回転体又は可動体であり、前記木質材料が衝突する位置の手前において前記回転体又は可動体が加熱される請求項7記載の木質繊維の作製方法。
【請求項9】
前記内部にドライアイスが形成された木質材料に衝撃を与えることが、前記木質材料を対向衝突させることにより行われる請求項1記載の木質繊維の作製方法。
【請求項10】
前記内部にドライアイスが形成された木質材料に衝撃を与えることが、前記木質材料をドライアイスと混合して混合物を得、前記混合物を固めて塊状体を形成し前記塊状体を対向衝突させることにより行われる請求項1記載の木質繊維の作製方法。
【請求項11】
前記内部にドライアイスが形成された木質材料に衝撃を与えることが、前記木質材料を急速に高温条件下に曝すことにより行われる請求項1記載の木質繊維の作製方法。
【請求項12】
前記内部にドライアイスが形成された木質材料と前記ドライアイスとの割合が、5:1〜1:5である請求項6に記載の木質繊維の作製方法。
【請求項13】
前記木質材料内にドライアイスを形成する工程の前に、前記木質材料を予備粉砕する工程をさらに備える請求項1〜12のいずれかに記載の木質繊維の作製方法。
【請求項14】
前記物体が木質繊維の回収容器であり、当該回収容器に前記内部にドライアイスが形成された木質材料を衝突させることにより、当該木質材料を微細化するとともに、微細化された木質繊維を回収する請求項1記載の木質繊維の作製方法。
【請求項15】
ドライアイスを昇華させた際に発生する二酸化炭素を回収する工程をさらに備える請求項1記載の木質繊維の作製方法。
【請求項16】
前記木質繊維が、セルロース繊維を含む請求項1〜15のいずれかに記載の木質繊維の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質繊維の製造方法に関し、より詳細には、ミリメートルオーダー〜ナノメートルオーダーの木質繊維を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に例えば物質をナノ化することにより様々な特性が発現することが知られている。例えばセルロースに代表される天然素材においても、木質材料をナノ化してナノメートルオーダーの木質繊維(以下、ナノファイバー又はナノ繊維と称することがある)とすることにより、超比表面積効果、ナノサイズ効果、超分子配列効果が発現することが知られている。超比表面積効果とは、通常のオーダーの径を有するファイバーと比べて比表面積が数千〜数万倍大きいことをいう。単位重量当たりの表面積は、ナノメートルオーダーまで繊維化して細くすればするほど飛躍的に大きくなり、これにより「分子認識性」、「吸着特性」等に優れた性質を有するようになる。そのため、バイオフィルター、センサー、燃料電池電極材への利用が期待される。また、ナノサイズ効果とは、ナノサイズの径を有することから生じる効果で、「流体力学特性」、「光学特性」等が生み出され、これにより、圧力損失が低くサブミクロン微粒子を完全に捕捉できる超高性能フィルターへの利用が期待される。また、ナノファイバーの径が光の波長より小さいことから光の乱反射が減少し、透明度の高い繊維が作り出されるため、光透過性の優れた電子ペーパーなどへの利用が期待される。さらに、超分子配列効果とは、高分子鎖がまっすぐ並ぶことから生じる効果であり、「電気的特性」、「力学的特性」、「熱的特性」等が生み出され、導電性の原子や分子を規則正しく配列すれば、非常に導電性に優れた繊維を作製することができる。また、高分子鎖がまっすぐであることから大幅に耐熱性が向上する。
【0003】
また、マイクロメートルオーダーの木質繊維については、木繊維の数十分の一のオーダーであることから、繊維構造や木材成分が木質繊維の特徴を残し、木材固有の性質が活かされ剛直な特徴を持っている。そのため、繊維の成形体は空隙を作りやすく軽量性、断熱性を付与しやすい。また木質繊維は熱伝導率が低く、ヒートブリッジを起こしにくいので、この性質も断熱性付与に寄与する。
【0004】
このようなセルロースからなるファイバーを製造する方法としては、化学処理による方法、酵素加水分解による方法、機械的な処理による方法などが知られている。
【0005】
化学処理による方法としては、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル)酸化処理による方法や硫酸処理による方法がある。
【0006】
TEMPO酸化処理による方法では、特許文献1に示されているように、セルロース分子におけるグルコース単位にカルボキシル基を導入することで、分子間の電気的反発作用を引き起こし、セルロースナノファイバーを分離する。当該方法では、リグノセルロースからリグニンとヘミセルロースを除去しながら直接セルロースナノファイバーを製造することができるとともに、「高温の薬品処理」や「多段漂白」といったパルプ化の複雑な前工程を省略することができるため、ナノファイバーの化学的・機械的損傷(結晶化度低下)を抑えることができる。また、省エネルギー化(製造コスト削減)が図れ、そのため環境への負荷も軽減することができる。また、常温常圧で処理できることから、このことによりコスト削減を図ることができる。また、化学的処理であるため、解繊による機械的なダメージが最小限で済むという利点がある。
【0007】
硫酸処理による方法では、特許文献2に示されているように、セルロース繊維を硫酸処理し、非結晶部分を加水分解して除去することで結晶セルロースが得られ、硫酸処理により導入された硫酸基同士の静電反発によって安定に分散可能である。特許文献2の方法では、加水分解処理に加え、加水分解後の廃液からもナノファイバーが得られるため、セルロースナノファイバーを効率良く製造することができるという利点がある。
【0008】
酵素加水分解による方法では、特許文献3に示されているように、セルロース・ミクロフィブリル(CMF)に予め非晶部分を形成し、その非晶部分にエンドグルカナーゼを作用させることでセルロースナノファイバーが効率良く得られる。簡易な設備かつ温和な条件で実行可能であるため、コストの削減が期待され、また、得られるセルロースナノファイバーの損傷も少ない。また、予め非晶部分を形成することで酵素の浸透性を確保できるため、大量の酵素を使用しなくても効率的にナノファイバーが得られるという利点がある。
【0009】
また、機械的な処理による方法としては、メカノケミカル処理、高圧ホモジェナイザー処理、カウンターコリージョン処理が挙げられる。
【0010】
メカノケミカル処理による方法では、特許文献4に示されているように、セルロース物質に、粉砕助剤として親和性合成高分子を添加した後に乾式ボールミルなどの機械的粉砕を行う。その他、機械的粉砕には、ビーズミル、ディスクミル、ハンマーミル、ミキサー、ホモジェナイザー等が用いられる。加圧水熱処理等の前処理を行うことで、セルロースの膨潤やヘミセルロースの加水分解が起こるため、機械的処理を行った際に木材主成分の交絡を容易に解くことができ、高効率にセルロースナノファイバーを得ることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−308802号公報
【特許文献2】特表2012−526156号公報
【特許文献3】特開2008−150719号公報
【特許文献4】特開2008−274247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示されたTEMPO酸化処理による方法では、セルロース分子におけるグルコース単位にカルボキシル基が導入されるため、セルロース自体に化学変性が起こるという問題があった。ナノファイバーは分散液として得られるが、固形分濃度は5%が限界である。このように固形分の濃度が低く液体の分量が多いため、ナノファイバーを乾燥させるのに時間を要しコストが嵩むという問題があった。
【0013】
また、特許文献2に開示された硫酸処理による方法では、硝酸処理のような強酸を用いた激しい反応が行われるため、このような激しい反応に耐えうる設備が必要となり、設備の費用が嵩むという問題があった。また、硫酸処理に多量の硫酸を要するため、薬剤の費用が嵩むという問題があった。
【0014】
また、特許文献3に開示された酵素加水分解による方法では、酵素を用いるため反応促進が十分ではなく分解反応の進行が遅いという問題があった。また、大量の酵素を用いるため、コストが嵩むという問題があった。
【0015】
また、特許文献4に開示された機械的処理による方法では、製造ムラが発生しやすいため、何度も機械的処理に供しなければならず処理時間が長くなり、時間的にコストが嵩むという問題があった。また、機械的粉砕のための設備を要するため、設備的にコストが嵩むという問題があった。
【0016】
本発明は、上記課題に鑑み成されたものであり、その目的とするところは、化学的変性を受けない高品質の木質繊維を簡易且つ安価に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、液化二酸化炭素(液化炭酸ガス)を、木質材料内、特に当該木質材料中に含まれるセルロースミクロフィブリル内に注入すれば、ドライアイスの昇華・膨張による衝撃力によって、木質材料を木質材料の内部から破壊することができ、微細化しうることを見出した。また、ドライアイスは、木質材料に対して変性をもたらさないことから高品質の木質繊維を得ることができ、さらには、ドライアイスは液体になることなく直接固体から気体に昇華するため、微細化後の木質繊維に他の物質等が含まれておらず、中和処理等の後工程を経ること無く木質繊維を回収することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、木質材料を繊維化して木質繊維を作製する方法であって、
木質材料内に液化二酸化炭素を注入して、前記木質材料内にドライアイスを形成する工程と、
内部にドライアイスが形成された前記木質材料に衝撃を与えることにより、前記木質材料内のドライアイスを急激に昇華・膨張させて前記木質材料に前記ドライアイスの膨張による衝撃を与え、それにより前記木質材料を微細化して木質繊維を作製する工程と、
前記微細化された木質繊維を回収する工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る木質繊維を作製する方法において、前記木質材料内に液化二酸化炭素を注入する工程は、ある態様では、加圧下液化二酸化炭素に木質材料を浸漬することによって行われる。
【0019】
別の態様では、前記木質材料内に液化二酸化炭素を注入する工程は、液化二酸化炭素を前記木質材料に噴射することによって行われる。
【0020】
また、本発明に係る木質繊維を作製する方法において、一の態様では、前記内部にドライアイスが形成された木質材料に衝撃を与えることは、前記木質材料に物体を衝突させること、または前記木質材料を物体に衝突させることにより行われる。
【0021】
他の態様では、前記内部にドライアイスが形成された木質材料に衝撃を与えることは、前記木質材料をドライアイスと混合して混合物を得、前記混合物を固めて塊状体を形成し前記塊状体を物体に衝突させることにより行われる。
【0022】
また、本発明に係る木質繊維を作製する方法において、前記物体が予め加熱されることが好ましい。
【0023】
特に、前記物体が、回転体又は可動体であり、前記木質材料が衝突する位置の手前において前記回転体又は可動体が加熱されることが好ましい。
【0024】
また、本発明に係る木質繊維を作製する方法において、さらに別の態様では、前記内部にドライアイスが形成された木質材料に衝撃を与えることが、前記木質材料を対向衝突させることにより行われる。
【0025】
また、本発明に係る木質繊維を作製する方法において、さらに別の態様では、前記内部にドライアイスが形成された木質材料に衝撃を与えることが、前記木質材料をドライアイスと混合して混合物を得、前記混合物を固めて塊状体を形成し前記塊状体を対向衝突させることにより行われる。
【0026】
また、本発明に係る木質繊維を作製する方法において、さらに別の態様では、前記内部にドライアイスが形成された木質材料に衝撃を与えることが、前記木質材料を急速に高温条件下に曝すことにより行われる。
【0027】
本発明に係る木質繊維を作製する方法において、前記内部にドライアイスが形成された木質材料と前記ドライアイスとの割合が、5:1〜1:5であることが好ましい。
【0028】
また、本発明に係る木質繊維を作製する方法は、前記木質材料内にドライアイスを形成する工程の前に、前記木質材料を予備粉砕する工程をさらに備えていてもよい。
【0029】
また、本発明に係る木質繊維を作製する方法において、前記物体が木質繊維の回収容器であり、当該回収容器に前記内部にドライアイスが形成された木質材料を衝突させることにより、当該木質材料を微細化するとともに、微細化された木質繊維を回収することが好ましい。
【0030】
また、本発明に係る木質繊維を作製する方法は、ドライアイスを昇華させた際に発生する二酸化炭素を回収する工程をさらに備えることが好ましい。
【0031】
また、本発明に係る木質繊維を作製する方法において、前記木質繊維が、セルロース繊維を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る方法によれば、木質材料の微細化にドライアイスを用いるため、化学的変性を受けない高品質の木質繊維を簡易且つ安価に製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、木質材料の予備粉砕工程を示した図である。
図2図2は、木質材料の内部に液化二酸化炭素を注入する工程を示した図である。
図3図3は、内部にドライアイスが形成された木質材料に外部から衝撃を与える工程を示した図である。
図4図4は、木質材料とドライアイスとの混合物を作製する工程を示した図である。
図5図5は、内部にドライアイスが形成された木質材料に外部から衝撃を与える手法の第1の態様を示している。
図6図6は、内部にドライアイスが形成された木質材料に外部から衝撃を与える手法の第2の態様を示している。
図7図7は、内部にドライアイスが形成された木質材料に外部から衝撃を与える手法の第3の態様を示している。
図8図8は、内部にドライアイスが形成された木質材料に外部から衝撃を与える手法の第4の態様を示している。
図9図9は、衝撃付与工程と木質繊維回収工程とを同時に行うことができる回収容器を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明を実施するための形態を、以下、図面を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、以下に示す形態は、本発明の技術的思想を具体化するための木質繊維を作製する方法を例示するものであって、本発明を限定するものではない。
【0035】
(実施の形態1)
木質材料1を繊維化して木質繊維4を作製するに際し、木質材料1内、特に木質材料1のセルロースミクロフィブリル内に液化二酸化炭素を注入して、木質材料1(セルロースミクロフィブリル)内にドライアイス2を形成する。そして、内部にドライアイス2が形成された木質材料1(セルロースミクロフィブリル)に衝撃を与えることにより、木質材料1(セルロースミクロフィブリル)内のドライアイス2を急激に昇華・膨張させて木質材料1にドライアイス2の膨張による衝撃を与え、それにより木質材料1を微細化して木質繊維4を作製し、微細化された木質繊維4を回収する。木質材料1とドライアイス2との混合物3を得る前に、木質材料1を予備粉砕する工程をさらに備えていてもよい。また、混合物3を衝突させた際に発生する二酸化炭素を回収する工程をさらに備えていてもよい。以下、木質繊維4を作製する方法における各工程について詳細に説明する。
【0036】
なお、本発明において、「セルロースミクロフィブリル(本明細書においてセルロース微小繊維と称することもある)」とは、数十本から数百本のセルロース分子が水素結合により束状に結合して形成された構造体である。セルロースは直鎖状の高分子であり、この直鎖状のセルロースが同一方向に並んで水素結合により結合することにより棒状のセルロースミクロフィブリルが形成されている。セルロースミクロフィブリルは、互いに平行に並んで植物の細胞壁の骨組みとなっている。
【0037】
また、本発明において、「木質材料内に液化二酸化炭素を注入する」とは、液化二酸化炭素の少なくとも一部を木質材料の表面から内部へ浸透させることを意味し、必ずしも、木質材料の全体に液化二酸化炭素を浸透させることまでは必要とされない。しかしながら、木質材料1を構成するセルロースミクロフィブリル間、およびセルロースミクロフィブリル内のセルロース分子間に液化二酸化炭素が浸透されていることが好ましい。
【0038】
また、「木質繊維4」とは、ミリメートルからナノメートルまでの直径を有する木質からなる繊維を意味し、好ましくはナノメートルオーダーの直径を有する木質の繊維(以下、本明細書においてナノメートルオーダーの直径を有する木質繊維を特にナノファイバー、ナノ繊維と称することがある。本発明において、木質材料の一部がナノ化し当該部分がナノメートルオーダーの直径を有するものであればナノファイバーと称する。)を意味する。
【0039】
(木質材料予備粉砕工程)
図1は、木質材料の予備粉砕工程を示した図である。木質材料の予備粉砕工程は、以下に示すように任意の工程である。はじめに、木質材料1を準備する。木質材料1としては、セルロースを含むものであれば如何なるものであっても良いが、例えばスギ、ヒノキやマツなどの針葉樹、また、例えばシラカンバ、ナラ、カバやクリなどの広葉樹などが例として挙げられる。
【0040】
次に、予め木質材料1を粉砕する必要がある場合は、木質材料1を破砕機(不図示)により予備粉砕する。予備粉砕後の木質材料には参照番号1Aを付している。予備粉砕後の木質材料1Aの径は、1μm〜3mmであることが好ましく、1μm〜300μmであることがより好ましく、1μm〜50μmであることがさらに好ましい。木質材料1をこのような大きさに予め粉砕しておけば、後述する微細化をより効率的に行うことができる。しかしながら、はじめから、ある程度微細な木質材料1を用いる場合は、予備粉砕を行うことは必ずしも必要ではない。予備粉砕工程を経るか否かは用いる木質材料1の大きさに基づき適宜決定すればよい。
【0041】
予備粉砕の際、一軸破砕機、二軸破砕機、ハンマークラッシャー、レファイナー、ニーダー、離解機、叩解機、パルパー及びブロアーなどの破砕装置を用いることができる。予備粉砕に用いる破砕装置としては、所望の大きさに木質材料1を粉砕することが可能であれば如何なるものを使用しても良い。
【0042】
(液化二酸化炭素注入工程)
図2は、木質材料1の内部に液化二酸化炭素(以下、液化炭酸ガス、液化COと称することもある)を注入する工程を示した図である。この工程において、液化二酸化炭素を木質材料1の内部、特に木質材料1のセルロースミクロフィブリル内、さらにはセルロースフィブリル内のセルロース分子間に注入する。本発明において、木質材料1を液化二酸化炭素に高圧下接触させることにより、木質材料1の内部、特に、木質材料1を構成するセルロースミクロフィブリル間、およびセルロースミクロフィブリル内のセルロース分子間に液化二酸化炭素が浸透し、高圧状態を解除することにより、液化二酸化炭素が液体の状態を維持することができなくなってセルロースミクロフィブリル間、およびセルロースミクロフィブリル内のセルロース分子間においてドライアイスが形成される。ここで、木質材料1には、予備粉砕されていない木質材料1だけでなく、上述のように予備粉砕された木質材料1Aも含む。
【0043】
図2は、液化二酸化炭素を木質材料1内に注入する手法の第1の態様を示した図である。液化二酸化炭素を木質材料1内に注入するため、第1の態様では、図2に示すように、耐圧容器31内において加圧下(好ましくは高圧下)液化二酸化炭素32に木質材料1を浸漬する。ここで、「高圧」とは、液化二酸化炭素32が液体の状態を保つことができる圧力以上を意味し、例えば常温では、5.6MPa以上である。高圧下液化二酸化炭素32に木質材料1を浸漬することにより、液化二酸化炭素32が気化することを防止することができるとともに、耐圧容器31内において液化二酸化炭素32が高圧に保たれることにより液体状態の液化二酸化炭素32が木質材料1内へ容易に浸透する。より効率良く液化二酸化炭素32を木質材料1内へ浸透させるためには、耐圧容器31内の圧力は、6.0MPa以上であることが好ましい。このように耐圧容器31内の圧力を6.0MPa以上とすれば、液化二酸化炭素32の木質材料1内への浸透が良好に行われる。耐圧容器31内の圧力は、より好ましくは7.5MPa以上、さらに好ましくは10MPa以上である。
【0044】
木質材料1を液化二酸化炭素32に浸漬する時間は、30分〜60分であることが好ましい。浸漬時間が30分以上であれば木質材料1内に注入される液化二酸化炭素32の量を増加させることができる。また、浸漬時間を60分以上としても木質材料1内に注入される液化二酸化炭素32の量はそれ程増加しない。したがって、浸漬時間が30分〜60分であれば、効率良く液化二酸化炭素32を木質材料1内へ浸透させることができる。浸漬時間は、より好ましくは40分〜60分であり、さらに好ましくは50分〜60分である。
【0045】
耐圧容器31内において液化二酸化炭素32に木質材料1を投入した後、攪拌装置(不図示)によって液化二酸化炭素32を攪拌しても良い。液化二酸化炭素32を攪拌することにより、木質材料1内に浸透する液化二酸化炭素32の量が増加し後の微細化工程を良好に行うことができる。攪拌装置としては、ステーター、メカニカルスターラー、マグネットスターラー、超音波撹拌装置等を例示することができる。
【0046】
また、耐圧容器31内において液化二酸化炭素32に木質材料1を投入した後、攪拌装置による攪拌とは別に、または攪拌装置による攪拌に加重して、耐圧容器31に振動装置(不図示)により振動を与えても良い。これにより、上記同様、木質材料1内に浸透する液化二酸化炭素32の量を増加させることができ、後の微細化工程を良好に行うことができる。
【0047】
(衝撃付与工程)
図3は、衝撃付与工程を示した図である。内部にドライアイスが形成された木質材料1に外部から衝撃を与えることにより、木質材料1の内部に形成されたドライアイスを昇華させ、これにより急激にドライアイスを膨張させる。膨張による衝撃が木質材料1に与えられ、これにより木質材料1が微細化され木質繊維4が形成される。
【0048】
図3に示すように、実施の形態1では、内部にドライアイスが形成された木質材料1に物体8を衝突させる。物体8が木質材料1に衝突すると、その衝撃が、木質材料1の内部のドライアイスに伝わり、ドライアイスが昇華する。ドライアイスは、木質材料1の内部、特に、木質材料1を構成するセルロースミクロフィブリル間、およびセルロースミクロフィブリル内のセルロース分子間に形成されており、このような位置においてドライアイスが昇華することにより、体積が膨張し、このような膨張力によってセルロースミクロフィブリルが解繊され、さらにはセルロース分子が解けてナノファイバーが得られる。
【0049】
物体8の木質材料1への発射速度は、発射直後で100〜500m/sとすることができ、100〜350m/s程度であることが好ましい。発射速度が、100m/sよりも遅い場合は、木質材料1の微細化が好適に行われない。また、発射速度が、350m/sを超えると、音速を超えるため、衝撃波が発生し、処理時の騒音が問題となる。すなわち、発射速度が、発射直後で100〜350m/s程度であれば、木質材料1の微細化を良好に行うことができる。物体8の木質材料1への発射速度は、より好ましくはノズル噴出直後で200〜300m/s程度であり、このような範囲にあれば、木質材料1の微細化をさらに良好に行うことができる。
【0050】
物体8は、如何なるものであってもよいが、より好ましくは、熱を伝達することができる金属又は合金等の球体である。金属又は合金の球体は加熱することにより、木質材料1の衝突面を高温とすることができ、これによりドライアイスの昇華・膨張エネルギーを増大させることができる。これにより、木質材料1をより細かく微細化することができる。
【0051】
(木質繊維回収工程)
つづいて、木質材料1が微細化されて作製された木質繊維4を回収する。木質繊維を回収するため、吸引装置等を用いる。木質材料1の内部に形成されたドライアイスは、物体8が木質材料1に衝突した際に昇華して気体となるため、木質材料1に物体8が衝突した後は、微細化された木質繊維4のみが単独で存在する。すなわち、ドライアイスは昇華して木質繊維4と分離した状態で存在する。木質繊維4を吸引装置で吸引すれば木質繊維4だけを回収することができる。
【0052】
(二酸化炭素回収工程)
木質材料1に衝撃を与えた際に発生する気体の二酸化炭素を回収し、二酸化炭素を再利用する。二酸化炭素を回収する手段としては、多孔質体、気体吸引装置、ガス回収装置、ドラフトチャンバー、吸収液等を用いることができる。
【0053】
以上のように、本発明の実施の形態1に係る方法によれば、木質材料1の微細化にドライアイスを用いるため、化学的変性を受けない高品質の木質繊維4を簡易に製造することができる。
【0054】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2に係る、木質繊維の作製方法について説明する。実施の形態1においては、内部に二酸化炭素が形成された木質材料とドライアイスとを混合することなく当該木質材料に衝撃を与えているのに対して、実施の形態2においては、内部に二酸化炭素が形成された木質材料とドライアイスとを混合しこのようにして得られた混合物に衝撃を与えている点で異なる。
【0055】
(木質材料予備粉砕工程)
まず、上記実施の形態1と同様、木質材料1を予備粉砕する。木質材料の予備粉砕工程は、任意ではあるが、以下に示すように木質材料1とドライアイス2とが混合されるため、木質材料1は予備粉砕することが好ましい。
【0056】
(液体二酸化炭素注入工程)
上記実施の形態1と同様、木質材料1に液化二酸化炭素を注入する。
【0057】
(木質材料−ドライアイス混合物作製工程)
図4は、内部にドライアイスが形成された木質材料1とドライアイス2との混合物3を作製する工程(木質材料−ドライアイス混合物作製工程)を示した図である。
【0058】
木質材料1とドライアイス2との混合物3は、上述のようにして得られた内部にドライアイスが形成された木質材料1(以下、単に木質材料1と称することもある)とドライアイス2とをそれぞれ別々に準備し、これらを混合することにより作製することができる。また、別の態様では、液化二酸化炭素(液化炭酸ガス)を上述のようにして得られた木質材料1に吹き付けることにより、木質材料1とドライアイス2との混合物3を作製することができる。液化二酸化炭素を木質材料1へ吹き付けた際、液化二酸化炭素は常圧では液体であることができず液化二酸化炭素が固体(ドライアイス2)となって、ドライアイス2が木質材料1に絡み合い木質材料1とドライアイス2との混合物3が得られる。混合物3は、押し固めて圧縮混合物とすることが好ましい。
【0059】
木質材料1とドライアイス2との混合比率は、重量比で、10:1〜1:10であることが好ましく、5:1〜1:5であることがさらに好ましい。木質材料1とドライアイス2との混合比率がこのような範囲にあれば、後述する衝撃付与工程において木質材料1を効率良く微細化することができる。
【0060】
木質材料1とドライアイス2とを別々に準備してこれらを混合することにより混合物3を作製する態様において、ドライアイス2を準備する際、ドライアイス2の原料に水分を加えることが好ましい。水分を含まない場合、ドライアイスがパウダー状となり、木質材料1とドライアイス2との混合物3を押し固めることが困難である。ドライアイス2に所定量の水分を加えることにより、パウダー状ではなく塊状の混合物3(圧縮混合物3)を作製することができる。水分の量は、100gの混合物3に対して1.5g〜4.5gであることが好ましく、1.5g〜4.0gであることがより好ましく、1.5g〜3.5gであることがさらに好ましい。水分の量がこのような範囲にあれば、混合物3を押し固めることにより塊状体(圧縮混合物3)とすることができる。
【0061】
木質材料1とドライアイス2との混合物3は、上述したように押し固めて塊状体(圧縮混合物3)とすることが好ましい。このように混合物3を押し固めて塊状体(圧縮混合物3)とすることにより、ドライアイス2と木質材料1との接触面積が増加し、後述する衝撃付与工程においてドライアイス2を昇華・膨張させた際、膨張による衝撃力が木質材料1に良好に伝わり、木質材料1がより細かく微細化される。
【0062】
(衝撃付与工程)
図5〜8は、衝撃付与工程を示した図である。木質材料1とドライアイス2との混合物3に外部から衝撃を与えることによりドライアイス2を昇華させ、これにより急激にドライアイス2を膨張させる。膨張による衝撃が木質材料1に与えられ木質材料1が微細化され木質繊維4となる。
【0063】
図5は、混合物3に外部から衝撃を与える手法の第1の態様を示している。この態様では、ドライアイスブラスト装置6に混合物3を充填し、混合物3をドライアイスブラスト装置6から物体(例えば金属等の板)8に高速で衝突させる。木質材料1とドライアイス2との混合物3が物体8に高速で衝突することにより、ドライアイス2が昇華し昇華の際ドライアイス2の体積が約800倍に膨張する。膨張による衝撃が、ドライアイス2の周囲に含まれていた木質材料1に伝わり、木質材料1はその衝撃を受けて微細化される。
【0064】
混合物3の物体8への発射速度は、ノズル噴出直後で100〜500m/sとすることができ、100〜350m/s程度であることが好ましい。発射速度が、100m/sよりも遅い場合は、混合物3の粉砕及び木質材料1の微細化が好適に行われない。また、発射速度が、350m/sを超えると、音速を超えるため、衝撃波が発生し、処理時の騒音が問題となる。すなわち、発射速度が、ノズル噴出直後で100〜350m/s程度であれば、木質材料1の微細化を良好に行うことができる。混合物3の物体8への発射速度は、より好ましくはノズル噴出直後で200〜300m/s程度であり、このような範囲にあれば、木質材料1の微細化をさらに良好に行うことができる。
【0065】
物体8は、如何なるものであってもよいが、より好ましくは、熱を伝達することができる金属又は合金等の板である。金属又は合金の板は加熱することにより、混合物3の衝突面を高温とすることができ、この高温の衝突面に、木質材料とドライアイスとの混合物を衝突させれば、ドライアイスの昇華・膨張エネルギーを増大させることができる。これにより、膨張による衝撃が大きくなり木質材料1をより細かく微細化することができる。また、物体8は必ずしも加熱することを要せず、物体8を常温(具体的には、20℃〜30℃)のまま用い、常温の物体8に圧縮混合物3を衝突させてもよい。
【0066】
図6は、混合物3に外部から衝撃を与える手法の第2の態様を示している。第2の態様では、物体8は、帯状の金属が筒状にロールされて中空円柱状に形成され、この円柱状の物体8の中心軸を中心として回転する回転体であってもよい。円柱状の物体8の外周面10を衝突面としてもよいし、円柱状の物体8の内周面12を衝突面としてもよい。円柱状の物体8の衝突面の、混合物3が衝突する位置14の回転方向下手側に加熱手段16が配置されこの位置18において物体8を加熱してもよい。円柱状の物体8を回転させた場合に、混合物3が衝突する位置14の回転方向下手側の位置18において加熱手段16により円柱状の物体8が加熱され、その後、加熱された部位が回転方向に回転してこの加熱部位に混合物3が衝突する。このように構成することにより、高温の衝突面に混合物3を衝突させることができるため膨張による衝撃が大きくなる。また、物体8の加熱と物体8への混合物3の衝突とを連続的に行うことができ、良好な微細化を行うことができる。さらに、混合物3の衝突時、物体8の温度を一定に保つことができ、解繊の条件を一定に保つことができる。また、加熱手段16により加熱されるため、ドライアイス2を含む混合物3の衝突による物体8の温度低下を抑制することができ、結露を抑えることができる。
【0067】
加熱手段16としては、ガスバーナー、電気ヒータ、高周波、ドライヤー、煮沸を例示することができる。
【0068】
加熱手段16は、図6に示すように、円柱状の物体8の外側に設けられ(物体8の外側に設けられた加熱手段16は実線により図示)、物体8の外側から内側へ向くように配置してもよい。加熱手段16を円柱状の物体8の外側に設けることにより、円柱状の物体8を支える支柱に接触しないため加熱を容易に行うことができる。また、加熱手段16は、同じく図6に示すように、円柱状の物体8の内側に設けられ(物体8の内側に設けられた加熱手段16は破線により図示)、円柱状の物体8の内側から外側へ向くように配置してもよい。加熱手段16を円柱状の物体8の内側に設けることにより、省スペース化を図ることができる。
【0069】
図7は、混合物3に外部から衝撃を与える手法の第3の態様を示している。第3の態様では、物体8は、板状の金属が移動する可動体である。板状の物体8の一方の面20を混合物3が衝突する衝突面とし、他方の面22を加熱手段16により加熱しても良い。また、図7に示すように、板状の物体8の一方の面20を衝突面とし、同じく一方の面20を加熱手段16により加熱しても良い。
【0070】
図7に示すように、混合物3が衝突する位置14の両隣りの位置18を加熱手段16により加熱しても良いし、2つある位置18のうち一方のみ加熱しても良い。板状の物体8が、右側へ移動した場合、左側の加熱手段16により左側の位置18において加熱された部位が、混合物3が衝突する位置14まで変位し、加熱された部位に混合物3が衝突する。一方、板状の物体8が、左側へ移動した場合、右側の加熱手段16により右側の位置18において加熱された部位が、混合物3が衝突する位置14まで変位し、加熱された部位に混合物3が衝突する。このように構成することにより、上記同様、高温の衝突面に混合物3を衝突させることができるため膨張による衝撃を大きくすることができる。また、上記同様、加熱と衝突とを連続的に行うことができ、良好な微細化を行うことができる。
【0071】
混合物3が衝突する物体8としては、耐衝撃性があるものであれば如何なるものであっても良い。このような物体8を構成する材料として、セラミック、金属、合金、コンクリート等を例示することができる。特に好ましくは上述の通り金属である。
【0072】
金属としては、高い耐衝撃性、熱伝導性を有するため、銅、銀、金、鉄、アルミ、ニッケル等を例示することができる。特に好ましくは銅である。また、合金としては、ステンレス、はんだ、青銅、黄銅等を例示することができる。特に好ましくはステンレスである。
【0073】
図8は、混合物3に外部から衝撃を与える手法の第4の態様を示している。第4の態様では、2つのドライアイスブラスト装置(不図示)から混合物3を高速で対向衝突させる。このようにドライアイスブラスト装置から混合物3を対向衝突させることにより、混合物3に加わる衝撃力が大きくなり、ドライアイスが昇華しやすくなる。そのため、昇華・膨張による衝撃力が増大し、木質材料1をより細かく微細化することができる。
【0074】
このときの混合物3の発射速度は、ノズル噴出直後で100〜500m/sとすることができ、100〜350m/s程度であることが好ましい。発射速度が、100m/sよりも遅い場合は、混合物3の粉砕及び木質繊維の微細化が好適に行われない。また、発射速度が、350m/sを超えると、音速を超えるため、衝撃波が発生し、処理時の騒音が問題となる。すなわち、発射速度が、ノズル噴出直後で100〜350m/s程度であれば、木質材料1の微細化を良好に行うことができる。混合物3の物体8への発射速度は、より好ましくはノズル噴出直後で200〜300m/s程度であり、このような範囲にあれば、木質材料1の微細化をさらに良好に行うことができる。
【0075】
また、混合物3に外部から衝撃を与える手法の第5の態様では、混合物3を高温条件下にさらし、急速にドライアイス2を昇華させる。高温条件とは、30℃〜200℃を意味する。木質材料1とドライアイス2の混合物3を高温条件下にさらしドライアイス2を急速に昇華させることにより、昇華・膨張による衝撃が木質材料1に伝わり木質材料1を微細化することができる。昇華による膨張エネルギーで繊維が解れるため、ドライアイスブラスト装置等の噴射装置が不要である。混合物3を高温条件下にさらすに際し、密閉容器を減圧し無酸素の状態で行うことが肝要である。
【0076】
(木質繊維回収工程)
つづいて、木質材料1が微細化されて作製された木質繊維4を回収する。木質繊維を回収するため、吸引装置等を用いる。ドライアイス2及び木質材料1内に形成されたドライアイスは、物体8に衝突した際に昇華して気体となるため、木質材料1とドライアイス2の混合物3が物体8に衝突した後は、微細化された木質繊維4のみが単独で存在する。すなわち、ドライアイス2及び木質材料1内に形成されたドライアイスは昇華して木質繊維4と分離した状態で存在する。木質繊維4を吸引装置で吸引すれば木質繊維4だけを回収することができる。
【0077】
また、別の態様では、図9に示すような、衝突面14を有する回収容器24を用いることができる。このような回収容器24を用いれば、衝撃付与工程と、木質繊維回収工程とを同時に行うことができる。回収容器24の奧側の面が衝突面14に相当し、ドライアイスブラスト装置6から衝突面14に混合物3を高速で衝突させる。これにより、ドライアイス2が昇華して木質材料1が微細化されるとともに、微細化された木質繊維4が回収容器24内に貯まるため、木質繊維4を回収しやすい。回収容器24には、上述の吸引装置を備えていても良い。
【0078】
(二酸化炭素回収工程)
木質材料1とドライアイス2の混合物3が物体8に衝突した際に発生する気体の二酸化炭素を回収し、二酸化炭素を再利用する。二酸化炭素を回収する手段としては、多孔質体、気体吸引装置、ガス回収装置、ドラフトチャンバー、吸収液等を用いることができる。
【0079】
上記した回収容器24を用いる態様においては、回収容器24の一部に二酸化炭素回収手段(不図示)が設けられていることが好ましい。
【0080】
以上のように、本発明の実施の形態に係る方法によれば、木質材料1の微細化にドライアイスを用いるため、化学的変性を受けない高品質の木質繊維4を簡易に製造することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 木質材料
2 ドライアイス
3 混合物
4 木質繊維(ナノファイバー、ナノ繊維)
6 ドライアイスブラスト装置
8 混合物が衝突する物体
16 加熱手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9