特開2015-51890(P2015-51890A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-51890(P2015-51890A)
(43)【公開日】2015年3月19日
(54)【発明の名称】タンタル酸リチウム単結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/30 20060101AFI20150220BHJP
【FI】
   C30B29/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-184497(P2013-184497)
(22)【出願日】2013年9月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】畑中 翼
(72)【発明者】
【氏名】直江 邦浩
(72)【発明者】
【氏名】島村 清史
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ビジョラ エンカルナシオン アントニア
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BC37
4G077CF10
4G077EA06
4G077ED01
4G077PA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光学素子として用いるタンタル酸リチウムの均質性に優れた単結晶を製造できるタンタル酸リチウム単結晶の製造方法の提供。
【解決手段】リチウムを含むリチウム含有化合物、及び、タンタルを含むタンタル含有化合物を含む原料を溶融させて融液4を準備する融液準備工程と、種結晶5を用意し、種結晶の先端を前記融液に漬けた後、種結晶を引き上げることによりタンタル酸リチウム単結晶6を育成する単結晶育成工程とを含むタンタル酸リチウム単結晶の製造方法であって、融液準備工程において、フッ化物を含むフッ化物含有ガス雰囲気下で原料を溶融させる、タンタル酸リチウム単結晶の製造方法。前記フッ化物含有ガス中のフッ化物(CF,CH,CHF,HF,F等)の濃度を0.01〜100体積%に保持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムを含むリチウム含有化合物、及び、タンタルを含むタンタル含有化合物を含む原料を溶融させて融液を準備する融液準備工程と、種結晶を用意し、前記種結晶の先端を前記融液に漬けた後、前記種結晶を引き上げることによりタンタル酸リチウム単結晶を育成する単結晶育成工程とを含むタンタル酸リチウム単結晶の製造方法であって、
前記融液準備工程において、フッ化物を含むフッ化物含有ガス雰囲気下で前記原料を溶融させる、タンタル酸リチウム単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記融液準備工程において、前記フッ化物含有ガスを、溶融する前記原料の表面に吹き付ける、請求項1に記載のタンタル酸リチウム単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記単結晶育成工程を、フッ化物を含むフッ化物含有ガスの雰囲気下で行う、請求項1又は2に記載のタンタル酸リチウム単結晶の製造方法。
【請求項4】
前記融液準備工程が、前記フッ化物含有ガス中のフッ化物の濃度を0.01〜100体積%に保持する保持工程を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンタル酸リチウム単結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンタル酸リチウム単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンタル酸リチウム単結晶は、光学的品質に優れ、比較的安価で、大口径の結晶を育成することが可能であることから、非線形光学効果及び電気光学効果等を用いた各種光学素子としてよく用いられている。特に、タンタル酸リチウム単結晶を用いた非線形光学効果による波長変換デバイスは、緑色のレーザダイオードが実用化されていない現状においては、レーザプロジェクタやレーザディスプレイなどの光学機器に必須な高出力の緑色レーザを得る唯一の手段であると言っても過言ではない。このように、タンタル酸リチウム単結晶は非常に有用な単結晶として注目されている。
【0003】
しかし、タンタル酸リチウム単結晶には欠陥が多く存在する。このため、タンタル酸リチウム単結晶には、光透過率が低く、光に対するダメージ耐性が低いという問題があった。このため、これまで、タンタル酸リチウム単結晶の欠陥を少なくするために種々の研究がなされてきた。例えば下記特許文献1では、タンタル酸リチウム単結晶において酸素欠陥をフッ素で充填することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−30804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光学素子などに用いられるタンタル酸リチウム単結晶には、優れた均質性を有することが要求される。しかし、上述した特許文献1に記載のタンタル酸リチウム単結晶は、均質性の点で未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、均質性に優れたタンタル酸リチウム単結晶を製造できるタンタル酸リチウム単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、タンタル酸リチウム単結晶の原料融液中のフッ化物の濃度を均一にすることができれば、均質性に優れた単結晶を製造することができるのではないかと着想した。そこで、本発明者らはさらに鋭意研究を重ねた結果、フッ化物含有ガス雰囲気下でタンタル酸リチウム単結晶の原料を溶融させることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、リチウムを含むリチウム含有化合物、及び、タンタルを含むタンタル含有化合物を含む原料を溶融させて融液を準備する融液準備工程と、種結晶を用意し、前記種結晶の先端を前記融液に漬けた後、前記種結晶を引き上げることによりタンタル酸リチウム単結晶を育成する単結晶育成工程とを含むタンタル酸リチウム単結晶の製造方法であって、前記融液準備工程において、フッ化物を含むフッ化物含有ガス雰囲気下で前記原料を溶融させる、タンタル酸リチウム単結晶の製造方法である。
【0009】
この製造方法によれば、均質性に優れたタンタル酸リチウム単結晶を製造することができる。
【0010】
上記製造方法により均質性に優れたタンタル酸リチウム単結晶が製造できる理由について、本発明者らは以下のように推測している。即ち、本発明のタンタル酸リチウム単結晶の製造方法は、融液準備工程において、フッ化物を含むフッ化物含有ガス雰囲気下で原料を溶融させる。そのため、フッ化物含有ガスに含まれるフッ化物は融液と接触することにより融液全体にわたって均一に分散される。この結果、単結晶育成工程の前に、融液中のフッ化物の濃度を均一にすることが可能となる。この場合、単結晶育成工程において、フッ化物の濃度が均一な融液からタンタル酸リチウム単結晶を育成することができるため、均質性に優れたタンタル酸リチウム単結晶が製造できるのではないか、と本発明者らは推測している。
【0011】
上記タンタル酸リチウム単結晶の製造方法においては、前記融液準備工程において、前記フッ化物含有ガスを、溶融する前記原料の表面に吹き付けることが好ましい。
【0012】
この場合、融液中に、フッ化物をより効果的に導入することができる。その結果、融液中のフッ化物の濃度が均一となるまでの時間を短くすることが可能となるため、融液準備工程に要する時間を短くすることができ、タンタル酸リチウム単結晶の製造効率が向上する。
【0013】
上記タンタル酸リチウム単結晶の製造方法においては、前記単結晶育成工程を、フッ化物を含むフッ化物含有ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0014】
この場合、単結晶育成工程をフッ化物含有ガス以外のガスの雰囲気下で行う場合に比べて、融液から引き上げた部分のうち、まだ固化していない部分からフッ化物が外に出ることをより効果的に抑制できる。
【0015】
上記タンタル酸リチウム単結晶の製造方法においては、前記融液準備工程が、前記フッ化物含有ガス中のフッ化物の濃度を0.01〜100体積%に保持する保持工程を含むことが好ましい。
【0016】
この場合、上記フッ化物含有ガス中のフッ化物の濃度が0.01体積%未満に保持される場合に比べ、より欠陥が少ないタンタル酸リチウム単結晶を製造することができる。
【0017】
なお、本発明において、「タンタル酸リチウム単結晶」には、タンタル、リチウム、酸素の一部がこれら以外の元素によって置換されているものも含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、均質性に優れたタンタル酸リチウム単結晶を製造することができるタンタル酸リチウム単結晶の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るタンタル酸リチウム単結晶の製造方法を実施する製造装置の第一の例を概略的に示す切断面端面図である。
図2】本発明に係るタンタル酸リチウム単結晶の製造方法を実施する製造装置の第二の例を概略的に示す切断面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のタンタル酸リチウム単結晶の製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、全図中、同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
はじめに、タンタル酸リチウム単結晶の製造方法の説明に先立ち、上記単結晶を製造する結晶製造装置について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るタンタル酸リチウム単結晶の製造方法を実施する製造装置の第一の例を概略的に示す切断面端面図である。図1に示すように、タンタル酸リチウム単結晶6の製造装置(以下、単に「単結晶製造装置」と呼ぶ)100は、筒状の筐体本体部11と、筐体本体部11に対し筐体本体部11を密閉するように設けられる筐体蓋部12とからなる筐体10を備えている。筐体10の内部には、開口を有するイリジウム製ルツボ1と、ルツボ1を収容するセラミック製の筒状容器2と筒状容器2の周囲に巻回される高周波コイル3とが設けられている。高周波コイル3は、ルツボ1に誘導電流を生じさせ、ルツボ1を加熱するためのものである。また筐体蓋部12は、ルツボ1の開口に対向する位置にガス導入口7a及びガス排出口7bを有している。そしてガス導入口7aには、フッ化物含有ガス供給源(図示せず)が接続されている。さらに筐体蓋部12は、種結晶5を挿入するための種結晶挿入口8を備えている。
【0022】
次に、上記タンタル酸リチウム単結晶6の製造方法について説明する。
【0023】
<融液準備工程>
まず、リチウムを含むリチウム含有化合物、及び、タンタルを含むタンタル含有化合物を含む原料を準備する。
【0024】
リチウム含有化合物は、リチウムを含む化合物であれば特に制限されるものではない。リチウムを含むリチウム含有化合物としては、例えばLiCOなどが挙げられる。
【0025】
タンタル含有化合物は、タンタルを含む化合物であれば特に制限されるものではない。タンタルを含むタンタル含有化合物としては、例えばTaなどが挙げられる。
【0026】
リチウム含有化合物に対するタンタル含有化合物のモル比は通常は、リチウム含有化合物中のリチウム原子数に対するタンタル含有化合物中のタンタル原子数の比が0.8〜1.2となるようにすればよい。
【0027】
上記原料には、上記リチウム含有化合物及び上記タンタル含有化合物に加えて、さらにマグネシウムを含むマグネシウム含有化合物が含まれてもよい。上記原料にマグネシウム含有化合物が含まれる場合、マグネシウム含有化合物が含まれない場合に比べて、より良質なタンタル酸リチウム単結晶を製造することができる。上記原料に含まれるマグネシウム含有化合物としては、例えばMgO及びMgFなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上が組み合わせて含まれてもよい。これらの中ではMgFが特に好ましい。
【0028】
次に、筐体蓋部12を筐体本体部11から取り外した状態で上記原料をルツボ1に投入する。その後、筐体蓋部12を、筐体本体部11に対して筐体本体部11を密閉するように取り付ける。
【0029】
次に、フッ化物含有ガス供給源からガス導入口7aを通して筐体10内に、フッ化物を含有するフッ化物含有ガスを導入すると共に、ガス排出口7bを通して筐体10内のガスを排出して、筐体10の内部空間をフッ化物含有ガス雰囲気にする。筐体10内に導入される上記フッ化物含有ガスの流量は、特に限定されるものではなく、例えば0.1〜5.0L/minであればよい。こうして、フッ化物含有ガス雰囲気におけるフッ化物の濃度を一定に保持する。
【0030】
このとき、上記フッ化物含有ガス中のフッ化物の濃度は0.01〜100体積%に保持されることが好ましい。
【0031】
この場合、上記フッ化物含有ガス中のフッ化物の濃度が0.01体積%未満に保持される場合に比べ、より欠陥が少ないタンタル酸リチウム単結晶を製造することができる。上記フッ化物含有ガス中のフッ化物の濃度は100体積%に保持されることがより好ましい。
【0032】
上記フッ化物含有ガスは、フッ化物を含有していればよい。ここで、フッ化物としては、例えばCF、CH、CHF、CF、HF及びFなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
またフッ化物含有ガス中のフッ化物の濃度を100体積%未満にする場合には、フッ化物含有ガスは、不活性ガス及び酸素又はそのいずれか一方を更に含む。不活性ガスとしては、例えば窒素、アルゴン及びヘリウム等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
次に、高周波コイル3に電流を印加する。すると、ルツボ1が加熱され、ルツボ1内で原料が溶融され、融液4が得られる。このとき、原料の加熱温度は、1600〜1700℃であればよい。また、単結晶製造装置100においては、ガス導入口7aがルツボ1の開口に対向する位置にある。このため、フッ化物含有ガス供給源からガス導入口7aを通して筐体10内にフッ化物含有ガスを導入すると、フッ化物含有ガスが、溶融する原料の表面に吹き付けられる。
【0035】
<単結晶育成工程>
続いて、上記融液4からチョクラルスキー法によってタンタル酸リチウム単結晶6を育成する。具体的には、棒状の種結晶5を用意し、その種結晶5の先端を融液4に漬けた後、種結晶5を所定の回転数で回転させながら、所定の引上げ速度で図1の矢印A方向に向かって引き上げてバルク状のタンタル酸リチウム単結晶6を育成する。
【0036】
このとき、種結晶5としては、例えばタンタル酸リチウムからなる単結晶を用いることができる。
【0037】
また種結晶5の回転数は、好ましくは3〜50rpmとし、より好ましくは3〜15rpmとする。
【0038】
また引上げ速度は、好ましくは0.1〜10mm/hとし、より好ましくは1〜5mm/hとする。
【0039】
単結晶育成工程は、フッ化物を含むフッ化物含有ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。この場合、単結晶育成工程をフッ化物含有ガス以外のガスの雰囲気下で行う場合に比べて、融液4から引き上げた部分のうち、まだ固化していない部分からフッ化物が外に出ることをより効果的に抑制できる。該フッ化物含有ガスは、融液準備工程で用いたものと同じものであっても異なってもよい。また、該フッ化物含有ガスに含まれるフッ化物の濃度は、融液準備工程で用いたフッ化物含有ガスに含まれるフッ化物の濃度と同じであっても異なってもよい。
【0040】
単結晶育成工程における筒状容器2内の圧力は特に限定されず、例えば大気圧であればよい。また、単結晶育成工程においても、融液4の温度は1600〜1700℃に保持される。
【0041】
以上のようにして、タンタル酸リチウム単結晶6が製造される。
【0042】
上記の製造方法によれば、均質性に優れたタンタル酸リチウム単結晶6を製造することができる。
【0043】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、単結晶育成工程を上記フッ化物含有ガスの雰囲気下で行ったが、単結晶育成工程は不活性ガスの雰囲気下で行ってもよい。また、上記実施形態では、単結晶育成工程において、種結晶5を回転させながら引き上げてタンタル酸リチウム単結晶6を育成したが、種結晶5を回転させずに引き上げてタンタル酸リチウム単結晶6を育成してもよい。また、単結晶製造装置100においては、ガス排出口7bは筐体蓋部12に設けられているが、ガス排気口7bが設けられる場所は特に限定されるものではなく、例えば筐体本体部11の側面又は底面に設けられてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、融液準備工程においてフッ化物含有ガスを、溶融する原料の表面に吹き付けたが、フッ化物含有ガスは必ずしも、溶融する原料の表面に吹き付ける必要はなく、例えば図2に示される単結晶製造装置200を使用して、フッ化物含有ガスを、溶融する原料の表面に吹き付けることなく、フッ化物含有ガス雰囲気下で融液準備工程を行ってもよい。ここで、図2は、本発明に係るタンタル酸リチウム単結晶の製造方法を実施する製造装置の第二の例を概略的に示す切断面端面図である。図2に示すように、単結晶製造装置200は、筒状の筐体本体部21と筐体本体部21に対し筐体本体部を密閉するように設けられる筐体蓋部22とからなる筐体20を備えている。筐体20の内部には、開口を有するイリジウム製ルツボ1と、ルツボ1を収容するセラミック製の筒状容器2と筒状容器2の周囲に巻回される高周波コイル3とが設けられている。また筐体本体部21は、側面にガス導入口7a及びガス排出口7bを有している。そしてガス導入口7aにはフッ化物含有ガス供給源(図示せず)が接続されている。さらに筐体蓋部22は、種結晶5を挿入するための種結晶挿入口8を備えている。この単結晶製造装置200においては、ガス導入口7aがルツボ1の開口に対向していない。このため、ガス導入口7aから筐体20内にフッ化物含有ガスを導入すると、フッ化物含有ガスが、溶融する原料の表面に吹き付けられることなく、溶融する原料と接触される。ここで、単結晶製造装置200においては、ガス排出口7bは筐体本体部21の側面に設けられているが、ガス排気口7bが設けられる場所は特に限定されるものではなく、例えば筐体本体部21の底面又は筐体蓋部22に設けられてもよい。
【0045】
また、上記融液準備工程で原料が完全に溶融し、融液4が得られた後で且つ単結晶育成工程を行う前に、融液4をフッ化物含有ガスにさらに接触させる時間を設けても良い。この場合、融液準備工程が終了した後も、引き続きガス導入口7aからフッ化物含有ガスを導入し続けることが好ましい。接触時間は、例えば0.5〜100時間であればよい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
まずLiCO粉末(純度99.99%)、Ta粉末(純度99.99%)およびMgO粉末(純度99.99%)を用意し、これらの粉末からなる原料を乾式混合した後、原料を、直径50mm、深さ50mmの筒状のルツボ1に詰めた。このとき、LiCO粉末およびTa粉末は、モル比でLiCO粉末:Ta粉末=0.4875:0.5125となるように混合し、MgO粉末は、LiCO粉末およびTa粉末の合計100モルに対して0.75モルとなるように配合した。
【0048】
続いてルツボ1を単結晶製造装置200に設置し、ガス導入口7aから筒状容器2にCFガスと窒素ガスからなりCFガスの濃度が1体積%であるフッ化物含有ガスを流し込み、筒状容器2内部を該フッ化物含有ガス雰囲気にした。このときガス排出口7bから空気及び余分のフッ化物含有ガスを排出して、CF4ガスの濃度を1体積%に保持すると共に、筒状容器2内部の圧力を大気圧となるようにした。そして高周波コイル3に電流を印加してルツボ1を加熱することにより原料をフッ化物含有ガス雰囲気下で溶融させ、融液4を得た。このとき、融液4の温度は、パイロメーターを用いて測定しながら、1650℃となるように調整した。
【0049】
続いて、タンタル酸リチウムからなる3×3×50mmの角棒状の種結晶5を用意し、その種結晶5を種結晶挿入口8から挿入し、種結晶5の先端を融液4に漬けた後、種結晶5を、10rpmの回転数で回転させながら、上記フッ化物含有ガス雰囲気下、3mm/hの引上げ速度で引き上げた。
【0050】
こうして直径20mmのバルク状単結晶を得た。
【0051】
(実施例2)
フッ化物含有ガスとして、CFガスの濃度が100体積%であるフッ化物含有ガスを用いた以外は実施例1と同様にして単結晶を得た。
【0052】
(実施例3)
フッ化物含有ガスとしてCFガスの濃度が50体積%であるフッ化物含有ガスを用いた以外は実施例1と同様にして単結晶を得た。
【0053】
(実施例4)
まず、単結晶製造装置200に代えて単結晶製造装置100を用い、フッ化物含有ガスを、溶融する原料の表面に吹き付けながら原料を溶融させて融液4を得たこと以外は実施例1と同様にして単結晶を得た。
【0054】
(比較例1)
原料の溶融を、フッ化物含有ガス雰囲気ではなく窒素ガス雰囲気下で行い、原料にLiCO粉末およびTa粉末の合計100モルに対して0.5モルとなるようにLiFを配合した以外は実施例1と同様にして単結晶を得た。
【0055】
実施例1〜4及び比較例1で得られた単結晶についてX線回折を行ったところ、全ての結晶についてLiTaOのピークが確認された。
【0056】
[特性評価]
上記のようにして得られた実施例1〜4及び比較例1の単結晶について透過率を測定することにより、単結晶の均質性を評価した。均質性については、単結晶の径方向の均質性および軸方向の均質性を評価した。
(径方向の均質性)
実施例1〜4及び比較例1の単結晶を、種結晶の先端から単結晶の延び方向に沿って15mmの位置で厚さ1mmのz面ウェハに切り出し、切り出したそれぞれのz面ウェハの中心部、中心から3mmの位置、および、中心から7mmの位置における透過率を、透過スペクトル測定装置(パーキンエルマー社製Lambda 900)を用いて測定し、波長280nmにおける透過率の平均値および標準偏差をそれぞれ算出した。結果を表1に示す。なお、表1において「透過率の平均値(径方向)」および「透過率の標準偏差(径方向)」の単位は%である。
(軸方向の均質性)
実施例1〜4及び比較例1の単結晶を、種結晶の先端から単結晶の延び方向に沿って5mm、20mmおよび35mmの位置で厚さ1mmのz面ウェハに切り出し、切り出したそれぞれのz面ウェハの中心部における透過率を測定し、波長280nmにおける透過率の平均値および標準偏差をそれぞれ算出した。結果を表1に示す。なお、表1において「透過率の平均値(軸方向)」および「透過率の標準偏差(軸方向)」の単位は%である。
【表1】
【0057】
表1に示す結果より、軸方向及び径方向のいずれについても、実施例1〜4の単結晶の波長280nmにおける透過率の標準偏差は、比較例1の単結晶の同波長における透過率の標準偏差よりも十分に小さいことが分かった。
【0058】
よって、本発明のタンタル酸リチウム単結晶の製造方法によれば、均質性に優れたタンタル酸リチウム単結晶を製造することができることが確認された。
【符号の説明】
【0059】
4…融液
5…種結晶
6…タンタル酸リチウム単結晶
図1
図2