【解決手段】 樹脂材料で形成されたアタッチメント20は、開閉器のブッシングにおいて、碍子部81とゴム製の端子カバー10とを跨いで径外方向から取り付けられる。アタッチメント20は、碍子側リブ27が碍子部81の溝84に係止されるとともに、端子カバー10の内側に嵌合する絶縁性の端子カバー座87の外壁と端子側リブ28との間に端子カバー10を挟む。これにより、端子カバーの軸方向の位置ずれによる充電部86の露出を防止することができる。また、仮に端子カバー10の位置がずれた場合であっても、アタッチメント20自体が充電部を覆う絶縁性カバーとして機能する。よって、例えば鳥が運んできた金属線材が充電部に接触することによって起こる配電線故障を防止することができる。
電力供給経路を開閉する開閉器(7)のブッシング(80)において、前記ブッシングの碍子部(81)と、前記ブッシングの端子(88)を覆う絶縁性の端子カバー(10)とを跨いで径外方向から取り付けられるアタッチメント(20、30)であって、
絶縁材料で形成され、前記端子カバーの内側に嵌合する絶縁性の端子カバー座(87)の外壁との間に前記端子カバーを挟み、前記端子カバーの軸方向の位置ずれを防止することを特徴とするアタッチメント。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高所に電力供給設備を設営するにあたっては、一般に過去の経験に基づき鳥害を防止する対策が講じられるものの、設営後に、予期しなかった鳥の行動によって新たな問題が見つかる場合がある。例えば、電力供給経路を開閉する開閉器においては、元々、ブッシングの充電部を覆う絶縁性の端子カバーが設けられていた。ところが、設営後に端子カバーの軸方向位置がずれ充電部が露出するおそれがあることが判明した。この原因は、おそらく電線の振動や鳥の行動によるものと推測される。この時露出した充電部と開閉器本体の金属部分などアースポイントとなる部分との間、又は、露出した複数の充電部同士の間に、例えば鳥が運んできた金属線材が橋渡しするように接触すると、配電線故障に至るおそれがある。
【0005】
このように既設の設備で新たな問題が見つかった場合、後付けのアタッチメントによって配電線故障等を未然に防止することが求められる。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、既設の開閉器のブッシングに容易に取り付け可能であり、例えば鳥が運んできた金属線材が充電部に接触することによって起こる配電線故障を防止するアタッチメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電力供給経路を開閉する開閉器のブッシングにおいて、ブッシングの碍子部と、ブッシングの端子を覆う絶縁性の端子カバーとを跨いで径外方向から取り付けられるアタッチメントであって、絶縁材料で形成され、端子カバーの内側に嵌合する絶縁性の端子カバー座の外壁との間に端子カバーを挟み、端子カバーの軸方向の位置ずれを防止することを特徴とする。
【0007】
電線の振動や鳥の行動によって端子カバーの軸方向位置がずれた場合、碍子部と端子との間の充電部が露出することとなる。そこで、碍子部と端子カバーとに跨って端子カバーの外側を囲むようにアタッチメントを取り付けることで、一方が碍子部に係止されたアタッチメントと端子カバー座の外壁との間に端子カバーを挟み、端子カバーを固定する。これにより、端子カバーの軸方向の位置ずれによる充電部の露出を防止することができる。
【0008】
また、アタッチメントは絶縁性材料で形成されているため、仮に端子カバーの位置がずれた場合であっても、アタッチメント自体が充電部を覆う絶縁性カバーとして機能する。よって、例えば鳥が運んできた金属線材が充電部に接触することによって起こる配電線故障を防止することができる。
【0009】
さらに、アタッチメントは、ブッシングの径外方向から取り付けが可能である。具体的には、弾性変形可能なC字状のフレームを有する構成や、開放端が互いに結合可能な複数の分割壁からなる構成を採用することができる。このような構成により、例えば環状の絶縁部材を、ブッシングの端子から一度電線を外してから挿通するといった作業をする必要がない。したがって、既設の開閉器のブッシングに対し、開閉器やブッシングをそのままに保った状態で、作業者がアタッチメントを容易に取り付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の複数の実施形態による端子カバー用のアタッチメントを図面に基づいて説明する。
最初に、当該アタッチメントが適用される開閉器について、
図9を参照して説明する。開閉器7は、発電所や変電所から送電される電力の供給経路を開閉するものであり、箱形の本体70と、本体70から突出したブッシング80とからなる。ブッシング80は、絶縁性の碍子部81の先端に、電線89に接続される端子88が設けられている。碍子部81は、凸部83と溝84とが繰り返す凹凸形状をしており、表皮効果による電流が流れにくくなっている。
【0012】
碍子部81と端子88との間には、碍子部81と隣接する充電部86、及び充電部86の端子88側に位置する絶縁性の端子カバー座87が設けられている。充電部86は、通常使用状態で電圧が印加されている導電性の部分である。端子88の周りには、ゴム製で絶縁性の端子カバー10が被せられている。端子カバー10は、大径の端子被覆部11と小径の電線被覆部12とを有する2段筒状に形成されている。
【0013】
図3に示すように、端子カバー10は、端子カバー座87の外壁が端子被覆部11の内壁に嵌合することで、ブッシング80に取り付けられ、充電部86を覆う。
図9(a)に示した三つのブッシング80のうち一番上のものが、端子カバー10が正しく取り付けられた状態を示している。すなわち、端子カバー10の開口端13が正規の位置にある。
【0014】
ところで、例えば
図9(b)に示すように、電線89の振動や、端子カバー10に止まった鳥Bの行動によって端子カバー10の位置がずれる可能性が想定される。そして、
図9(a)の上から二番目、三番目に示すように、2つのブッシング80の端子カバー10の位置がずれて充電部86が露出し、且つ、鳥Bが営巣材として運んできた針金やハンガー等の金属線材9が充電部86同士を橋渡しするように接触すると、配電線故障が発生するおそれがある。
なお、端子カバー10の位置ずれは、最大でも
図9(b)に示す端子カバー座87の位置までとなるように規制されているため、端子88まで露出するような事態は起こり得ない。
【0015】
上記の問題に対し、開閉器7を今後新設する場合には、電線89の振動や鳥Bの行動によって位置がずれないようにブッシング80の端子カバー10をしっかり固定するか、或いは、充電部86の表面を絶縁し、仮に露出しても配電線故障が発生するおそれがないようにすることが好ましい。
一方、既設の開閉器7のブッシング80については、後付けのアタッチメントを用いて対策することが求められる。このアタッチメントは、(1)ブッシング80の充電部86を覆う端子カバー10の位置がずれないように固定する機能、(2)仮に端子カバー10の位置がずれても、アタッチメント自体が充電部86を覆い絶縁性を確保する機能、が要求される。
【0016】
また、(3)ブッシング80へのアタッチメントの取り付け作業は、開閉器7やブッシング80をそのままに保った状態で、ブッシング80の径外方向から容易に取り付け可能でなければならない。(4)特に充電部86や電線89に電流が流れた状態での活線作業が想定されるため、作業者が迅速且つ安全にアタッチメントをブッシング80に取り付け可能であることが要求される。
さらに、(5)ブッシング80にアタッチメントを取り付け済みであるか否かが地上から容易に確認できることが好ましい。
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるアタッチメント、及び当該アタッチメントが取り付けられる開閉器の構成について、
図1〜
図5を参照して説明する。
図1に示すアタッチメント20は、例えばABS系の樹脂材料で形成されており、絶縁性である。アタッチメント20は、フレーム21、把持部22、碍子側リブ27、端子側リブ28等を有している。C字状のフレーム21は、周方向の一部に開口23が形成されている。また、板厚等を適切に設定することで、開口23の幅が広がるように弾性変形可能となっている。
把持部22は、フレーム21の開口23に対して反対側において径外方向に突出している。フレーム21の開口23に面する端部には、開口23の口元が端子カバー10の外面に当接しやすいようにカーブしたガイド24が形成されている。
【0018】
フレーム21の内壁には、径内方向に突出する複数のリブ27、28が、軸方向両端部に形成されている。
図1(b)において、碍子側リブ27は、フレーム21の中心から斜め方向に4箇所設けられており、端子側リブ28は、フレーム21の上及び左右に3箇所設けられている。このように、複数のリブ27、28は、フレーム21の弾性変形を損なわないように、フレーム21の内壁に離散して複数設けられている。
碍子側リブ27は、径内方向への突出長さが比較的長く、且つ軸方向の幅が比較的大きく形成されている。端子側リブ28は、径内方向への突出長さが比較的短く、且つ軸方向の幅が比較的小さく形成されている。また、端子側リブ28の内壁は、端子カバー10の端子被覆部11(
図2参照)相当の半径を有する円弧状に形成されている。
【0019】
図2に示すように、アタッチメント20は、既設の開閉器7のブッシング80に対し、ブッシング80の碍子部81と端子カバー10とを跨ぐように取り付けられる。
詳しくは
図3、
図4に示すように、アタッチメント20がブッシング80に取り付けられたとき、4箇所の碍子側リブ27は、碍子部81の溝84に嵌まり込んで係止される。また、3箇所の端子側リブ28は、軸方向において端子カバー座87と一致する位置で端子カバー10の外面に当接する。これにより、端子カバー10は、端子カバー座87の外壁と端子側リブ28との間に挟まれて固定される。
【0020】
また、仮に端子カバー10の軸方向位置がずれたとしても、アタッチメント20自体が充電部86を覆う絶縁性カバーとして機能する。ただし、開口23の部分は充電部86を覆わない。しかし、配電線故障が発生する可能性があるのは、ブッシング80の天側に置かれた金属線材9が、露出した充電部86と開閉器本体70の金属部分などアースポイントとなる部分との間、又は、露出した複数の充電部86同士の間を橋渡しするように接触する場合に限られるため、開口23が必ず地側を向くようにアタッチメント20を取り付ければよい。
【0021】
アタッチメント20をブッシング80に取り付ける手順を
図5に示す。ここで、
図5の上方向は天方向を示す。
まず
図5(a)のように、作業者は、アタッチメント20の開口23を地方向に向けて把持部22を持ち、天側から、ブッシング80の碍子部81及び端子カバー10の外面にガイド24を当接させる。そして、
図5(b)のようにアタッチメント20を押し下げると、フレーム21が変形して開口23の幅が広がり、ガイド24が端子カバー10の外周に倣ってずり下がる。ガイド24が端子カバー10の直径を超えると、広がったフレーム21が元に戻ろうとする弾性力も加わって、アタッチメント20は、
図5(c)の位置まで移行し、ブッシング80に取り付けられる。
【0022】
このように、アタッチメント20はワンタッチでの取り付けが可能である。また、アタッチメント20をブッシング80から取り外す場合には把持部22を持って引き上げることで、取り付け時と同様にフレーム21が変形して開口23の幅が広がり、容易に取り外すことができる。
【0023】
以上の構成による第1実施形態のアタッチメント20の効果を説明する。
(1)アタッチメント20は、ブッシング80に取り付けられたとき、端子カバー座87の外壁と端子側リブ28との間に端子カバー10を安定的に挟持する。これにより、端子カバー10の位置ずれによる充電部86の露出を防止することができる。
また、アタッチメント20は、碍子側リブ27が碍子部81の溝84に嵌まり込むことで碍子部81に係止される。碍子側リブ27は離散して複数設けられているため、碍子部81との接触を低減し、ブッシング80の絶縁性の低下を防ぐことができる。
【0024】
(2)仮に端子カバー10の位置がずれた場合、アタッチメント20自体が充電部86を覆う絶縁性カバーとして機能する。よって、例えば鳥Bが運んできた金属線材9が充電部86に接触することによって起こる配電線故障を防止することができる。
【0025】
(3)アタッチメント20は、周方向の一部に開口23が形成された弾性変形可能なC字状のフレームを有する構成を採用しており、ブッシング80の径外方向から取り付けが可能である。したがって、既設の開閉器7のブッシング80に対し、開閉器7やブッシング80をそのままに保った状態で、作業者がアタッチメント20を容易に取り付けることができる。
【0026】
(4)作業者は、把持部22を持ち、アタッチメント20を碍子部81及び端子カバー10の外面に当接させて押し下げることでワンタッチでの取り付けが可能であり、作業性に優れる。このとき、弾性変形の強さが作業に適当な強さとなるように、フレーム21の板厚等が設定されている。したがって、特に活線作業の場合、作業者は迅速且つ安全にアタッチメント20をブッシング80に取り付けることができる。
【0027】
(5)例えば端子カバー10が黒色の場合、アタッチメント20を黒色以外のグレー色等の樹脂材料で成形することで、視覚による端子カバー10との区別が容易となる。したがって、ブッシング80にアタッチメントを取り付け済みであるか否かを地上から容易に確認することができる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のアタッチメントについて、
図6〜
図8を参照して説明する。
図6に示すアタッチメント30は、ポリエチレン(PE)等のエラストマー系樹脂材料で形成されており、絶縁性且つ柔軟性を有している。アタッチメント30は、周方向に連ねたとき環状をなす略半円形の分割壁31、32、分割壁31、32の接続端を折り曲げ支点として分割壁31、32同士を結合するヒンジ部33、及び、分割壁31、32の開放端同士を結合可能な結合部341、342等を有している。
【0029】
図6は、結合部341、342が互いに結合され、分割壁31、32が円環状をなしている状態を示している。アタッチメント30は、端子カバー10を囲むように取り付けられる。このとき、アタッチメント30を碍子部81側から視た状態を示す図が
図6(a)であり、アタッチメント30を端子88側から視た状態を示す図が
図6(c)である。
【0030】
分割壁31側の結合部341には、なべ蓋状の頭部を有するボタン35が形成されており、分割壁32側の結合部342には、ボタン35が嵌まるボタン穴36が形成されている。ボタン35及びボタン穴36は、特許請求の範囲に記載の「凹凸部」に相当する。
ボタン35をボタン穴36に嵌めるとき、ボタン35の頭部をボタン穴36の口元に押し付けると、ボタン穴36が変形して広がり、ボタン35の頭部が通過する。ボタン35がボタン穴36に嵌まると、結合部341、342が互いに結合した状態でアタッチメント20が固定される。
【0031】
分割壁31、32の内壁には、径内方向に突出し、周方向に分割されたヒダ37、38が、軸方向両端部に形成されている。碍子側ヒダ37は、突出長さが長く、且つ比較的粗く分割されている。端子側ヒダ38は、突出長さが短く、且つ比較的細かく分割されている。
【0032】
図7に示すように、アタッチメント30を取り付けた時、碍子側ヒダ37は、碍子部81の溝84に嵌まり込んで係止される。また、端子側ヒダ38は、柔軟性を伴って撓んだ状態で端子カバー10の外面に当接し、アタッチメント30と端子カバー10との隙間からの異物の侵入を防止する。
【0033】
アタッチメント30をブッシング80に取り付ける手順を
図8に示す。
まず
図8(a)のように、作業者は、ヒンジ部33を支点として分割壁31、32を開いた状態でアタッチメント30を持ち、ブッシング80に近づける。そして、
図8(b)のようにアタッチメント30がブッシング80を跨いだ位置から、結合部341、342同士を合わせて、ボタン35をボタン穴36に嵌合させると、端子カバー10がブッシング80に固定された状態でアタッチメント30が取り付けられる(
図8(c))。
また、アタッチメント30をブッシング80から取り外す場合には、ボタン35をボタン穴36から外し、結合部341、342を引っ張って離間させることで、容易に取り外すことができる。
【0034】
以上の構成による第2実施形態のアタッチメント30の効果について、第1実施形態と対比しつつ異なる点を中心に説明する。下記の他、第1実施形態の効果(2)、(5)については同様である。
【0035】
(1)アタッチメント30は、ブッシング80に取り付けられたとき、結合部341のボタン35と結合部342のボタン穴36とが嵌合し、端子カバー10を挟んだ状態で固定される。これにより、端子カバー10の位置ずれによる充電部86の露出を防止することができる。また、端子側ヒダ38は、異物の侵入を防止することができる。
また、アタッチメント30は、碍子側ヒダ37が碍子部81の溝84に嵌まり込むことで碍子部81に係止される。碍子側ヒダ37は碍子部81と全面的に接触しないため、碍子部81との接触を低減し、ブッシング80の絶縁性の低下を防ぐことができる。
【0036】
(3)アタッチメント30は、開放端が互いに結合可能な複数の分割壁31、32からなる構成を採用しており、ブッシング80の径外方向から取り付けが可能である。したがって、既設の開閉器7のブッシング80に対し、開閉器7やブッシング80をそのままに保った状態で、作業者がアタッチメント30を容易に取り付けることができる。
【0037】
(4)作業者は、ヒンジ部33を支点として分割壁31、32を開き、アタッチメント30がブッシング80を跨いだ位置から、結合部341、342同士を合わせて、ボタン35をボタン穴36に嵌合させることで取り付けが可能であり、作業性に優れる。
アタッチメント30は絶縁性であり、ブッシング80に直接触れることなく取り付け可能であるため、活線作業においても安全に作業することができる。
【0038】
(その他の実施形態)
(ア)上記第1実施形態における碍子側リブ27、端子側リブ28の数や配置は上記の例に限らない。
(イ)上記第2実施形態のアタッチメント30は、2つの分割壁31、32の接続端が1箇所のヒンジ部33を折り曲げ支点として接続されている。その他の実施形態では、周方向に連ねたとき環状をなす3つ以上の複数の分割壁を有し、分割壁同士の接続端がヒンジ部を折り曲げ支点として接続される構成としてもよい。
【0039】
(ウ)上記第2実施形態の結合部341、342同士を結合するための「凹凸部」は、ボタン35及びボタン穴36に限らず、条と溝、突起と切欠等、互いに嵌合可能に組み合わせられる構成であればよい。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。