【0011】
上記プロピレングリコール脂肪酸エステルは、プロピレングリコールと上記脂肪酸のエステル化生成物から、未反応物及びジエステル体を可及的に除去し、モノエステル体の含有量を90質量%以上に精製したものであり、エステル化反応、除去及び精製等自体公知の方法で製造され得る。
上記プロピレングリコール脂肪酸エステルの製造方法の概略は下記の通りである。
例えば、攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板などを備えた通常の反応容器に、プロピレングリコールと炭素数8〜14の脂肪酸を約1:0.2〜1.5のモル比で仕込み、常法によりエステル化反応を行い、反応終了後、反応混合物中に残存する触媒を中和して反応液を得る。エステル化反応する際の加熱温度としては通常、約180〜260℃の範囲、好ましくは約190〜210℃の範囲である。また、反応圧力条件は減圧下又は常圧下で、反応時間は約0.5〜15時間、好ましくは約1〜10時間である。得られた反応液は、未反応の脂肪酸、未反応のプロピレングリコール、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル及びプロピレングリコールジ脂肪酸エステルなどを含む混合物である。この反応液を減圧下で蒸留して未反応のプロピレングリコールを留去し、続いて、例えば流下薄膜式分子蒸留装置又は遠心式分子蒸留装置などを用いて分子蒸留するか、又はカラムクロマトグラフィーもしくは液液抽出など自体公知の方法を用いて精製することにより、モノエステル体を90質量%以上含むプロピレングリコール脂肪酸エステルを得る。
【実施例】
【0017】
<ニキビ原因菌に対する静菌剤の作製>
[試作品1の作製]
攪拌機、温度計、ガス吹き込み管及び水分離器を取り付けた3Lの四つ口フラスコにプロピレングリコール1080gとカプリン酸1320g及び酸化亜鉛0.24gを仕込み、窒素ガスを導入しつつ195℃に昇温し7時間反応を行い、酸価1.2の反応液2140gを得た。この反応液900gを減圧蒸留(100℃、250Pa)して未反応のプロピレングリコールを除去した後、さらに減圧蒸留(150℃、120Pa)し、プロピレングリコールカプリン酸エステル(実施例品1)430gを得た。モノエステル体含有量は95質量%であった。
【0018】
[試作品2の作製]
攪拌機、温度計、ガス吹き込み管及び水分離器を取り付けた3Lの四つ口フラスコにプロピレングリコール990gとヤシ脂肪酸(脂肪酸組成 ラウリン酸:52質量%、ミリスチン酸:24質量%、カプリン酸:9質量%、パルミチン酸:9質量%、カプリル酸:3質量%、オレイン酸:2質量%、ステアリン酸:1質量%)1410g及び酸化亜鉛0.24gを仕込み、窒素ガスを導入しつつ195℃に昇温し6時間反応を行い、酸価1.5の反応液2150gを得た。この反応液1000gを減圧蒸留(100℃、250Pa)して未反応のプロピレングリコールを除去した後、さらに減圧蒸留(140〜200℃、100〜200Pa)し、プロピレングリコールヤシ脂肪酸エステル(実施例品2)390gを得た。モノエステル体含有量は95質量%であった。
【0019】
[試作品3の作製]
攪拌機、温度計、ガス吹き込み管及び水分離器を取り付けた500mlの四つ口フラスコにプロピレングリコール106gとカプリン酸294g及び酸化亜鉛0.04gを仕込み、窒素ガスを導入しつつ195℃に昇温し6時間反応を行い、酸価1.7であるプロピレングリコールカプリン酸エステル(比較例品1)360gを得た。モノエステル体含有量は50質量%であった。
【0020】
[モノエステル体含有量の測定法]
HPLCを用いてエステル組成分析を行い、定量は絶対検量線法により行った。即ち、データ処理装置によってクロマトグラム上に記録された被検試料のモノエステル体に相当するピーク面積を測定し、順相系カラムクロマトグラフィーにより精製したプロピレングリコールモノラウリン酸エステルを標準試料として作成した検量線から、被検試料のモノエステル体含有量を求めた。HPLC分析条件を以下に示した。
【0021】
[HPLC分析条件]
装置 島津高速液体クロマトグラフ
ポンプ(型式:LC−20AD;島津製作所社製)
カラムオーブン(型式:CTO−20A;島津製作所社製)
データ処理装置(型式:LCsolution;島津製作所社製)
カラム GPCカラム(型式:SHODEX KF−801;昭和電工社製) 2本連結
移動相 THF
流量 1.0mL/min
検出器 RI検出器(型式:RID−10A;島津製作所社製)
カラム温度 40℃
検液注入量 15μL(in THF)
【0022】
<静菌試験>
下記表1に示すニキビ原因菌に対する静菌剤を用いて、ニキビ原因菌(Propionibacterium avidum:P.avidum、Staphylococcus epidermidis:S.epidermidis)に対する静菌試験を行った。
【0023】
【表1】
【0024】
[接種用菌液の調製]
P.avidum及びS.epidermidisを、それぞれ、No702培地(ポリペプトン10g、酵母エキス2g、硫酸マグネシウム7水和物1g、蒸留水1Lを調整)に加えて菌数が1×10
5CFU/mLの接種用菌液を調整した。
【0025】
[最少阻止濃度(MIC)の測定]
48穴マイクロプレートの各ウェルに、培養液として、液体培地(No702培地)900μL、各接種用菌液100μL及び上記のニキビ原因菌に対する静菌剤を培養液中の濃度が25ppm、50ppm、100ppm、200ppm、300ppm、400ppmとなるように希釈した溶液10μLを分注し、37℃で5日間培養して菌の生育の有無を確認した。この時、生育が認められなかった培養液を150μL採取し、No802培地(ポリペプトン10g、酵母エキス2g、硫酸マグネシウム7水和物1g、蒸留水1L、寒天15gを調整)に塗布し、さらに37℃で5日間培養した。この際、生育が認められなかった最少の濃度を最少阻止濃度(MIC)とした。尚、S.epidermidisについては、実施例品1、比較例品1〜3、参考例品1、2の最小防止濃度の測定を行った。結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
結果より、P.avidumに対しては、実施例品1〜3は50ppm以下で静菌効果を示した。比較例品1〜3は、100ppm未満では静菌効果が得られなかった。一般的な静菌剤である参考品1、2は200ppmで静菌効果を示した。また、S.epidermidisに対しては、実施例品1は100ppmで静菌性を示した。比較例品1〜3は、200ppm未満では静菌効果が得られなかった。一般的な静菌剤である参考例品1、2は400ppmで静菌効果を示した。実施例品は、ニキビ原因菌に対し優れた静菌効果を示した。
【0027】
<皮膚刺激性確認テスト>
実施例品1及び参考例品1についての皮膚刺激性を、パッチテスト(閉塞パッチテスト法)により確認した。この手法は、化粧料等の皮膚刺激性を確認する目的で一般的に用いられている手法である。
【0028】
[希釈液の作製]
蒸留水(89.5g)、エタノール(10.0g)、実施例品1(0.5g)を混合して実施例品1を0.5質量%含む希釈液1を作製した。また、実施例品1に替えて参考例品1を用いて参考例品1を0.5質量%含む希釈液2を作製した。
【0029】
[皮膚刺激性確認テストの実施]
得られた希釈液1及び2をそれぞれ直径5mm程の円形ろ紙にしみ込ませ、これを上腕部にろ紙と同径のアルミニウム製円盤(フィンチャンバー)を用いて貼付し48時間固定した。48時間後に貼付したろ紙を剥がし(パッチ除去)、その後1時間及び24時間経過後の皮膚の刺激反応状態を判定した。判定は、表3の判定基準で皮膚の反応を評価した。そして皮膚に反応があらわれた人数に各判定の係数を乗じたものの和を評点とし、評点を被験者の人数(8名)で割り100倍した値を刺激指数とした。刺激指数が、概ね10以下は安全品、10〜30は許容品、30以上は要改良品と評価した。皮膚反応状態の判定、評点、刺激指数、評価を表4に示す。
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
結果より、実施例品1は、従来用いられている参考例品1(4−ヒドロキシ安息香酸プロピル)に比較して刺激性が弱く安全性が高いといえる。
【0032】
<ニキビ用皮膚外用剤の作製>
[ニキビ用皮膚外用剤1]
下記表5の配合により、各成分を均一に混合して実施例品1を含有するニキビ用皮膚外用剤1を作製した。
【0033】
【表5】
【0034】
[ニキビ用皮膚外用剤2]
下記表6の配合により、各成分を均一に混合して実施例品1を含有するニキビ用皮膚外用剤2(化粧水)を作製した。
【0035】
【表6】