【0042】
本発明の好ましい実施態様を以下に示す。
<1>3−(2,4−ジメチル−5−{[(3Z)−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン]メチル}−1H−ピロール−3−イル)プロパン酸を含有する経口固形製剤であって、波長550〜620nmに遮光性を持つ遮光成分を含有する被覆剤によって被覆されてなる被覆経口固形製剤。
<2>遮光成分が、酸化鉄である<1>記載の被覆経口固形製剤。
<3>遮光成分が、三二酸化鉄及び黄色三二酸化鉄から選ばれる1種又は2種以上である<1>又は<2>のいずれかに記載の被覆経口固形製剤。
<4>遮光成分が、三二酸化鉄である<1>〜<3>のいずれかに記載の被覆経口固形製剤。
<5>被覆剤が、遮光成分及び被覆基剤を含有し、被覆基剤が水溶性セルロース類及びポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上である<1>〜<4>のいずれかに記載の被覆経口固形製剤。
<6>被覆基剤が、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる1種又は2種以上である<5>記載の被覆経口固形製剤。
<7>被覆基剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである<5>又は<6>記載の被覆経口固形製剤。
<8>被覆基剤が、メトキシ基19.0〜24.0%及びヒドロキシプロポキシ基4.0〜12.0%を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである<5>〜<7>のいずれかに記載の被覆経口固形製剤。
<9>錠剤又は顆粒製剤である<1>〜<8>のいずれかに記載の被覆経口固形製剤。
<10>遮光成分の含有量が、被覆層中に0.1〜95質量%、好ましくは2〜45質量%、より好ましくは10〜30質量%である<1>〜<9>のいずれかに記載の被覆経口固形製剤。
<11>被覆層中の被覆基剤の含有量が、5〜99質量%、好ましくは45〜95質量%である<5>〜<10>のいずれかに記載の被覆経口固形製剤。
<12>被覆剤が、さらに可塑剤を含有するものであり、可塑剤がポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン及びクエン酸トリエチルから選ばれる1種又は2種以上であり、好ましくはポリエチレングリコールである<11>記載の被覆経口固形製剤。
<13>被覆層中の可塑剤の含有量が、1〜50質量%、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは8〜12質量%である<11>又は<12>記載の被覆経口固形製剤。
<14>被覆剤の量が、被覆製剤100質量部に対して1〜5質量部、好ましくは2〜3質量部である<1>〜<13>のいずれかの被覆経口固形製剤。
<15>3−(2,4−ジメチル−5−{[(3Z)−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン]メチル}−1H−ピロール−3−イル)プロパン酸を有効成分として含み、結合剤を実質的に含有せず、崩壊剤としてカルメロース類を該有効成分100質量部に対して4〜14質量部含有する経口固形製剤を被覆したものである<1>〜<14>のいずれかに記載の被覆経口固形製剤。
<16>カルメロース類がカルメロースカルシウム又はクロスカルメロースナトリウムである<15>記載の被覆経口固形製剤。
<17>前記有効成分100質量部に対するカルメロースカルシウムの含有割合が8〜12質量部である<16>記載の被覆経口固形製剤。
<18>前記有効成分100質量部に対するクロスカルメロースナトリウムの含有割合が9〜11質量部である<17>記載の被覆経口固形製剤。
<19>賦形剤として糖アルコール及び二糖類から選ばれる1種又は2種以上を含有する<15>〜<18>のいずれかに記載の被覆経口固形製剤。
<20>糖アルコール及び二糖類が、D−マンニトール及び乳糖から選ばれる1種または2種以上である<19>記載の被覆経口固形製剤。
<21>経口固形製剤中の前記有効成分の含有割合が40〜60質量%である<15>〜<20>のいずれかに記載の被覆経口固形製剤。
<22>さらに滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを含有する<15>〜<21>のいずれかに記載の被覆経口固形製剤。
<23>湿式造粒法により製造された造粒物又は当該造粒物の圧縮成形物である<15>〜<22>のいずれかに記載の被覆経口固形製剤。
【実施例】
【0043】
次に実施例を挙げて本発明を説明する。
【0044】
参考例1
TSU−68(Raylochemicals,inc製)原薬を、1mmへリンボーンスクリーンを取り付けたハンマーミル(型式KIIW−1、不二パウダル株式会社製)で粉砕した。500.0mgのTSU−68粉砕品、450.0mgの乳糖(Borculo Domo Ingredients製)、50.0mgのカルメロースカルシウム(商品名E.C.G−505、五徳薬品株式会社製)を5分間混合し、混合末を得た。この混合末を2バッチに等分割し、それぞれ高速攪拌造粒機(型式FM−VG−05P、株式会社パウレック製)で2分間混合して203gmgの精製水を加えつつ2分30秒間造粒して、湿潤顆粒を得た。その後、2バッチ分の湿潤顆粒を混合した。この湿潤顆粒を1.5mmへリンボーンスクリーンを取り付けたパワーミル(型式P−02S、不二パウダル株式会社製)で湿式整粒し、3バッチに等分割し、流動層造粒乾燥機(型式FLO−MINI、フロイント産業株式会社製)に入れ70℃で3時間乾燥させた後、目開き850μmの篩で強制篩過し、乾燥顆粒を得た。3バッチ分の乾燥顆粒を混合して978.4gの乾燥顆粒を得た。乾燥顆粒に9.7gのステアリン酸マグネシウム(太平化学化学産業株式会社製)を加えて30秒間混合した後、15×6mmカプレット形状の杵臼及び回転式打錠機(型式AQUA0512SS2A1、株式会社菊水製作所製)により打錠圧600kgで打錠し、質量505mg、硬度10kpの錠剤(素錠)を得た。
【0045】
参考例2
TSU−68原薬を、1mmへリンボーンスクリーンを取り付けたハンマーミルで粉砕した。500.0gのTSU−68粉砕品、450.0gのD−マンニトール(製品名D−マンニット、協和醗酵工業株式会社製)、50.0gのカルメロースカルシウムを5分間混合し、混合末を得た。この混合末を2バッチに等分割し、それぞれ高速攪拌造粒機で2分間混合して185gの精製水を加えつつ2分30秒間造粒して、湿潤顆粒を得た。その後、2バッチ分の湿潤顆粒を混合した。この湿潤顆粒を1.5mmへリンボーンスクリーンを取り付けたパワーミルで湿式整粒し、3バッチに等分割して流動層造粒乾燥機に入れ70℃で乾燥させた後、目開き850μmの篩で強制篩過し、乾燥顆粒を得た。3バッチ分の乾燥顆粒を混合して981.2gの乾燥顆粒を得た。乾燥顆粒に9.8gのステアリン酸マグネシウムを加えて30秒間混合した後、15×6mmカプレット形状の杵臼及び回転式打錠機により打錠圧600kgで打錠し、質量505mg、硬度11kpの錠剤(素錠)を得た。
【0046】
実施例1
被覆基剤として65.1%のヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(型番TC−5R、信越化学工業株式会社製)、可塑剤として9.3%のポリエチレングリコール6000(日油株式会社製)、遮光成分として25.6%の三二酸化鉄(癸巳化成株式会社製)を含む被覆剤を調製した。
この10gの被覆剤を90.0gの精製水に溶解・分散させて被覆液を得た。
錠剤コーティング装置(商品名ドリアコータ、型式DRC−200、株式会社パウレック製)を用いて、を参考例1で得られた錠剤(素錠)にこの被覆液をスプレーしながら乾燥させて、1錠あたり被覆剤として12.5mg被覆することで、8.1mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース2910及び3.2mgの三二酸化鉄を被覆させた被覆錠剤を得た。
【0047】
実施例2
被覆基剤として65.1%のヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、可塑剤として9.3%のポリエチレングリコール6000(日油株式会社製)、遮光成分として25.6%の黄色三二酸化鉄(癸巳化成株式会社製)を含む被覆剤を調製した。
その余は実施例1と同様に、この被覆剤を参考例1で得られた錠剤(素錠)に被覆することで、8.1mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース2910及び3.2mgの黄色三二酸化鉄を被覆させた被覆錠剤を得た。
【0048】
実施例3
被覆基剤として65.1%のヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、可塑剤として9.3%のポリエチレングリコール6000(日油株式会社製)、遮光成分として12.8%の三二酸化鉄(癸巳化成株式会社製)及び12.8%の黄色三二酸化鉄(癸巳化成株式会社製)を含む被覆剤を調製した。
その余は実施例1と同様に、この被覆剤を参考例1で得られた錠剤(素錠)に被覆することで、8.1mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、1.6mgの三二酸化鉄を及び1.6mgの黄色三二酸化鉄を被覆させた被覆錠剤を得た。
【0049】
実施例4
被覆基剤として56.35%ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、可塑剤として8.05%のポリエチレングリコール6000(日油株式会社製)、遮光成分として25.6%の三二酸化鉄及び10.0%の酸化チタンを含む被覆剤を調製した。
その余は実施例1と同様に、この被覆剤を参考例1で得られた錠剤(素錠)に被覆することで、7.0mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、3.2mgの三二酸化鉄及び1.25mgの酸化チタンを被覆させた被覆錠剤を得た。
【0050】
実施例5
被覆基剤として56.35%ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、可塑剤として8.05%のポリエチレングリコール6000(日油株式会社製)、遮光成分として25.6%の黄色三二酸化鉄及び10.0%の酸化チタンを含む被覆剤を調製した。
その余は実施例1と同様に、この被覆剤を参考例1で得られた錠剤(素錠)に被覆することで、7.0mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、3.2mgの黄色三二酸化鉄及び1.25mgの酸化チタンを被覆させた被覆錠剤を得た。
【0051】
実施例6
被覆基剤として56.35%のヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、可塑剤として8.05%のポリエチレングリコール6000(日油株式会社製)、遮光成分として12.8%の三二酸化鉄、12.8%の黄色三二酸化鉄及び10%の酸化チタンを含む被覆剤を調製した。
その余は実施例1と同様に、この被覆剤を参考例1で得られた錠剤(素錠)に被覆することで、7.0mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、1.6mgの三二酸化鉄、1.6mgの黄色三二酸化鉄及び1.25mgの酸化チタンを被覆させた被覆錠剤を得た。
【0052】
実施例7
実施例1と同様に、被覆剤を参考例2で得られた錠剤(素錠)に被覆することで、8.1mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、3.2mgの三二酸化鉄を被覆させた被覆錠剤を得た。
【0053】
実施例8
被覆基剤として82.3%のヒドロキシプロピルセルロース(型番HPC−SL、日本曹達株式会社製)、可塑剤として11.8%のポリエチレングリコール6000、遮光成分として15.6%の黄色三二酸化鉄及び5.9%の酸化チタンを含む、被覆剤を調製した。
この8.5gの被覆剤を100.0gの精製水に溶解・分散させて被覆液を得た。
その余は実施例1と同様に、この被覆剤を参考例2で得られた錠剤(素錠)に被覆することで、10.3mgのヒドロキシプロピルセルロース、1.25mgの酸化チタンを被覆させた被覆錠剤を得た。しかし、被覆作業中にツインニングを生じる錠剤が確認された。
【0054】
実施例9
被覆基剤として77.8%のヒドロキシプロピルメチルセルロース2208(型番SB−4、信越化学工業株式会社製)、可塑剤として11.1%のポリエチレングリコール6000、遮光成分として11.1%の酸化チタン含む被覆剤を調製した。
この9.0gの被覆剤を91.0gの精製水に溶解・分散させて被覆液を得た。
その余は実施例1と同様に、この被覆剤を参考例2で得られた錠剤(素錠)に被覆することで、9.7mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、1.38mgの酸化チタンを被覆させた被覆錠剤を得た。
【0055】
対照例1
国際公開第01/37820号パンフレット及び国際公開第2004/24127号パンフレット記載の方法に準じてTSU−68含有カプセル剤を作製した。即ち、孔径0.024inchの丸穴スクリーンを取り付けた高速回転式粉砕機(装置名「Comil 197S」、Quadro製)で粉砕した1750gのTSU−68、4091gの乳糖水和物(商品名Fast Flo、Foremost Farms製)、250gのクロスカルメロースナトリウム(商品名Ac−Di−Sol、FMC Corporation製)、62gのラウリル硫酸ナトリウム、32gの軽質無水ケイ酸(Degussa Corporation製)を容量2立方フィートのV型容器回転式混合機に入れ、27rpmで10分間混合した後、62gのステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt製)を加えて26rpmで2分間混合して混合末を得た。カプセル充填機(型式SF−30、Sejong製)を用いて混合末178.5gを3号ゼラチンカプセル(R.P.Scherer製)に充填し、カプセル剤を得た。
【0056】
試験例1 実施例の光安定性
参考例1及び実施例1〜4及び6で作製した錠剤に、光源をD
65ランプ又はBOCランプとする分光照射器により一定波長の光(120万Lux・hr)を曝光しながら、保管した。また、これら錠剤を冷蔵庫内で保存した。
0.010gのTSU−68を精密に量り、80mLのアセトニトリルを加え、超音波抽出を行った後、590mLの水に10mLの1Mリン酸を加えた溶液を加え、正確に200mLとし、標準溶液とした。保存した錠剤を乳鉢にて粉砕し、計算上0.010gのTSU−68を含有する量の粉砕試料を精密に量り、80mLのアセトニトリルを加え、超音波抽出を行った後、590mLの水に10mLの1Mリン酸加えた溶液を加え、正確に200mLとした。この液を遠心分離(3000rpm、15min)し、得られた上澄み液を試料溶液とした。
この標準溶液及び試料溶液を、液体クロマトグラフ法(HPLC)(検出器:紫外吸光光度計(測定波長:275nm)、カラム:Supelco Supelcosil LC−ABZ、5μm、4.6×250mm、カラム温度:40℃付近の一定、移動相:590mLの水に10mLの1Mリン酸及び400mLのアセトニトリルを加えたもの、流量:約1.2mL/分、注入量:100μLとする条件)により測定することで、生成した類縁物質量を求めた。
生成類縁物質量を表1に示す。参考例1は、BOCランプ照射下保存品が冷蔵庫保存品より主分解物の生成量が若干増加した。D
65ランプ照射下保存品が主分解物の生成量が著しく増加した。三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化チタンを含有する実施例1〜6は、D65ランプ照射下保存品の類縁物質の生成量が抑制されていた。特に三二酸化鉄を含有する実施例1、実施例3、実施例4、実施例6は、主分解物の生成を抑制する効果が優れていた。実施例4は、実施例1と比較して、生成類縁物質量に変化が認められなかった。酸化チタンを含有することで主分解物の生成量は抑制されなかった。
【0057】
【表1】
【0058】
試験例2 曝光光波長とTSU−68類縁物質量
TSU−68に回折格子照射分光器(型式CRM−FA、日本分光株式会社製)で分光した光を照射した。
100mgのTSU−68を精密に量り、0.01mol/L水酸化ナトリウム溶液/メタノール/アセトニトリル混液(60:16:24)を加えて溶かし正確に100mLとし、標準溶液とした。
100mgのTSU−68を精密に量り、約160mLの0.01mol/L水酸化ナトリウム溶液/メタノール/アセトニトリル混液(60:16:24)を加え、超音波抽出を行った後、更に0.01mol/L水酸化ナトリウム溶液/メタノール/アセトニトリル混液(60:16:24)を加えて正確に200mLとした。この液10mLをとり、孔径0.45μmのメンブランフィルター(DISMIC−25HP、東洋濾紙株式会社製)でろ過し、最初のろ液2mLを除き、その後得られたろ液を試料溶液とした。
この標準溶液及び試料溶液を、液体クロマトグラフ法(HPLC)(検出器:紫外吸光光度計(測定波長:254nm)、カラム:Symmetry Shield RP18、5μm、4.6×150mm、カラム温度:50℃付近の一定、移動相:7.74gのクエン酸ナトリウム(無水)を水に溶かし、1000mLとした液に、6.30gのクエン酸一水和物を水に溶かし、1000mLとした液を加え、pH4.7に調整し、更に600mLのこの液に160mLのメタノール及び240mLのアセトニトリルを加えたもの、流量:TSU−68の保持時間が約20分になる量、注入量:20μLとする条件)
により測定することで、生成した類縁物質量を求めた。
生成類縁物質量を
図2に示す。TSU−68に波長550〜620nmの光を曝光したとき、その分解物が著しく増加することが確認できた。
【0059】
試験例3 遮光成分の吸光度
5%のヒドロキシプロピルメチルセルロース2208(型番SB−4、信越化学工業株式会社製)を含む水溶液を溶媒とした。遮光成分として20mgの三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄又は酸化チタンをとり、1Lの溶媒に溶かし、試料溶液とした。自記分光光度計(型式U−3310、株式会社日立製作所製)で試料溶液の200〜800nmの吸収スペクトルを測定した。
試料溶液の吸光度の測定結果を
図7に示す。TSU−68類縁物質の生成を促進する550nm〜620nmの光に対し、三二酸化鉄の吸光度が高く、次いで黄色三二酸化鉄が続くことが確認された。
試験例2の結果と合わせ、波長550〜620nmに吸光度を持つ物質をTSU−68固形製剤に被膜することで、TSU−68の光分解を抑制することができることが示唆された。
【0060】
試験例4 被覆基剤について
参考例2、対象例1及び実施例7〜9で得られた試料(対象例1は5カプセル、それ以外は1錠)を用いて第十三改正日本薬局方一般試験法溶出試験法第2法(パドル法)(パドル回転数:50rpm、試験液:0.9%Tween80を含むpH7.5の薄めたMcIlvaine Buffer900mL、測定波長:300nmとする条件)により溶出率(%)を測定した。
溶出率を
図3に示す。参考例2は、対象例1と比較し、良好な速度で有効成分が溶出した。実施例7〜9は、対象例1よりも良好な速度で溶出した。特に、実施例8〜9は、参考例2から大きな遅れが無く、特に良好な速度で溶出した。被覆基剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース2208が好ましいが、溶出速度の観点からヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース2208がより好ましい。製造適性の観点からヒドロキシプロピルメチルセルロース2208が特に好ましいことが示された。
【0061】
参考例2
6.0gの粉砕したTSU−68と0.48gカルメロースカルシウムを錠剤粉砕機(型式KC−HUK型、株式会社小西製作所製)に入れ、1分間混合した後、精製水5.3gを加えつつ1分間造粒して湿潤顆粒を得た。湿潤顆粒を小型熱風循環式恒温器(装置名ミニジェットオーブンMO−931W、富山産業株式会社製)に入れて70℃で3時間乾燥した後、目開き710μmの篩で強制篩過して乾燥顆粒6.4gを得た。乾燥顆粒に0.063gのステアリン酸マグネシウムを加えて混合した後、φ11mm、スミ角Rの杵および単発打錠機(型式「No.2B」、株式会社菊水製作所)で打錠し、質量272.7mg、硬度12kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0062】
参考例3
参考例2の方法に準じて、6.0gのTSU−68、0.60gのカルメロースカルシウム、0.064gのステアリン酸マグネシウムより、質量277.75mg、硬度12kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0063】
参考例4
参考例2の方法に準じて、6.0gのTSU−68、0.72gのカルメロースカルシウム、0.066gのステアリン酸マグネシウムより、質量282.8mg、硬度13kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0064】
参考例5
参考例2の方法に準じて、6.0gのTSU−68、0.60gのクロスカルメロースナトリウム、0.064gのステアリン酸マグネシウムより、質量277.75mg、硬度13kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0065】
参考比較例1
参考例1の方法に準じて、6.0gのTSU−68、0.24gの低置換度ヒドロキシプロピルセルロース「L−HPC LH−11」(信越化学工業株式会社製)、0.057gのステアリン酸マグネシウムより、質量262.6mg、硬度13kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0066】
参考比較例2
参考例1の方法に準じて、6.0gのTSU−68、0.60gの低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、0.065gのステアリン酸マグネシウムより、質量277.75mg、硬度12kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0067】
参考比較例3
参考例1の方法に準じて、6.0gのTSU−68、1.2gの低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、0.069gのステアリン酸マグネシウムより、質量303mg、硬度19kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0068】
参考例6
参考例2の方法に準じて、6.0gのTSU−68、0.24gのカルメロースカルシウム、0.060gのステアリン酸マグネシウムより、質量262.6mg、硬度12kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0069】
参考比較例4
参考例2の方法に準じて、6.0gのTSU−68、0.96gのカルメロースカルシウム、0.067gのステアリン酸マグネシウムより、質量292.9mg、硬度13kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0070】
参考比較例5
参考例2の方法に準じて、6.0gのTSU−68、0.24gのクロスポビドン「Kollidon CL」(BASF製)、0.060gのステアリン酸マグネシウムより、質量262.6mg、硬度11kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0071】
参考比較例6
参考例2の方法に準じて、6.0gのTSU−68、0.60gのクロスポビドン、0.066gのステアリン酸マグネシウムより、質量277.75mg、硬度13kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0072】
参考比較例7
参考例2の方法に準じて、6.0gのTSU−68、1.20gのクロスポビドン、0.068gのステアリン酸マグネシウムより、質量303mg、硬度16kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0073】
参考試験例1:崩壊剤の選定
実験方法
対照例1、参考例2〜6及び参考比較例1〜7で得られた試料(対照例1は5カプセル、それ以外は1錠)を用いて第十六改正日本薬局方一般試験法溶出試験法第2法(パドル法)の項に準じ、下記測定条件下で溶出率(%)を評価した。結果を表2に示す。
【0074】
《測定条件》
パドル回転数:50rpm
試験液:0.9%Tween80を含むpH7.5の薄めたMcIlvaine Buffer900mL
測定波長:300nm
【0075】
【表2】
【0076】
表2で示すとおり、参考例2〜6は対照例1に比して同等以上の溶出挙動を示し、参考例2〜5においてはより速い溶出挙動を示した。特に、参考例3及び5においては最も速く溶出した。一方、参考比較例1〜7は対照例1よりも遅い溶出挙動を示した。即ち、製剤が良好な溶出性を示す崩壊剤はカルメロース類であり、それらのTSU−68 100質量部に対する添加割合はそれぞれ4〜14質量部、特に4〜12質量部が適切であると示唆された。
【0077】
参考例7
粉砕した6.0gのTSU−68、0.60gのカルメロースカルシウム及び4.8gの乳糖水和物「Lactochem」(Borculo製)を錠剤粉砕機に入れ、1分間混合した後、精製水5.5gを加えつつ1分間造粒して湿潤顆粒を得た。湿潤顆粒を小型熱風循環式恒温器に入れて70℃で3時間乾燥した後、目開き710μmの篩で強制篩過して乾燥顆粒11.1gを得た。乾燥顆粒に0.111gのステアリン酸マグネシウムを加えて混合した後、φ11mm、スミ角Rの杵および単発打錠機で打錠し、質量479.75mg、硬度13kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0078】
参考例8
参考例7の方法に準じて、6.0gのTSU−68、クロスカルメロースナトリウム0.60g、乳糖水和物「Lactochem」4.8g、ステアリン酸マグネシウム0.108gより、質量479.75mg、硬度13kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0079】
参考例9
参考例7の方法に準じて、TSU−68 6.0g、カルメロースカルシウム0.60g、4.8gのD−マンニトール、0.111gのステアリン酸マグネシウムより、質量479.75mg、硬度13kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0080】
参考例10
参考例7の方法に準じて、6.0gのTSU−68、0.60gのクロスカルメロースナトリウム、4.8gのD−マンニトール、0.111gのステアリン酸マグネシウムより、質量479.75mg、硬度11kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0081】
参考比較例8
参考例7の方法に準じて、6.0gのTSU−68、0.60gのカルメロースカルシウム、4.8gのトウモロコシデンプン「日食コーンスターチW」(日本食品化工株式会社製)、0.107gのステアリン酸マグネシウムより、質量479.75mg、硬度10kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0082】
参考比較例9
参考例7の方法に準じて、6.0gのTSU−68 、0.60gのクロスカルメロースナトリウム、4.8gのトウモロコシデンプン、0.109gのステアリン酸マグネシウムより、質量479.75mg、硬度12kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0083】
参考比較例10
参考例7の方法に準じて、6.0gのTSU−68、0.60gのカルメロースカルシウム、4.8gの結晶セルロース(商品名Avicel PH301、旭化成工業株式会社製)、0.110gのステアリン酸マグネシウムより、質量479.75mg、硬度8kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0084】
参考比較例11
参考例7の方法に準じて、6.0gのTSU−68、0.60gのクロスカルメロースナトリウム、4.8gの結晶セルロース、0.108gのステアリン酸マグネシウムより、質量479.75mg、硬度8kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0085】
参考比較例12
参考例6の方法に準じて、6.0gのTSU−68、0.60gのカルメロースカルシウム、4.8gの部分アルファー化デンプン(商品名PCS、旭化成工業株式会社製)、0.110gのステアリン酸マグネシウムより、質量479.75mg、硬度11kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0086】
参考比較例13
参考例6の方法に準じて、6.0gのTSU−68、0.60gのクロスカルメロースナトリウム、4.8gの部分アルファー化デンプン、0.105gのステアリン酸マグネシウムより、質量479.75mg、硬度13kpとなるような錠剤(素錠)を得た。
【0087】
参考試験例2:賦形剤の選定
実験方法
対照例1、参考例7〜10及び参考比較例8〜13で得られた試料(対照例1は5カプセル、それ以外は1錠)を用いて第十六改正日本薬局方一般試験法溶出試験法第2法(パドル法)の項に準じ、下記測定条件下で溶出率(%)を評価した。結果を表3に示す。
【0088】
《測定条件》
パドル回転数:50rpm
試験液:0.9%Tween80を含むpH7.5の薄めたMcIlvaine Buffer900mL
測定波長:300nm
【0089】
【表3】
【0090】
表3で示すとおり、参考例7〜10は対照例1よりも速い溶出挙動を示した。一方、参考比較例8は対照例1とほぼ同等の溶出挙動を示したが、参考比較例9〜13は対照例1よりも遅い溶出挙動を示した。即ち、製剤が良好な溶出性を示す賦形剤は、乳糖水和物及びD−マンニトールであることが示唆された。
【0091】
参考試験例3:結合剤を添加することによる溶出性の低下
TSU−68(AWD製)200質量部、D−マンニトール180質量部、カルメロースカルシウム20質量部及び以下に示す結合剤を攪拌造粒し、得られた顆粒にステアリン酸マグネシウム4質量部を加えて混合し、打錠することにより錠剤を製した。得られた錠剤について第十六改正日本薬局方一般試験法溶出試験法第2法(パドル法)の項に準じ、下記測定条件下で溶出率(%)を算出し、対照例1と溶出挙動を比較することにより評価した。
【0092】
結合剤
ポビドン「Kollidon 30」(BASF製):4、8、16質量部
ラウリル硫酸ナトリウム(日光ケミカルズ株式会社製):16質量部
マクロゴール6000「PEG6000P」(日本油脂株式会社製):6、12、32質量部
デキストリン「パインデックス#1」(松谷化学工業株式会社製):6、12、40質量部
精製白糖「グラニュー糖EA」(塩水港精糖株式会社製):40質量部
【0093】
《測定条件》
パドル回転数:50rpm
試験液:0.9%Tween80を含むpH7.5の薄めたMcIlvaine Buffer900mL
測定波長:324nm
【0094】
【表4】
【0095】
マクロゴール6000、デキストリンを6質量部添加した錠剤は結合剤無添加のものとほぼ同等の溶出挙動を示したが、その他の結合剤添加品は無添加のものよりも遅い溶出挙動を示した。従って、TSU−68製剤は溶出性の観点から結合剤に対する感受性が極めて高く、結合剤の添加により溶出速度が遅延することが示唆された。
【0096】
参考試験例4:界面活性剤添加による類縁物質の増加について
2.0gのTSU−68(Raylo Chemicals Inc.製)と2.0gのラウリル硫酸ナトリウム(日光ケミカルズ株式会社製)とを乳鉢で混合し、混合試料を得た。TSU−68単独及び混合試料をそれぞれ開封したガラス管瓶に入れ、恒温恒湿器(型式「LH−20型」、株式会社ナガノ科学製)で60℃80%RHの環境下で10日間保存し、劣化品を得た。それぞれの劣化品について液体クロマトグラフ法により類縁物質量を測定した結果、保持時間13分付近の類縁物質のピークがTSU−68単独の劣化品は0.09%であるのに対し、混合試料の劣化品は0.34%であり、明らかな増加が認められた。従って、ラウリル硫酸ナトリウムは、TSU−68製剤への使用を避けることが適当であると考えられた。
【0097】
参考試験例5:ステアリン酸マグネシウムの添加量について
TSU−68(AWD製)200質量部、D−マンニトール180質量部及びカルメロースカルシウム20質量部を撹拌造粒し、得られた顆粒にステアリン酸マグネシウムを4質量部、もしくは8質量部、もしくは12質量部を加えて混合し、打錠することにより錠剤を製した。得られたそれぞれの錠剤について60℃80%RHの環境下で10日間保存し、それらの錠剤を用いて第十六改正日本薬局方一般試験法溶出試験法第2法(パドル法)の項に準じ、下記測定条件下で溶出率(%)を算出し、参考例2と溶出挙動を比較することにより評価した。また、錠剤厚み、硬度、摩損度についても評価した。
【0098】
《測定条件》
パドル回転数:50rpm
試験液:0.9%Tween80を含むpH7.5の薄めたMcIlvaine Buffer900mL
測定波長:300nm
【0099】
【表5】
【0100】
いずれの錠剤も対照例1に比して溶出挙動は速かったが、ステアリン酸マグネシウム添加量の増加に伴い、加湿条件(60℃80%RH)における溶出速度が低下する傾向が認められた。従って、ステアリン酸マグネシウムの添加量は、溶出性の経時変化に影響を及ぼすと考えられ、それを考慮すると全量に対して2%以下の添加量が適切であることが示唆された。