【解決手段】テーブル35が回転するB軸の軸線が直線送り軸に対して傾斜している工作機械であって、テーブル35に配置されたワークの質量を推定するワーク質量推定部と、ワーク質量推定部により推定された質量に基づいてワークをテーブル35に配置したときのB軸の軸線の誤差を算出する誤差算出部と、誤差算出部により算出された誤差データを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された誤差データに基づいてB軸の軸線を補正する補正部とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から
図6を参照して、実施の形態における工作機械について説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態における工作機械の概略斜視図である。
図2は、工作機械の移動体の部分の概略側面図である。
図1および
図2を参照して、工作機械11は、基台となるベッド13と、ベッド13の上面に立設されたコラム15とを備える。ベッド13の上面には、移動体27が配置されている。移動体27は、傾斜旋回台28を介してテーブル35を支持している。テーブル35の上面には、ワーク10が固定される。
【0012】
コラム15の前面には、サドル17が配置されている。さらに、サドル17の前面には、主軸ヘッド21が配置されている。主軸ヘッド21には主軸25が取り付けられている。主軸25には、ワーク10を加工する工具が取り付けられる。工具は、主軸25と共に回転しながらワーク10を加工する。
【0013】
本実施の形態における工作機械11は、ワーク10の加工の期間中に工具とワーク10との相対位置を変更する移動装置を備えている。本実施の形態においては、工作機械における所定の位置を原点とした機械座標系が設定されている。機械座標系について互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が予め定められている。本実施の形態においては、工作機械の設計時に、主軸25が移動する方向に延びる軸をZ軸と称する。また、移動体27が移動する方向に延びる軸をY軸と称する。また、Z軸およびY軸に垂直な方向に延びる軸をX軸と称する。
【0014】
移動装置は、直線送り軸としてのX軸、Y軸およびZ軸に沿って工具とワーク10とを相対的に移動させることができる。さらに、移動装置は、B軸の軸線52の周りの回転送り軸、およびC軸の軸線53の周りの回転送り軸に沿って工具に対してワーク10を相対的に回転移動させることができる。
【0015】
移動装置は、ワーク10に対して工具をX軸方向に相対移動させるX軸移動装置を含む。X軸移動装置は、コラム15の前面に形成されている一対のX軸レール19a,19bを含む。サドル17は、X軸レール19a,19bに沿って往復移動が可能に形成されている。X軸移動装置は、ボールねじ機構によりサドル17を移動する。X軸移動装置は、ボールねじ機構のねじ軸を回転させるX軸サーボモータ20を含む。X軸移動装置は、X軸サーボモータ20を駆動することにより、サドル17を移動させる。主軸ヘッド21および工具は、サドル17と共にX軸方向に移動する。
【0016】
移動装置は、ワーク10に対して工具をZ軸方向に相対移動させるZ軸移動装置を含む。Z軸移動装置は、サドル17の前面に形成されている一対のZ軸レール23a,23bを含む。主軸ヘッド21は、Z軸レール23a,23bに沿って往復移動が可能に形成されている。Z軸移動装置は、ボールねじ機構により主軸ヘッド21を移動する。Z軸移動装置は、ボールねじ機構のねじ軸を回転させるZ軸サーボモータ24を含む。Z軸移動装置は、Z軸サーボモータ24を駆動することにより、主軸ヘッド21を移動させる。工具は、主軸ヘッド21と共にZ軸方向に移動する。更に、主軸ヘッド21の内部には、主軸25を軸周りに回転する駆動モータが配置されている。
【0017】
移動装置は、ワーク10に対して工具をY軸方向に相対移動させるY軸移動装置を含む。Y軸移動装置は、ベッド13の上面に配置されている一対のY軸レール29a,29bを含む。移動体27は、Y軸レール29a,29bに沿って往復移動が可能に形成されている。コラム15には、移動体27がY軸方向に移動可能なように空洞部15aが形成されている。Y軸移動装置は、ボールねじ機構により移動体27を移動させる。Y軸移動装置は、ボールねじ機構のねじ軸を回転させるY軸サーボモータを含む。Y軸移動装置は、Y軸サーボモータを駆動することにより、移動体27を移動させる。傾斜旋回台28およびテーブル35は、移動体27と共にY軸方向に移動する。
【0018】
移動装置は、ワーク10に対して工具をB軸方向に相対的に回転させるB軸回転移動装置を含む。本実施の形態におけるB軸の軸線52は、X軸、Y軸およびZ軸のいずれの軸とも平行ではない。すなわち、B軸の軸線52の回転軸は、3つの直動軸のそれぞれの軸に対して傾斜している。B軸回転移動装置は、傾斜旋回台28を含む。移動体27の内部には、傾斜旋回台28を回転させるためのサーボモータが配置されている。傾斜旋回台28を回転させるサーボモータを駆動することにより、B軸の軸線52の周りに傾斜旋回台28が回転する。ワーク10は、傾斜旋回台28およびテーブル35と共にB軸方向に回転する。
【0019】
本実施の形態における移動装置は、ワーク10に対して工具をC軸方向に相対的に回転させるC軸回転移動装置を含む。C軸の軸線53は、B軸方向の回転位置のうち所定の位置においてZ軸と平行になるように設計されている。C軸回転移動装置は、テーブル35を含む。テーブル35の内部にはサーボモータが配置されている。テーブル35のサーボモータを駆動することにより、C軸の軸線53の周りにテーブル35が回転する。ワーク10は、テーブル35と共にC軸方向に回転する。
【0020】
このように、工作機械11は、ワーク10に対して主軸が相対的に移動する3つの直動軸を有する。すなわち、工作機械11は、直動軸としてのX軸、Y軸およびX軸を有する。また、工作機械11は、ワーク10に対して主軸25が相対的に回転移動する複数の回転軸を有する。工作機械11は、第1回転軸としてのB軸の軸線52および第2回転軸としてのC軸の軸線53を有する。本実施の形態では、第1回転方向をB軸方向とし、第2回転方向をC軸方向として説明する。また、第1軸線をB軸の軸線52とし、第2軸線をC軸の軸線53として説明する。
【0021】
本実施の形態における工作機械は、数値制御装置70を備える。数値制御装置70は、移動装置のサーボモータや駆動モータに接続されている。数値制御装置70は、移動装置のサーボモータを制御することによりワーク10に対して工具を相対的に移動させることができる。
【0022】
工作機械11は、それぞれの回転軸に関する回転角度が例えば0°の時に、テーブル35の表面が機械座標系のX軸とY軸とを含む平面、すなわちXY平面と厳密に平行な状態になるように設計される。しかしながら、2つの回転軸に関する回転角度が0°の時にも、製造時の製造誤差等によりテーブル35の表面がXY平面に対して傾いている場合がある。
【0023】
図3に、B軸の軸線およびC軸の軸線を説明する概略図を示す。テーブル35は、C軸方向の回転中心Ccの周りに回転する。また、テーブル35は、矢印103に示すようにB軸方向に回転する。
図2および
図3を参照して、本実施の形態の工作機械11は、製造誤差等による回転軸の傾きを加工前に調整する調整手段として角度調整装置を備える。角度調整装置は、ベッド13に対する移動体27の傾きを調整可能に形成されている。本実施の形態においては、Y軸およびZ軸を含むYZ平面に対して、B軸の軸線52およびC軸の軸線53が平行に延びるように、移動体27の傾きが予め調整されている。
【0024】
基準平面61は、X軸とY軸とを含むXY平面に平行な平面である。角度調整装置による調整を行った後も、B軸の軸線52およびC軸の軸線53は、設計値からのずれが残る場合がある。工作機械は、B軸の軸線52とC軸の軸線53とが交わるように設計される。ところが、製造誤差等により、B軸の軸線52とC軸の軸線53とは僅かに離れている場合がある。すなわち、B軸の軸線52の位置を示すB軸中心QとC軸の軸線53の位置を示すC軸中心Rとについても、設計値からずれる場合がある。この場合には、B軸の軸線52とC軸の軸線53とが交わらずに、ねじれの関係になっている。また、基準平面61に対するB軸の軸線52の傾き角度α、および基準平面61に対するC軸の軸線53の傾き角度βも設計値から僅かにずれる場合がある。
【0025】
本実施の形態では、B軸中心QおよびC軸中心Rは、B軸の軸線52とC軸の軸線53とが最も接近する位置に設定している。B軸の軸線52およびC軸の軸線53はYZ平面に平行に延びているために、B軸中心QのY座標とC軸中心RのY座標は等しくなる。また、B軸中心QのZ座標とC軸中心RのZ座標とは等しくなる。すなわち、B軸の軸線52とC軸の軸線53とをYZ平面に投影したときの交点のY座標およびZ座標は、B軸中心QおよびC軸中心Rに関するY座標およびZ座標になる。
【0026】
本実施の形態においては、2つの回転軸の測定を事前に行っている。この事前の測定により、ワーク10を配置していないときの傾き角度α,βが予め知られている。また、2つの回転軸の位置も事前に測定されている。すなわち、B軸中心Qの機械座標系における座標(Cxb,Cy,Cz)およびC軸中心Rの機械座標系における座標(Cxc,Cy,Cz)が予め測定されている。
【0027】
ところで、テーブル35の表面にワーク10が配置されることにより、ワーク10の質量によりテーブル35が僅かに傾く場合がある。すなわち、B軸の軸線52およびC軸の軸線53は、ワーク10が配置されると僅かに傾く場合がある。ワーク10を配置することにより、B軸の軸線52は、矢印101に示すように僅かに移動し、また、C軸の軸線53は矢印102に示すように僅かに移動する。
【0028】
本実施の形態の工作機械11は、ワーク10をテーブル35に配置したときのB軸の軸線52の傾き角度の誤差を算出する。また、C軸の軸線53の傾き角度の誤差を算出する。本実施の形態においては、ワーク10をテーブル35に配置する前後のB軸の軸線52の傾き角度の変化量Δαと、C軸の軸線53の傾き角度の変化量Δβとを算出する。そして、変化量Δα,Δβに基づいて、それぞれの回転軸の回転軸中心と傾き角度とを補正する。補正した回転軸中心と傾き角度とに基づいて工具経路を算出する。
【0029】
工作機械11は、このような回転軸の測定を行う測定制御を実施可能に形成されている。また、工作機械11は、回転軸の測定制御の結果に基づいて、ワーク10の加工を行う加工制御を実施可能に形成されている。
【0030】
図4に、回転軸の測定を行う測定制御のフローチャートを示す。本実施の形態の測定制御は、ワーク10を加工する前にワーク10をテーブル35に配置した状態にて実施することができる。
【0031】
工作機械11は、始めにワーク10の質量を推定する。工作機械11は、移動体27をY軸方向に移動し、このときのY軸サーボモータのトルクと回転速度とを取得する。次に、Y軸サーボモータのトルクのモデル式に基づいて、Y軸サーボモータの軸換算の全体のイナーシャを推定する。算出した全体のイナーシャから移動体27等のイナーシャを減算することによりワーク10のイナーシャを算出する。次に、ワーク10のイナーシャに基づいてワーク10の質量を推定する。
【0032】
ステップ111においては、Y軸方向の移動体27の移動を開始する。Y軸移動装置により、Y軸方向に移動体27を往復させる。本実施の形態では、1回の往復運動を行っているが、この形態に限られず、一方向の移動のみを行っても構わない。または、複数回の移動を行っても構わない。
【0033】
ステップ112においては、移動体27が移動している期間中のY軸サーボモータのトルクと回転速度とを取得する。予め定められた時間間隔ごとにY軸サーボモータのトルクと回転速度とを取得する。本実施の形態では、Y軸サーボモータのトルクに対応するY軸サーボモータの電流値を取得する。Y軸サーボモータの回転速度は、例えばY軸移動装置に配置された回転数測定器により取得することができる。
【0034】
ステップ113においては、移動体27がY軸方向に往復した後に移動体27の移動を終了する。また、Y軸サーボモータのトルクおよび回転速度の取得を終了する。
【0035】
次に、ステップ114においては、全体イナーシャJを算出する。全体イナーシャJには、Y軸サーボモータのロータ、Y軸サーボモータから移動体27までのボールねじ等の動力伝達機構、移動体27、傾斜旋回台28、テーブル35、およびワーク10を含む構成品のイナーシャが含まれる。全体のイナーシャJとY軸サーボモータのトルクとの関係は次式により表すことができる。
【0037】
ここで、Y軸サーボモータの電流値に基づいて全体のトルクτを取得することができる。また、Y軸サーボモータの回転速度に基づいて角速度Vおよび角加速度aを算出することができる。速度方向を示す単位ベクトルUは、移動体27がY軸方向の一方の向きに移動するときに正の値になり、他方の向きに移動するときに負の値になる。移動体27のY軸方向の往復移動の期間中に取得されるそれぞれの変数は次式のように表すことができる。
【0039】
このように、複数のトルクτの値、複数の角速度Vの値、複数の角加速度aの値、および速度方向を示す単位ベクトルUを取得することができる。次に、式(2−1)に示されるトルクτnと、式(2−2)、式(2−3)および式(2−4)に示される変数を式(1−1)に代入して得られるトルクτとの差の二乗和が最小となるように、全体のイナーシャJ、粘性係数D、およびクーロン摩擦Fを算出する。すなわち、最小二乗法により、これらの変数の算出を行う。このように、全体のイナーシャJを算出することができる。
【0040】
次に、ステップ115においては、ワーク10の質量Wを算出する。本実施の形態では、全体のイナーシャJに基づいて、ワーク10のイナーシャJwを次式により算出する。更に、ワーク10のイナーシャJwに基づいて、ワーク10の質量Wを次式により算出する。
【0042】
ここで、Y軸サーボモータのロータ、ボールねじ、移動体27、傾斜旋回台28、テーブル35等のワーク10以外のイナーシャJeは、予め実験等により求めておくことができる。全体のイナーシャJから移動体27等を含むイナーシャJeを減算することにより、ワーク10のイナーシャJwを算出することができる。また、換算係数Kwを用いて、ワークの質量Wを算出することができる。換算係数Kwは、工作機械の特性により定まる定数であり、実験等により予め定めておくことができる。
【0043】
次に、ステップ116においては、回転軸の傾き角度の変化量を算出する。B軸の軸線52の傾き角度の変化量ΔαおよびC軸の軸線53の傾き角度の変化量Δβは、次式で表すことができる。
【0045】
ここで、ワーク10の質量Wに基づいてB軸の軸線52の傾き角度の変化量Δαを算出するための変換係数Kαと、ワーク10の質量Wに基づいてC軸の軸線53の傾き角度の変化量Δβを算出するための変換係数Kβは、予め設定しておくことができる。これらの換算係数Kα,Kβを用いることにより、それぞれの回転軸の変化量を算出することができる。すなわち、それぞれの回転軸の傾き角度の誤差を算出することができる。上記の式(4−1)および式(4−2)に示されるように、ワーク10の質量Wが大きいほど回転軸の傾き角度の誤差が大きくなる。
【0046】
次に、ステップ117においては、算出した回転軸の変化量に基づいて回転軸の傾き角度および位置を補正する。補正後のB軸の軸線52の傾き角度α ’および補正後のC軸の軸線53の傾き角度β’は、次式になる。
【0048】
次に、B軸の軸線52のB軸中心QおよびC軸の軸線53のC軸中心Rを補正する。すなわち、補正後の回転軸の位置を算出する。
【0049】
ここで、
図2を参照して、B軸の軸線52は、傾斜旋回台28の回転軸に相当する。また、C軸の軸線53は、テーブル35の回転軸に相当する。本実施の形態における2つの回転軸は、互いに延びる方向が異なる。このために、テーブル35にワーク10が配置されてテーブル35が傾いた場合には、互いに異なる回転中心点により、個別に回転軸が回転すると考えられる。ところが、発明者らは、互いに異なる2つの回転軸の回転中心点を単一の点としても、充分な精度が得られることを見出した。すなわち、B軸の軸線52が傾く回転中心点およびC軸の軸線53が傾く回転中心点を、共通の回転中心点ROとした場合にも、充分な加工精度が得られることを見出した。
【0050】
共通の回転中心点ROとしては、B軸中心Qが回転する時の回転中心を採用することができる。このような共通の回転中心ROは、コンピューターによる解析により理論上の点を設定することができる。または、回転中心ROは、実験的に予め定めておくことができる。本実施の形態においては、B軸の軸線52の回転中心点ROを予め設定し、C軸の軸線53についても、ワーク10がテーブル35に配置された時に回転中心点ROを中心に回転するとしている。補正後の回転軸中心点のY座標およびZ座標は、回転行列を用いると次式になる。なお、ワーク10をテーブル35に配置にする前のB軸中心QのY座標をCyとし、Z座標をCzとしている。
【0052】
上記の式(6−1)および式(6−2)により、補正後のB軸中心Q’のY座標およびZ座標と、補正後のC軸中心R’のY座標およびZ座標は次式になる。なお、補正後のB軸中心Q’のX座標はCxbとなり、補正後のC軸中心R’のX座標はCxcとなり、それぞれが補正前のX座標と等しくなる。
【0054】
なお、上記の式(6−2)、式(7−3)および式(7−4)においては、補正後のB軸中心Q’に対するC軸中心R’のオフセット(相対位置)を算出している。オフセットは、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれについて算出される。本実施の形態においては、B軸中心QおよびC軸中心RのY座標およびZ座標を、2つの回転軸をYZ平面に投影したときの交点のY座標およびZ座標としている。このために、本実施の形態では補正前および補正後において、B軸中心に対するC軸中心のオフセットは零になる。
【0055】
上記のように、ワーク10をテーブル35に配置したときの2つの回転軸の傾き角度および回転軸中心を算出することができる。上記の測定制御においては、回転軸の傾き角度の誤差に基づいて補正後の回転軸中心を算出しているが、この形態に限られず、回転軸の傾き角度の誤差に基づいて、回転軸中心の誤差を算出し、回転軸中心の誤差に基づいて補正後の回転軸中心を算出しても構わない。加工制御では、補正後の回転軸の傾き角度および補正後の回転軸中心に基づいて、各軸のサーボモータの指令値を算出することができる。
【0056】
図5に、本実施の形態における工作機械のブロック図を示す。本実施の形態においては、回転軸の誤差を計測する測定制御の入力プログラムは、予め作成されており、数値制御装置70に記憶されている。なお、測定制御のプログラムについても使用者が作成し、入力プログラム71に入力しても構わない。
【0057】
測定制御においては、使用者は、表示装置76に表示の所定のボタンを押すことにより測定制御の開始を指令する。数値制御装置70は、ワーク質量推定部77を含む。ワーク質量推定部77は、Y軸方向に移動体27を移動させるようにサーボモータ制御部74に動作指令を送出する。サーボモータ制御部74は、受信した動作指令値に基づいて各軸サーボモータ75を駆動する。測定制御では、Y軸サーボモータを駆動する。また、ワーク質量推定部77は、Y軸サーボモータの電流値および回転速度を取得し、テーブル35に配置されたワーク10の質量Wを推定する。
【0058】
数値制御装置70は、誤差算出部78を含む。誤差算出部78は、ワーク質量推定部77により推定されたワークの質量Wに基づいて回転軸の誤差データを算出する。本実施の形態の誤差算出部78は、B軸の軸線52の傾き角度の変化量ΔαおよびC軸の軸線53の傾き角度の変化量Δβを算出する。
【0059】
数値制御装置70は、誤差算出部78により算出された誤差データを記憶する記憶部79を含む。記憶部79は、B軸の軸線52の傾き角度の誤差およびC軸の軸線53の傾き角度の誤差に加えて、推定したワーク10の質量を記憶する。そして、ワーク質量推定部77によって推定されたワーク10の質量、および誤差算出部78により算出された誤差データは、表示装置76により確認することができる。
【0060】
ワーク10を加工する加工制御を実施する場合には、使用者は、加工制御のための入力プログラム71を作成する。入力プログラム71には、加工制御のプログラムおよび他の入力情報が入力される。他の入力情報には、工具の情報等の機械パラメータが含まれる。
【0061】
数値制御装置70は、読取解釈部72、補間演算部73、およびサーボモータ制御部74を含む。読取解釈部72は、入力プログラム71を読み込んで、移動指令を補間演算部73に送出する。補間演算部73は、補間周期毎の位置指令値を演算し、位置指令値をサーボモータ制御部74に送出する。補間演算部73は、移動指令に基づいて設定された時間間隔ごとの移動量を算出する。サーボモータ制御部74は、位置指令に基づいて各軸の位置を算出し、各軸サーボモータ75を駆動する。
【0062】
読取解釈部72は、入力プログラムに回転軸周りの移動が含まれている場合には、補正部80に入力プログラム71を送出する。補正部80は、入力プログラム71に加えて記憶部79に記憶された回転軸の傾き誤差を読み込む。補正部80は、読み込んだ誤差データに基づいて、補正後の回転軸の傾き角度および位置を算出する。補正部80は、補正後の回転軸の傾き角度および位置に基づいて移動指令を作成し、移動指令を補間演算部73に送出する。
【0063】
数値制御装置は、ワーク10をテーブル35に配置した後の補正後の回転軸の回転軸中心と傾き角度とに基づいて、各軸のサーボモータを制御するための移動指令値を算出することができる。補正後の回転軸の傾き角度および回転軸中心を用いて各軸の移動を制御することにより、高精度でワークを加工することができる。なお、加工制御においては、補正前の回転軸中心と傾き角度とに基づいて各軸のサーボモータを制御する移動指令値を算出し、各軸のサーボモータを制御する移動指令値を誤差データに基づいて補正しても構わない。
【0064】
ところで、工作機械11は、それぞれのワーク10の質量Wを推定することができる。これらの推定した質量は、記憶部79に記憶されており、表示装置76にて表示させることができる。本実施の形態の表示装置は、ワーク10を加工する前および加工している期間中に、テーブル35に配置されているワーク10が所望のワーク10であるか否かを判別する確認画面を表示する。
【0065】
図6に、ワークの情報を表示する確認画面の例を示す。それぞれのワーク10は、パレットと共に搬送装置から工作機械11に搬送され、パレットと共にテーブル35に配置される。本実施の形態ではワーク10の質量の範囲が予め定められている。ワーク10の質量を予め定められた複数の領域に分割し、分割した質量の領域に番号が割り当てられている。例えば、テーブル35の最大積載質量が500kgであり、5段階にて質量の領域を分割する場合には、0kg以上100kg未満の質量の領域を表示番号「1」と定め、100kg以上200kg未満の質量の領域を表示番号「2」と定める。その他の領域も同様に、質量の領域の番号「1」から「5」までを予め設定しておくことができる。確認画面では、それぞれのワーク10ごとに、質量の領域の番号を表示する。
【0066】
本実施の形態の確認画面では、推定した質量でなく、質量の領域の数字、すなわち質量バンドの数字にて表示している。最も左のパレット名の欄において、「テーブル(パレット1)」の表示は、パレット1に保持されているワークがテーブルに配置されていることを示す。質量バンドの欄においては、ワークの質量が番号4の領域であることを示す。パレット名の欄において、単に「パレット2」と表記されているワークおよび「パレット3」と表記されているワークは、搬送装置に配置されていることを示している。
【0067】
本実施の形態の表示装置は、質量の領域を示す番号にてテーブル35に配置されているワーク10が加工対象のワーク10であるか否かを確認する。使用者は、質量の領域を示す番号により、ワーク10の大きさを想像することができる。大きさの異なるワーク10がテーブル35に配置されていることを容易に判別することができる。例えば、
図6に示すように、テーブル35に配置されているワークの質量バンドが番号4であるにも関わらず、テーブル35に非常に小さなワークが配置されている場合には、テーブル35に載置されているワークが所望のワークと異なると容易に判別することができる。
【0068】
表示装置は、実際の単位で質量を表示することが可能である。ところが、たとえば、テーブル35の最大積載質量が大きくなると、大きな数字が表示され、実際の単位で質量が表示されてもワークの判別が難しいという問題がある。ワークの質量を複数の領域に分割した記号にて表示することにより、実際に加工されるワークが所望のワークであるか否かを容易に判別することができる。なお、質量の領域を示す記号としては、番号に限られず、任意の記号を表示することができる。たとえば、記号には、大型、中型および小型等の単語を含んで表示しても構わない。
【0069】
本実施の形態の加工制御は、少なくとも1つの回転軸にてワークに対する工具の相対位置を変更する工作機械の制御に適用することができる。このような加工制御としては、工具先端点制御を例示することができる。工具先端点制御では、ワークの所定の位置を原点とし、この原点に対する工具の先端の位置を示した座標系を用いる。使用者は、入力プログラムとして、工具の長さ等の工具の情報と、ワーク上の原点に対する工具の相対位置とを入力する。たとえば、使用者は、ワークに対する工具の傾きおよびワークに対する工具の先端の位置を入力する。数値制御装置は、入力プログラムに基づいて各軸の移動量を算出し、各軸サーボモータを駆動する。工具先端点制御では、使用者がテーブルや主軸の機械座標系の位置を入力する必要がなく、容易に入力プログラムを作成することができる。
【0070】
このような工具先端点制御を実施するためには、回転軸中心および回転軸の傾き角度が必要になる。本実施の形態においては、測定制御において算出した回転軸中心および傾き角度を用いて工具先端点制御を実施することができる。実際に検出した回転軸の情報を用いるために、高精度の加工を行うことができる。また、その他の加工制御としては、傾斜面加工指令および切削点指令等を例示することができる。
【0071】
本実施の形態においては、複数の回転軸を有する工作機械を例示して説明したが、この形態に限られず、回転軸が1つの工作機械に対しても、本発明を適用することができる。
【0072】
上述のそれぞれの制御においては、機能および作用が変更されない範囲において適宜ステップの順序を変更することができる。上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に示される形態の変更が含まれている。