【実施例】
【0022】
以下、
図1〜
図6を参照して本発明の具体的実施形態について説明する。本発明の転写具1は、基本構成として、本体2、筐体3、操作体4とを備えている。以下、これら本体2、筐体3、操作体4の個別構成を説明し、その後、構成の関連性について説明する。構成の説明の後、動作について説明する。
【0023】
本体2は、
図3(a)に示すように、対向状に設けられた基板2A,2Bに、基材に転写媒体が塗布された転写テープが巻装された送出軸部2aと、転写テープのうちの転写媒体が被転写体へ転写された後の基材を巻き取る巻取軸部2bと、これら送出軸部2aと巻取軸部2bの各々に設けられた駆動ギヤ2c(総称)と、転写テープの転写媒体を被転写体Sへ転写する転写部2dと、を備えた本体2を備えている。
【0024】
基板2Aにおいて、その表面には、送出軸部2a及び巻取軸部2bの軸芯を挟んで、転写部2dの位置する方向(以下、転写部方向という)と、この反対方向(以下、反転写部方向という)へ延びる2本の平行なガイドリブ2Aa,2Aaが形成されている。このガイドリブ2Aa,2Aa間で、送出軸部2a側の巻装径内の位置には、直交状に移動当接部2Abが形成されている。
【0025】
また、ガイドリブ2Aa,2Aaの互いの外側で、送出軸部2a側の巻装径内の位置には、それぞれ反転写部方向の端部が斜め上方に傾斜した弾性スライド部2Acが形成されている。この弾性スライド部2Acは、自然時に
図3(a)に示すように反転写部方向の端部が斜め上方に傾斜した状態とされる。弾性スライド部2Acは、斜面に基板2B方向(下方)への押圧力がかかると略水平状に弾性変形する。
【0026】
さらに、ガイドリブ2Aa,2Aaの互いの外側で、巻取軸部2b側の巻装径内の位置には、該ガイドリブ2Aa,2Aaと水平状に所定間隔を存して挿入当接部2Adが形成されている。
【0027】
筐体3は、
図3(b)に示す側と、図示しない側とで2分割されており、一体とした場合に、本体2の転写部2d部分が出入する開口3Aが形成されている。なお、図示しない側の筐体3は、転写具1としての機能上の必要構成は有するが、本発明での特徴的構成は設けられていないので、図示と共に説明を省略する。
【0028】
筐体3は、本体2の弾性スライド部2Ac,2Acの外側(対向面と反対の面)に対応する部位に、転写部方向−反転写部方向に向けて平行な壁面3aが形成されている。この壁面3aの対向部位には、それぞれ転写部方向の端部に段部3bを有したガイド3cが形成されている。ガイド3cの反転写部方向の端部には、当接部3dが形成されている。
【0029】
また、筐体3は、上記ガイド3c,3cの対向間で、送出軸部2aと巻取軸部2bの軸と直交する面に、表裏を貫通する長円状の窓部3eが形成されている。この窓部3eが形成された位置からさらに反転写部方向には係合凹部3fが形成されている。
【0030】
操作体4は、
図4に示す構成とされている。操作体4は、長手方向(転写部方向−反転写部方向)の全長が筐体3内に完全に収納される大きさとされ、
図4(a)に示す表面側が
図3(b)に示した筐体3のガイド3c等が形成された面に、
図4(b)に示す裏面側が
図3(a)に示した本体2の弾性スライド部2Ac等が形成された面に、それぞれ臨むよう配置される。
【0031】
図4(a)に示す操作体4の表面側の略中央には、筐体3の窓部3eから覗く操作ボタン4aが形成されている。操作体4の反転写部方向(紙面右側)の端部には、転写部方向に平行な切欠きを介してストッパ4bが形成されている。このストッパ4bは上記切欠きにより上下(表裏方向)に弾性変形する。ストッパ4bの表面部位には、ボス4cが形成されている。
【0032】
操作体4の長手側部には、転写部方向(紙面左側)から、挿入操作リブ4dと、突出操作リブ4eが、転写部方向と直交状に両側へ突出した状態で設けられている。挿入操作リブ4d,4dは操作体4の転写部方向のほぼ先端部位に、突出操作リブ4e,4eは操作体4の転写部方向−反転写部方向の長さの略中央部位に、それぞれ設けられている。また、突出操作リブ4e、4eの表面には凹部4f,4fがそれぞれ形成されている。
【0033】
図4(b)に示す操作体4の裏面は、幅方向の中央部に凹溝4gが形成されており、凹溝4g(操作体4)における転写部方向の先端部(紙面左側)には当接体4hが形成されている。
【0034】
次に本体2、筐体3、操作体4の主要各部に対する配置関係について
図1及び
図2を用いて説明する。なお、部材の重なりの関係で図示していない説明もある。筐体3の壁面3a間でガイド3cには、本体2の弾性スライド部2Acの上面が当接しつつ移動する。また、筐体3の段部3bには、後述する転写部2dが筐体から突出状態にある弾性スライド部2Acの反転写部方向の端部が当接する。
【0035】
操作体4の操作ボタン4aは筐体3の窓部3eから露出し、ボス4cは転写部2dが筐体に挿入状態にある係合凹部3fに嵌入する。また、操作体4の凹溝4gには、本体2のガイドリブ2Aaが挿入される。操作体4の当接体4hは、転写部2dが筐体に挿入する時に本体2の移動当接部2Abと当接する。
【0036】
操作体4の挿入操作リブ4dは、操作体4の転写部方向、反転写部方向、の操作方向に伴って、弾性スライド部2Acの転写部方向側で移動する。そして、転写部2dが筐体に挿入する時、挿入操作リブ4dは、弾性スライド部2Acの傾斜を乗り上げつつ、該弾性スライド部2Acの上面を基板2Aと水平に近い状態に押し付けて弾性変形させ、転写部2dが筐体から突出する時、挿入操作リブ4dは、前記の逆で弾性スライド部2Acの上面を下りつつ、該弾性スライド部2Acの押し付けを解除して弾性復元させる。
【0037】
操作体4の突出操作リブ4eは、操作体4の転写部方向、反転写部方向、の操作方向に伴って、本体2の弾性スライド部2Acと挿入当接部2Adとの間で移動する。そして、転写部2dが筐体へ挿入する時、突出操作リブ4eは、挿入当接部2Adと当接し、転写部2dが筐体から突出する時、突出操作リブ4eは、後述するように遷移し、最終的に弾性スライド部2Acの反転写部方向の端部の下部に位置し、弾性スライド部2Acの反転写部方向の端部下部が突出操作リブ4eの凹部4fに係合する。
【0038】
上記構成の転写具1の動作について
図5、
図6を参照して説明する。
図5(a)〜(d)は順に本体2が筐体3内に挿入した状態から、突出した状態に至る状況を示している。
図5(a)は、本体2が筐体3内に完全に挿入した状態を示している。このとき、操作体4の操作ボタン4aは、筐体3の窓部3bの反転写部方向の端部に位置し、操作体4のストッパ4bのボス4cが、筐体3の係合凹部3fに嵌合している。また、本体2の挿入当接部2Adが筐体3の当接部3dと当接している。
【0039】
さらに、操作体4の突出操作リブ4eは本体2においてガイドリブ2Aaに当接し、弾性スライド部2Acから反転写部方向に離間した位置にある。操作体4の挿入操作リブ4dは、挿入状態の本体2において弾性スライド部2Acの斜面を乗り上げて、該弾性スライド部2Acの上面が筐体2のガイド3cに当接させるよう、該弾性スライド部2Acを弾性変形させている。さらに、
図5(a)では図示しないが、操作体4の当接体4hの反転写部方向の端部と、本体2の移動当接部2Abの転写部方向の端部とが当接している。
【0040】
上記状態から、操作ボタン4aを転写部方向に操作すると、
図5(b)に示すように、操作体4の移動に伴って、操作体4のボス4cと筐体2の係合凹部3fの係合が外れ、操作体4の突出操作リブ4eが、本体2の弾性スライド部2Acを転写部方向に押し、挿入操作リブ4dが、弾性スライド部2Acの押圧を解除、すなわち該弾性スライド部2Acの斜面から降りて転写部方向へ移動する。
【0041】
操作体4の突出操作リブ4eが、本体2の弾性スライド部2Acを転写部方向に押し進めると、
図5(c)に示すように、本体2の弾性スライド部2Acが筐体3のガイド3cの弾性変形した状態で移動する経路を外れ、段部3bに達する。弾性スライド部2Acが段部3bに達すると、それまで弾性変形して略水平状となっていた該弾性スライド部2Acが自然状態に弾性復元する。
【0042】
さらに操作体4の操作ボタン4aを転写部方向へ移動させて、該操作ボタン4aが筐体3の窓部3eにおける転写部方向の端部に当接したとき、
図5(d)に示すように、操作体4の突出操作リブ4eが、本体2の弾性スライド部2Acの下部に入り込み、該弾性スライド部2Acの反転写部方向の端部下面と突出操作リブ4eの凹部4fとが係合する。
【0043】
これにより、本体2は、転写部2dを被転写体に強く押し付けても、操作体4の操作ボタン4aを反転写部方向へ操作しない限り、筐体2内へ挿入することがない。この理由は、本体2の弾性スライド部2Acが筐体3の段部3bと当接しているので、本体2が反転写部方向に移動せず、また、該弾性スライド部2Acの弾性変形を許容する空間に突出操作リブ4eが入り込んでいるので、弾性スライド部2Acが弾性変形しないからである。
【0044】
したがって、本発明の転写具1は、転写部2dを被転写体に強く押し付けても、本体2が筐体2内に挿入してしまうことも、また、そのように強い力を受けても構成部材が破損することがない。
【0045】
一方、本体2の転写部2dが筐体3から突出した
図5(d)に示す状態から、筐体3へ挿入する際に、転写具1は
図6(a)〜
図6(d)に示すように動作する。
図6(a)に示すように、本体2の転写部2dが筐体3から突出した状態は、操作体4の突出操作リブ4eが、本体2の弾性スライド部2Acの下部に入り込み、該弾性スライド部2Acの反転写部方向の端部下面と突出操作リブ4eの凹部4fとが係合している。このとき、操作ボタン4aが筐体3の窓部3eにおける転写部方向の端部に当接している。つまり、
図5(d)に示した状態である。
【0046】
この後、
図6(b)に示すように、操作体4の操作ボタン4aを反転写部方向に移動すると、筐体3の段部3bと当接した本体2の弾性スライド部2Acの下部に位置していた操作体4の突出操作リブ4eが、該位置から反転写部方向に移動する。このとき、弾性スライド部2Acは、弾性変形が可能な状態となる。
【0047】
さらに、操作体4の操作ボタン4aを反転写部方向に移動すると、
図6(c)に示すように、操作体4の当接体4hと本体2の移動当接部2Abとが当接して、本体2全体を反転写部方向へ移動させると共に、操作体4の挿入操作リブ4dが本体2の弾性スライド部2Acの斜面を乗り上げて該弾性スライド部2Acを略水平状で、筐体3のガイド3cの空間へ挿入可能に弾性変形させる。
【0048】
そして、操作体4の操作ボタン4aが筐体3の窓部3eにおける反転写部方向の端部に当接するまで移動すると、
図6(d)に示すように、本体2の弾性スライド部2Acが操作体4の挿入操作リブ4dに押し付けられて弾性変形した状態で筐体3のガイド3c内を反転写方向に移動し、操作体4のストッパ4bのボス4cが、筐体3の係合凹部3fに嵌合し、さらに、本体2の挿入当接部2Adが筐体3の当接部3dと当接して、
図6(d)の状態となる。
【0049】
図6(d)の状態となった転写具1は、操作体4の操作ボタン4aを転写部方向へ移動させない限り、操作体4のボス4cと、筐体3の係合凹部3fとが係合しているので、例えば転写部2dを下方に向けても、あるいは、転写部2dを先端として振り回しても、本体2が筐体3から突出してしまうことがない。
【0050】
以上のように、本発明は、本体2を筐体3に対して挿入・突出させる転写具1であって、転写部2dを被転写体に強く押し付けて使用した場合にあっても、突出状態では、弾性スライド部2Acの弾性変形を許容する空間に突出操作リブ4eが入り込んでいるので、部材が破損することがなく、かつ突出操作リブ4eが弾性スライド部2Acの下部に入り込んだ状態で該弾性スライド部2Acが段部3bと当接しているので、前記弾性変形が許容されないことと弾性変形して反転写部方向への移動を許容する空間がないので、本体2が筐体3内に挿入してしまうことがない。