【課題】本発明は、鉱滓質の造粒効率がよく、得られる鉱滓質からなる造粒物の硬度が高く、水中および土壌崩壊性に優れる特性を付与できる鉱滓用造粒剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の鉱滓用造粒剤は、キシロースおよび/またはマンノースを含み、糖組成物全体に占めるキシロースの含有量(固形分)とマンノースの含有量(固形分)の合計が0.01%以上であり、これにより上記の目的を達成することができる。
糖組成物がキシロースおよびマンノースを含み、糖組成物におけるキシロースの含有量(固形分):マンノースの含有量(固形分)が0.01〜70:0.01〜70である請求項1〜3のいずれか一項に記載の鉱滓用造粒剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の造粒剤を用いて鉱滓を造粒しようとすると、造粒されずに残る鉱滓が多く、造粒効率が不十分であった。造粒効率を高めるために、造粒剤の添加量を増加すると、造粒した粒子同士が付着および/または凝集し、適正な粒度での管理が難しくなる問題がある。また、造粒剤の増量により乾燥温度の低下を招くため、造粒剤量の増加分の費用に加え、燃料費用の増加や、乾燥時間を延長する必要がある。このような問題点から、従来の造粒剤を用いた鉱滓の造粒は、経済的に不利であるうえ、生産性をも低下させるおそれがあった。
【0007】
造粒助剤などの添加剤を併用すると、添加剤の製造コストの増加となり、不利益が生じるおそれがある。さらに、ポリカルボン酸系合成高分子などの合成系の高分子成分などを使用する場合は、造粒物の使用において環境への安全性について熟慮する必要がある。
【0008】
それに加え、前述の造粒剤は、得られる造粒物の硬度が低いため、運搬時に粉化してしまうことがある。造粒物の含水量が多い場合には、鉱滓に含まれる水硬性成分の水和反応による粉化も問題となるため、高い硬度が求められる。一方で、肥料用途の場合には、水中または土壌で速やかに崩壊して施肥効果を発現する必要があり、高い水中および土壌崩壊性が求められる。
【0009】
一方、パルプ蒸解排液の用途は、かつてから、鉱滓造粒剤(特許文献4など)のほかにもコンクリート減水剤、染料分散剤など、多岐にわたっていた。しかし、パルプ精選工程で発生するパルプ洗浄廃液は、明確な利用用途が見出されていなかった。パルプ洗浄廃液の一部は、パルプ製造に用いる燃料および、薬品の回収目的で使用する試みがなされてきた。しかし、Na源回収型の黒液ボイラーでしか有効利用されておらず、その他の塩を回収する黒液ボイラーを用いる場合には利用が進んでいない。このため、パルプ洗浄廃液にはバイオマス資源が多く含まれるにも関わらず、処理が問題となっていた。
【0010】
そこで、本発明は、鉱滓質の造粒効率がよく、得られる鉱滓質からなる造粒物の硬度が高く、水中および土壌崩壊性に優れる特性を付与できる鉱滓用造粒剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の〔1〕〜〔8〕を提供する。
〔1〕キシロースおよび/またはマンノースを含み、糖組成物全体に占めるキシロースの含有量(固形分)とマンノースの含有量(固形分)の合計が0.02%以上である糖組成物を含有する鉱滓用造粒剤。
〔2〕糖組成物におけるキシロースの含有量(固形分)が0.01重量%〜70重量%である上記〔1〕に記載の鉱滓用造粒剤。
〔3〕糖組成物におけるマンノースの含有量(固形分)が0.01重量%〜70重量%である上記〔1〕または〔2〕に記載の鉱滓用造粒剤。
〔4〕糖組成物がキシロースおよびマンノースを含み、糖組成物におけるキシロースの含有量(固形分):マンノースの含有量(固形分)が0.01〜70:0.01〜70である上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の鉱滓用造粒剤。
〔5〕下記の工程(1)〜工程(5)を含むパルプ製造工程における工程(3)および/または工程(5)で得られるパルプ洗浄廃液を含む上記〔1〕に記載の鉱滓用造粒剤。
工程(1):セルロース系原料を蒸解する工程
工程(2):工程(1)で得られた未晒パルプから蒸解排液を除去する工程
工程(3):工程(2)で得られた未晒パルプを洗浄および脱水する工程
工程(4):工程(3)で洗浄された未晒パルプを漂白する工程
工程(5):工程(4)で得られた晒パルプを洗浄および脱水する工程
〔6〕工程(1)の蒸解がクラフト法による蒸解である上記〔5〕に記載の鉱滓用造粒剤。
〔7〕工程(1)の蒸解が亜硫酸法による蒸解である上記〔5〕に記載の鉱滓用造粒剤。
〔8〕前記工程(3)および/または前記工程(5)の洗浄がアルカリ性下で行われる上記〔5〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の鉱滓用造粒剤。
〔9〕造粒肥料に用いられる上記〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の鉱滓用造粒剤。
〔10〕団鉱に用いられる上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の鉱滓用造粒剤。
〔11〕上記〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の鉱滓用造粒剤を含有する鉱滓用造粒剤組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、鉱滓質の造粒効率がよく、得られる鉱滓質からなる造粒物の硬度が高く、水中および土壌崩壊性に優れる特性を付与できる鉱滓用造粒剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の鉱滓用造粒剤は、糖組成物を含む。本発明の鉱滓用造粒剤は、通常2成分以上を含むので、鉱滓用造粒組成物と言い換えてもよい。
【0014】
糖組成物は、糖を含む組成物である。糖を構成する炭素数に制限はなく、単糖、少糖、多糖のいずれでもよい。単糖としては以下が例示される:アルドトリオース、ケトトリオースなどの三炭糖;エリトロース、トレオース、エリトルロースなどの四炭糖;キシロース、リボース、アラビノース、リキソース、リブロース、キシルロースなどの五炭糖;マンノース、アロース、アルトロース、グルコース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、フコース、フルクトース、ラムノースなどの六炭糖、セドヘプツロースなどの七炭糖など。少糖としては以下が例示される:スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオースなどの二糖、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオースなどの三糖、アカルボース、スタキオースなどの四糖、キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖などのオリゴ糖。多糖としては、グリコーゲン、でんぷん(アミロース、アミロペクチン)、セルロース、ヘミセルロース、デキストリン、グルカンが例示される。糖は1種類であってもよいし2種類以上であってもよいが、2種類以上であることが好ましい。
【0015】
糖組成物は、通常、還元性糖および/または糖変性物を含む。糖組成物は、糖、還元性糖および/または糖変性物から実質的になることが好ましく、糖、還元性糖および糖変性物以外の成分を含まないことがより好ましい。
【0016】
還元性糖とは、還元性を示す糖であり、塩基性溶液中でアルデヒド基またはケトン基を生じる糖を意味する。還元性糖としては、すべての単糖、マルトース、ラクトース、アラビノース、スクロースの転化糖などの二糖、および多糖などが例示される。還元性糖は、単糖を含むことが好ましく、キシロースおよび/またはマンノースを含むことが好ましい。糖組成物は、糖変性物を1種または2種以上含んでいてもよいし、還元性糖を1種または2種以上含んでいてもよいし、1種または2種以上の糖変性物と1種または2種以上の還元性糖とを含んでいてもよい。
【0017】
糖組成物は、通常、キシロースおよび/またはマンノースを含む。キシロースを含む場合、キシロースの含有量(固形分)は、糖組成物に対して0.01重量%以上であることが好ましい。上限は、70重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることが好ましい。キシロースの含有量は、0.01重量%〜70重量%であることが好ましく、0.01重量%〜40重量%であることがより好ましい。
【0018】
糖組成物がマンノースを含む場合、マンノースの含有量(固形分)は、糖組成物に対して0.01重量%以上であることが好ましい。上限は、70重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがさらに好ましい。マンノースの含有量は、0.01重量%〜70重量%であることが好ましく、0.01〜40重量%であることがより好ましい。
【0019】
糖組成物におけるキシロースの含有量(固形分)とマンノースの含有量(固形分)の合計は、糖組成物に対して0.01重量%以上であり、0.02重量%以上であることが好ましい。上限は、80重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることさr内好ましい。糖組成物におけるキシロースの含有量(固形分)とマンノースの含有量(固形分)の合計は、0.01重量%〜80重量%であることが好ましく、0.02重量%〜80重量%であることがより好ましく、0.02重量%〜50重量%であることが更に好ましい。なお、キシロースの含有量(固形分)とマンノースの含有量(固形分)の合計は、糖組成物がキシロースを含まないがマンノースのみを含む場合にはマンノースの含有量を意味し、マンノースを含まないがキシロースのみを含む場合にはキシロースの含有量を意味する。
【0020】
糖組成物がキシロースおよびマンノースの両方を含む場合、におけるキシロースの含有量(固形分):マンノースの含有量(固形分)は、0.01〜70:0.01〜70であることが好ましく、0.01〜40:0.01〜40であることがより好ましい。
【0021】
マンノース、およびキシロースのそれぞれの含有量は、GPC測定により求めることができる。
【0022】
糖変性物とは、糖が酸化、スルホン化などの化学変性を受けてなる変性物を意味する。糖変性物は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、スルホ基などの基に含まれる水素原子が他の基に置換された糖誘導体であってもよいし、糖誘導体2つ(2種)以上が結合した化合物であってもよい。糖変性物は可溶性であることが好ましい。糖変性物としては、糖スルホン酸塩、糖アルドン酸塩、およびフルフラール類などが例示される。糖変性物の含有量は、糖組成物に対して10重量%〜99重量%であることが好ましく、30重量%〜90重量%であることがより好ましい。
【0023】
糖組成物中の糖変性物(A)とキシロース(B)とマンノース(C)の重量比率(固形分)は、(A):(B):(C)=10〜99:0〜80:0〜80であることが好ましく、30〜90:0〜70:0〜70であることがより好ましい。
【0024】
ここで、パルプ洗浄廃液又は亜硫酸蒸解排液に占める糖変性物の含有量は、以下の式1にて求めることができる。
【0025】
糖変性物の重量(重量%)=
100(%)−還元性糖の重量(重量%)−糖以外の成分(例えば、リグニンスルホン酸、無機物など)の重量(重量%)・・・(式1)
【0026】
本発明において、糖組成物の調製方法、製造方法などは限定されないが、一例として、パルプ洗浄廃液由来の糖組成物が挙げられる。パルプ洗浄廃液は糖組成物を含むことから、本発明の鉱滓用造粒剤は、パルプ洗浄廃液を含むことが好ましい。
【0027】
パルプ洗浄廃液とは、パルプ製造工程において得られる廃液を意味する。パルプ製造工程は例えば、以下の工程(1)〜(5)を含む:
工程(1):セルロース系原料を蒸解する工程
工程(2):工程(1)で得られた未晒パルプから蒸解排液を除去する工程
工程(3):工程(2)で得られた未晒パルプを洗浄および脱水する工程
工程(4):工程(3)で洗浄された未晒パルプを漂白する工程
工程(5):工程(4)で得られた晒パルプを洗浄および脱水する工程。
パルプ洗浄廃液は、通常、上記の工程(3)および/または工程(5)にて得ることができる。
【0028】
工程(1)において、セルロース系原料は特に限定されるものではなく、エゾマツ、アカマツ、スギ、ヒノキなどの針葉樹木材、シラカバ、ブナなどの広葉樹木材、竹、ケナフ、葦、稲などの非木材が例示される。セルロース系原料としては、これらのうち1種のみを単独で用いても2種類以上を併用してもよい。また、樹齢や採取部位の異なる2以上の樹木などから採られた木材を混合して用いてもよい。
【0029】
工程(1)においてセルロース系原料の蒸解法は、特には限定されず、クラフト法、亜硫酸法、ソーダ法、アンモニア法などの公知の方法を用いることができる。このうち、クラフト法または亜硫酸法であることが好ましい。
【0030】
パルプの製造例を挙げると以下のとおりである。まず、木材に水酸化ナトリウム、および、硫化ナトリウムを作用(蒸解)させる(工程(1))。続いて、蒸解排液を除去し(工程(2))、得られる未晒クラフトパルプを洗浄して脱水し、パルプ洗浄廃液(廃水)を得る(工程(3))。また、上記工程(1)〜(3)の別の例としては、木材に亜硫酸またはその塩を作用(蒸解)させ(工程(1)、その後、蒸解排液を除去し(工程(2))、得られる未晒亜硫酸パルプを洗浄して脱水し、パルプ洗浄廃液(廃水)を得ることができる(工程(3))。さらに、上記の例で得られた未晒パルプ(未晒クラフトパルプ、未晒亜硫酸パルプ)を漂白し(工程(4))、脱水して得られる晒パルプを洗浄して、パルプ洗浄廃液(廃水)を得ることができる。
【0031】
前記工程(3)のパルプ洗浄は、蒸解によって除去しきれなかったリグニン、ヘミセルロース、糖変性物、樹脂、有機酸、無機分などの成分を除去する工程である。前記工程(5)のパルプの洗浄は、漂白によって生じたセルロース由来の成分(糖類など)を主に除去する工程である。
【0032】
工程(3)および工程(5)における洗浄は、一段でも多段階設定でもよい。多段階設定することにより洗浄を十分に行うことができる。本発明の鉱滓用造粒剤は、工程(3)で得られたパルプ洗浄廃液、工程(5)で得られたパルプ洗浄廃液を単独で含んでもよいし、これらの組み合わせを含んでもよいし、別のパルプ製造工程で得られた工程(3)および/または工程(5)で得られるパルプ洗浄廃液と組み合わせて含んでもよい。洗浄の際には通常、洗浄機を用いる。洗浄機の例としては、置換洗浄型、希釈脱水洗浄型などが挙げられるが、特には限定されない。また、洗浄において、酸素漂白、塩素処理、アルカリ抽出などの漂白処理を行ってもよい。工程(3)における洗浄と工程(5)における洗浄は、それぞれ別個の条件で行ってもよいし、同じ条件で行ってもよい。
【0033】
洗浄はアルカリ性下で行うことができ、アルカリ性下で行うことが好ましい。亜硫酸蒸解およびクラフト蒸解の場合アルカリ性下で行うことがより好ましい。本発明の鉱滓用造粒剤は、工程(3)および/または工程(5)で得られるパルプ洗浄廃液を含むことが好ましく、工程(3)における洗浄をアルカリ性下で行って得られるパルプ洗浄廃液、工程(5)における洗浄をアルカリ性下で行って得られるパルプ洗浄廃液、またはこれらの組み合わせを含むことが好ましい。
【0034】
アルカリ性下とは、pH8以上、好ましくは9〜14の条件下であることを意味する。アルカリ性下で洗浄する方法としては、例えば、アルカリ性水溶液等のアルカリ洗浄水(通常、pH8〜14)と酸素を作用させる方法、水酸化ナトリウムを用いてpH12程度とし、高温、高圧下で洗浄処理する方法が挙げられる。
【0035】
工程(3)および(5)における脱水は、通常の条件で行うことができる。脱水の際には通常、脱水機を用いる。脱水機の例としては、ドラム型絞り脱水機、ロータリープレス、連続圧搾脱水機などが挙げられるが、特には限定されない。
【0036】
パルプ洗浄廃液は、パルプの原料である植物成分に含有される糖類が、蒸解および精選洗浄の際に分解および/または変性して生成された糖を含む。よって、パルプ洗浄廃水は、通常、木材に含まれる糖に由来する糖を含む。
【0037】
アルカリ性下で洗浄して得られるパルプ洗浄廃液の組成は、パルプ洗浄廃液の固形分に対して、通常、マンノースおよびキシロースを含む還元性糖1〜5重量%、リグニンスルホン酸ナトリウム10〜20重量%、糖変性物55〜70重量%、無機塩15〜25重量%程度である。上記の組成のうち、還元性糖は、セルロースおよびヘミセルロース、およびその分解物であり、分解物に関しては、例えば、ラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、グルコース、マンノース、フルクトースなどの単糖、キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖などのオリゴ糖を含み、このうちマンノースおよびキシロースが主成分である。また、糖変性物は、多糖や上記オリゴ糖、単糖などの可溶性の糖変性物である。これにより、本発明において、鉱滓用造粒剤がパルプ洗浄廃液、好ましくは工程(3)で得られたパルプ洗浄廃液および/または工程(5)で得られたパルプ洗浄廃液を含む場合には、得られる鉱滓造粒物の造粒効率、硬度および/または水中崩壊性をより向上させることができる。
【0038】
本発明において、鉱滓(スラグと同義語)は、乾式製錬工程から排出される酸化物融液またはその凝固体のことである。鉱滓は、炉内で目的金属から分離された鉱石中の脈石成分や燃料中の灰分を主体としているが、融点の低下と流動性の改善のために加えられる融材を含んでいる場合もある。また、鉱滓は、塩化カルシウム、消石灰、石灰窒素、過りん酸石灰、石灰石、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウムなどのカルシウム含有化合物、尿素、硫安、硝酸、などを含有している場合がある。
【0039】
鉱滓の種類としては、銑鉄製造工程で生成される高炉徐冷スラグ、高炉水砕スラグなどの高炉スラグ、鋼の製造過程で生成される転炉スラグ、電気炉スラグ(酸化スラグ、還元スラグ)などの製鋼スラグなどが例示されるが、特にこれらに限定されるものではない。鉱滓は、これらの鉱滓のうち、1種類のみであってもよいし、2種類以上の鉱滓の組み合わせであってもよい。
【0040】
本発明において、鉱滓は、高炉スラグおよび/または製鋼スラグであることが好ましい。なかでも、造粒物を粒状の造粒肥料として利用する場合、鉱滓は、Fe含量の高い製鋼スラグであることが好ましい。これにより高い施肥効果を発揮する造粒肥料を得ることができる。また、造粒物を鉄鋼工程で再利用する場合、および/または加工用原料として利用する場合には、鉱滓は、製鋼スラグであることが好ましい。鉱滓は、電気炉スラグであることがさらに好ましい。鉱滓がステンレススラグであることも好ましい。これにより、造粒物の硬度を高めることができる。
【0041】
本発明の鉱滓用造粒剤は、糖組成物を有効成分として含んでいればよく、糖組成物のみであってもよいし、糖組成物と1種以上のその他の成分とを含んでいてもよい。その他の成分としては、リグニンスルホン酸、クラフトリグニン、無機物などがまず例示される。無機物としては、硫酸塩、炭酸塩などが例示される。クラフトリグニンとは、クラフトパルプ製造工程で得られるリグニンである。リグニンスルホン酸塩とクラフトリグニンとの大きな相違点は、リグニンスルホン酸にはスルホ基が導入されており、そのため水溶性である一方、クラフトリグニンにはスルホ基はなく、アルカリ性の水溶液にしか溶けないことである。リグニンスルホン酸および無機物は、亜硫酸蒸解で得られたパルプ洗浄廃液である場合には、通常含まれている。亜硫酸蒸解で得られたパルプ洗浄廃水にはリグニンスルホン酸塩が、通常7重量%〜60重量%含まれる。また、その他の成分の他の例としては、従来の鉱滓用造粒剤の有効成分、造粒助剤の有効成分が挙げられる。従来の鉱滓用造粒剤の有効成分としては、リグニンスルホン酸塩、その塩、廃糖蜜、廃糖蜜発酵液、カルボキシメチルセルロース(CMC)、でんぷん、ベントナイト、亜硫酸パルプ蒸解排液、亜硫酸パルプ蒸解排液の熱アルカリ処理液などが例示される。これらのうち、亜硫酸パルプ蒸解排液が好ましい。造粒助剤の有効成分としては、ポリカルボン酸系合成高分子またはその塩などが例示される。
【0042】
糖組成物と従来の造粒剤および/または造粒助剤との混合比は、鉱滓の種類および/または鉱滓成分などにより、また、併用する従来の造粒剤および/または造粒助剤の種類により異なり、一義的に定めることができない。例えば、鉱滓用造粒剤がパルプ洗浄廃液を含む場合、パルプ洗浄廃液とその他の従来の造粒剤の、それぞれの固形分の重量比は、合計重量を100とした場合、通常100:0〜10:90である。造粒物を粒状の造粒肥料として利用する場合、上記重量比は、90:10〜40:60であることが好ましく、その他の用途の造粒物の場合、上記重量比は70:30〜30:70であることが好ましい。パルプ洗浄廃液の比率が90%以下であることにより、粒状の造粒肥料の硬度を適度に保つことができ、水中崩壊性とのバランスを良好にすることができる。パルプ洗浄廃液の比率が40%を超えることにより、粒状の造粒肥料の硬度が従来の造粒剤にて製造した粒状肥料よりも高めることができ、輸送、施肥などの作業中における粉化などの問題を解消することができる。造粒物を粒状の造粒肥料以外の用途で利用する場合、パルプ洗浄廃液の重量比が30%以上であることにより、造粒物の含水量を適度に保持することができ、乾燥工程を穏やかな条件で実施することができ、生産性の低下を防止することができる。
【0043】
本発明の鉱滓用造粒剤により鉱滓を造粒する際には、通常まず、鉱滓用造粒剤を鉱滓に混合する。鉱滓に対する本発明の鉱滓用造粒剤の使用量は、固形分として通常、0.05重量%〜50重量%である。造粒物を粒状の造粒肥料として用いる場合、上記使用量は、通常、0.05重量%〜20重量%、好ましくは0.1重量%〜15重量%、さらに好ましくは0.3重量%〜8重量%である。粒状の造粒肥料以外のその他の鉱滓用造粒剤としては0.05重量%〜30重量%、好ましくは1重量%〜20重量%、さらに好ましくは5重量%〜15重量%である。
【0044】
上記鉱滓用造粒剤と鉱滓の混合方法は特には限定されるものではない。例えば、鉱滓用造粒剤が液状の場合は、スプレーなどで噴霧して鉱滓に添加してもよく、液状のまま鉱滓に添加し混練してもよい。また、鉱滓用造粒剤が粉末状態の場合は、鉱滓用造粒剤と鉱滓とを同時に混合し、得られる混合物に水分をスプレーなどで噴霧して粒状化してもよい。
【0045】
鉱滓を鉱滓用造粒剤と混合する場合、鉱滓はあらかじめ粒度を調整されていてもよい。鉱滓の種類、配合および造粒機の構造、造粒条件などに依存するが、鉱滓はあらかじめ粒度を調整されていることが好ましい。粒度の調整は、通常、粉砕により行うことができる。粉砕により粒度だけでなく、粒度分布の調整を行ってもよい。調整後の鉱滓の粒度は、0.1mm〜10mmであることが好ましく、0.5mm〜6mmであることがより好ましい。調製後の鉱滓の粒度分布は、2mm以下のものが0重量%〜70重量%、2mm〜4mmのものが0重量%〜90重量%、4mm以上のものが0重量%〜99重量%の割合であることが好ましい。
【0046】
本発明の鉱滓用造粒剤により鉱滓を造粒する方法は、特には限定されるものではなく、該方法としては例えば、公知の造粒機を用いて造粒する方法が挙げられる。造粒機としては例えば、ドラム型、パン型、パグミル型、流動層型、ピン型、アイリッヒ型、押し出し型などの造粒機が挙げられる。造粒方法としては、転動造粒、圧縮造粒、押し出し造粒が例示される。造粒方法は、好ましくは転動造粒である。造粒機は、好ましくはドラム型、パン型、またはアイリッヒ型である。造粒物を粒状の造粒肥料以外の用途で利用する場合、転動造粒にて造粒する際にはドラム型またはパン型の造粒機を用いることが好ましい。また、この場合には、押し出し造粒も好適である。
【0047】
造粒後は、造粒物を必要に応じて乾燥させることができる。乾燥方法は、造粒物の使用用途、鉱滓の種類、造粒条件により異なり、一義的に定めることができない。乾燥方法としては、天日乾燥、ロータリーキルン型、流動層型などの通常の乾燥方法が例示される。
【0048】
本発明の鉱滓用造粒剤は、糖組成物以外の成分として、崩壊分散剤、防水材、増粘剤、その他の界面活性剤などの添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中特に断りの無い限り%は重量%を、また、部は重量部を示す。
【0050】
<実施例1>
直径450mmのパン型造粒機を用い、パンの角度を水平に対して45°、回転数を25rpmに設定して、転炉スラグ100部に対して、クラフトパルプ製造における工程(3)で得られたパルプ洗浄廃液(A)(固形分40重量%、対固形分でキシロース0.5重量%、マンノース0重量%、糖変性物48重量%、およびクラフトリグニン35重量%、表中「A」と略記)をそれぞれ10.0重量%、12.5重量%、15重量%添加して、該パン型造粒機にて粒度が2mm〜4mm、粒度分布は2mm〜4mmのものが全体の2重量%〜50重量%のものを造粒した。これを、150℃、40分乾燥した後、2.0mm〜3.0mmおよび3.0mm〜4.0mmの篩を用いて篩分けて実施例1の造粒物を得た。なお、パルプ洗浄廃液(A)は、pHが9のアルカリ洗浄水で洗浄したものである。また、粒度および粒度分布の測定は、全造粒物の重量を測定し、その後ふるい分けし、各ふるいに残留した造粒物の重さを測定することにより、求めた。
【0051】
<実施例2>
実施例1で用いたのと同様の転炉スラグ100部に対して、亜硫酸パルプ製造における工程(3)で得られたパルプ洗浄廃水(B)(固形分40重量%、対固形分でキシロース0重量%、マンノース3重量%、糖変性物66重量%、およびリグニンスルホン酸塩15重量%、表中「B」と略記)をそれぞれ10.0重量%、12.5重量%、15重量%添加したほかは、実施例1と同様に造粒、乾燥、篩分けを行い、実施例2の造粒物を得た。なお、パルプ洗浄廃液(B)は、pHは9のアルカリ洗浄水で洗浄したものである。
【0052】
<実施例3>
亜硫酸パルプ製造工程におけるパルプ洗浄廃水(B)と亜硫酸蒸解排液(SP)(固形分40%、対固形分でキシロース10重量%、マンノース10重量%、糖変性物24重量%、およびリグニンスルホン酸塩50重量%、表中SPと略)を重量比で40:60に混合して転炉スラグに添加したほかは、実施例1と同様に造粒、乾燥、篩分けを行い、実施例3の造粒物を得た。なお、パルプ洗浄廃水(B)は、実施例2のパルプ洗浄廃水(B)と同様であり、後段の実施例4及び5でも同様である。
【0053】
<実施例4>
亜硫酸パルプ製造工程におけるパルプ洗浄廃水(B)と亜硫酸蒸解排液(SP)を重量比で80:20に混合して転炉スラグに添加したほかは、実施例1と同様に造粒、乾燥、篩分けを行い、実施例4の造粒物を得た。
【0054】
<比較例1>
造粒剤として亜硫酸蒸解排液(SP)を用いて、実施例1と同様に造粒して比較例1の造粒物を得た。
【0055】
<比較例2>
亜硫酸蒸解排液(SP)と廃糖蜜(固形分40%、水分60%、K
2O 3.7%、CaO 1.2%、SiO
2 0.35%)を重量比で80:20に混合した造粒剤を調製し、実施例1と同様に造粒して比較例2の造粒物を得た。
【0056】
<比較例3>
撹拌装置および温度コントロールのついた3L容オートクレーブに亜硫酸蒸解排液(SP)を2000g、NaOH 80g入れ、120℃にて4時間処理した後、固形分を40%に調整して製造した造粒剤(C)を、実施例1と同様に造粒して比較例3の造粒物を得た。
【0057】
<造粒効率の評価>
実施例1〜4、比較例1〜3の篩分けた造粒物の収率(式2)にて造粒効率を評価した。
【0058】
造粒物の収率(%)=
{2.0〜4.0mmの篩上の造粒物重量/(全造粒物重量+篩下の造粒物および未造粒の重量)}×100 ・・・(式2)
【0059】
<硬度測定>
実施例1〜4、比較例1〜3の篩分けた造粒物のうち、粒径2.0mm〜4.0mmの造粒物を20粒取り出し、平滑なガラス板の上に置いて上から外径0.8mmのガラス棒で圧縮して、崩壊したときの力の大きさ(硬度)を測定し、20粒の平均硬度にて評価した。
【0060】
<水中崩壊性試験>
実施例1〜4、比較例1〜3の篩分けた造粒物50粒を目開き2mmの篩上に並べて篩より大きな容器中に置き、試料が十分に浸かるように静かに常温水を注ぎ、24時間静置後に篩から落下したものの割合(百分率)にて評価した。崩壊性があると評価される判断基準は80%以上である。
【0061】
表1は実施例1〜4、比較例1〜3の造粒効率、硬度、水中崩壊性についてまとめたものである。
【0062】
【表1】
【0063】
表1からも明らかなように、実施例1〜4では、比較例1〜3よりも低い添加量においても収率が高く、高い硬度を発現していた。実施例1〜4ではこれらの物性の向上に関わらず、水中崩壊性については、肥料基準を満足する結果が得られている。また、比較例1〜3の造粒物よりも実施例1〜4では、同一添加量における含水量が低く、乾燥効率がよいことがわかる。すなわち、本発明の造粒剤は、従来の造粒剤よりも低添加率でも高い造粒効率および硬度を示すことから、性能的にも、経済的にも優れていること、および、含水量が低いことによる乾燥工程の省エネルギーも図れることが明らかである。また、造粒剤を、天然物成分から成るパルプ洗浄廃水から得ることにより、安全性の高い造粒剤が得られること、および、廃水利用の点でも環境負荷低減に寄与できることが明らかである。
【0064】
<実施例5>
ステンレススラグ200部に対して亜硫酸パルプ製造工程におけるパルプ洗浄廃水(B)をそれぞれ10重量%、15重量%、20重量%添加して、十分に混練した。その後、万能試験機を用いて直径35φ、高さ12mmの円筒形ステンレス型枠に投入して、25N/mm
2、10sec加圧し、脱型した。これを、20℃、湿度40%の恒温室で24時間乾燥して、実施例5の造粒物を得た。
【0065】
<実施例6>
亜硫酸パルプ製造工程におけるパルプ洗浄廃水(B)と亜硫酸蒸解排液(SP)を重量比で50:50に混合したほかは、実施例5と同様に混練、型枠への投入、加圧、脱型、乾燥して実施例6の造粒物を得た。
【0066】
<比較例4>
亜硫酸蒸解排液(SP)を用いたほかは、実施例5と同様に混練、型枠への投入、加圧、脱型、乾燥して比較例4の造粒物を得た。
【0067】
<比較例5>
造粒剤としてでんぷん(宝澱粉化学社製)を用いたほかは、実施例5と同様に混練、型枠への投入、加圧、脱型、乾燥して比較例5の造粒物を得た。
【0068】
<圧縮強度測定>
実施例5〜6、比較例4〜5の造粒物を、押し出し成型に用いた上記の万能試験機を用いて、亀裂崩壊する際の圧縮圧力(圧縮強度)を測定し、造粒物10個の平均圧縮強度にて評価した。
【0069】
表2は実施例5〜6、比較例4〜5の造粒物の圧縮強度をまとめたものである。
【0070】
【表2】
【0071】
<実施例7>
製鋼スラグ200部に対して亜硫酸パルプ製造工程におけるパルプ洗浄廃水(B)を5%添加して、十分に混練した後、万能試験機を用いて直径35φ、高さ12mmの円筒形ステンレス型枠に投入して、25N/mm
2、10sec加圧し、脱型した。これを、20℃、湿度40%の恒温室で24時間乾燥して、実施例7の造粒物を得た。
【0072】
<実施例8>
亜硫酸パルプ製造工程におけるパルプ洗浄廃水(B)と亜硫酸蒸解排液(SP)を重量比で60:40に混合したほかは、実施例7と同様に混練、型枠への投入、加圧、脱型、乾燥して実施例8の造粒物を得た。
【0073】
<比較例6>
亜硫酸蒸解排液(SP)を用いたほかは、実施例7と同様に混練、型枠への投入、加圧、脱型、乾燥して比較例6の造粒物を得た。
【0074】
表3は実施例7〜8、比較例6の造粒物の圧縮強度をまとめたものである。
【0075】
【表3】
【0076】
表2および表3から明らかな通り、実施例5〜8は、比較例4〜6よりも造粒物の強度が高く、造粒剤としての性能に優れることがわかる。特に、実施例5〜6のようにステンレススラグの造粒剤として用いた場合には、比較例4〜5の従来の造粒剤よりも低添加量であっても高い強度を発現する。すなわち、本発明の造粒剤は、従来の造粒剤よりも低添加率でも高硬度であることから、性能的にも、経済的にも優れていることがわかる。また、本発明の造粒剤を、天然物成分から成るパルプ洗浄廃水から得ることにより、安全性の高い造粒剤が得られること、および、廃水利用の点でも環境負荷低減に寄与できることが明らかである。
【0077】
以上のように、本発明における造粒剤を用いることによって、従来の造粒剤を用いる場合よりも効率よく種々の鉱滓を造粒することができる。本発明の造粒剤の適用対象は、鉱滓を造粒することによって製造される可能性のある製品であれば、特には限定されるものではない。例えば、肥料用原料、コンクリート用混和材、舗装用材、地盤改良材、裏込材、鋳型材などの幅広い製品に利用することができる。