【課題】フィルム状逆止注出ノズルの有する、外気の進入を阻止するセルフシール機能はそのままに発揮するとともに、液状の袋内被包装物の残量が当初の1/3以下にまで減少しても、該被包装物の注出動作の開始から、被包装物の注出に至るまでのタイムラグを有効に低減すること。
【解決手段】積層フィルムからなる包装袋本体と、相互に重なり合う表裏の軟質積層フィルムを、基端辺を除く周縁部分で融着接合し、中央部分に注出通路を区画してなるフィルム状逆止注出ノズルとからなり、該逆止注出ノズルの基端辺を包装袋本体内に突出させる一方、他方の遊端部分を、包装袋本体外の側方へ突出させた姿勢で、該逆止注出ノズルの基端部分の外表面を、包装袋本体内面に融着接合させてなる包装袋内に、液状被包装物を充填包装した包装体であって、該包装体内に、大気圧下で包装袋内に充填した液状被包装物の体積の2vol%以上のガスを封入すること。
積層フィルムからなる包装袋本体と、相互に重なり合う表裏の軟質積層フィルムを、基端辺を除く周縁部分で融着接合し、中央部分に注出通路を区画してなるフィルム状逆止注出ノズルとからなり、該逆止注出ノズルの基端辺を包装袋本体内に突出させる一方、他方の遊端部分を、包装袋本体外の側方へ突出させた姿勢で、該逆止注出ノズルの基端部分の外表面を、包装袋本体内面に融着接合させてなる包装袋内に、液状被包装物を充填包装した包装体であって、
該包装体内に、大気圧下で包装袋内に充填した液状被包装物の体積の2vol%以上のガスを封入することを特徴とする包装体。
前記フィルム状逆止ノズルは、包装袋本体内の液状被包装物の注出を、該包装袋本体の傾動下で、液状被包装物の水頭圧によって内表面どうしを離隔して先端注出口を開放させると共に、前記包装袋本体が液状被包装物の注出量に応じて収縮変形することで包装袋内に外気を取り込むことなく行う一方、
液状被包装物の注出の停止と同時に包装袋を起立復帰することで、液状被包装物の水頭圧の作用から解放されることに加え、その液状被包装物の薄膜が残存することで濡れた内表面どうしが、前記包装袋本体の収縮変形に基づいて吸着し、注出口を自動的に封止するセルフシール逆止機能を具えるものであることを特徴とする請求項1に記載の包装体。
前記フィルム状逆止ノズルは、包装袋本体との融着接合位置において、注出通路内面に対向するシーラント層どうしが相互に仮融着され、注出通路が仮封止されていることを特徴とする請求項1または2に記載の包装体。
前記包装袋本体は、それの上側横シール部分の、前記フィルム状逆止ノズルの上縁より高い位置に、ガス溜め空間を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装体。
前記フィルム状逆止注出ノズルを構成する表裏の軟質積層フィルムの少なくとも一方は、該逆止注出ノズルの基端辺となる部分が凹凸状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装体。
前記表裏の軟質積層フィルムはそれぞれ、前記フィルム状逆止注出ノズルの基端辺となる部分がともに凹凸状であるとともに、両軟質積層フィルムのそれぞれの凹凸の相互が、基端辺の延在方向に同位相に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の包装体。
前記表裏の軟質積層フィルムはそれぞれ、前記フィルム状逆止注出ノズルの基端辺となる部分がともに凹凸状であるとともに、両軟質積層フィルムのそれぞれの凹凸の相互が、基端辺の延在方向に位相変位していることを特徴とする請求項5に記載の包装体。
前記表裏の軟質積層フィルムのそれぞれの凹凸は、一方の軟質積層フィルムの山と、他方の軟質積層フィルムの谷とが、相互に対応して位置していることを特徴とする請求項7に記載の包装体。
前記フィルム状逆止注出ノズルは、注出通路を横断して延び、かつ前記表裏の軟質積層フィルムの相互に入り込む少なくとも一条の凹凸条を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の包装体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に開示された包装袋は、液状の被包装物を液中シール充填等によって抜気下で充填包装して、実質的に該被包装物だけを内包するものであり、その液状の被包装物の、たとえば繰り返しの注出等に当たってフィルム状逆止注出ノズルが外気を取り込むことがないため、袋内被包装物の酸化、汚損等のおそれがなく、袋内被包装物を、変質等のおそれなしに長期間にわたって当初のままに維持することができるという利点がある。
【0005】
この場合、フィルム状逆止注出ノズルは、相互に重なり合う表面側および裏面側の軟質積層フィルム間に区画される注出通路内面が、液状の被包装物の毛細管作用等による拡散によって密着し、上記したように外気を取り込むことがないため、包装袋本体は、被包装物の注出量に相当する体積分だけ収縮変形することになる。
【0006】
また、特許文献1、2に開示された包装袋では、フィルム状逆止注出ノズルの基端辺を、包装袋本体内へ突出して配設させると共に、該基端辺の、表裏の軟質積層フィルムのそれぞれが、位置を揃えて直線状に切断されて形成されている。そのため、このようなフィルム状逆止注出ノズルの基端部分外表面を、包装袋本体内表面に融着接合させると、包装袋本体の延伸ベースフィルム層が融着幅方向に熱収縮等することに伴って、フィルム状逆止注出ノズルの基端辺が、表裏の軟質積層フィルム間に区画される注出通路を閉じる方向に変形することになる。
【0007】
したがって、液状の袋内被包装物を注出するために、フィルム状逆止注出ノズルの先端融着部を切除等して注出通路を開口し、包装体を傾動させた場合、袋内被包装物の残量が多いときには、該被包装物の大きな水頭圧の作用下で、包装袋本体の包装用積層フィルムが表裏の方向に十分大きく離隔されるため、注出通路が比較的迅速に開放されることになり、包装体の傾動の開始から、フィルム状逆止注出ノズルの先端開口から被包装物が注出されるまでのタイムラグを十分小さくすることができるが、袋内被包装物の残量が、当初の1/3以下にまで減少した場合には、包装袋本体が収縮ないしは潰れ変形し、それに伴って、表裏の包装用積層フィルムどうしが強く密着して袋内被包装物の自由な流れが阻止されるとともに、袋内被包装物の注出に際する水頭圧も低下するため、フィルム状逆止注出ノズルの基端辺位置での、注出通路の有効なる開放を担保することができなくなり、袋内被包装物が、フィルム状逆止注出ノズルの先端開口から注出されるまでのタイムラグが大きくなって、その注出にストレスを感じたり、袋内被包装物を注出させるために包装袋本体胴部を手指で押圧し、その勢いで被包装物が飛び散る等の問題点があった。
【0008】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、フィルム状逆止注出ノズルの有する、外気の進入を阻止するセルフシール機能はそのままに発揮するとともに、液状の袋内被包装物の残量が当初の1/3以下にまで減少しても、該被包装物の注出動作の開始から、被包装物の注出に至るまでのタイムラグを有効に低減することのできる包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、包装用積層フィルムからなるフレキシブルな包装袋本体と、相互に重なり合う表裏の軟質積層フィルムを、基端辺を除く周縁部分で融着接合し、中央部分に注出通路を区画してなるフィルム状逆止注出ノズルとからなり、該逆止注出ノズルの基端辺を包装袋本体内に突出させる一方、他方の遊端部分を、包装袋本体外の側方へ突出させた姿勢で、該逆止注出ノズルの基端部分の外表面を、包装袋本体内面に融着接合させてなる包装袋内に、液状被包装物を充填包装した包装体であって、該包装体内に、大気圧下で包装袋内に充填した液状被包装物の体積の2%以上のガスを封入することを提案するものである。
【0010】
ここで、本発明のより好ましい解決手段は、
(1)前記フィルム状逆止ノズルは、包装袋本体内の液状被包装物の注出を、該包装袋本体の傾動下で、液状被包装物の水頭圧によって内表面どうしを離隔して先端注出口を開放させると共に、前記包装袋本体が液状被包装物の注出量に応じて収縮変形することで包装袋内に外気を取り込むことなく行う一方、液状被包装物の注出の停止と同時に包装袋を起立復帰することで、液状被包装物の水頭圧の作用から解放されることに加え、その液状被包装物の薄膜が残存することで濡れた内表面どうしが、前記包装袋本体の収縮変形に基づいて吸着し、注出口を自動的に封止するセルフシール逆止機能を具えるものであること、
(2)前記フィルム状逆止ノズルは、包装袋本体との融着接合位置において、注出通路内面に対向するシーラント層どうしが相互に仮融着され、注出通路が仮封止されていること、
(3)前記包装袋本体は、それの上側横シール部分の、前記フィルム状逆止ノズルの上縁より高い位置に、ガス溜め空間を有すること
(4)前記フィルム状逆止注出ノズルを構成する表裏の軟質積層フィルムの少なくとも一方は、該逆止注出ノズルの基端辺となる部分が凹凸状であること、
(5)前記表裏の軟質積層フィルムはそれぞれ、前記フィルム状逆止注出ノズルの基端辺となる部分がともに凹凸状であるとともに、両軟質積層フィルムのそれぞれの凹凸の相互が、基端辺の延在方向に同位相に形成されていること、
(6)前記表裏の軟質積層フィルムはそれぞれ、前記フィルム状逆止注出ノズルの基端辺となる部分がともに凹凸状であるとともに、両軟質積層フィルムのそれぞれの凹凸の相互が、基端辺の延在方向に位相変位していること、
(7)前記表裏の軟質積層フィルムのそれぞれの凹凸は、一方の軟質積層フィルムの山と、他方の軟質積層フィルムの谷とが、相互に対応して位置していること、
(8)前記フィルム状逆止注出ノズルは、基端部分を除く注出通路に濡れ処理が施されていること、
(9)前記フィルム状逆止注出ノズルは、注出通路を横断して延び、かつ前記表裏の軟質積層フィルムの相互に入り込む少なくとも一条の凹凸条を有すること、
である。
【発明の効果】
【0011】
この発明の包装体によれば、包装袋内へ大気圧下で袋内被包装物の充填量の2%以上の体積のガス、たとえば袋内被包装物が酸化等の反応を起こすおそれがあるか否かに応じて、不活性ガス、活性ガス等の所要のガスを封入(以下、「封入ガス」とも言う。)することにより、とくに、袋内被包装物の残量が1/3以下に低下した場合にも、袋内被包装物の上部に前記ガスが溜まることで、包装袋本体の表裏の包装用積層フィルムの相互の密着力が緩和され、表面側の包装用積層フィルムと、裏面側の包装用積層フィルムとを大きく離隔変位するとともに、袋内被包装物の注出に当って、前記封入ガスが、該ガスの占有スペース内への袋内被包装物の流入を誘導(置換)し、袋内被包装物の注出が円滑なものになるという効果が発揮される。
したがって、本発明では、袋内被包装物の、フィルム状逆止注出ノズルの注出通路への到達が十分迅速なものとなり、また注出通路を大きく開放させることができるため、袋内被包装物の残量が減少してなお、被包装物の注出動作の開始から、被包装物が実際に注出されるまでのタイムラグが有効に抑制され、被包装物の注出時のストレスを効果的に減じることができるという効果が期待できる。
【0012】
一方、本発明に係るフィルム状逆止注出ノズルは、上記したように軟質積層フィルム間に区画される注出通路内に液状の被包装物による薄膜が介在することで濡れた内表面どうしが密着すること等によりセルフシール逆止機能を発揮することができるため、本発明のように包装体内にガスを封入すると、該封入ガスがフィルム状逆止注出ノズル内に進入し、滞留することで注出通路が膨らむ向きに永久変形等して、内表面どうしの密着が阻害され、逆止機能を有効に発揮することができなくなるおそれがある。
そこで、本発明では、フィルム状逆止注出ノズルと包装袋本体との融着接合位置において、フィルム状逆止注出ノズルの内表面どうしを本来よりも弱いヒートシール強度、好ましくは半分以下の強度で仮融着し、使用開始まで注出通路を仮封止することが好ましく、これによれば、保管や輸送中等において、包装体内の封入ガスが、フィルム状逆止注出ノズル内に進入することがなく、したがって、該封入ガスによって注出通路が膨らませる向きに永久変形する等のおそれがなく、セルフシール逆止機能を従来のままに発揮することができる。
【0013】
さらに、本発明では、上記フィルム状逆止注出ノズルの有するセルフシール逆止機能を有効に発揮させるため、包装袋本体の上側横シール部分の、フィルム状逆止注出ノズルの上縁よりも高い位置に、ガス溜め空間を設けることが好ましく、これによれば、被包装物を注出するために包装体を傾動させた際に、包装体内の封入ガスが、該ガス溜め空間に誘導されて一時的に貯留されることになり、被包装物の注出にあたって封入ガスがフィルム状逆止注出ノズル内に進入することを阻止することができる。
【0014】
また、包装体内へのガスの封入と併せて、フィルム状逆止注出ノズルを構成する表裏の軟質積層フィルムの少なくとも一方の、フィルム状逆止注出ノズルの基端辺となる部分を凹凸状に形成した場合は、フィルム状逆止注出ノズルの基端辺が相互に近づく向きに変形されてなお、該基端辺位置において、表面側の軟質積層フィルムと、裏面側の積層フィルムとの間に隙間が形成されることになり、袋内被包装物の残量が当初の1/3以下に減少してなお、包装体の傾動変位に基づいて、注出通路内へ液状の被包装物を円滑に流入させることができるので、被包装物の注出に伴うタイムラグを小さくすることができる。
なおこのことのみによって、袋内被包装物の残量が減少した場合に、注出通路を十分大きく開放することができ、袋内被包装物の注出に伴うタイムラグを十分小さくすることができるときには、包装体内へのガスの封入を省くことができる。
【0015】
そして、上記のことは、フィルム状逆止注出ノズルの基端辺で、表裏の軟質積層フィルムのそれぞれをともに凹凸状に形成する場合にもまた同様であり、両軟質積層フィルムのそれぞれの凹凸の相互を、基端辺の延在方向に同位相とする場合、および基端辺の延在方向に位相変位させる場合のいずれにあっても同様である。
【0016】
なおここで、前記表裏の軟質積層フィルムのそれぞれの凹凸を、一方の軟質積層フィルムの山と、他方の軟質積層フィルムの谷とが、相互に対応するように位置させた場合は、基端辺が相互に近接する方向に変形されることによって、両フィルム間に隙間をより効果的に発生させて、注出通路内へ液状の被包装物を円滑に流入させることができる。さらには、表裏の両フィルム間で、山、谷の数が相違すること等に起因して、受圧面積ひいては、表裏のフィルムのトータルの押圧力が相違することになり、この結果として、注出通路を効果的に開放させることができるという効果が期待できる。
【0017】
さらに、フィルム状逆止注出ノズルの基端部分を除き、区画される注出通路の両面もしくは片面に、局部的に、もしくは全体にわたって濡れ処理を施して、被包装物による濡れ性を高めたときは、袋内被包装物の凝集力、粘度等のいかんにかかわらず、注出通路に被包装物の薄膜をより確実に形成して、フィルム状逆止注出ノズルに、外気の進入を阻止するセルフシール機能をより効果的に発揮させることができる。また、フィルム状逆止注出ノズルの、好ましくは突出方向の中間部に、ノズルの注出通路を横断して延び、かつフィルム状逆止注出ノズルを構成する表裏の軟質積層フィルムが相互に入り込む、少なくとも一条の凹凸条を設けたときには、両積層フィルムの弾性復元力が高まり、被包装物の注出を停止して包装体を起立復帰させた際の、注出通路内表面どうしの密着が迅速かつ確実になり、セルフシール機能をより効果的に発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下にこの発明の実施形態を図面に示すところに基づいて説明する。
図1に示す実施形態において、図中1は、フレキシブルな包装袋本体を、2は包装袋本体1の上端部分からそれの一の側方への突出姿勢で、基端部分の外表面のシーラント層を、包装袋本体1に融着接合させてなり、外気の進入を阻止するセルフシール機能を発揮するフィルム状逆止注出ノズルをそれぞれ示す。
【0020】
ここで、フレキシブルな包装袋本体1は、延伸ベースフィルム層とシーラント層とを具え、必要に応じて中間層、蒸着層等を具えることもある包装用積層フィルムのシーラント層を、図に斜線を施して示すように融着接合させるとともに、上端もしくは下端のいずれか一方を、液状の被包装物の充填包装まで開口させてなる。
【0021】
また、外気の進入を阻止するセルフシール機能を発揮するフィルム状逆止注出ノズル2は、半折状態で相互に重ね合わせた、または相互に重ね合わせた互いに別体になる表裏の軟質積層フィルムの基端辺を除く周縁部分を融着接合させて、中央部分に注出通路3を区画してなるものである。
このフィルム状逆止注出ノズル2では、
図1に斜線を施して示すような三方シール状態、または図示しない四方シール状態とされたフレキシブルな包装袋本体1が、液状の被包装物の注出量に相当する体積だけ収縮ないしは潰れ変形することで、包装体4内に外気を取り込むことなく袋内の液状被包装物を注出することができる一方、袋内の液状被包装物の注出の停止に際しては、包装体4を起立復帰することで、該液状被包装物の水頭圧の作用から開放され、液状の被包装物の薄膜の介在によって濡れた注出通路3の内表面どうしが、前記包装袋本体1の収縮変形に基づいて相互に吸着し、フィルム状逆止注出ノズル2の先端開口を自動的に密閉封止するセルフシール機能を有するため、袋内被包装物のたとえば繰り返しの注出に当たっても、包装体4内へ、フィルム状逆止注出ノズル2を経て外気を取り込むおそれはない。
【0022】
なお、図示のフィルム状逆止注出ノズル2において、6で示す斜線部分は、表裏の軟質積層フィルムの辺縁部分に施した内表面側のシーラント層の融着接合部を示し、7は包装袋本体1内へ突出される基端辺を示し、この基端辺7では、表裏のフィルムが自由に開口できる非融着状態にある。
また、図では、包装袋本体1の上端部分から側方へ突出する姿勢で、包装袋本体1の縦シール部分8に、基端部分の外表面のシーラント層を融着接合させてなるフィルム状逆止注出ノズル2は、その外縁の融着接合部6の所要位置に、フィルム状逆止注出ノズル2の先端部9の切除等を容易にする、たとえばV字状の折曲部10を設ける。
また、12は、フィルム状逆止注出ノズル2の包装袋本体1への接合強度を高める補強融着部を示す。なお、この補強融着部12は、包装袋本体1からフィルム状逆止注出ノズル2に進入する液状の袋内被包装物を整流化する役割も有している。
【0023】
前記V字状の折曲部10の位置からフィルム状逆止注出ノズル2の先端部9を切除等するに当たっては、その切除等を、図に仮想線11で示す方向、とくに仮想線11’で示すように下端が包装袋本体1に近づく方向に傾斜させて直線状に進行させることが、傾動姿勢の包装体4を、注出の停止のために起立変位させるに当たっての液切れ性を高め、フィルム状逆止注出ノズル2に沿う、被包装物の垂れ落ちを防ぐ上で好ましい。なお、前記傾斜角度は、注出通路3の上端を通る垂線に対して10〜30°の範囲内とすることが好ましく、この場合、被包装物の注出を停止した際の最後の液滴を、それに作用する重力に基づいて注出口の先端面から、目的とする注出位置へ円滑に滴下させることができる。
【0024】
フィルム状逆止注出ノズル2の先端部9の開封にあたっては、
図1(b)に先端部9を切除した状態を拡大して示したように、開封予定位置に開口縁16の形状が被包装物の吐出方向に突出した弧状、とくに開口縁下端が包装袋本体1に近づく方向に湾曲した形状となるように引裂き誘導疵を形成してもよい。この場合、包装体4の傾動に伴って注出ノズル2の開口縁16(略中央位置)から発生した液滴は、曲線からなる開口縁16を滑り落ちた後、該曲線のカーブが緩やかな地点にまで到達すると減速し、液滴の重力に従って、ちぎれるようにして順次、滴下されることになるため、被包装物が、開口縁16およびその周辺に滞留することがなく、開口縁16への被包装物の付着や液だれが発生するおそれがなく、開口縁16の衛生性を保つことができる。また、液滴は、引裂き誘導疵の曲線形状を調整することで、
図1(b)に示すように開口縁16から下方に滴下させる他、仮想線(二点鎖線)で示すように側方へ飛び出すように吐出させることもできる。
なお、引裂き誘導疵は、レーザー光線等をもって連続的もしくは間欠的に設けた溶融痕などの適宜の形状および数の疵にて形成することができ、このような引裂き誘導疵の深さ、積層フィルムの幅方向での長さ、その他の寸法は、積層フィルムの厚さ、積層フィルムの構成材料などに応じて選択する。
【0025】
このような包装体4において、所要量の液状の被包装物とともに袋内被包装物の充填量の2vol%以上、好ましくは30vol%以下の体積のガスを封入する。この封入ガスは、包装体4内の液状被包装物の上方に溜まって、包装袋5、直接的には包装袋本体1の、表裏の両包装用積層フィルムを相互に離隔させるべく機能し、袋内被包装物の注出に当っては、前記封入ガスの占有スペース内へ袋内被包装物が流入して、該封入ガスと置換されることで、袋内被包装物の注出を円滑なものとすることができる。
【0026】
なお、封入ガスは、袋内被包装物の種類によって選択することが好ましく、袋内被包装物が空気によって酸化や汚損等しやすいものの場合(例えば、醤油のような調味液、油類、化粧品、医薬品等)には、窒素や炭酸ガス等の不活性ガスを用いることが好ましく、袋内被包装物が、一定量の活性ガスと接触することによっても品質の低下を招かないものの場合(例えば、各種酒類等)には、酸素や希釈空気等の活性ガスを用いてもよい。とくに、包装体4は、前記したようにフィルム状逆止注出ノズル2がセルフシール機能を有するため、該注出ノズル2によって包装体4内への外気の侵入が阻止されるため、包装体4内での好気性菌の増殖を有効に抑制することができる反面、包装体4内の溶存酸素量が少ないため、ボツリヌス菌やウエルシュ菌のような嫌気性菌が増殖するおそれがあるという問題点があった。この点に関しても、液状被包装物と共に静菌効果を有する、例えば炭酸ガスや、炭酸ガスと窒素ガス等との混合ガスを封入することで液状被包装物のpHが下がり、嫌気性菌の増殖を有効に抑制することができるという効果が期待できる。
【0027】
かかる包装体4にあって、フィルム状逆止注出ノズル2の先端部9をたとえば、図の仮想線11に沿って切除して、注出通路3に先端開口を形成した状態の下で、包装体4を、たとえば包装体4に定型性を付与する、包装体4よりも高剛性の外容器とともに傾動変位させた場合は、液状の袋内被包装物の大きな水頭圧によって、フィルム状逆止注出ノズル2の基端辺7位置で、表裏の軟質積層フィルムの相互が十分大きく離隔変位し、注出通路3が十分大きく、かつ迅速に開放されることになる。そのため、包装体4の傾動開始から、フィルム状逆止注出ノズル2の先端開口からの袋内被包装物の注出に至るまでのタイムラグを十分小さく抑えることができる。なお、袋内被包装物の残量が多いうちは、包装体4の傾動および起立の繰り返しに基づいて、繰り返し注出した場合にも同様の作用効果が期待できる。
【0028】
これに対し、包装体4内の、液状の袋内被包装物の残量が、包装袋5内への当初の充填包装量の1/3以下まで減少した場合は、包装袋本体1の収縮(潰れ変形)に基づく、表裏の軟質積層フィルムの密着が強くなり、包装体4を傾動した際の袋内被包装物の水頭圧のみでは、フィルム状逆止注出ノズル2の基端辺で、表裏のフィルムの相互を十分、大きく離隔変位させることが難しいところ、この発明では、包装体4内に封入したガスの作用によって、表裏のフィルムの相互の密着が緩和されると共に、封入ガスの占有スペース内への袋内被包装物の流入が誘導されて円滑なものとなり、包装体4の傾動状態にて包装袋5、直接的には包装袋本体1の、表裏の積層フィルムを大きく離隔させることができる。これに伴ってフィルム状逆止注出ノズル2の基端辺7もまた相互に十分に離隔変位させることができるので、注出通路3の迅速なる開放が行われて、タイムラグの十分小さい注出を実現することができる。さらに、本発明の包装体4では、袋内被包装物を注出した後、包装体4を起立姿勢に復帰させた際の、フィルム状逆止注出ノズル2の先端開口から包装袋本体1への液状の被包装物の液引きがよく、液だれの発生を効果的に抑制することができる。
【0029】
ところで、封入ガスの封入量を包装袋5内に充填した液状の被包装物の2vol%以上とするのは、それが2vol%未満では、フィルム状逆止注出ノズル2の注出通路を十分に開放させることができないためである。一方、封入ガスは、充填した液状の被包装物の2vol%以上、好ましくは5vol%以上、より好ましくは7vol%以上封入すれば、上記効果を有効に発揮することができ、また封入ガス量が増加すると、包装袋5内への、液状の被包装物の収納スペースが必然的に小さくなって液状被包装物の充填包装量が減少されてしまうことや、取り扱い方や使用方法によって、注出通路3から液状被包装物を注出するに当たって、封入ガスもまた注出通路3から流出する危険性があることから、封入ガス量の上限は、包装袋5内に充填した液状被包装物の30vol%以下とすることが好ましく、より好ましくは20vol%以下、さらに好ましくは15vol%以下とする。
なお、封入ガスは、1〜15000μm程度(直径)の微小気泡として液状被包装物中に分散させ、この状態で液中シール充填(包装袋内に液状被包装物を満杯に充填させ、その状態で横シールロールにより余分の液状被包装物を押し出しながら横シールを施して封止する充填方法)することにより、液状被包装物と共に、所要量の封入ガスを包装袋5内に気密に充填することができる。
【0030】
図2は、ガスの封入量と、包装体4を傾動させてから、フィルム状逆止注出ノズル2の注出通路3の先端開口から醤油が注出するまでのタイムラグとの関係を、包装袋5内への液状被包装物の充填量および封入ガス量を変化させて測定したものであり、液状被包装物の充填量を500mlとし、醤油の残量が50mlまで減少した後のタイムラグを、10個の包装体4について測定した平均値を
図2(a)示し、包装袋5の容量を200mlとし、醤油の残量が30mlまで減少した後のタイムラグを、10個の包装体4の平均値を
図2(b)に示す。この結果より、いずれも包装袋5内への液状被包装物の充填量に対し、2vol%以上の体積のガスを封入した場合には、包装体4の傾動開始から、醤油の注出に至るまでのタイムラグを効果的に低減できることがわかった。
【0031】
ところで、本発明の包装体4では、包装袋5内に液状の被包装物と共に、所定量のガスが封入されているため、包装体4を、たとえば倒伏姿勢で保管や輸送等した場合に、封入ガスがフィルム状逆止注出ノズル2内に進入および滞留し、これによって、フィルム状逆止注出ノズル2が注出通路の膨らみ方向に永久変形し、フィルム状逆止注出ノズル2の表裏の積層フィルムが相互に密着することができなくなり、逆止機能を有効に発揮することができなくなるおそれがある。
そこで、本発明では、フィルム状逆止注出ノズル2の、包装袋本体1との融着接合位置における内表面の、対向するシーラント層どうしを、たとえば、加熱温度、加圧力および加圧時間の少なくとも一の選択により、本来のヒートシール強度の半分以下のシール強度で、
図1に破線を施して示すように仮融着させることが好ましい。図中13は、その仮融着部を示す。
【0032】
これによれば、包装体4内に封入されたガスが、フィルム状逆止注出ノズル2内に進入するのを仮融着部13によって確実に防ぐことができるため、包装体4を、倒伏姿勢で保管や輸送等したとしても、封入ガスがフィルム状逆止注出ノズル2内に進入することがなく、フィルム状逆止注出ノズル2が注出通路の膨らみ方向に永久変形することを防止することができ、セルフシール逆止機能を従来と同様に有効に発揮することができる。
【0033】
なお、仮融着部13のヒートシール強度は、0.3〜3(N/15mm)、とりわけ0.7〜1(N/15mm)の範囲とすることが好ましく、この範囲とすることが、仮融着部の不測の開封を防止する一方で、他の融着接合部に何の影響(破袋や開封)も及ぼすことなく、その仮融着部を作為的に開封する上で好ましい。
また、仮融着部13の開封荷重は、仮融着幅等のいかんにかかわらず50〜350(N)、とりわけ100〜200(N)の範囲とすることが好ましい。この範囲とするのは、包装体4を積み重ねた際に下段の包装体で、仮融着部13が開封されるのを抑制するとともに、仮融着部13を開封するにあたって他の融着接合部が影響を受けないようにするためである。
【0034】
なお、フィルム状逆止注出ノズル2を、ベースフィルム層と、このベースフィルム層を挟んで積層した高融点シーラント層と低融点シーラント層とを具える積層フィルムを用いて、前記高融点シーラント層が相互に対向するように表裏に重ね合わせて形成した場合には、仮融着部13を、加熱温度を調整することで容易に形成することができるとともに、フィルム状逆止注出ノズル2を包装袋本体1に、その外表面側の低融点シーラント層をもって融着接合させた際に、フィルム状逆止注出ノズル2の内表面の高融点シーラント層が、意図せず融着することがなく、フィルム状逆止注出ノズル2内に注出通路3を確実に形成することができる。
【0035】
さらに、フィルム状逆止注出ノズル2の有するセルフシール逆止機能は、注出通路3内表面どうしが、被包装物の介在によって相互に密着することにより発揮することができるが、本発明では、包装袋5内にガスが封入されているため、例えば、被包装物の注出に際して、被包装物とともに、封入ガスがフィルム状逆止注出ノズル2の注出通路に進入する等して、該封入ガスによって注出通路内表面どうしの密着が阻害されたり、濡れ性が低下するなどしてセルフシール逆止機能が有効に発揮できないおそれがある。
そこで、本発明では、
図3に示すように、フィルム状逆止注出ノズル2を構成する表裏の積層フィルム17,18上の、好ましくはフィルム状逆止注出ノズル2の突出方向の中間部に、該注出ノズル2の注出通路3を横断して直線状に連続して延びて、かつ
図3(a)のA−A部における断面図(
図3(b))に示すように、表裏の積層フィルムが相互に入り込む少なくとも一条の凹凸条19、20を設けることが好ましく、これによれば、液状被包装物の注出の終了に当たって包装袋5を起立姿勢に復帰させた際の、フィルム状逆止注出ノズル2の表裏の積層フィルムの原形状への弾性復元力が、凹凸条19、20の存在下で一層大きくなり、フィルム状逆止注出ノズル2の注出通路3内表面どうしが、迅速に、かつより確実に接触(密着)することになって、セルフシール逆止機能を有効に発揮させることができる。
【0036】
さらに本発明では、包装袋本体1の、フィルム状逆止注出ノズル2よりも上部位置にガス溜め空間15を設けることで、封入ガスが、ガス溜め空間15に滞留することになるとともに、被包装物を注出するために包装体4を傾動させた際にも、包装袋5の上方へと移動する封入ガスが、ガス溜め空間15に誘導されて貯留されることになり、封入ガスがフィルム状逆止注出ノズル2内に進入するのを有効に阻止することができる。
なお、ガス溜め空間15は、例えば、
図4(a)に示すように、フィルム状逆止注出ノズル2の突設位置を下げて、フィルム状逆止注出ノズル2の上縁から、包装袋本体1の上側横シール部14に至るまでの位置に設ける他、
図4(b)に示すように、包装袋本体1の上側横シール部14上に、包装袋5の幅方向に1〜複数個設けることが好ましい。
【0037】
以上に述べたところにおいて、フィルム状逆止注出ノズル2の基端辺7位置で、
図5にノズルの平面図に示すように、表裏の軟質積層フィルムの一方だけに
図5(a)に示すような方形の凹凸を形成した場合、および表裏の軟質積層フィルムの双方に
図5(b)に示すような方形の凹凸を基端辺7の延在方向に同位相で形成した場合には、
図5(a)に示すように、他方の軟質積層フィルムの基端辺7が、包装袋本体1内へより大きく突出すると否とにかかわらず、表裏の軟質積層フィルムのそれぞれの基端辺7が、注出通路3を閉じる方向に変形されても、両軟質積層フィルム間に隙間が形成され、たとえ袋内被包装物の残量が当初の1/3以下まで減少しても、該被包装物の注出通路3内への流入が十分に担保され、被包装物の注出に際するタイムラグをより効果的に抑制することができる。
【0038】
なお、
図5の二点鎖線は、包装袋本体1の縦シール部分8を示す。
また、
図5(b)に示すところでは、表裏のフィルムのそれぞれの基端辺7を、ともに同位相の方形の凹凸形状としているも、それぞれの基端辺7の凹凸に、基端辺7の延在方向の位相差をつけることも可能であり、これによってまた、それぞれの基端辺7間に被包装物の流入を許容する隙間を形成することができる。
【0039】
図6は、フィルム状逆止注出ノズル2の基端辺7の変形例を示すノズル平面図であり、
図6(a)に示すものは、三角山形状の凸部および凹部の相互を、基端辺7の延在方向に幾分の位相差をつけて形成したものであり、
図6(b)に示すものは、それぞれの基端辺7に設けた凹凸を曲線形状からなるものとし、一方の軟質積層フィルムの山部の頂部を、他方の軟質積層フィルムの谷底に対応させるように位置させてなるものである。
図6に示すこれらのいずれの凹凸によっても、フィルム状逆止注出ノズル2の基端辺7において、表裏の軟質積層フィルムの間に多数の隙間が形成されることになり、被包装物の注出に際するタイムラグをより効果的に抑制することができる。
【0040】
なお、
図6(b)に示すところでは、凸側を主体とした曲線状に形成しているも、谷側を主体とした曲線状に形成しても、同様の隙間をより効果的に実現することができる。
ところで、
図5および6に示す凹凸は、包装袋5内へのガスの封入から独立させて形成することも可能である。
【0041】
以上に述べたところにおいて、より好ましくは、フィルム状逆止注出ノズル2の基端部分を除いて注出通路3の片面もしくは両面に、局部的に、または全体にわたって濡れ処理、たとえばコロナ放電処理、UVオゾン処理、樹脂コーティング処理、金属蒸着処理、無電解めっき処理、プラズマエッチング処理等を施して、液状の袋内被包装物の凝集力、粘度等のいかんにかかわらず、注出通路3への袋内被包装物の薄膜の形成をより確実なものとする。
これによれば、フィルム状逆止注出ノズル2の注出通路3内表面の濡れ性が向上するため、包装体4内に封入したガスによって注出通路3内表面の密着が低下することがなく、セルフシール機能を有効に発揮させて、包装袋5内への外気の意図しない進入を、注出通路3のより十分な密閉をもって、一層効果的に防止することができる。
【0042】
以上、この発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、逆止ノズル2の基端辺7に形成される凹凸の形状、寸法、位相差を含む形成態様等は、所要に応じて適宜に選択することができ、また、包装袋5に充填包装される液状の袋内被包装物は、凝集力、粘度等のいかんにかかわらず、醤油以外の適宜のもの、たとえば各種の液状の飲食品や調味液、薬剤、化粧液、ホットパック食品、レトルト食品、大型袋入りのもの等とすることもできる。