【解決手段】互いに交差する第1の方向及び第2の方向に配置された複数の第1の導体と複数の第2の導体とを、所定の距離だけ離間して対向させて配設し、指示体による押圧により両導体間の距離が変化することに基づく第1の導体と第2の導体との間に形成される静電容量の変化を検出することで指示体の指示位置を検出する指示体検出センサを用いる。指示体検出センサからの受信信号を検出する信号受信回路は、導電性を有する第1の指示体が指示体検出センサに接近した位置及び押圧した位置を、上記の静電容量の変化に基づいて検出する第1のモードと、導電性を有しない第2の指示体が指示体検出センサを押圧した位置を、上記の静電容量の変化に基づいて検出する第2のモードとを有する。
第1の方向に配置された複数の第1の導体と、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に配置された複数の第2の導体とを所定の距離だけ離間して対向させて配設し、指示体による押圧により前記第1の導体と前記第2の導体との一方が撓んで、前記第1の導体と前記第2の導体との距離が変化することに基づいて前記第1の導体と前記第2の導体との間に形成される静電容量が変化する、静電容量方式による指示体検出センサと、
前記複数の第1の導体と前記複数の第2の導体との一方の複数の導体に所定の交流信号を供給するための交流信号供給回路と、
前記複数の第1の導体と前記複数の第2の導体との他方の複数の導体からの、前記所定の交流信号に対応する受信信号を検出する信号受信回路と、
を備え、
前記指示体検出センサは、
前記第1の導体と前記第2の導体とが交差して重なるクロスポイントの領域に、前記第1の導体と前記第2の導体との間に配設されたスペーサを備えており、
前記信号受信回路は、
導電性を有する第1の指示体が前記指示体検出センサに接近した位置及び前記第1の指示体が前記指示体検出センサを押圧した位置を、前記第1の導体と前記第2の導体との間に形成される静電容量の変化に基づいて検出する第1のモードと、
導電性を有しない第2の指示体が前記指示体検出センサを押圧した位置を、前記第1の導体と前記第2の導体との間に形成される静電容量の変化に基づいて検出する第2のモードと、
を有することを特徴とする指示体検出装置。
前記信号受信回路は、前記第1のモードで動作する第1の信号受信回路と、前記第2のモードで動作する第2の信号受信回路とを備え、前記第1の信号受信回路と、前記第2の受信回路とを、並列に実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の指示体検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明による指示体検出装置は、前述した特許文献2に記載の指示体検出センサを用いても構成可能である。しかし、ここでは、特に、前述した特許文献2に記載した指示体検出センサを改良した新規の指示体検出センサを用いる場合として、この発明による実施形態の指示体検出装置を説明する。
【0024】
[特許文献2の指示体検出センサの問題点]
特許文献2の指示体検出センサの構造では、スペーサSpが、クロスポイントの領域ではない、それぞれのクロスポイントの領域を囲む4隅の、上部導体7xと下部導体7yとの両方が形成されていない領域に形成されているために、以下のような問題があった。
【0025】
例えば指示体により上側透明ガラス基板8Uが押圧力Paで押圧された場合、クロスポイントの領域では、
図28で太線の点線で示すように、スペーサSpの高さ分よりもさらに下部導体7y側に近づくように上部導体7xが撓むとする。しかし、これと同じ押圧力Paで、スペーサSpの上部位置で上側透明ガラス基板8Uを押圧しても、スペーサSpの存在により、上部導体7xは、
図28で太線の一点鎖線で示すように、そのスペーサSpの高さまでしか撓まない。
【0026】
すなわち、スペーサSpが存在する、クロスポイントの領域以外の導体7x,7yが存在しない領域では、スペーサSpの高さが、上部導体7xが下部導体7yにもっとも近づける距離となり、スペーサSpが存在する領域と、スペーサSpが存在しないクロスポイントの領域とでは、同じ押圧力で押圧しても、上部導体7xと下部導体7yとの距離に差異が生じ、導体間距離をパラメータとする導体間の静電容量にも差異が生じる。
【0027】
つまり、スペーサSpが存在する領域において、指示体により上部導体7xがスペーサSpの先端に接触するような押圧力以上の押圧力で押圧しても、上側透明ガラス基板8UはスペーサSpの高さ以下に撓むことはないので、そのような押圧力を検出することができない。このため、クロスポイントの領域における押圧力対静電容量と、スペーサSpが存在する領域における押圧力対静電容量とでは、特性が全く異なってしまう。
【0028】
しかも、スペーサSpが存在する領域には、導体7x、7yのいずれも存在しないため、クロスポイントの領域と、それ以外のスペーサSpが存在する領域とでは、導体7xと電極7yとの間の静電容量の差異が大きくなる。
【0029】
一般に、この種の指示体検出センサ及び位置検出装置では、指示体による指示位置のX方向座標及びY方向座標のそれぞれは、互いに隣接する3個の導体に得られる静電容量に応じた信号レベルから検出するようにするが、上記のように、クロスポイントの領域と、スペーサが存在する他の領域との間では、上述のような静電容量の差異のために、指示体による指示位置の座標が精度良く検出することができなくなる。特許文献2の場合には、この位置精度の悪化のために、指示体により、例えば螺旋状になぞり操作をしたときには、
図29に示すように、表示画面上における当該なぞり操作に応じた表示軌跡は、滑らかな曲線とはならずに、ガタガタしたようなものとなってしまうという問題がある。
【0030】
また、特許文献2の場合には、スペーサSpは、クロスポイントの領域以外の導体7x及び7yがいずれも存在しない領域に配置する必要があるため、スペーサSpの配置間隔が、少なくとも導体7x,7yのそれぞれの幅分よりも大きくなる。さらに、クロスポイントの領域の導体7x,7yの間の静電容量により、所定の押圧力を検出することができるように、導体7xについて所定の撓み量を得るようにするために、スペーサSpの高さは、高くする必要があった。
【0031】
このため、上側透明ガラス基板8Uを押圧しながらなぞり操作をしたときに、クロスポイントの領域外のスペーサSpの先端に触れて、いわゆるゴツゴツした操作感となってしまう恐れがあった。
【0032】
以下に説明する指示体検出センサは、以上の問題点を改善したものである。
【0033】
[この発明の実施形態の指示体検出装置の説明]
以下に、この発明の実施形態の指示体検出装置について説明するが、ここでは、表示機能付タブレット装置、タブレット型情報端末あるいはパッド型情報端末などと呼ばれる表示機能付機器に、指示体検出装置を適用した場合を例にして説明する。
【0034】
[指示体検出装置1の概略構成]
図1は、この実施形態の指示体検出装置1の構成の概略を説明するための分解斜視図である。この実施形態の指示体検出装置1は、表示機能付機器の構成である。
図1に示すように、この実施形態の指示体検出装置1は、筐体1E内の最下層にマザーボード1Dが収納され、その上に表示画面を上側(フロントパネル1A側)にしてLCD(Liquid Crystal Display)1Cが設けられる。当該LCD1Cの表示画面側にこの発明の実施形態の指示体検出センサ1Bが設けられる。そして、指示体検出センサ1Bの上側にフロントパネル1Aが設けられ、上述の各収納物1D、1C、1Bが筐体1E内に保持される。
【0035】
ここで、マザーボード1Dには、通信回路、LCD1C用の制御回路、指示体検出センサ1Bに信号を供給する信号供給回路、指示体検出センサ1Bからの信号を受信して、指示位置等を検出する信号受信回路等の種々の回路が形成されている。LCD1Cは、この実施形態の指示体検出装置1の表示機能を実現するための表示手段である。指示体検出センサ1Bは、この発明が適用されて構成されたものであり、ユーザからの種々の指示入力(操作入力)を受け付ける受付手段としての機能を実現している。
【0036】
上述したように、LCD1Cの表示画面は指示体検出センサ1Bを介して観視される。このため、指示体検出センサ1Bは光透過性(透明性)を有するように構成されている。これにより、ユーザは、指示体検出装置1のフロントパネル1A側からLCD1Cに表示される情報を観視しながら、指示体検出センサ1Bを通じて、種々の指示入力を行うことができるようにされる。
【0037】
なお、
図1には図示しなかったが、LCD1Cと指示体検出センサ1Bとは、マザーボードの対応する回路部にそれぞれ接続される。そして、詳しくは後述もするが、指示体検出センサ1Bと、マザーボード1Dに設けられている信号供給回路や信号受信回路により、指示体検出装置が構成される。また、指示体検出装置1は、その外観の大きさが、例えば、用紙サイズでいえば、A5版サイズ、B5版サイズ、A4版サイズなど、種々の大きさのものとして実現される。
【0038】
[指示体検出装置1の構成例]
次に、指示体検出センサ1Bを含む指示体検出装置の構成例について説明する。
図2は、この実施形態の指示体検出装置の構成例を説明するためのブロック図である。
図2に示すように、この実施形態の指示体検出装置は、
図1に示した指示体検出センサ1Bと、信号供給回路200と、信号受信回路300と、制御回路40とからなる。制御回路40は、この実施形態の指示体検出装置の各部を制御するための回路であり、例えばマイクロコンピュータを搭載して構成されている。
【0039】
指示体検出センサ1Bは、信号供給回路200に接続される複数の第1の導体11X1〜11Xmと、信号受信回路300に接続される複数の第2の導体21Y1〜21Ynとを備える。そして、第1の導体11X1〜11Xmは送信導体群11を構成する。また、第2の導体21Y1〜21Ynは受信導体群21を構成する。
【0040】
なお、以下の第1の導体11X1〜11Xm及び第2の導体21Y1〜21Ynの説明において、特に、1本ずつを区別して説明する場合を除き、第1の導体11X1〜11Xmの1本を第1の導体11Xといい、第2の導体21Y1〜21Ynの1本を第2の導体21Yという。また、送信導体群11を構成する第1の導体11Xの数や受信導体群21を構成する第2の導体21Yの数は、ユーザによって操作される指示体検出センサ1Bの指示入力面1BSのサイズなど、実施の態様に応じて適宜設定される。また、この実施形態においては、送信導体群11側が、ユーザの指等の指示体によって指示入力が行われる指示入力面1BSとされる。
【0041】
図2においては、右下端部に示したX軸矢印がX軸方向を示し、同様にY軸矢印がY軸方向を示している。そして、詳しくは後述もするが、送信導体群11は、指示体検出センサ1BのY軸方向(第1の方向の例)に延伸された細長(平板状)のm本の第1の導体11Xが、X軸方向に所定間隔を隔てて配列されて構成されたものである。また、受信導体群21は、指示体検出センサ1BのX軸方向(第2の方向の例)に延伸された細長(平板状)のn本の第2の導体21Yが、Y軸方向に所定間隔を隔てて配列されて構成されたものである。
【0042】
また、詳しくは後述するが、送信導体群11と受信導体群21は、所定の距離だけ隔てて対向配置されている。これにより、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが対向する部分では、コンデンサが構成されるようなっている。そして、この実施形態においては、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが対向して、指示入力面1BSに直交する方向から見た時に互いに重なるクロスポイントの領域に、後述するようにスペーサが配設される。なお、この実施形態において、第1の導体11Xおよび第2の導体21Yは、例えば、銀パターンやITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)膜からなる透明電極膜、あるいは銅箔等で形成される。
【0043】
信号供給回路200は、指示体検出センサ1Bの指示入力面1BSに対する指示体による指示位置や指示位置に加えられた押圧力の検出を可能にするための信号を、この例では、送信導体群11を構成する第1の導体11Xのそれぞれに供給する。信号供給回路200は、
図2に示したように、選択回路24と信号発生回路25とを備えている。選択回路24は、制御回路40からの制御に応じて、信号発生回路25からの信号を第1の導体11Xに選択的に供給する。信号発生回路25は、制御回路40の制御に応じて、所定の周波数を有する、正弦波、矩形波などの交流信号を発生させ、これを選択回路24に供給する。
【0044】
そして、この実施形態の選択回路24は、制御回路40によって、所定時間内に全ての第1の導体11X1〜11Xmに対して信号発生回路25からの信号を供給するように切換制御される。このように、選択回路24によって信号発生回路25からの交流信号を第1の導体11Xに選択的に供給するのは、指示入力面1BS上で複数の指示位置と、これらに加えられた押圧力とを検出することができるようにするためである。
【0045】
信号受信回路300は、この例では受信導体群21を構成する複数の第2の導体21Yから得られる受信信号に対して信号処理をすることにより、指示体による指示入力面1BS上の指示位置の検出と、当該指示位置に加えられた押圧力の検出とを行う。
図2に示すように、信号受信回路300は、増幅回路31と、A/D(Analog/Digital)変換回路32と、指示位置及び押圧力検出回路33とを備えている。
【0046】
増幅回路31は、受信導体群21を構成する第2の導体21Yから得られる受信信号を増幅し、A/D変換回路32に供給する。A/D変換回路32は、増幅回路31において増幅された第2の導体21Yからの受信信号をデジタル信号に変換し、これらを指示位置及び押圧力検出回路33に供給する。
【0047】
指示位置及び押圧力検出回路33は、A/D変換回路32からの信号に基づいて、指示体検出センサ1Bに対して指示体による指示入力が行われた場合に、指示された指示入力面1BS上の指示位置の検出(識別)と加えられた力(押圧力)の検出とを行う。上述したように、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが対向する部分ではコンデンサが構成される。
【0048】
そして、詳しくは後述するが、指示体検出センサ1Bに対して指示体により押圧力が加えられると、その押圧力に応じて指示入力面1BSが撓んで、押圧力が印加された部分の1または複数個の第1の導体11Xと1または複数個の第2の導体21Yとの間の距離が変化する。そのために、それらの第1の導体11Xと1または複数個の第2の導体21Yとで構成されるコンデンサの静電容量が、押圧力に応じて変化する。このため、静電容量が変化した部分では、第1の導体11Xから第2の導体21Yに伝達される信号(電流)が増加することになる。
【0049】
そこで、複数の第2の導体21Yのそれぞれの導体に流れる信号量(電流量)を監視することにより、指示体が指示体検出センサ1B上のどの位置を指示操作しているのかを検出することができる。なお、どの第1の導体11Xに交流信号を供給しているのかは、制御回路40からの情報により認識することができる。これらの情報により、信号発生回路25からの交流信号が供給されている第1の導体11Xと、指示体による指示位置に応じて信号量が変化した第2の導体21Yとが交差する部分が、指示体によって指示された位置領域であると検出することができる。しかも、指示体による押圧に応じてコンデンサの静電容量が変化するため、第2の導体21Yに流れる信号量を検出することで、指示体によって指示体検出センサ1Bにどの位の押圧力が加えられたかも検出することができる。
【0050】
このように、指示位置及び押圧力検出回路33は、指示体が指示する位置に加え、指示体による押圧力に応じた信号を検出することができる。この指示位置及び押圧力検出回路33で検出された指示位置や押圧力は、マザーボード1Dの中の所定の制御回路に供給され、ユーザからの入力情報として用いられる。
【0051】
この実施形態の指示体検出センサ1Bを備える指示体検出装置1は、指示体が、人の指や、芯体及び筐体が導電性を有するペン型の指示体(いわゆる静電ペン)であって、この導電性を有する指示体を通じてグラウンドに逃げる電荷によって第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間の静電容量が変化することを検出することで、指示体による指示位置及び押圧力を検出する第1のモードを有すると共に、ゴム手袋をしたユーザの指や、導電性を有しないペン型の指示体による押圧力に応じた第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間の静電容量の変化を検出することで、指示体による指示位置及び押圧力を検出する第2のモードを有するハイブリッド型の構成とされている。
【0052】
このハイブリッド型の構成については、後で詳述するが、この実施形態では、制御回路40は、指示位置及び押圧力検出回路33を、第1のモードにおける指示体の検出処理動作と第2のモードにおける指示体の検出処理動作とを、時分割で切り替えて交互に繰り返すことで、異なるタイプの指示体によって同時に指示体検出センサ1Bに対して指示入力操作があっても、そのタイプの違いに関わらず、複数の指示体の同時検出を可能な構成としている。なお、制御回路40は、増幅回路31に対してゲイン制御信号を供給し、増幅回路31のゲインを、第1のモードと、第2のモードとで切り替える制御も行う。
【0053】
[指示体検出センサ1Bの構成例]
次に、指示体検出センサ1Bの構成例について、
図3及び
図4を参照しながら具体的に説明する。
図3は、実施形態の指示体検出センサ1Bを、指示入力面1BS側から、当該指示入力面1BSに直交する方向から見た構成例を説明するための図であり、指示体検出センサ1Bの一部を示すである。
図4は、実施形態の指示体検出センサ1Bの断面図であり、ここでは、
図3におけるA−A断面図である。なお、
図3に示す指示体検出センサ1Bでは、第1の導体11Xが配列された方向がX軸方向であり、第2の導体21Yが配列された方向がY軸方向である。なお、以下の説明においては、指示入力面1BS側を上側と称する。
【0054】
図4に示すように、指示体検出センサ1Bは、上側基板(第1の基板)10と下側基板(第2の基板)20とが上下に配置されて構成される。上側基板10の、下側基板20との対向面とは反対側の上面10aが指示入力面1BSとなる。
【0055】
上側基板10は、指示入力面1BS(上側基板10の上面10a)において指示体による押圧がなされたときに下側基板20側に撓むことが可能な可撓性の材料からなり、この例では、比較的に厚みが薄いガラス基板や、PET(polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)、LCP(liquid crystal polymer)などの透明の合成樹脂からなるフィルム基板で構成されている。下側基板20は、指示体による押圧を受けることはないので、撓む必要はなく、この例では、上側基板10よりも厚いガラス基板や剛体の透明の合成樹脂からなる。
【0056】
そして、上側基板10の下側基板20との対向面側には、それぞれ所定の幅Wxを有し、Y軸方向に延伸されたm(mは2以上の整数)本の細長(平板状)の第1の導体11X1,11X2,・・・,11Xi−1,11Xi,11Xi+1,・・・,11Xmが、所定の配列ピッチPx(>Wx)で、X軸方向に配列されている。このm本の第1の導体11Xのそれぞれは、この例では、ITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極で構成される。このm本の第1の導体11Xのそれぞれは、第1の接続導体(図示は省略)のそれぞれを通じて、マザーボード1Dに設けられる
図2に示した信号供給回路200を構成する選択回路24に接続される。
【0057】
また、下側基板20の上側基板10との対向面側には、それぞれ所定の幅Wyを有し、X軸方向に延伸されたn(nは2以上の整数)本の細長(平板状)の第2の導体21Y1,21Y2,・・・,21Yj−1,21Yj,・・・,21Ynが、所定の配列ピッチPy(>Wy)でY軸方向に配列されている。このn本の第2の導体21Yのそれぞれは、この例では、ITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極で構成される。このn本の第2の導体21Yのそれぞれは、第2の接続導体(図示は省略)を通じて、マザーボード1Dに設けられた、
図2に示した信号受信回路300を構成する増幅回路31に接続される。
【0058】
なお、この実施形態では、前記幅Wx、Wyは、同一とされると共に、その大きさは例えば2〜2.5mmに選定され、この例では、Wx=Wy=2.5mmに選定される。また、この実施形態では、前記配列ピッチPx、Pyも同一とされ、例えばPx=Py=3.2mmに選定される。
【0059】
また、ガラス基板あるいは合成樹脂素材からなるフィルム基板などが適用される、可撓性を有する上側基板10には、第1の導体11Xが蒸着、印刷などの既知の導体形成プロセスによって上側基板10と一体的に形成される。同様にして、ガラス基板あるいは合成樹脂基板などが適用される下側基板20には、第2の導体21Yが蒸着、印刷などの既知の導体形成プロセスによって下側基板20と一体的に形成される。
【0060】
なお、図示は省略するが、上側基板10には、m個の第1の導体11X1〜11Xmの全体を覆うように誘電体部材が設けられる。この誘電体部材は、例えばPET(polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)、LCP(liquid crystal polymer)などの比誘電率が2〜10程度の誘電体からなる透明の誘電体フィルムで構成される。この誘電体部材の層の厚さは、例えば5〜15μmとされる。また、ガラス素材も誘電体部材として適用しうる。更には、この誘電体部材は、高誘電率フィラーを高密度に充填した誘電体フィルム(比誘電率が40以上)により構成しても良い。この他、誘電体部材としては、透明エポキシ樹脂、フォトレジスト用アクリル系樹脂、高光透過性フッ素樹脂、1液性のウレタン系樹脂などの透明性を有する種々の誘電体が適用しうる。なお、この誘電体部材は、設けなくてもよい。
【0061】
そして、上側基板10の周部と下側基板20の周部とを、上側基板10の周部と下側基板20の周部とが所定の距離dだけ隔てられるように、枠形状の張り合わせ部材30を介して張り合わされて封止される。したがって、この実施形態の指示体検出センサ1Bにおいては、下側基板20と、上側基板10との間の空隙には、この例では、空気層14が、封止されて介在する。この実施形態では、下側基板20と、上側基板10との間の距離dは、20〜100μmとされ、この例では、d=40μmとされている。なお、下側基板20と、上側基板10との間の空隙には、空気ではなく、透明の液体を封入するようにしてもよく、空気層ではなく、液体層の場合の方が、上側基板10と下側基板20との間の透明度が高くなる。
【0062】
そして、この実施形態においては、指示体検出センサ1Bを指示入力面1BS側に直交する方向から見たときに、第1の導体11Xと、第2の導体21Yとが互いに重なり合う領域であるクロスポイントの領域(横×縦=Wx×Wyの領域)にスペーサを設ける。すなわち、前述した特許文献2と異なり、クロスポイントの領域以外の第1の導体11X及び第2の導体21Yが存在しない領域にはスペーサを設けない。
【0063】
そして、この実施形態においては、スペーサは、クロスポイントの領域内のみにおいて、指示体による押圧による上側基板10の撓み量が、当該クロスポイントの領域での値よりも、クロスポイントの領域以外での値の方が大きくなるような位置、形状及び高さで配設される。この条件を満足するために、この実施形態では、スペーサは、クロスポイントの領域において、その周縁から所定部囲を除く中央領域に配設するようにする。
【0064】
この例では、
図3及び
図4に示すように、横×縦=Wx×Wyの正方形のクロスポイントの領域のそれぞれの中央の横×縦=Gx×Gyの正方形の領域の四隅に、スペーサSa、Sb、Sc、Sdを設ける。この例では、Gx=Gy=1mmとされる。したがって、横×縦=Gx×Gyの正方形の中央領域の周縁と、横×縦=Wx×Wyの正方形のクロスポイントの領域の周縁までの長さは、(Wx−Gx)/2=(Wy−Gy)/2=(2.5−1)/2=0.75mmとなる。これらの4個のスペーサSa〜Sdは、例えば、透明の誘電体材料を印刷したり、ドットプリンタにおけるインク吐出のような原理で形成される。この場合に、4個のスペーサの材料は、硬質のものであってもよいし、弾性を有するものであってもよい。
【0065】
なお、
図3においては、第2の導体21Y上に在るスペーサSa〜Sdは、透明の第1の導体11Xを通して見えるものとして実線で示したが、実際上は、透明であると共に、その大きさが小さいことから殆ど目につくことはない。このことは、
図3と同様に表される他の図についても同様である。
【0066】
したがって、クロスポイントの領域内においては、4個のスペーサSa、Sb、Sc、SdのX方向及びY方向の互いの離隔距離はGxまたはGyとなる。
【0067】
また、隣り合う第1の導体11Xにおけるスペーサ間のX方向の距離、すなわち、第1の導体11Xi−1のスペーサSdまたはScと、その隣の第1の導体11XiのスペーサSaまたはSbとの距離txは、第1の導体11Xの配列ピッチPx(=3.2mm)よりも小さく、また、クロスポイントの領域内における4個のスペーサSa、Sb、Sc、SdのX方向の離隔距離Gxよりも大きくされる。つまり、Gx<tx<Pxとされ、この例では、距離tx=2.2mmとされる。
【0068】
同様に、隣り合う第2の導体21Yにおけるスペーサ間のY方向の距離、すなわち、第2の導体21Yj−1のスペーサSbまたはScと、その隣の第2の導体21YjのスペーサSaまたはSdとの距離tyは、第2の導体21Yの配列ピッチPy(=3.2mm)よりも小さく、また、クロスポイントの領域内における4個のスペーサSa、Sb、Sc、SdのY方向の互いの離隔距離Gyよりも大きくされる。つまり、Gy<ty<Pyとされ、この例では、距離ty=2.2mmとされる。
【0069】
特許文献2の場合には、前述したように、クロスポイントの領域外の第1の導体11X及び第2の導体21Yがともに存在しない領域にスペーサSpが配置されるために、X方向及びY方向のスペーサ間の距離は、第1の導体11X及び第2の導体21Yの配列ピッチPx,Py以上に大きくしなくてはならなかった。このため、クロスポイントの領域で上側基板10について所定の撓み量を得るために、スペーサSpの高さは、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間の距離と等しいか、それ以下の、例えば10〜60μmとされ、比較的大きく選定されていた。
【0070】
これに対して、この実施形態においては、上述したように、X方向及びY方向のスペーサ間の距離は、第1の導体11X及び第2の導体21Yの配列ピッチPx,Py(=3.2mm)よりも小さい1mmあるいは2.2mmとされている。そして、この実施形態では、スペーサSa,Sb,Sc,Sdは、クロスポイントの領域内に設けられることと相俟って、その高さHは4〜10μmと、特許文献2の場合に比べて低くすることができる。この例では、スペーサSa〜Sdの高さH=6μmとされている。
【0071】
このスペーサSa〜Sdの高さHは、上側基板10に形成されている第1の導体11Xが、スペーサSa〜Sdに接触するまでに、指示体による指示位置の座標計算をするのに十分な静電容量変化が生じている値とされている。したがって、上側基板10に形成されている第1の導体11XがスペーサSa〜Sdに接触してそれ以上撓まない状態になったとしても、その時点で座標計算に十分な必要な信号レベルが得られているので、指示体の検出位置座標は精度良く検出できる。
【0072】
このようにスペーサSa,Sb,Sc,Sdの高さが低くされることにより、第1の導体11Xと、第2の導体21Yとの間の距離dも、特許文献2の場合よりも小さくすることが可能となる。ちなみに、特許文献2の場合の第1の導体11Xと、第2の導体21Yとの間の距離は、100μmであったのに対して、この実施形態では、前述したように、距離d=40μmとすることができる。
【0073】
コンデンサの静電容量Cは、対向する2つの電極の面積をS、当該2つの電極間の距離をD、2つの電極間に存在する誘電体の誘電率をεとすると、
C=ε・S/D …(式1)
という演算式で計算することができる。この実施形態では、(式1)の電極間の距離Dを特許文献2の場合に比べて小さくすることができるので、第1の導体11Xと、第2の導体21Yとの間に形成されるコンデンサの静電容量の値を、特許文献2の場合よりも大きくすることができる。
【0074】
また、第1の導体11Xと、第2の導体21Yとの間の距離を小さくすることが可能であるので、光透過率の減少を抑えることができて、光透過度を特許文献2の場合に比べて高くすることができる。
【0075】
以上のようにして、この実施形態では、クロスポイントの領域の中央領域部分にのみスペースSa〜Sdを配置して、クロスポイントの領域以外の領域には、スペーサを設けない構成としたことにより、スペーサSa〜Sdの高さを、特許文献2の場合よりも低くすることができ、小さい押圧力で大きく上側基板10及び第1の導体11Xを撓み変形させることができる。
【0076】
すなわち、この実施形態の指示体検出センサにおいては、上側基板10及び第1の導体11XがスペーサSa〜Sdに接触するまでは、上側基板10及び第1の導体11Xの押圧力による変形が制限されることがない構成とされる。これにより、例えば数10グラムからの押圧力の検出ができ、かつ、当該押圧力が印加された指示位置の検出座標精度が向上する。
【0077】
しかも、スペーサSa〜Sdの高さが低いので、指示体による押圧移動時に、スペーサSa〜Sdの先端に当接することによるゴツゴツ感は軽減されるという効果もある。
【0078】
そして、この実施形態においては、前述したように、押圧による上側基板10の撓み量が、クロスポイントの領域での値よりも、クロスポイントの領域以外での値の方が大きくなるようにされている。さらに、スペーサSa〜Sdの隣り合う者同士の離隔間隔について、上述したように、Gx<tx<Px及びGy<ty<Pyを満足するようにしたことにより、クロスポイントの領域以外の領域における上側基板10の撓み量を、より大きくすることができる。したがって、クロスポイントの領域以外の領域における指示体による押圧力の印加位置の検出感度が向上する。特に、上述の実施形態では、斜めに隣り合うクロスポイントの領域では、スペーサ間の距離は、X方向及びY方向のスペーサ間距離よりも大きいので、クロスポイントの領域以外の第1の導体11X及び第2の導体21Yが共に存在していない領域を指示体で押圧したときの検出感度が向上する。
【0079】
すなわち、上述の実施形態の指示体検出センサによれば、以上のような構成としたことにより、特許文献2の場合における冒頭で述べた問題点を解消することができる。以下、より詳細に、上述の実施形態の指示体検出センサの効果を説明する。
【0080】
上述の実施形態では、(式1)に示した演算式で表されるコンデンサの原理を応用して、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間に形成される静電容量の大きな変化を引き起こす構造を有している。
【0081】
指示体によって上側基板10が押圧されていない状態においては、上側基板10の第1の導体11Xと、下側基板20の第2の導体21Yとは、所定の距離dだけ離間している。指示体によって上側基板10が下側基板20の方向に押圧されると、上側基板10、第1の導体11Xはそれぞれ可撓性を有しているために、例えば
図5(A)に示すように、上側基板10及び第1の導体11Xは、その押圧力が印加されている部位近傍において下側基板20側に撓み、当該撓んだ部位における上側基板10の第1の導体11Xと下側基板20の第2の導体21Yとの間の距離が、距離dよりも、印加された押圧力に応じて小さくなる。
【0082】
このため、上述の(式1)から明らかなように、当該押圧力が印加された部位の第1の導体11Xと下側基板20の第2の導体21Yとで形成されるコンデンサの静電容量が大きくなる。この場合に、指示体により押圧力が印加されている指示位置の座標は、この例では、いわゆる3点方式により検出される。すなわち、
図5(A)においては、第1の導体11Xが撓むことにより、この第1の導体11Xと対向する3本の第2の導体21Yj−1,21Yj,21Yj+1との間の距離が変化して、第1の導体11Xと、第2の導体21Yj−1,21Yj,21Yj+1とで間で構成されるコンデンサのそれぞれの静電容量Cj−1,Cj,Cj+1が変化する。
【0083】
位置検出装置の信号受信回路300(
図2参照)では、この3つの静電容量Cj−1,Cj,Cj+1の値に応じた信号レベルを検出し、その信号レベルを用いて、指示体により押圧が印加されている指示位置のY座標を検出する。指示体により押圧が印加されている指示位置のX座標は、送信信号を供給している第1の導体11Xがいずれであるかにより検出する。また、位置検出装置の信号受信回路300では、前記静電容量Cj−1,Cj,Cj+1の値に応じた信号レベルから、指示体による押圧力を算出する。
【0084】
冒頭の課題の欄で述べたように、特許文献2の場合には、クロスポイントの領域以外のスペーサSpが配置されている領域部分では、指示体により押圧力が印加された場合であっても、その印加された押圧力に応じた撓みを生じない。そして、当該クロスポイントの領域以外の領域では第1の導体11X及び第2の導体21Yが存在しないこともあって、座標値を正しく検出することができる静電容量を得ることができない問題があった。
【0085】
これに対して、この実施形態では、クロスポイントの領域の中央領域部分にのみスペースSa〜Sdを配置したことにより、クロスポイントの領域以外の領域においても、上側基板10及び第1の導体11Xが、クロスポイントの領域よりも、より撓みを生じるようになり、クロスポイントの領域以外の領域で指示体による押圧入力があった時にも、座標値を正しく検出することができる静電容量を得ることができるようになる。
【0086】
この実施形態においては、
図5(B)に示すように、クロスポイントの領域以外の領域において、指示体による押圧力が印加されると、当該クロスポイントの領域以外の領域にはスペーサが存在しないので、上側基板10に形成されている第1の導体11Xは、図示のように、同じ押圧力がクロスポイントの領域上で印加される場合よりも、大きく撓む。
【0087】
すなわち、指示体による押圧力が丁度スペーサSdの上で印加された場合には、
図5(C)において点線で示すように、上側基板10に形成されている第1の導体11Xは、スペーサSdの高さのところまでしか撓まないが、クロスポイントの領域以外の領域において、指示体により同じ押圧力が印加されたときには、実線で示すように撓む(
図5(B)と同じ)。
【0088】
そして、
図5(B),(C)に示すように、クロスポイントの領域以外の領域においては、第1の導体11Xが大きく撓んで、下側基板20側に近づいたとしても、その直下には第2の導体21Yが存在しないので、第1の導体11Xの撓みは、その領域の両側にある第2の導体21Yとコンデンサの静電容量に変化を与えるものとなる。
【0089】
そして、
図5(C)から明らかなように、この実施形態においては、クロスポイントの領域以外の領域における第1の導体11Xの撓み量が、クロスポイントの領域における第1の導体11Xとの撓み量よりも大きくなるので、クロスポイントの領域と、クロスポイントの領域以外の領域とで、指示体による押圧力に対する静電容量の変化を同様にすることができる。
【0090】
このため、
図28及び
図29を用いて説明した特許文献2の場合における指示体による押圧力が印加された指示位置の座標精度の問題を、この実施形態によれば、改善することができる。ちなみに、この実施形態において、
図29と同様の螺旋状のなぞり操作をした場合には、LCD1Cの表示画面においては、
図6に示すような滑らかな曲線の表示とすることができる。
【0091】
この実施形態の指示体検出センサ1Bにおいて、指示体により押圧した場合に、上側基板10及び第1の導体11Xの押圧された部分がどのように変形するかの撓み量の分布図を、
図7〜
図9に示す。
図7〜
図9において、分布図中の白抜きの小さな矢印の位置が、指示体による押圧が印加されている位置を示しており、また、上側基板10及び第1の導体11Xの撓み量は、同じ撓み量位置を結んで等高線と同様の表示をしている。さらに、撓み量が大きいほど、その等高線内を濃い塗り潰しとして示している。なお、この
図7〜
図9では、シャープペンシルの芯のような細く先の尖った指示体で押圧したときの様子を示している。
【0092】
図7(A)〜(E)は、指示体による押圧力の印加位置が、1本の第1の導体11X上を移動したときの、スペーサSa〜Sdとの各位置関係における撓み量の変化を示す図である。指示体による押圧力の印加位置が、1本の第2の導体21Yに沿って移動したときの、スペーサSa〜Sdとの各位置関係における撓み量の変化も、指示体による押圧力の印加位置の移動方向において同様のものとなる。
【0093】
また、
図8(A)〜(E)は、指示体による押圧力の印加位置が、指示体検出センサ1Bの上側基板10上において、斜め上方向に移動したときの、スペーサSa〜Sdとの各位置関係における撓み量の変化を示す図である。
【0094】
さらに、
図9(A)〜(F)は、指示体による押圧力の印加位置が、クロスポイントの領域以外の領域であって、隣り合う2本の第2の導体21Y間の領域の上を、X方向に移動したときの、スペーサSa〜Sdとの各位置関係における撓み量の変化を示す図である。指示体による押圧力の印加位置が、クロスポイントの領域以外の領域であって、隣り合う2本の第1の導体21X間の領域の上を、Y方向に移動したときの、スペーサSa〜Sdとの各位置関係における撓み量の変化も、指示体による押圧力の印加位置の移動方向において同様のものとなる。
【0095】
図7〜
図9から明らかなように、この実施形態の指示体検出センサ1Bの構成によれば、クロスポイントの領域以外を指示体により押圧した場合にも、上側基板10及び第1の導体11Xの撓みによる変形が、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが重なるクロスポイントの領域へ伝搬される。つまり、クロスポイントの領域以外の領域を、指示体により押圧した場合にも、クロスポイントの領域で、静電容量に基づく検出レベルの変化が起こる。このために、この実施形態の指示体検出センサによれば、指示入力面1BSの全ての位置において、指示体による押圧により指示された位置の、精度の高い座標検出が可能となり、また、その際の指示体による押圧力の検出もできる。
【0096】
以上は、主として、クロスポイントの領域以外における指示体による押圧力に対する上側基板10及び第1の導体11Xの撓みについて言及したが、クロスポイントの領域において、上述と同様に、シャープペンシルの芯のような細く先の尖った指示体で押圧したときの様子を説明すると、以下の通りとなる。
【0097】
すなわち、
図10(A)〜(D)は、シャープペンシルの芯のような細く先の尖った指示体でクロスポイントの領域の中央領域を押圧力Pで押し、かつ、その押圧位置を、横向矢印(
図10(B)及び(C)参照)で示すように、クロスポイントの領域の中央領域の中心位置から外周方向にスペーサSa〜Sdの真上まで移動させたときの第1の導体11Xの撓みの様子を示している。
図10では、簡単のため、上側基板10は省略している。
【0098】
そして、
図10(A)〜(D)においては、クロスポイントの領域において第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間で生じる静電容量を、スペーサSa〜Sdで囲まれる中央領域でのコンデンサの静電容量Cαと、スペーサSa〜Sdで囲まれる中央領域外の両側のコンデンサの静電容量Cβ及びCγとに分けて考え、それら3つのコンデンサが並列に接続されているものとして説明する。なお、
図10では、静電容量Cα、Cβ及びCγを模式的に四角形により示し、その高さが静電容量値に対応するものとして示している。この場合、クロスポイントの領域において第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間で生じる静電容量は、3つの静電容量Cα,Cβ、Cγの和として考えることができる。
【0099】
この場合、
図10(A)〜(D)に示すように、指示体の移動に従う第1の導体11Xの撓み量の変化は、押圧位置がスペーサSa〜Sdのいずれかの真上に至るまでは、クロスポイントの領域の中央領域と、当該中央領域の両側の中央領域外の領域とでは、逆の作用をする。すなわち、
図10(B),(C)に示すように、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間の距離は、クロスポイントの領域の中央領域では増加し、当該中央領域の両側の中央領域外の領域では減少する。このため、3つの静電容量Cα,Cβ、Cγも、その距離の変化に応じて変化するので、その合成静電容量は、殆ど変化しない。
図10(B),(C),(D)において、下側基板20内に示した矢印は、3つの静電容量Cα,Cβ、Cγが、その前段階と比較して増えたか(上向き矢印)、減ったか(下向き矢印)を表している。
【0100】
したがって、この実施形態の指示体検出センサ1Bにおいては、指示体による押圧位置が、クロスポイントの領域の中央領域の中心位置から外周方向にスペーサSa〜Sdの真上まで移動しても、クロスポイントの領域全体としての静電容量の変動は殆どなく、安定な指示体の検出信号レベルを得ることができ、指示体位置の検出座標精度が向上する。
【0101】
なお、
図10を用いて説明したのは、指示体の押圧位置が第1の導体11Xの長手方向(縦方向)に移動した場合であるが、
図11の矢印に示すように、縦方向のみではなく、横方向や斜め方向に移動した場合にも同様となる。
【0102】
スペーサSa〜Sdが配置される位置や、その高さは、上述したクロスポイントの領域内の任意の位置で指示体により押圧された時の第1の導体11Xの撓みに伴う静電容量の変化ができるだけ生じないように設定され、これにより、スペーサSa〜Sdの設置によるクロスポイントの領域での信号検出レベルに対する影響が最小限に抑えられるようにされる。
【0103】
また、上述の実施形態による指示体検出センサにおいては、上側基板10と下側基板20とは周部において枠形状の張り合わせ部材30を介して張り合わされて、上側基板10と下側基板20との間に空気が封止されている。封止されて閉じ込められた空気は、指示体の押圧に応じて圧力変化を生じ、その圧力変化により、静電容量の変化をより大きくすることができる。このことを、
図12を用いて説明する。ここで、
図12(A)において下側基板20と対向する曲線は、指示体による押圧力Pによる上側基板10に形成されている第1の導体11Xの撓み変化を示し、
図12(B)において下側基板20と対向する曲線は、第1の導体11Xの撓み変化に応じて生じる静電容量Cの変化を示している。
【0104】
すなわち、
図12(A)に示すように、上側基板10が押圧力Pで押圧されると、当該押圧された上側基板10の部位が凹み、当該部位の内部に封入されていた空気の体積が減少するが、上側基板10と下側基板20との間の空気が封止されているので、押圧により体積が減少した分、内部の空気の圧力が上昇し、押されていない領域において、押圧力Pと逆方向の力が生じる。
【0105】
このため、押圧力Pが印加された部位は、
図12(A)に示すように、上側基板10と下側基板20との間の距離が小さくなるので、その静電容量は、
図12(B)に示すように、押圧力の印加前よりも大きくなるのに対して、押圧力Pと逆方向の力により押し返された押圧位置の両側の部位は、
図12(A)に示すように、上側基板10と下側基板20との間の距離が大きくなるので、その静電容量は、
図12(B)に示すように、押圧力の印加前よりも小さくなる。
【0106】
このように、上側基板10及び第1の導体11Xは、押圧力Pが印加された部位とその両側の部位とで差動的な撓み変位をするので、3点法により指示体により押圧された位置の座標を算出する場合の精度が向上する。
【0107】
前述した特許文献2に開示されている指示体検出装置では、前述のハイブリッド型の構成の場合にも精度良く検出することができない。すなわち、第1のモードでは、スペーサに関係なく指示体の位置の検出が可能である。一方、第2のモードでは斑なく検出することができるが、指示体によりスペーサの真上を押圧した場合とスペーサの無いクロスポイントの領域を押圧した場合とで、邪魔になるスペーサの影響を受けて、押圧の検出に斑ができることは
図29から明らかである。したがって、従来のハイブリッド型の指示体検出装置は精度の悪いものであった。これに対して、クロスポイントの領域に配置されるスペーサによる本実施形態では、いわゆる第2のモードでの精度が向上して、ハイブリッド側の指示体検出装置の実現が可能となった。
【0108】
[指示体検出装置1におけるハイブリッド型の構成について]
前述したように、上述の構成の指示体検出センサ1Bを備える指示体検出装置1においては、人の指や、いわゆる静電ペンからなる導電性を有する指示体による指示位置及び押圧力を検出する処理動作を行う第1のモード(静電対応モード)と、ゴム手袋をしたユーザの指や、導電性を有しないペン型の指示体による指示位置及び押圧力を検出する処理動作を行う第2のモード(非静電モード)とを、
図13に示すように、所定時間T毎に交互に繰り返すように構成する。
【0109】
ここで、所定時間Tは、例えば送信導体(この例では第1の導体11X)に送信信号を供給している時間の1/2の時間とすることができる。すなわち、送信導体に送信信号を供給している時間の前半と、後半とで、第1のモードと、第2のモードとを切り替えるようにする。送信信号を送信導体の1本ずつに順次に供給するのであれば、当該1本の送信導体に送信信号を供給する時間の前半と後半とで、第1のモードと第2のモードとを切り替えるようにし、送信信号を複数本の送信導体単位で同時に供給するのであれば、当該複数本の送信導体に送信信号を供給する時間の前半と後半とで、第1のモードと第2のモードとを切り替えるようにする。
【0110】
また、所定時間Tは、指示体検出センサ1Bを構成する送信導体(この例では第1の導体11X)の全てに送信信号を供給し、これに対応して受信導体(この例では第2の導体21Y)からの受信信号の処理をして、指示入力面1BSにおける指示体による指示位置及び押圧力の検出をするための計算処理を終了するまでの時間とすることもできる。すなわち、この場合には、指示入力面1BSの全域における指示体による指示位置及び押圧力の検出の1回ごとに、第1のモードと第2のモードとを切り替えるようにするものである。なお、指示入力面1BSの全域における指示体による指示位置及び押圧力の検出の1回毎ではなく、複数回ごとに、第1のモードと第2のモードとを切り替えるようにしてもよい。
【0111】
<第1のモード(静電対応モード)の説明>
指示体検出センサ1Bの上側基板10の表面である指示入力面1BS上に指などの指示体が存在しないときには、送信導体、この例では、第1の導体11Xに供給された送信信号(電圧信号)により、受信導体、この例では、第2の導体21Yと送信導体(第1の導体11X)とのクロスポイントの領域における静電容量Coに電流が流れる。その電流は第2の導体21Yに流れて、信号受信回路300に受信信号(電流信号)として供給される。これは、指示入力面1BSの全てのクロスポイントの領域において同様となるので、指示入力面1BS上に指や静電ペンなどの指示体が存在しないときには、第2の導体21Y1〜21Ynの全てから、
図15(A)に示すように、同レベル(同じ電流値)の受信信号が信号受信回路300に供給される。この状態は、第1のモードだけでなく、第2のモードにおいても同様であることは言うまでもない。
【0112】
次に、
図14に示すように、指示入力面1BS上において、指示体15の例としての静電ペンが、指示入力面1BSに対して接触はしていないが近接した位置(いわゆるホバーリング状態)に置かれたり、指示入力面1BSと接触する位置に置かれたりして指示入力されると、その指示入力位置においては、指示体15と第2の導体21Yとの間での結合により静電容量CfaまたはCfb(なお、指示体15を手で持っている人体の静電容量分を含む)が生じる。すると、指示体15による指示入力位置に対応するクロスポイントの領域においては、送信信号(電圧信号)により静電容量Coに流れる電流の一部が、静電容量CfaまたはCfbを通じて消失するようになる。
【0113】
その結果、
図15(B)に示すように、指示体15による指示入力位置の第2の導体21Yに流れる電流は、指示体15が存在しないときの値ref(これを基準値とする)よりも減少する。
【0114】
信号受信回路300では、この基準値refよりも減少する電流変化を検出することで、指示体15が、指示入力面1BSに対して離隔した位置に置かれたこと、また、接触位置に置かれたことを検出する。そして、その減少する電流変化が生じたクロスポイントの位置を検出することにより、指示入力面1BSに対して離隔した位置から接触位置までの指示体15による指示入力位置を検出する。
【0115】
そして、指示体15が、指示入力面1BSに接触した状態から、さらに、指示入力面1BSを押圧する状態になると、
図16に示すように、上側基板10の当該押圧力が印加された部位が撓み、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの距離が短くなって、両電極間の静電容量が、静電容量Coよりも押圧力に応じた分だけ大きくなる。そして、指示体15により印加される押圧力が大きくなって、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間の静電容量の大きくなる変化分が、静電容量Cfbよりも大きくなると、当該静電容量Cfbを通じて消失していた電流量よりも、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間の静電容量を通じて流れる電流量が大きくなる。
【0116】
その結果、
図17に示すように、指示体15による押圧位置の第2の導体21Yに流れる電流は、指示体15が存在しないときの基準値refよりも増加する。
【0117】
信号受信回路300では、この基準値refよりも増加する電流変化が生じている位置を検出することで、指示体15により、指示入力面1BSが押圧されている位置を検出すると共に、その基準値refに対する増加量から押圧力を検出する。
【0118】
<第2のモード(非静電モード)の説明>
この第2のモードにおける検出対象の指示体は、前述したように導電体ではないので、指示体検出装置1では、第2のモードでは、指示体のホバーリング状態及び接触状態は検出できない。
【0119】
そして、この第2のモードにおいては、指示体により指示入力面1BSが押圧されて、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの距離が短くなると、前述の
図17に示したように、指示体15による押圧位置の第2の導体21Yに流れる電流は、当該指示体により押圧力画印加されていないときの基準値refよりも増加する。
【0120】
そして、この第2のモードにおいては、信号受信回路300では、この基準値refよりも増加する電流変化が生じている位置を検出することで、指示体により、指示入力面1BSが押圧されている位置を検出すると共に、その基準値refに対する増加量から押圧力を検出する。
【0121】
<第1のモードと第2のモードとの切り替えについて>
信号受信回路300の制御回路40は、指示位置及び押圧力検出回路33における処理動作を、前述した所定時間T毎に、第1のモード用の処理動作と、第2のモード用の処理動作とに、時分割で切り替えるようにする。また、制御回路40は、第1のモードと、第2のモードとで、増幅回路31の利得(ゲイン)を変更するように制御する。
【0122】
この利得の制御は、以下のような理由による。すなわち、第1のモードにおいては、
図17のように電流量が増加する状態が、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間の増加する静電容量の変化分が、静電容量Cfbよりも大きくなるところから生じる。これに対して、第2のモードにおいては、指示体により押圧力が指示入力面1BSに対して印加された時点から生じる。つまり、第1のモードにおいては、
図17のように電流量が増加する状態になるには、指示体により印加される押圧力(筆圧)は、静電容量Cfbに対応する静電容量の変化分のオフセットが必要である。一方、第2のモードにおいては、このようなオフセット分は存在しない。
【0123】
そこで、制御回路40は、第1のモードでは、増幅回路31の利得(ゲイン)を、第2のモードのときに比べて、上記のオフセット分だけ大きくなるように制御する。これにより、
図17のように、受信信号レベルが基準値refよりも大きくなる方向における押圧力検出処理において、押圧力対受信信号レベルの特性を、第1のモードと第2のモードとほぼ同じになるように補正する。
【0124】
なお、この実施形態では、指示位置及び押圧力検出回路33では、第1のモードで検出した指示体の位置と、第2のモードで検出した指示体の位置とを区別して管理し、検出した指示体のその後の位置移動及び押圧力変化に応じた検出を、指示体のタイプに応じて行うことができるようにしている。区別して管理する方法は、第1のモードで検出した指示体の位置を記憶するバッファメモリと、第2のモードで検出した指示体の位置を記憶するバッファメモリとを異なるものとする方法や、バッファメモリは共通として、第1のモードで検出した指示体の位置情報と、第2のモードで検出した指示体の位置情報とに、それぞれを識別する情報を付加して記憶しておく方法などを用いることができる。
【0125】
[指示体検出センサ1Bの変形例]
上述の実施形態の説明における指示体検出センサ1Bでは、スペーサとしては、クロスポイントの領域の中央の正方形の領域の4隅に、4個のスペーサSa〜Sdを配設するようにした。しかし、スペーサは、クロスポイントの領域の中央領域に配置されていれば、上述の例に限られるものではなく、1個でも、また、上述の例のような複数個であってもよい。
【0126】
図18(A)及び(B)は、クロスポイントの領域の中央領域に、1個のスペーサを配設する場合の例であり、この例では、前述した4個のスペーサSa〜Sdで囲まれる正方形の領域の全体に、スペーサSa〜Sdと同じ高さの、平らで薄い柱状体からなるスペーサSeを配設する。
【0127】
なお、1個のスペースの形状は、
図18の例のように4角柱状に限られるものではなく、多角形の角柱状、あるいは円柱状であってもよい。
【0128】
ただし、この場合に、1個のスペーサの形状は、クロスポイントの領域の周部の4辺のそれぞれに対して、同じ距離関係となるような形状であることが好ましい。上側基板10及び第1の導体11Xの撓み変形が、クロスポイントの領域の中心位置から周部の4辺に向かう方向のそれぞれにおいて同様となるようにして、方向によって、撓み変形が異なることで指示体の座標計算精度が劣化するのを防止するためである。
【0129】
また、
図18(C)及び(D)は、クロスポイントの領域に、複数個のスペーサを設ける場合の他の例であり、この例では、クロスポイントの領域の中央領域に、4角形状のクロスポイントの領域に対して45度傾けた4角形状の領域の4隅のそれぞれに、スペーサSf,Sg,Sh,Siを配設する。
【0130】
また、複数個のスペーサは、上述の例のような4個に限られるものではなく、4個以上であってもよい。ただし、この場合にも、複数個のスペーサの配設数及び配設位置は、クロスポイントの領域の周部の4辺のそれぞれに対して、同じ距離関係となるようなものであることが好ましい。また、隣り合うクロスポイントの領域におけるスペーサの、X方向及びY方向の距離(
図3の距離tx、tyが対応)は、同じクロスポイントの領域のスペーサのX方向及びY方向の間隔(
図3のGx,Gyが対応)よりも大きいことを満足するようにしておくものである。これにより、上側基板10及び第1の導体11Xの撓み量が、クロスポイントの領域の中央領域での値よりも、クロスポイントの領域以外での領域での値が大きくなるようにする。
【0131】
スペーサの形状は、
図18(A)及び(B)に示すような扁平の端面が平面である必要はなく、また、
図18(C)及び(D)に示すような先端が先鋭である形状である必要はなく、いわゆる裾広がりの形状であってもよい。例えば
図18(E)及び(F)は、クロスポイントの領域に、円形の1個のスペーサを配設する場合の例であり、この例では、クロスポイントの領域の周縁部に亘って、裾広がりのドーム状のスペーサSjを配設する。
【0132】
なお、複数個のスペーサは、中央領域の周部に配設するだけではなく、中央領域の周部と中央領域の内部の両方に配設するようにしてもよい。
【0133】
また、スペーサは、硬質の材料で構成してもよいが、弾性体で構成してもよい。スペーサを弾性体で構成した場合には、指示体による押圧力によって第1の導体11Xと第2の導体21Yとが更に接近可能となり、より感度の向上を期待できる。
【0134】
なお、上述の実施形態では、スペーサは、第2の導体21Y上に形成するようにしたが、第1の導体11X上に形成するようにしても同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0135】
なお、上述の実施形態の指示体検出装置1においては、タイプの異なる2種類の指示体を、区別なく検出することができるように、第1のモードと第2のモードとを時分割で実行するハイブリッド型の構成とした。しかし、指示体検出装置1にモード切替ボタンを設け、使用する指示体に応じて、第1のモードと、第2のモードとを切り替えて、それぞれのモードの専用の装置として使用することもできる。
【0136】
[指示体検出センサの他の実施形態]
上述の実施形態における指示体検出センサ1Bにおいては、上側基板10に形成された第1の導体11Xと、下側基板20に形成された第2の導体21Yとの間には、空気層を封入するようにした。しかし、上下の電極間の隙間が空気層である場合、その空気層で反射が起こり、光の透過率が下がる。光の透過率の減少は、指示体検出装置において、指示体検出センサの下部に配置されるLCDの表示画面の輝度を減少させるため、好ましくない。
【0137】
そこで、以下に説明する指示体検出センサの他の実施形態では、上側基板10に形成された第1の導体11Xと、下側基板20に形成された第2の導体21Yとの間には、空気層に代えて、透明弾性樹脂材料を封入することで、光学特性を改善するようにする。この実施形態の指示体検出センサの構成は、上述の実施形態とその他の点は同一とする。したがって、上述の実施形態の指示体検出センサと同一部分には、同一参照符号を用いて、この実施形態を、以下説明する。
【0138】
この場合に、クロスポイントの領域の第1の導体11X上、または、第2の導体21Y上にスペーサを配設した後に、透明弾性樹脂材料を封入する製造方法の場合には、工数が増加すると共に、高コストとなる。
【0139】
そこで、この実施形態においては、透明弾性樹脂として、紫外線硬化型光学弾性樹脂(OCR(Optical Clear Resin/LOCA)を用いて、この紫外線硬化型光学弾性樹脂(以下、OCRという)を、上側基板10に形成された第1の導体11Xと、下側基板20に形成された第2の導体21Yとの間に封入し、その封入後、スペーサに対応する部分のみを硬化させるようにする製造方法を用いる。
【0140】
この場合に、スペーサに対応する部位では、OCRを完全硬化させるが、スペーサ以外の部分では、全く未硬化の液体のままとする場合と、半熟硬化させてゲル状態またはゾル状態とする場合とがある。
【0141】
そして、上側基板10と下側基板20との間に封入したOCRにおいて、スペーサを上述の実施形態と同様に、所定の高さまで形成する場合(第1の製造方法)と、スペーサを、上側基板10と下側基板20との間を橋絡するように形成する場合(第2の製造方法)とがある。
【0142】
<第1の製造方法の説明>
先ず、スペーサを所定の高さまで形成する第1の製造方法の例について説明する。
【0143】
先ず、上側基板10には、第1の導体11Xをその一面側に形成すると共に、下側基板20には、第2の導体21Yをその一面側に形成する。そして、上側基板10と、下側基板20とを、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが互いに直交するような状態で、かつ、上側基板10の第1の導体11Xが形成されている面と、下側基板20の第2の導体21Yが形成されている面とを、前述した所定の距離dだけ離間させて対向させるようにする(
図19(A)参照)。
【0144】
次に、第1の導体11Xを形成した上側基板10と、第2の導体21Yを形成した下側基板20との間の距離dの隙間に、硬化前の液体の状態のOCR16を流入させる(
図19(B)参照)。そして、上側基板10の周部と下側基板20の周部とを、上側基板10の周部と下側基板20の周部とが所定の距離dだけ隔てられるように枠形状の張り合わせ部材を介して張り合わせて、上側基板10と、下側基板20との間の距離dの隙間に、OCR16を封止する。
【0145】
次に、
図20に示すように、前述の実施形態で説明した指示体検出センサ1Bにおいて、全てのスペーサSa〜Sdの位置に対応する位置に貫通孔51〜54を形成したマスク部材50を、上側基板10の上に配設する(
図19(C)参照)。この場合に、マスク部材50は、紫外線UVを透過しない材料で構成されているものである。
【0146】
そして、
図19(C)において矢印で示すように、各貫通孔51〜54を通じて紫外線UVを照射して、各貫通孔51〜54を通じて紫外線UVが照射されたOCR16の部分を硬化させるようにする。この場合に、紫外線UVの積算光量、照射強度、波長などを適切に条件選択することにより、OCR16の硬化部分の高さが、前述したスペーサSa〜Sdと同じ高さとなるようにする。
【0147】
これにより、マスク部材50を外すことで、
図19(D)に示すように、前述したスペーサSa〜Sdに対応するスペーサSa´〜Sd´が、第1の導体11X上の、クロスポイントの領域の中央領域に形成された指示体検出センサ1B´が形成される。
【0148】
この実施形態の指示体検出センサ1B´は、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間の隙間に空気層に代わって、OCR16の液体層が封入されている点が異なると共に、第1の導体11Xの上に、スペーサSa´〜Sd´が形成されている点が異なるのみで、上述した実施形態の指示体検出センサ1Bと全く同様の作用効果を奏するものである。
【0149】
なお、スペーサSa´〜Sd´以外の部分のOCR16は、液体のままとするのではなく、半熟硬化させてゲル状態またはゾル状態とするようにしてもよい。
【0150】
<第2の製造方法の説明>
上述の第1の製造方法は、スペーサが、上側基板10に形成された第1の導体あるいは下側基板20に形成された第2の導体のいずれか一方の上から、他方の導体には離間する所定の高さ分となるように形成される場合である。しかし、OCRは、硬化したときには、所定の弾性を有するようになるので、上側基板10に形成された第1の導体と下側基板20に形成された第2の導体との間を橋絡するようにスペーサを形成しても、指示体による押圧に対する上側基板10に形成された第1の導体と下側基板20に形成された第2の導体との距離変化の特性として、上述の実施形態と同様の特性が得られることが期待できる。
【0151】
この第2の製造方法の例は、上側基板10に形成された第1の導体と下側基板20に形成された第2の導体との間を橋絡するようにスペーサを形成する場合である。
【0152】
なお、以下に説明する第2の製造方法においては、完全硬化させるスペーサ以外の部分のOCR16は、半熟硬化させてゲル状態またはゾル状態とするようにする。なお、この第2の製造方法においても、完全硬化させるスペーサ以外の部分のOCR16は、未硬化の液体のままとしてもよい。
【0153】
先ず、上述の第1の製造方法と同様に、第1の導体11Xを形成した上側基板10と、第2の導体21Yを形成した下側基板20とを、第1の導体11Xと第2の導体21Yとが互いに直交するような状態で、かつ、上側基板10の第1の導体11Xが形成されている面と、下側基板20の第2の導体21Yが形成されている面とを、前述した所定の距離dだけ離間させて対向させる(
図21(A)参照)。
【0154】
次に、第1の製造方法の場合と同様に、第1の導体11Xを形成した上側基板10と、第2の導体21Yを形成した下側基板20との間の距離dの隙間に、硬化前の液体の状態のOCR16を流入させて封入する(
図21(B)参照)。
【0155】
次に、この状態で、例えば上側基板10側から紫外線UVを、OCR16が半熟硬化してゲル状態またはゾル状態となるまで照射する(
図21(C)参照)。この場合に、紫外線UVの積算光量、照射強度、波長などを適切に条件選択することにより、OCR16を半熟硬化させるものである。このゲル状態またはゾル状態ではOCR16は、上側基板10及び下側基板20とは接着されない。
【0156】
次に、
図20に示した、全てのスペーサSa〜Sdの位置に対応する位置に貫通孔51〜54を形成したマスク部材50を、上側基板10の上に配設する(
図21(D)参照)。
【0157】
そして、
図21(C)において矢印で示すように、各貫通孔51〜54を通じて紫外線UVを照射して、各貫通孔51〜54を通じて紫外線UVが照射されたOCR16部分を完全硬化させるようにする。そして、各貫通孔51〜54を通じて紫外線UVが照射されたOCR16部分の完全硬化後、マスク部材50が除去される。
【0158】
すると、各貫通孔51〜54に対応するOCR16部分が完全硬化させられたことにより、当該部分には、
図21(E)に示すように、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間を橋絡するように柱状形状のスペーサSap〜Sdpが形成される。そして、マスク部材50のために紫外線UVが照射されなかった部分は、ゲル状態またはゾル状態のままとなる。
【0159】
このOCRが硬化した柱状スペーサSap〜Sdpは、弾性を有すると共に、柱状の両端部において、上下の第1の導体11X及び第2の導体21Yとに接着している。しかし、スペーサSnp以外のOCR16は、そして、OCR16は、ゲル状態またはゾル状態のままであって、上側基板10と下側基板20とは非接着の状態となっているので、指示体による押圧力Pが印加された時には、
図22に示すような撓み変化を生じる。
【0160】
なお、
図22は、押圧力Pによる撓みを説明するための模式図であり、この
図22には、薄い上側基板10と比較的厚い下側基板20との間に柱状形状のスペーサSnpが形成された状態を示している。この
図22は、模式図であるので、上側基板10に形成されている第1の導体11X、また、下側基板20に形成されている第2の導体21Yは省略した。また、
図22(A)では、便宜上、柱状形状のスペーサSnpは、等間隔で形成されているものとして示してあるが、実際上は、
図21(E)に示したように、柱状スペーサSap〜Sdpとして、クロスポイントの領域にのみ、形成されているものである。
【0161】
図22(A)に示すように、上側基板10において、指示体によりスペーサSnpの上で押圧力Pが印加されると、上側基板10は、押圧された位置の周辺は広く凹むように撓む。そして、押圧された位置よりも離れた位置(
図22(A)において左右端)では、未硬化のゲル状またはゾル状のOCRが流動してゆくので、当該左右端のスペーサSnpは、初期状態よりも上側基板10と下側基板20とが離れるように伸びる。
【0162】
そして、
図22(A)において、押圧力Pを排除すると、上側基板10において、凹んでいた部分のスペーサSnpは伸び、伸びていた左右両端部のスペーサSnpは縮もうとする。このため、スペーサSnp間に、圧縮性(弾性)の弱い半熟硬化のゲル状態またはゾル状態のOCRが介在していても、上側基板10は、押圧前の元の状態に戻る。以上の撓み変形について、さらに説明する。
【0163】
もしも、上側基板10と下側基板20との間に封入されたOCR16の全てが硬化された場合には、OCR16は、上側基板10及び下側基板20と接触している部分が全て接着されるので、押圧力Pにより押圧されて凹んだとしても、元に戻ろうとする力が強く、このため、強く押圧しないと上側基板10は凹まない。また、押圧されて凹んだ部分のOCR16の周囲のOCR16は、上側基板10と下側基板20とに接着されているため、周辺に移動することができず、
図22(B)において、点線10´で示すように、上側基板10の、押圧力Pが印加された部位の周囲を盛り上がらせるように変位させる。
【0164】
これに対して、この第2の製造方法により製造された指示体検出センサにおいては、柱状形状のスペーサSnp以外の部分のOCR16は、半熟硬化であって、上側基板10及び下側基板20と接触している部分も接着されていない。したがって、押圧力Pにより押圧されて凹んだ部位の周辺のOCR16は、
図22(B)において小さい矢印で示すように、容易に流動することができる。そのため、上側基板10は、
図22(B)において実線で示すように、押圧力Pを印加した位置周辺は、広く凹むような撓みとなる。
【0165】
そして、この第2の製造方法により製造された指示体検出センサでは、上側基板10と下側基板20との間に封入されたOCR16においては、
図22(A)に示すように、[スペーサSnpの完全硬化部分]−[ゲル状態またはゾル状態の半熟硬化部分]−[スペーサSnpの完全硬化部分]というように、完全硬化部分と、半熟硬化部分とが交互に現れるようなものとされている。このため、
図22(C)に示すように、押圧力Pを取り除いたときには、押圧されていた中央のスペーサSnpには、その弾性により伸びようとする力が働き、その両隣のスペーサSnpに対しては、縮もうとする力が働く。このため、スペーサSnp間に半熟硬化部分が介在していても、撓んだ上側基板10が、より迅速に元の状態に戻るようになる。この場合に、半熟硬化部分は、
図22(C)の矢印に示すように、中央のスペーサSnpの伸びる力と、その左右両端のスペーサSnpの縮む力により、元の状態に迅速に戻る。
【0166】
なお、以上の第2の製造方法において、上側基板10と下側基板20との間の隙間のOCRのスペーサ以外の部分は、半熟硬化のゲル状態またはゾル状態のOCRではなく、未硬化の液体のままとしてもよいことは、もちろんである。そして、スペーサSnp間に、弱圧縮性(弱弾性)の半熟硬化のゲル状態またはゾル状態のOCRではなく、非圧縮性(非弾性)の未硬化の液体が介在している場合にも、上側基板10に押圧力Pが印加された時の撓み変位に関しては、上述したのと同様の動きをする。
【0167】
以上のようにして、上述の実施形態によれば、上側基板10と下側基板20との間の隙間に、空気ではなく、透明弾性材料のOCRを封入したので、光学特性を向上させることができる。
【0168】
そして、上述の指示体検出センサの他の実施形態では、スペーサは、透明弾性材料のOCRを、液体から硬化させることで形成するようにしている。すなわち、スペーサと、スペーサ以外の透明弾性材料の液体部分やゲル状態またはゾル状態の部分は、元々同じ材料のOCRなので、硬度の異なる隣接材料(完全硬化のスペーサ部分と半熟硬化部分あるいは未硬化の液体部分)の境界物性変化が滑らかに遷移し、弾性率、屈折率も滑らかに遷移する。このため、スペーサと、上側基板10と下側基板20との間の隙間に封入する液体とを2種類の異なる材料で構成した場合に発生しやすい、弾性率の急激な変化、屈折率の急激な変化に伴う反射など、物性が境界で急激に変化することに伴う変動を伴い難いという効果を奏する。
【0169】
また、上述の指示体検出センサの他の実施形態においては、OCRの完全硬化部分、半熟硬化部分あるいは未硬化部分の各状態を、マスク部材を用いて面内にレイアウトすることで、実施形態の指示体検出センサを容易に製造することができる。また、マスク部材を用いて面内にレイアウトすると共に、紫外線UVの積算光量、照射強度、波長などを適切に条件選択することにより、押圧力P、接触した面積に応じた任意の変化量を作り出すことができると共に、押圧時の感触を所望のものとすることができる。
【0170】
なお、以上の指示体検出センサの他の実施形態の説明は、指示体検出センサのクロスポイントの領域の中央領域において、前述の実施形態におけるスペーサSa〜Sdと同様の位置に、4個のスペーサを設ける場合であるが、上述の指示体検出センサの他の実施形態の第1の製造方法及び第2の製造方法は、
図18に例示したものを含め、前述の実施形態の変形例として説明した他のスペーサの配置例及び形状の例にも適用できる。その場合に、マスク部材の貫通孔の形状及び配置レイアウトを、形成するスペーサの形状及び配置レイアウトに合わせて形成するようにするのは勿論である。
【0171】
なお、第1の導体11Xと第2の導体21Yとの間に封入する紫外線硬化型光学弾性樹脂としては、OCA(Optical Clear Adhesive)樹脂を用いることもできる。
【0172】
[その他の実施形態または変形例]
上述の実施形態の位置検出装置では、信号受信回路300を、第1のモードと第2のモードとで共通の回路として、制御回路40により、時分割で、増幅回路31のゲインを第1のモードと第2のモードとで切り替え制御すると共に、指示位置及び押圧検出回路33の処理動作を、第1のモードと第2のモードとで切り替え制御するようにした。
【0173】
しかし、
図23に示すような回路構成とすることにより、常に、第1のモードと第2のモードとを並列に動作させるようにすることもできる。
【0174】
すなわち、
図23の回路構成においては、信号受信回路300を、第1のモード用の第1の信号受信回路300Aと、第2のモード用の第2の信号受信回路300Bとからなる構成とし、指示体検出センサ1Bの受信導体(第2の導体21Y)のそれぞれからの信号を、並列に、第1の信号受信回路300Aと、第2のモード用の第2の信号受信回路300Bとに供給する。
【0175】
この
図23の回路構成によれば、第1のモード用の第1の信号受信回路300Aと、第2のモード用の第2の信号受信回路300Bとは、並行して、受信導体からの受信信号の処理を、それぞれのモードに応じて行うことができる。
【0176】
なお、図示は、省略するが、制御回路40が使用者による、第1のモードまたは第2のモードのうちの一方のモードの選択操作入力を受けて、その選択操作入力に応じたモード用の信号受信回路を制御回路40が動作可能状態とすると共に、選択されなかった他方のモード用の信号受信回路の動作を停止するように制御できる構成としても良い。
【0177】
なお、最初の実施形態の指示体検出センサ1Bでは、スペーサは、下側基板20に形成されている第2の導体21Y上に形成するようにしたが、上側基板10に形成されている第1の導体11X上に形成するようにしてもよい。また、指示体検出センサの他の実施形態の第1の製造方法では、スペーサは、上側基板10に形成されている第1の導体11X上に形成するようにしたが、下側基板20に形成されている第2の導体21Y上に形成するようにしてもよい。また、指示体検出センサの他の実施形態の第2の製造方法では、紫外線は、上側基板10の側から照射するようにしたが、下側基板20の側から照射するようにしてもよい。
【0178】
また、上述の指示体検出センサの実施形態では、Y方向に配置される導体11Xを、上側基板10に形成される第1の導体とし、X方向に配置される導体21Yを、下側基板20に形成される第2の導体としたが、X方向に配置される導体21Yを上側基板10に形成される第1の導体とし、Y方向に配置される導体11Xを下側基板20に形成される第2の導体としてもよい。
【0179】
また、上側基板10に形成される第1の導体と下側基板20に形成される第2の導体とは互いに直交している必要はなく、クロスポイントの領域を生じるように、第1の導体が配置される第1の方向と第2の導体が配置される第2の方向とが交差して、クロスポイントの領域が生じるものであれば、この発明は、適用可能である。
【0180】
また、上側基板10と下側基板20とは、所定の隙間を介して対向しているものであれば、平面形状に限らず、曲面形状であっても、この発明は、適用可能である。
【0181】
なお、上述の実施形態は、表示機能付機器にこの発明を適用した場合であるので、表示装置の例としてのLCDを備える構成であったが、この発明による指示体検出装置は、表示装置を備えない構成であってもよい。