特開2015-57949(P2015-57949A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-57949畜肉加工食品用品質改良剤および該品質改良剤を含有する畜肉加工食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-57949(P2015-57949A)
(43)【公開日】2015年3月30日
(54)【発明の名称】畜肉加工食品用品質改良剤および該品質改良剤を含有する畜肉加工食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/31 20060101AFI20150303BHJP
【FI】
   A23L1/31 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-191361(P2013-191361)
(22)【出願日】2013年9月17日
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉川 隆一
(72)【発明者】
【氏名】中西 祐輔
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC05
4B042AD03
4B042AG03
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK05
4B042AK09
4B042AK10
4B042AP14
(57)【要約】
【課題】ハムやソーセージなどの畜肉加工食品に適度な硬さとぷりぷりとした弾力性を付与することができる畜肉加工食品用品質改良剤を提供すること。
【解決手段】β‐アミラーゼ、ジグリセリン脂肪酸エステルおよび/またはトリグリセリン脂肪酸エステル、アルカリ性塩類を含有することを特徴とする畜肉加工食品用品質改良剤。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
β‐アミラーゼ、ジグリセリン脂肪酸エステルおよび/またはトリグリセリン脂肪酸エステル、アルカリ性塩類を含有することを特徴とする畜肉加工食品用品質改良剤。
【請求項2】
請求項1に記載の畜肉加工食品用品質改良剤を含有することを特徴とする畜肉加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜肉加工食品用の品質改良剤に関し、詳しくは畜肉加工食品に適度な硬さと弾力性を付与する畜肉加工食品用品質改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハム、ソーセージなどの畜肉加工食品には、保水性および弾力性の向上を意図して、リン酸塩を主剤とする添加剤を配合している。ところが、リン酸塩は、健康上の観点および環境上の観点などから、その使用を敬遠される傾向にあるため、それに代わる品質改良剤が求められている。
【0003】
畜肉加工食品の弾力性を改善する品質改良剤についての従来技術としては、熱凝固性蛋白質にカルシウム剤を配合するソーセージ用品質改良剤(特許文献1)、所定のガラクトースを含有するガラクトマンナンにα−ガラクトシダーゼを作用させてガラクトース含有量を10〜30に減少させたガラクトマンナンを添加する畜肉加工品の製造方法(特許文献2)、脱脂豆乳の酸沈処理を経て得られたカードを水に分散させた水分散液を中和して中和蛋白溶液を得る第1の工程と、前記中和蛋白溶液をそのBrixが10%未満の状態で加熱して被加熱蛋白溶液を得る第2の工程と、前記被加熱蛋白溶液を乾燥して大豆蛋白を得る第3の工程と、を有する製造方法により得られた大豆蛋白を畜肉に添加する工程を有する、畜肉加工食品の製造方法(特許文献3)、粉末状大豆たん白の5%水溶液のpHが8.0〜10.0である粉末状大豆たん白を含有する畜肉加工品用添加材(特許文献4)などが開示されている。しかし、上記特許文献1〜4の方法では、畜肉加工食品の弾力性が必ずしも十分ではなく、更にすぐれた畜肉加工食品用品質改良剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−60354号公報
【特許文献2】特開平1−247061号公報
【特許文献3】特開2011−254702号公報
【特許文献4】特開2003−154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ハムやソーセージなどの畜肉加工食品に適度な硬さとぷりぷりとした弾力性を付与することができる畜肉加工食品用品質改良剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、β‐アミラーゼ、ポリグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸塩を併用することにより上記課題を解決すること見出した。本発明者らは、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)β‐アミラーゼ、ジグリセリン脂肪酸エステルおよび/またはトリグリセリン脂肪酸エステル、アルカリ性塩類を含有することを特徴とする畜肉加工食品用品質改良剤、
(2)上記(1)に記載の畜肉加工食品用品質改良剤を含有することを特徴とする畜肉加工食品、
からなっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の畜肉加工食品用品質改良剤は、畜肉加工食品に添加することにより、保水性を改善し、畜肉加工食品特有の適度な硬さとぷりぷりとした弾力性を付与するという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いられるβ‐アミラーゼは、食品加工用に市販されている品質のものであれば特に制限はない。β‐アミラーゼの市販品としては、例えばβ‐アミラーゼ#1500S(ナガセケムテックス社)、β‐アミラーゼ(東京化成工業社製)などが挙げられる。
【0009】
本発明で用いられるジグリセリン脂肪酸エステルは、ジグリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物であり、エステル化反応など自体公知の方法で製造される。
【0010】
ジグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられるジグリセリンとしては、通常グリセリンに少量の酸またはアルカリを触媒として添加し、窒素または二酸化炭素などの任意の不活性ガス雰囲気下で、例えば約180℃以上の温度で加熱し、重縮合反応させて得られるグリセリンの平均重合度が約1.5〜2.4、好ましくは平均重合度が約2.0のジグリセリン混合物が挙げられる。また、ジグリセリンはグリシドールまたはエピクロルヒドリンなどを原料として得られるものであっても良い。反応終了後、必要であれば中和、脱塩、脱色などの処理を行ってよい。
【0011】
本発明においては、上記ジグリセリン混合物を、例えば蒸留またはカラムクロマトグラフィーなど自体公知の方法を用いて精製し、グリセリン2分子からなるジグリセリンを約50質量%以上、好ましくは約85質量%以上に高濃度化した高純度ジグリセリンが、好ましく用いられる。
【0012】
ジグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸など)または不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸など)が挙げられ、好ましくは炭素数12〜18の飽和または不飽和脂肪酸から選ばれる一種または二種以上の脂肪酸の混合物である。
【0013】
本発明で用いられるジグリセリン脂肪酸エステルの好ましい製法の概略は次の通りである。例えば、撹拌機、加熱用のジャケット、邪魔板などを備えた通常の反応容器に、ジグリセリンと脂肪酸とをモル比で約1:0.8〜1:1.6、好ましくは約1:1で仕込み、触媒として水酸化ナトリウムを加えて撹拌混合し、窒素ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、所定温度で加熱する。反応温度は通常、約180〜260℃の範囲、好ましくは約200〜250℃の範囲である。また、反応圧力条件は減圧下または常圧下で、反応時間は約0.5〜15時間、好ましくは約1〜3時間である。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、酸価約12以下を目安に決められる。
得られた反応液は、未反応の脂肪酸、未反応のジグリセリン、ジグリセリンモノ脂肪酸エステル、ジグリセリンジ脂肪酸エステル、ジグリセリントリ脂肪酸エステル、ジグリセリンテトラ脂肪酸エステルなどを含む混合物である。反応終了後、得られた反応液を約120℃以上180℃未満、好ましくは約130〜150℃に冷却し、次いで酸を加えて触媒を中和し、好ましくは約15分間〜1時間放置し、未反応のジグリセリンを含むポリオールが下層に分離した場合はそれを除去し、ジグリセリン脂肪酸エステルが得られる。
【0014】
該ジグリセリン脂肪酸エステルは、モノエステル体の含有量が通常約30%以上50%未満のものであるが、所望により、該ジグリセリン脂肪酸エステルを、例えば流下薄膜式分子蒸留装置または遠心式分子蒸留装置などを用いて分子蒸留するか、またはカラムクロマトグラフィーもしくは液液抽出など自体公知の方法を用いて精製することにより、全体に対してモノエステル体を約50%以上、好ましくは約70%以上含むジグリセリン脂肪酸エステルを得ることもできる。
【0015】
ジグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムDO‐100V(商品名;理研ビタミン社製:モノエステル体含有量約80%)が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0016】
本発明で用いられるトリグリセリン脂肪酸エステルは、トリグリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物であり、エステル化反応など自体公知の方法で製造される。
【0017】
トリグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられるトリグリセリンとしては、通常グリセリンに少量の酸またはアルカリ(例えば、水酸化ナトリウムなど)を触媒として添加し、窒素または二酸化炭素などの任意の不活性ガス雰囲気下で、例えば約180〜260℃の温度で加熱し、重縮合反応させて得られるグリセリンの平均重合度が約2.5〜3.4、好ましくは平均重合度が約3.0のトリグリセリン混合物が挙げられる。また、トリグリセリンはグリシドールまたはエピクロルヒドリンなどを原料として得られるものであっても良い。反応終了後、所望により中和、脱塩、または脱色などの処理を行ってよい。
【0018】
本発明においては、上記トリグリセリン混合物を、例えば蒸留またはカラムクロマトグラフィーなど自体公知の方法を用いて精製し、グリセリン3分子からなるトリグリセリンを約50質量%以上、好ましくは約85質量%以上に高濃度化した高純度トリグリセリンが、好ましく用いられる。
【0019】
トリグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸など)または不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸など)などが挙げられ、炭素数12〜18の飽和または不飽和脂肪酸から選ばれる一種または二種以上の脂肪酸の混合物が好ましい。
【0020】
本発明で用いられるトリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい製法の概略は次の通りである。例えば、撹拌機、加熱用のジャケット、邪魔板などを備えた通常の反応容器に、トリグリセリンと脂肪酸とをモル比で約1:0.8〜1:1.6、好ましくは約1:1で仕込み、触媒として水酸化ナトリウムを加えて撹拌混合し、窒素ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、所定温度で加熱する。反応温度は通常、約180〜260℃の範囲、好ましくは約200〜250℃の範囲である。また、反応圧力条件は減圧下または常圧下で、反応時間は約0.5〜15時間、好ましくは約1〜3時間である。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、酸価約12以下を目安に決められる。得られた反応液は、未反応の脂肪酸、未反応のトリグリセリン、トリグリセリンモノ脂肪酸エステル、トリグリセリンジ脂肪酸エステル、トリグリセリントリ脂肪酸エステル、トリグリセリンテトラ脂坊酸エステルなどを含む混合物である。反応終了後、得られた反応液を約120℃以上180℃未満に冷却し、次いで酸を加えて触媒を中和し、好ましくは約15分間〜1時間放置し、未反応のトリグリセリンを含むポリオールが下層に分離した場合はそれを除去するのが好ましい。
【0021】
次に、上記反応液を、必要なら冷却して、約60℃以上180℃未満、好ましくは約120℃以上180℃未満、更に好ましくは約130〜150℃に保ち、反応仕込み時のトリグリセリンと脂肪酸の合計質量の約0.5〜10倍量、好ましくは約0.5〜5倍量のグリセリンを添加する。反応液とグリセリンを良く混合した後、その温度で約0.5時間以上、好ましくは約1〜10時間放置し、二相に分離した下層(未反応のトリグリセリンを含むグリセリン相)を抜き取るか、または遠心分離し、未反応のトリグリセリンを含むグリセリン相を除去するのが好ましい。反応液に対するグリセリンの添加量が少ないと未反応のトリグリセリンの除去が不十分となる。また、グリセリンの添加量が多すぎると、グリセリン相の分離と除去に時間がかかり、生産性の低下を招き好ましくない。
【0022】
上記処理により得られたトリグリセリン脂肪酸エステルは、モノエステル体の含有量が通常約30%以上50%未満のものであるが、所望により、該トリグリセリン脂肪酸エステルを、例えば流下薄膜式分子蒸留装置または遠心式分子蒸留装置などを用いて分子蒸留するか、またはカラムクロマトグラフィーもしくは液液抽出など自体公知の方法を用いて精製することにより、全体に対してモノエステル体を約50%以上、好ましくは約70%以上含むトリグリセリン脂肪酸エステルを得ることもできる。
【0023】
ここで、本発明で用いられるジリグリセリン脂肪酸エステルおよびトリグリセリン脂肪酸エステルについてモノエステル体の含有量は、下記分析条件にてHPLCを用いて分析することにより求められる。具体的には、ジリグリセリン脂肪酸エステルまたはトリグリセリン脂肪酸エステルを下記HPLC分析条件で分析後、データ処理装置によりクロマトグラム上に記録された被検試料の各成分に対応するピークについて、積分計を用いてピーク面積を測定し、測定されたピーク面積に基づいて、面積百分率としてモノエステル体の含有量を求めることができる。
【0024】
[HPLC分析条件]
装置 島津高速液体クロマトグラフ
データ処理ソフトウェア(型式:LCsolution ver.1.0;島津製作所社
製)
ポンプ(型式:LC−20AD;島津製作所社製)
カラムオーブン(型式:CTO−20A;島津製作所社製)
オートサンプラ(型式:SIL−20A;島津製作所社製)
検出器 RI検出器(型式:RID−10A;島津製作所社製)
カラム GPCカラム(型式:SHODEX KF−801;昭和電工社製)
カラム GPCカラム(型式:SHODEX KF−802;昭和電工社製)
2本連結
移動相 THF(テトラヒドロフラン)
流量 1.0mL/min
カラム温度 40℃
サンプル濃度 0.01g/1mLTHF
サンプル注入量 20μL(in THF)
【0025】
本発明で用いられるアルカリ性塩類は、アルカリ性を呈する物質であって食品添加物として使用可能な塩類であれば特に限定はないが、アルカリ性を呈する有機酸または無機酸の塩類が好ましく用いられる。アルカリ性塩類としては、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウムなどが挙げられ、好ましくは、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムである。これらアルカリ性塩類は、1種または2種以上を組合わせて用いることができる。
【0026】
本発明の畜肉加工食品用品質改良剤に配合されるβ‐アミラーゼ、ジグリセリン脂肪酸エステルおよび/またはトリグリセリン脂肪酸エステル、アルカリ性塩類の量に特に制限はないが、例えば、畜肉加工食品用品質改良剤100質量%中の配合量は、β‐アミラーゼは力価15000AuN/g(1AuN/gは試料1gにおいて40℃、10分間の反応で1mgのグルコースに相当する還元力を生成するに要する量)として約0.001〜30質量%、好ましくは約0.2〜20質量%であり、ジグリセリン脂肪酸エステルおよび/またはトリグリセリン脂肪酸エステルは約0.01〜5質量%、好ましくは約0.5〜2質量%であり、アルカリ性塩類は約0.1〜99.9質量%、好ましくは20〜90質量%である。
【0027】
本発明の畜肉加工食品用品質改良剤には、本発明の目的を阻害しない範囲で他の任意の成分が含まれても良く、動植物性蛋白、増粘安定剤、糖類、でん粉、β‐アミラーゼ以外の酵素などを配合することができる。
【0028】
動植物性蛋白としては、動植物由来で食用可能なタンパク質であればよく、例えば、粉末卵白、乳蛋白、カゼイン、ゼラチン、血漿蛋白などの動物性蛋白や、大豆蛋白、小麦蛋白、えんどう蛋白、とうもろこし蛋白などの植物性蛋白が挙げられる。
【0029】
増粘安定剤としては、例えば、アラビアガム、アルギン酸およびその塩、カシアガム、ガティガム、カラギナン、カラヤガム、キサンタンガム、キチン、キトサン、グアーガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、デキストラン、トラガントガム、ファーセレラン、プルラン、ペクチン、ローカストビーンガムなどが挙げられる。
【0030】
糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、ガラクトースなどの単糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖などの二糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、シクロデキストリンなどのオリゴ糖類、デキストリン、粉末水飴などの澱粉分解物、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、粉末還元水飴、粉末還元パラチノースなどの糖アルコール類などが挙げられる。
【0031】
でん粉としては、例えばタピオカでん粉、コーンスターチ、馬鈴薯でん粉、甘薯でん粉、小麦でん粉、コメでん粉、サゴでん粉などが挙げられる。
【0032】
β‐アミラーゼ以外の酵素としてはトランスグルタミナーゼ、リジルオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、α‐グルコシダーゼなどが挙げられる。
【0033】
本発明の畜肉加工食品用品質改良剤の製造方法に特に制限はなく、β‐アミラーゼ、ジグリセリン脂肪酸エステルおよび/またはトリグリセリン脂肪酸エステル、アルカリ性塩類と、所望により動植物性蛋白、増粘安定剤、糖類、でん粉、β‐アミラーゼ以外の酵素などを均一に混合することで畜肉加工食品用品質改良剤が得られる。製造に使用される混合装置は特に制限はなく、公知の混合装置、例えば、リボンミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー、V字型混合機などを用いることができる。
【0034】
本発明の畜肉加工食品用品質改良剤は、各種の畜肉加工食品に用いることがでる。また、畜肉加工食品用品質改良剤を用いた畜肉加工食品を製造するには、自体公知の方法を用いればよい。ここで畜肉加工食品とは、畜肉を原料として調製される食品であって、例えばベーコン、ロースベーコン、ショルダーべーコン、ミドルベーコンまたはサイドベーコンなどのベーコン類、骨付きハム、ボンレスハム、ロースハム、ショルダーハム、ベリーハム、生ハム、プレスハムまたはラックスハムなどのハム類、ボロニアソーセージ、フランクフルトソーセージ、ウィンナソーセージ、リオナソーセージ、セミドライソーセージまたはドライソーセージなどのソーセージ類、焼豚、ハンバーグ、ミートボールなどが挙げられる。
【0035】
上記畜肉としては特に限定はなく、例えば牛肉、豚肉、馬肉、めん羊肉、山羊肉、家兎肉などの家畜などの肉;鶏肉、七面鳥、カモなどの家禽肉;またはこれらの混合肉が挙げられ、好ましくは豚肉、牛肉または鶏肉などである。また、使用可能な部位としては特に限定されず、例えば豚肉の場合、肩肉、ロース肉、ばら肉、もも肉、ウデ肉、半丸枝肉または胴肉など何れの部位も用いることができる。
【0036】
本発明の畜肉加工食品用品質改良剤の畜肉加工食品への添加量は、畜肉加工食品に含まれる畜肉に対し、好ましは約0.01〜10.0質量%、より好ましくは約0.2〜1.0質量%である。
【0037】
本発明の畜肉加工食品用品質改良剤の畜肉加工食品への添加方法は、特に限定はなく、例えば畜肉に直接畜肉加工食品用品質改良剤を添加する方法、畜肉加工食品用品質改良剤と副原料をあらかじめ混合したものを畜肉に添加する方法などが挙げられる。
【0038】
上記副原料としては、一般に畜肉加工食品に用いられる副原料であれば特に制限はなく、例えば、食塩、糖類(砂糖、ブドウ糖、水あめ、乳糖、デキストリンなど)、亜硝酸塩、アスコルビン酸ナトリウム、動植物性蛋白(大豆タンパク、卵白粉末、ホエータンパク、血清タンパク、コラーゲンタンパクなど)、増粘安定剤(カラギナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カードランなど)、調味料(アミノ酸系調味料、核酸系調味料、有機酸系調味料、無機酸系調味料など)、香辛料、でん粉、穀粉類、酸化防止剤、β-アミラーゼ以外の酵素、油脂、エキス類、色素などが挙げられる。
【0039】
畜肉加工食品用品質改良剤を添加した畜肉と副原料は、練り合わせて最終商品の形態に合わせてケーシングなどに充填または成形し、スモーク・スチームなどの加熱処理をすることにより畜肉加工食品が得られる。以上のようにして得られた畜肉加工食品は、適度な硬さを有し弾力に優れるという効果を有している。
【0040】
ブロック状の食肉を加工して得られるベーコン、ハムおよび焼豚などの畜肉加工食品は、例えば、以下の方法により製造される。まず、畜肉加工食品用品質改良剤を、通常の塩漬液(ピックル液)に含まれる他の成分(食塩、糖類、亜硝酸塩、動植物性蛋白質、増粘安定剤、調味料、香辛料などなどの副原料)と共に分散させたピックル液を調製する。前記ピックル液は、食肉用インジェクターによって、原料肉に対して約20〜80質量%の量を畜肉に注入される。次に、食肉用タンブラーを用いて、ピックル液成分を十分に畜肉中に分散、浸透させる方法(インジェクション法)、あるいは、畜肉をピックル液に浸漬し、畜肉中にピックル液を浸透させる方法(湿塩漬法)などにより、ピックル液を畜肉に均一に含浸させることができる。ピックル液を含浸させた畜肉は、必要に応じて、ケーシングまたはリテイナーなどに充填され、またはそのまま、熱処理される。熱処理は、乾燥、燻煙、蒸煮または湯煮などを適宜組み合わせて実施できる。好ましくは、良好な食味を獲得する観点から、肉塊の中心温度を約65℃以上に加熱調理されるのがよい。熱処理後、肉塊は冷却され、所望によりスライスされ、商品単位ごとに包装される。
【0041】
また小片の畜肉を加工して得られるプレスハムおよびソーセージなどの畜肉加工食品は、畜肉加工食品用品質改良剤を、通常含まれる他の成分(食塩、糖類、亜硝酸塩、動植物性蛋白質、増粘安定剤、調味料、香辛料など)と共に小片の畜肉に添加し、通常実施されている方法、例えば、食肉用グラインダー・ミキサーなどによりペースト状にし、これをケーシングまたはリテイナーなどに充填し、熱処理される。熱処理は、乾燥、燻煙、蒸煮または湯煮などの処理工程を適宜組み合わせて実施される。熱処理後、畜肉加工食品は冷却され、所望によりスライスされ、商品単位ごとに包装される。
【0042】
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0043】
[畜肉加工食品用品質改良剤の作製]
(1)原材料
β‐アミラーゼ(商品名:β‐アミラーゼ#1500S;ナガセケムテックス社製 酵素の力価15310AuN/g)
クエン酸三ナトリウム(商品名:精製クエン酸ナトリウム;扶桑化学工業社製)
ジグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムDO‐100V;理研ビタミン社製)
デキストリン(商品名:パインデックス#2;松谷化学工業社製)
【0044】
(2)畜肉加工食品用品質改良剤の配合
上記原材料を用いて作製した畜肉加工食品用品質改良剤の配合組成を表1に示した。
【0045】
【表1】
【0046】
(3)畜肉加工食品用品質改良剤の作製
表1に示した配合に基づいて各原材料を混合し、畜肉加工食品用品質改良剤(実施例品1、2、比較例品1〜6)を作製した。尚、混合はフードプロセッサー(型式:MK−K48P;パナソニック社製)に各原材料を入れ2分間混合して行った。各試料の1回の作製量は200gである。
【0047】
[畜肉加工食品用品質改良剤を用いたソーセージの作製]
(1)ソーセージ用原材料
豚ウデ肉挽肉(デンマーク産冷凍品を解凍して約6mmにミンチしたもの 脂肪分30%含有)
食塩(JT社製)
上白糖(大東製糖社製)
亜硝酸Na製剤(オルガノフードテック社製)
アスコルビン酸Na(BASF社製)
白コショウ(カネカサンスパイス社製)
分離大豆たん白(商品名:ニューフジプロSE−H;不二製油社製)
大豆油(日清オイリオ社製)
酢酸デンプン(商品名:MT−01;日本食品化工株式会社製)
トリポリリン酸Na(太平化学産業社製)
【0048】
(2)ソーセージ用生地の原材料配合
上記ソーセージ用原材料を用いて作製したソーセージ用生地の配合組成を表2に示した。
【0049】
【表2】
【0050】
(3)ソーセージの作製
表2に示した配合に基づき下記方法にてソーセージ用生地およびソーセージを作製した。尚、ソーセージ用生地の1回の作製量は、表2の配合の2倍量である。
分離大豆たん白、大豆油、氷水(1/6量)をフードプロセッサー(型式:MK−K48;パナソニック社製)に入れカッティングを行い、カードを作成する。さらに、冷蔵庫(庫内温度0℃)に保存しておいた豚ウデ挽肉に食塩、亜硝酸Na製剤、アスコルビン酸Naと畜肉加工食品用品質改良剤(実施例品1、2、比較例品1〜6)あるいはトリポリリン酸Naを加え、フードプロセッサー(型式:MK−K48;パナソニック社製)にて1分間カッティングを行った。さらに、その後、白コショウ、上白糖、酢酸デンプン、残りの氷水(5/6量)を加えフードプロセッサーにて10℃になるまでカッティングを行いソーセージ生地を作製した。
得られたソーセージ生地をビニール袋にとり、真空包装機(型式:V−380G;東静電気社製)で脱気を行い、直径約20mmの塩化ビニリデンのケーシングに充填した。充填後、75℃で60分ボイルをした後、ボイル終了後氷水中で30分間冷却し、ケーシング詰めしたソーセージ(試作品1〜9)を得た。尚、畜肉加工食品用品質改良剤あるいはトリポリリン酸Naを加えない以外は同様にしてケーシング詰めしたソーセージ(試作品10)を作製した。
【0051】
[畜肉加工食品用品質改良剤を用いたソーセージの評価]
(1)保水性の評価(離水率の測定方法)
得られたケーシング詰めしたソーセージを用いて下記評価方法で離水率を求め保水性の評価を行った。ケーシング詰めしたソーセージを冷蔵庫(庫内温度約4℃)に約12時間保存した後、ケーシング表面の湿気を乾いた布でふき取ってケーシング詰めしたソーセージの重さを量った。次にケーシングを剥ぎ、ケーシングの内側に付着している水分をろ紙で吸い取り、同様にソーセージ表面に付着している水分をろ紙で吸い取った。ケーシングおよびソーセージそれぞれの重さを量り、以下の計算式より離水率(%)を求めた。離水率が2%以下であると保水性が良いといえる。結果を表3に示す。

離水率(%)=[(A−B−C)/(A−B)]×100
A:ケーシング詰めしたソーセージの重さ(g)
B:水分をろ紙で吸い取った後のケーシングの重さ(g)
C:水分をろ紙で吸い取った後のソーセージの重さ(g)
【0052】
(2)弾力性の測定方法
得られたケーシング詰めしたソーセージを用いて下記評価方法で降伏荷重および降伏歪を測定し、弾力性の評価を行った。
得られたケーシング詰めしたソーセージを冷蔵庫(庫内温度約4℃)に約12時間保存した後、厚さ約2cmにスライスし、塩化ビニリデン製袋に入れて密封し、約10℃の恒温器中に約1時間保持し試験片とした。レオナーII(型式:RE2−3305S;YAMADEN社製)を用い、テーブルスピード毎秒10mmで試験片を上昇させ、底部が円形で直径約5mmのプランジャーが試料片に貫入する時の降伏荷重と降伏歪を定法により求めた。降伏荷重で250g以上、降伏歪で26%以上であれば、弾力性が高く、充分な歯ごたえ(ぷりぷり感)を得られるといえる。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
結果より、実施例品1、2を添加した試作品1、2は、離水率が2%以下であり保水性が良く、
降伏荷重は260g以上、降伏歪は26%以上であり弾力性が高く、充分な歯ごたえがあるといえる。また、実施例品1、2を添加した試作品1、2は、従来用いられているトリポリリン酸Naを添加した試作品9とほぼ同様の離水率、弾力性であった。
一方、比較例品1〜6を添加した試作品3〜8は、離水率が2%以上であり保水性が悪く、降伏荷重は240g未満、降伏歪は25%以下であり弾力性に乏しかった。比較例品1〜6を添加した試作品3〜8は、従来用いられているトリポリリン酸Naを添加した試作品9とは離水率、弾力性共に隔たりがあった。