【実施例】
【0037】
[実施例1]
[ベーカリー用SSL製剤の調製]
1L容ビーカーに水600gを仕込み、これにオクテニルコハク酸エステル化澱粉(商品名:ピュリティーガムBE;日本エヌエスシー社製)20g、オクテニルコハク酸エステル化澱粉(商品名:エヌクリーマー46;日本エヌエスシー社製)20g及びデキストリン(商品名:パインデックス#2;DE値11;松谷化学工業社製)140gを加え、80℃で加熱溶解して水溶液を得た。
次いで、500mL容ビーカーにSSL(商品名:ポエムSSL−100;理研ビタミン社製)220gを仕込み、80℃で加熱溶解した溶融液を上記1L容ビーカー中の水溶液に加え、80℃で加熱しながら、攪拌機(商品名:TKホモミクサー;プライミクス社製)を用いて10000rpmで10分攪拌し、液状組成物1000gを得た。
その後、上記液状組成物を噴霧乾燥機(商品名:スプレードライヤーL−8i型;大川原化工機社製)を用いて熱風入口温度175℃、排気温度80℃の条件で噴霧乾燥し、粉末状のSSL製剤300g(実施品1)を作製した。
【0038】
[実施例2]
[ベーカリー用SSL製剤の調製]
実施例1のSSL220gに替えて、SSL(商品名:ポエムSSL−100;理研ビタミン社製)160g、パーム油(商品名:RPO;植田製油社製)20g及びグリセリンコハク酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムB−10;理研ビタミン社製)40gを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施し、粉末状のSSL製剤300g(実施品2)を作製した。
【0039】
[試験例1]
[20℃の水に対する分散度の測定]
上述した実施例1及び2で作製したSSL製剤(実施品1及び2)について、下記測定方法により20℃の水に対する分散度を測定した。なお、対照として、市販のSSL(市販品A;商品名:ポエムSSL−100;理研ビタミン社製)についても同様に分散度を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
[測定方法]
1)100ml容ガラス製ビーカー(内径50mm;高さ70mm)に20℃の水47.5gを仕込み、これに同温度の試料を2.5g加え、同温度条件下にて、攪拌機(商品名:スリーワンモータ;型式:FBL−600;新東科学社製;38mm径3枚羽根型攪拌翼1段装着)を用いて500rpmで60秒間撹拌し、混合液を作製する。
2)目開き250μmのステンレス製のストレーナーに1)の混合液を流し込み、該ストレーナー上に残った残渣を回収する。
3)2)の残渣をガラスシャーレ(内径70mm;高さ20mm)内に静置して105℃で2時間熱風乾燥した後、該ガラスシャーレに残った乾燥物の重量(g)を測定し、その値を分散度とする。
【0041】
【表1】
【0042】
ここで、上記分散度は、その値が低い程、20℃の水に対する分散性が高いことを意味する。従って、表1の結果から、実施例のSSL製剤(実施品1及び2)は、市販のSSLに比べて非加熱の水に対する分散性に優れていることが明らかである。
[試験例2]
[70%加糖中種法菓子パンによる評価試験]
(1)原材料
1)強力粉(商品名:カメリア;日清製粉社製)
2)上白糖(フジ日本精糖社製)
3)液全卵(商品名:エクセルエッグHV;キューピータマゴ社製)
4)マーガリン(商品名:パンテオンDX;ミヨシ油脂社製)
5)グルコース(商品名:無水結晶ブドウ糖;サンエイ糖化社製)
6)イースト(商品名:レギュラーイースト;オリエンタル酵母工業社製)
7)脱脂粉乳(高梨乳業社製)
8)食塩(商品名:赤穂塩R;日本海水社製)
9)イーストフード(商品名:C・オリエンタルフード;オリエンタル酵母工業社製)
10)SSL製剤及びSSL(実施品1、実施品2及び市販品A)
【0043】
(2)使用機材
1)ミキサー(型式:HPI−20M;20Lミキサーボール及びステンレスフック使用;関東混合機工業社製)
2)中種発酵槽(型式:PNM−32F2;共立プラント工業社製)
3)分割機(型式:DQE;オシキリ社製)
4)ラウンダー(型式:RQ;オシキリ社製)
5)モルダー(型式:WFS;オシキリ社製)
6)ホイロ(型式:サンキャビネットTCH−2660N;三幸機械社製)
7)オーブン(型式:ニューコンポオーブンTMC−GGG−31S;三幸機械社製)
【0044】
(3)原材料の配合及び使用量
上記原材料及び機材を用いて作製した菓子パン1〜4の配合割合を表2に示した。ここで、表2の配合割合は、使用する小麦粉の全量(即ち、中種及び本捏の合計量)を100質量%に換算する「ベーカーズパーセント」により表記した。また、使用した小麦粉(強力粉)の全量は2kgとした。また、対照として、菓子パン4はSSLを使用せずに作製した。
【0045】
【表2】
【0046】
(4)製パン工程
表2に示した中種原材料をミキサーに入れ、捏上温度が26℃となるように低速3分、中速1分で混捏し、中種生地とした。なお、SSL製剤及びSSL(実施品1、2及び市販品A)は、強力粉に均一に混合して用いた。
次に、得られた生地を下記の条件で1次発酵(中種発酵)させた。
<1次発酵条件>
発酵温度:27℃
相対湿度:86%
発酵時間:2時間30分
発酵終了時温度:30℃
【0047】
次に、発酵した中種生地及び表2に示した本捏原材料(マーガリンを除く)をミキサーに入れ、低速3分、中速3分、高速1分で混捏した後、これに残りの本捏原材料(マーガリン)を加えて低速1分、中速2分、高速4分で混捏した。本捏生地の捏上温度は27〜28℃とした。
【0048】
次に、混捏でダメージを受けた生地を回復させるために、庫内温度27℃相対湿度80%の発酵槽にてフロアータイムを30分とった後、その生地を分割機で80gに分割した。分割した生地をラウンダーで丸め、生地のダメージを回復させるため、室温(約25℃)にてベンチタイムを20分とり、その後モルダーで葉巻型に成型した。天板に成型した生地をのせ、庫内温度38℃、相対湿度85%の発酵槽で60分発酵(ホイロ)を行った。
【0049】
次いで、ホイロ後の生地を上火200℃、下火180℃のオーブンで8分間焼成し、菓子パン1〜4を得た。
【0050】
(5)伸展性の評価
(4)の製パン工程において、パン生地の分割・成型時にその状態を観察することによりその伸展性を評価し、以下の基準にしたがって記号化した。結果を表4に示す。
○:生地の伸展性が良く、機械分割・成型で生地に荒れが生じない。
△:生地の伸展性は普通だが、機械分割・成型で生地に荒れが生じない。
×:生地の伸展性が悪く、機械分割・成型で生地に荒れが生じる。
【0051】
(6)食感の評価
(4)で得た菓子パンを室温で1時間冷却した後、ポリエチレン製の袋に密封し、20℃で3日間保存した。保存後の菓子パンを喫食し、その食感(口どけ感)について官能試験を行った。官能試験では、下記表3に示す評価基準に従い15名のパネラーで評価を行ない、評点の平均点を求め、以下の基準にしたがって記号化した。結果を表4に示す。
○:良好 平均点2.5以上
△:やや悪い 平均点1.5以上、2.5未満
×:悪い 平均点1.5未満
【0052】
【表3】
【0053】
(7)老化防止の評価
(4)で得た菓子パンを室温で1時間冷却した後、ポリエチレン製の袋に密封し、20℃で3日間保存した。保存後の菓子パンを厚さ2cmにスライスして試験片とし、その厚さが1cmになるまで圧縮した時の荷重(gf)をレオメーター(型式:RT−2002D・D;レオテック社製)により測定した。測定は、プランジャー(型式:アダプターNO.10 応力緩和用;底部直径約30mm;レオテック社製)を装着し、試料台上昇速度を20cm/minとして、7個の試験片について行い、その平均値を採用した。この数値が高い程、パンが硬く老化が進行していることを意味する。結果を表4に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
表4の結果から、本発明のSSL製剤(実施品1及び2)を添加した菓子パン1及び2は、伸展性及び食感の評価がいずれも「○」であり、老化防止評価では比較的少ない荷重を示し、焼成3日後においても柔らかさが持続していた。これに対し、市販のSSL(市販品A)を添加した菓子パン3及びSSL無添加の菓子パン4では、伸展性及び食感の評価が「△」以下であり、また菓子パン4の老化防止評価では比較的大きな荷重を示し、満足できる結果が得られなかった。従って、本発明のSSL製剤を添加すると、SSLそのものを添加するよりも優れた効果を発揮することが明らかである。
【0056】
[試験例3]
[70%無糖中種法食パンによる評価試験]
(1)原材料
1)強力粉(商品名:カメリア;日清製粉社製)
2)イーストフード(商品名:C・オリエンタルフード;オリエンタル酵母工業社製)
3)イースト(商品名:レギュラーイースト;オリエンタル酵母工業社製)
4)SSL製剤及びSSL(実施品1、実施品2及び市販品A)
5)食塩(商品名:赤穂塩R;日本海水社製)
6)上白糖(フジ日本精糖社製)
7)脱脂粉乳(高梨乳業社製)
8)ショートニング(商品名:スーパーアトランタ;J−オイルミルズ社製)
【0057】
(2)使用機材
1)ミキサー(型式:HPI−20M;20Lミキサーボール及びステンレスフック使用;関東混合機工業社製)
2)中種発酵槽(型式:PNM−32F2;共立プラント工業社製)
3)分割機(型式:DQE;オシキリ社製)
4)ラウンダー(型式:RQ;オシキリ社製)
5)モルダー(型式:WFS;オシキリ社製)
6)ホイロ(型式:サンキャビネットTCH−2660N;三幸機械社製)
7)オーブン(型式:ニューコンポオーブンTMC−GGG−31S;三幸機械社製)
【0058】
(3)原材料の配合及び使用量
上記原材料及び機材を用いて作製した食パン1〜4の配合割合を表5に示した。ここで、表5の配合割合は、使用する小麦粉の全量(即ち、中種及び本捏の合計量)を100質量%として換算する「ベーカーズパーセント」により表記した。また、使用した小麦粉(強力粉)の全量は2kgとした。また、対照として、菓子パン4はSSLを使用せずに作製した。
【0059】
【表5】
【0060】
(4)製パン工程
表5に示した中種原材料をミキサーに入れ、捏上温度が24℃となるように低速3分、中速2分で混捏し、中種生地とした。なお、SSL製剤及びSSL(実施品1、2及び市販品A)は、中種の強力粉に均一に混合して用いた。
次に、得られた生地を下記の条件で1次発酵(中種発酵)させた。
<1次発酵条件>
発酵温度:27℃
相対湿度:80%
発酵時間:2時間30分
発酵終了時温度:約30℃
【0061】
次に、ミキサーに、発酵した中種生地及び表5に示した本捏原材料(ショートニングを除く)を添加し、低速3分、中速2分、高速1分で混捏後、残りの本捏原材料(ショートニング)を加えて低速1分、中速2分、高速5分で混捏を行い、本捏生地とした。本捏生地の捏上温度は27〜28℃とした。
【0062】
次に、混捏でダメージを受けた生地を回復させるために、庫内温度27℃相対湿度80%の発酵槽にてフロアータイムを20分とった後、その生地を分割機で250gに生地を分割した。分割した生地をラウンダーで丸め、生地のダメージを回復させるため、室温(約25℃)にてベンチタイムを20分とり、更にモルダーで6本のU字に成型して3斤プルマン型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分発酵(ホイロ)を行った。
【0063】
次いで、ホイロ後の生地を上火200℃、下火210℃のオーブンで35分間焼成し、食パン1〜4を得た。
【0064】
(5)伸展性の評価
(4)の製パン工程において、パン生地の分割・成型時にその状態を観察することによりその伸展性を評価し、以下の基準にしたがって記号化した。結果を表7に示す。
○:生地の伸展性が良く、機械分割・成型で生地に荒れが生じない。
△:生地の伸展性は普通だが、機械分割・成型で生地に荒れが生じない。
×:生地の伸展性が悪く、機械分割・成型で生地に荒れが生じる。
【0065】
(6)食感の評価
(4)で得た食パンを室温で1時間冷却した後、ポリエチレン製の袋に密封し、20℃で3日間保存した。保存後の食パンを喫食し、その食感(口どけ感)について官能試験を行った。官能試験では、下記表6に示す評価基準に従い15名のパネラーで評価を行ない、評点の平均点を求め、以下の基準にしたがって記号化した。結果を表7に示す。
○:良好 平均点2.5以上
△:やや悪い 平均点1.5以上、2.5未満
×:悪い 平均点1.5未満
【0066】
【表6】
【0067】
(7)老化防止の評価
(4)で得た食パンを室温で1時間冷却した後、ポリエチレン製の袋に密封し、20℃で3日間保存した。保存後の食パンを厚さ2cmにスライスした後、縦5cm×横5cmの試験片とし、その厚さが1cmになるまで圧縮した時の荷重(gf)をレオメーター(型式:RT−2002D・D;レオテック社製)により測定した。測定は、プランジャー(特注品;底部の形状:5cm×5cmの正方形;底部の厚み:1cm;レオテック社製)を装着し、試料台上昇速度を20cm/minとして、7個の試験片について行い、その平均値を採用した。この数値が高い程、パンが硬く老化が進行していることを意味する。結果を表7に示す。
【0068】
【表7】
【0069】
表7の結果から、本発明のSSL製剤(実施品1及び2)を添加した食パン1及び2は、伸展性及び食感の評価がいずれも「○」であり、老化防止評価では比較的少ない荷重を示し、焼成3日後においても柔らかさが持続していた。これに対し、市販のSSL(市販品A)を添加した食パン3及びSSL無添加の食パン4では、伸展性及び食感の評価が「△」以下であり、また食パン4の老化防止評価では比較的大きな荷重を示し、満足できる結果が得られなかった。従って、本発明のSSL製剤を添加すると、SSLそのものを添加するよりも優れた効果を発揮することが明らかである。
【0070】
[試験例4]
[スポンジケーキによる評価試験]
(1)原材料
1)薄力粉(商品名:バイオレット;日清製粉社製)
2)液全卵(商品名:エクセルエッグHV;キューピータマゴ社製)
3)上白糖(商品名:フジ日本精糖社製)
4)製菓用サラダ油(日清オイリオ社製)
5)製菓用起泡性乳化油脂(商品名:パティグラース500;理研ビタミン社製)
6)ベーキングパウダー(オリエンタル酵母社製)
7)SSL製剤及びSSL(実施品1、実施品2及び市販品A)
【0071】
(2)原材料の配合及び使用量
上記原材料及び機材を用いて作製したスポンジケーキ1〜4の配合割合を表8に示した。ここで、表8の配合割合は、使用する小麦粉の全量を100質量%に換算する「ベーカーズパーセント」により表記した。また、使用した小麦粉(薄力粉)の全量は200gとした。また、対照として、スポンジケーキ4はSSLを使用せずに作製した。
【0072】
【表8】
【0073】
(3)スポンジケーキの製造工程
ミキサー(型式:万能混合攪拌機5DMr;ワイヤーホイッパー装着;品川工業所社製)に上白糖、液全卵、製菓用起泡性乳化油脂及びSSLを入れ、低速にて攪拌し、軽く混合した。これに製菓用サラダ油、水及び薄力粉とベーキングパウダーを篩に通したものを加え、低速で1分間攪拌し、次いで高速で5分間ホイップし、ケーキ生地を得た。
側面と底面に紙を敷いた6号丸型にケーキ生地を300g採り、その型を約20cmの高さから2〜3回落として生地中の大きな気泡を抜き、これをオーブン(型式:南蛮バッケンBKS−622TFSOND;七洋製作所社製)を用いて180℃で35分間焼成し、スポンジケーキを得た。
【0074】
(4)評価方法
(3)で得たスポンジケーキを室温で1時間冷却した後、ポリエチレン製の袋に密封し、室温にて3日間保存した。保存後のスポンジケーキを切り分け、その内相及び食感(ソフトさ及び口どけ感)について官能試験を行った。官能試験では、下記表9に示す評価基準に従い15名のパネラーで評価を行ない、評点の平均点を求め、以下の基準にしたがって記号化した。結果を表10に示す。
○:良好 平均点2.5以上
△:やや悪い 平均点1.5以上、2.5未満
×:悪い 平均点1.5未満
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
表10の結果から、本発明のSSL製剤(実施品1及び2)を添加したスポンジケーキ1及び2は、いずれも全ての評価が「○」であった。これに対し、市販のSSL(市販品A)を添加したスポンジケーキ3及びSSL無添加のスポンジケーキ4では、いずれかの評価が「△」以下であり、満足できる結果が得られなかった。従って、本発明のSSL製剤を添加すると、SSLそのものを添加するよりも優れた効果を発揮することが明らかである。