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特開2015-5810アンテナ用コイル装置およびコイルボビン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-5810(P2015-5810A)
(43)【公開日】2015年1月8日
(54)【発明の名称】アンテナ用コイル装置およびコイルボビン
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/08 20060101AFI20141205BHJP
   H01Q 1/40 20060101ALI20141205BHJP
【FI】
   H01Q7/08
   H01Q1/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-128477(P2013-128477)
(22)【出願日】2013年6月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】馬原 繁
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA12
5J046AA13
5J046AB11
5J046QA02
(57)【要約】
【課題】射出成形による生産性の高いコイルボビン、およびかかるコイルボビンを用いたアンテナ用コイル装置を提供する。
【解決手段】コイル装置100は、磁性材料からなるコア10と、巻軸部22を有しコア10の周囲に装着されるコイルボビン20と、巻軸部22に巻回されたコイルワイヤ50と、を備えている。コイルボビン20は、樹脂材料で一体成形された一部品からなるとともに、巻軸部22の延在方向に対して交差する少なくとも一の方向(X方向)に関して、コイルボビン20のいずれの領域への投影もコイルボビン20の他の領域と重ならないように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料からなるコアと、巻軸部を有し前記コアの周囲に装着されるコイルボビンと、前記巻軸部に巻回されたコイルワイヤと、を備え、
前記コイルボビンは、樹脂材料で一体成形された一部品からなるとともに、前記巻軸部の延在方向に対して交差する少なくとも一の方向に関して、前記コイルボビンのいずれの領域への投影も前記コイルボビンの他の領域と重ならないことを特徴とするアンテナ用コイル装置。
【請求項2】
前記巻軸部が、前記コアの周方向に互いに離間して配置された複数のベース片を含む請求項1に記載のアンテナ用コイル装置。
【請求項3】
前記コアが矩形断面の棒状をなし、前記コイルボビンの前記巻軸部の断面形状が、前記コアを囲む四辺形状の一部で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ用コイル装置。
【請求項4】
前記コイルボビンの前記巻軸部は、巻張された前記コイルワイヤにより圧搾されて前記コアの周囲に圧接している請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ用コイル装置。
【請求項5】
前記巻軸部の周囲に、巻回された前記コイルワイヤの巻きずれを規制する突起部が形成されている請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ用コイル装置。
【請求項6】
前記巻軸部に巻回された前記コイルワイヤに外装樹脂がオーバーモールドされている請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ用コイル装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナ用コイル装置に用いられるコイルボビンであって、前記コイルボビンの前記巻軸部が複数のベース片を備え圧搾可能に構成されていることを特徴とするコイルボビン。
【請求項8】
前記巻軸部の少なくとも一端側に、非圧搾部であるボビン端部が前記樹脂材料で一体成形されており、
前記ボビン端部は、前記一の方向に関して、前記ボビン端部のいずれの領域への投影も前記ボビン端部の他の領域と重ならないことを特徴とする請求項7に記載のコイルボビン。
【請求項9】
前記一の方向に関する一の前記ベース片の投影と他の前記ベース片の投影との間に間隙が存在することを特徴とする請求項7または8に記載のコイルボビン。
【請求項10】
前記コアが矩形断面の棒状をなし、
前記ベース片が、前記コアの矩形断面のコーナー部を保持するL型断面をなしている請求項9に記載のコイルボビン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ用コイル装置、およびアンテナ用コイル装置に用いられるコイルボビンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアンテナ用コイル装置として、特許文献1に記載の送信アンテナコイルが知られている。この送信アンテナコイルは、棒状の磁性体コアを収容する細長い筒状のコイルボビンの周囲に複数の鍔部が環状に形成され、このコイルボビンの周囲にワイヤが巻回されている。コイルボビンの周方向の一側面は、鍔部同士の間において窓状に開口している。このコイルボビンはポリブチレンテレフタレート(PBT)などの樹脂材料からなり、金型による射出成形により作成されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−175965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような従来の筒状のコイルボビンは、3個の分割金型を用いて樹脂成形される。コイルボビンにおける巻軸方向をZ方向とし、これに直交するいずれかの方向をX方向としたとき、±X方向に相対的に接離移動する一対の上下割型(固定側および可動側)と、±Z方向に進退する雄型と、を分割金型として用いることが一般的である。
【0005】
筒状のコイルボビンの内腔を中空成形する雄型はスライド金型ともよばれ、磁性体コアと同形状の棒状部分を備えている。上下割型を対向配置して内部に閉空間を形成し、この閉空間に雄型を収容した状態で溶融樹脂を供給する。溶融樹脂の硬化後に雄型をZ方向に抜去して、棒状の磁性体コアの収容空間を中空に形成する。さらに、上下割型を互いに離間させることで、細長い筒状に成形されたコイルボビンが取り出される。
【0006】
すなわち、従来のコイルボビンは、上下割型の作動スペースである±X方向に加えて、これと直交するZ方向に、雄型をスライドさせて挿入・抜去するための作動スペースが更に必要である。このため、コイルボビンを成形する射出成形機の小型化が困難であり、言い換えるとコイルボビンを射出成形機で多数個取りする場合の同時成形個数を増加させることが困難であった。
【0007】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、射出成形による生産性の高いコイルボビン、およびかかるコイルボビンを用いたアンテナ用コイル装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、磁性材料からなるコアと、巻軸部を有し前記コアの周囲に装着されるコイルボビンと、前記巻軸部に巻回されたコイルワイヤと、を備え、前記コイルボビンは、樹脂材料で一体成形された一部品からなるとともに、前記巻軸部の延在方向に対して交差する少なくとも一の方向に関して、前記コイルボビンのいずれの領域への投影も前記コイルボビンの他の領域と重ならないことを特徴とするアンテナ用コイル装置が提供される。
【0009】
上記発明のアンテナ用コイル装置は、巻軸部の延在方向に対して交差する少なくとも一の方向に関して、コイルボビンのいずれの領域への投影もコイルボビンの他の領域と重ならないように構成されている。このため、当該一の方向を上下割型の作動方向(たとえば±X方向)とすることにより、巻軸部の延在方向(たとえばZ方向)にスライドする雄型を用いることなくコイルボビンを射出成形することが可能である。
【0010】
また、本発明によれば、上記のアンテナ用コイル装置に用いられるコイルボビンであって、前記巻軸部が複数のベース片を備え圧搾可能に構成されていることを特徴とするコイルボビンが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、射出成形による生産性の高いコイルボビン、およびかかるコイルボビンを用いた生産性の高いアンテナ用コイル装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態にかかるアンテナ用コイル装置を示す斜視図である。
図2】第一実施形態のコイルボビンの斜視図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4図4(a)は図2のIV-IV線断面図である。図4(b)は巻軸部の成形状態を示す説明図である。
図5図2のV-V線断面図である。
図6図6(a)は第二実施形態の巻軸部を示す横断面図である。図6(b)は巻軸部の成形状態を示す説明図である。
図7図7(a)は第三実施形態の巻軸部を示す横断面図である。図7(b)は巻軸部の成形状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0014】
図1は、本発明の第一実施形態のアンテナ用コイル装置(コイル装置100)を示す斜視図である。図2は、本実施形態のコイルボビン20の斜視図である。図3は、図1のIII-III線断面図である。
【0015】
はじめに、本実施形態の概要について説明する。コイル装置100は、磁性材料からなるコア10と、巻軸部22を有しコア10の周囲に装着されるコイルボビン20と、巻軸部22に巻回されたコイルワイヤ50と、を備えている。コイルボビン20は、樹脂材料で一体成形された一部品からなるとともに、巻軸部22の延在方向に対して交差する少なくとも一の方向(X方向)に関して、コイルボビン20のいずれの領域への投影もコイルボビン20の他の領域と重ならないように構成されている。
【0016】
ここで、一の方向に関するコイルボビン20への投影とは、ある方向からコイルボビン20に可視光をあてた場合の影である。コイルボビン20のいずれの領域への投影もコイルボビン20の他の領域と重ならないとは、コイルボビン20を目視した場合に、その影になる領域が無いことを意味する。
【0017】
次に、本実施形態のコイル装置100を詳細に説明する。
【0018】
コイル装置100はアンテナ装置に用いられる。本実施形態のコイル装置100は、コイルワイヤ50がコア10の周囲に巻回された磁界アンテナである。コイル装置100は、コア10に巻回されたコイルワイヤ50と、これに直列接続されたコンデンサ(図示せず)とで共振回路を構成する。コア10はフェライトなどの透磁率の高い磁性材料からなる。本実施形態のコア10は棒状をなし、開磁路構造を構成している。コア10の形状は棒状に限定されない。コイルワイヤ50は、表面を絶縁被覆した電線である。本実施形態のコイル装置100はバーアンテナである。アンテナ装置の用途は種々であるが、一例として、車両用の電子キーシステムのための車載側の送信用アンテナ装置として用いることができる。電子キーシステムでは、電子キーを所持する運転手が車両に近づいてシステムの通信圏内に入ると、車載側のアンテナ装置と電子キーとで通信を行い、このアンテナ装置に接続された車両側の制御回路が駆動されてドアの解錠やエンジンの始動が許可される。逆に、電子キーを所持した運転手が車両から遠ざかってアンテナ装置の通信圏内から外れると、再び車両側の制御回路が駆動されてドアが施錠される。
【0019】
コイルボビン20は、コア10を収容する細長の部分筒状をなしている。本実施形態において部分筒状とは、全周に亘る周面をもたず、C型断面に例示されるように周方向の一部領域のみを覆う周面により構成された中空形状をいう。本実施形態のコイルボビン20は、コア10の収容領域である巻軸部22、ボビン端部26bおよびストッパー部27が、いずれも部分筒状をなしている。
【0020】
コイルボビン20は、金属材料からなる一対のアンテナ端子40および複数の絡げ端子42を樹脂材料でインサート成形したものである。アンテナ端子40と絡げ端子42とは個別に接続されている。一対の絡げ端子42には、コイルワイヤ50の両端がそれぞれ絡げられている。
【0021】
図1に示すコイル装置100は、コイルボビン20の巻軸部22にコイルワイヤ50を巻回した状態を示しているが、コイル装置100の形態はこれに限られない。たとえば、車両側の制御回路と接続するためのコネクタ(図示せず)をアンテナ端子40に装着してもよい。
【0022】
巻軸部22の周囲には、巻回されたコイルワイヤ50の巻きずれを規制する突起部30が形成されている。より具体的には、複数の突起部30が巻軸部22の巻軸方向(Z方向)の複数箇所に離間して形成されている。コイルワイヤ50は、巻軸部22の周囲であって突起部30同士の間に多層に巻回されたうえで絡げ端子42に絡げられている。
【0023】
また、巻軸部22に巻回されたコイルワイヤ50に外装樹脂(図示せず)がオーバーモールドされていてもよい。外装樹脂は、巻軸部22のほか、コア10の全長および絡げ端子42を包埋するよう、アンテナ端子40の近傍を除くコイルボビン20の略全体にオーバーモールドされることが好ましい。
【0024】
コイルボビン20の形態について更に説明する。コイルボビン20に対するコイルワイヤ50の巻回方向、すなわち巻軸部22の延在方向をZ方向とする。本実施形態のコア10は偏平な棒状をなしている。コア10を長手方向に垂直に切った断面(横断面)における短手(薄肉)方向をX方向とし、長手(幅広)方向をY方向とする。本実施形態のコイルボビン20は、Z方向に挿抜される雄型を用いることなく、一の方向(本実施形態ではX方向)に接近または離間する金型(割型)のみを用いた樹脂材料の射出成形により作成可能である。かかるコイルボビン20のすべての横断面形状は、割型の接離(分割)方向であるX方向に複数の断面部位が並ぶことがない。すなわち、X方向を面内に含む任意の断面でコイルボビン20を切断したときに、中空部を挟んでX方向の両側に断面部位をもつことがない。言い換えると、X方向を方向ベクトルとする任意のあらゆる直線は、コイルボビン20に対して多くとも1回のみ交差する。つまり、X方向を面内に含む任意の断面でコイルボビン20を切断した断面において、コイルボビン20の任意の部位をX方向に投影した場合、その投影が他の部位に重なることがない。コイルボビン20は割型の接離方向にひとまとまりの形状をなしている。よって、コイルボビン20は、巻軸部22の延在方向(Z方向)に対して交差する少なくとも一の方向(X方向)に関して、コイルボビン20のいずれの領域への投影も他の領域と重ならない形状である。これにより、当該一の方向(X方向)に接離する一対の割型によってコイルボビン20を一部品として射出成形することが可能である。
【0025】
なお、コイルボビン20が樹脂材料で一体成形された一部品からなるとは、上記のように一の方向(たとえばX方向)に接近または離間する割型のみを用いた樹脂材料の射出成形により作成可能な部品を巻軸部22として備えていることを意味する。本実施形態に代えて、コイルボビン20に対して付加的な別部品を装着してもよい。
【0026】
なお、上記の説明は、射出成形時におけるコイルボビン20の形状を説明するものであり、コイルワイヤ50が周囲に巻回されたコイル装置100の状態におけるコイルボビン20の形態を必ずしも意味するものではない。
【0027】
図3に示すように、本実施形態のコア10は矩形断面の棒状をなしている。そして、第一または第二のベース片24a〜24c(本実施形態では第二のベース片24a、24b)は、コア10の矩形断面のコーナー部12を保持するL型断面をなしている。また、コイルボビン20の巻軸部22の断面形状は、コア10を囲む四辺形状の一部で構成されている。断面形状が四辺形状の一部で構成されているとは、四辺全周形状ではなく、かつ四本の各辺に関してそれぞれ一部または全部を含む形状であることをいう。本実施形態では、図3に示すように、単純な直線断面形状の第一のベース片24cと、一対のL字型断面の第二のベース片24a、24bと、で巻軸部22は構成されている。図3に示す横断面において、X方向に延在する対向する二辺は、全辺長で構成されている。Y方向に延在する対向する二辺は、いずれも一部辺長で構成されている。
【0028】
コイルワイヤ50はコア10に対して非接触に巻回されている。コイル装置100の横断面においてベース片24a〜24cがコア10を囲む四辺形状の一部を構成しているため、コイルワイヤ50はコア10のいずれの周面にも接することがない。すなわち、巻軸部22においてコイルワイヤ50はコア10に対して非接触に巻回されている。
【0029】
本実施形態のコイルボビン20の巻軸部22は、巻張されたコイルワイヤ50により圧搾されてコア10の周囲に圧接している。すなわち、コイルボビン20の成形時の巻軸部22の形態と、コイルワイヤ50が巻回されたコイル装置100における巻軸部22の形態とは異なる。
【0030】
すなわち、アンテナ用コイル装置(コイル装置100)に用いられる本実施形態のコイルボビン20は、巻軸部22が複数のベース片24a〜24cを備え圧搾可能に構成されていることを特徴とする。ベース片24a〜24cは、コイルボビン20の巻軸方向に延在する長尺の柱状の部位である。コイルワイヤ50を巻回するなどして内向きに押圧することで、複数のベース片24a〜24cは弾性変形して互いの距離が縮まる。このため、ベース片24a〜24cでコア10を取り囲んだ状態でコイルワイヤ50をベース片24a〜24cに巻き付けることで、ベース片24a〜24cはコア10に密着してコア10を保持する。複数のベース片24a〜24cが圧搾可能であるとは、複数のベース片24a〜24cが、それ自体の大変形により、またはベース片24a〜24c同士の相対位置の大きな変化により、ベース片24a〜24cを包絡する空間領域を目視可能かつ復元可能に縮小できることをいう。
【0031】
図3に示すように、コイルワイヤ50が巻回された巻軸部22は、コア10の周方向に互いに離間して配置された複数のベース片24a〜24cを含んでいる。これらの複数のベース片24a〜24cによってコア10を周囲から保持した状態でベース片24a〜24cの周囲にコイルワイヤ50が巻回されている。
【0032】
コイルワイヤ50の未巻回状態では、ベース片24a〜24cはコア10から遊離している。これにより、コイルボビン20の巻軸部22の内部にコア10を容易に挿入することができる。コイルワイヤ50の未巻回状態では、コイル装置100における巻回状態に比べて、ベース片24a〜24c同士の離間距離はより大きくなる。
【0033】
図4(a)は図2のIV-IV線断面図である。ただし、説明のため図4(a)ではコア10を図示している。図4(b)はコイルボビン20の巻軸部22(図2を参照)の成形状態を示す説明図である。割型を構成する第一金型110と第二金型120とを対向配置して形成される空間130に溶融樹脂を射出し、これを冷却硬化することによりコイルボビン20(ベース片24a〜24c)は成形される。接合面140は、第一金型110と第二金型120との接離方向(X方向)に対して交差する方向に延在する境界面である。接合面140の具体的な位置は図4(b)に限られるものではない。第一金型110は凸部112を有している。第二金型120は、凸部112と嵌合する一対の凸部122、124を有している。凸部112、122、124の突出方向は、第一金型110および第二金型120の接離方向(X方向)と一致している。第一金型110の凸部112は、一対のベース片24a、24bの間に貫入して、ベース片24cの成形空間の一部を区画する部位である。凸部122、124は、ベース片24aと24cとの間、およびベース片24bと24cとの間に貫入して、L字形状のベース片24a、24bのコーナー部およびベース片24cの成形空間の一部を区画する部位である。
【0034】
上述のように、コイルボビン20は、巻軸部22の延在方向(Z方向)に対して交差する少なくとも一の方向(X方向)に関して、コイルボビン20のいずれの領域への投影もコイルボビン20の他の領域と重ならない形状をなしている。図4(b)に示すように、コイルボビン20の成形状態、すなわちコイルワイヤの未巻回状態において、当該一の方向(X方向)に関する第一のベース片24cの投影と、第二のベース片24a、24bの投影との間には間隙Vが存在する。すなわち、第一金型110、第二金型120の接離方向に交差する方向(Y方向)に関して、第二のベース片24a、24bの間隔は、第一のベース片24cの寸法よりも大きい。これにより、第二のベース片24a、24bの間に貫入する凸部112、および第二のベース片24a、24bと第一のベース片24cとの間に貫入する凸部122、124を、突出方向に向かって細幅となるテーパー形状とすることができる。このため、コイルボビン20の樹脂成形後に第一金型110と第二金型120とをコイルボビン20から容易に抜去することができる。
【0035】
コイルボビン20は、一方向(X方向)のみに関してコイルボビン20の投影がコイルボビン20自体(他の領域)と重ならない形状とし、当該一の方向に直交する方向(Y方向)には、ベース片24aと24bの投影が互いに重なるように構成されている。これにより、X方向を割型の接離方向として確保するとともに、Y方向に関してコア10を良好に保持してコア10の保持不良を低減している。
【0036】
図2に示すように、突起部30は第二のベース片24a、24bに個別に設けられている。突起部30は、第二のベース片24a、24bに一材一体成形されている。突起部30は、第二のベース片24a、24bに対して、X方向およびY方向の両方向に関して外側に突出する形状をなしている。
【0037】
コイルボビン20は、巻軸部22とボビン端部26とからなる。ボビン端部26は、巻軸部22の一端側にのみ設けられてもよく、または巻軸部22の両側に設けられてもよい。本実施形態のコイルボビン20は、巻軸部22の延在方向の両側にボビン端部26(26a、26b)が設けられている。
【0038】
ボビン端部26aは、アンテナ端子40および絡げ端子42がインサート成形された部位であり、任意でコネクタ(図示せず)が装着される。ボビン端部26bはコア10を巻軸部22に挿入するための開口端である。ボビン端部26a、26bは、巻軸部22よりも堅牢に形成され、実質的に変形しない非圧搾部である。ボビン端部26bは、コイルワイヤ50をコイルボビン20の巻軸部22に巻回する際にワインダ装置(図示せず)によりチャッキングされる保持点として用いることができる。
【0039】
コイルボビン20は、巻軸部22のみならずボビン端部26a、26bもまた、巻軸方向(Z方向)に挿抜される雄型を用いることなく、任意の一の方向(X方向)に接離する第一金型110、第二金型120のみにより射出成形可能な形状である。言い換えると、ボビン端部26a、26bの任意の部位をX方向に投影した場合、その投影がボビン端部26a、26bの他の部位に重なることがない。
【0040】
すなわち、本実施形態のコイルボビン20の巻軸部22の少なくとも一端側には、非圧搾部であるボビン端部26a、26bが樹脂材料で一体成形されている。ボビン端部26a、26bは、上記の一の方向(X方向)に関して、ボビン端部26a、26bのいずれの領域への投影も、当該ボビン端部26a、26bの他の領域と重ならない形状をなしている。
【0041】
図5図2のV-V線断面図であり、ボビン端部26bの横断面図である。ボビン端部26bは、割型の接離方向(X方向)に開口したC型断面形状をなしている。このため、X方向に接離する一対の第一金型110および第二金型120(図5では図示省略)のみを用いて射出成形可能である。アンテナ端子40が設けられたボビン端部26aはアンテナ端子40および絡げ端子42を除いて中実のブロック状をなしており、同様にX方向に接離する一対の第一金型110および第二金型120のみを用いて射出成形可能である。
【0042】
図2に示すように、ボビン端部26aは、巻軸部22との境界部にストッパー部27を有している。ストッパー部27は巻軸部22よりもX方向およびY方向の寸法が大きく、突起部30とともにコイルワイヤ50の巻きずれを防止している。ストッパー部27は下方(−X方向)に開口したC型断面形状をなしておりコア10が挿入される(図1を参照)。ボビン端部26bから挿入されたコア10は、ストッパー部27に至る深さでコイルボビン20に挿通され、中実のボビン端部26aに当接することでコア10の挿入深さは規制される。
【0043】
ボビン端部26bもまた、巻軸部22よりもX方向およびY方向の寸法が大きく、コイルワイヤ50の巻きずれを防止する機能を有している。コイルワイヤ50は、巻軸部22の全長に対して巻回されていてもよく、または図1に示すように巻軸部22の一部の長さ領域に対して巻回されていてもよい。
【0044】
コイルボビン20の巻軸部22、ボビン端部26bおよびストッパー部27は、上述のように、いずれも部分筒状をなしている。巻軸部22、ボビン端部26bおよびストッパー部27は、巻軸方向(Z方向)を軸心とする周方向に、少なくとも1箇所の開口を有している。巻軸部22、ボビン端部26bおよびストッパー部27の開口方向は同一方向でもよく、または異なる方向でもよい。本実施形態のコイルボビン20では、ボビン端部26bの開口方向は+X方向、巻軸部22の開口方向は+X方向および−X方向、ストッパー部27の開口方向は−X方向である。すなわち、巻軸部22、ボビン端部26bおよびストッパー部27の開口方向は一致していない。これにより、開口を押し広げるような外力に対してコイルボビン20の強度を所定に維持している。また、コア10の収容部以外の長さ領域(ボビン端部26a)の少なくとも一部を中実にすることでコイル装置100の全体的な強度および剛性を維持することができる。
【0045】
コイルボビン20において、圧搾可能な柱状のベース片24a〜24cは巻軸部22の全長に亘って設けられていてもよく、または巻軸部22の一部の長さ領域に設けられていてもよい。言い換えると、ベース片24a〜24cは、巻軸部22の途中で終端していてもよく、またはボビン端部26bとストッパー部27との間の全長に亘って形成されていてもよい。本実施形態では、図2に示すように、ベース片24a〜24cがストッパー部27まで到達せず巻軸部22の一部の長さ領域に設けられている態様を例示しているが、これに限られない。巻軸部22の巻軸方向(Z方向)に関し、ベース片24a〜24cはストッパー部27と重複しない位置に形成されている。これにより、ボビン端部26b、ベース片24a〜24c、ストッパー部27およびボビン端部26aを備えるコイルボビン20を、各1個の割型である第一金型110および第二金型120を用いて、1回の射出成形工程により樹脂成形することができる。
【0046】
本実施形態のコイル装置100においては、コイルボビン20が弾性的に圧搾可能であり、コイルワイヤ50の巻張力によってコイルボビン20がコア10に圧接されている。すなわち、本実施形態のコイル装置100は以下の技術思想を包含している。
(i)磁性材料からなるコアと、巻軸部を有し上記コアの周囲に装着されるコイルボビンと、上記巻軸部に巻回されたコイルワイヤと、を備え、上記コイルボビンは樹脂材料で一体成形された一部品からなるとともに、上記巻軸部が巻張された上記コイルワイヤにより圧搾されて上記コアの周囲に圧接していることを特徴とするアンテナ用コイル装置。
(ii)上記巻軸部が複数の柱状部を備え圧搾可能に構成されている上記のアンテナ用コイル装置。
(iii)上記巻軸部の少なくとも一端側に、非圧搾部であるボビン端部が上記樹脂材料で一体成形されている上記のアンテナ用コイル装置。
【0047】
本実施形態のようにコイルボビン20が弾性的に圧搾可能であることにより、コイルボビン20にコイルワイヤ50を巻回することで、コイルボビン20に挿入したコア10を安定して保持することができる。これにより、コイルワイヤ50の巻回工程の後に行われる種々の工程、たとえばコイルワイヤ50の両端を絡げ端子42に絡げる工程や、コイルワイヤ50を外装樹脂(図示せず)で被覆するオーバーモールド工程においてコア10がコイルボビン20に対して巻軸方向にずれることがない。これにより、コイル装置100のアンテナ特性が設計仕様から不測に変動することがなく、コイル装置100の歩留まりを改善することができる。
【0048】
なお本実施形態については種々の変形を許容する。
たとえば、図1および図2ではアンテナ端子40の突出方向が巻軸方向(Z方向)に直交する方向である態様を例示したが、これに限られない。アンテナ端子40は巻軸方向に突出していてもよい。本実施形態ではボビン端部26a、26b、ストッパー部27および突起部30がいずれもベース片24a〜24cと一材で一体成形されている態様を例示したが、これに限られない。ボビン端部26a、26b、ストッパー部27または突起部30のいずれかを別部材で作成して、ベース片24a〜24cを備えるコイルボビン20に対して装着してもよい。
【0049】
また、本実施形態のベース片24a〜24cは、それぞれ柱状の長尺の部位である態様を例示したが、これに限られない。ベース片は、網状や面状などでもよい。また、ベース片24a〜24cの数量(条数)も、本実施形態のように3条である場合に限られない。後述する実施形態のように、ベース片は2条または4条以上でもよい。
【0050】
本実施形態のコイルボビン20は、巻軸部22の延在方向(Z方向)に対して交差する一の方向(X方向)に関して、コイルボビン20の投影がコイルボビン20自体(他の領域)と重ならないように構成されている。本実施形態に代えて、二以上の方向(たとえばX方向およびY方向)に関して、コイルボビン20の投影がコイルボビン20自体と重ならないように構成されていてもよい。
【0051】
図6(a)は第二実施形態のコイル装置100の巻軸部22を示す横断面図である。図6(b)は巻軸部22の成形状態を示す説明図である。
【0052】
本実施形態のコイルボビン20は、巻軸部22が一対のL字形状のベース片24a、24bの2条で構成されている点で第一実施形態と相違する。図6(a)に示すように点対称に配置した一対のL字形状のベース片24a、24bでコア10を挟持することで、巻軸部22の断面形状はコア10を囲む四辺形状の一部により構成されることとなる。このため、本実施形態のコイルボビン20に対してコイルワイヤ50は非接触に巻回される。また、ベース片24a、24bがコイルワイヤ50により圧搾されてコア10の周囲に密着し、コア10を良好に保持することができる。
【0053】
本実施形態のように、点対称に配置された2つの部位(ベース片24a、24b)で巻軸部22を構成することで、第一金型110および第二金型120も対称形状とすることができる。具体的には、第一金型110の凸部112および第二金型120の凸部122を同一のテーパー形状とすることができる。このため、第一金型110および第二金型120の生産性が高く、またコイルボビン20を安定して樹脂成形することができる。
【0054】
図7(a)は第三実施形態のコイル装置100の巻軸部22を示す横断面図である。図7(b)は巻軸部22の成形状態を示す説明図である。
【0055】
本実施形態のコイルボビン20は、コア10の辺央に沿って配置される第一のベース片24cが複数の柱状に分割されている点で第一実施形態(図3を参照)と相違する。すなわち、本実施形態のベース片24a〜24dは4条で構成されている。
【0056】
本実施形態のように、コイルボビン20の巻軸部22の横断面においてコア10の一辺を複数のベース片24c、24dで支持することにより巻軸部22の可撓性が向上する。ベース片24c、24dの相対移動が許容されるためである。これにより、巻軸部22の圧搾性が向上するため、コイルワイヤ50を小さな巻張力で巻回する場合でもベース片24a〜24dを良好に圧搾してコア10に密着させることができる。
【0057】
本実施形態のコイルボビン20を射出成形する金型(割型)は、図7(b)に示すように、第一実施形態の第二金型120(図4(b)を参照)におけるベース片24cの成形空間を複数に区画した点でのみ相違する。第一金型110は共通である。すなわち、第二金型120を交換することで、成形されるコイルボビン20を第一実施形態または本実施形態に相互に変更することができる。
【0058】
本発明のコイル装置100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0059】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)磁性材料からなるコアと、巻軸部を有し前記コアの周囲に装着されるコイルボビンと、前記巻軸部に巻回されたコイルワイヤと、を備え、前記コイルボビンは、樹脂材料で一体成形された一部品からなるとともに、前記巻軸部の延在方向に対して交差する少なくとも一の方向に関して、前記コイルボビンのいずれの領域への投影も前記コイルボビンの他の領域と重ならないことを特徴とするアンテナ用コイル装置。
(2)前記巻軸部が、前記コアの周方向に互いに離間して配置された複数のベース片を含む上記(1)に記載のアンテナ用コイル装置。
(3)前記コアが矩形断面の棒状をなし、前記コイルボビンの前記巻軸部の断面形状が、前記コアを囲む四辺形状の一部で構成されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のアンテナ用コイル装置。
(4)前記コイルボビンの前記巻軸部は、巻張された前記コイルワイヤにより圧搾されて前記コアの周囲に圧接している上記(1)から(3)のいずれか一項に記載のアンテナ用コイル装置。
(5)前記巻軸部の周囲に、巻回された前記コイルワイヤの巻きずれを規制する突起部が形成されている上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のアンテナ用コイル装置。
(6)前記巻軸部に巻回された前記コイルワイヤに外装樹脂がオーバーモールドされている上記(1)から(5)のいずれか一項に記載のアンテナ用コイル装置。
(7)上記(1)から(6)のいずれか一項に記載のアンテナ用コイル装置に用いられるコイルボビンであって、前記コイルボビンの前記巻軸部が複数のベース片を備え圧搾可能に構成されていることを特徴とするコイルボビン。
(8)前記巻軸部の少なくとも一端側に、非圧搾部であるボビン端部が前記樹脂材料で一体成形されており、前記ボビン端部は、前記一の方向に関して、前記ボビン端部のいずれの領域への投影も前記ボビン端部の他の領域と重ならないことを特徴とする上記(7)に記載のコイルボビン。
(9)前記一の方向に関する一の前記ベース片の投影と他の前記ベース片の投影との間に間隙が存在することを特徴とする上記(7)または(8)に記載のコイルボビン。
(10)前記コアが矩形断面の棒状をなし、前記ベース片が、前記コアの矩形断面のコーナー部を保持するL型断面をなしている上記(9)に記載のコイルボビン。
【符号の説明】
【0060】
10:コア、12:コーナー部、20:コイルボビン、22:巻軸部、24a〜24d:ベース片、26・26a・26b:ボビン端部、27:ストッパー部、30:突起部、40:アンテナ端子、42:絡げ端子、50:コイルワイヤ、100:コイル装置、110:第一金型、112:凸部、120:第二金型、122・124:凸部、130:空間、140:接合面、V:間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7