【課題】 本発明は、基材表面への撥水撥油/親水親油領域パターンを形成するための煩雑な工程を改善し、より簡便かつ高精度なパターン形成を実施せしめるために有用である新規な含フッ素重合性化合物を提供することを課題とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、基材表面への撥水撥油/親水親油領域パターンを形成するための煩雑な工程を改善し、より簡便かつ高精度なパターン形成を実施せしめるために有用である新規な含フッ素重合性化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、これらの問題点を解決すべく鋭意検討した結果、撥水撥油性を有するフルオロアルケニル基と紫外光などのエネルギー線吸収性を有する芳香環を有し、且つ撥水撥油/親水親油領域パターンニングを必要とする基板上に塗工される各種樹脂成分との重合性官能基を有する含フッ素重合性化合物を、該樹脂と混合あるいは熱硬化等により、該樹脂成分と反応・硬化させ撥水撥油性を付与させた後、紫外光などのエネルギー線を照射することで、その照射部位の撥水撥油性を低下させることが出来ることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき、さらに鋭意検討を重ねて完成された発明である。すなわち、本発明は下記項1〜4の新規な含フッ素重合性化合物に関する。
【0007】
項1. 下記一般式(1)で表される含フッ素重合性化合物
【化1】
[式中、Qは2つ以上の芳香環を含むことを必須とする2価の有機基を表す。R
1は炭素数2〜20の2価の炭化水素基(該炭化水素基は所望によりエーテル結合、環状構造を有していてもよい)を表し、R
2はHもしくはメチル基を表す。Rfはペルフルオロアルケニル基を示す。]
項2. 一般式(1)においてRfで表されるペルフルオロアルケニル基が下記式(2)および/又は(3)で表される基であることを特徴とする項1に記載の含フッ素重合性化合物。
【化2】
項3. 一般式(1)においてQが置換基を有していてもよいナフチレン基およびビフェニレン基である項1または2に記載の含フッ素重合性化合物。
項4. 一般式(1)においてQが下記式(4)または(5)で表される2価の有機基である項1または2に記載の含フッ素重合性化合物。
【化3】
[式中、結合部位は特定されない]
【発明の効果】
【0008】
本発明の含フッ素重合性化合物を樹脂成分中に添加することで、基板上の樹脂薄膜に撥水撥油性を付与することが出来る。さらに、紫外光に例示されるエネルギー線照射により、照射部位の撥水撥油性を低下させることが出来る。すなわち本発明の含フッ素重合性化合物を用いることで、エネルギー線照射のみで撥水撥油/親水親油領域パターンの形成を容易に行うことが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の含フッ素重合性化合物について詳述する。
本発明の含フッ素重合性化合物は、下記一般式(1):
【化4】
で表されることを特徴とする。
【0010】
一般式(1)において、Qは2つ以上の芳香環を含むことを必須とする2価の有機基を示す。2つ以上の芳香環を含むことを特徴とする2価の有機基としては、例えば、ビフェニレン基、フェノキシフェニル基、ナフチレン基、アントラニレン基、テトラセニレン基、フェナントニレン基、ピレニレン基等が例示される。該有機基は本用途での性能を阻害しない範囲で置換基を有していてもよい。好ましいQとしては、ナフチレン基、ビフェニレン基が挙げられる。
【0011】
Qの具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
【化5】
【0012】
一般式(1)において、R
1は炭素数2〜20の2価の炭化水素基である。該炭化水素基は所望により、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)O−または−O−C(=O)−)、アミド結合(−C(=O)NH−または−NHC(=O)−)、ウレタン結合(−NHC(=O)O−または−O−C(=O)−NH−)、ウレア結合(−NHC(=O)NH−)等の結合やシクロヘキサン環等の環状構造を有していてもよく、またハロゲン原子(塩素、フッ素等)を含有してもよい。
【0013】
好ましいR
1としては具体的に以下の構造の炭化水素基が例示される。
−(CH
2)n1− (n1=2〜10)
−CH(CH
3)−CH
2−
−CH(CH
2CH
3)−CH
2−
−(CH
2CH
2O)n2−CH
2CH
2− (n2=1〜9)
−CH
2−C
6H
10−CH
2−
R
2はHあるいはメチル基を示す。
【0014】
Rfはペルフルオロアルケニル基を示し、該ペルフルオロアルケニル基の炭素数は3〜9である。好ましいRfは下記式(2)および/又は(3)で示されるペルフルオロアルケニル基である。
【化6】
【0015】
[製造方法]
本発明に係る含フッ素重合性化合物は例えば以下の反応式(A)を経た後に反応式(B)を経る方法により合成できるが、当該方法に限定されない。
【0016】
反応式(A)
反応式(A)は、ペルフルオロアルケニル化合物をヒドロキシル基及びカルボキシル基を有する化合物と反応させて、ペルフルオロアルケニル基およびカルボキシル基を有する化合物を得る反応である。
【0017】
Rf−Fはペルフルオロアルケニル化合物を示し、具体的にはヘキサフルオロプロペン2量体(C
6F
11−F)やヘキサフルオロプロペン3量体(C
9F
17−F)が例示される。これらのペルフルオロアルケニル誘導体は、公知の方法を用いて合成しても良いし、市販品を購入して使用しても良い。撥水撥油性能の点から、ヘキサフルオロプロペン3量体(C
9F
17−F)がより好ましい。
【0018】
HO―Q−C(=O)OHは市販されているものを用いることが出来る。ヒドロキシル基およびカルボキシル基は同一の芳香環上にあっても良く、また異なる芳香環上にあってもよい。たとえば、6−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−(4−ヒドロキシフェニル)安息香酸、4−(4−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸、4−(3−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸、フルオレシン、5−カルボキシフルオレセイン、2',4',5',7'-テトラブロモ−3,4,5,6−テトラクロロフルオレセインなどが例示される。好ましくは、6−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸や4−(4―ヒドロキシフェニル)安息香酸が例示される。
【0019】
反応式Aに示す反応は塩基性触媒存在下、非プロトン性極性溶媒を用いることで容易に進行する。
【0020】
塩基性触媒としては苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ソーダ、炭酸カリおよびトリアルキルアミン等が例示されるが、特にトリエチルアミンおよび炭酸カリが好ましい。
【0021】
非プロトン性極性溶媒としてはテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテルおよびアセトニトリル等が例示されるが、特にアセトニトリルが好ましい。
【0022】
反応式AにおけるRf−FとHO−Q−C(=O)OHとの反応モル比は、通常、2:1〜1:1、好ましくは、1.2:1〜1.05:1である。
【0023】
反応温度は通常0〜40℃とすればよく、反応時間は1〜24時間とすればよい。
【0024】
反応式(B)
反応式(B)は、反応式(A)によって得られたカルボン酸化合物からエステル化反応により目的のペルフルオロアルケニル基を有する重合性化合物を得る反応である。
【0025】
反応式(B)に示すエステル化反応では従来公知の方法を用いることが出来る。例えば、酸触媒を用いたエステル化、酸クロリドを用いたエステル化、N,N´−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などの縮合剤を用いたエステル化などの方法を用いることが出来る。
【0026】
反応式(B)に示すHO−R
1−OC(=O)−C(R
2)=CH
2は市販されている材料を用いることが出来る。具体的には、
HO−CH
2−CH
2−OC(=O)−CH=CH
2(2−ヒドロキシエチルアクリレート、ライトエステルHOA、共栄社化学株式会社製)、HO−CH
2−CH
2−OC(=O)−C(CH
3)=CH
2(2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ライトエステルHO−250、共栄社化学株式会社製)、HO−CH
2−CH
2−CH
2−OC(=O)−CH=CH
2(3−ヒドロキシプロピルアクリレート、東京化成工業試薬)、HO−CH
2−CH
2−CH
2−OC(=O)−C(CH
3)=CH
2(3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、東京化成工業試薬)、HO−CH(CH
3)−CH
2−OC(=O)−CH=CH
2(2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ライトエステルHOP−A、共栄社化学株式会社製)、HO−CH(CH
3)−CH
2−OC(=O)−C(CH
3)=CH
2(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ライトエステルHOP、共栄社化学株式会社製)、HO−CH(C
2H
5)−CH
2−OC(=O)−CH=CH
2(2−ヒドロキシブチルアクリレート、ライトエステルHOB−A、共栄社化学株式会社製)、HO−CH(C
2H
5)−CH
2−OC(=O)−C(CH
3)=CH
2(2−ヒドロキシブチルメタクリレート、ライトエステルHOB、共栄社化学株式会社製)、HO−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−OC(=O)−CH=CH
2(4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−HBA、日本化成株式会社製)、HO−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−OC(=O)−C(CH
3)=CH
2(4−ヒドロキシブチルメタクリレート、日本化成株式会社製)、HO−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−OC(=O)−CH=CH
2(6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、株式会社三友化学研究所製)、HO−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−OC(=O)−C(CH
3)=CH
2(6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、株式会社三友化学研究所製)H−(OCH
2CH
2)
n−OC(=O)−CH=CH
2(ポリエチレングリコールモノアクリレート、n=2:ブレンマーAE−90、n=4.5:ブレンマーAE200、n=10:ブレンマーAE−400、日油株式会社製)、H−(OCH
2CH
2)
n−C
6H
10−CH
2−OC(=O)−C(CH
3)=CH
2(ポリエチレングリコールモノメタクリレート、n=2:ブレンマーPE−90、n=4.5:ブレンマーPE−200、n=8:ブレンマーPE−350、日油株式会社製)、HO−CH
2−C
6H
10−CH
2−OC(=O)−CH=CH
2(シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、CHDMMA、日本化成株式会社製)、等が好ましく例示される。
【0027】
[使用方法]
ガラス、金属、樹脂等の材質の基板上に本化合物を混合した樹脂成分を塗布し薄膜を形成した後、必要に応じて熱等により硬化させることで撥水撥油性を付与した膜を形成する。
【0028】
基板材質や樹脂成分としては特に制約はなく、従来の用途で用いられている材料をそのまま用いることが出来る。本化合物の添加量としては樹脂成分に対して0.5〜10%程度が好ましく例示される。更に好ましくは1〜5%である。添加量が少ない場合は所定の撥水撥油性能が得られず、過剰量添加しても撥水撥油性能の向上が見られない。樹脂成分の硬化を必要とする場合は、硬化の条件に適した重合開始剤を用いてもよい。例えば、熱による樹脂成分の硬化を前提とする場合、熱による重合開始剤を用いてもよい。また、その際に用いる樹脂成分は本発明の含フッ素重合性化合物に含まれる重合性官能基と重合できる官能基を有する樹脂を用いることがより好ましい。該重合開始剤の添加量は従来用いられている樹脂成分を硬化するために必要な添加量でよく、本発明の化合物を添加することによって特に増量等は必要としない。薄膜形成の際に本化合物、樹脂、必要に応じて添加される重合開始剤を有機溶剤に溶解させ塗工してもよい。この際に用いる有機溶剤としては、添加する各成分を溶解できるものであれば特に限定的ではない。一般的にはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が例示される。
【0029】
樹脂膜とする場合、膜厚としては、本用途での性能を阻害しない範囲であれば特に限定されない。薄膜の形成方法も特に限定的ではなく、従来公知の成膜方法を用いることが出来る。
【0030】
形成された薄膜にフォトマスク等を介在させ、紫外光等を照射することで、照射部分の撥水撥油性を低下させることが出来る。一方、フォトマスク等で被覆された部分の撥水撥油性は維持される。照射光の光源としては高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等、従来用いられている光源を用いることができる。照射エネルギー量により撥水撥油性の低下の程度が変化する為、使用に最適な照射量を選択することが出来る。
【0031】
すなわち、本発明の含フッ素重合性化合物を用いることで、現像工程や洗浄工程を経ることなく、紫外光に例示されるエネルギー線照射のみで撥水撥油/親水親油領域パターンの形成を容易に行うことが出来る。
【実施例】
【0032】
本発明の内容を以下の実施例により説明するが、本発明の内容は実施例に限定されることは意図しない。
【0033】
[合成実施例1]
6−ペルフルオロノネニルオキシ−2−ナフトエ酸の合成
滴下ロートを備えた2口フラスコにアセトニトリル7.2mL、6−ヒドロキシ−2−
ナフトエ酸(5.00g,26.57mmol)、トリエチルアミン(5.65g,55.80mmol)を入れ、反応混合物を5℃に冷却した。反応混合物を攪拌しながら、滴下ロートからヘキサフルオロプロペンのトリマー(12.56g,27.90mmol)を滴下した。滴下終了後、室温で1.5時間攪拌した。攪拌終了後、反応混合物を希塩酸で洗浄した。残渣液の白色沈殿物をろ過によって取り出し、熱水で洗浄した。得られた白色固体を減圧乾燥することによって、目的物を15.76g得た(収率96%)。
6−ペルフルオロノネニルオキシ−2−ナフトエ酸−2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステルの合成
滴下ロートを備えた2口フラスコにトルエン20.0mL、6−ペルフルオロノネニルオキシ−2−ナフトエ酸(12.36g,20.00mmol)を入れ、反応混合物を40℃に加温した。反応混合物を攪拌しながら、滴下ロートから塩化チオニル(7.14g,60.00mmol)をトルエン20mLに溶解させたものを滴下した。滴下終了後、反応混合物を80℃にし4時間攪拌した。攪拌終了後、反応混合物を100℃にし、未反応の塩化チオニルを除去した。反応混合物を水で3回洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、濃縮することによって、6−ペルフルオロノネニルオキシ−2−ナフトエ酸クロリドを12.09g得た(収率95%)。次いで、滴下ロートを備えた2口フラスコに酢酸エチル9.0mL、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2.59g,19.95mmol)、トリエチルアミン(2.11g,20.90mmol)を入れた。2口フラスコの反応容器を攪拌しながら、滴下ロートから6−ペルフルオロノネニルオキシ−1−ナフトエ酸クロリド(12.09g,19.00mmol)を酢酸エチル7.5mLに溶解させたものを滴下した。滴下終了後、室温で5時間攪拌した。攪拌終了後、反応混合物からトリエチルアミンの塩酸塩をろ別し、残留液を希塩酸および水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、濃縮することによって、6−ペルフルオロノネニルオキシ−2−ナフトエ酸−2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステルを12.20g得た(収率88%)。得られた化合物の
1H−NMR、
19F−NMRを表―1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
[合成実施例2]
4−(4−ペルフルオロノネニルオキシフェニル)安息香酸の合成
滴下ロートを備えた2口フラスコにアセトニトリル6.5mL、4−(4−ヒドロキシフェニル)安息香酸(5.15g,24.04mmol)、トリエチルアミン(5.11g,50.48mmol)を入れ、反応混合物を5℃に冷却した。反応混合物を攪拌しながら、滴下ロートからヘキサフルオロプロペンのトリマー(11.36g,25.24mmol)を滴下した。滴下終了後、室温で1.5時間攪拌した。攪拌終了後、反応混合物を希塩酸で洗浄した。残渣液の白色沈殿物をろ過によって取り出し、熱水で洗浄した。得られた白色固体を減圧乾燥することによって、目的物を15.76g得た(収率96%)。
4−[4−(ペルフルオロノネニルオキシ)フェニル]安息香酸−2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステルの合成
滴下ロートを備えた2口フラスコにトルエン30.0mL、4−[4−(ペルフルオロノネニルオキシ)フェニル]安息香酸(14.17g,22.00mmol)を入れ、反応混合物を40℃に加温した。反応混合物を攪拌しながら、滴下ロートから塩化チオニル(7.85g,66.00mmol)をトルエン10mLに溶解させたものを滴下した。滴下終了後、反応混合物を80℃にし4時間攪拌した。攪拌終了後、反応混合物を100℃にし、未反応の塩化チオニルを除去した。反応混合物を水で3回洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、濃縮することによって、4−[4−(ペルフルオロノネニルオキシ)フェニル]安息香酸クロリド12.20gを得た(収率84%)。次いで、滴下ロートを備えた2口フラスコに酢酸エチル8.8mL、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2.51g,19.34mmol)、トリエチルアミン(2.05g,20.26mmol)を入れた。混合物を攪拌しながら、滴下ロートから4−[4−(ペルフルオロノネニルオキシ)フェニル]安息香酸クロリド(12.20g,18.42mmol)を酢酸エチル7.2mLに溶解させたものを滴下した。滴下終了後、室温で5時間攪拌した。攪拌終了後、反応混合物からトリエチルアミンの塩酸塩をろ別し、残留液を希塩酸および水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、濃縮することによって、4−[4−(ペルフルオロノネニルオキシ)フェニル]安息香酸−2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステルを12.61g得た(収率91%)。得られた化合物の
1H−NMR、
19F−NMRを表―2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
[実施例1]
(塗工液の調製)
サンプル瓶に樹脂成分(NKエステルU−6HA、新中村化学工業株式会社製)4g、メチルエチルケトン6g、を入れた。樹脂が溶解するまで攪拌させた後、合成実施例1で得られた6−ペルフルオロノネニルオキシ−2−ナフトエ酸−2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステルエステル0.04g(樹脂に対して1重量部)と熱重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬工業試薬)0.12g(樹脂成分に対して3重量部)を加えた後、攪拌により溶解させ塗工液を得た。
(塗工、硬化)
上記塗工液をPETフィルム(コスモシャインA4100#100、東洋紡株式会社製)にバーコーターを用いて理論膜厚が9.2μmで塗工した。塗工したフィルムを100℃の乾燥機に1時間入れ、熱硬化を行った。
(紫外光照射)
前述のようにして得られた硬化後のフィルムに高圧水銀ランプを光源として用い、紫外光量が0、100、300、500、1000mJ/cm
2となるように照射した。
紫外光の照射は株式会社ジャテック製コンベア式UV照射装置を用いて行った。
(接触角測定)
各紫外光量を照射したフィルム表面の水およびオレイン酸の接触角を測定した。接触角測定は固液界面解析システム(DropMaster700、協和界面科学株式会社製)を用いて行った。水は液滴量を1μLとし、着滴5秒後の接触角を測定した。オレイン酸は液適量を2μLとし、着滴15秒後の接触角を測定した。接触角測定結果を表―3に示す。
【0038】
[実施例2]
6−ペルフルオロノネニルオキシ−2−ナフトエ酸−2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステルエステルのかわりに、合成実施例2で得られた4−[4−(ペルフルオロノネニルオキシ)フェニル]安息香酸−2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステルを用いる以外は実施例1と同様にして、塗工液の調製、塗工・硬化、紫外光照射、接触角測定をおこなった。
【0039】
[比較例1]
含フッ素重合性化合物を用いない以外は実施例1と同様にして、塗工液の調製、塗工・硬化、紫外光照射、接触角測定をおこなった。
【0040】
[比較例2]
6−ペルフルオロノネニルオキシ−2−ナフトエ酸−2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステルのかわりに、4−ペルフルオロノネニルオキシブチルアクリレート(NN−11、株式会社ネオス製)を用いる以外は実施例1と同様にして、塗工液の調製、塗工・硬化、紫外光照射、接触角測定をおこなった。
【0041】
[比較例3]
6−ペルフルオロノネニルオキシ−2−ナフトエ酸−2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステルエステルのかわりに、4−(ペルフルオロノネニルオキシ)安息香酸−2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル(NN−5、株式会社ネオス製)を用いる以外は実施例1と同様にして、塗工液の調製、塗工・硬化、紫外光照射、接触角測定をおこなった。
【0042】
【表3】
【0043】
水の接触角測定の結果から、含フッ素添加剤を用いている実施例1及び2、比較例2、3では紫外光未照射の場合(0mJ/cm
2)、約90°の接触角を示し、撥水性の発現が確認された。本発明の含フッ素重合性化合物を添加した実施例1および2では、500mJ/cm
2の紫外光の照射を行うことで、添加剤を用いていない比較例1と同等の接触角となり、紫外光照射により撥水性の低下が確認された。芳香環を有しない含フッ素添加剤を用いた比較例2では紫外光照射による大きな接触角変化が確認されず、撥水性の低下は微小であった。芳香環を1つ有する含フッ素化合物を用いた比較例3では接触角の低下は起こるものの、本発明の化合物と比べると撥水性低下の効果は小さくなった。
【0044】
オレイン酸の接触角測定結果から、含フッ素添加剤を用いている実施例1及び2、比較例2、3では紫外光未照射の場合(0mJ/cm
2)、50°以上の接触角を示し、撥油性の発現が確認された。本発明の含フッ素重合性材料を添加した実施例1および2では、500mJ/cm
2の紫外光の照射を行うことで、添加剤を用いていない比較例1とほぼ同等の接触角となり、紫外光照射により撥油性の低下が確認された。芳香環を有しない含フッ素添加剤を用いた比較例2では紫外光照射により大きな接触角変化が確認されず、撥油性の低下は微小である。芳香環を1つ有する含フッ素化合物を用いた比較例3では接触角の低下は起こるものの、本発明の化合物と比べると撥油性低下の効果は小さくなった。