【課題】樹脂材に要求される寸法精度を満足することができ、且つ、密着性の良好な微細な金属パターンを樹脂材に形成することのできる金属パターン付樹脂材の製造方法及び金属パターン付きの樹脂材を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するため、パターン形成用の基材10の表面に無電解めっき法により金属パターン21を形成する工程と、その基材10上に、液状の樹脂組成物を用いて樹脂組成物膜を形成し、これを固化又は硬化させて当該金属パターン21と密着した樹脂層22を得る工程と、樹脂層22と基材10とを剥離して、金属パターン付樹脂材20を得る工程とを含むことを特徴とする。
パターン形成用の第一の基材の表面に、無電解めっき法により第一の金属パターンを形成すると共に、パターン形成用の第二の基材の表面に、無電解めっき法により第二の金属パターンを形成する工程と、
第一の金属パターン及び第二の金属パターンを内側にして、第一の基材と第二の基材とを所定の間隔を空けて対向配置し、両基材の間に液状の樹脂組成物を充填して、これを固化又は硬化させて、第一の金属パターン及び第二の金属パターンと密着した樹脂層を得る工程と、
当該樹脂層と第一の基材及び第二の基材とを剥離して、第一の金属パターン及び第二の金属パターンを両側に備える樹脂材を得る工程と、
を含むことを特徴とする金属パターン付樹脂材の製造方法。
前記樹脂組成物は、シクロオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン及びこれらの前駆体のうち、少なくともいずれか一を含む請求項1又は請求項2に記載の金属パターン付樹脂材の製造方法。
当該樹脂材は、シクロオレフィン樹脂材、ポリイミド樹脂材、エポキシ樹脂材及びアクリル樹脂材、イソシアネート樹脂材、ウレタン樹脂材、液晶ポリマー、メラミン樹脂材、ポリエステル樹脂材、ポリエステル樹脂材、シリコン樹脂材、ポリエチレン材、ポリプロピレン材及びポリスチレン材の少なくともいずれか一である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の金属パターン付樹脂材の製造方法。
前記触媒付与工程は、前記触媒付与工程は、前記基材の表面に感光性触媒膜を成膜し、当該感光性触媒膜に対して選択的に露光する工程を含む請求項5に記載の金属パターン付樹脂材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る金属パターン付樹脂材の製造方法及び金属パターン付樹脂材の好ましい実施の形態を説明する。
【0022】
〈金属パターン付樹脂材の製造方法〉
1.片面金属パターン付樹脂材の製造方法
まず、本件発明に係る金属パターン付樹脂材の製造方法のうち、樹脂材の片面に金属パターンを備える金属パターン付樹脂材の製造方法を
図1を参照しながら説明する。本件発明に係る金属パターン付樹脂材の製造方法は、パターン形成用の基材10(
図1(a)参照)の表面に無電解めっき法により金属パターン21を形成する工程(
図1(b)参照)と、当該金属パターン21が形成された基材10上に、液状の樹脂組成物を用いて樹脂組成物膜を形成し、当該樹脂組成物膜を固化又は硬化させて、金属パターン21と密着した樹脂層22を得る工程(
図1(c)参照)と、当該樹脂層22と基材10とを剥離して、
図1(d)に示す金属パターン付樹脂材20を得る工程とを含むことを特徴とする。以下、各工程毎に説明する。
【0023】
1−1.パター形成工程
まず、パターン形成用の基材10の表面に無電解めっき法により金属パターン21を形成する工程(以下、「パターン形成工程」と称する。)について説明する。本件発明では、樹脂材に対して直接金属パターン21を形成するのではなく、パターン形成用の基材10に対して金属パターン21を形成し、これを後述する工程を経て樹脂材(22)側に転写する方法を採用している。このため、金属パターン21を形成する過程で、基材10に対して粗化処理や表面改質処理等の各種表面処理を施したり、当該基材10に対して熱処理を施す必要があっても、樹脂材(22)に対してはこれらの処理を施す必要がない。このため、樹脂材(22)には金属パターン21を形成する過程で行われる各種処理の影響が及ばず、熱可塑性の樹脂材であっても要求される寸法精度を満足することができ、且つ、表面の平滑性等も維持することができる。
【0024】
(1)基材
本件発明において、
図1(a)に示すパターン形成用の基材10とは、金属パターン21を形成する際にのみ用いるものをいい、最終的に金属パターン21が設けられる樹脂材(22)とは別のものを指す。このパターン形成用の基材10の材質は特に限定されるものではなく、例えば、ガラス、セラミックス、石英、シリコンウエハ、金属等に代表される無機材料の他、各種プラスチック等の有機材料等であってもよい。本件発明では、特に、耐熱性を有するガラス基板やシリコンウエハ等を好適に用いることができる。
【0025】
(2)無電解めっき法
無電解めっき法により、パターン形成用の基材10の表面に金属パターン21を形成する際には、従来公知の無電解めっき法によるパターン形成方法を適宜採用することができ、当該パターン形成工程の具体的な手順は、特に限定されるものではない。例えば、基材10の表面全面に触媒を付与し、無電解めっき法により金属を全面に析出させて金属被膜を形成し、その後、エッチング等によりパターンに応じて金属被膜を選択的に溶解除去することにより、所定の金属パターン21を形成してもよい。また、他の方法として、基材10の表面に触媒を選択的に付与し、この触媒が選択的に付与された基材10を無電解めっき液に浸漬し、無電解めっき液中の金属イオンを析出させることにより、所定の金属パターン21を形成してもよい。これらいずれの方法であっても、
図1(b)に示すように基材10上に金属パターン21が形成されれば、その具体的な方法は特に限定されるものではない。しかしながら、上述したように、矩形断面の微細な金属パターン21を簡単な工程によって正確に形成することが可能になるという観点から、本件発明では、パターン形成工程は、基材10の表面に触媒を選択的に付与する触媒付与工程と、この触媒が選択的に付与された基材10を無電解めっき液に浸漬し、無電解めっき液中の金属イオンを所定のパターンで析出させる無電解めっき工程とを含むことが好ましい。
【0026】
(a)触媒付与工程
基材10の表面に触媒を選択的に付与するには、従来公知の方法を適宜採用することができるが、矩形断面の微細な金属パターン21を簡単な工程によって正確に形成することができるという観点において、以下の第一の触媒付与工程〜第四の触媒付与工程のうち、いずれかの方法を採用することが好ましい。
【0027】
i)第一の触媒付与工程
第一の触媒付与工程として、例えば、次の方法を挙げることができる。まず、基材10の一方の面に所定のパターン形状の金属酸化物膜を成膜し、次にこの金属酸化物膜を焼成して、該金属酸化物膜の焼結体を得る。そして、当該焼結体を触媒溶液に浸漬することにより、触媒が基材10の表面に所定のパターン形状に応じて選択的に付与される。
【0028】
金属酸化物膜成膜工程: 金属酸化物膜は、金属酸化物を含有する膜であり、例えば、物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)、液相成長法等により成膜することができる。これらの成膜法として、より具体的に、物理的気相成長法(PVD)としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、分子線エピタキシー法、レーザーアブレーション法等が挙げられる。化学的気相成長法(CVD)としては、熱CVD、MOCVD(有機金属化学気相成長法)、RFプラズマCVD、ECRプラズマCVD、光CVD、レーザCVD、ALE(原子層エピタキシー法)等が挙げられる。液相成長法としては、陽極酸化法、電着法、塗布法、ゾルゲル法等が挙げられる。
【0029】
金属酸化膜に含まれる金属酸化物を構成する金属元素としては、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、インジウム(In)、錫(Sn)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、ポロニウム(Po)、ウラニウム(U)を含む群より選択された何れか一つまたは二つ以上の金属を挙げることができる。
【0030】
上記金属酸化物に含まれる金属酸化物は、上記金属元素と共に、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ホウ素(B)、リン(P)、硫黄(S)、砒素(As)、セレン(Se)、アンチモン(Sb)等の元素を含んでいてもよい。
【0031】
特に、本件発明では、上記金属元素として、ナトリウム、チタン、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン(W)より選択された何れか一つまたは二つ以上の金属であることが好ましい。
【0032】
また、上記の金属が形成する金属酸化物として、酸化チタン(TiO
2)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、酸化タンタル(Ta
2O
5)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化ハフニウム(HfO
2)、酸化モリブデン(MoO
3)、酸化タングステン(WO
3)、酸化亜鉛(ZnO)、或いはこれらの塩、合金が望ましい。これらの塩として、例えば、チタン酸ナトリウム(Na
2O
7Ti
3)、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO
3)、タンタル酸ナトリウム(TaNaO
3)、ジルコン酸ナトリウム(Na
2ZrO
3)、ハフニウム酸ナトリウム(Na
2O
7Hf
3)、モリブデン酸ナトリウム(Na
2MoO
4)、タングステン酸ナトリウム(Na
2O
4W)等が挙げられる。中でも好ましくは、酸化チタン(TiO
2)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO
3)である。
【0033】
例えば、これらの金属酸化物をオフセット印刷やスクリーン印刷等の印刷法によって金属酸化物膜を成膜することにより、所定のパターン形状を有する金属酸化物膜を形成することができる。また、金属酸化物膜を成膜する際に、まず、感光剤を含む金属酸化膜前駆体膜を基材10の表面全面に成膜し、その後、フォトマスク等により金属酸化膜前駆体膜に選択的に紫外光を照射することで所定のパターン形状の金属酸化膜を得ることもできる。但し、金属酸化膜前駆体膜とは、現像処理によりパターンを形成可能なネガ型又はポジ型の感光性膜をいう。
【0034】
焼成工程: 次に、この金属酸化膜を、100℃〜基板の破壊温度の温度条件下において1〜200分焼成することにより、金属酸化膜焼結体を得ることができる。焼成温度は、金属酸化物の組成に応じて適宜適切な温度となるように調整すればよい。当該熱処理を施すことにより、金属酸化膜は、微細なポアが形成された多孔質セラミックスとなる。
【0035】
表面改質処理工程: そして、当該金属酸化膜焼結体に対して、必要に応じて適宜表面処理を施し、後の触媒付与工程における触媒との吸着性を向上させ、或いは、精度よくパターンニングを行うことができるように表面改質処理を行うことが好ましい。このような表面改質処理として、以下のものが挙げられる。
【0036】
まず、上記表面改質処理として、紫外線照射処理が挙げられる。紫外線照射処理では、波長180〜400nm程度の紫外線を、1〜50mW/cm
2程度の照射強度で金属酸化膜焼結体の表面に照射することが好ましい。この際、光源として、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ブラックライト、殺菌ランプ、DUVランプ、エキシマランプ等を用いることができる。金属酸化膜焼結体の表面に紫外線を照射することにより、当該焼結体の表面分子が切断されてイオン化し、親水性基が生成される。これにより、後の触媒付与工程における触媒の吸着性が向上する。
【0037】
また、上記表面改質処理として、表面改質液浸漬処理が挙げられる。表面改質液浸漬処理では、金属酸化膜焼結体を基材10と共に表面改質液に浸漬させることにより、表面の親水性基の極性や表面粗さを増大させ、これにより触媒との吸着性を向上させることができる。表面改質液として、例えば、水酸化ナトリウム溶液、ノニオン系及び/又はアニオン系界面活性剤などを用いることができる。より具体的には、表面改質液として、2−アミノチオエタノール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド等を用いることができる。なお、金属酸化膜焼結体は、上述のとおり、焼結により微細なポアが形成される。このポアによりアンカー効果が得られる。従って、基材10の表面に金属酸化膜焼結体を設ければ、基本的に当該表面改質液浸漬処理を行う必要はないが、必要に応じて適宜行ってもよい。
【0038】
触媒付与工程: 触媒付与工程では、基材10ごと、触媒溶液に浸漬することにより、多数の微細なポアが形成された金属酸化膜焼結体にパラジウム触媒を吸着させることができる。触媒化の方法としては、キャタリスト−アクセラレータ法、センシタイジング−アクティベーティング法、アクティベーティング法等、どのような方法を用いてもよい。また、触媒物質としても、パラジウム、ルテニウム、白金等、どのようなものを用いてもよい。当該工程により基材10の表面に選択的に触媒が付与される。
【0039】
ii)第二の触媒付与工程
上記第一の触媒付与工程と一部態様の異なる第二の触媒付与工程により、基材10の表面に選択的に触媒を付与してもよい。第二の触媒付与工程では、上記金属酸化物膜を成膜する際に、後述する光触媒作用を発現する金属酸化物からなる光触媒性膜を成膜し、次に、この光触媒性膜を焼成して光触媒性膜の焼結体を得る。そして、当該焼結体の表面に撥水性塗膜を設け、所定の露光パターンを有するフォトマスク等を介して撥水性塗膜上から選択的に紫外光を照射する。これにより、紫外光が照射された領域では、光触媒が活性化して撥水性塗膜を分解する。このため、露光パターンに応じて光触媒性膜が露出し、露光されなかった領域の表面は撥水性塗膜により被覆される。その後、第一の触媒付与工程と同様に、基材10ごと触媒溶液に浸漬することにより、基材10の表面に所定のパターン形状に応じて触媒を選択的に付与することができる。以下、第一の触媒付与工程と異なる工程のみ説明する。
【0040】
光触媒膜の成膜: 光触媒作用を発現する金属酸化物として、例えば、酸化チタン(TiO
2)、酸化鉄(Fe
2O
3)、酸化タングステン(WO
3)、酸化スズ(SnO
2)、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(Cu
2O)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)、チタン酸鉄(FeTiO
3)又は、これらの塩を挙げることができる。この中でも、特に、酸化チタン(TiO
2)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO
3)などを用いて、光触媒性膜を成膜することが好ましい。
【0041】
これらの光触媒性膜は、上述した一般的な成膜方法により成膜することができ、特に、ゾルゲル法、スパッタリング法、蒸着法などにより成膜することが好ましい。光触媒性膜を成膜した後、第一の触媒付与工程と同様に焼成工程を行い、光触媒性膜の焼結体を得る。
【0042】
撥水性塗膜成膜工程: 光触媒性膜焼結体を得た後、当該光触媒性焼結体の表面に、撥水性塗膜を設ける。ここで、撥水性塗膜は、光触媒性膜焼結体の表面を疎水性に改質するため設けられる膜である。撥水性塗膜は、疎水性を有する膜成分により構成される薄膜であれば、特に限定されるものでない。特に、パターン形成精度が向上するという観点において、オクタデシルトリメトキシシラン(ODS)、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)、オクタデシルホスホン酸(ODP)等の自己組織化単分子膜を設けることが好ましい。
【0043】
露光工程: 次に、撥水性塗膜上から、所定の露光パターンを有するフォトマスク等を介して選択的に紫外光等を露光する。この際、波長180〜400nm程度の紫外線を、1〜50mW/cm
2程度の照射強度で撥水性塗膜の表面に照射することが好ましい。光源として、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ブラックライト、殺菌ランプ、DUVランプ、エキシマランプ等を用いることができる。露光工程を行うことにより、露光された領域のみ光触媒を活性化させて自己組織化単分子膜を分解することができる。一方、露光パターンに応じて光触媒性膜が露出し、露光されなかった領域の表面は撥水性塗膜により被覆される。
【0044】
その後の触媒付与工程は、第一の触媒付与工程と同様に行うことができる。触媒付与工程において、基材10を触媒溶液に浸漬すると、光触媒性膜が露出している領域にのみ触媒を選択的に付与することができる。なお、光触媒性膜を成膜した後、触媒を付与するまでのいずれかの段階において、必要に応じて第一の触媒付与工程と同様の表面改質処理を施すことができる。
【0045】
iii)第三の触媒付与工程
上記第一及び第二の触媒付与工程と更に一部態様の異なる第三の触媒付与工程として、例えば、次の方法により基材10の表面に触媒を選択的に付与してもよい。第三の触媒付与工程では、上記金属酸化物膜を成膜する際に、上記光触媒性膜に疎水性を有する疎水性物質を含有する撥水性光触媒性膜を成膜する。具体的には、上記光触媒性膜をゾルゲル法により成膜する際に、上記光触媒性物質を含有するゾル液に、上記自己組織化単分子膜を形成可能なODS、OTS、ODP等を混合した感光性ゾル液を用いて、撥水性光触媒性膜を成膜することができる。この撥水性光触媒性膜を焼成して、撥水性光触媒性膜焼結体を得た後、第二の触媒付与工程と同様に所定の露光パターンを有するフォトマスク等を介して選択的に紫外光等を露光することにより、露光された領域のみ光触媒を活性化させて自己組織化単分子を分解させることができる。一方、露光されなかった領域の表面は撥水性を維持することから、触媒付与工程では、露光領域のみ触媒を選択的に付与することができる。なお、基材10の表面に上記光触媒性膜を成膜した後、この撥水性光触媒性膜を積層してもよい。焼成工程及び触媒付与工程等は、第一の触媒付与工程及び第二の触媒付与工程と同様に行うことができる。また、必要に応じて、適宜表面改質処理を行うことができる。当該第三の触媒付与工程によれば、光触媒ゾル液を用いることによって、光触媒性膜を設けた後に、別途撥水性塗膜を形成する工程を省略できる。
【0046】
iv)第四の触媒付与工程
基材10の表面に選択的に触媒を付与する際に、次の第四の触媒付与工程を採用してもよい。第四の触媒付与工程では、例えば、無電解めっき反応の触媒とならない第1金属の有機化合物と、無電解めっき反応の触媒となる第2金属の化合物と、第1金属と錯体を形成する感光性感光性化合物を含む感光性触媒溶液を調製し、この触媒溶液を基材10の表面に塗布し、塗布膜を成膜する。この塗布膜に所定の露光パターンを有するフォトマスク等を介して選択的に紫外光を照射し、アルカリ性溶液等により現像すると紫外光が照射された領域が溶解して、所定のパターン形状の塗布膜が得られる。次に、熱処理を施して当該感光性化合物を分解して金属酸化物とし、この塗布膜を感光性触媒前駆体膜とする。そして、第2の金属のイオンを金属に還元し、当該感光性触媒前駆体膜を所定のパターン形状の触媒膜とする。
【0047】
感光性触媒溶液調製工程: まず、感光性触媒溶液を調製するための溶液調製工程について説明する。触媒溶液は、無電解めっき反応の触媒とならない第1金属M1の有機化合物と、無電解めっき反応の触媒となる第2金属M2の化合物と、第1金属M1と金属錯体を形成する感光性化合物とを含む溶液である。
【0048】
第1金属M1としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La−Lu、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Zn、Al、Si、Ni、In又は、Snを用いる。第2金属M2としては、Ru、Co、Rh、Ni、Pt、Cu、Ag、Fe、Pd又はAuを用いる。
【0049】
この第1金属M1としてチタン(Ti)を選択した場合に、その有機化合物としては、チタンテトライソピロポキシドに代表されるチタンアルコキシドを用いることが好ましい。チタンアルコキシドとして、具体的には、チタンテトライソプロポキシド、テトラブトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、これらの2量体、3量体、4量体等の縮合物からなるアルコキシド、チタニルビスアセチルアセトネート、ジブトキシチタニウムアセチルアセトネート、イソプロポキシチタニウムトリエタノールアミナート等のキレート、チタニウムステアレート、チタニウムオクチレート等の有機酸塩等が挙げられる。
【0050】
また、第2金属M2として、金(Au)を選択した場合、その化合物としては、塩化金酸ナトリウムに代表されるAu無機塩を用いることが好ましい。Au無機塩として、具体的には、塩化金酸、臭化金、テトラクロロ金、亜硫酸金、水酸化金、水酸化金酸ナトリウム(Au(OH)4Na)、酢酸金又は、これらのナトリウム塩もしくはカリウム塩等が挙げられる。
【0051】
第2金属M2として、銀(Ag)を選択した場合、その化合物としては、硝酸銀に代表されるAg無機塩を用いることが好ましい。Ag無機塩として、具体的には、塩化銀酸、臭化銀、酢酸銀、硫酸銀、又は、炭酸銀等が挙げられる。
【0052】
第2金属M2として、銅(Cu)を選択した場合、Cuイオンの溶解性改善のため、2−メトキシエトキシ酢酸に代表される金属イオン可溶有機溶剤を含むことが好ましい。
【0053】
第1金属M1と金属錯体を形成する感光性化合物として、例えば、4−(4,5−Dimethoxy−2−nitrobenzyloxycarbonyl)catechol(NVOC−CAT)、ナフトキノンジアジド化合物(NQD)、β−ジケトン、α−ヒドロキシケトン、1−Hydoroxycyclohexyl Phenyl Ketone(HPK)等の特開2011−20769号公報に開示される感光性化合物の他、第1金属M1と金属錯体を形成する公知の感光性化合物を用いることができる。
【0054】
第1金属M1の有機化合物と、第2金属の化合物と、この感光性化合物とを含む感光性触媒溶液(感光性金属錯体溶液)を調製することにより、例えば、NBOC−TiCu等の感光性金属錯体を得ることができる。
【0055】
塗布膜成膜工程: 上記感光性触媒溶液を調製した後、基材10の表面にスピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法等のコート法により塗布膜を成膜する。
【0056】
露光現像工程: 当該工程では、第二及び第三の触媒付与工程と同様に、所定の露光パターンを有するフォトマスク等を介して塗布膜上から選択的に紫外光を照射する。紫外線が照射された領域では、金属錯体はアルカリ性現像液に対し易溶となり、露光されなかった領域はアルカリ性現像液に対し不溶のままである。よって、露光後、アルカリ性現像液を用いて現像を行うことにより、露光した部分のみが除去され、パターンが形成される。なお、現像液は、半導体・液晶リソグラフィー用の現像液等を用いることができる。
【0057】
熱処理工程: 所定のパターン形状となった塗布膜を第一〜第三の触媒付与工程と同様に焼成する等の方法で熱処理を施すと、感光性金属錯体を金属酸化物に変化させることができる。これにより、金属酸化物薄膜パターンから成る触媒前駆体膜を得ることができる。触媒前駆体膜では、第1金属酸化物からなる無機バインダ中に第2金属M2イオンが分散した構造となる。
【0058】
還元工程: そして、触媒前駆体膜をテトラヒドロホウ酸、次亜リン酸、ヒドラジン、水素化ホウ素、ジメチルアミンボランなどの還元剤を含有する水溶液等に基材10と共に浸漬すると、第2金属M2イオンが還元されて、第2金属Mとなる。当該工程を経ることにより、無電解めっき反応の触媒機能を有する第2金属の微粒子が膜中に分散した触媒膜を得ることができる。
【0059】
(b)無電解めっき工程
基材10の表面に上記の触媒付与工程等により選択的に触媒を付与した後、必要に応じて、活性化処理等を行い、その後、基材10を無電解めっき液に浸漬し、無電解めっき液に含まれる金属イオンを析出させ、所定の金属パターン21を得ることができる。この無電解めっきにより析出される金属として、例えば、ニッケル(Ni)、リン(P)、ホウ素(B)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、及びこれらの合金が挙げられる。
【0060】
無電解めっき工程は、公知の方法等を用いて適宜行うことができ、特に限定されるものではない。上記活性化処理は任意の工程であり、活性化処理液としては、塩酸、硫酸、ヒドラジン、塩化スズ、ホルマリン、次亜リン酸、水酸化ホウ素化合物、アミンボラン化合物等を含有するものなどを用いることができる。また、無電解めっき液は、析出させる金属に応じて、適宜、公知の無電解めっき液を用いることができる。
【0061】
以上の工程により、パターン形成用の基材10の表面に無電解めっき法により金属パターン21が形成される。
【0062】
1−2.樹脂層形成工程
樹脂層形成工程では、上記金属パターン21が形成された基材10上に、まず、液状の樹脂組成物を用いて樹脂組成物膜を形成する。
【0063】
樹脂組成物は、液状であり固化又は硬化させることにより目的とする樹脂材(22)を得ることができるものであれば特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物のいずれであってもよい。本件発明では、特に、シクロオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン及び及びこれらの前駆体のうち、少なくともいずれか一を含むことが好ましく、当該液状の樹脂組成物を用いることにより、シクロオレフィン樹脂材、ポリイミド樹脂材、エポキシ樹脂材、アクリル樹脂材、イソシアネート樹脂材、ウレタン樹脂材、液晶ポリマー、メラミン樹脂材、ポリエステル樹脂材、ポリエステル樹脂材、シリコン樹脂材、ポリエチレン材、ポリプロピレン材及びポリスチレン材の少なくともいずれか一が得られることが好ましい。これらの液状の樹脂組成物を用いて、基材10上に塗布することにより、基材10及び金属パターン21の表面を被覆するように樹脂組成物膜を形成することができる。
【0064】
次に、樹脂組成物膜中の溶剤を蒸発させ、或いは、熱硬化又は光硬化させることにより、樹脂組成物膜を固化又は硬化させて樹脂層22を得る。これにより、
図1(c)に示すように、固化又は硬化された樹脂層22内に金属パターン21が埋設された状態となる。なお、溶剤を蒸発させる際には、常温で溶剤を蒸発させてもよいが、樹脂の種類に応じて50℃〜150℃の温度範囲で熱処理を施してもよい。
【0065】
1−3.剥離工程
樹脂層22を得た後、樹脂層22と基材10とを剥離する。ここで、
図1(c)に示すように、金属パターン21と基材10との密着面積と、金属パターン21と樹脂層22との密着面積を比較すると、金属パターン21と樹脂層22とは金属パターン21の両側面においても密着するため、後者の方が大きく、密着力が大きくなる。このため、樹脂層22と基材10とを物理的に剥離すると、金属パターン21が基材10から樹脂層22側に転写され、金属パターン付樹脂材20を得ることができる。
【0066】
以上の工程により、金属パターン21を基材10の表面に形成する際に、触媒付与工程において焼成処理や粗化処理等の熱処理や表面改質処理を施す場合でも、金属パターン21を形成した後に樹脂層22を形成するため、熱可塑性の樹脂材を製造する場合であっても樹脂材に要求される寸法精度を満足することができ、樹脂層22との密着性の良好な微細な金属パターン21を形成することができる。
【0067】
2.両面金属パターン付樹脂材の製造方法
次に、本件発明に係る金属パターン付樹脂材の製造方法のうち、樹脂材の両面に金属パターンを備える両面金属パターン付樹脂材の製造方法を
図2を参照しながら説明する。当該製造方法は、パターン形成用の第一の基材31の表面に、無電解めっき法により第一の金属パターン41を形成すると共に、パターン形成用の第二の基材32の表面に、無電解めっき法により第二の金属パターン42を形成する工程(
図2(a)、(b)参照)と、第一の金属パターン41及び第二の金属パターン42を内側にして、第一の基材31と第二の基材32とを所定の間隔を空けて対向配置し、両基材31、32の間に液状の樹脂組成物を充填して、これを固化又は硬化させて、第一の金属パターン41及び第二の金属パターン42と密着した樹脂層43を得る工程(
図2(c)参照)と、当該樹脂層43と第一の基材31及び第二の基材32とを剥離して、第一の金属パターン41及び第二の金属パターン42を樹脂層43両側に備える樹脂材50を得る工程(
図2(d)参照)とを含むことを特徴とする。以下、各工程毎に説明する。
【0068】
2−1.パターン形成工程
パターン形成工程では、
図2(a)に示すように、パターン形成用の第一の基材31と、パターン形成用の第二の基材32とを用意し、各基材31、32に対してそれぞれ金属パターン(第一の金属パターン41及び第二の金属パターン42)を形成する(
図2(b)参照)。各基材31、32に対して金属パターン41、42を形成する際には、上記片面金属パターン付樹脂材20において基材10に金属パターン21を形成する際に適用したパターン形成工程と同様の工程により行うことができるため、ここでは説明を省略する。
【0069】
2−2.樹脂層形成工程
樹脂層形成工程では、第一の金属パターン41及び第二の金属パターン42を内側にして、第一の基材31と第二の基材32とを所定の間隔を空けて対向配置し、両基材31、32の間に液状の樹脂組成物を充填して樹脂組成物膜を形成する。樹脂組成物は上記片面金属パターン付樹脂材20において、基材10上に樹脂組成物膜を形成する際に用いた液状の樹脂組成物と同様のものを用いることができる。そして、片面金属パターン付樹脂材の製造方法と同様に、樹脂組成物膜中の溶剤を蒸発させ、或いは、熱硬化又は光硬化させることにより、第一の金属パターン41及び第二の金属パターン42が埋設された状態で固化又は硬化した樹脂層43が得られる(
図2(c)参照)。
【0070】
2−4.剥離工程
剥離工程では、上記樹脂層43と第一の基材31及び第二の基材32とを物理的に剥離する。各金属パターン41、42と各基材31、32との密着面積と、各金属パターン41、42と樹脂層43との密着面積を比較すると、上記と同様に、いずれの金属パターン41、42も樹脂層43との密着面積の方が大きく、密着力が大きくなる。このため、樹脂層43と各基材31、32とをそれぞれ物理的に剥離すると、樹脂層43の両側に第一の金属パターン41及び第二の金属パターン42が転写され、これらの金属パターン41、42が樹脂層43に埋設された両面金属パターン付樹脂材40を得ることができる(
図3(d)参照)。
【0071】
〈金属パターン付樹脂材〉
本件発明に係る金属パターン付樹脂材は、上記本件発明に係る金属パターン付樹脂材の製造方法によって製造されたことを特徴とする片面金属パターン付樹脂材20(
図1(d)参照)又は両面金属パターン付樹脂材40(
図2(d)参照)である。
【0072】
本件発明に係る金属パターン付樹脂材20(40)は、上述したとおり金属パターン21(41、42)が樹脂層22(43)内に埋設されたものとなる。このため、本件発明に係る金属パターン付樹脂材20(40)を、例えば、フレキシブルプリント配線板等に適用した場合、配線パターンとなる金属パターン21(41、42)が樹脂層22(43)の表面から外側に突出しないため、当該配線パターン部分を保護することができ、マイグレーションやショート等のリスクを減少することができる。
【0073】
本件発明において、樹脂材20(40)を構成する樹脂材料は特に限定されるものではなく、液状の樹脂組成物を固化又は硬化させることにより得ることのできる樹脂材であればよ。例えば、上記列挙した各種樹脂材に適用することが好ましく、特に、シクロオレフィン樹脂材等の熱可塑性樹脂材に好適である。また、本件発明において、樹脂材の形状は特に限定されるものではなく、基材10(31、32)の形状等を変化させることにより、フィルム状、板状の樹脂材だけではなく、いわゆるキャスティング法により成形可能な各種形状の樹脂材を得ることができる。
【0074】
従来の無電解めっき方法により、熱可塑性樹脂材の表面に金属パターンを形成する際に、上述した触媒付与工程(第一の触媒付与工程〜第四の触媒付与工程)等を採用すれば密着性の良好な金属パターンを形成することができる。しかしながら、この従来の無電解めっき方法により、樹脂材の表面に直接金属パターンを形成すると、上述した触媒付与工程等における熱処理の際に熱可塑性樹脂の場合は収縮する恐れがあり、要求される寸法精度を満足することができない場合がある。また、樹脂材の表面を粗化施したり、紫外線を照射するなどして表面改質処理を施すと、樹脂材の表面粗度が大きくなり、透明樹脂フィルム等の場合には要求される透光性を満足することができない場合が生じる。
【0075】
これに対して、本件発明に係る方法で製造された金属パターン付樹脂材20(40)は、金属パターン21(41、42)が樹脂層22(43)に密着されていると共に、金属パターン21(41、42)の形成工程において樹脂層22(43)には何ら熱処理や表面改質処理等が施されることはなく、また、無電解めっき液等の各種薬剤に晒されることもない。従って、当該金属パターン付樹脂材20(40)が、シクロオレフィン樹脂材等の熱可塑性透明樹脂材であっても、要求される寸法精度や透明性を満足することができる。このため、本件発明は、タッチパネル用透明導電フィルム基材、有機EL照明基材、フレキシブルプリント基材、絶縁膜等の用途に用いられる熱可塑性透明樹脂材に好適である。
【0076】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。
【実施例1】
【0077】
実施例1では、次のようにして金属パターン付樹脂材を製造した。
【0078】
(1)パターン形成工程
まず、パターン形成用の基材の表面に無電解めっき法により金属パターンを形成した。 実施例1では、パターン形成用の基材として、50mm×50mmの厚み0.7mmのショット アクチエンゲゼルシャフト社製(SCHOTT AG社製)の板ホウケイ酸ガラス(テンパックス フロート(登録商標))を用いた。
【0079】
そして、上記基材の表面に触媒を選択的に付与し、この触媒が選択的に付与された基材を無電解銅めっき液に浸漬し、無電解銅めっき液中の銅イオンを析出させることにより、基材の表面に銅の配線パターンを形成した。
【0080】
(a)触媒付与工程
実施例1では、上記実施の形態で説明した第四の触媒付与工程に従い、以下のように感光性触媒溶液調製工程、塗布膜成膜工程、露光現像工程、熱処理工程、還元工程を行い、所定のパターン形状の触媒膜を基材の表面に設けた。
【0081】
感光性触媒溶液調製工程: 感光性触媒溶液調製工程では、上記第1金属M1としてのチタンと、上記第2金属M2としての銅と、感光性化合物としてのNBOC−CATを含む感光性触媒溶液(NBOC−TiCu)を調製した。
まず、3,4−ジヒドロキシ安息香酸を2−ニトロベンジルアルコール誘導体でエステル化して、NBOC−CATを合成した。そして、このNBOC−CAT(2.46g)を乳酸エチル(12ml)とN,N‘−ジメチルアセトアミド(2ml)に溶解させて、テトライソプロポキシドチタン(1.04ml)を添加して「溶液A」を調製した。一方、2−メトキシエトキシ酢酸(0.171ml)と無水酢酸銅(0.272g)とをN,N‘−ジメチルアセトアミド(2ml)に100℃で溶解させて「溶液B」を調製した。そして、「溶液A」と「溶液B」とを混合し、100℃で1時間加熱し、感光性金属錯体溶液(NBOC−TiCu)を得た。なお、感光性金属錯体(NBOC−TiCu)は、短波長光を受光すると、アルカリ現像液に対する溶解性が大きく増加するいわゆるポジ型の感光性を有する金属錯体である。
【0082】
塗布膜成膜工程: 上記基材の表面に、感光性金属錯体溶液0.35mlを1000回転でスピンコートして塗布した。そして、ホットプレートの上に当該塗布膜が設けられた基材を載置し、100℃で1時間乾燥した。
【0083】
露光現像工程: 次に、所定の露光パターンを有するフォトマスクを上記塗布膜の上に設置し、フォトマスクを介して塗布膜にウシオスペックス社製の超高圧水銀灯(ModuleX(登録商標))にウシオ電機株式会社製の平行光光源(UXM−500SX 500Wランプ)により、313nmの紫外光を2500mJ/cm
2となるように露光した。その後、0.25wt%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)系現像液に30秒間浸し、現像した。これにより、露光した領域が溶解し、所定のパターン形状の塗布膜が得られる。
【0084】
熱処理工程: 次に、所定のパターン形状となった塗布膜を備える基材を電気炉に入れて、300℃で1時間焼成した。当該熱処理工程を行うことにより、感光性金属錯体が金属酸化物に変化し、上記触媒前駆体膜を得ることができる。
【0085】
還元工程: そして、還元液として、NaBH
4水溶液2g/lに50℃で2分浸漬した。当該工程により、触媒前駆体膜中のCuOが触媒活性を有するCuに還元されて、触媒膜が得られる。
【0086】
(b)無電解めっき工程
上記工程により触媒が選択的に付与された基材を無電解銅めっき良く(JCU社製PB−506)に浸漬して、約0.2μmの厚みで銅を析出させた。当該工程により、
図3に示す銅めっきパターン(線幅5μm、間隔100μmの格子状パターン、シート抵抗2Ω/sq)が得られた。
【0087】
(2)樹脂組成物膜形成工程
銅めっきパターンが形成された基板上に、液状のシクロオレフィン樹脂組成物を3mlを垂らして、ピペッターのチップで広げ樹脂組成物膜を形成した。
【0088】
(3)樹脂層形成工程
そして、80℃の温度雰囲気下で溶剤を蒸発させて、樹脂組成物膜を固化し、シクロオレフィン樹脂層を得た。
【0089】
そして、シクロオレフィン樹脂層を基材から物理的に剥離し、
図4に示す銅めっきパターンが埋設されたシクロオレフィン樹脂フィルム(金属パターン付樹脂材)を得た。
【実施例2】
【0090】
実施例2では、樹脂組成物膜を形成する際に、液状シクロオレフィン樹脂組成物を用いる代わりに、市販の液状ポリイミド樹脂組成物(商品名:aldrich575771(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社))3mlを用い、100℃で溶剤を揮発させると共に、200℃で樹脂組成物膜を硬化させた以外は、実施例1と同様にして銅めっきパターン付ポリイミド樹脂フィルム(金属パターン付樹脂材)を得た(
図5参照)。なお、ポリイミド系フィルムに埋設された銅めっきパターンは実施例1と同様に線幅5μm、間隔100μmの格子状パターンであり、シート抵抗は2Ω/sqである。
【実施例3】
【0091】
実施例3では、銅めっきパターンとして(ライン/スペース(L/S)幅がそれぞれ100μmのL字パターン(
図6参照)と線幅200μmの十字パターン(
図7参照)を形成した以外は実施例1と同様にして基材上に無電解銅めっきパターンを形成した。そして、樹脂組成物膜を形成する際に、液状シクロオレフィン樹脂組成物を用いる代わりに、信越化学工業株式会社製の液状ジメチルポリシロキサン組成物(PDMS(商品名:SIM−240/CAT−240))を3mlを用い、100℃で溶剤を揮発させて、樹脂組成物膜を硬化させた。他の工程は、全て実施例1と同様に行い、銅めっきパターン付PDMSフィルム(金属パターン付樹脂材)を得た。
【0092】
実施例1〜実施例3で製造した銅めっきパターン付樹脂フィルムは、いずれも透明性が高く表面が平滑であり、銅めっきパターンがフィルム内に埋設されていると共に、銅めっきパターンのフィルムに対する密着性も優れていた。また、線幅の細い微細な銅めっきパターンを矩形断面で得ることができ、高精細な配線パターンを簡易な方法で形成することが可能であった。