(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-59750(P2015-59750A)
(43)【公開日】2015年3月30日
(54)【発明の名称】膜厚測定方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/06 20060101AFI20150303BHJP
【FI】
G01B11/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-191766(P2013-191766)
(22)【出願日】2013年9月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】延澤 雅之
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065CC02
2F065FF41
2F065FF51
2F065GG24
2F065JJ09
2F065LL02
2F065LL67
2F065LL68
2F065QQ16
2F065QQ17
2F065QQ29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複屈折性を有するフィルム等の膜厚を精度良く測定可能な膜厚測定方法および装置を提供する。
【解決手段】被測定物に連続光を照射して、その反射光または透過光の分光スペクトルを得るステップと、前記分光スペクトルからフーリエ変換によってパワースペクトルを得るステップと、前記パワースペクトルに現れる分裂ピークに対して、最も短波長側のピークについての第1の特性点Sと最も長波長側のピークについての第2の特性点Lとの中点Mに基づいて前記被測定物の膜厚を求めるステップとを有する膜厚測定方法である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に連続光を照射して、その反射光または透過光の分光スペクトルを得るステップと、
前記分光スペクトルからフーリエ変換によってパワースペクトルを得るステップと、
前記パワースペクトルに現れる分裂ピークに対して、最も短波長側のピークについての第1の特性点と最も長波長側のピークについての第2の特性点との中点に基づいて前記被測定物の膜厚を求めるステップと、
を有する膜厚測定方法。
【請求項2】
前記第1の特性点は前記パワースペクトル曲線と閾値を示す直線との交点のうち最も短波長側の交点であり、前記第2の特性点は前記パワースペクトル曲線と閾値を示す直線との交点のうち最も長波長側の交点である、
請求項1に記載の膜厚測定方法。
【請求項3】
前記第1の特性点は前記最も短波長側のピークの頂点であり、前記第2の特性点は前記最も長波長側のピークの頂点である、
請求項1に記載の膜厚測定方法。
【請求項4】
前記第1の特性点は前記最も短波長側のピークを波形分離した図形の頂点であり、前記第2の特性点は前記最も長波長側のピークを波形分離した図形の頂点である、
請求項1に記載の膜厚測定方法。
【請求項5】
連続光を発生する光源と、
前記光源からの光を被測定物に照射する照射部と、
前記照射部から照射された光に対する被測定物からの反射光または透過光を受光する受光部と、
前記受光部で受光した光を分光して、強度に応じた電気信号を発生する分光部と、
前記分光部からの電気信号を受信して分光スペクトルを作成し、該分光スペクトルからフーリエ変換によってパワースペクトルを作成し、該パワースペクトルに現れる分裂ピークに対して、最も短波長側のピークについての第1の特性点と最も長波長側のピークについての第2の特性点との中点に基づいて前記被測定物の膜厚を算出する演算部と、
を有する膜厚測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の干渉を利用して、シート状の高分子フィルム、基材上にコートされた薄膜などの厚さを測定する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子フィルムや基材上にコートされた薄膜など、各種フィルム等の膜厚を測定する方法として、光の干渉を利用する方法が知られている。この方法は、連続する波長の光を含む白色光などをフィルムに照射し、その反射光または透過光の分光スペクトルから、干渉による極大値または極小値を示す波長に基づいて膜厚を算出するものである。例えば、特許文献1には、かかる光の干渉を利用した膜厚測定方法および装置が記載されている。
【0003】
前記分光スペクトルから膜厚を算出するには種々の方法があり、なかでも波数(波長の逆数)を横軸とする分光スペクトルを高速フーリエ変換(FFT)してパワースペクトルを求め、パワースペクトル上のピークを与える波長に基づいて膜厚を算出する方法が多く用いられている。例えば、フィルムからの反射光に基づくパワースペクトル上のピークは、フィルムの表面および裏面からの反射光の光路差に対応し、すなわちフィルムの光学的膜厚に対応するので、これと予め設定したフィルムの平均屈折率とから、フィルムの物理的膜厚を求めることができる。
【0004】
ここで、通常は1つのフィルムに対して1本のピークがパワースペクトル上に現れるが、フィルムが複屈折性を有する場合には、照射される光の偏光方向に応じてピークが分裂する。このとき一方のピークのみに基づいてフィルム膜厚を算出すると、算出された膜厚は誤差を含むことになる。この問題に対する1つの解決方法として、特許文献2には、分裂したピークの重心位置を求め、その重心位置に基づいて被測定対象の厚みを求めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−240515号公報
【特許文献2】特開2009−198361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
理想的な状況では、複屈折によって分裂したピークはほぼ同じ高さと広がりを持つので、それらの重心に基づいて膜厚を求めることにより、膜厚測定の誤差を小さくすることができる。
【0007】
しかしながら、実際の測定においては、分裂したピークはその高さや広がりが異なり、非対称であることが少なくない。その原因は、フィルムの結晶質部分と非晶質部分の構造状態、結晶の向き、光源の偏光方向の偏り、測定対象の振動、FFT処理に起因する波形の乱れ、およびそれらの相乗効果などが原因である。しかし、実際の膜厚は、これら構造状態等によって変化することはなく、分裂したピーク位置から算出される膜厚値のおよそ中間値になると考えられる。したがって、分裂したピークの高さが大きく異なる場合には、重心が高い方のピークに引き寄せられるため、重心に基づいて膜厚を算出しても複屈折の影響による誤差を十分に排除できない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題に対して、パワースペクトル上で分裂したピークが現れる場合に、本発明では、両端のピークについて特性点を定め、それらの中点に基づいてフィルム膜厚を算出する。
【0009】
本発明の膜厚測定方法は、被測定物に連続光を照射してその反射光または透過光の分光スペクトルを得るステップと、前記分光スペクトルからフーリエ変換によってパワースペクトルを得るステップと、前記パワースペクトルに現れる分裂ピークに対して、最も短波長側のピークについての第1の特性点と最も長波長側のピークについての第2の特性点との中点に基づいて前記被測定物の膜厚を求めるステップとを有する。
【0010】
ここで被測定物としては、いわゆるフィルムやシート等の薄膜が挙げられる。フィルムとは、高分子フィルムそのものや基材に貼着されたフィルム等が例示される。さらに、基材上に浸漬、塗布または噴霧等によりコーティングされた薄膜も被測定物に含まれる。これらフィルム、シートまたはコーティングからなる薄膜の厚みは、通常0.1μm〜1000μm程度であり、本膜厚測定方法は、上記薄膜の厚みが2μm〜200μm程度の場合に特に適した方法である。また、連続光とは、連続する波長の光を含む光、すなわち連続スペクトルを示す光をいう。
【0011】
上記膜厚測定方法において、前記第1の特性点は前記パワースペクトル曲線と閾値を示す直線との交点のうち最も短波長側の交点とし、前記第2の特性点は前記パワースペクトル曲線と閾値を示す直線との交点のうち最も長波長側の交点とすることができる。
【0012】
また、上記膜厚測定方法において、前記第1の特性点は前記最も短波長側のピークの頂点とし、前記第2の特性点は前記最も長波長側のピークの頂点とすることができる。
【0013】
また、上記膜厚測定方法において、前記第1の特性点は前記最も短波長側のピークを波形分離した図形の頂点とし、前記第2の特性点は前記最も長波長側のピークを波形分離した図形の頂点とすることができる。
【0014】
本発明の膜厚測定装置は、連続光を発生する光源と、前記光源からの光を被測定物に照射する照射部と、前記照射部から照射された光に対する被測定物からの反射光または透過光を受光する受光部と、前記受光部で受光した光を分光して強度に応じた電気信号を発生する分光部と、演算部とを有する。この演算部は、前記分光部からの電気信号を受信して分光スペクトルを作成し、該分光スペクトルからフーリエ変換によってパワースペクトルを作成し、該パワースペクトルに現れる分裂ピークに対して、最も短波長側のピークについての第1の特性点と最も長波長側のピークについての第2の特性点との中点に基づいて前記フィルムの膜厚を算出するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の膜厚測定方法または装置によれば、光の干渉を利用して、パワースペクトル上のピークが分裂した場合にも、膜厚を精度良く測定することができる。さらに、パワースペクトル上で分裂したピークの高さが大きく異なる場合にも、膜厚を精度良く測定することができる。特に、本発明の膜厚測定方法は、被測定物の測定時において、1本のピークと分裂ピークとが混在するような薄膜に対して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態の膜厚測定装置の構成図である。
【
図3】FFTによって得られるパワースペクトルの例である。
【
図4】第1の実施形態の膜厚算出方法を説明する図である。
【
図5】第2の実施形態の膜厚算出方法を説明する図である。
【
図6】第3の実施形態の膜厚算出方法を説明する図である。
【
図7】分裂したピークの重心に基づく膜厚算出方法を説明する図である。
【
図8】ポリイミドフィルムの膜厚を測定した実験結果である。
【
図9】ポリイミドフィルムの膜厚を測定した実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1の実施形態を
図1〜4に基づいて説明する。本実施形態の膜厚測定装置は、フィルムからの反射光を測定する反射式の装置である。本実施形態の膜厚測定方法は、分裂したピークの特性点として、パワースペクトル曲線と閾値を示す直線との交点のうち最も短波長側および最も長波長側の交点を採用する。
【0018】
図1に、本実施形態の膜厚測定装置の構成を示す。膜厚測定装置20は、光源21、照射用光ファイバー22、受光用光ファイバー23、分光部24および演算部25を有する。
【0019】
図1において、光源21には白色光などの連続光を放射するものが用いられる。光源としては、各種のランプ等を用いることができる。連続光の波長範囲は、測定対象であるフィルムの厚さなどに応じて決定することができる。照射部と受光部は、
図1ではそれぞれ照射用光ファイバー22と受光用光ファイバー23を用いるが、これに限られるものではなく、例えばレンズ系で構成されていてもよく、光ファイバーとレンズとが併用される構成でもよい。分光部24には、回折格子を用いたモノクロメーター、ポリクロメーターなど種々の構造のものを用いることができる。分光範囲は、フィルムの厚さなどに応じて決定することができる。
【0020】
次に、
図1の装置を用いた第1の実施形態の膜厚測定方法を説明する。
【0021】
図1において、照射用光ファイバー22から測定対象であるフィルム30に垂直に光が照射され、その反射光が受光用光ファイバー23を介して分光部24に導かれる。分光部24は光強度に応じた電気信号を発生し、演算部25に伝達する。
【0022】
演算部25では、横軸を波長(λ)とする分光スペクトルが生成される。
図2にその一例を示す。反射分光スペクトルにはフィルムの表面および裏面からの反射の干渉による振動がみられる。本実施形態では、光がフィルム30に垂直に入射するので、フィルム表面と裏面からの反射光の光学的光路差(Δ)は、Δ=2dnとなる。ここで、dはフィルムの膜厚、nはフィルムの屈折率である。本実施形態では、裏面で反射した光の位相が反転するため、Δ=(m+1/2)λ
mとなる波長λ
mでスペクトルは極大となる。ここで、mは干渉の次数で、自然数である。
【0023】
演算部25は、次いで、横軸を波長(λ)とする分光スペクトルから、横軸を波数(1/λ)とする分光スペクトルを生成する。横軸が波数の分光スペクトルでは、次式から明らかなように、極値の間隔は一定となる。2dn=1/(1/λ
m+1−1/λ
m)。
【0024】
演算部25は次いで、横軸が波数の分光スペクトルを高速フーリエ変換(FFT)することによって、パワースペクトルを生成する。元の分光スペクトルの振動の周期をP(=1/λ
m+1−1/λ
m)とすると、パワースペクトル上には、2dn=1/Pが成り立つ位置にピークが現れる。パワースペクトルは、横軸を2dn(=1/P)として表してもよいし、予め設定したフィルムの平均屈折率(n)を用いて換算し、横軸をdとして表してもよい。
【0025】
フィルムが完全に等方性であれば、
図3(a)に示すように、パワースペクトル上には1本のピークが現れる。フィルムが複屈折を有する場合は、
図3(b)に示すように、パワースペクトル上には分裂した2本のピークが現れる。この2つのピークは、一つのフィルムに対して、複屈折によってもたらされる異なる光学的膜厚に対応する位置に現れたものである。
【0026】
さらに、実際の測定では、
図3(c)に示すように、分裂したピークは、その高さや広がりが異なり、非対称に現れることがある。また、測定範囲に結晶質部分と非晶質部分の両方が存在すると、
図3(d)に示すように、非晶質部分に起因するピークを結晶質部分に起因する分裂したピークが挟み込んで、3本のピークが現れることもある。
【0027】
次に、
図4に基づいて分裂ピークの特性点を求める方法を説明する。本実施形態では、分裂ピークの特性点として、パワースペクトル曲線と閾値を示す直線の交点のうち、最も短波長側の交点(S)と、最も長波長側の交点(L)を採用する。そして、その中点(M)に基づいて膜厚を算出する。
【0028】
ここで、閾値は、パワースペクトル上のバックグラウンドノイズ等を排除するのに十分な大きさとする必要がある。閾値は、予め設定しておいてもよいし、例えば高さが低い方のピークの高さの30%などとして、測定データに応じて演算部で都度計算してもよい。
【0029】
図4のように、分裂ピークの特性点の中点を用いることによって、フィルムの有する複屈折性の影響を排して、膜厚を精度良く求めることができる。比較のために、
図7に分裂ピークの重心(G)に基づく方法を示す。重心に基づく方法では、重心が2つのピークの中間よりも高いピーク寄りにあるため、2つのピークの高さが大きく異なる場合には複屈折性の影響を幾分残すことになる。これに対して、本実施形態の方法(
図4)では、ピークの高さによらず、分裂したピークのほぼ中間値を用いて膜厚が算出されるため、複屈折性の影響をより小さくすることができる。
【0030】
また、本実施形態の方法は、パワースペクトル曲線と閾値を示す直線との交点を求める演算部の処理が軽く、処理時間が短くなるため、高分子フィルム製造工程で、フィルム等の薄膜を搬送しながらのモニタリングなど高速性が求められる用途にも適している。
【0031】
次に、第1の実施形態の装置および方法を用いて、ポリイミドフィルムの膜厚を測定したので、その実験結果を述べる。なお、複屈折性を有するフィルムやコーティング層としては、上記ポリイミドに限られず、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等も挙げられる。ただし、ポリイミド薄膜は、厚み測定時に1本のピークと分裂ピークとが混在する現象が生じるため、本発明をより有効に活用することができる。
【0032】
実験は、幅が約5cm、長さが約215cm、膜厚が約12.5μm、平均屈折率が2程度のリボン状の単層熱硬化性ポリイミドフィルムを長さ方向に搬送しながら、
図1に示した装置を用いて1cm毎にフィルム膜厚を測定した。測定結果は、接触式膜厚計を用いて別途測定した値と比較した。なお、光源には連続光を発する白色LEDを用い、分光スペクトルを取った波長範囲は540nm〜680nmであった。
【0033】
図8に示す測定位置において、リボンの端から24〜27cmおよび31cmの位置ではパワースペクトル上のピークは1本であったの対して、28〜30cmの範囲ではパワースペクトル上に分裂したピークが観測された。このように、ピーク形状は、1本から2本へ、2本から再び1本へと変化した。これは、本実験では測定範囲(フィルム上の光照射径)が約40μmであり、フィルム内に分布する結晶質・非晶質領域の個々の大きさが測定範囲よりも大きかったためであると考えられる。
【0034】
図9に、リボンの端から24〜31cmの部分での膜厚測定結果を示す。図中、「接触式」は接触式膜厚計による測定値である。「干渉式(比較例)」は
図1の干渉式膜厚計を用い、分裂ピークに対しては単純に高い方のピークに基づいて算出した膜厚である。「干渉式(実施例)」は同じく
図1の干渉式膜厚計を用い、分裂ピークに対しては本実施形態の方法によって、すなわちパワースペクトル曲線と閾値を示す直線との交点のうち最も短波長側および最も長波長側の交点の中点に基づいて算出した膜厚である。また、「差分(比較例)」と「差分(実施例)」は、それぞれ「干渉式(比較例)」と「干渉式(実施例)」から「接触式」の膜厚を引いた値である。
【0035】
図9において、ピークが1本の場合(位置24cmおよび31cm)は、接触式、干渉式(比較例)、干渉式(実施例)のいずれも、測定された膜厚値に大きな違いはなかった。一方、分裂ピークが現れた場合(位置28、29、30cm)は、干渉式(比較例)の測定値は接触式のそれと大きく異なり最大0.51μmの差が生じたのに対して、干渉式(実施例)の測定値と接触式のそれとの差は0.20μm以内であった。
【0036】
もちろん接触式膜厚計の測定結果も誤差を含むのであるが、接触式膜厚計は原理的に複屈折の影響を受けない。したがって、ピーク分裂の有無に関わらず、
図9の全域で干渉式(実施例)の測定値が接触式のそれとほぼ同じ値を示したことは、干渉式(実施例)の方法によって複屈折の影響が十分に排除できたことを示している。
【0037】
また、この実験ではピークの本数が1本、2本、1本と変化した。これに対して、本実施形態の方法によれば、ピーク本数が1〜3本と変化しても演算方法を変える必要はなく、同じ演算方法で対応することができるという利点もある。
【0038】
次に、本発明の第2の実施形態を
図5に基づいて説明する。本実施形態の膜厚測定装置は、
図1に示したものと同じである。本実施形態の膜厚測定方法は、分裂したピークの特性点として、ピークの頂点を採用する点で、第1の実施形態と異なる。
【0039】
本実施形態では、第1の実施形態と同様にパワースペクトルを作成し、
図5において、最も短波長側のピークの頂点(P1)と最も長波長側のピークの頂点(P2)の中点(M’)に基づいて膜厚を算出する。
【0040】
次に、本発明の第3の実施形態を
図6に基づいて説明する。本実施形態の膜厚測定装置は、
図1に示したものと同じである。本実施形態の膜厚測定方法は、分裂したピークの特性点として、ピークを波形分離した図形の頂点を採用する点で、第1および第2の実施形態と異なる。
【0041】
本実施形態では、第1および第2の実施形態と同様にパワースペクトルを作成する。次いで、
図6において、ピークをガウス関数にカーブフィッティングして波形分離する。次いで、最も短波長側のピークを波形分離した図形の頂点(P3)と、最も長波長側のピークを波形分離した図形の頂点(P4)の中点(M”)に基づいて膜厚を算出する。なお、波形分離については、ピークをローレンツ関数にカーブフィッティングして波形分離する方法等も用いることができる。
【0042】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態では、フィルムに垂直に光を照射して、その反射光を利用して膜厚を求めた。しかし、光の照射角度はフィルムに垂直でなくてもよい。また、受光部を照射部とフィルムの反対側に設けて、透過光を利用して膜厚を求めてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、高分子フィルムそのものからなる薄膜の厚さを測定したが、本発明は、基材上にコートされた薄膜の膜厚測定にも適用可能である。さらに、基材上にコートされた多層膜に対しても、それぞれの層に対するパワースペクトル上のピークが分解可能である限り、適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
20 膜厚測定装置
21 光源
22 照射用光ファイバー(照射部)
23 受光用光ファイバー(受光部)
24 分光部
25 演算部
30 高分子フィルム(測定対象)