【課題】検査対象の構造物に加熱用の赤外線を照射しその構造物の温度が変化するのを測定して構造物の内部欠陥を検査すると共に、打音検査部からの計測データを受信して解析する。
【解決手段】検査対象の構造物3に加熱用の赤外線を照射する赤外線照射部12、前記赤外線照射部の赤外線照射により構造物の温度が変化するのを測定する温度変化測定部13、前記赤外線照射部並びに温度変化測定部の駆動制御及び検査データの集積を行う駆動制御・集積部を搭載した検査装置本体1と、前記検査装置本体1を前記構造物に沿って移動可能とする自走機構部と、前記構造物の表面にて予め定めた箇所に取り付けられ、前記構造物表面に振動を加えその加振による構造物の振動を検出して計測データの集積を行い、内蔵の通信ユニットで前記計測データを前記検査装置本体1へ送信する打音検査部60と、を組み合わせたものである。
検査対象の構造物に加熱用の赤外線を照射する赤外線照射部、前記赤外線照射部の赤外線照射により構造物の温度が変化するのを測定する温度変化測定部、前記赤外線照射部並びに温度変化測定部の駆動制御及び検査データの集積を行う駆動制御・集積部を搭載した検査装置本体と、
前記検査装置本体を前記構造物に沿って移動可能とする自走機構部と、
前記構造物の表面にて予め定めた箇所に取り付けられ、前記構造物表面に振動を加えその加振による構造物の振動を検出して計測データの集積を行い、内蔵の通信ユニットで前記計測データを前記検査装置本体へ送信する打音検査部と、を組み合わせ、
前記自走機構部で検査対象の構造物に沿って移動しながら、検査装置本体で前記構造物に加熱用の赤外線を照射しその赤外線照射により構造物の温度が変化するのを測定して前記構造物の内部欠陥を検査すると共に、前記打音検査部からの計測データを受信して該計測データを解析することを特徴とする構造物の欠陥検査装置。
前記温度変化測定部は、構造物に対して測定レーザ光を照射すると共にその反射光を検出して前記構造物の反射率を測定するレーザ受発光器であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物の欠陥検査装置。
前記温度変化測定部は、構造物からの赤外線放射量を検出して前記構造物の温度変化を測定する赤外線検出器であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物の欠陥検査装置。
前記自走機構部は、構造物に沿って延びる路面上に設置されたガイドレールを利用して前記検査装置本体の支持部材を保持し、前記ガイドレールの案内により前記支持部材が路面上を自走可能に構成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の構造物の欠陥検査装置。
前記自走機構部は、断面半円弧状の内壁面を有する構造物の前記内壁面に沿うアーチ形に形成されると共に前記検査装置本体を保持する可動支持部材を有し、該可動支持部材の両端の台部材が路面上を自走可能に構成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の構造物の欠陥検査装置。
前記打音検査部は、前記構造物表面に振動を加える打撃部と、前記打撃部を振動させる駆動部と、前記打撃部の加振による構造物の振動を検出する振動検出器と、前記振動検出器で検出した計測データの集積を行うデータ集積部と、前記データ集積部で集積した計測データを前記検査装置本体へ送信する通信ユニットと、前記検査装置本体の赤外線照射部から照射される加熱用の赤外線を受光して起電力を発生し各要素に電力を供給する受光・電源部と、を含んで成ることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の構造物の欠陥検査装置。
前記自走機構部を前記構造物に沿って往復移動可能とし、前記検査装置本体の少なくとも赤外線照射部及び温度変化測定部は前記往復移動の両方向に対応させて一対設けたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の構造物の欠陥検査装置。
検査対象の構造物に加熱用の赤外線を照射する赤外線照射部、前記赤外線照射部の赤外線照射により構造物の温度が変化するのを測定する温度変化測定部、前記赤外線照射部並びに温度変化測定部の駆動制御及び検査データの集積を行う駆動制御・集積部、前記駆動制御・集積部で取得した検査データを外部へ送る外部通信ユニットを搭載した検査装置本体と、前記検査装置本体を前記構造物に沿って移動可能とする自走機構部と、前記構造物の表面にて予め定めた箇所に取り付けられ、前記構造物表面に振動を加えその加振による構造物の振動を検出して計測データの集積を行い、内蔵の通信ユニットで前記計測データを前記検査装置本体へ送信する打音検査部とを組み合わせ、前記自走機構部で検査対象の構造物に沿って移動しながら、検査装置本体で前記構造物に加熱用の赤外線を照射しその赤外線照射により構造物の温度が変化するのを測定して前記構造物の内部欠陥を検査すると共に、前記打音検査部からの計測データを受信して該計測データを解析する欠陥検査装置と、
前記欠陥検査装置から送られる検査データ及び計測データを受ける中継器と、
前記欠陥検査装置から送られる検査データ及び計測データを受信してデータ処理を行う管理センターと、
前記中継器と管理センターとの間に設けられ、前記検査データ及び計測データを送受信する双方向通信網と、
を備えて成る構造物の検査システム。
前記中継器により、前記欠陥検査装置から送られる検査データ及び計測データを処理して前記管理センターへ送信することを特徴とする請求項11に記載の構造物の検査システム。
前記欠陥検査装置は検査対象の複数の構造物毎に1個ずつ設置され、これら複数個の欠陥検査装置に対して前記双方向通信網を介して1個の管理センターが設置されることを特徴とする請求項11又は12に記載の構造物の検査システム。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1及び
図2は、第1の発明による構造物の欠陥検査装置の配置状態を示す概略図である。この欠陥検査装置は、検査対象の構造物(例えば、トンネル又は高架橋等の構造物)に赤外線を照射して前記構造物の内部欠陥を検査すると共に、打音検査部からの計測データを受信して解析するもので、検査装置本体1と、自走機構部2と、打音検査部60とを組み合わせて成る。なお、符号3は、本発明の欠陥検査装置が配置された検査対象の構造物としてのトンネルを示し、符号4は、前記トンネル3の外部から内部へ延びる道路を示している。
【0026】
前記自走機構部2は、検査装置本体1(
図2、
図3参照)を前記トンネル3に沿って移動可能とするもので、
図1に示すトンネル3に沿って延びる道路4の中央部に設置され中央分離帯となるガイドレール6を利用して、
図3に示すように、検査装置本体1の筐体5の支持部材7を保持している。
図3において、上端部に筐体5が取り付けられた支持部材7の下端部は道路4の路面に向けて延び、その下端には駆動車輪8が設けられている。前記ガイドレール6の下端部には膨らみ部が形成されており、この膨らみ部内に前記駆動車輪8が配置されて、電気モータ9により回転される。この駆動車輪8が回転することで、ガイドレール6の案内により前記支持部材7が路面上を一方向又は往復方向に自走可能とされている。すなわち、自走機構部2は、前記支持部材7と、電気モータ9と、駆動車輪8とを備えて、トンネル3に沿って往復移動可能に構成されている。なお、前記電気モータ9に対する電力の供給は、ガイドレール6の内部空間を利用して送電配線をし、地下鉄電車と同様に前記送電配線に受電器をスライド接触させて行えばよい。
【0027】
前記自走機構部2により、検査装置本体1がトンネル3に沿って移動可能に支持されている。この検査装置本体1は、構造物としてのトンネル3の内壁面に加熱用の赤外線を照射し、その赤外線照射によりトンネル3の内壁面の温度が変化するのを測定し、検査データの集積を行うもので、
図2に示すように、ガイドレール6に保持された支持部材7の上端部に筐体5が取り付けられている。この筐体5は、例えば円筒状に形成され、その内部に後述の赤外線照射部12、温度変化測定部13及び駆動制御・集積部14等を収容するものである。そして、前記筐体5は、支持部材7の上端部の2箇所で固定バンド10a,10bにより取り付けられる。
図2では、検査装置本体1は、
図3に示す自走機構部2により矢印A,B方向に往復移動可能とされている。
【0028】
図4は、前記検査装置本体1において筐体5を外して内部構成を示す拡大側面図である。この実施例では、基盤部材11の上面にてその長手方向の一半部に第1検査部1aが、他半部に第2検査部1bが一列状に設けられている。第1検査部1aと第2検査部1bとは、検査装置本体1が往復移動する際にそれぞれの進行方向に沿って構造物の内部欠陥を検査するように一対で設けられている。
図4においては、第1検査部1aは図の左方向(矢印A方向)へ移動する際に検査し、第2検査部1bは図の右方向(矢印B方向)へ移動する際に検査するようになっている。ここでは、代表的に第1検査部1aについて説明する。なお、第2検査部1bは、第1検査部1aと全く同じ構成のものとされる。また、検査装置本体1が矢印A方向又はB方向の一方に移動する際にのみ検査する場合は、第1検査部1a又は第2検査部1bの一方だけを備えていればよい。その場合は、検査のために矢印A方向又はB方向に移動した後の帰りは、何も動作しないで検査装置本体1を元の位置に帰還させることになる。
【0029】
図4において、第1検査部1aは、赤外線照射部12と、温度変化測定部13と、駆動制御・集積部14と、監視カメラ15とを含んでいる。ここで、駆動制御・集積部14は、第1検査部1aと第2検査部1bとに共通のものとして、両者の中間部位に設けられている。なお、前記赤外線照射部12より赤外線を照射することから、前記基盤部材11は、下方への赤外線の照射を遮るために赤外線を遮蔽する材料から成ることが望ましい。
【0030】
前記赤外線照射部12は、検査対象の構造物に加熱用の赤外線を照射するもので、例えば加熱レーザ光を発振する赤外線レーザを備えており、波長が1.5μm程度でビーム径が0.010m程度の加熱レーザ光を発振するようになっている。この加熱レーザ光の照射により、構造物の表面が加熱される。この赤外線照射部12は、
図5に示すように、水平方向の回転軸を有する第1ドラム16aの外周面に1個又は複数個の赤外線レーザチップ17を有しており、前記第1ドラム16aは、その回転軸に連結された電気モータ18により回転される。そして、前記第1ドラム16aの外方には、断面形がカマボコ形で第1ドラム16aを覆うように半円弧状に形成された集光レンズ19が、図示省略の支持金具で配設されている。この集光レンズ19により、前記照射された加熱レーザ光がビーム状に集光され、そのビームレーザ光が構造物の表面をスキャンする。なお、前記赤外線レーザチップ17は、受発光素子とレーザチップから成る。
【0031】
温度変化測定部13は、前記赤外線照射部12の赤外線照射により構造物の温度が変化するのを測定するもので、例えば構造物に対して測定レーザ光を照射すると共にその反射光を検出して前記構造物の反射率を測定するレーザ受発光器を備えており、波長が0.5μm程度でビーム径が0.001m程度の測定レーザ光を発振すると共に構造物からの反射光を検出するようになっている。この反射光の検出により構造物の反射率が測定され、物質の光反射率の温度依存性を利用して熱伝導率を測定することができる。このような検査原理は、「光加熱サーモリフレクタンス法」と呼ばれる。この温度変化測定部13は、
図5に示すように、水平方向の回転軸を有する第2ドラム16bの外周面に複数個のレーザ受発光チップ20を有しており、前記第2ドラム16bは、その回転軸に連結された電気モータ21により回転される。そして、前記第2ドラム16bの外方には、断面形がカマボコ形で第2ドラム16bを覆うように半円弧状に形成された集光レンズ(図示省略;前記赤外線照射部12の集光レンズ19と同じもの)が配設されている。この場合も、その集光レンズで前記照射された測定レーザ光がビーム状に集光され、そのビームレーザ光が構造物の表面をスキャンする。なお、前記レーザ受発光チップ20は、受発光素子とレーザチップから成る。
【0032】
なお、前記赤外線照射部12及び温度変化測定部13の配置は、赤外線照射部12により構造物に加熱用の赤外線を照射した後に、温度変化測定部13で前記赤外線照射により構造物の温度が変化するのを測定することから、赤外線照射部12が移動方向の前方側に位置する。
【0033】
また、前記赤外線照射部12及び温度変化測定部13は、水平方向の回転軸周りにそれぞれ独立に回転可能とされている。すなわち、赤外線照射部12の第1ドラム16aの回転軸に連結された電気モータ18、及び温度変化測定部13の第2ドラム16bの回転軸に連結された電気モータ21は、それぞれ独立に回転制御される。
【0034】
この場合、前記赤外線照射部12及び温度変化測定部13の回転は、
図6に示すようにして検出される。例えば、赤外線照射部12及び温度変化測定部13が取り付けられた基盤部材11の上面に高反射率部材22を設け、それぞれ赤外線レーザチップ17及びレーザ受発光チップ20から照射されたレーザ光の反射光を受光して、赤外線レーザチップ17及びレーザ受発光チップ20が回転しているかどうか、回転角度はどのくらいかを検出する。なお、これに限られず、第1ドラム16a又は第2ドラム16bの回転軸にエンコーダを設け、従来公知の方法で回転を検出してもよい。
【0035】
また、前記赤外線照射部12及び温度変化測定部13のトンネル3の内壁面に対する回転角は、
図7に示すようにして検出される。例えば、トンネル3の内壁面の特定位置又は一定間隔をおいた位置に高反射率部材23を設け、それぞれ赤外線レーザチップ17及びレーザ受発光チップ20から照射されたレーザ光の反射光を受光して、赤外線レーザチップ17及びレーザ受発光チップ20の回転角度はどのくらいかを検出する。このとき、前記高反射率部材23が取り付けられた特定位置を、赤外線レーザチップ17及びレーザ受発光チップ20の回転角度のゼロ点位置とすればよい。なお、前記高反射率部材23は、赤外線照射部12からの加熱用の赤外線の吸収による温度上昇はないものとする。
【0036】
なお、以上においては、前記温度変化測定部13は、構造物(トンネル3)に対して測定レーザ光を照射すると共にその反射光を検出して前記構造物の反射率を測定するレーザ受発光器、例えばレーザ受発光チップ20としたが、本発明はこれに限られず、構造物からの赤外線放射量を検出して前記構造物の温度変化を測定する赤外線検出器、例えばサーモグラフィ計測ができる赤外線カメラを用いてもよい。
【0037】
駆動制御・集積部14は、前記赤外線照射部12及び温度変化測定部13の駆動制御及び検査データの集積を行うもので、赤外線レーザチップ17及びレーザ受発光チップ20を駆動する電源回路、電気モータ18,21を駆動する電源回路、赤外線照射部12及び温度変化測定部13の動作により取得した検査データを集積するデータ集積転送回路等を含んでいる。
【0038】
監視カメラ15は、検査装置本体1の移動方向前方を監視するためのもので、例えば円筒状に形成された筐体5の前端部又は後端部にて移動方向前方にレンズを向けて取り付けられている。この監視カメラ15により、検査装置本体1の移動方向前方の状況や、障害物等の監視が行える。また、魚眼レンズによりトンネル壁も確認できるようになっている。
【0039】
そして、このような構成の検査装置本体1のガイドレール6に対する移動位置は、
図8に示すようにして検出される。例えば、ガイドレール6の特定位置又は一定間隔をおいた位置に高反射率部材24を設け、検査装置本体1の支持部材7の一部に前記高反射率部材24に向けて発光すると共にその反射光を受光する受発光部25を設け、前記高反射率部材24からの反射光を検出して、検査装置本体1がガイドレール6の長手方向においてどの位置にいるかを検出する。これにより、検査装置本体1が検査対象の構造物に沿って移動している位置を検出することができる。なお、前記高反射率部材24の替わりにその部位に貫通孔をあけて、その貫通孔を透過する光により受発光部25が位置を検出するようにしてもよい。
【0040】
図2において、前記構造物(トンネル3)の表面(内壁面)にて予め定めた箇所には、打音検査部60が取り付けられている。ここで、トンネル3の内壁面にて予め定めた箇所とは、上述の検査装置本体1を、
図1に示すようにトンネル3内のガイドレール6に沿って移動させながらトンネル3の内壁面の内部欠陥を検査し、クラックや空隙などの異常が存在すると疑われる検査データが得られた箇所を特定し、その箇所について検査者が直接、目視又は打音等で確認して異常状態が進展する可能性があると判断して決めた箇所のことである。そのような特定箇所の周りに、
図2に示すように、1個又は複数個の打音検査部60を、アンカーボルト又は鋲等の固定具を内壁面に打ち込んで取り付ける。
【0041】
図9は、
図2においてトンネル3の内壁面に取り付けられる打音検査部60を取り出して示す拡大斜視図であり、
図9において裏面側がトンネル3の内壁面に取り付けられる側で、ケース61の四隅部にアンカーボルト62が植え付けられている。なお、符号63は、前記検査装置本体1の赤外線照射部12から照射される加熱レーザ光を受けるレーザ受光窓を示している。この打音検査部60は、構造物(トンネル3)の表面(内壁面)に振動を加えその加振による構造物の振動を検出して計測データの集積を行い、内蔵の通信ユニットで前記計測データを前記検査装置本体1へ送信するもので、打撃部64(
図10)と、駆動部65(
図10)と、振動検出器66(
図10)と、データ集積部67(
図12)と、通信ユニット68(
図12)と、受光・電源部69(
図12)とを含んで成る。なお、
図10においては、打音検査部60の裏面側の凹所に、前記打撃部64と駆動部65と振動検出器66とを一組にしたものが合計9組、十文字状に配置された状態を示している。前記打撃部64と駆動部65と振動検出器66とは、9組に限られず、適宜の組数であってもよい。
【0042】
前記打撃部64は、トンネル3の内壁面に振動を加えるもので、例えば上下に振動する小型のハンマーから成り、駆動部65は、前記打撃部64を振動させるもので、例えば小型の電気モータから成る。
図11において、打撃部64は、例えば円筒状に形成したカバー部材71の中空部に上下動可能に挿入された丸棒部材(ハンマー)から成り、その長手方向の中間部を横切って串刺しにした従節軸72を有し、前記丸棒部材の端面がカバー部材71の端部と同一面になる中立状態を保つようにコイルバネ等で付勢されている。前記従節軸72の両端部には、一対のカム73,73のカム外形が当接しており、前記カバー部材71の中間部には前記従節軸72が上下動可能なスリット74が縦方向に切ってある。前記カム73,73の基礎円の中心を結ぶカム軸75の延長上には、駆動部65が連結されている。なお、符号76は、前記駆動部65の回転軸を支持する支持ブロックを示している。
【0043】
そして、前記駆動部65を駆動してカム軸75を一定方向に回転させると、カム73,73も回転してそのカム外形が従節軸72に当接し、打撃部64の丸棒部材に対する付勢力との相互作用によって、前記打撃部64が上下に振動する。
図11においては、打撃部64の上端面でトンネル3の内壁面に振動を加えるようになる。なお、符号77は、前記打撃部64の下端面側に設けられた反力センサを示しており、打撃部64の丸棒部材(ハンマー)でトンネル3の内壁面を打ったときの該丸棒部材に働く反力を検出するようになっている。これにより、打撃部64によってトンネル3の内壁面に加える振動を調節することが可能となる。
【0044】
振動検出器66は、前記打撃部64の加振によるトンネル3の内壁面の振動を検出するもので、例えば圧電素子などで構成される小型の加速度センサから成る。
図11においては、打撃部64の上端面でトンネル3の内壁面に振動を加える位置に合わせて振動検出器66の上端面の位置決めをし、打撃部64の加振により生じたトンネル3の内壁面の振動を該振動検出器66で検出するようになる。なお、符号78は、振動検出器66を支持する支持ブロックを示している。また、前記打撃部64、駆動部65及び振動検出器66等の構造は、
図11に示すものに限られず、同様の動作をするものならば他の構造であってもよい。
【0045】
図12は、
図9に示す打音検査部60の、構造物(トンネル3)の表面(内壁面)と反対側(表面側)のカバー79を取り外してその内部を示す斜視図である。
図12において、データ集積部67は、前記振動検出器66で検出した計測データの集積を行うもので、例えば信号の増幅回路を含む加速度センサ回路や前記収集したデータを集積する検査用ロジック回路等を備えている。また、通信ユニット68は、前記データ集積部67で集積した計測データを前記検査装置本体1へ送信するもので、
図13に示す検査装置本体1に内蔵の通信ユニット80との間で近距離通信を行うようになっている。さらに、受光・電源部69は、前記検査装置本体1の赤外線照射部12から照射される加熱用の赤外線を受光して起電力を発生し各要素に電力を供給するもので、
図2において矢印Cで示すように赤外線照射部12から照射された高出力の加熱レーザ光を、
図9に示すレーザ受光窓63を介して受光電源デバイス81で受光して起電力を発生するようになっている。
【0046】
図13は、以上のように構成された欠陥検査装置の構成及び機能を示すブロック図である。この欠陥検査装置は、前述の検査装置本体1と、自走機構部2と、打音検査部60とを組み合わせて構成される。
【0047】
検査装置本体1は、赤外線照射部12と、温度変化測定部13と、駆動制御・集積部14と、監視カメラ15と、カメラ電源ユニット26と、外部通信ユニット27と、通信ユニット80とを備えている。なお、
図13では、
図2に示す検査装置本体1において
図4に示す第1検査部1aの部分だけを図示しており、第2検査部1bの部分は図示省略している。第2検査部1bは、駆動制御・集積部14を共通にして、その他の部分は
図13に示す第1検査部1aと同じ構成及び機能のブロック図となる。
【0048】
前記赤外線照射部12は、検査対象の構造物(トンネル3)に加熱用の赤外線を照射するもので、例えば加熱レーザ光を発振する高出力の赤外線レーザを備えており、波長が1.5μm程度の加熱レーザ光を矢印Cのように発振する。また、温度変化測定部13は、前記赤外線照射部12の赤外線照射により構造物の温度が変化するのを測定するもので、例えば構造物に対して測定レーザ光を照射すると共にその反射光を検出して前記構造物の反射率を測定する低出力のレーザ受発光器を備えており、波長が0.5μm程度の測定レーザ光を矢印Dのように発振すると共に、構造物から矢印Eのように反射してきた反射光を検出する。
【0049】
駆動制御・集積部14は、前記赤外線照射部12及び温度変化測定部13の駆動制御及び検査データの集積を行うもので、赤外線照射部12の赤外線レーザや、温度変化測定部13のレーザ受発光器を駆動するための電源回路を有すると共に、赤外線照射部12及び温度変化測定部13で収集した検査データを集積する検査用ロジック回路等を備えている。
【0050】
監視カメラ15は、検査装置本体1の移動方向前方を監視するためのもので、カメラ電源ユニット26から電力を供給されて撮影を行い、その撮影データを収集する。
【0051】
外部通信ユニット27は、前記駆動制御・集積部14で取得した検査データ、及び監視カメラ15で収集しカメラ電源ユニット26を介して転送された撮影データを外部(例えば、
図20に示す中継器51等)へ送るもので、後述の自走機構部2の電源回路から電力を供給されて動作する。
【0052】
通信ユニット80は、前記外部通信ユニット27とは別個に設けられた通信手段であり、打音検査部60に内蔵された通信ユニット68との間で相互にデータ通信をするもので、前記打音検査部60で収集した計測データを検査装置本体1内へ取り込む送受信回路を備えている。この通信ユニット80は外部通信ユニット27とケーブルで接続されており、該外部通信ユニット27は、打音検査部60で収集した計測データを外部(例えば、
図20に示す中継器51等)へ送るようになっている。
【0053】
また、自走機構部2は、前記検査装置本体1を前記構造物(トンネル3)に沿って移動可能とするもので、
図3に示す電気モータ9を備え、外部から供給される電力をその電気モータ9に対して送り駆動車輪8の回転制御を行う回路を備えている。また、前記検査装置本体1内の駆動制御・集積部14及びカメラ電源ユニット26、外部通信ユニット27に対して電力を送る電源回路も備えている。
【0054】
さらに、打音検査部60は、打撃部64と、駆動モータ(駆動部)65と、モータドライバ70と、振動検出器66と、データ集積部67と、通信ユニット68と、受光・電源部69とを備えて成る。
【0055】
前記打撃部64は、トンネル3の内壁面に振動(矢印F参照)を加えるもので、例えば上下に振動する小型のハンマーから成る。駆動モータ65は、前記打撃部64を振動させる駆動部となるもので、例えば小型の電気モータから成る。モータドライバ70は、受光・電源部69から電力を供給されて駆動モータ65を駆動する回路である。振動検出器66は、前記打撃部64の加振によるトンネル3の内壁面の振動(矢印G参照)を検出するもので、例えば圧電素子などで構成される小型の加速度センサから成る。データ集積部67は、前記振動検出器66で検出した計測データの集積を行うもので、例えば加速度センサ回路や検査用ロジック回路等を備えている。また、通信ユニット68は、前記データ集積部67で集積した計測データを前記検査装置本体1へ送信するもので、検査装置本体1に内蔵の通信ユニット80との間で相互に近距離通信を行う送受信回路を備えている。さらに、受光・電源部69は、前記検査装置本体1の赤外線照射部12から照射される加熱用の赤外線を受光して起電力を発生し各要素に電力を供給するもので、赤外線照射部12から照射された高出力の加熱レーザ光(矢印C参照)を、
図9に示すレーザ受光窓63を介して受光し起電力を発生する受光電源デバイス81(
図12参照)を備えている。
【0056】
そして、前記自走機構部2で検査対象の構造物に沿って移動しながら、検査装置本体1で前記構造物に加熱用の赤外線を照射すると共にその赤外線照射により構造物の温度が変化するのを測定して前記構造物の内部欠陥を検査すると共に、前記打音検査部60からの計測データを受信して該計測データを解析する。
【0057】
次に、上述の欠陥検査装置の検査原理を説明する。
図14はその欠陥検査装置の検査原理を示す説明図であり、
図15は前記欠陥検査装置の検査原理を示すグラフである。この検査原理は、ある構造物に光を照射してその反射光を測定し、物質の光反射率の温度依存性を利用して熱伝導率を測定するもので、「光加熱サーモリフレクタンス法」と呼ばれる。この検査原理を利用して、検査対象の構造物の反射光測定位置の光反射率を計測し、その過渡特性から局所的熱伝導率を求め、マッピングすることで構造物内部のクラックや空隙を発見することができる。
【0058】
図14(a)において、検査対象の構造物30の内部にクラック31又は空隙があるとする。まず、この構造物30の表面に赤外線照射部12から加熱レーザ光を矢印Cのように照射する(時刻T
0)。このとき、加熱レーザ光(C)のビーム径は0.010m程度とし、後述の測定レーザ光のビーム径の約10倍の領域幅とする。構造物30の表面にて加熱レーザ光(C)が当たった部位32は温度が上昇して、その熱が周囲に拡散して行く。その後、
図14(b)において、温度変化測定部13から前記構造物30の表面に対して測定レーザ光を矢印Dのように照射すると共に、矢印Eのように反射する反射光を測定する(時刻T
1)。このとき、測定レーザ光(D)のビーム径は0.001m程度とされ、前記加熱レーザ光(C)のビーム径の約1/10の領域幅とされる。前記加熱レーザ光(C)が当たった部位32はその間の時間経過に伴って熱拡散して、拡散領域33のように熱が周囲に拡がっている。さらにその後、
図14(c)において、温度変化測定部13から次なる測定レーザ光を矢印Dのように照射すると共に、矢印Eのように反射する反射光を測定する(時刻T
2)。このとき、時刻T
0で加熱レーザ光(C)が当たった部位32はその後の時間経過に伴って更に熱拡散して、拡散領域34のように熱が周囲に拡がっている。
【0059】
以後、前記と同様にして、所定の時間間隔で時刻T
1から時刻T
10まで、構造物30の表面の加熱部位32に対して測定レーザ光を矢印Dのように照射すると共に、矢印Eのように反射する反射光を測定する。このような測定結果をまとめたのが、
図15のグラフである。
図15は横軸を時刻とし縦軸をレーザ反射光の強度としたグラフで、時刻T
0で構造物30の表面に加熱レーザ光を照射して部位32を加熱し、時刻T
1から時刻T
10まで前記構造物30の加熱部位32に対して測定レーザ光を照射すると共にその反射光を測定し、
図14(b),(c)に示す拡散領域33,34のように熱が拡散している部位の反射光の変化の状態を表したものである。この場合は、時刻T
0で照射した加熱レーザ光(C)のビーム幅内で、時刻T
1から時刻T
10の10回に分けて測定レーザ光(D)を照射してその反射光を測定している。
【0060】
図15のように反射光を測定することで、前記構造物30の表面の加熱部位32の反射率を測定することができる。ここで、前述の「光加熱サーモリフレクタンス法」によれば、物質の光反射率の温度依存性を利用して熱伝導率を測定することができる。そこで、
図15に示す反射光測定のグラフを測定部位に応じて位置をずらして並べて行き、周囲の部位と測定結果が変化するところが現れたらその部位の熱伝導率が変化していることが分かり、そこにクラック31又は空隙が存在することが発見できる。
【0061】
このような検査対象の構造物の加熱及び反射光の測定はその構造物について毎日又は所定期間をおいて定期的に行い、日時の経過に従って以前の測定データと異なる測定データが得られたときに、その構造物の表面又は内部において今までと違う状態が発生したことが分かり、構造物の内部欠陥を検査することができる。
【0062】
次に、このように構成された欠陥検査装置の使用及び動作について説明する。まず、
図1において、検査対象の構造物としての例えばトンネル3内にて、道路4に設置されたガイドレール6を利用して自走機構部2を組み合わせ、検査装置本体1をトンネル3内の道路4上の中央にセットする。この状態で自走機構部2に外部から電源を供給して、
図2、
図4に示す赤外線照射部12及び温度変化測定部13を駆動し、
図5に示す第1ドラム16a及び第2ドラム16bをそれぞれ独立に回転させて赤外線レーザチップ17及びレーザ受発光チップ20を回転させながら、トンネル3の内壁面に対して加熱レーザ光を発振したり、測定レーザ光を照射する。同時に、
図3に示す自走機構部2の電気モータ9を駆動して駆動車輪8を回転させ、
図2に示すように、検査装置本体1をガイドレール6に沿って矢印A方向又はB方向に一定速度で移動させ、トンネル3の全長に亘って片道又は往復移動させる。なお、前記測定用のレーザ受発光チップ20の回転は、加熱用の赤外線レーザチップ17の回転よりも速くするのが望ましい。
【0063】
前記赤外線照射部12の赤外線レーザチップ17及び温度変化測定部13のレーザ受発光チップ20自体の回転及び回転角度は、
図6に示す基盤部材11の上面に取り付けた高反射率部材22からの反射光を受光して検出される。また、前記赤外線照射部12及び温度変化測定部13のトンネル3の内壁面に対する回転角度は、
図7に示すトンネル3の内壁面の特定位置又は一定間隔をおいた位置に設けた高反射率部材23からの反射光を受光して検出される。さらに、前記検査装置本体1のガイドレール6に対する移動位置は、
図8に示すガイドレール6の特定位置又は一定間隔をおいた位置に設けた高反射率部材24からの反射光を受光して検出される。これにより、検査装置本体1が検査対象のトンネル3に沿って移動している位置を検出する。
【0064】
このような動作により、検査装置本体1の赤外線照射部12及び温度変化測定部13から照射されるレーザ光のトンネル3の内壁面に対する位置が特定され、検査装置本体1がガイドレール6に沿って移動する位置が特定されて、前述の
図13〜
図15の動作をすることで、トンネル3の内壁面を万遍なく、かつ自動的に検査できる。
【0065】
上述の検査装置本体1の動作により、トンネル3の内壁面の内部欠陥を検査し、クラックや空隙などの異常が存在すると疑われる検査データが得られた箇所を特定し、その箇所について検査者が直接、目視又は打音等で確認して異常状態が進展する可能性があると判断したら、そのような特定箇所の周りに、
図2に示すように、1個又は複数個の打音検査部60を、アンカーボルト又は鋲等の固定具を内壁面に打ち込んで取り付ける。
【0066】
このように、トンネル3の内壁面の特定箇所に打音検査部60を取り付けた状態で、上述と同様にして検査装置本体1の動作により、トンネル3の内壁面の内部欠陥を検査する。このとき、
図2において、トンネル3内を検査装置本体1が矢印A方向又はB方向に移動しながら打音検査部60が取り付けられた特定箇所に差しかかると、検査装置本体1の赤外線照射部12から矢印Cのように照射された加熱レーザ光が
図9に示すレーザ受光窓63から打音検査部60内に入り、
図12に示す受光・電源部69の受光電源デバイス81に入射する。すると、受光電源デバイス81は入射したレーザ光を起電力に変換して、
図13に示す受光・電源部69から、モータドライバ70、データ集積部67及び通信ユニット68へ電力を供給する。
【0067】
これにより、駆動モータ65の駆動で打撃部64が動作してトンネル3の内壁面に振動を加え、振動検出器66の動作により前記打撃部64の加振によるトンネル3の振動を検出し、その計測データをデータ集積部67に集積する。この集積された計測データは通信ユニット68へ送られ、該通信ユニット68から前記検査装置本体1内の通信ユニット80へ送信される。この通信ユニット80は受信した計測データを外部通信ユニット27へ送り、該外部通信ユニット27は、前記打音検査部60で収集した計測データを外部(例えば、
図20に示す中継器51等)へ送る。前記打音検査部60からの計測データは解析されて、トンネル3の内壁面の異常(クラックや空隙)が進展していないかの判断に供される。
【0068】
図16は、第1の発明の欠陥検査装置の別の配置状態を示す図であり、自走機構部の第2の実施形態を示す概略斜視図である。この実施形態は、検査装置本体1(
図2参照)を移動可能に支持する自走機構部40を、断面半円弧状の内壁面を有する構造物としてのトンネル3の内壁面に沿うアーチ形に形成されると共に前記検査装置本体1を保持する可動支持部材41を有し、該可動支持部材41の両端の台部材42が路面上を自走可能に構成したものである。
【0069】
前記可動支持部材41は、
図17に示すように、中央に位置するアーチ形の第1支持部材41aと、その前後に所定間隔をおいて位置するアーチ形の第2支持部材41bと、第3支持部材41cとを有している。第1支持部材41aの半円弧状の中央部下面には、
図16に示すように、吊下げ支持具43が取り付けられており、この吊下げ支持具43の下端部に、
図2及び
図4に示すと同様に構成された検査装置本体1が支持されている。このとき、検査装置本体1の
図2に示す赤外線照射部12及び温度変化測定部13は、
図17に示すように、第1支持部材41aと第2支持部材41bとの間の離間部、及び第1支持部材41aと第3支持部材41cとの間の離間部に位置するように配置して支持されている。これは、前記赤外線照射部12及び温度変化測定部13から照射され、トンネル3の内壁面から反射されるレーザ光が可動支持部材41によって光路を妨げられないようにするためである。
【0070】
前記可動支持部材41のアーチ形の両端には、台部材42,42が設けられている。この台部材42は、可動支持部材41を道路3の路面上にて自走可能とするもので、
図17に示すように、第2支持部材41bから第3支持部材41cまで横長に延びる台箱46を有し、この台箱46の内部に駆動車輪8が一列状に複数個設けられている。この駆動車輪8は、前記台箱46の内部に設置された電気モータ(図示省略)により回転される。前記駆動車輪8を備えた台部材42は、アーチ形の可動支持部材41の両端に設けられているので、両方の台部材42により下端部を支えた状態で可動支持部材41が設置面上に立って置かれる。そして、前記駆動車輪8が回転することで、前記可動支持部材41の全体が路面上を一方向又は往復方向に自走可能とされている。すなわち、この実施形態の自走機構部40は、前記可動支持部材41と、台部材42と、電気モータと、駆動車輪8とを備えて成る。
【0071】
なお、
図16及び
図17において、符号44はカメラユニットを示している。このカメラユニット44は、
図17に示すように、第2支持部材41b及び第3支持部材41cを利用してそのアーチ形の形状に沿って移動可能とされ、カメラのレンズ面が
図16に示すトンネル3の内壁面に向けて設けられている。これにより、前記カメラユニット44でトンネル3の内壁面に異常個所があれば、それを撮影することができる。
【0072】
この状態で、
図16に示すように、トンネル3の内壁面に沿わせてアーチ形の可動支持部材41が位置するようにし、その両端部の台部材42,42がトンネル3内部の道路4の両側部に位置するようにして、自走機構部40をトンネル3内に挿入することで、該トンネル3に沿って往復移動可能に構成されている。なお、前記電気モータに対する電力の供給は、蓄電池を利用するなどの従来公知の電力供給手段を用いればよい。
【0073】
この実施形態の場合も、検査装置本体1の動作は前述と全く同じである。ただし、第2の実施形態の自走機構部40において検査装置本体1の赤外線照射部12及び温度変化測定部13(
図4、
図5参照)の回転を検出するには、
図18及び
図19に示すようにして行う。すなわち、検査装置本体1が支持された第1支持部材41aの下端部が連結された台部材42の上面に高反射率部材45を設け、それぞれ赤外線照射部12の赤外線レーザチップ17及び温度変化測定部13のレーザ受発光チップ20から照射されたレーザ光の反射光を受光して、赤外線レーザチップ17及びレーザ受発光チップ20が回転しているかどうか、回転角度はどのくらいかを検出する。この場合、前記第1支持部材41aのアーチ形状は、トンネル3の内壁面に沿うアーチ形に形成されているので、前記高反射率部材45が取り付けられた位置を赤外線レーザチップ17及びレーザ受発光チップ20の回転角度のゼロ点位置とすれば、前記赤外線照射部12及び温度変化測定部13のトンネル3の内壁面に対する回転角を擬似的に検出することができる。なお、前記高反射率部材45は、赤外線照射部12からの加熱用の赤外線の吸収による温度上昇はないものとする。
【0074】
そして、第2の実施形態における検査装置本体1のトンネル3の長手方向に対する移動位置は、例えば
図7に示す高反射率部材23をトンネル3の長手方向に沿って連続線状、又は一定間隔をおいて設け、前記赤外線照射部12又は温度変化測定部13から照射されたレーザ光の前記高反射率部材23からの反射光を検出して、検査装置本体1がトンネル3の長手方向においてどの位置にいるかを検出すればよい。これにより、検査装置本体1が検査対象のトンネル3に沿って移動している位置を検出することができる。この場合も、前記高反射率部材23は、赤外線照射部12からの加熱用の赤外線の吸収による温度上昇はないものとする。
【0075】
第2の実施形態の自走機構部40を備えた欠陥検査装置の使用及び動作については、第1の実施形態の自走機構部2を備えた欠陥検査装置の使用及び動作と基本的には同じであり、単に、第2の実施形態の自走機構部40の移動動作が異なるだけである。
図16に示す第2の実施形態の自走機構部40を備えた場合は、検査対象のトンネル3の内部の道路4に第1の実施形態の自走機構部2(
図1参照)を保持するためのガイドレール6を予め設置する必要がないので、本発明による欠陥検査装置を導入するのが容易である。また、第2の実施形態の自走機構部40のアーチ形が検査対象のトンネル3の内壁面の形状に合う限り、既存のトンネル3に対してこの欠陥検査装置を導入することが可能である。
【0076】
なお、前記検査装置本体1を検査対象の構造物に沿って移動可能とする自走機構部は、第1の実施形態の自走機構部2又は第2の実施形態の自走機構部40に限られず、トンネル3の内壁面にトンネル長手方向にレールを敷設してモノレールのような構成のものとしてもよい。
【0077】
図20は、第2の発明による構造物の検査システムの実施形態を示すブロック図である。この検査システムは、検査対象の構造物(例えば、トンネル又は高架橋等の構造物)に赤外線を照射して前記構造物の内部欠陥を検査すると共に、打音検査部からの計測データを受信して解析するもので、欠陥検査装置50と、中継器51と、管理センター52と、双方向通信網53とを備えて成る。なお、
図20においては、欠陥検査装置50の内部構成として、検査装置本体1と打音検査部60を表示し、
図13に示す自走機構部2は省略してある。また、符号3は、欠陥検査装置50が配置された検査対象の構造物としてのトンネルを示している。
【0078】
前記欠陥検査装置50は、前述の第1の発明による欠陥検査装置であり、
図1及び
図16に示すように構成され、例えばトンネル3内に配置されている。この欠陥検査装置50は、
図13に示すように、検査対象の構造物に加熱用の赤外線を照射する赤外線照射部12、前記赤外線照射部12の赤外線照射により構造物の温度が変化するのを測定する温度変化測定部13、前記赤外線照射部12並びに温度変化測定部13の駆動制御及び検査データの集積を行う駆動制御・集積部14、前記駆動制御・集積部14で取得した検査データを外部へ送る外部通信ユニット27を搭載した検査装置本体1と、前記検査装置本体1を前記構造物に沿って移動可能とする自走機構部2(図示省略)と、前記構造物の表面にて予め定めた箇所に取り付けられ、前記構造物表面に振動を加えその加振による構造物の振動を検出して計測データの集積を行い、内蔵の通信ユニットで前記計測データを前記検査装置本体1へ送信する打音検査部60とを組み合わせて成る。そして、前記自走機構部2で検査対象の構造物(3)に沿って移動しながら、検査装置本体1で前記構造物に加熱用の赤外線を照射すると共にその赤外線照射により構造物の温度が変化するのを測定して前記構造物の内部欠陥を検査すると共に、前記打音検査部60からの計測データを受信して該計測データを解析するようになっている。
【0079】
中継器51は、前記検査対象のトンネル3の終端部(例えば、トンネル入口又は出口)に設置され、前記欠陥検査装置50から送られる検査データ及び計測データを受けるもので、受信したデータを双方向通信網53へ送るデータ通信部を備えている。なお、中継器51は、トンネル3の終端部に限られず、トンネル3の中央部又はトンネル3を出てすぐの場所に設置してもよい。
【0080】
管理センター52は、前記欠陥検査装置50から送られる検査データ及び計測データを受信してデータ処理を行うもので、中央処理装置(CPU)等のデータ処理部を備えている。さらに、
図20に示すように、複数個の欠陥検査装置50を管理する場合は、ホスト電子計算機を備えている。
【0081】
双方向通信網53は、前記中継器51と管理センター52との間に設けられ、前記検査データ及び計測データを送受信するもので、公知の双方向ネットワークを備えて検査データを遣り取りするようになっている。
【0082】
なお、前記欠陥検査装置50と、中継器51と、双方向通信網53と、管理センター52との間の通信は、有線でも無線でもよい。また、前記検査データ及び計測データの処理を行うデータ処理部を前記中継器51に設けて、該中継器51により、前記欠陥検査装置50から送られる検査データを処理して前記管理センター52へ送信するようにしてもよい。
【0083】
そして、この検査システムは、一つの検査対象の構造物(トンネル3)に欠陥検査装置50を設置し、この欠陥検査装置50に対して中継器51及び双方向通信網53を介して管理センター52に接続してもよいが、
図20に示すように、前記欠陥検査装置50を検査対象の複数の構造物(トンネル3)毎に1個ずつ設置し、これら複数個の欠陥検査装置50に対して前記双方向通信網53を介して1個の管理センター52を設置して双方向通信可能に接続してもよい。
【0084】
次に、このように構成された第2の発明による検査システムの使用及び動作について説明する。まず、欠陥検査装置50自体の使用及び動作については、前述の第1の発明について説明した通りである。前記欠陥検査装置50で検査対象の各トンネル3の内壁面について収集された検査データ及び計測データは、トンネル3の入口又は出口に設置された中継器51に送られ、双方向通信網53を介して管理センター52へ送られる。管理センター52は、各トンネル3内に設置された欠陥検査装置50から送られた検査データ及び計測データを受信してデータ処理を行い、そのデータ処理後の検査データ及び計測データを蓄積しておく。前記トンネル3の内壁面についての検査は、毎日又は所定期間をおいて定期的に行い、日時の経過に従って以前の検査データ及び計測データと異なる検査結果が得られたときに、そのトンネル3の表面又は内部において今までと違う状態が発生したことが分かり、構造物の内部欠陥を検査することができる。なお、前述のように、中継器51に検査データ及び計測データの処理を行うデータ処理部を設けて、該中継器51により、前記欠陥検査装置50から送られる検査データ及び計測データを処理して前記管理センター52へ送信するようにしてもよい。この場合は、管理センター52に大規模なデータ処理部を設けることなく、トンネル3毎の中継器51に小規模なデータ処理部を設けるだけで実施できる。
【0085】
このような検査システムの動作により、複数個のトンネル3の内壁面を万遍なく、かつ自動的に検査できる。この場合、他の自動車等の通行の妨げにならず、24時間いつでもトンネル3の欠陥検査をすることができる。また、操作者等の人手を要しないため、検査コストを低減することが可能である。