(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-60627(P2015-60627A)
(43)【公開日】2015年3月30日
(54)【発明の名称】カードコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/73 20110101AFI20150303BHJP
G06K 17/00 20060101ALI20150303BHJP
【FI】
H01R12/73
G06K17/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-191480(P2013-191480)
(22)【出願日】2013年9月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晋也
(72)【発明者】
【氏名】鎌谷 裕康
【テーマコード(参考)】
5B058
5E123
【Fターム(参考)】
5B058CA02
5B058CA03
5B058CA13
5B058KA12
5B058KA24
5E123AB16
5E123BA07
5E123BB12
5E123CA17
5E123CB22
5E123CB31
5E123CB38
5E123DB11
5E123EA03
5E123EA31
5E123EB04
5E123EB13
5E123EC13
5E123EC32
5E123EC44
5E123EC72
5E123GB16
5E123GB42
5E123GB47
5E123GB53
(57)【要約】
【課題】プッシュイン・プッシュアウト方式のカードコネクタにおいて、ハートカムの破損を防止し、安定したカード保持状態を維持することができるカードコネクタの提供。
【解決手段】ハートカム7は、カード挿抜方向の一方の端部に係合ピン部9が係合する係合凹部28を備え、初めのカード押し込み動作により係合ピン部9が係合凹部28に係合する位置に移動し、イジェクタ5のカード押し出し方向の移動が規制され、再度のカード押し込み動作により係合ピン部9が係合凹部28より離脱して係合が解除されるようにしたプッシュイン・プッシュアウト方式のカードコネクタにおいて、ハートカム7には、係合凹部28の内側に配置されて係合ピン部9が当接される金属製の補強当接部30を有する補強金具27を備えたカードコネクタ1。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが挿入されるカード挿入部を有するハウジングと、前記カード挿入部内に突出し前記カードと接触する複数のコンタクトと、前記カードとともに移動するイジェクタと、該イジェクタを押し出し方向に付勢する押し出しバネと、前記ハウジング又はイジェクタの何れか一方に配置された樹脂製のハートカムと、該ハートカムの周りに配されたループ状のピンガイド溝と、一端に前記ピンガイド溝に摺動可能に挿入された係合ピン部を有し、他端が前記ハウジング又はイジェクタの何れか他方に回動可能に支持されたロックピンとを備え、
前記ハートカムは、カード挿抜方向の一方の端部に前記係合ピン部が係合する係合凹部を備え、
初めのカード押し込み動作により前記係合ピン部が前記係合凹部に係合する位置に移動し、前記イジェクタのカード押し出し方向の移動が規制され、再度のカード押し込み動作により前記係合ピン部が前記係合凹部より離脱して係合が解除されるようにしたプッシュイン・プッシュアウト方式のカードコネクタにおいて、
前記ハートカムには、前記係合凹部の内側に配置されて前記係合ピン部が当接される金属製の補強当接部を有する補強金具を備えたことを特徴としてなるカードコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングは、合成樹脂製の底板部を有するハウジング本体と、導電性金属材からなるシールドカバーとを組み付けることにより構成され、
前記補強金具は、前記ハウジング本体を構成する金属製のハウジング用部材と一体に形成され、インサート成形により前記ハウジング用部材を前記ハウジング本体に組み込むことにより、前記補強金具が前記ハートカムに組み込まれるようにした請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記補強当接部に前記係合ピン部が嵌り込む当接凹部を備えた請求項1又は2に記載のカードコネクタ。
【請求項4】
前記補強金具は、前記ハートカムの上面部に該上面部と平行配置に埋設される平板状の水平板部を備え、該水平板部の端縁部を前記補強当接部とした請求項1〜3の何れか1項に記載のカードコネクタ。
【請求項5】
前記水平板部の端縁部を切欠いて前記補強当接部に当接凹部を形成してなる請求項4に記載のカードコネクタ。
【請求項6】
前記補強金具は、前記係合凹部の内側面部に表面が露出する鉛直板部を備え、該鉛直板部の表面を前記補強当接部としてなる請求項1〜3の何れか1項に記載のカードコネクタ。
【請求項7】
前記鉛直板部の表面にプレス加工により縦方向に向けた溝状の凹部を形成し、該凹部を前記当接凹部としてなる請求項6に記載のカードコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機やスマートフォン等の電子機器にICカードやフラッシュメモリーカード等のカードを接続するためのカードコネクタであって、特にプッシュイン・プッシュアウト方式のカード取出し機構を備えたカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のカードコネクタにおいては、カード押し込み動作に伴ってカードの挿入及び排出がされる所謂プッシュイン・プッシュアウト方式のカード取出し機構を備えたカードコネクタが広く知られている。
【0003】
このカードコネクタ100は、
図11に示すように、ICカード等のカードAが挿入されるカード挿入部101を有するハウジング102と、ハウジング102に支持されてカード挿入部2内に突出する複数のコンタクト(図示せず)と、カードAと共にカード挿入部2内を移動するイジェクタ103と、イジェクタ103を押し出し方向に付勢する押し出しバネ104と、ハウジング102のカード挿入部側部に配置されたハートカム105及びハートカム105の周りに形成されたループ状のピンガイド溝106からなるハートカム部と、一端がイジェクタ103に回動可能に支持され、他端の係合ピン部107がピンガイド溝106に挿入されたロックピン108とを備えている。
【0004】
そして、このカードコネクタ100では、初めのカード押し込み動作によってカードAと共にイジェクタ103が移動し、それと連動してロックピン108の係合ピン部107がピンガイド溝106内を移動してハートカム105と係合する位置に移動し、ロックピン108を介してイジェクタ103がハートカム105に係合し、その位置にイジェクタ103がロックされる。
【0005】
そして、再度の押し込み動作によってロックピン108の係合ピン部107がハートカム105と係合する位置より離脱してイジェクタ103のロックが解除され、押出しバネ103の付勢力によってイジェクタ103がカードAを押し出すようになっている。
【0006】
ハートカム105は、カード挿抜方向の一方の端部に係合ピン部107が係合する係合凹部109を有する平面視ハート状に形成され、
図12に示すように、係合凹部109の内側にロックピン108の係合ピン部107が係合するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−300229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、カードが嵌合した状態、即ち、ロックピンの係合ピン部がハートカムの係合凹部と互いに係合した状態において、高温下に晒されたことによる樹脂強度の低下や落下衝撃等により係合ピン部からハートカムに対して過度な負荷が加わった場合、金属製の係合ピン部から受ける負荷に抗しきれずに樹脂製のハートカムが破損してしまい、係合ピン部が係合凹部と互いに係合不能な状態となり、カードが勝手に排出されてしまったり、カードを所望の位置に維持できなかったりする虞があった。
【0009】
そこで本発明は、このような従来の問題に鑑み、プッシュイン・プッシュアウト方式のカードコネクタにおいて、ハートカムの破損を防止し、安定したカード保持状態を維持することができるカードコネクタの提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、カードが挿入されるカード挿入部を有するハウジングと、前記カード挿入部内に突出し前記カードと接触する複数のコンタクトと、前記カードとともに移動するイジェクタと、該イジェクタを押し出し方向に付勢する押し出しバネと、前記ハウジング又はイジェクタの何れか一方に配置された樹脂製のハートカムと、該ハートカムの周りに配されたループ状のピンガイド溝と、一端に前記ピンガイド溝に摺動可能に挿入された係合ピン部を有し、他端が前記ハウジング又はイジェクタの何れか他方に回動可能に支持されたロックピンとを備え、 前記ハートカムは、カード挿抜方向の一方の端部に前記係合ピン部が係合する係合凹部を備え、初めのカード押し込み動作により前記係合ピン部が前記係合凹部に係合する位置に移動し、前記イジェクタのカード押し出し方向の移動が規制され、再度のカード押し込み動作により前記係合ピン部が前記係合凹部より離脱して係合が解除されるようにしたプッシュイン・プッシュアウト方式のカードコネクタにおいて、前記ハートカムには、前記係合凹部の内側に配置されて前記係合ピン部が当接される金属製の補強当接部を有する補強金具を備えたカードコネクタ。
【0011】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記ハウジングは、合成樹脂製の底板部を有するハウジング本体と、導電性金属材からなるシールドカバーとを組み付けることにより構成され、前記補強金具は、前記ハウジング本体を構成する金属製のハウジング用部材と一体に形成され、インサート成形により前記ハウジング用部材を前記ハウジング本体に組み込むことにより、前記補強金具が前記ハートカムに組み込まれるようにしたことにある。
【0012】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記補強当接部に前記係合ピン部が嵌り込む当接凹部を備えたことにある。
【0013】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1〜3の何れか1項の構成に加え、 前記補強金具は、前記ハートカムの上面部に該上面部と平行配置に埋設される平板状の水平板部を備え、該水平板部の端縁部を前記補強当接部としたことにある。
【0014】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項4の構成に加え、前記水平板部の端縁部を切欠いて前記補強当接部に前記当接凹部を形成してなることにある。
【0015】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項1〜3の何れか1項の構成に加え、 前記補強金具は、前記係合凹部の内側面部に表面が露出する鉛直板部を備え、該鉛直板部の表面を前記補強当接部としてなることにある。
【0016】
請求項7に記載の発明の特徴は、請求項6の構成に加え、前記鉛直板部の表面にプレス加工により縦方向に向けた溝状の凹部を形成し、該凹部を前記当接凹部としてなることにある。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るカードコネクタは、上述したように、カードが挿入されるカード挿入部を有するハウジングと、前記カード挿入部内に突出し前記カードと接触する複数のコンタクトと、前記カードとともに移動するイジェクタと、該イジェクタを押し出し方向に付勢する押し出しバネと、前記ハウジング又はイジェクタの何れか一方に配置された樹脂製のハートカムと、該ハートカムの周りに配されたループ状のピンガイド溝と、一端に前記ピンガイド溝に摺動可能に挿入された係合ピン部を有し、他端が前記ハウジング又はイジェクタの何れか他方に回動可能に支持されたロックピンとを備え、 前記ハートカムは、カード挿抜方向の一方の端部に前記係合ピン部が係合する係合凹部を備え、初めのカード押し込み動作により前記係合ピン部が前記係合凹部に係合する位置に移動し、前記イジェクタのカード押し出し方向の移動が規制され、再度のカード押し込み動作により前記係合ピン部が前記係合凹部より離脱して係合が解除されるようにしたプッシュイン・プッシュアウト方式のカードコネクタにおいて、前記ハートカムには、前記係合凹部の内側に配置されて前記係合ピン部が当接される金属製の補強当接部を有する補強金具を備えたことにより、カードが嵌合した状態、即ち、ロックピンの係合ピン部がハートカムの係合凹部と互いに係合した状態において、高温下に晒されたことによる樹脂強度の低下や落下衝撃等により係合ピン部からハートカムに対して過度な負荷が加わった場合であっても、その係合ピン部からハートカムが受ける負荷に対し強度の高い金属製の補強金具で受けることによってハートカムの破損を防止し、安定した係合状態を維持することができる。
【0018】
また、本発明において、前記ハウジングは、合成樹脂製の底板部を有するハウジング本体と、導電性金属材からなるシールドカバーとを組み付けることにより構成され、前記補強金具は、前記ハウジング本体を構成する金属製のハウジング用部材と一体に形成され、インサート成形により前記ハウジング用部材を前記ハウジング本体に組み込むことにより、前記補強金具が前記ハートカムに組み込まれるようにしたことにより、補強金具をハートカム部に安定した状態で固定することができ、係合ピン部より受ける負荷に対し、高い耐力を得ることができる。
【0019】
更に本発明において、前記補強当接部に前記係合ピン部が嵌り込む当接凹部を備えたことにより、落下衝撃等による衝撃を受けた際に係合ピン部が係合凹部より逸脱するのを防止し、安定した係合状態を維持することができる。また、係合ピン部に対する補強当接部の接触面積が大きくなるので負荷が分散される。
【0020】
また、本発明において、前記補強金具は、前記ハートカムの上面部に該上面部と平行配置に埋設される平板状の水平板部を備え、該水平板部の端縁部を前記補強当接部としたことにより、ハートカムの係合ピン部より受ける負荷によって破損し易い部分を好適に補強することができる。
【0021】
更に、本発明において、前記水平板部の端縁部を切欠いて前記当接凹部を形成してなることにより、プレス加工により容易に当接凹部を形成することができ、また、ハートカムの係合凹部の形状やロックピンの係合ピン部の形状等に合わせて適宜当接凹部を形成することができる。
【0022】
また、本発明において、前記補強金具は、前記係合凹部の内側面部に表面が露出する鉛直板部を備え、該鉛直板部の表面を前記補強当接部としてなることにより、補強当接部の面積を広く取ることができる。
【0023】
更に、本発明において、前記鉛直板部の表面にプレス加工により縦方向に向けた溝状の凹部を形成し、該凹部を前記当接凹部としてなることにより、落下衝撃等による衝撃を受けた際に係合ピン部が係合凹部より逸脱するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係るカードコネクタの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図2中の補強金具を備えたハウジング用部材の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図2中のハートカム部を示す部分拡大斜視図である。
【
図6】
図1中の係合ピン部がハートカムと係合した状態を示す部分拡大縦断面図である。
【
図7】本発明に係るカードコネクタの他の一例のハートカム部を示す部分拡大斜視図である。
【
図9】本発明に係るカードコネクタの他の一例のハートカム部を示す部分拡大斜視図である。
【
図11】従来のカードコネクタのロック状態を示すシールドカバーを外した平面図である。
【
図12】同状態のハードカム部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明に係るカードコネクタの実施の態様を
図1〜
図6に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号AはICカードやフラッシュメモリーカード等のカード、符号1はカードコネクタである。
【0026】
カードコネクタ1は、カードAが挿入されるカード挿入部2を有するハウジング3と、ハウジング3に支持されてカード挿入部2内に突出した複数のコンタクト4,4...とを備え、カード挿入部2内に挿入されたカードAの片面側に配置された信号伝達パッド(図示せず)が対応するコンタクト4,4...と接触することにより、カードコネクタ1を介してカードAとカードコネクタ1が実装された実装基板とを電気的に接続するようになっている。
【0027】
また、このカードコネクタ1には、カードAの側縁部と着脱可能に係合し、当該カードAと共にハウジング3内を移動するイジェクタ5と、イジェクタ5を押し出し方向に付勢する押し出しバネ6と、ハウジング3に配置された樹脂製のハートカム7と、ハートカム7の周りに配されたループ状のピンガイド溝8と、一端にピンガイド溝8に摺動可能に挿入された係合ピン部9を有し、他端がイジェクタ5に回動可能に支持されたロックピン10とを備え、カード押し込み動作に伴ってカードAの挿入及び排出がされる所謂プッシュイン・プッシュアウト方式のカード取出し機構を備えている。
【0028】
即ち、このカードコネクタ1では、初めのカード押し込み動作によってカードAと共にイジェクタ5が移動し、それと連動してロックピン10の係合ピン部9がピンガイド溝8内を移動してハートカム7と係合する位置に移動し、ロックピン10によってイジェクタ5の移動が規制され、カード挿入部2内の所定の位置にカードAがロックされる。
【0029】
一方、再度のカード押し込み動作によってロックピン10の係合ピン部9がピンガイド溝8内を移動してハートカム7と係合する位置より離脱してイジェクタ5のロックが解除され、押し出しバネ6の付勢力によってイジェクタ5がカードAを押し出すようになっている。
【0030】
ハウジング3は、絶縁性合成樹脂製の底板部を有するハウジング本体11と、導電性金属製のシールドカバー12とを組み付けることによりカード挿入部2が前面に開口した中空箱状に形成され、前面の開口よりカードAを出し入れするようになっている。
【0031】
ハウジング本体11は、平板状の底板部21と、底板部21の両側縁部より立ち上げた形状の側壁部22,23とを備え、底板部21と両側壁部22,23とによって、上面側が凹んだ形状のカード挿入部2が形成され、その上面がシールドカバー12の天板によって覆われて前面に開口した中空箱状を成すようになっている。
【0032】
このハウジング本体11の底板部21には、導電性金属板材を打ち抜き・折り曲げ加工することにより形成された複数のコンタクト4,4...がインサート成形により組み込まれ、各コンタクト4,4...の弾性接触片部4aがカード挿入部2内に突出し、弾性接触片部4a先端の接点がカードAのパッド部と接触するようになっている。
【0033】
また、このハウジング本体11には、インサート成形によりハウジング用部材24が組み込まれ、このハウジング用部材24が、ハウジング本体11の一方の側壁部23と、イジェクタ5が移動可能に収納されるイジェクタガイド部25の底面部とを形成するようになっている。
【0034】
ハウジング用部材24は、金属製板材を打ち抜き・折り曲げ加工することにより一体に成形され、平板状の底板部26と、底板部26の一方の側縁より鉛直上向きに立ち上げた形状の側壁部23とを備えるとともに、底板部26の奥側端縁に後述する係合凹部28の内側に配置されて係合ピン部9が当接される金属製の補強当接部30を有する補強金具27を一体に備え、ハウジング用部材24がハウジング本体11に組み込まれることにより補強金具27がハートカム7に組み込まれるようになっている。
【0035】
補強金具27は、
図3に示すように、ハウジング用部材24の底板部26の奥側端縁より鉛直上向きに立ち上げた形状の立ち上がり部31と、立ち上がり部31の上縁より水平方向に向けて折り曲げた平板状の水平板部32とを備え、水平板部32がハートカム7の上面部に沿って当該上面部と平行配置に埋設され、その水平板部32の端縁部が後述するハートカム7の係合凹部28の内側面部に露出して補強当接部30を成している。
【0036】
また、水平板部32には、端縁部を半円状に切欠くことにより補強当接部30に当接凹部33が形成され、この当接凹部33がハートカム7の係合凹部28内面部に露出し、係合ピン部9の外周がこの当接凹部33内に嵌り込み、その内縁部に当接するようになっている。
【0037】
尚、当接凹部33は、水平板部32の端縁部をプレス加工により切欠いて形成するので、係合ピン部9の外形に整合させるように適宜形成することができる。
【0038】
ハートカム7は、イジェクタガイド部25奥側に平面視ハート状に形成され、カード挿抜方向の一端、即ち、カード挿入方向奥側端部にロックピン10の係合ピン部9が係合するV字状又はU字状の係合凹部28を備え、その内側部に係合ピン部9が係合するようになっている。
【0039】
ロックピン10は、金属棒材をもって形成され、一端に下向きに折り曲げた形状の回動軸部40を備え、他端に下向きに折り曲げた形状の係合ピン部9を備え、コ字状を成し、回動軸部40がイジェクタ5奥部の軸支孔41に挿入され、ロックピン10の回動中心軸を構成し、係合ピン部9がハウジング本体11に形成されたピンガイド溝8内に挿入されている。
【0040】
また、ロックピン10は、シールドカバー12の天板部に切り起こしにより形成された押し下げバネ42によってピンガイド溝8の底部側に付勢され、係合ピン部9がピンガイド溝8の底部より浮き上がらないようにしている。
【0041】
ピンガイド溝8は、
図5に示すように、ハウジング本体11の表面にハートカム式のループ状に形成され、ハートカム7の両側部に配置された往路部50及び復路部51と、ハートカム7の係合凹部28側に配置されたロック部52とにより構成されている。尚、図中符号53は、往路部50と復路部51とが合流する往復共通部である。
【0042】
このピンガイド溝8にロックピン10先端の係合ピン部9が挿入されて、往路部50、ロック部52及び復路部51に沿って順次循環するようになっており、係合ピン部9が循環中逆戻りしないように、往路部50、ロック部52及び復路部51の底部は、移動方向の終端側が高くなるように傾斜して形成され、各部の繋ぎ目部分に移動方向規制用の段部54a〜54dが形成されている。
【0043】
ロックピン10の係合ピン部9は、カードA未挿入状態において、原点停止位置aにあり、カード押し込み動作に連動してイジェクタ5が移動すると、往路部50を移動し、押し込み操作力を解除すると押し出しバネ6により押し出し停止位置側に戻るようになっている。
【0044】
一方、初めのカード押し込み動作によって、係合ピン部9が往路部50の末端位置bまで到達すると、段部54aによって往路部50側への移動が規制され、その位置bで押し込み操作力を解除することによりハートカム7の係合凹部28内の位置cに移動する。
【0045】
そして、係合凹部28内に係合ピン部9が移動することにより、
図5、
図6に示すように、係合ピン部9がハートカム7と係合し、ロックピン10を介してイジェクタ5とハートカム7とが互いに係合し、イジェクタ5の移動が規制され、イジェクタ5をロック状態とする。
【0046】
その際、係合ピン部9は、係合凹部28に嵌合することによって係合凹部28の内側に配置された補強当接部30に当接し、係合ピン部9からハートカム7が受ける負荷に対し強度の高い金属製の補強金具27で対抗するようになっている。
【0047】
それによってハートカム7の破損が防止され、安定した係合状態を維持し、高温下に晒されたことによる樹脂強度の低下や落下衝撃等により係合ピン部9からハートカム7に対して作用する過度な負荷にも対抗できるようになっている。
【0048】
また、補強当接部30に当接凹部33を備え、係合ピン部9が当接凹部33に嵌合することによって、係合ピン部9からハートカム7部に作用する負荷がカード挿抜方向に対し斜め方向に作用するような場合であっても、補強当接部30から係合ピン部9が逸脱するのを防止し、ハートカム7を保護することができる。
【0049】
更に、当接凹部33に係合ピン部9が嵌り込むことにより、補強当接30の係合ピン部9に対する接触面積が多くなり、係合ピン部9より補強当接部30が受ける負荷が分散される。
【0050】
一方、係止解除のために再度のカード押し込み動作、即ちプッシュアウト動作すると、段部54bによって往路部50側への移動が規制され、係合ピン部9が末端停止位置dに移動し、その位置dで押し込み操作力を解除することにより、段部54cによって係合凹部28側への移動が規制され、イジェクタ5が押し出しバネ6に押圧されて移動し、係合ピン部9が復路部51及び往路復路共通部53を通って原点位置aに復帰する。
【0051】
尚、補強金具の態様は、上述の実施例に限定されず、例えば、
図7、
図8に示すように、係合凹部28の内側面部に表面が露出する金属板からなる鉛直板部60を備え、鉛直板部60の表面を補強当接部とした補強金具61であってもよい。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
この補強金具61は、ハウジング用部材24の底板部26の一方の端縁より延出した延出部63と、延出部63の端縁より鉛直上向きに折り曲げた形状の鉛直板部60とを備え、インサート成形によりハウジング用部材24をハウジング本体11に組み込むことにより、鉛直板部60が係合凹部28の内側に露出した状態でハートカム7に埋設されるようになっている。
【0053】
また、この鉛直板部60には、プレス加工により板材を板厚方向に膨出させることによって縦向き溝状の凹部64が形成され、この凹部64を当接凹部として係合ピン部9を嵌合させた状態に当接させるようになっている。
【0054】
また、補強金具70は、
図9、
図10に示すように、金属製板材をもって構成し、ハートカム7に縦向き且つ板幅方向をカード挿抜方向に向けて埋設させ、板材側縁を補強当接部71としたものであってもよい。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
更に、上述の実施例では、補強金具27をハウジング用部材24と一体に備えた例について説明したが、補強金具を単独で備えるようにしたものであってもよい。
【0056】
また、上述の実施例では、ハートカム7をハウジング3に備えた例について説明したが、イジェクタ5を絶縁性合成樹脂により形成し、その表面部にハートカム7及びピンガイド溝8を備え、且つ、補強金具27を一体成形によりハートカム7に組み込むようにしてもよい。
【0057】
また、上述の実施例では、マイクロSDカード等のカードを直接カード挿入部に挿入するようにした例について説明したが、カードの態様は上述の実施例に限定されず、各仕様のカードに適用することができ、また、カードには、カードそのものの他、カードトレイ、カードアダプタ等を含み、これらにも適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
A カード
1 カードコネクタ
2 カード挿入部
3 ハウジング
4 コンタクト
5 イジェクタ
6 押し出しバネ
7 ハートカム
8 ピンガイド溝
9 係合ピン部
10 ロックピン
11 ハウジング本体
12 シールドカバー
21 底板部
22、23 側壁部
24 ハウジング用部材
25 イジェクタガイド部
26 底板部
27 補強金具
28 係合凹部
30 補強当接部
31 立ち上がり部
32 水平板部
33 当接凹部
40 回動軸部
41 軸支孔
42 押し下げバネ
50 往路部
51 復路部
52 ロック部
53 往復共通部
54a〜54d 段部
60 鉛直板部
61 補強金具
63 延出部
64 凹部
70 補強金具
71 補強当接部