(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-60892(P2015-60892A)
(43)【公開日】2015年3月30日
(54)【発明の名称】ESD保護回路
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20150303BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20150303BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20150303BHJP
H03K 17/08 20060101ALI20150303BHJP
【FI】
H01L27/04 H
H01L27/06 311A
H01L27/06 311B
H01L27/06 311C
H03K17/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-192388(P2013-192388)
(22)【出願日】2013年9月17日
(71)【出願人】
【識別番号】591128453
【氏名又は名称】株式会社メガチップス
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(72)【発明者】
【氏名】小沢 忠史
【テーマコード(参考)】
5F038
5F048
5J055
【Fターム(参考)】
5F038BH02
5F038BH03
5F038BH04
5F038BH07
5F038BH13
5F038BH15
5F038EZ20
5F048AA02
5F048CC01
5F048CC06
5F048CC08
5F048CC12
5J055AX26
5J055AX27
5J055AX64
5J055BX24
5J055DX12
5J055DX22
5J055EX07
5J055EX21
5J055EX24
5J055EY01
5J055EY10
5J055EY12
5J055EY21
5J055FX05
5J055FX13
5J055FX32
5J055FX33
5J055GX01
(57)【要約】
【課題】電源投入時に、電源電圧VDDが急峻なスルーレートで電源ノードに供給された場合であっても、誤動作しないESD保護回路を提供する。
【解決手段】ESD保護回路は、過電圧が電源ノードに印加されたことを検出する過電圧検出回路と、過電圧が電源ノードに印加されたことが検出された場合に、電源ノードとグランドノードとを接続して電源ノードの電圧をクランプするクランプ回路と、電源ノードの電圧を降下させて、通常動作時の電源電圧が電源ノードに供給された電源投入時に過電圧検出回路が動作せず、かつ、過電圧が電源ノードに印加されたESDイベント発生時に過電圧検出回路が動作する所定の調整電圧を生成し、過電圧検出回路の電源電圧として供給する電圧調整回路と、過電圧が電源ノードに印加された場合に、過電圧検出回路が調整電圧で動作するために下降する検出信号の電圧が、過電圧と等しくなるように補償する電圧補償回路とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常動作時の電源電圧よりも高いESDイベント発生時の過電圧が電源ノードに印加されたことを検出して検出信号を出力する過電圧検出回路と、
前記検出信号に応じて、前記過電圧が前記電源ノードに印加されたことが検出された場合に、前記電源ノードとグランドノードとを接続して前記電源ノードの電圧をクランプするクランプ回路と、
前記電源ノードの電圧を降下させて、前記通常動作時の電源電圧が前記電源ノードに供給された電源投入時に前記過電圧検出回路が動作せず、かつ、前記過電圧が前記電源ノードに印加されたESDイベント発生時に前記過電圧検出回路が動作する所定の調整電圧を生成し、前記過電圧検出回路の電源電圧として供給する電圧調整回路と、
前記過電圧が前記電源ノードに印加された場合に、前記過電圧検出回路が前記調整電圧で動作するために下降する前記検出信号の電圧が、前記過電圧と等しくなるように補償する電圧補償回路とを備えることを特徴とするESD保護回路。
【請求項2】
前記過電圧検出回路は、
前記電源ノードと前記グランドノードとの間に直列に接続された抵抗素子および容量素子を含み、前記抵抗素子と前記容量素子との間から信号を出力するRC時定数回路と、
前記調整電圧と前記グランドノードとの間に直列に接続されたP型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタを含み、前記RC時定数回路の出力信号を反転して前記検出信号として出力する第1のインバータとを備える請求項1に記載のESD保護回路。
【請求項3】
前記クランプ回路は、前記電源ノードと前記グランドノードとの間に接続され、前記検出信号がゲートに入力されたN型MOSトランジスタを備える請求項1または2に記載のESD保護回路。
【請求項4】
前記電圧調整回路は、前記電源ノードから、前記第1のインバータのP型MOSトランジスタの基板およびソースに向かって順方向に直列に接続された所定数のダイオードを備える請求項1〜3のいずれか1項に記載のESD保護回路。
【請求項5】
前記電圧調整回路は、前記電源ノードと前記第1のインバータのP型MOSトランジスタの基板およびソースとの間に直列に接続された所定数のダイオード接続されたP型MOSトランジスタを備える請求項1〜3のいずれか1項に記載のESD保護回路。
【請求項6】
前記電圧補償回路は、
前記電源ノードと前記グランドノードとの間の電圧で動作し、前記検出信号を反転出力する第2のインバータと、
前記電源ノードと前記第1のインバータを構成するP型MOSトランジスタの基板およびソースとの間に接続され、前記電源ノードが基板に接続され、前記第2のインバータの出力信号がゲートに入力されたP型MOSトランジスタとを備える請求項1〜5のいずれか1項に記載のESD保護回路。
【請求項7】
前記電圧補償回路は、
前記電源ノードと前記グランドノードとの間の電圧で動作し、前記検出信号を反転出力する第2のインバータと、
前記電源ノードと前記検出信号との間に接続され、前記電源ノードが基板に接続され、前記第2のインバータの出力信号がゲートに入力されたP型MOSトランジスタとを備える請求項1〜5のいずれか1項に記載のESD保護回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路の電源ノードに印加されるESD(静電気放電)イベント発生時の過電圧により内部回路が破壊されるのを保護するESD保護回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のESD保護回路の構成を表す一例の回路図である。同図に示すESD保護回路30は、特許文献1の
図1に記載されたアクティブクランプ型の電源ESD保護回路であり、過電圧検出回路12と、クランプ回路14とによって構成されている。
【0003】
過電圧検出回路12は、通常動作時の電源電圧VDD、例えば、1.1Vよりも高い、ESDイベント発生時の過電圧、例えば、3Vが電源ノードに印加されたことを検出して検出信号を出力するものであり、抵抗素子Rおよび容量素子CからなるRC時定数回路20と、PMOS(P型MOSトランジスタ)MP1およびNMOS(N型MOSトランジスタ)MN1からなるインバータ22とによって構成されている。
【0004】
RC時定数回路20の抵抗素子Rおよび容量素子Cは、電源ノードと、通常動作時にグランド電圧VSSが供給されるグランドノードとの間に直列に接続されている。
【0005】
インバータ22のPMOSMP1およびNMOSMN1は、電源ノードとグランドノードとの間に直列に接続され、そのゲートには、抵抗素子Rと容量素子Cとの間の内部ノードn1から出力されるRC時定数回路20の出力信号n1が入力されている。インバータ22は、RC時定数回路20の出力信号n1を反転して、前述の検出信号として出力する。
【0006】
クランプ回路14は、検出信号に応じて、過電圧が電源ノードに印加されたことが検出された場合に、電源ノードとグランドノードとを接続して、電源ノードに印加された過電圧による大電流をグランドノードに流して電源ノードの電圧をクランプし、電源電圧VDDで動作する半導体集積回路の内部回路を保護するものであり、NMOSMN0によって構成されている。
NMOSMN0は、電源ノードとグランドノードとの間に接続され、そのゲートには、PMOSMP1とNMOSMN1との間の内部ノードn0から出力されるインバータ22の出力信号、つまり、検出信号n0が入力されている。
【0007】
次に、ESD保護回路30の動作を説明する。
【0008】
まず、通常動作時に、電源電圧VDDが電源ノードに供給されているとき、容量素子Cは電源電圧VDDに充電されている。そのため、RC時定数回路20の出力信号n1はハイレベル(H)、インバータ22のPMOSMP1はオフ、NMOSMN1はオンであり、検出信号n0はローレベル(L)、NMOSMN0はオフである。
従って、ESD保護回路30は、通常動作時には、電源電圧VDDで動作する内部回路の動作に何ら影響しない。
【0009】
一方、ESDイベント発生時に、過電圧が電源ノードに印加されたとき、電源ノードが急峻に立ち上がるのに対して、RC時定数回路20の出力信号n1は、RC時定数回路20の作用によって電源ノードよりも緩やかに立ち上がる。そのため、RC時定数回路20の出力信号n1は、抵抗素子Rを介して容量素子Cが過電圧に充電されるまでの間、つまり、RC時定数回路20の時定数RCに相当する時間、Lになり、検出信号n0は、時定数RCに相当する時間、Hになり、NMOSMN0がオンする。
従って、ESDイベント発生時には、電源ノードに印加された過電圧による大電流がNMOSMN0を介してグランドノードに流れ、電源ノードの電圧がクランプされることにより、電源電圧VDDで動作する内部回路を保護することができる。
【0010】
上記のように、従来のアクティブクランプ型の電源ESD保護回路30は、ESDイベント発生時に電源ノードに印加される過電圧の急峻な立ち上がりを想定して、RC時定数回路20によりトリガをかけ、ESD保護回路30を作動させる仕組みとなっている。
ところが、従来のESD保護回路30は、電源投入時に電源ノードに供給される電源電圧VDDが急峻に立ち上がったときにも、ESDイベント発生時と同様に動作し、電源ノードからNMOSMN0を介してグランドノードに大電流が流れる場合がある。
【0011】
次に、従来のESD保護回路30に対して、電源投入時のシミュレーションを行った結果について説明する。
【0012】
本シミュレーションは、
図7左上部に示すように、それぞれ、通常動作時の電源電圧VDDである1.1V、通常動作時の電源電圧VDDとESDイベント発生時の過電圧との間の電圧である2V、ESDイベント発生時に電源ノードに印加される過電圧の一例である3Vの3通りの設定電圧を、立ち上がり時間1nsで電源ノードに供給した場合(電源ノードの電圧を1nsで設定電圧まで上昇させた場合)に、同図右部に矢印で示すように、NMOSMN0に流れる電流を測定したものである。
【0013】
図8は、
図6に示すESD保護回路の、電源投入時のシミュレーション結果を表すグラフである。このグラフの縦軸は電流[A]、横軸は時間(μs)を表す。
このグラフに示すように、通常動作時の電源電圧VDDである1.1Vを立ち上がり時間1nsで電源ノードに供給した場合(VDD=1.1V(1.1V/ns))、NMOSMN0には電流が流れている。つまり、この場合、NMOSMN0は、電源投入直後から、RC時定数回路20の時定数RCに相当する時間、オン(ON)することが分かる。
【0014】
通常動作時の電源電圧VDDとESDイベント発生時の過電圧との間の電圧である2Vを立ち上がり時間1nsで電源ノードに供給した場合(VDD=2V(2V/ns))、ESDイベント発生時に電源ノードに印加される過電圧の一例である3Vを立ち上がり時間1nsで電源ノードに供給した場合(VDD=3V(3V/ns))も同様に、RC時定数回路20の時定数RCに相当する時間、オンすることが分かる。
【0015】
上記シミュレーション結果から、従来のESD保護回路30は、通常動作時の電源電圧VDDが急峻に電源ノードに供給された場合、ESDイベント発生時と同様に動作することが分かる。
【0016】
通常動作時の電源電圧VDDである1.1Vでも、電源電圧VDDの立ち上がりが急峻であれば、
図8のグラフから、600mAの電流が1μsオーダーの期間流れることが分かる。実際の半導体集積回路では、
図6に示すESD保護回路30が複数個搭載されるため、例えば、10個搭載されている場合には、6Aの電流が1μsオーダーの期間流れることになる。
従って、例えば、ホットプラグ対応デバイスのように、電源電圧VDDが電源投入時に急峻に立ち上がる場合には、デバイスに搭載されたESD保護回路30が電源投入時に誤作動し、電源駆動能力に対し過剰な大電流を流すことから、デバイスが正常に起動することができない場合がある。また、最悪の場合には電源が発振する場合もある。
【0017】
ここで、本発明に関連性のある先行技術文献として、特許文献1の他に特許文献2,3がある。
【0018】
特許文献2は、半導体集積回路において、静電気放電から内部回路を保護するESD保護回路に関するものである。
同文献には、電源とグランドとの間の電圧差を検出して第1の検出信号として出力し、第1の検出信号が、通常動作時の電源電圧とグランドとの間の第1の閾値電圧に到達した時点で電源とグランドとの間を導通させる保護回路において、第1の検出信号とグランドとの間の電圧差が、通常動作時の電源電圧よりも大きい第2の閾値電圧に到達したか否かを検出して第2の検出信号として出力し、第2の検出信号が第2の閾値電圧に到達した時点で第1の検出信号のレベルを制御するESD保護回路が記載されている。
【0019】
特許文献3は、ESDによる内部回路の破壊を防止するためのESDに関するものである。
同文献には、電源端子へのESDパルスの印加開始時から、電源の立ち上がり時間よりも短く設定された第1所定時間だけ第1ESDパルス検出信号を出力し、第1ESDパルス信号が出力され、かつ、電源端子へのESDパルスの印加が、第1所定時間よりも短く、かつ電源端子に印加されるスパイクノイズの印加時間よりも長く設定された第2所定時間だけ持続したときに、電源端子へのESDパルスの印加時間よりも長く設定された第3所定時間だけ第2ESDパルス検出信号を出力し、第1および第2ESDパルス検出信号が出力されていないときは、電源端子に印加されたESDパルスをGND端子に放電させるESD保護ドライバのゲートをGND端子に接続し、少なくとも一方が出力されているときはGND端子とは絶縁し、第2ESDパルス検出信号が出力されているときは、ESD保護ドライバのゲートを電源端子に接続し、出力されていないときは、ESD保護ドライバのゲートを電源端子とは絶縁するESD保護回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2012−253241号公報
【特許文献2】特開2010−50312号公報
【特許文献3】特開2012−195778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
特許文献2のESD保護回路は、本発明と全く同一の目的と効果を狙ったものであるが、電圧モニタ回路を使用するなど、本発明とは構成が全く異なるものである。また、本発明の方が特許文献2のESD保護回路よりも部品点数を抑えることができる。
【0022】
特許文献3のESD保護回路も、本発明と全く同じ目的のものであるが、電源電圧の変動時間に応じてESD保護ドライバのクランプMOSのゲートをコントロールしている点で、本発明のESD保護回路とは得られる効果が異なるものである。また、特許文献3のESD保護回路は、電圧変動の形状を期待して動作時間のウィンドウをコントロールする機構であるため、状況によっては誤動作する可能性がある。
【0023】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解消し、電源投入時に、電源電圧VDDが急峻なスルーレートで電源ノードに供給された場合であっても、誤動作しないESD保護回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために、本発明は、通常動作時の電源電圧よりも高いESDイベント発生時の過電圧が電源ノードに印加されたことを検出して検出信号を出力する過電圧検出回路と、
前記検出信号に応じて、前記過電圧が前記電源ノードに印加されたことが検出された場合に、前記電源ノードとグランドノードとを接続して前記電源ノードの電圧をクランプするクランプ回路と、
前記電源ノードの電圧を降下させて、前記通常動作時の電源電圧が前記電源ノードに供給された電源投入時に前記過電圧検出回路が動作せず、かつ、前記過電圧が前記電源ノードに印加されたESDイベント発生時に前記過電圧検出回路が動作する所定の調整電圧を生成し、前記過電圧検出回路の電源電圧として供給する電圧調整回路と、
前記過電圧が前記電源ノードに印加された場合に、前記過電圧検出回路が前記調整電圧で動作するために下降する前記検出信号の電圧が、前記過電圧と等しくなるように補償する電圧補償回路とを備えることを特徴とするESD保護回路を提供するものである。
【0025】
ここで、前記過電圧検出回路は、
前記電源ノードと前記グランドノードとの間に直列に接続された抵抗素子および容量素子を含み、前記抵抗素子と前記容量素子との間から信号を出力するRC時定数回路と、
前記調整電圧と前記グランドノードとの間に直列に接続されたP型MOSトランジスタおよびN型MOSトランジスタを含み、前記RC時定数回路の出力信号を反転して前記検出信号として出力する第1のインバータとを備えることが好ましい。
【0026】
また、前記クランプ回路は、前記電源ノードと前記グランドノードとの間に接続され、前記検出信号がゲートに入力されたN型MOSトランジスタを備えることが好ましい。
【0027】
また、前記電圧調整回路は、前記電源ノードから、前記第1のインバータのP型MOSトランジスタの基板およびソースに向かって順方向に直列に接続された所定数のダイオードを備えることが好ましい。
【0028】
また、前記電圧調整回路は、前記電源ノードと前記第1のインバータのP型MOSトランジスタの基板およびソースとの間に直列に接続された所定数のダイオード接続されたP型MOSトランジスタを備えることが好ましい。
【0029】
また、前記電圧補償回路は、
前記電源ノードと前記グランドノードとの間の電圧で動作し、前記検出信号を反転出力する第2のインバータと、
前記電源ノードと前記第1のインバータを構成するP型MOSトランジスタの基板およびソースとの間に接続され、前記電源ノードが基板に接続され、前記第2のインバータの出力信号がゲートに入力されたP型MOSトランジスタとを備えることが好ましい。
【0030】
また、前記電圧補償回路は、
前記電源ノードと前記グランドノードとの間の電圧で動作し、前記検出信号を反転出力する第2のインバータと、
前記電源ノードと前記検出信号との間に接続され、前記電源ノードが基板に接続され、前記第2のインバータの出力信号がゲートに入力されたP型MOSトランジスタとを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明のESD保護回路は、過電圧検出回路が調整電圧で動作するため、通常動作時の電源電圧では、いかなるスルーレートであっても誤動作することはなく、ESDイベント発生時には確実に動作する。一方で、本発明のESD保護回路は、過電圧が電源ノードに印加された場合に、検出回路の電圧が過電圧と等しくなるように補償されるため、クランプ回路の駆動能力を従来のESD保護回路のクランプ回路と同等にまで高めることができる。
また、本発明のESD保護回路にはデッド・ウィンドウの懸念がない、リークコントロールがしやすい、電圧調整回路を構成するダイオードのサイズは小さいため、面積インパクトが小さい等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明のESD保護回路の構成を表す一実施形態の回路図である。
【
図2】
図1に示すESD保護回路の、電源投入時の様子を表す概念図である。
【
図3】
図1に示すESD保護回路の、電源投入時のシミュレーション結果を表すグラフである。
【
図4】本発明のESD保護回路の構成を表す別の実施形態の回路図である。
【
図5】
図1および
図4に示す電圧調整回路の別の実施形態の回路図である。
【
図6】従来のESD保護回路の構成を表す一例の回路図である。
【
図7】
図6に示すESD保護回路の、電源投入時の様子を表す概念図である。
【
図8】
図6に示すESD保護回路の、電源投入時のシミュレーション結果を表すグラフである。
【
図9】従来の電圧トリガ型のESD保護回路の構成を表す一例の回路図である。
【
図10】
図9に示すESD保護回路を構成するGGNMOSの電流電圧特性を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のESD保護回路を詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明のESD保護回路の構成を表す一実施形態の回路図である。同図に示すESD保護回路10は、
図6に示す従来のESD保護回路30に対して本発明を適用したものであり、さらに、電圧調整回路16と、電圧補償回路18とを備えている。
つまり、ESD保護回路10は、過電圧検出回路12と、クランプ回路14と、電圧調整回路16と、電圧補償回路18とによって構成されている。
【0035】
なお、過電圧検出回路12およびクランプ回路14の構成は、従来のESD保護回路30と同じであるから、その詳細な説明は省略する。
【0036】
つまり、過電圧検出回路12は、通常動作時の電源電圧VDD、例えば、1.1Vよりも高い、ESDイベント発生時の過電圧、例えば、3Vが電源ノードに印加されたことを検出して検出信号n0を出力するものであり、抵抗素子Rおよび容量素子CからなるRC時定数回路20と、PMOSMP1およびNMOSMN1からなるインバータ22とによって構成されている。
【0037】
クランプ回路14は、検出信号n0に応じて、過電圧が電源ノードに印加されたことが検出された場合に、電源ノードとグランドノードとを接続して、電源ノードに印加された過電圧による大電流をグランドノードに流して電源ノードの電圧をクランプし、電源電圧VDDで動作する内部回路を保護するものであり、NMOSMN0によって構成されている。
【0038】
続いて、電圧調整回路16は、電源ノードの電圧を降下させて、通常動作時の電源電圧VDDが電源ノードに供給された電源投入時にPMOSMP1が動作(オン)せず、かつ、過電圧が電源ノードに印加されたESDイベント発生時にPMOSMP1が動作(オン)する調整電圧を生成し、インバータ22の電源電圧として、PMOSMP1の基板およびソースに供給するものである。
電圧調整回路16は、直列に接続されたダイオードDによって構成されている。
ダイオードDは、電源ノードから、インバータ22のPMOSMP1の基板およびソースに向かって順方向に接続されている。
【0039】
電圧調整回路16による降下電圧は、電源電圧VDD、PMOSMP1のしきい値電圧Vth、ESDイベント発生時に保護を開始させようとする過電圧Vesd等に応じて適宜決定されるべきものであり、ダイオードDの段数に応じて適宜変更することができる。
調整電圧が、しきい値電圧Vthよりも低くなれば、PMOSMP1は動作しない。従って、降下電圧は、(VDD−Vth)よりも大きくする必要がある。しかし、降下電圧を大きくしすぎると、過電圧Vesdが電源ノードに印加された場合にもPMOSMP1が動作しなくなる。従って、降下電圧は、(Vesd−Vth)よりも小さくする必要がある。
例えば、電源電圧VDD=1.1V、しきい値電圧Vth=0.6V、過電圧Vesd=3Vの場合、降下電圧は、(VDD−Vth)=1.1−0.6=0.5Vよりも大きく、かつ、(Vesd−Vth)=3−0.6=2.4Vよりも小さくする。
【0040】
続いて、電圧補償回路18は、ESDイベント発生時の過電圧が電源ノードに印加された場合に、インバータ22が調整電圧で動作するために下降する検出信号n0の電圧が、ESDイベント発生時の過電圧と等しくなるように補償するものであり、インバータINVと、PMOSMP2とによって構成されている。
【0041】
インバータINVは、電源ノードとグランドノードとの間の電圧で動作するものであり、内部ノードn0に出力されるインバータ22の出力信号、つまり、検出信号n0が入力されている。インバータINVは、検出信号n0を反転出力する。
【0042】
PMOSMP2は、電源ノードとPMOSMP1の基板およびソースとの間に接続されている。PMOSMP2の基板は電源ノードに接続され、そのゲートには、内部ノードn2に出力されるインバータINVの出力信号、つまり、検出信号n0の反転信号n2が入力されている。
【0043】
次に、ESD保護回路10の動作を説明する。
【0044】
まず、電源投入時に、電源電圧VDDが電源ノードに供給されたとき、電源ノードが急峻に立ち上がるのに対して、RC時定数回路20の出力信号n1は、RC時定数回路20の作用によって電源ノードよりも緩やかに立ち上がる。そのため、RC時定数回路20の出力信号n1は、RC時定数回路20の時定数RCに相当する時間、Lになるが、PMOSMP1の基板およびソースには、電圧調整回路16から調整電圧が供給されるため、PMOSMP1はオンしない。つまり、検出信号n0はLであり、NMOSMN0はオフ、インバータINVの出力信号n2はH、PMOSMP2はオフである。
従って、電源投入時に、電源ノードに電源電圧VDDが供給されたとき、NMOSMN0がオンすることはない、つまり、ESD保護回路10は動作しない。
【0045】
続いて、時定数RCに相当する時間が経過した後の通常動作時に、電源電圧VDDが電源ノードに供給されているとき、容量素子Cは電源電圧VDDに充電されている。そのため、内部ノードn1はH、PMOSMP1はオフ、NMOSMN1はオンであり、検出信号n0はL、NMOSMN0はオフ、インバータINVの出力信号n2はH、PMOSMP2はオフである。
【0046】
一方、ESDイベント発生時に、過電圧が電源ノードに印加されたとき、電源ノードが急峻に立ち上がるのに対して、RC時定数回路20の出力信号n1は、RC時定数回路20の作用によって電源ノードよりも緩やかに立ち上がる。そのため、RC時定数回路20の出力信号n1は、RC時定数回路20の時定数RCに相当する時間、Lになる。PMOSMP1の基板およびソースに供給される調整電圧は、PMOSPM1が動作するのに十分高い電圧であるから、PMOSMP1はオン、NMOSMN1はオフとなり、検出信号n0は、時定数RCに相当する時間、Hになり、NMOSMN0はオンする。
従って、ESDイベント発生時には、電源ノードに印加された過電圧による大電流がNMOSMN0を介してグランドノードに流れ、電源ノードの電圧がクランプされることにより、電源電圧VDDで動作する内部回路を保護することができる。
また、検出信号n0がHになると、インバータINVの出力信号n2はLとなり、PMOSMP2がオンする。そのため、PMOSMP1の基板およびソースには、PMOSMP2を介して過電圧が供給され、検出信号n0のHは過電圧と等しい電圧となる。
従って、NMOSMN0の駆動能力を従来のESD保護回路30のNMOSMN0と同等にまで高めることができる。
【0047】
次に、本実施形態のESD保護回路10に対して、電源投入時のシミュレーションを行った結果について説明する。
【0048】
本シミュレーションは、
図2左上部に示すように、それぞれ、通常動作時の電源電圧VDDである1.1V、通常動作時の電源電圧VDDとESDイベント発生時の過電圧との間の電圧である2V、ESDイベント発生時に電源ノードに印加される過電圧の一例である3Vの3通りの設定電圧を、立ち上がり時間1nsで電源ノードに供給した場合(電源ノードの電圧を1nsで設定電圧まで上昇させた場合)に、同図右部に矢印で示すように、NMOSMN0に流れる電流を測定したものである。
【0049】
図3は、
図1に示すESD保護回路の、電源投入時のシミュレーション結果を表すグラフである。このグラフの縦軸は電流[A]、横軸は時間(μs)を表す。
このグラフに示すように、通常動作時の電源電圧VDDである1.1Vを立ち上がり時間1nsで電源ノードに供給した場合(VDD=1.1V(1.1V/ns))、NMOSMN0には電流が流れていない。つまり、この場合、NMOSMN0は、オフ(OFF)したままの状態であることが分かる。
【0050】
通常動作時の電源電圧VDDとESDイベント発生時の過電圧との間の電圧である2Vを立ち上がり時間1nsで電源ノードに供給した場合(VDD=2V(2V/ns))、電源投入直後に、NMOSMN0にわずかな電流が流れるものの、その後、NMOSMN0には電流は流れていない。つまり、この場合、NMOSMN0は、電源投入直後の所定の時間だけオン(ON)し、その後、オフすることが分かる。
【0051】
ESDイベント発生時に電源ノードに印加される過電圧の一例である3Vを立ち上がり時間1nsで電源ノードに供給した場合(VDD=3V(3V/ns))、NMOSMN0には、電源投入直後から所定の一定時間だけ、従来のESD保護回路30と同様に大電流が流れている。つまり、この場合、NMOSMN0は、電源投入直後から、RC時定数回路20の時定数RCに相当する時間、オンすることが分かる。
従って、本実施形態のESD保護回路10は、過電圧がESDイベント発生時に電源ノードに印加された場合、従来のESD保護回路30と同様に動作する。また、NMOSMN0のオン時の電流波形の立ち上がりが急峻なことから、検出信号n0→インバータINV→内部ノードn2→PMOSMP2のフィードバック経路の遅延は、十分小さいということが分かる。
【0052】
上記シミュレーション結果から、本実施形態のESD保護回路10は、過電圧検出回路12が調整電圧で動作するため、通常動作時の電源電圧VDDでは、いかなるスルーレートであっても誤動作することはなく、ESDイベント発生時には確実に動作することが分かる。
また、ESD保護回路10にはデッド・ウィンドウの懸念がない、リークコントロールがしやすい、電圧調整回路16を構成するダイオードDのサイズは小さいため、面積インパクトが小さい等の利点がある。
【0053】
以下、デッド・ウィンドウについて簡単に説明する。
従来のESD保護回路として、
図9に示すように、電圧トリガ型のESD保護回路が知られている。同図に示すESD保護回路は、GGNMOS(Gate Grounded NMOS)と呼ばれるNMOSによって構成されている。
GGNMOSは、電源ノードとグランドノードとの間に接続され、ゲートがグランドノードに接続されている。
【0054】
図10は、
図9に示すESD保護回路を構成するGGNMOSの電流電圧特性を表すグラフである。同図に示すグラフの縦軸は、GGNMOSのソース・ドレイン電流(ESD電流)(I)、横軸は、GGNMOSのソース・ドレイン電圧(電源電圧)(V)を表す。
このグラフに示すように、GGNMOSは、ESDイベント発生時にオフしており、電源ノードに印加された過電圧による電流が増加するに従って電源ノードの電圧が第1の所定の電圧Vt0から上昇する。そして、過電圧による電流が所定の電流値It1になると、電源ノードの電圧がGGNMOSの寄生バイポーラトランジスタのターンオン電圧Vt1に到達して、GGNMOSの寄生バイポーラトランジスタがオンする。これにより、電源ノードとグランドノートとがGGNMOSを介して接続され、電源ノードに印加された過電圧による電流が、GGNMOSを介してグランドノードに流れて電源ノードの電圧がクランプされる。
【0055】
しかし、電圧トリガ型のGGNMOSには、ESDイベント発生時に、GGNMOSの寄生バイポーラトランジスタがターンオンしない程度の電流が電源ノードに流入した場合、電源ノードの電圧が、GGNMOSの寄生バイポーラトランジスタのターンオン電圧Vt1まで上昇せず、トリガがかからずに電源電圧が高電圧となったままの状態が続くと、電源電圧で動作する内部回路の破壊に至るリスクがある。すなわち、電源電圧が、絶対最大定格より高いものの、ターンオン電圧Vt1よりは低く、ESD電流も、電流値It1より低い場合、寄生バイポーラトランジスタがオンしない状態で、電圧がかかり続ける、デッド・ウィンドウという領域があり、GGNMOSの構造上の問題である。このように、内部回路(被保護素子)が破壊されるというリスクがあると共に、GGNMOSも破壊されるリスクがある。
【0056】
本発明のESD保護回路の各構成要素は、図示例の構成のものに限定されない。
例えば、PMOSMP2は、
図4に示すように、電源ノードと検出信号n0との間に接続してもよい。この場合も同様に、ESDイベント発生時に、検出信号n0が、時定数RCに相当する時間、Hになったときに、検出信号n0の電圧を従来のESD保護回路30と同等の電圧まで高めることができ、NMOSMN0の駆動能力を従来のESD保護回路30のNMOSMN0と同等にまで高めることができる。
【0057】
また、電圧調整回路は、ダイオードDの代わりに、
図5に示すように、所定数のダイオード接続されたPMOSを使用してもよい。同図に示す電圧調整回路は、電源ノードとPMOSMP1の基板およびソースとの間に直列に接続された3つのPMOSによって構成されている。全てのPMOSの基板は電源ノードに接続され、各々のPMOSのゲートは、自分自身のドレインに接続されている。
【0058】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0059】
10、30 ESD保護回路
12 過電圧検出回路
14 クランプ回路
16 電圧調整回路
18 電圧補償回路
20 RC時定数回路
22、INV インバータ
MP1、MP2 PMOS
MN0、MN1、GGNMOS NMOS
R 抵抗素子
C 容量素子
D ダイオード
VDD 電源電圧
VSS グランド電圧