【解決手段】本発明は、PLL回路により生成されるクロック信号に対して所定の周波数変調を行う変調制御回路を備えるクロック生成回路である。PLL回路は、基準信号を生成する第1発振回路と、該基準信号を第1分周比に従って分周する第1分周回路と、与えられる位相差に従って所定の周波数のクロック信号を生成する第2発振回路と、変調制御回路により制御される第2分周比に従って、該クロック信号の周波数を分周する第2分周回路と、第1及び第2分周回路により分周された信号どうしの位相差を検出する位相比較回路とを備える。第2発振回路は、該位相差に従ってクロック信号の周波数を可変制御するように構成される。そして、変調制御回路は、基準周波数を中心に低周波領域と高周波領域とでクロック信号のスペクトラム拡散幅が異なるように第2分周比を制御する。
所定の周波数のクロック信号を生成するPLL回路と、前記PLL回路により生成されるクロック信号に対して所定の周波数変調を行う変調制御回路と、を備えるクロック生成回路であって、
前記PLL回路は、
所定の基準周波数の基準信号を生成する第1の発振回路と、
前記第1の発振回路により生成された基準信号を第1の分周比に従って分周する第1の分周回路と、
前記所定の周波数のクロック信号を生成する第2の発振回路と、
前記変調制御回路により制御される第2の分周比に従って、前記第2の発振回路により生成されたクロック信号の周波数を分周する第2の分周回路と、
前記第1の分周回路により分周された信号の位相と前記第2の分周回路により分周された信号の位相とを比較して位相差を検出する位相比較回路と、を備え、
前記第2の発振回路は、前記位相比較回路により検出された位相差に従って前記クロック信号の周波数を可変制御するように構成され、
前記変調制御回路は、
前記基準周波数を中心にした低周波領域と高周波領域とで前記クロック信号のスペクトラム拡散幅が異なるように前記第2の分周比を制御して、前記クロック信号に対して所定の周波数変調を行う、
クロック生成回路。
【背景技術】
【0002】
クロック生成回路は、マイクロプロセッサ等の論理回路を含む電子デバイスの動作に必要なクロック信号(以下、「クロック」という。)を生成する回路であり、典型的には、PLL回路を含んで構成される。電子デバイスの高速化への要求に基づくクロック信号の高周波数化は、LSI自体やその周辺回路、他の電子デバイス等に対して電磁妨害(EMI:Electromagnetic Interference)の影響を与えることから、EMIを効果的に低減するSSCG(Spread Spectrum Clock Generator)技術の重要性は高まっている。
【0003】
SSCG技術は、スペクトラム拡散機能を付加したクロック生成技術である。スペクトラム拡散機能を有するクロック生成回路としては、典型的には、PLL回路を用いたアナログ方式、及び遅延回路を用いたデジタル方式が知られている。具体的には、SSCG技術は、電子デバイス等が放射するEMIのエネルギーのスペクトルが特定の周波数帯域に集中しないように、クロックの周波数を変調し、これにより、EMIのエネルギーを所定の周波数帯域に分散し、そのピーク値を抑圧することができる。
【0004】
例えば、下記特許文献1は、発信器によって生成された基準周波数信号に対して、Hershey−Kissと呼ばれる形状の変調プロファイルを用いて周波数変調(スペクトラム拡散)を行うことにより、低減されたEMIスペクトル成分を持つクロック信号を生成するクロック回路を開示する。
【0005】
このような変調プロファイルを用いる場合、Hershey−Kissを構成する特性テーブルをROM等のメモリに格納する必要があるため、回路規模が大きくなる傾向にある。従って、回路規模の増大を避けるため、Hershey−Kiss変調プロファイルを用いる代わりに、三角波の変調プロファイルを用いてスペクトラム拡散を行うクロック生成回路も提案されている。
【0006】
例えば、下記特許文献2は、基準信号と出力発振信号を分周したフィードバック信号との位相差を検出して電圧制御発振器(VCO)の発振周波数を制御するPLL回路を備え、出力発振信号の周波数を所定の周期で変調する機能を有するクロック生成回路を内蔵した半導体集積回路を開示する。具体的には、特許文献2では、基準信号を分周する分周回路又はフィードバックのため出力発振信号を分周する分周回路のいずれか一方の分周回路がカウンタ回路で構成され、出力発振信号の変調周期を変更するように、該カウンタ回路をカウント動作させるとともに、該カウンタ回路の出力に基づいて出力発振信号のスプレッド幅を変更させるようにフィードバック経路上の分周回路の分周比を変化させる論理回路が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子デバイスの製品化に当たっては、EMIノイズ試験において認証を受ける必要がある。EMIノイズ試験では、供試装置である電子デバイスから空間に放射されたEMIの電界強度が測定され、そのピーク値が基準値以下であるか否かが判定される。電界強度は、一般に、信号の電圧振幅が同じである場合、周波数が高いほど大きくなる。例えば、ディファレンシャルモード(ノーマルモード)ノイズ及びコモンモードノイズの電界強度Ed及びEcは、それぞれ次のように近似される。
【数1】
【数2】
ただし、Kは定数、Iは電流、fは周波数、Sは電流ループ面積、Lは配線長、rはアンテナまでの距離、である。
【0009】
従って、スペクトラム拡散機能を有するクロック回路の出力信号の電圧(又は電力)の周波数スペクトルが基準周波数を中心にして対称形である場合、放射された電界強度のスペクトルは、低周波領域に比べて高周波領域の方が強くなる。即ち、
図12に示すように、電界強度スペクトルでは、スペクトラム拡散による高周波領域におけるエッジの低減量は、電圧スペクトルのそれに比べて小さくなり、低周波領域のエッジの低減量は、電圧スペクトルのそれに比べて大きくなってしまう。
【0010】
一方、電界強度スペクトルにおけるEMIのピークを低減するために、ピーク周波数偏差を増加させることにより、即ち、スペクトラム拡散の周波数幅を拡げることにより対処することができると考えられる。しかしながら、上記従来のSSCG技術では、対称形の変調プロファイルを用いていたため、周波数偏差は高調波領域も低周波領域も等しく増加されることとなる。従って、EMIノイズ試験における基準値に対して比較的余裕のある低周波領域においても必要以上に周波数偏差が増加していた。かかる周波数偏差の増加は、回路設計上、論理回路素子数の増加を招き、結果的に、LSIの回路規模の増大を招くという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、EMIをより効果的に低減することを可能にするスペクトラム拡散機能を有するクロック生成回路及びこれを用いたクロック生成方法を提供することを目的とする。
【0012】
より具体的には、本発明は、EMIノイズ試験における電界強度スペクトルの特性を考慮した、効果的なスペクトラム拡散のための新たな変調プロファイルを用いたクロック生成回路及びこれを用いたクロック生成方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、クロック生成回路を含む論理回路素子数の増大を抑制しつつ、EMIをより効果的に低減することを可能にしたクロック生成回路及びこれを用いたクロック生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一の態様に従う本発明は、所定の周波数のクロック信号を生成するPLL回路と、前記PLL回路により生成されるクロック信号に対して所定の周波数変調を行う変調制御回路と、を備えるクロック生成回路である。前記PLL回路は、所定の基準周波数の基準信号を生成する第1の発振回路と、前記第1の発振回路により生成された基準信号を第1の分周比に従って分周する第1の分周回路と、前記所定の周波数のクロック信号を生成する第2の発振回路と、前記変調制御回路により制御される第2の分周比に従って、前記第2の発振回路により生成されたクロック信号の周波数を分周する第2の分周回路と、前記第1の分周回路により分周された信号の位相と前記第2の分周回路により分周された信号の位相とを比較して位相差を検出する位相比較回路と、を備える。また、前記第2の発振回路は、前記位相比較回路により検出された位相差に従って前記クロック信号の周波数を可変制御するように構成される。そして、前記変調制御回路は、前記基準周波数を中心にした低周波領域と高周波領域とで前記クロック信号のスペクトラム拡散幅が異なるように前記第2の分周比を制御して、前記クロック信号に対して所定の周波数変調を行うように構成される。
【0015】
前記変調制御回路は、前記クロック信号に基づいてカウントすることにより得られるカウント値を出力するカウンタ回路と、前記カウンタ回路により出力されるカウント値に基づいて、各変調区間における前記第2の分周比を制御する分周比制御回路と、を備える。
【0016】
また、例えば、前記分周比制御回路は、前記カウンタ回路によるカウント値に従う制御信号に従って、前記第2の分周比を増加させるか減少させるかを決定する符号付与回路を含んで構成される。そして、前記分周比制御回路は、第1の変調期間において、前記符号付与回路によって前記第2の分周比を増加させると決定される場合に、所定の分周変化量に調整量を加算した値に従って、前記第2の分周比を増加させていく一方、前記符号付与回路によって前記第2の分周比を減少させると決定される場合に、前記所定の分周変化量に前記調整量を加算した値に従って、前記第2の分周比を減少させていき、第2の変調期間において、前記符号付与回路によって前記第2の分周比を減少させると決定される場合に、所定の分周変化量に従って、前記第2の分周比を減少させていく一方、前記符号付与回路によって前記第2の分周比を増加させると決定される場合に、前記所定の分周変化量に従って、前記第2の分周比を増加させていき、前記第1の変調期間と前記第2の変調期間とを交互に繰り返すように制御する。
【0017】
また、例えば、前記カウンタ回路は、前記カウント値に基づいて、カウントアップ又はカウントダウンのいずれかを示す信号を出力する。また、前記分周比制御回路は、第1の変調期間において、前記カウントアップを示す信号である場合に、所定の分周変化量に調整量を加算した値に従って、前記第2の分周比を増加させていく一方、前記カウントダウンを示す信号である場合に、前記所定の分周変化量に前記調整量を加算した値に従って、前記第2の分周比を減少させていき、第2の変調期間において、前記カウントダウンを示す信号である場合に、所定の分周変化量に従って、前記第2の分周比を減少させていく一方、前記カウントアップを示す信号である場合に、前記所定の分周変化量に従って、前記第2の分周比を増加させていき、前記第1の変調期間と前記第2の変調期間とを交互に繰り返すように制御する。
【0018】
別の態様に従う本発明は、PLL回路により生成される所定の周波数のクロック信号に対して所定の周波数変調を行うクロック生成回路におけるクロック生成方法である。かかるクロック生成方法は、第1の発振回路により所定の基準周波数の基準信号を生成することと、第1の分周回路により前記生成された基準信号を第1の分周比に従って分周することと、第2の発振回路により前記所定の周波数のクロック信号を生成することと、前記変調制御回路により制御される第2の分周比に従って、前記第2の発振回路により生成されたクロック信号の周波数を分周することと、位相検出回路により前記第1の分周回路により分周された信号の位相と前記第2の分周回路により分周された信号の位相とを比較して位相差を検出することと、を含み、さらに、前記第2の発振回路により、前記検出された位相差に従って、前記クロック信号の周波数が可変制御される。そして、前記変調制御回路により、前記基準周波数を中心にした低周波領域と高周波領域とで前記クロック信号のスペクトラム拡散幅が異なるように前記第2の分周比が制御され、前記クロック信号に対して所定の周波数変調が行われる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、論理回路素子数の増加を招くことなく、EMIをより効果的に低減することができるクロック生成回路を提供することができるようになり、ひいては高速化への要求を満たしつつ、回路規模の増大を抑制したLSIを提供することができるようになる。
【0020】
本発明の他の技術的特徴、目的、及び作用効果乃至は利点は、添付した図面を参照して説明される以下の実施形態により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、基準周波数に対して高周波領域と低周波領域とで周波数偏差を非対称にした変調プロファイルを用いてスペクトル拡散を行うSSCG技術を開示する。以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
本実施形態は、基準となる三角波の変調プロファイルにおいて、高周波領域に対する周波数偏差を増加させることで、高周波領域と低周波領域とで周波数偏差を非対称にした変調プロファイルを生成し、かかる変調プロファイルに基づいてスペクトラム拡散を行うクロック生成回路及び該スペクトル拡散を行うための方法である。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るクロック生成回路の構成の一例を示すブロックダイアグラムである。即ち、同図に示すように、クロック生成回路100は、例えば、発振回路110、第1分周回路120、位相検出回路130、チャージポンプ140、ループフィルタ150、電圧制御発振回路(VCO)160、第2分周回路170、及び変調制御回路180を含む。同図から明らかなように、クロック生成回路100は、フィードバック制御を行うPLL回路を含んで構成される。
【0025】
発振回路110は、例えば水晶振動子等の振動子112を接続することによって構成される基準発振回路である。発振回路110は、振動子112に電圧を印加することによって該振動子112の固有振動数に応じた周波数を有する基準クロック信号を出力する。出力された基準クロック信号は、第1分周回路120に入力される。
【0026】
第1分周回路120は、発振回路110から入力される基準クロック信号の周波数を第1の分周比Rで分周する周波数分周回路である。分周比は、任意の値に設定することができる。第1分周回路120は、R分周した信号を位相検出回路130に出力する。
【0027】
位相検出回路130は、第1分周回路120から入力されるR分周した信号と、フィードバック制御により第2分周回路から入力される信号とを比較し、位相差(周波数差)を検出する回路である。位相検出回路130は、典型的には、入力される信号の立ち上がりエッジ同士の時間差を比較するが、これに限られるものではない。位相検出回路130は、検出した位相差をチャージポンプに出力する。
【0028】
チャージポンプ140は、位相検出回路130から入力される位相差に応じた電圧振幅値を有する信号を出力する回路である。また、ループフィルタ150は、フィードバック制御のためのフィルタ回路であり、チャージポンプ140から入力される信号を平滑化する。ループフィルタ150は、典型的には、ローパスフィルタが採用される。ループフィルタ150から出力される信号は、VCO160に入力される。
【0029】
VCO160は、入力される電圧値に応じて周波数を制御する発振回路である。即ち、VCO160は、ループフィルタ150から入力される信号の電圧値に応じて、該信号の周波数を変化させる。例えば、VCO160は、入力される電圧値が高くなれば、出力周波数も高くなるように設計される。VCO160から出力される信号が、クロック生成回路100が外部回路に提供するクロック信号CKとなる。
【0030】
第2分周回路170は、VCO160から出力されるクロック信号CKの周波数を第2の分周比Nで分周する周波数分周回路である。後述するように、第2の分周比Nは、変調制御回路180によって可変制御される。第2分周回路170によってN分周された信号は、位相検出回路130にフィードバック信号として入力される。
【0031】
変調制御回路180は、クロック生成回路100が出力するクロック信号CKについて、フィードバック制御しながら、スペクトラム拡散を行うための回路である。つまり、変調制御回路180は、第2分周回路の分周比をダイナミックに調整することによって、クロック信号CKに対する周波数変調を行う。変調制御回路180は、例えばHershey−Kiss形の変調プロファイルを構成する特性テーブルを記憶したROMを含んで構成することができるが、本実施形態では、カウント値に基づいて所定の変化量を分周比Nに重畳することによって例えば三角波形状の変調プロファイルを再現し、スペクトル拡散を行うように構成されている。
【0032】
より具体的には、変調制御回路180は、同図に示すように、例えば、カウンタ回路181、加算タイミング調整回路182、分周変化量設定レジスタ183a及び183b、第1スイッチ回路184、第1加算器185、符号付与回路186、第2スイッチ回路187、分周比保持レジスタ188、並びに第2加算器189を含んで構成される。図中明示していないが、例えば、加算タイミング調整回路182、分周変化量設定レジスタ183a及び183b、第1スイッチ回路184、第1加算器185、符号付与回路186、第2スイッチ回路187、分周比保持レジスタ188、並びに第2加算器189からなる機能ブロックは、カウンタ回路181によるカウント値及び制御信号に基づいて第2分周回路170に対する分周比を制御する分周比制御回路を構成する。
【0033】
カウンタ回路181は、VCO160から出力されるクロック信号CKの周期(即ち、パルス)をカウントアップ/カウントダウンし、そのカウント値を加算タイミング調整回路182に出力する。また、カウンタ回路181は、2種類の制御信号、即ち、現在のカウント動作がカウントアップ動作であるかカウントダウン動作であるかを示すU/D信号を符号付与回路186に出力するとともに、現在の変調が高周波変調区間であるか低周波変調区間であるかを示すH/L信号を第1スイッチ回路184に出力する(
図4参照)。変調区間は、カウント値を所定数(所定間隔)毎に区切ることによって決定される区間である。
【0034】
加算タイミング調整回路182は、予め決められた変調プロファイルの形状に基づいて、ON/OFF制御信号を出力するタイミングを調整する回路である。本実施形態では、ON/OFF制御信号を出力するタイミングは、加算タイミング調整回路182がカウンタ回路181によるカウント値をデコードした結果に依存し、変調プロファイルが例えば略三角波の形状となるよう、ON/OFF制御信号が一定のタイミングで出力されるように設定されている。一例として、加算タイミング調整回路182は、カウント値が偶数のときのタイミングでONを示す信号を出力し、奇数のときのタイミングでOFFを示す信号を出力する。
【0035】
なお、複数の変調プロファイルの形状の中から一の形状を選択したり、変調周期を変更することができるように、例えば、
図2Aに示すように、複数の加算タイミング調整回路182(本例では、加算タイミング調整回路182a〜182c)の中から、図示しない制御回路からのセレクタ信号SELにより、特定の加算タイミング調整回路182が選択される構成が採用されても良い。或いは、
図2Bに示すように、加算タイミング調整回路182は、デコード情報記憶部1821からデコード情報を読み込んで、該読み込んだデコード情報に従って動作するように構成されても良い。
【0036】
分周変化量設定レジスタ183aは、分周変化量Δnを記憶するレジスタであり、分周変化量設定レジスタ183bは、分周変化量Δnに対する調整量a(aは正の値)を記憶するレジスタである。
【0037】
第1スイッチ回路184は、カウンタ回路181によるによるH/L信号に従ってON動作又はOFF動作する。つまり、第1スイッチ回路184がON状態の場合、分周変化量設定レジスタ183bの値(即ち、調整量a)が、加算器185への入力となる。
【0038】
第1加算器185は、分周変化量設定レジスタ183aに記憶された分周変化量Δnに、分周変化量設定レジスタ183bからの入力を加算し、その結果を符号付与回路186に出力する。つまり、第1スイッチ回路184がOFF状態のとき、分周変化量設定レジスタ183bからの入力はゼロであるので、符号付与回路186へは分周変化量設定レジスタ183aに記憶された分周変化量Δnが出力される。一方、第1スイッチ回路184がON状態のとき、分周変化量設定レジスタ183bからの入力は調整量aであるので、符号付与回路186へは分周変化量ΔN0+調整量aが出力される。上述したように、本実施形態では、調整量aは、変調区間が高周波変調区間である場合に加算される。
【0039】
符号付与回路186は、カウンタ回路181によるU/D信号に従って、第1加算器185から出力される値に対して正の符号(“+”)又は負の符号(“−”)の付与を行う。正負いずれかの符号が付与された値は、第2スイッチ回路187へ出力される。つまり、現カウント時点が、周波数が上昇する区間にあれば、符号付与回路186は、第1加算器185から出力される値に対して正の符号を付与し、逆に、現カウント時点が、周波数が下降する区間にあれば、符号付与回路186は、第1加算器185から出力される値に対して負の符号が付与されることになる。
【0040】
第2スイッチ回路187は、加算タイミング調整回路182によるON/OFF信号に従ってON動作又はOFF動作する。つまり、第2スイッチ回路187がON状態の場合、符号付与回路186からの値が第2加算器189への入力となる。
【0041】
分周比保持レジスタ188は、後述の第2加算器189から第2分周回路170に供給された分周比NRef+ΔNiを記憶するレジスタである。記憶された分周比は次カウント動作においてNRef+ΔNi-1 として、第2加算器189の入力値になる。なお、分周比保持レジスタ188の初期値は、NRefである。
【0042】
第2加算器189は、分周比保持レジスタ188に記憶された分周比NRef+ΔNi-1に、第2スイッチ回路187から入力される値を加算し、その結果を第2分周回路170に出力する。第2分周回路170は、第2加算器189から出力される加算結果に従って信号を分周する。また、第2加算器189から出力される値は、分周比保持レジスタ188にも出力され、分周比が一時的に保持される。
【0043】
なお、本実施形態では、VCO160から出力されるクロック信号CKを直接的にカウンタ回路181に入力する構成を採用しているが、これに限るものではない。例えば、第2分周回路170から出力されるフィードバック信号をカウンタ回路181に入力する構成を採用しても良い。
【0044】
図3は、本発明の一実施形態に係るクロック生成回路における変調制御処理を説明するためのフローチャートである。
【0045】
同図に示すように、まず、変調制御回路180のカウンタ回路181は、VCO160から出力されるクロック信号CKに基づいてカウントする。現在のカウント動作が高周波変調区間内にあるか否で分岐する(S301)。カウンタ回路181が、該カウント動作が高周波変調区間内である場合(S301のYes)、“High”を示すH/L信号が出力され、第1スイッチ回路184はON状態となり、従って、第1加算器185は、分周変化量Δnと調整量aとを加算し、その加算値を符号付与回路186に出力する(S302)。これに対して、該カウント動作が高周波変調区間内にない場合に(S301のNo)、カウンタ回路181は、“Low”を示すH/L信号が出力され、第1加算器185は、分周変化量Δnを符号付与回路186に出力する(S303)。
【0046】
また、カウンタ回路181は、現在のカウント動作がカウントアップ動作であるか否かで分岐する(S304)。カウンタ回路181が、現在のカウント動作がカウントアップ動作である場合(S304のYes)、符号付与回路186に“UP”を示すU/D信号を出力し、従って、符号付与回路186は、第1加算器185の出力値に正の符号を付与し、これを第2スイッチ回路187に出力する(S305)。これに対して、現在のカウント動作がカウントダウンである場合に(S304のNo)、カウンタ回路181は、符号付与回路186に“DOWN”を示すU/D信号を出力し、符号付与回路186は、第1加算器185の出力値に負の符号を付与し、これを第2スイッチ回路187に出力する(S306)。
【0047】
一方で、加算タイミング調整回路182は、カウンタ回路181によるカウント値に従って、ON/OFF信号を第2スイッチ回路187に出力し、第2スイッチ回路187のON/OFF制御を行っている(S307)。このとき、第2スイッチ回路187がON状態になっている場合(S308のYes)、第2加算器189は、分周比保持レジスタ188に一時的に保持されている値NRef+ΔNi-1と符号付与回路186からの値+ΔN0又は−ΔN0とを加算し、その加算値を分周比NRef+ΔNiとして第2分周回路170に出力する(S309)。これに対して、第2スイッチ回路187がOFF状態になっている場合(S308のNo)、第2加算器189は、分周比保持レジスタ188に一時的に保持されている値NRef+ΔNi-1を分周比NRef+ΔNiとして第2分周回路170に出力する(S310)。
【0048】
分周比保持レジスタ188は、第2加算器189から出力された分周比NRef+ΔNiを、次の加算演算に用いるため、一時的に保持するとともに(S311)、第2分周回路170は、第2加算器189から出力される分周比NRef+ΔNiを用いて、クロック信号CKを分周し、位相検出回路120に出力する(S312)。
【0049】
次に、本実施形態のクロック生成回路100の動作例を説明する。
【0050】
即ち、クロック生成回路100の発振回路110が基準クロック信号の出力を開始すると、フィードバック制御が開始されるとともに、VCO160から出力されるクロック信号CKに従って、カウンタ回路181がカウントを開始する。第1スイッチ回路184は、カウンタ回路181によるカウント値に基づく所定の変調区間毎に、ON/OFF状態を切り替えて、分周変化量設定レジスタ183aの分周変化量Δnに分周変化量設定レジスタ183bの調整量aを加算させるか否かを制御する。
【0051】
例えば、
図4に示すように、カウンタ回路181によるカウント開始後のある時点を時刻T0とし、カウント値に応じた時刻Txを考える。第1スイッチ回路184は、時刻T0〜T2未満まで(即ち、高周波変調区間)はON状態になり、従って、第1加算器185は、分周変化量設定レジスタ183aの分周変化量Δnに分周変化量設定レジスタ183bの調整量aを加算した値を出力し、また、時刻T2〜T4未満まで(即ち、低周波変調区間)は、スイッチ回路184はOFF状態となり、第1加算器185は、分周変化量設定レジスタ183aの分周変化量Δnをそのまま出力する。このように、スイッチ回路184は、時間2Tを経過する毎(即ち、変調区間毎)に、分周変化量設定レジスタ183bの値を第1加算器185に入力するか否かを切り替える。
【0052】
また、符号付与回路186は、カウンタ回路181のカウント動作に従い、分周変化量ΔN0の符号を決定する。即ち、符号付与回路186は、時刻T0〜T1未満の間(即ち、高周波変調区間かつカウントアップ区間)であれば、分周変化量ΔN0に正の符号を付与し、時刻T1〜T2未満の間(即ち、高周波変調区間かつカウントダウン区間)及び時刻T2〜T3の間(即ち、低周波変調区間かつカウントダウン区間)であれば、分周変化量ΔN0に負の符号を付与する。同様に、符号付与回路186は、時刻T3〜T4未満の間(即ち、低周波変調区間かつカウントアップ区間)であれば、分周変化量ΔN0に正の符号を付与する。
【0053】
さらに、第2スイッチ回路187は、加算タイミング調整回路182によるON/OFF信号に従って、ON/OFF制御され、第2加算器189に符号付与回路186からの値を断続的に出力する。第2加算器189は、分周比保持レジスタ188に保持された値NRef+ΔNi-1と、符号付与回路186からの値とを加算することにより、第2分周回路170に対する分周比を求める。即ち、
図5に示すように、現在の変調が高周波変調区間に対応する場合、ΔN0の値は、Δn+aとなるため、低周波変調区間の場合に比べて、分周比の変化量は調整量aの分だけ大きくなる。
【0054】
従って、時刻T0〜T1の間は、変調が高周波変調区間にあり、カウント値がカウントアップされるため、調整量aの分だけ変化量が大きい分周変化量+ΔN0に応じた正の傾きの変調プロファイルが得られ、続く、時刻T1〜T2の間は、変調が高周波変調区間にあり、カウント値がカウントダウンされるため、調整量aの分だけ変化量が大きい分周変化量−ΔN0に応じた負の傾きの変調プロファイルが得られる。
【0055】
また、時刻T2〜T3の間は、変調が低周波変調区間であり、カウント値がカウントダウンされるため、調整量aを加算しない分周変化量−ΔN0に応じた負の傾きの変調プロファイルが得られ、続く、時刻T3〜T4の間は、変調が低周波変調区間であり、カウント値がカウントアップされるため、調整量aを加算しない分周変化量+ΔN0に応じた正の傾きの変調プロファイルが得られる。
【0056】
以後、同様に、第1スイッチ回路184は、時間2T(即ち高周波と低周波の変調区間毎)に分周変化量ΔN0が変化するように動作する一方、符号付与回路186は、カウントアップ動作又はカウントダウン動作に従って、ΔN0に付与する符号を交互に切り替えて動作する。
【0057】
このように、本実施形態によれば、分周変化量Δnに対する調整量aを定義し、三角波変調プロファイルにおける高周波変調区間に対して、分周変化量Δnに調整量aを加算した値ΔN0を用いて分周比を決定しているので、例えば、
図6に示すように、高周波領域と低周波領域とで周波数偏差が非対称の変調プロファイルを生成することができる。つまり、本実施形態では、調整量aの分だけ、高周波領域に対する周波数偏差を増加させることで、高周波領域がより拡散される。従って、かかる変調プロファイルを用いることで、基準周波数を中心にして高周波領域の周波数をより拡散させることができる。これにより、電界強度スペクトルで見たときに、高周波領域の電界強度を有効に抑圧することができるようになる。
【0058】
(第2の実施形態)
本実施形態は、基準となる三角波の変調プロファイルにおいて、低周波数領域に対する周波数偏差を減少させることで、高周波領域と低周波領域とで周波数偏差を非対称にした変調プロファイルを生成し、かかる変調プロファイルに基づいてスペクトラム拡散を行うクロック生成回路及び該スペクトル拡散を行うための方法である。
【0059】
本実施形態のクロック生成回路100は、
図1に示したものと同じ構成とすることができ、かかる構成において、分周変化量設定レジスタ183bに記憶される調整量aを負の値として定義するとともに、カウンタ回路181によるH/L信号による第1スイッチの動作を逆にすることにより、実現される。従って、本実施形態において生成される変調プロファイルは、
図7に示すようなものになる。
【0060】
このように、本実施形態によれば、分周変化量Δnに対する調整量aを定義し、三角波変調プロファイルにおける低周波変調区間に対して、分周変化量Δnに調整量aを加算した値ΔN0を用いて分周比を決定しているので、例えば、
図8に示すように、高周波領域と低周波領域とで周波数偏差が非対称の変調プロファイルを生成することができる。つまり、本実施形態では、調整量aの分だけ、低周波領域に対する周波数偏差を減少させることで、低周波領域がより拡散が抑制される。従って、かかる変調プロファイルを用いることで、基準周波数を中心にして低周波領域の周波数の拡散を抑制させることができる。これにより、電界強度スペクトルで見たときに、電界強度のピーク値を超えることなく、周波数偏差を最小限に抑えることができるようになる。
【0061】
(他の実施形態)
上記の実施形態では、カウンタ回路181が正負のカウント値を持ち、該カウント値に従うU/D信号及びH/L信号に基づいて、第1スイッチ回路184及び符号付与回路186がそれぞれ制御される構成が開示されたが、本実施形態では、カウンタ回路181’は正のカウント値のみを持ち、符号付与回路186’がU/D信号及びH/L信号に基づいて符号を決定する構成が開示される。
図9は、本発明の一実施形態に係るクロック生成回路の構成の一例を示すブロックダイアグラムである。即ち、同図は、
図1に示した構成と比較して、カウンタ回路181’から出力されるH/L信号が符号付与回路186’にも入力される点で異なっている。このような構成により、加算タイミング調整回路182’や、カウンタ回路181’の構成をより小さくすることができ、従って、チップ面積の肥大を防止することができる。
【0062】
即ち、カウンタ回路181’は、カウント値に基づくそれぞれのタイミングで、U/D信号が示す値“Up”及び“Down”を交互に切り替えるとともに、H/L信号が示す値“High”及び“Low”を交互に切り替える。
【0063】
また、符号付与回路186’は、カウンタ回路181によるU/D信号及びH/L信号に従って、第1加算器185から出力される値に対して正の符号(“+”)又は負の符号(“−”)の付与を行う。より具体的には、符号付与回路186’は、U/D信号=“Up”で、かつH/L信号=“High”の場合、及びU/D信号=“Down”で、かつH/L信号=“Low”の場合に、周波数は上昇しているとみなして、正の符号を付与する。これに対して、U/D信号=“Down”で、かつH/L信号=“High”の場合、及びU/D信号=“Up”で、かつH/L信号=“Low”の場合に、符号付与回路186’は、周波数は下降しているとみなして、負の符号を付与する。
【0064】
以上のようにして、本実施形態のクロック生成回路が生成する変調プロファイルは、
図10のようになる。同図中、カウンタ値の変化を除き、
図4に示したものと同じである。また、本実施形態に、第2の実施形態のクロック生成回路を適用した場合の変調プロファイルは、
図11のようになる。同図中、カウンタ値の変化を除き、
図7に示したものと同じである。
【0065】
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0066】
例えば、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしてもよく、また、他のステップ、動作又は機能を追加してもよい。
【0067】
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を、適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本発明の要旨に含まれる。