【解決手段】誘電体基体28と、前記誘電体基体の上面に形成された信号線路22と、前記誘電体基体の下面に形成され、基準電位を有する第1導電層26と、前記誘電体基体の上面に形成され、前記信号線路の複数の位置から延出しその先端が前記信号線路と並行して配置された導体部により電気的に共通に接続され、前記導体部と前記信号線路の間に開口30が設けられたスタブ24と、を具備する信号伝送路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光変調器の変調信号は10〜40GHzあるいはそれ以上に達する。このため、変調信号の伝送には高周波伝送を考慮した設計を行なう。例えば、上記光変調装置において、変調信号は、伝送線路を介し光変調器に入力する。しかしながら、伝送線路において、大きなリアクタンスを得るため面積の大きなスタブを形成すると、周波数特性にディップが発生することがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、スタブに起因したディップを抑制することおよびリアクタンス回路の小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、誘電体基体と、前記誘電体基体の上面に形成された信号線路と、前記誘電体基体の下面に形成され、基準電位を有する第1導電層と、前記誘電体基体の上面に形成され、前記信号線路の複数の位置から延出しその先端が前記信号線路と並行して配置された導体部により電気的に共通に接続され、前記導体部と前記信号線路の間に開口が設けられたスタブと、を具備することを特徴とする信号伝送路である。
【0007】
上記構成において、前記誘電体基体の上面には、前記基準電位と接続され、前記導体部と並行して配置された第2導体層が設けられてなる構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記スタブは、複数の開口が設けられてなる構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記スタブは、前記信号伝送路の両側の領域に配置されてなる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スタブに起因したディップを抑制することおよびリアクタンス回路の小型化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1に係る信号伝送路を含む光部品の回路図である。
図1に示すように、入力端子14は、信号伝送路20およびインダクタL1を介しノードN1に電気的に接続されている。光変調器10のアノードはノードN1に電気的に接続し、光変調器10のカソードは接地される。ノードN1は、インダクタL2、キャパシタCおよび抵抗Rを直列に介し接地される。インダクタL2、キャパシタCおよび抵抗Rは、インピーダンス整合回路16を形成する。インピーダンス整合回路16は、光変調器10の終端インピーダンスを、例えば50Ωに整合させる。この場合、例えば抵抗Rの抵抗値を終端インピーダンスと同じ50Ωとする。
【0014】
インダクタL1およびL2は、例えばボンディングワイヤである。キャパシタCは例えばチップコンデンサ、抵抗Rは例えばチップ抵抗である。光変調器10は、例えばEA光変調器である。入力端子14には、例えば変調駆動IC(Integrated
Circuit)が出力する高周波信号が入力される。
【0015】
図2(a)は、実施例1に係る信号伝送路の平面図、
図2(b)および
図2(c)は、それぞれ
図2(a)のA−A断面図およびB−B断面図である。
図2(a)から
図2(c)に示すように、信号伝送路20は、光変調器10に入力する高周波信号を伝送する。信号伝送路20は、誘電体基体28、信号線路22、スタブ24および導電層(第1導電層)26を備えている。誘電体基体28は、例えば酸化アルミニウム等の誘電体から形成される。信号線路22は、誘電体基体28の上面に形成されている。例えば、信号線路22は、誘電体基体28の延伸方向に誘電体基体28の端部から端部に延伸している。
【0016】
スタブ24は、誘電体基体28の上面に形成され、信号線路22から延出している。すなわち、スタブ24は、信号線路22に接して設けられている。スタブ24は、開口30と突起36とを有している。突起36は、例えば、信号線路22の延伸方向に設けられている。スタブ24は、信号線路22の延伸方向に交差する方向に延出する複数の線状領域24a(導体部)と、信号線路22に平行に延伸する線状領域24bとを含むように形成されている。突起36は、線状領域24bの一部として形成されている。
【0017】
導電層26は、誘電体基体28の下面を覆うように形成されている。導電層26は、グランド等の基準電位を有している。信号線路22と導電層26とはマイクロストリップ線路を形成する。信号線路22、スタブ24および導電層26は、例えばAuまたはCu等の金属により形成される。
【0018】
次に、実施例1と比較する比較例1について説明する。
図3(a)は、比較例1に係る信号伝送路の平面図、
図3(b)は、
図3(a)のA−A断面図である。
図3(a)および
図3(b)に示すように、比較例1に係る信号伝送路20aのスタブ24は、開口を有していない。その他の構成は実施例1と同じであり、説明を省略する。
【0019】
図4(a)および
図4(b)は、それぞれ比較例1および実施例1における伝送信号の周波数に対する通過特性(S21)を模式的に示す図である。
図4(a)に示すように、比較例1においては、伝送信号の通過特性にディップ40が発生する。
図4(b)に示すように、実施例1においては、伝送信号の通過特性にディップが発生していない。
【0020】
図5は、比較例1における等価回路を示す図である。
図5に示すように、信号線路22と基準電位との間にキャパシタンス成分C0とインダクタンス成分L0が並列に接続される。キャパシタンス成分C0は、スタブ24内の小さい領域に形成されるキャパシタンス成分に対応する。インダクタンス成分L0は、スタブ24の面積が大きくなることにより生じるインダクタンスの要素である。このインダクタンス成分L0は、スタブ24の面内において単位面積あたりのキャパシタンス成分に並列に接続された状態になる。信号伝送路20aのリアクタンス成分を大きくするため、スタブ24の面積を大きくする。そうすると、キャパシタンス成分C0に加え上記したインダクタンス成分L0の要素が増加する。このため、
図5に示した等価回路による反共振回路が形成される。反共振回路の反共振点により
図4(a)に示すようにディップ40が形成される。
【0021】
実施例1においては、線状領域24bが信号線路22の複数の位置から延出し、線状領域24bの先端が信号線路22と並行して配置された線状領域24a(導体部)により電気的に共通に接続されている。これにより、スタブ24には、線状領域24aと信号線路22の間に開口30が設けられる。このように、スタブ24が開口30を有していることにより、スタブ24が大きくなることにより生じるインダクタンス成分L0の要素を少なくできる。これにより、ディップ40の発生を抑制できる。
【0022】
スタブ24が有する開口30は1つでもよいが、スタブ24は、複数の開口30を有することが好ましい。これにより、スタブ24のインダクタンス成分L0の要素をより抑制し、ディップ40をより抑制できる。複数の開口30の大きさおよび形状は例えば同じである。
【0023】
スタブ24は、信号線路22の片側に設けられていていてもよいが、信号線路22の両側の領域に配置されていることが好ましい。これにより、信号伝送路20のリアクタンス成分をより大きくできる。スタブ24は、信号線路22の延伸方向に沿って複数設けられていてもよい。
【0024】
また、開口30が、信号線路22の幅が変わらないように形成されていることにより、信号伝送路20の特性インピーダンスを一定にできる。
【0025】
さらに、突起36により、スタブ24により形成されるリアクタンス成分の大きさを微調整することができる。
【0026】
スタブ24の大きさは、信号伝送路20を伝送する高周波信号の波長をλとしたときλ/4程度以下であることが好ましい。よって、スタブ24の大きさは、例えばλ/10以上かつλ/4以下である。
【実施例2】
【0027】
図6(a)は、実施例2に係る信号伝送路の平面図、
図6(b)および
図6(c)は、それぞれ
図6(a)のA−A断面図およびB−B断面図である。
図6(a)から
図6(c)に示すように、誘電体基体28の上面であって、スタブ24の外側に線状領域24aに並行して導電層32(第2導電層)が配置されている。さらに、誘電体基体28の側面に導電層34(第3導電層)が形成されている。導電層32および34は、例えばAuまたはCu等の金属により形成される。その他の構成は、実施例1と同じであり説明を省略する。
【0028】
図7(a)は、実施例2に係る信号伝送路の平面図、
図7(b)は、等価回路を示す図である。
図7(a)には、信号伝送路20bの一部を図示している。
図7(b)に示すように、複数のキャパシタンス成分C01の一端が分布定数線路L01に接続されている。複数のキャパシタンス成分C01の他端がノードN1に共通に接続されている。キャパシタンス成分C02の一端がノードN01に接続されている。キャパシタンス成分C02の他端が基準電位に接続されている。
【0029】
信号伝送路20bにおける信号線路22は、等価回路における分布定数線路L01で表される。信号伝送路20bにおけるスタブ24のうち信号線路22に交差するように延出される線状領域24aは、等価回路におけるキャパシタンス成分C01で表される。信号伝送路20bにおけるスタブ24のうち線状領域24bは、等価回路におけるノードN01で表される。スタブ24と導電層32との間のスペース38は、等価回路におけるキャパシタンス成分C02で表される。
【0030】
実施例2によれば、基準電位と接続された導電層32が誘電体基体28の上面であってスタブ24の外側に形成されている。これにより、
図7(b)に示すように、キャパシタンス成分C01に加えキャパシタンス成分C02を形成できる。よって、実施例1に比べ、スタブ24を小さくできる。例えば、スタブ24をλ/4より小さくできる。これにより、信号伝送路20bを小型化できる。
【0031】
さらに、基準電位を有する導電層34が誘電体基体28の側面に形成されている。これにより、キャパシタンス成分C02をより大きくできる。よって、信号伝送路20bをより小型化できる。
【0032】
さらに、導電層34が導電層26と導電層34と接することにより、導電層26、32および34を同じ基準電位とすることができる。
【実施例3】
【0033】
実施例3は、実施例1または実施例2に係る信号伝送路を含む光変調装置の例である。
図8(a)は、キャップを外した実施例3に係る光変調装置の上面図、
図8(b)は、
図8(a)のA−A断面図である。なお、レセクタプル98については断面でなく側面を図示している。
図8(a)および
図8(b)に示すように、光変調装置106において、筐体84内に、光変調器10、半導体レーザ12、変調駆動IC74(変調ドライバ)等が収納されている。ここでは、光変調器10と半導体レーザ12とは1チップに集積化されている。また、半導体レーザ12に接続される配線・ワイヤなどは省略している。
【0034】
筐体84は、例えば金属等からなる。筐体84の底面にはTEC(Thermoelectric Cooler)68が配置されている。TEC68上に、例えば酸化アルミニウムまたはセラミック等の絶縁性からなり、かつ熱伝導率の高いキャリア70が配置されている。キャリア70上にサブキャリア71とレンズホルダ78とが配置されている。
【0035】
サブキャリア71上に、誘電体基体50、光変調器10および半導体レーザ12が一体となったチップ、およびフォトディテクタ79が配置されている。レンズホルダ78にはレンズ80が保持されている。誘電体基体50の上面には信号線路52が形成されている。
【0036】
さらに、筐体84の底面には銅タングステン(CuW)または銅モリブデン(CuMo)等の金属からなるヒートシンク66が配置されている。ヒートシンク66上には、変調駆動IC74、伝送線路73を有する基板72が配置されている。ヒートシンク66の上面とサブキャリア71の上面とはほぼ同じ高さである。ヒートシンク66の上面とサブキャリア71の上面との間に橋渡しされたブリッジ76が実施例1または実施例2に係る信号伝送路20または20bに対応する。
【0037】
筐体84の前側壁にはレンズ82が保持されている。さらに、筐体84の前面にレセプタクル98が固定されている。筐体84の後側壁には、主に絶縁体からなるフィードスルー60が埋め込まれている。フィードスルー60内には、筐体84内の端子64と筐体84外の端子62とを電気的に接続する配線が設けられている。
【0038】
端子64と基板72の伝送線路73とはボンディングワイヤ90により電気的に接続されている。伝送線路73と変調駆動IC74とは、ボンディングワイヤ92により電気的に接続されている。変調駆動IC74とブリッジ76内の信号線路22とは、ボンディングワイヤ94により電気的に接続されている。ブリッジ76内の信号線路22と誘電体基体50上の信号線路52とは、ボンディングワイヤ96により電気的に接続されている。
【0039】
高周波信号である入力信号は、端子62からフィードスルー60内の配線、端子64、ボンディングワイヤ90、伝送線路73およびボンディングワイヤ92を介し、変調駆動IC74に入力する。変調駆動IC74は入力信号を増幅し変調電気信号として出力する。出力された変調信号は、変調駆動IC74の出力端子を介し、ボンディングワイヤ94、ブリッジ76内の信号線路22およびボンディングワイヤ96を介し信号線路52に入力する。信号線路52は光変調器10の電極とボンディングワイヤを介し電気的に接続されている。これにより、変調信号は、光変調器10の電極に入力する。光変調器10は、半導体レーザ12の出力光を強度変調し出射する。このように、変調駆動IC74の出力端子と光変調器の電極とはブリッジ76により電気的に接続しており、変調駆動IC74は光変調器を変調する。光変調器10とレセプタクル98中に挿入されるファイバ(図示せず)とは、レンズ80および82により光結合されている。これにより、光変調器10から出射された光はファイバ内の導入される。フォトディテクタ79は、半導体レーザ12の裏面から出射された光の強度を検出する。図示していない制御回路が、フォトディテクタ79の出力に応じ、半導体レーザ12に印加する電流をフィードバック制御する。TEC68は、半導体レーザ12および光変調器10の温度を一定に保持する。これにより、光変調器10から出射される光の波長をロックすることができる。半導体レーザ12を安定に動作させることができる。
【0040】
実施例3のように、第1搭載部材としてサブキャリア71が光変調器10を搭載する。第2搭載部材としてヒートシンク66が変調駆動IC74を搭載する。変調駆動IC74は、信号伝送路20または20bに高周波信号を出力するアンプとして機能する。信号伝送路20または20bは、サブキャリア71の上面にある接続部(第1の接続部)とヒートシンク66の上面にある接続部(第2の接続部)とで機械的に接続しており、サブキャリア71とヒートシンク66とを橋渡すように設けられている。このため、信号伝送路20または20bの下面には、空間が存在している。このように、第1搭載部材(サブキャリア71)と第2搭載部材(ヒートシンク66)とが空間を挟んで離れて配置されており、ブリッジ76の誘電体基体が第1搭載部材(サブキャリア71)と第2搭載部材(ヒートシンク66)との間を空間上で橋渡しして配置されている。
【0041】
実施例3によれば、変調駆動IC74が出力した高周波信号が伝送される信号伝送路のリアクタンス成分を大きくするためにスタブ24を形成しても、ディップの発生を抑制することができる。
【0042】
実施例3においては、第1搭載部材と、第2搭載部材と、実施例1または2の伝送線路を含むブリッジ76と、を備える信号伝送路を、光変調装置106に用いる例を説明した。実施例3の信号伝送路は、光変調装置以外の装置に用いてもよい。
【0043】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。