【解決手段】 電線5を保護するカバー部材10、20を連結する連結部材30は、カバー部材10、20とは別体に設けられ、カバー部材10、20のカバーリブ部12、22が挿通されるリブ用切り欠き34を形成する筒部31及び筒部31の径方向外側に設けられリング状部材40を挿通可能な貫通孔328、329、338、339を形成する係止部32、33から構成される。周方向に回転するリング状部材40がカバーリブ部12、22に形成される貫通孔123、224及び係止部32、33の貫通孔328、329、338、339に挿通されると、連結部材30に対するカバー部材10、20の軸方向の移動が規制される。これにより、高所に架設されている電線5への電線用保護カバー1の取り付けの作業性を向上することができる。
前記第1貫通孔形成部は、前記筒部の外周壁に沿って中心軸に非平行な方向に形成される2つの環状リブ(320、321、330、331)、及び、2つの前記環状リブを前記本体部の外周壁の径外方向で接続する接続バー(322、323、332、333)を有し、
前記リング状部材は、2つの前記環状リブの間に前記連結部材に対して相対回転可能に設けられ、
前記リング状部材の前記本体部が2つの前記環状リブと前記接続バーとにより形成される前記第1貫通孔及び前記空間に位置するとき、前記突出部が前記接続バーに係止されることにより前記連結部材に対する前記リング状部材の相対回転を規制しつつ、前記連結部材に対する前記カバー部材の軸方向の移動を規制することを特徴とする請求項1に記載の電線用保護カバー。
前記第1貫通孔形成部の外径は、前記カバー部材の前記カバー部の外径、前記連結部材の前記筒部の外径、及び、前記リング状部材の前記本体部の外径より大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の電線用保護カバー。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0013】
(一実施形態)
本発明の一実施形態による電線用保護カバーを
図1〜
図5に示す。
電線用保護カバー1は、カバー部材10、連結部材30、及び、リング状部材40から構成されている。電線用保護カバー1は、カバー部材10の内部に挿通される電線5、例えば、6600V程度の高圧配電線、が異物と接触することを防止する。
【0014】
カバー部材10は、絶縁材料、例えば、ポリエチレンから形成される略筒状部材である。カバー部材10は、
図2に示すように、カバー部11、及び、カバーリブ部12などから構成される。カバー部11及びカバーリブ部12は一体に形成される。なお、
図1には、連結部材30を介して2つのカバー部材10、20が連結されている状態の模式図を示す。また、
図2には、カバー部材10単体の模式図を示す。また、
図2(a)には、カバー部材10の内部に挿入されている電線5を二点鎖線で示す。
【0015】
カバー部11は、筒状に形成されている。カバー部11は、
図2(a)に示すように、電線5の径外方向に電線5の径方向外側を覆うよう設けられる。一実施形態による電線用保護カバー1では、カバー部11の軸方向の長さは、例えば、作業現場での作業性や連結部材30との連結間隔などを考慮し、2〜5mの長さとする。しかしながら、電線5を隙間なく保護するため、カバー部の軸方向の長さが異なる複数のカバー部材を用意してもよい。
【0016】
カバーリブ部12は、カバー部11の外周壁113に設けられる。カバーリブ部12は、カバー部材10の中心軸φ1の方向にカバー部11と同じ長さ程度形成される。カバーリブ部12は、カバー部11の外周壁113より径外方向に向かって延びるよう設けられている。カバーリブ部12の一方の端部121及び他方の端部122には、カバー部11の周方向に開口する略矩形状の貫通孔123、124が形成されている。貫通孔123、124は、特許請求の範囲に記載の「空間」及び「第2貫通孔」に相当する。
【0017】
カバーリブ部12は、2枚の板状部位が合わさることで形成される。カバーリブ部12の略中央には、2枚の板状部位の間にカバー部11の内部111と外部とを連通する隙間13が中心軸φ1の方向に延びるように形成されている。隙間13は、カバーリブ部12を形成する2枚の板状部位に互いが離れる方向の力を作用させると電線5をカバー部11の内部111に挿入することが可能な程度の大きな開口となる。
【0018】
連結部材30は、筒部31及び2つの係止部32、33などから構成される。筒部31及び係止部32、33は、絶縁材料、例えば、ポリエチレンから一体に形成される。連結部材30は、
図1に示すように、カバー部材10、20とは別体に設けられ、カバー部材10の一方の端部101とカバー部材20の他方の端部202とを連結する。なお、
図3(a)には、連結部材30の内部にカバー部材10が挿入された状態を示す。
【0019】
筒部31は、断面に切り欠きを有するC字状の筒状部位である。筒部31は、内径がカバー部材10のカバー部11が挿入可能な程度の大きさとなるよう形成されている。筒部31の一方の端部に形成される開口311の縁部315、及び、他方の端部に形成される開口312の縁部316は、
図3(b)に示すように、R状に形成されている。
図1に示すように、カバー部材20の他方の端部202が筒部31の開口311に挿入されるとき、カバー部材20の他方の端部202は縁部315のR形状に沿ってスムーズに筒部31の内部314に挿入される。また、カバー部材10の一方の端部101が筒部31の開口312に挿入されるとき、カバー部材10の一方の端部101は縁部316のR形状に沿ってスムーズに筒部31の内部314に挿入される。
【0020】
係止部32、33は、筒部31の両端の外周壁に設けられる。開口311側に設けられる係止部32は、小径リブ320、大径リブ321、及び、接続バー322、323から構成される。また、開口312側に設けられる係止部33は、小径リブ330、大径リブ331、及び、接続バー332、333から構成される。係止部32、33は、特許請求の範囲に記載の「第1貫通孔形成部」に相当する。
【0021】
小径リブ320、330は、筒部31の2つの端部より連結部材30の中心軸φ2方向の中央寄りに設けられる。小径リブ320、330は、筒部31の外周壁313に沿って連結部材30の中心軸φ2に垂直な断面が略C字状になるよう中心軸φ2に略垂直に形成される。小径リブ320、330は、外径が筒部31の外径より大きくなるよう形成される。小径リブ320、330は、特許請求の範囲に記載の「環状リブ」に相当する。
【0022】
大径リブ321、331は、筒部31の2つの端部にそれぞれ設けられる。大径リブ321、331は、外径がカバー部材10の外径、連結部材30の筒部31の外径、小径リブ320、330の外径、及び、後述するリング状部材40の本体部43の外径より大きくなるよう形成される。大径リブ321、331は、筒部31の外周壁313に沿って中心軸φ2に垂直な断面が略C字状になるよう中心軸φ2に略垂直に形成される。大径リブ321、331は、特許請求の範囲に記載の「環状リブ」に相当する。
【0023】
係止部33の接続バー332、333は、
図3(a)に示すように、中心軸φ2を挟んだ位置にそれぞれ設けられる。
図3(a)の紙面上において中心軸φ2上の点からリブ用切り欠き34の方向に向かって左側(
図3(a)の紙面上において中心軸φ2の右側)に設けられる接続バー332は、大径リブ331と小径リブ330とを接続する。接続バー332は、筒部31の外周壁313、小径リブ330の大径リブ331側の側壁335、大径リブ331の小径リブ330側の側壁334、及び、接続バー332の径方向内側の壁面336により断面が略矩形の貫通孔338を形成する。また、
図3(a)の紙面上において中心軸φ2上の点からリブ用切り欠き34の方向に向かって右側(
図3(a)の紙面上において中心軸φ2の左側)に設けられる接続バー333は、筒部31の外周壁313、小径リブ330の側壁335、大径リブ331の側壁334、及び、接続バー333の径方向内側の壁面337により貫通孔339を形成する。貫通孔338、339は、筒部31の周方向に開口する。貫通孔338、339は、特許請求の範囲に記載の「第1貫通孔」に相当する。
【0024】
係止部32の接続バー322、323は、係止部33と同様にカバー部材20の中心軸φ4を挟んだ位置にそれぞれ設けられる(
図1(b)参照)。接続バー322、323は、小径リブ320と大径リブ321とを接続する。接続バー322は、筒部31の外周壁313、小径リブ320の大径リブ321側の側壁325、大径リブ321の小径リブ320側の側壁324、及び、接続バー322の径方向内側の壁面326により断面が略矩形の貫通孔328を形成する。また、接続バー323は、筒部31の外周壁313、小径リブ320の側壁325、大径リブ321の側壁324、及び、接続バー323の径方向内側の壁面327により断面が略矩形の貫通孔329を形成する。貫通孔328、329は、筒部31の周方向に開口する。貫通孔328、329は、特許請求の範囲に記載の「第1貫通孔」に相当する。
【0025】
リブ用切り欠き34は、連結部材30の中心軸φ2の方向に延びるよう形成される開口である。「第1切り欠き」としてのリブ用切り欠き34は、筒部31の内部314と外部とを連通する。リブ用切り欠き34は、周方向の大きさが電線5の直径より大きくなるよう形成されている。すなわち、電線5は、リブ用切り欠き34を介して筒部31の内部314に挿入可能である。
連結部材30の内部にカバー部材10の一方の端部101及びカバー部材20の他方の端部202が挿入されるとき、カバー部材10のカバーリブ部12及びカバー部材20のカバーリブ部22はリブ用切り欠き34に位置し、カバーリブ部12、22は、
図1及び3に示すように、リブ用切り欠き34を介して筒部31の内部から外部に突出するよう設けられる。
【0026】
リング状部材40は、
図4に示すように、本体部43、凸部41、42、及び、つまみ部44から構成される。リング状部材40は、本体部43、凸部41、42、及び、つまみ部44が、絶縁材料、例えば、ポリエチレンから一体に形成され、連結部材30の径外方向に連結部材30に対して相対回転可能に設けられる。リング状部材40は、
図1に示すように、貫通孔123、338、339、または、カバー部材20のカバーリブ部22に形成される貫通孔224、及び貫通孔328、329に挿通され、連結部材30に対するカバー部材10、20の軸方向の移動を規制する。なお、
図4(a)には、リング状部材40を連結部材30に取り付けたときの状態を示している。貫通孔224は、特許請求の範囲に記載の「空間」及び「第2貫通孔」に相当する。
【0027】
本体部43は、リング状部材40の中心軸φ3に垂直な断面が略C字状に形成される部位である。本体部43は、連結部材30の小径リブ320と大径リブ321との間、または、小径リブ320と大径リブ321との間において筒部31の外周壁313に沿うよう設けられる。
【0028】
つまみ部44は、本体部43の断面形状であるC字状の一方の端部431から本体部43の径外方向に延びるよう形成される。つまみ部44は、リング状部材40の操作に使用される。つまみ部44は、特許請求の範囲に記載の「突出部」に相当する。
【0029】
凸部41は、本体部43の外周壁433上であってつまみ部44の近傍に設けられる。凸部41は、中心軸φ3に垂直な断面形状が略三角形状に形成されている。凸部41は、本体部43の内周壁434から凸部41の径方向外側までの高さが連結部材30の貫通孔328、338の径方向の高さと同程度の高さを有しており、リング状部材40の凸部41が形成されている部位は、接続バー322の内壁326、または、接続バー332の内壁336と当接しつつ、貫通孔328、338を通ることができる。凸部41は、特許請求の範囲に記載の「突出部」に相当する。
【0030】
凸部42は、本体部43の外周壁433上であって本体部43の断面形状であるC字状の他方の端部432に設けられる。凸部42は、中心軸φ3に垂直な断面形状が略台形状に形成されている。凸部42は、本体部43の内周壁434から凸部42の径方向外側までの長さがカバー部材10の貫通孔123、124、または、カバー部材20の貫通孔224の径方向の長さより小さくなるよう形成されており、リング状部材40の凸部42が形成されている部位は、貫通孔123、124、224を通ることができる。凸部42は、リング状部材40が連結部材30から脱落することを防止する。凸部42は、特許請求の範囲に記載の「突出部」に相当する。
【0031】
本体部43の一方の端部431と他方の端部432との間には、リング切り欠き45が形成される。「第2切り欠き」としてのリング切り欠き45は、本体部43の内周壁434と外周壁433とを接続し、中心軸φ3の方向に延びるよう形成されている。また、リング用切り欠き45は、周方向の大きさが電線5の直径より大きくなるよう形成されている。
【0032】
次に、電線用保護カバー1の電線5への取り付け方法について説明する。
【0033】
最初に、カバー部材10及び連結部材30を電線5に取り付ける。カバー部材10では、カバー部材10のカバーリブ部12に形成されている隙間13を大きく広げるようカバーリブ部12に力を作用させ、その大きく広がった隙間から架設されている電線5をカバー部材10の内部に挿入することで電線5に取り付ける。また、連結部材30では、前述したようにリブ用切り欠き34を介して電線5を連結部材30の内部314に挿入することにより連結部材30を電線5に取り付ける。
【0034】
次に、カバー部材10と連結部材30とを組み付ける。電線5に取り付けられている連結部材30をカバー部材10の方向に移動させ、連結部材30の内部314にカバー部材10の一方の端部101を挿入する。カバー部材10の一方の端部101が連結部材30の内部314に挿入されるとき、カバー部材10のカバーリブ部12の一方の端部121は連結部材30のリブ用切り欠き34に位置する。
【0035】
次に、カバー部材10の貫通孔123と連結部材30の貫通孔338、339とをカバー部材10の中心軸φ1に垂直な平面上に揃える。このときの各部材の位置関係は、
図5(a)に示す位置関係である。
次に、連結部材30に取り付けられているリング状部材40をカバー部材10の周方向に回転する。具体的には、
図5(a)から
図5(b)となるように、つまみ部44を操作しリング状部材40を
図5の紙面上で矢印Sの方向に時計回りに回転する。
【0036】
リング状部材40が
図5の紙面上で時計回りに回転すると、リング状部材40の他方の端部432がカバー部材10の貫通孔123に挿通される。リング状部材40をさらに時計周りに回転すると、凸部41が貫通孔338を通過したのち、
図5(b)の位置関係となる。これにより、つまみ部44と凸部41との間に接続バー323が位置するため、リング状部材40の連結部材30に対する相対回転が規制される。
【0037】
次に、電線5を内部に収容するカバー部材20の他方の端部202を連結部材30の開口311に挿入する。このとき、カバー部材20と連結部材30との連結作業を容易に行うためにカバー部材10が連結された連結部材30のリブ用切り欠き34が天側を向くよう回転してもよい。カバー部材20の他方の端部202は、カバー部材10の一方の端部101と当接可能な位置まで挿入される。これにより、電線5が外部に露出することを極力防止する。カバー部材20のカバー部21の外周壁213に設けられるカバーリブ部22の他方の端部222を連結部材30のリブ用切り欠き34に挿入する。
【0038】
次に、カバー部材20のカバーリブ部22に形成される貫通孔224と連結部材30の貫通孔328、329とをカバー部材20の中心軸φ4に垂直な平面上に揃え、リング状部材40をカバー部材20の中心軸φ4を中心に回転する。リング状部材40の回転によりリング状部材40の他方の端部がカバー部材20の貫通孔224に挿通され、カバー部材20は連結部材30に連結される。
【0039】
これ以降、さらに電線5をカバーする場合、カバー部材10の連結部材30と連結する側とは反対側の他方の端部102、または、カバー部材20の連結部材30と連結する側とは反対側の一方の端部に別の連結部材を組み付け、リング状部材により連結部材とカバー部材とを連結する。
【0040】
次に、一実施形態による電線用保護カバー1の効果を特許文献1に開示された従来技術を比較例として対比しつつ説明する。
最初に、比較例としての電線用保護カバーについて
図7を参照して説明する。
図7に示す電線用保護カバー9は、電線に取り付けられ、一実施形態による電線用保護カバー1と同じ用途に用いられる。
電線用保護カバー9は、カバー部91、継手部92、差込部93、及び、締付リング94などから構成されている。電線用保護カバー9では、カバー部91、継手部92、及び、差込部93が樹脂から一体に形成されている。
【0041】
カバー部91は、略筒状に形成され、内部に電線を収容する。カバー部91は、外周壁から径外方向に延びるよう形成されるカバーリブ部911を有している。
【0042】
継手部92は、カバー部91の一方の端部に設けられる。継手部92は、外径が後述する差込部93の外径より大きくなるよう形成されている。継手部92は、外周壁から径外方向に延びるよう形成されカバーリブ部911に接続する継手リブ部921を有している。継手リブ部921は、周方向に開口する貫通孔922を有する。継手部92の外周壁には、貫通孔922に連通する凹状の溝923が周方向に形成される。電線用保護カバー9の中心軸φ5を挟んで継手リブ部921の反対側であって、溝923の径外方向には周方向に開口する貫通孔924を形成する貫通孔形成部925が設けられている。また、継手部92は、溝923よりカバー部91側の外周壁には継手部92の外周壁の外径より外径が大きい大径部926が設けられている。
【0043】
差込部93は、カバー部91の他方の端部に設けられる。差込部93は、外径がカバー部91の外径より大きく、かつ、継手部92の内径より小さくなるよう形成されている。差込部93は、外周壁から径外方向に延びるよう形成されカバーリブ部911に接続する差込リブ部931を有している。差込リブ部931は、周方向に開口する貫通孔932を有する。差込部93のカバー部91と接続する側とは反対側の端部には、径外方向に突出する環状の突起933が形成されている。
【0044】
カバーリブ部911、継手リブ部921、及び差込リブ部931は、2枚の板状部位97、98が合わさることで形成されている。板状部位97と板状部位98との間には長手方向に隙間95が形成されている。
【0045】
締付リング94は、
図7(b)に示すように、中心軸に垂直な断面が略C形状に形成されている。締付リング94は、継手部92の貫通孔924に挿通されつつ継手部92の溝923に設けられ、継手部92に対して相対回転可能なよう設けられている。締付リング94は、一方の端部に径外方向に突出するつまみ部941、つまみ部941の近傍に設けられつまみ部941より径外方向への長さが短い凸部942、及び、締付リング94の略中央に設けられ継手部92の貫通孔924を通ることが不可能な凸部943が設けられている。
【0046】
ここで、比較例としての電線用保護カバー9における電線への取り付け方法を説明する。
電線用保護カバー9を電線に取り付けるとき、
図7(b)に示すように、カバーリブ部911、継手リブ部921及び差込リブ部931を構成する2つの板状部位97、98を継手部92に組み付けられている締付リング94とともに互いに離れる方向に力Fを作用させ、隙間95を電線の直径より大きくなるように押し開く。大きくなった隙間95から電線を電線用保護カバー9の内部に挿入し、電線用保護カバー9を電線に取り付ける。
【0047】
次に、同じ方法で電線に取り付けた電線用保護カバー9とは異なる別の電線用保護カバーの差込部を電線用保護カバー9の継手部92の内部に挿入する。このとき、別の電線用保護カバーの差込部に形成されている環状の突起が継手部92の大径部914の内部側に形成されている図示しない溝に収容される位置まで別の電線用保護カバーを挿入する。これにより、別の電線用保護カバーの差込部の貫通孔と継手部92の貫通孔922とが連通するよう重なる。
【0048】
次に、
図7(b)の状態で継手部92に設けられている締付リング94を
図7の紙面上で時計回りに回転させる。これにより、締付リング94は、連通するよう重なっている別の電線用保護カバーの差込部の貫通孔と継手部92の貫通孔922とに挿通される。締付リング94をさらに時計回りに回転させると、締付リング94の凸部942とつまみ部941とが貫通孔形成部925に係止され、継手部92に対する締付リング94の相対回転が規制される。これにより、別の電線用保護カバーと電線用保護カバー9との間での軸方向の移動が規制される。
【0049】
比較例の電線用保護カバー9では、カバー部91、継手部92及び差込部93が一体に形成されているため、既に架設されている高所の電線に比較例の電線用保護カバー9を取り付けるとき、高所までの運搬や電線用保護カバー9の内部への電線の挿入など手間がかかる。特に、電線用保護カバー9の隙間95から電線を内部に挿入するとき、カバーリブ部911などを構成する2つの板状部位97、98を締付リング94とともに互いに離れる方向に力を作用させなければならず、このときの力は比較的大きな力となる。
一方、一実施形態による電線用保護カバー1では、電線用保護カバー1を電線5に取り付けるとき、上述したようにカバー部材10、20と連結部材30とを別々に電線5に取り付けてからカバー部材10、20どうしを連結部材30、及び、リング状部材40により連結する。カバー部材10、20を取り付けるとき、隙間13を押し広げる必要があるが、カバー部材10、20は筒状に形成されており、複雑な構成の連結部材30やリング状部材40が組み付けられていないため、比較的小さい力で電線5に取り付けることができる。また、連結部材30及びリング状部材40は、電線5の直径より大きいリブ用切り欠き34及びリング切り欠き45を有しているため、リング状部材40が組み付けられている連結部材30を電線5に取り付けるとき、連結部材30を押し広げる必要はない。したがって、電線用保護カバー1は、電線5への取り付け及び取り外しの作業を容易に行うことができ、作業現場における作業性を向上することができる。
【0050】
また、電線用保護カバー1では、複数のカバー部材10、20、カバー部材10、20どうしを連結する連結部材30、及び、カバー部材10、20と連結部材30とを連結するリング状部材40を備えている。このうち、連結部材30およびリング状部材40は、カバー部材10、20とは別体に設けられ、保護する電線5の長さにかかわらず同じ形状の部材として大量に用意することができる。また、筒状に形成されるカバー部材10、20も一定の長さに有する部材として用意する場合、保護する電線の長さにかかわらず、同じ形状の連結部材30およびリング状部材40に加え、同じ形状のカバー部材10、20を用意することにより電線用保護カバー1を電線5に取り付けることができる。これにより、カバー部材10、20、連結部材30、及び、リング状部材40のそれぞれの部品を個別に製造する製造段階における工数を低減することができる。したがって、電線用保護カバー1の生産性を向上することができる。
【0051】
また、連結部材30はカバー部材10、20とは別体に設けられているため、カバー部材のカバー部の外径やカバーリブ部の大きさが異なるカバー部材どうしを連結することができる。これにより、例えば、所定のカバー部材のかわりに他メーカーで製造された規格外のカバー部材や既に電線に取り付けられているカバー部材にリング状部材を挿通可能な貫通孔を形成することにより、所定の新しいカバー部材とこれらのカバー部材とを連結することができる。したがって、少ない資材で効率的に電線を保護することができる。
【0052】
また、カバー部材10、20と連結部材30及びリング状部材40とが別体で設けられるため、カバー部材10、20の長さを保護する電線5の長さや高所での取り扱いに適した長さに容易に変更することができる。これにより、保護が必要な電線5の長さに合わせて長さが異なるカバー部材を選択し、隙間なく電線5を保護することができる。また、カバー部材10、20の長さを比較的短くすることにより連結部材どうしの間隔を短くし、電線からのカバー部材10、20の脱落を防止することができる。
【0053】
また、大径リブ321は、電線用保護カバー1を構成する部位のうち外径が最も大きくなるよう形成されている。これにより、電線用保護カバー1を地面から高所に持ち上げるとき、大径リブ321に高所作業用バケット車の専用ハンガーを引っ掛けやすくなり、高所での作業性を向上することができる。
【0054】
また、電線用保護カバー1では、電線用保護カバー1を構成する部材の形状が単純であるため、収納スペースを小さくすることができ、また、一度に大量に運搬することができる。
また、カバー部材10、20と連結部材30との組み付けは、作業現場で行うため、製造段階では組み立てる必要がなくなり、製造工数が少なくなるため販売時の価格を相対的に低く設定することができる。
【0055】
(他の実施形態)
(ア)上述の実施形態では、リング状部材は複数の凸部を有し、リング状部材の他方の端部に設けられる凸部はリング状部材が連結部材から脱落することを防止するとした。しかしながら、リング状部材が有する凸部の数はこれに限定されない。リング状部材が有する凸部は1つであってもよい。
【0056】
(イ)上述の実施形態では、カバーリブ部には、カバー部の周方向に開口する「空間」としての略矩形状の貫通孔が形成されるとした。しかしながら、カバーリブ部に形成される「空間」はこれに限定されない。リング状部材の端部が挿通可能な空間が形成されていればよい。例えば、
図6に示すように、カバーリブ部12、22に「空間」として切り欠き125、126、226が形成されていてもよい。この場合、取り付け作業現場においてカバー部材のカバーリブ部にリング状部材を挿通させる「空間」を形成するとき、切断工具などによりカバーリブ部の一部を切断すれば形成することが可能であり、貫通孔を形成する場合に比べ容易に加工することができる。
【0057】
(ウ)上述の実施形態では、リング状部材は操作用のつまみ部を有するとした。しかしながら、つまみ部は有していなくてもよい。
【0058】
(エ)上述の実施形態では、係止部は、小径リブ、大径リブ、及び、小径リブと大径リブとを接続する接続バーから構成されるとした。しかしながら、係止部の構成はこれに限定されない。リング状部材の凸部またはつまみ部と係止し、連結部材に対するリング状部材の相対回転を規制すればよい。
【0059】
(オ)上述の実施形態では、大径リブは、外径がカバー部材の外径、連結部材の筒部の外径、小径リブの外径、及び、リング状部材の本体部の外径より大きくなるよう形成されるとした。しかしながら、大径リブの外径の大きさはこれに限定されない。
【0060】
(カ)上述の実施形態では、連結部材は、ポリエチレンから形成されるとした。しかしながら、連結部材を形成する材料はこれに限定されない。ポリエチレン以外の材料から形成されてもよい。例えば、連結部材を可撓性のある材料から形成することにより、カバー部材のカバー部の外径の変更に対して一定程度対応することが可能となる。すなわち、当該連結部材は、カバー部の外径が異なるカバー部材どうしを連結することができる。
【0061】
(キ)上述の実施形態では、リブ用切り欠き及びリング切り欠きは、周方向の大きさが電線の直径より大きいとした。しかしながら、リブ用切り欠き及びリング切り欠きの周方向の大きさは、これに限定されない。連結部材及びリング状部材を可撓性のある材料から形成し、リブ用切り欠き及びリング切り欠きを適度に開くことで電線を内部に収容してもよい。本発明の電線用保護カバーでは、連結部材は、カバー部材とは別にリブ用切り欠きを開けばよいため、比較例の電線用保護カバーに比べ押し開くために必要な力を少なくすることができる。
【0062】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。