【実施例】
【0014】
図1〜
図7に、第1の実施例とその変形とを示す。各図において同一の符号は同一のものを表し、各用語の意味は公知技術を参酌して広く解釈する。
図1は、直動−回転アクチュエータ2の実施例を示し、4は円柱状あるいは円筒状等のシャフトで、その軸方向に沿って、永久磁石6が配列されて、直動用の磁石列7を構成している。
【0015】
磁石6は例えば磁性金属粉を成型したボンド磁石で、筒状で、中心をシャフト4が貫通してシャフト4に固定され、両端面がシャフト4の軸に直角な面から傾斜している。永久磁石6はシャフト4の軸方向に沿って磁化され、例えばS極同士が向き合い、またN極同士が向き合うように配列されて、磁石列7となる。なお磁化の方向(磁石内での磁束の方向)及び磁石列7の構成方法は任意である。
【0016】
シャフト4の一端に複数の永久磁石8が環状に固定されて、回転用の磁石列9を構成している。磁石8は、磁化の方向がシャフト4の周方向で、例えばボンド磁石から成り、例えばS極同士が向き合い、またN極同士が向き合うように配列されている。好ましくは、永久磁石8は、シャフト4の軸方向に沿って、シャフト4のx方向のストロークL1以上の長さL2を持つようにし、シャフト4が直動しても、回転用の磁石列として機能させる。なおシャフト4の支持を図示しないエアベアリングにより行うと、非接触でシャフト4を支持でき、摩耗、故障等の問題が少ない。
【0017】
10は直動用の駆動コイルで、円筒状で、直動用の磁石列7を取り巻くように配置されている。12は回転用の駆動コイルで、円筒状で、回転用の磁石列9を取り巻くように配置されている。これらの駆動コイル10,12は、例えばU相、V相、W相の3相の駆動電流で動作するが、駆動電流の種類、波形等は任意である。また駆動コイル10,12への電流は、センサ14により求めたシャフトの直動位置x及び回転角θにより、フィードバック制御される。ここで直動用の磁石列7は直動用の駆動コイル10との相互作用により、
図1の±x方向の力を発生する。また回転用の磁石列9は回転用の駆動コイル12との相互作用により、
図1の±θ方向の力を発生する。
図1のx方向の位置を直動位置とし、θ方向の位置を回転角とする。実施例では、シャフト4と磁石列7,9とが可動側、他の部材が固定側であるが、シャフト4と磁石列7,9とを固定し、駆動コイル10,12等の他の部材を直動及び回転させても良い。実施例では、駆動コイル10,12を取り巻く磁気ヨークを設けないので、磁石列7,9からの磁束に磁気ヨークが吸着することがない。従って滑らかに始動できる。
【0018】
14はセンサで、複数の磁気素子がシャフト4の軸方向に沿って配列され、かつ磁石列7と対向する位置に設けられている。磁気素子の配列ピッチは、永久磁石6の配列ピッチの整数分の1で、例えば磁気素子を4個配列する場合、そのピッチを例えば永久磁石6の配列ピッチの1/4とする。センサ14は、例えば特許文献2(特許3862033)に記載されている励磁コイルと検出コイルとであるが、励磁コイルと検出コイルとを兼用しても良く、またホール素子、磁気抵抗素子等の他の磁気素子を用いても良い。なお磁気素子は、外部からの磁界により特性が変化する素子をいう。16は磁気シールドで、非磁性の金属から成り、駆動コイルからの交流磁界を遮断する。センサ14を駆動コイル10の外周側に配置したため、磁気シールド16を設けたが、磁気シールド16は設けなくても良く、またセンサ14を
図1の鎖線の位置に設けても良い。
【0019】
18は制御回路で、センサ14の信号によりシャフトの直動位置xと回転角θとを設けて、駆動コイル10,12を制御する。直動−回転アクチュエータ2は例えばチップマウンタとして用い、例えばシャフト4の先端にハンド20を設けて、図示しないチップを吸引し、回転運動によりチップの向きを整え、x方向の運動によりチップを例えば下降させて、図示しない基板上にマウントする。直動−回転アクチュエータ2は、これ以外に、ロボットのアーム、検査装置、塗布装置等、任意の用途に用いることができる。
【0020】
磁石列7を、シャフト4の軸に直角な断面に沿って
図2に示す。磁石6は端面が軸に直角ではないため、2個の磁石6a,6bの境界が見える。駆動コイル10は環状で、その外周に磁気シールド16に囲まれたセンサ14がある。
【0021】
磁石列9を、シャフト4の軸に直角な断面に沿って
図3に示す。磁石列9の外周を例えばU相、V相、W相の3相の駆動コイル12が環状に取り巻き、回転モータとしてシャフト4を回転させる。なお、駆動コイル12は、磁石列9の内側に配置しても良い。
【0022】
図4はシャフト4と駆動用のコイル10とを拡大して示し、永久磁石6の中心軸をシャフト4が貫通し、永久磁石6の端面はシャフト4の軸に直角な面に対し傾斜している。また永久磁石6はシャフト4に固定されている。
【0023】
図5は制御回路18を示し、センサ14の信号は直動位置xと回転角θの双方に依存し、この信号をスイッチ22へ入力する。アクチュエータ2が直動中は、信号Pxがスイッチ22へ入力され、センサ信号は参照表23で直動位置に変換され、メモリ25に直動位置xとして記憶される。直動駆動回路27は、この位置xに基づいて駆動コイル10を制御する。またアクチュエータが回転中は信号Pθがスイッチ22へ入力され、センサ信号は参照表24で回転角に変換され、メモリ26に回転角θとして記憶される。回転駆動回路28は、この回転角θにより駆動コイル12を制御する。なお直動中は例えば回転角θは一定として処理し、回転中は例えば直動位置xは一定として処理するが、これに限るものではない。
【0024】
図6,
図7は変形例の直動−回転アクチュエータ40を示し、
図1〜
図5の実施例と同じ符号は同じものを表す。磁石列7に沿って、シャフト4の軸方向に複数の磁気素子を配列したセンサ42,44が複数個、例えば2個、配置され、一方のセンサの信号をS1、他方のセンサの信号をS2とする。2個のセンサ42,44の信号S1,S2を、
図7の制御回路50で直動位置xと回転角θとに変換する。直動位置xを求めるには、センサ信号S1とS2を加算部51で加算し、参照表53で直動位置xに変換する。回転位置θを求めるには、センサ信号S1とS2との差分を差分部52で求め、参照表54で回転角θに変換する。センサを3個以上設ける場合、これらの信号の平均から直動位置xが求まり、これらの信号の相対値から回転角θが求まる。
【0025】
図8〜
図10に第2の実施例を示し、以下に指摘する点以外は
図1〜
図7の実施例及び変形例と同様である。61は直動用の磁石列で、永久磁石62をシャフト4の軸方向に沿って配列したもので、永久磁石62の端面はシャフト4の軸に直角である。このためセンサ14はシャフト4の直動位置のみを表す信号を出力する。64は磁気マークで、その周囲に、複数個で例えば4個の検出コイルS1,S2,C1,C2が配置されている。66は制御回路で、シャフト4の直動位置と回転角とを求めて、駆動コイル10,12を制御する。
【0026】
図9は磁気マーク64と検出コイルS1,S2,C1,C2の配置を示す。磁気マーク64は例えば磁性体で構成され、シャフト4の中心から磁気マーク64の外周面までの距離が回転角により変化して、120°毎等の所定の角度で同じパターンを繰り返す。磁気マークの周囲に、例えば90°毎に検出コイルS1,S2,C1,C2が配置され、励磁電流の周波数をω、シャフト4の回転角をθとすると、検出コイルS1はsinθsinωtの信号を、検出コイルS2は
-sinθsinωtの信号を、検出コイルC1はcosθsinωtの信号を、検出コイルC2は-cosθsinωtの信号を出力する。そこで特許文献2の信号処理回路と同様にして、4個の検出コイルS1,S2,C1,C2の電流から、回転角を求めることができる。なお検出コイルの数、励磁コイルの有無等は任意で、磁性体から成る磁気マーク64に代えて、永久磁石からなる磁気マークを用いても良い。さらに光学式のエンコーダを用いても良い。
【0027】
図8に戻り、シャフト4の直動ストロークL1の任意の位置で回転角を検出できるように、シャフト4の軸方向に沿った磁気マーク64の長さL3を、ストロークL1以上とすることが好ましい。この点は、永久磁石を磁気マークとする場合も、光学式のエンコーダを用いる場合も同様である。
【0028】
図10は制御回路66の構成を示し、演算回路68はセンサ14の信号から直動位置xを求めて、メモリ25に記憶させ、駆動回路27は求めた直動位置に基づいて駆動コイル10を駆動する。演算回路69は検出コイルS1,S2,C1,C2を流れる電流から回転角θを求めて、メモリ26に記憶させ、駆動回路28は求めた回転角に基づいて駆動コイル12を駆動する。
【0029】
実施例には以下の特徴がある。
1) シャフト4と、磁石列7,9等及び駆動コイル10,12により、直動と回転とを行うことができコンパクトな、直動−回転アクチュエータが得られる。
2) 回転用の磁石8がシャフト4の直動ストロークL1以上の長さを持つことにより、ストロークの任意の位置で回転できる。
3) 駆動コイル10,12を取り巻く磁気ヨークがないので、永久磁石に磁気ヨークが吸着することがなく、滑らかに始動できる。
4) コンパクトな直動−回転アクチュエータなので、チップマウンタ等に適している。