特開2015-6168(P2015-6168A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-6168(P2015-6168A)
(43)【公開日】2015年1月15日
(54)【発明の名称】炭酸飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20141212BHJP
【FI】
   A23L2/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-102098(P2014-102098)
(22)【出願日】2014年5月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-111910(P2013-111910)
(32)【優先日】2013年5月28日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山地 麻里江
(72)【発明者】
【氏名】堂本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】畑中 大
【テーマコード(参考)】
4B017
【Fターム(参考)】
4B017LC02
4B017LE10
4B017LK04
4B017LK06
4B017LK30
4B017LL01
4B017LP01
(57)【要約】
【課題】
本発明は、炭酸で増強するメントールの苦味及び/または後味のキレを改善した炭酸飲料を提供することを課題とする。
【解決手段】
(a)3w/vppm以上のメントールと、(b)甜茶抽出物及び/または青葉の香りを有する香気成分を含有することを特徴とする炭酸飲料。3w/vppm以上のメントールを含有する炭酸飲料において、甜茶抽出物及び/または青葉の香りを有する香気成分を添加することで、メントールの苦味を抑制し、及び/又は後味のキレを改善する方法。
青葉の香りを有する香気成分は、cis−3−ヘキセノール、trans−2−ヘキセナール、trans−2−ヘキセノール、又はcis−2−ヘキセノールが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)3w/vppm以上のメントールと、(b)甜茶抽出物及び/または青葉の香りを有する香気成分を含有することを特徴とする炭酸飲料。
【請求項2】
メントールがl−メントールである請求項1に記載の炭酸飲料。
【請求項3】
メントール1質量部に対し甜茶抽出物を2質量部以上含有する請求項1又は2に記載の炭酸飲料。
【請求項4】
青葉の香りを有する香気成分がcis−3−ヘキセノール、trans−2−ヘキセナール、trans−2−ヘキセノール、及びcis−2−ヘキセノールの群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の炭酸飲料。
【請求項5】
メントール1質量部に対しcis−3−ヘキセノール、trans−2−ヘキセナール、trans−2−ヘキセノール、及びcis−2−ヘキセノールの群から選ばれる少なくとも1種を0.01質量部以上含有する請求項4に記載の炭酸飲料。
【請求項6】
甘味料を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の炭酸飲料。
【請求項7】
甘味料が、異性化糖、砂糖、スクラロース及びステビア抽出物の群から選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載の炭酸飲料。
【請求項8】
pHが3.0〜5.0である請求項1〜7の何れかに記載の炭酸飲料。
【請求項9】
3w/vppm以上のメントールを含有する炭酸飲料において、甜茶抽出物及び/または青葉の香りを有する香気成分を添加することで、メントールの苦味を抑制し、及び/又は後味のキレを改善する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メントールを含有する炭酸飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガム、飴、ハーブティー等に含まれるメントールが、冷涼感を与えることが知られている。そのため、これらの食品は風味を楽しむだけでなく、仕事、スポーツ、自動車の運転等において上記の感覚を得るために摂取されている。冷涼感を付与するために、メントールを添加した食品、健康飲料等が開発されてきた。これまで、メントールを配合したのど飴、メントールを添加した内服液等が知られている。
しかし、メントールを炭酸飲料に配合すると、苦味の強さが顕著になりさらに特有の後味が残りやすくキレが悪いという課題がある。
【0003】
これまでに、メントールの苦味を抑制する技術が検討されてきた。例えば、重曹や食塩の配合(特許文献1)、食用油脂の配合(特許文献2)、クルクミンの配合(特許文献3)、乳化香料組成物の配合(特許文献4)、グリシド酸エステル類の配合(特許文献5)などが知られている。
しかし、これらの方法は炭酸飲料へメントールを添加した際の苦味や特有の後味には効果が十分ではなかった。
一方、近年、ストレス軽減や疲労回復成分として青葉の香りを有する香気成分(cis−3−ヘキセノール(青葉アルコール)、trans−2−ヘキセナール(青葉アルデヒド)などが知られており(非特許文献1)、いろいろな応用事例が報告されている(例えば、特許文献6、特許文献7参照)。しかし、これら先行文献には、本発明のメントールを含有する炭酸飲料へ甜茶抽出物を添加した際の甘味や特有の後味の低減効果は記載されていない。
【0004】
甜茶は、ルプソシドと呼ばれるポリフェノールによる特有の甘味と後味を有し、解熱、鎮咳、食欲増進に有効な健康茶として中国南部の広西壮族自治区で飲まれている。近年、甜茶抽出物による抗アレルギー作用が見出され、様々な飲食品に配合されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−212041号公報
【特許文献2】特開2004−18829号公報
【特許文献3】特許4473338号公報
【特許文献4】特開2010−239872号公報
【特許文献5】特開2012−80840号公報
【特許文献6】特開2006−25643号公報
【特許文献7】特開2006−36726号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】みどりの香り 植物の偉大なる知恵 2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、炭酸で増強するメントールの苦味及び/または後味のキレを改善した炭酸飲料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、3w/vppm以上のメントールを含有する炭酸飲料において、特有の後味を有する甜茶抽出物及び/又は苦味を有する青葉の香りの香気成分を配合することにより、意外にもメントールの苦味や後味のキレを改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)(a)3w/vppm以上のメントールと、(b)甜茶抽出物及び/または青葉の香りを有する香気成分を含有することを特徴とする炭酸飲料、
(2)メントールがl−メントールである(1)に記載の炭酸飲料、
(3)メントール1質量部に対し甜茶抽出物を2質量部以上含有する(1)又は(2)に記載の炭酸飲料、
(4)青葉の香りを有する香気成分がcis−3−ヘキセノール、trans−2−ヘキセナール、trans−2−ヘキセノール、及びcis−2−ヘキセノールの群から選ばれる少なくとも1種である、(1)〜(3)のいずれかに記載の炭酸飲料、
(5)メントール1質量部に対しcis−3−ヘキセノール、trans−2−ヘキセナール、trans−2−ヘキセノール、及びcis−2−ヘキセノールの群から選ばれる少なくとも1種を0.01質量部以上含有する(4)に記載の炭酸飲料、
(6)さらに、甘味料を含有する(1)〜(5)のいずれかに記載の炭酸飲料、
(7)甘味料が、異性化糖、砂糖、スクラロース及びステビア抽出物の群から選ばれる少なくとも1種である(6)に記載の炭酸飲料、
(8)pHが3.0〜5.0である(1)〜(7)の何れかに記載の炭酸飲料、
(9)3w/vppm以上のメントールを含有する炭酸飲料において、甜茶抽出物及び/または青葉の香りを有する香気成分を添加することで、メントールの苦味を抑制し、及び/又は後味のキレを改善する方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、3w/vppm以上のメントールを含有する炭酸飲料に、甜茶抽出物及び/または青葉の香りを有する香気成分を配合することにより、メントールの苦味や後味のキレを改善した炭酸飲料の提供が可能となった。
また、本発明では、甜茶抽出物及び/または青葉の香りを有する香気成分の後味や苦味もメントールの苦味や後味によって相殺されるため、本発明の炭酸飲料の飲みやすさが損なわれることもない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の炭酸飲料は、3w/vppm以上のメントールと甜茶抽出物及び/又は青葉の香りを有する香気成分を含有するものである。
【0012】
本発明の炭酸飲料の必須成分であるメントールとしては、飲料に用いることができる品質のものであれば特に限定されず、例えば、食品添加物として使用できる合成品や天然から抽出したl−メントールやdl−メントールの他、ペパーミントやスペアミント等のメントールを含有する植物の抽出物、その濃縮物等が挙げられる。これらの中でも、本発明の炭酸飲料においては、呈味の観点から、l−メントールを用いることが好ましい。また、本発明の炭酸飲料におけるメントールの含有量は、苦味を感じ、後味のキレがよくない範囲や溶解性の観点から、3〜1000w/vppm(以下、単に「ppm」という)であり、好ましくは10ppm〜300ppm、特に好ましくは27ppm〜300ppmである。
【0013】
本発明で用いる甜茶とは、バラ科キイチゴ属の甜茶(Rubus suavissimus S.Lee)(正式名称:甜葉懸釣子)を指し、中国南部の広西壮族自治区でよく飲まれている。甜茶には様々な効果があり、特に最近ではその抗アレルギー効果が広く知られている。
【0014】
本発明で使用する甜茶抽出物は、甜茶の葉・茎を、そのまま、あるいは必要に応じて、乾燥、破砕、粉砕処理等を行った後に抽出することにより得られる。抽出手段は特に限定されず、エタノール等の有機溶媒や水またはそれらの混合物を用いた撹拌・振盪・浸漬抽出法や、減圧水蒸気蒸留抽出法、二酸化炭素等の超臨界流体を用いた超臨界ガス抽出法等公知の抽出方法にて行なえばよい。具体的に甜茶の抽出物を浸漬抽出法で得る場合、その条件は0〜35℃で15分〜10時間である。
【0015】
本発明の炭酸飲料における甜茶抽出物の含有量は、10〜100000ppm、好ましくは50〜50000ppm、特に好ましくは50〜27000ppmである。また、本発明の炭酸飲料中の甜茶抽出物の含有量は、メントール1質量部に対して1〜10000質量部、好ましくは2〜2000質量部である。1質量部未満であると、メントールの苦味や後味のキレの改善効果が充分でないことがあるためであり、10000質量部を超えると甜茶抽出物そのものの後味が強くなり、好ましくないためである。
【0016】
本発明の炭酸飲料における「青葉の香りを有する香気成分」とは、炭素数が6個で揮発性を呈する化合物(cis−3−ヘキセノール(青葉アルコール)、trans−2−ヘキセナール(青葉アルデヒド)、cis−3−ヘキセナール、trans−3−ヘキセノール、trans−2−ヘキセノール、trans−2−ヘキセン酸、trans−3−ヘキセナール、n−ヘキサノール、n−ヘキサナール)とそのエステルなどが挙げられる。これらは、青葉の香りとして公知の成分である。これら成分のうち、本発明の効果の点から好ましいはcis−3−ヘキセノール、trans−2−ヘキセナール、trans−2−ヘキセノール、cis−2−ヘキセノールである。
【0017】
本発明の炭酸飲料における青葉の香りを有する香気成分の含有量は、0.01ppm〜1000ppm、好ましくは0.1ppm〜500ppm、特に好ましくは0.27ppm〜135ppmである。
【0018】
また、本発明の炭酸飲料中、青葉の香りを有する香気成分の含有量は、メントール1質量部に対して通常0.001〜10質量部、好ましくは0.01〜5質量部である。0.001質量部未満であると、メントールの苦味や後味のキレの改善効果が充分でないことがあるためであり、10質量部を超えると青葉の香りを有する香気成分そのものの苦味が強くなり、好ましくないことがある。
【0019】
本発明の炭酸飲料にはさらに甘味料を配合することが好ましい。甘味料を配合すると、メントールの苦味を抑えつつ、甘味料による甘味や後味も青葉の香りによって抑えられることから、爽快感がさらに強化されるからである。本発明に用いられる甘味料としては、砂糖、異性化糖、ブドウ糖、果糖、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア抽出物、アスパルテーム等が挙げられる。これら甘味料中、甘味料の甘みを抑え、甘味料の後味改善し、炭酸飲料の爽快感が強化できるという効果の点から、特に、異性化糖、砂糖、スクラロース又はステビア抽出物が好ましい。
【0020】
本発明において用いられる異性化糖とは、でん粉をアミラーゼ等の酵素又は酸により加水分解して得られた糖液を、酵素又はアルカリにより異性化したぶどう糖又は果糖を主成分とする液状の糖であり、果糖ぶどう糖液糖やぶどう糖果糖液糖などとも呼ばれる。本発明の炭酸飲料における異性化糖の含有量は1〜40w/v%(以下、単に「%」という)であるが、本発明においては異性化糖の甘味と後味をより強く感じる5%以上の含有量で実施する意義が大きい。また、上限値は好ましくは25%である。40%を超えると異性化糖自体の甘みが強くなり、好ましくないことがある。
【0021】
本発明の炭酸飲料における砂糖の含有量は、1〜40%であるが、本発明においては砂糖の甘味と後味をより強く感じる5%以上の含有量で実施する意義が大きい。また、上限値は好ましくは25%である。40%を超えると砂糖自体の甘みが強くなり、好ましくないことがある。
【0022】
本発明において用いられるスクラロースは、4,1’,6’−トリクロロガラクトスクロースを指し、砂糖の約600倍の甘味の高甘味度甘味料である。本発明の炭酸飲料におけるスクラロースの含有量は、3〜700w/vppm(以下、単に「ppm」という)であるが、本発明においてはスクラロースの甘味と後味をより強く感じる15ppm以上の含有量で実施する意義が大きい。また、上限値は好ましくは500ppmである。700ppmを超えるとスクラロース自体の甘みが強くなり、好ましくないことがある。
【0023】
本発明で用いるステビア抽出物としては、天然のステビア抽出物の他にこれらの糖転移物も含まれ、例えばリバウディオサイドA、リバウディオサイドB、リバウディオサイドC、リバウディオサイドD、リバウディオサイドEおよびα−グルコシルステビオシドが挙げられる。本発明の炭酸飲料におけるステビア抽出物の含有量は、10〜2000ppmであるが、本発明においてはステビア抽出物の甘味と後味をより強く感じる50ppm以上の含有量で実施する意義が大きい。また、上限値は好ましくは1500ppmである。2000ppmを超えるとステビア抽出物自体の甘みが強くなり、好ましくないことがある。
【0024】
これら甘味料は、本発明の炭酸飲料に1種を含有させるだけでなく、2種以上を適宜組み合わせて含有させても良い。本発明の甘味料の組成としては、甘味度換算で炭酸飲料100mlあたり砂糖4g相当以上となる組成であれば、どのような組成であっても適用できる。甘味度とは、甘味の強度を指し、一般的に砂糖を1とした甘味度は異性化糖:1.0、ブドウ糖:0.60〜0.70、果糖:1.20〜1.50、マルチトール:0.80〜0.90、キシリトール:0.60、ソルビトール:0.60〜0.70、エリスリトール:0.70〜0.80、アセスルファムカリウム:200、スクラロース:600、ステビア抽出物:100〜200、アスパルテーム:100〜200である。
【0025】
本発明の炭酸飲料のpHは、特に限定されず、例えば、2.5〜7.0である。風味の観点からは低pHであることが好ましく、更に好ましくはpH3.0〜5.0である。本発明の炭酸飲料のpH調整は、炭酸飲料に通常使用されるpH調整剤を使用することができる。具体的なpH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸、マレイン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、アジピン酸、グルタミン酸、フマル酸等の有機酸およびそれらの塩類、塩酸等の無機酸、水酸化ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0026】
更に、本発明の炭酸飲料には、本発明の効果を損なわない範囲で、抗酸化剤、着色料、香料、矯味剤、界面活性剤、増粘剤、安定剤、保存料、甘味料、酸味料等の添加物を適宜配合することができる。
【0027】
本発明の炭酸飲料は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、水に、メントールおよび苦味低減物質を添加し、更に所望により前述した他の成分を添加して攪拌し、飲料原液を調製する。そして、必要に応じてpHの調整や加熱殺菌をしてから冷却した後、ガス圧が所定の範囲、例えば、0.2〜4.0kg/cm2になるように炭酸ガスをガス封入(カーボネーション)し、容器に充填して、殺菌する工程により製造することができる。なお、炭酸飲料の製法には、プレミックス法とポストミックス法とがあるが、本発明においてはいずれを採用してもよい。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例等を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に何ら限定されるものではない。なお、実施例で使用した甜茶抽出物は、Rubus suavissimus S.Leeの葉を水で抽出し濃縮後噴霧乾燥させた原料である。
【0029】
下記表1の参考例1〜5に記載の処方及び次の方法に従い炭酸飲料を調製した。まず、全量(100ml)の45%程度の水に、クエン酸、クエン酸三ナトリウムを添加した後、40〜50℃に加温し、l−メントールを添加、溶解した後に、塩酸または水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整し、全量の50%の濃度の飲料原液を調製した。最後にこの飲料原液に炭酸水を加えて全量とし、炭酸飲料を得た。
【0030】
【表1】
【0031】
下記表5〜10に記載の処方および次の方法に従い炭酸飲料を調製した。まず、全量(100ml)の45%程度の水に、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、甜茶抽出物、cis−3−ヘキセノール、trans−2−ヘキセナール、trans−2−ヘキセノール、cis−2−ヘキセノール、異性化糖(果糖ぶどう糖液糖 含量75%)、砂糖、スクラロース、ステビア抽出物を添加した後、40〜50℃に加温し、l−メントールを添加、溶解した後に、塩酸または水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整し、全量の50%の濃度の飲料原液を調製した。最後にこの飲料原液に炭酸水を加えて全量とし、炭酸飲料を得た(実施例1〜15)。l-メントール、クエン酸、クエン酸三ナトリウムのみを添加した炭酸飲料を対照とし(比較例1)、また、甜茶のかわりにバラの花びら抽出物、青葉の香りを有する香気成分と似た構造の化合物(cis−2−ペンテン-1-オール、cis−3−ヘプテノール、1−ヘプタノール)を青葉の香りの代わりに添加した飲料も調製した(比較例2〜6)。
【0032】
これらの炭酸飲料について、28〜34歳の男女3人をパネルとして、試験液約20mLを服用し、調製直後のメントールの苦味及び後味のキレについて評価した。なお、苦味及び後味は長く残りやすいことから、一つのサンプルを評価した後は、15分経過してから次の試験液の評価を行った。評価は下記のように相対評価で行った。
【0033】
<メントールの苦味の評価>
苦味が比較例に比べ「非常に強い」を3点、「強い」を2点、「やや強い」を1点、「同じ」を0点、「やや弱い」を−1点、「弱い」を−2点、「非常に弱い」を−3点とした7段階の評価で行った。パネル3名の平均点を下記表2に記載の基準に変換し示した。
【0034】
【表2】
【0035】
<後味のキレの評価>
後味のキレが比較例に比べ「非常に良い」を3点、「良い」を2点、「やや良い」を1点、「同じ」を0点、「やや悪い」を−1点、「悪い」を−2点、「非常に悪い」を−3点とした7段階の評価で行った。パネル3名の平均点を下記表3に記載の基準に変換し示した。
【0036】
【表3】
【0037】
<炭酸飲料の爽快感の評価>
炭酸飲料の爽快感が、比較例に比べ「非常に強い」を3点、「強い」を2点、「やや強い」を1点、「同じ」を0点、「やや弱い」を−1点、「弱い」を−2点、「非常に弱い」を−3点とした7段階の評価で行った。パネル3名の平均点を下記表4に記載の基準に変換し示した。
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】
実施例1〜3に示すように、甜茶抽出物を270ppm以上配合することで、比較例1に比べ、メントールの苦味及び後味のキレが改善した。(甜茶抽出物の場合は、特に苦味に対する効果が大きかった。)
【0041】
【表6】
【0042】
実施例4〜6に示すように、cis−3−ヘキセノールを0.27ppm以上配合することで、比較例1に比べ、苦味及び後味のキレが改善した。(cis−3−ヘキセノールの場合は、特に後味のキレに対する効果が大きかった。)
【0043】
【表7】
【0044】
実施例7〜9に示すように、他の青葉の香りであるtrans−2−ヘキセナール、trans−2−ヘキセノール、cis−2−ヘキセノールでも同様の効果があった。
【0045】
【表8】
【0046】
実施例10〜12に示すように、メントールを配合した炭酸飲料に甜茶エキスとcis−3−ヘキセノール、または甘味料とcis−3−ヘキセノールを配合することによって、苦味と後味のキレの両方が改善し、爽快感を強めた炭酸飲料とすることができた。
【0047】
【表9】
【0048】
【表10】
【0049】
実施例13に示すように、甘味料と甜茶を組み合わせることにより、メントールの苦味を大きく抑制することができた。また、実施例14〜15に示すように、さらに青葉の香りを組み合わせることにより、後味のキレも改善し、爽快感が強化された炭酸飲料とすることができた。
また、比較例2〜6に示すように、甜茶と同じバラ科の植物であるバラの花びら抽出物では効果はなかった。また、青葉の香りを有する香気成分と似た構造の化合物であるcis−2−ペンテン-1-オール、cis−4−ヘプテン-1-オール、cis−3−ヘプテノール、1−ヘプタノール)も苦味を低減し、キレを改善する効果はなかった。
【0050】
<炭酸飲料の調製>
下記表11に記載の処方および次の方法に従い炭酸飲料を調製した。まず、全量(100ml)の45%程度の水に、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、甜茶抽出物、cis−3−ヘキセノールを添加した後、40〜50℃に加温し、l−メントールを添加、溶解した後に、塩酸または水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整し、全量の50%の濃度の飲料原液を調製した。最後にこの飲料原液に炭酸水を加えて全量とし、炭酸飲料を得た(実施例16〜22)。
【0051】
【表11】
【0052】
実施例16〜22に示す炭酸飲料は、苦味、後味のキレが改善され、服用性が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の炭酸飲料はメントールを含有しているにもかかわらず苦味や後味のキレが改善しているので、飲みやすい炭酸飲料を得るのに好適である。