【実施例】
【0032】
試験および結果の概要
初期金属濃度、pH、温度、撹拌、および種菌量の関数として、真菌の死菌バイオマス、乾燥バイオマス、および生菌バイオマスへの銅の生物吸着の平衡および動態試験を行った。
【0033】
死菌バイオマスについて、銅の生物吸着能の範囲を観察し、接触の60分以内に完了し、pH5.0、温度40℃において、攪拌速度150rpmで、ヒポクレア・リキシイでは最大銅生物吸着が15〜30mg・g
−1、トリコデルマ・コニンギオプシスでは20〜35mg・g
−1であった。
【0034】
平衡データは、ラングミュア等温式を用いてより良く説明され、動態解析は擬2次モデルを示した。
【0035】
真菌によって生合成されたナノ粒子の平均サイズ、形態、および位置を、走査型電子顕微鏡法(SEM)、エネルギー分散型X線分光分析法(EDS)、および透過電子顕微鏡観法(TEM)よって決定した。
【0036】
ナノ粒子の形状は主に、ヒポクレア・リキシイでは、平均サイズが15〜35nmの球状で、細胞外での合成が見られ、トリコデルマ・コニンギオプシスでは、平均サイズが70〜95nmで、まれに328.27nmの凝集体があり、細胞外に合成された。減衰全反射(ATR)でのフーリエ変換赤外分光(FTIR)試験により、アミド基が粒子に結合していることが明らかになり、それによりナノ粒子の安定性が説明できる。さらに、銅ナノ粒子を囲む安定化剤およびキャッピング剤として、タンパク質の存在が確認された。
【0037】
これらの試験は、ヒポクレア・リキシイおよびトリコデルマ・コニンギオプシスの死菌バイオマスの水のバイオレメディエーションおよび銅ナノ粒子の工業的規模での生産のための経済的で技術的に実行可能な選択肢を提供することを示した。
【0038】
実施例1(廃水のバイオレメディエーションの実施および銅ナノ粒子の工業的規模での生産のためのヒポクレア・リキシイの死菌バイオマスの使用)
1.生物の培養および維持
ヒポクレア・リキシイは、カナラン・ドス・カラジャース(Cana dos Carajas)、パラ(Para)、ブラジルアマゾン地域(南緯06°26’および西経50°4’)に位置するソッセゴ(Sossego)鉱山の銅廃棄物の溜め池から採集した水から単離した。ヒポクレア・リキシイを、サブローデキストロース寒天培地(SDA)(オクソイド、イングランド)で維持および活性化した[Kumar BN, Seshadri N, Ramana DKV, Seshaiah K, Reddy AVR (2011) Equilibrium, Thermodynamic and Kinetic studies on Trichoderma viride biomass as biosorbent for the removal of Cu (II) from water. Separ Sci Technol 46: 997-1004]。
【0039】
2.寒天培地での最小発育阻止濃度
単離した真菌の銅耐性を、スポットプレート法(spot plate method)によって最小発育阻止濃度(MIC)として決定した[Ahmad I, Ansari MI, Aqil F (2006) Biosorption of Ni, Cr and Cd by metal tolerante Aspergillus niger and Penicillium sp using single and multi-metal solution. Indian J Exp Biol 44: 73-76]。さまざまな濃度の銅(50〜2000mg L
−1)を含有するSDAプレートを調製し、試験真菌の種菌を金属および対照プレート(金属を含まないプレート)上にスポットした。プレートを、25℃で少なくとも5日間インキュベーションした。MICは、目に見える単離菌の成長を阻害する金属の最低濃度として定義する。
【0040】
3.生物吸着剤による銅ナノ粒子滞留の決定
3.1.吸着質溶液の調製
本試験で使用した化学薬品はすべて、分析グレードであり、さらに精製することなく使用した。希釈液はすべて、2回脱イオン水(ミリポアミリQ、伝導率18.2Ωcm
−1)で調製した。銅ストック溶液を、CuCl
22H
20(Carlo Erba、イタリア)を2回脱イオン水に溶解することによって調製した。このストック溶液を希釈することによって、作業溶液を調製した。
【0041】
3.2.バイオマス調製
真菌のバイオマスを、サブロー液体培地(Sb)(オクソイド、イングランド)で調製し、25℃で5日間、150rpmでインキュベーションした。インキュベーションした後、沈渣を採取し、2回脱イオン水で洗浄し、これを生菌バイオマスとした。死菌バイオマスの調製は、適当量の生菌バイオマスをオートクレーブした。乾燥バイオマスは、真菌マットを50℃でパリパリになるまで乾燥することを通して得た。乾燥したマットを粉砕して、均一なサイズの粒子を得た[Salvadori MR, Lepre LF, Ando RA, do Nascimento CAO, Correa B (2013) Biosynthesis and uptake of copper nanoparticles by dead biomass of Hypocrea lixii isolated from the metal mine in the Brazilian Amazon region. Plos One 8: 1-8].
【0042】
3.3.生物吸着剤による銅ナノ粒子吸着の効率への物理化学的因子の影響に関する試験
銅の除去について、pH(2〜6)、温度(20〜60℃)、接触時間(5〜360分)、初期銅濃度(50〜500mg L
−1)、および攪拌速度(50〜250rpm)を解析した。そのような実験を、プラスチックフラスコ中で、100mg L
−1のCu(II)テスト試験溶液を45mL用いて所望のpH、温度、金属濃度、接触時間、攪拌速度、および生物吸着剤投与量(0.15〜1.0g)に最適化した。
【0043】
幾つかの濃度(50〜500mg L
−1)の銅(II)を、銅(II)ストック溶液の適切な希釈により調製した。pHはHCLまたはNaOHで調整した。次に、所望のバイオマス投与量を加え、フラスコの内容物を電気式温度自動調節往復振とう器で、必要とされる攪拌速度で所望の接触時間振とうした。振とう後、銅(II)溶液を、ミリポア膜を通して真空ろ過することによってバイオマスから分離した。ろ過液中の金属濃度を、フレーム原子吸光分光光度計(AAS)により決定した。金属除去の効率(R)を以下の方程式を用いて算出した。
R=(C
i−C
e)/C
i.100
(式中、C
iおよびC
eはそれぞれ、初期および平衡金属濃度である。)
金属取り込み能、q
e、を以下の方程式を用いて算出した。
q
e=V(C
i−C
e)/M
(式中、q
e(mg・g
−1)は任意の時間における生物吸着剤の生物吸着能、M(g)はバイオマス投与量、およびV(L)は溶液の量である。)
【0044】
3.4.生物吸着等温式モデル
生物吸着は、次の吸着剤濃度、50〜500mg L
−1を用いてバッチ平衡法により分析した。フロイントリッヒおよびラングミュア等温式モデルを用いて、平衡データを当てはめた[Volesky B (2003) Biosorption process simulation tools. Hydrometallurgy 71: 179-190]。線形化ラングミュア等温式モデルは、
C
e/q
e=1/(q
m.b)+C
e/q
m
であり、式中、q
mは吸着剤の単分子層吸着能(mg・g
−1)、bはラングミュア吸着定数(L・mg
−1)である。線形化フロイントリッヒ等温式モデルは、
lnq
e=lnK
F+1/n.lnC
e
であり、式中、K
Fは生物吸着能に関連する定数、1/nは吸着剤の吸着強度に関する。
【0045】
3.5.生物吸着動態
Cu(II)生物吸着の速度動態の結果を、擬1次モデルおよび擬2次モデルを用いて解析した。線形擬1次モデル[Lagergren S (1898) About the theory of so called adsorption of soluble substances. Kung Sven Veten Hand 24: 1-39]は、以下の方程式によって表わすことができる。
log(q
e−q
t)=logq
e−K
1/2.303.t
(式中、q
e(mg・g
−1)およびq
t(mg・g
−1)はそれぞれ、平衡時間および任意の時間tおける吸着剤に吸着される金属の量であり、K
1(分
−1)は擬1次吸着プロセスの速度定数である。)
線形擬2次モデル[Ho YS, Mckay G (1999) Pseudo-second-order model for sorption process. Process Biochem 34: 451-465]は、以下の方程式によって表わすことができる。
t/q
t=1/K
2.q
e2+t/q
e
(式中、K
2(g・mg
−1・分
−1)は、擬2次の平衡速度定数である。)
【0046】
4.ヒポクレア・リキシイによる金属銅ナノ粒子の生合成
生菌バイオマスおよび乾燥バイオマスと比較して、高い銅金属イオン吸着能を示したヒポクレア・リキシイの死菌バイオマスのみを、この試験では使用した。銅(II)溶液が100mg・L
−1の濃度における平衡モデルデータを使用して、ヒポクレア・リキシイの死菌バイオマスによる銅ナノ粒子の生合成を調べた。
【0047】
4.1.TEM観察
サイズ、形状、および生物吸着剤上の銅ナノ粒子を位置を決定するために、透過電子顕微鏡法(TEM)による解析を用い、検体の超薄切片を透過型電子顕微鏡(JEOL−1010)で観察した。
【0048】
4.2.SEM−EDS分析
銅ナノ粒子の形成前後の生体材料小さい断片の分析をピンスタブ上で行ない、次いで真空下で金でコーティングし、エネルギー分散型分光計(EDS)を備えたJEOL 6460 LVでSEMによって試験した。
【0049】
4.3.FTIR−ATR分析
赤外振動分光法(FTIR)を使用して、バイオマスに存在する官能基を同定し、銅ナノ粒子の存在によって引き起こされるスペクトル変動を評価した。赤外吸収スペクトルを、ブルカーモデルALPHA干渉分光計で得た。試料を、単一反射の全反射測定法アクセサリー(白金−結晶ダイヤモンドを用いたATR)を使用して、試料コンパートメントに直接置いた。4cm
−1のスペクトル分解能を用いて、試料各々について80スペクトルを蓄積した。
【0050】
銅山から単離されたヒポクレア・リキシイをさまざまな銅濃度(50〜2000mg・L
−1)における最小発育阻止濃度(MIC)に供し、その結果は、ヒポクレア・リキシイが銅に対する高い耐性(528mg・L
−1)を呈することを示した。
【0051】
4.4.物理化学的因子の生物吸着への影響
本試験は、バイオマス投与量、pH、温度、接触時間、撹拌速度、および金属イオン濃度などの物理化学的因子もよって、ヒポクレア・リキシイバイオマスによる銅除去が影響されることを示した。生物吸着剤投与量は、金属の所与の初期濃度に対する生物吸着剤の容量・能力を決定するため、重要なパラメーターである。
【0052】
図1Aに見られるように、ヒポクレア・リキシイの生菌バイオマスおよび乾燥バイオマスによる銅に除去は、バイオマス濃度の増加とともに増加し、0.75g・L
−1で飽和に達し、一方で死菌バイオマスでは、飽和は1.0g・L
−1で達せられる(
図1A)。死菌バイオマスによる銅の除去パーセント割合は、生菌バイオマスおよび乾燥バイオマスで観察された割合より大きかった(
図1A)。死菌バイオマスは、Cu(II)除去について以下の有利な点を提供する:金属除去系が毒性に供されない、成長培地を必要としない、吸着金属イオンを容易に脱着できる、死菌バイオマスは再利用することができる。生菌バイオマスおよび乾燥バイオマスによる銅除去は、0.75g・L
−1超ではバイオマス濃度の増加とともに減少した。
【0053】
この結果は、死菌バイオマスが、生菌バイオマスおよび乾燥バイオマスバイオマスと比べて、銅に対してより高い親和性を有することを示す。バイオマス投与量の増加に伴う除去容量の増加は、全表面積より大きいことや、結果として結合部位の数がより多いことに帰することができる。
図1Bに示されるように、最大の銅の除去は、3種類のバイオマスで、pH5.0において見られた。より低いpH値では、ヒポクレア・リキシイの細胞壁が、正の電荷を帯びるようになり、それが生物吸着能の減少の原因となる。対照的に、より高いpH(pH5)では、細胞壁表面が負の電荷をより帯びるようになり、それによるバイオマスと正の電荷を帯びた金属イオンとの引力のためにヒポクレア・リキシイのCu(II)の生物吸着は高い。
【0054】
最大の銅の除去は、3種類のバイオマスで、40℃において見られた(
図1C)。金属の生物吸着への温度の影響は、金属と細胞壁上のリガンドとの相互作用を示唆した。グラフ(
図1D)は3種類のバイオマスのすべてで、酵素触媒反応の特徴であるシグモイド型動態に従うことが観察された。死菌バイオマスに対する銅ナノ粒子形成の動態は、89%を超える粒子が反応の60分以内に形成されたことを示し、銅ナノ粒子の形成が指数関数的であることを示唆した。最適な銅除去は、3種類のバイオマスのすべてで、攪拌速度150rpmにおいて見られた(
図1E)。高攪拌速度では、ボルテックス現象が生じ、懸濁液はもはや均一ではなく、実際にも金属除去を損なう(Liu YG, Fan T, Zeng GM, Li X, Tong Q et al. (2006) Removal of cadmium and zinc ions from aqueous solution by living Aspergillus niger. Trans Nonferrous Met Soc China 16: 681-686)。
【0055】
図1Fに示されるように、3種類のバイオマスで、銅吸着の%割合は、金属濃度(50〜500mg・L
−1)の増加とともに減少した。
【0056】
4.5.吸着等温式および動態モデル
ラングミュアおよびフロイントリッヒ等温式モデルを使用して、生物吸着データを当てはめ、生物吸着能を決定した。3種類のヒポクレア・リキシイバイオマスから得られたCu(II)生物吸着に関するラングミュア等温式を
図2A、
図2B、および
図2Cに示す。等温式定数、ラングミュアおよびフロイントリッヒモデルによって推定される最大積載能力、回帰係数を、表1に示す。ラングミュアモデルは、フロイントリッヒモデルと比べて、より良くCu(II)生物吸着等温式を説明した。
【0057】
この試験で観察されたヒポクレア・リキシイによるCu(II)の最大吸着率(19.0mg・g
−1)は、吸着率がそれぞれ6.2、1.52、15.08、および19.0mg・g
−1である、ウスラヒラタケ(Pleurotus pulmonaris)、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)、ペニシリウムの複数種(Penicillium spp)、およびリゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizus)などの他の公知の生物吸着剤に関して報告されている吸着率と同様かまたは高かった(Veit MT, Tavares CRG, Gomes-da-Costa SM, Guedes TA (2005) Adsorption isotherms of copper (II) for two species of dead fungi biomasses. Process Biochem 40: 3303-3308; Du A, Cao L, Zhang R, Pan R (2009) Effects of a copper-resistant fungus on copper adsorption and chemical forms in soils. Water Air Soil Poll 201: 99-107; Rome L, Gadd DM (1987) Copper adsorption by Rhizopus arrhizus, Cladosporium resinae and Penicillium italicum. Appl Microbiol Biotechnol 26: 84-90)。
【0058】
ヒポクレア・リキシイの3種類のバイオマスすべてのCu(II)生物吸着動態を、擬1次および擬2次モデルを用いて解析した。定数および回帰係数をすべて、表2に示す。
図2D、
図2E、および
図2Fに示されるように、本試験では、ヒポクレア・リキシイによる生物吸着は、擬2次動態モデルを用いて最も良く説明される。この吸着動態は、2価の金属の生物吸着剤への吸着に典型的である(Reddad Z, Gerent C, Andres Y, LeCloirec P (2002) Adsorption of several metal ions onto a low-cost biosorbents: kinetic and equilibrium studies. Environ Sci Technol 36: 2067-2073)。
【0059】
4.6.銅ナノ粒子の生合成
生物学的な系によるナノ粒子の形成の複雑な機序を研究することは、さらにより信頼でき、再現可能なその生合成の方法を決定するために重要である。真菌のバイオマスでのナノ粒子の形成の理解に向けて、一部分の死菌バイオマスをTEMによって調査した。ヒポクレア・リキシイにおけるナノ粒子の位置を調べると、電子顕微鏡像から、ナノ粒子は細胞壁に見られるが細胞質および細胞膜には見られず、対照ではナノ粒子が存在しないことが明らかになり、対照およびオートクレーブプロセスにより銅が浸潤したバイオマスでは、細胞質材料の萎縮などの超微細構造変化が観察された(
図3Aおよび
図3B)。細胞外に位置することは、生産プロセスにおける、より迅速で、大量にナノ粒子の獲得、容易な除去、バイオマスの再使用の可能性という有利な点を提供する。ナノ粒子の形状およびサイズは、ナノスケール材料の物理的、化学的、光学的、および電子的性質を制御する最も重要な特徴のうちの2つである(Alivisatos AP (1996) Perspectives on the physical chemistry of semiconductor nanocrystals. J Phys Chem 100: 13226-13239; Aizpurua J, Hanarp P, Sutherland DS, KaII M, Bryant GW, et al. (2003) Optical properties of gold nanorings. Phys Rev Lett 90: 57401-57404)。
【0060】
本試験では、銅ナノ粒子は、24.5nmの平均直径を示した。
図3Cに示されるように、100nmの拡大では、粒子は主に球形である。銅ナノ粒子の存在をスポットプロファイルSEM−EDS測定によって確認された。真菌のバイオマスによるCu(II)の生物吸着の前後に記録されたSEM顕微鏡写真をそれぞれ、
図4Aおよび
図4Bに示す。我々は、銅ナノ粒子が真菌バイオマスの表面に結合した後、不規則性を増加することによって、表面の変形が起こることを観察した。菌糸の調査領域で記録されたEDSスペクトルは、菌類の銅からのシグナルを示す(
図5Aおよび
図5B)。
【0061】
これとは別に、C、N、および0のシグナルは、銅ナノ粒子表面のキャッピング物質としてのタンパク質の存在を示す。そのようなシグナルは、菌類により分泌されたタンパク質によると見られ、銅ナノ粒子の合成および安定化(キャッピング物質)に関与しうる銅と生理活性分子との潜在的な相互作用を特定する、銅ナノ粒子の形成に関するFTIR−ATR測定によって支持されている。
【0062】
タンパク質中のアミノ酸残基間のアミド結合は、電磁スペクトルの赤外域における周知の特徴を生み出す。FTIRスペクトルは、アミドIおよびアミドIIの変角振動にそれぞれ相当する1649および1532cm
−1に、2つのバンドを示現する(
図6)。そのような形態は、銅ナノ粒子に結合したペプチド/タンパク質に起因し、キャッピング剤として作用するこれらの物質の可能性を示唆している[Bansal V, Ahamad A, Sastry M (2006) Fungus-mediated biotransformation of amorphous silica in rice husk to nanocrystalline Silica. J Am Chem Soc 128: 14059-14066]。
【0063】
この試験では、バイオマス試料を銅(II)イオンで飽和した後、純粋な試料に関するFT−IRスペクトルにおいて、幾つかのバンドシフトが、特にアミド基にあたるバンドで観察された。1644、1632、および1537cm
−1のバンドがそれぞれ、1649、1627、および1532cm
−1にシフトした(
図6)。そのシフトは、生物吸着が利用可能なバイオマス内の銅イオンとアミド基との相互作用によることを示唆する。1375および1073cm
−1に観察される2つのバンドはそれぞれ、芳香族および脂肪族アミンのC−N伸縮振動に当てられることができる(
図6)(Vigneshwaran N, Kathe AA, Varadarajan PV, Nachane RP, Balasubramanya RH (2007) Silver-protein (core-shell) nanoparticle production using spent mushroom substrate. Langmuir 23: 7113-7117)。
【0064】
そのような観察結果は、タンパク質の存在、および潜在的な安定化につながるタンパク質の銅ナノ粒子との結合を示す。おそらく死菌バイオマスでは、細胞からのタンパク質はオートクレーブ過程の間に遊離して、細胞表面に結合する。この観察結果は、球状形態の銅ナノ粒子は、たぶんナノ粒子の表面に結合し、それによって球状ナノ粒子の安定化剤として作用するタンパク質とともに存在することを示す。また、本試験で得られたFTIRの結果は、タンパク質のアミド基は強い親和性を有して金属に結合すること明らかにした。しかし、試験された銅のナノ粒子との相互作用に関与するタンパク質の種類は、決定されないままである。そのような理解は、銅ナノ粒子を生産するための、より効率的な、環境に優しいプロセス(green process)につながりうる。
【表1】
【表2】
【0065】
実施例2(廃水のバイオレメディエーションの実施および銅ナノ粒子の工業的規模での生産のためのトリコデルマ・コニンギオプシスの死菌バイオマスの使用)
1.生物の培養および維持
トリコデルマ・コニンギオプシスは、カナラン・ドス・カラジャース(Canaa dos Carajas)、パラ(Para)、ブラジルアマゾン地域(南緯06°26’および西経50°4’)に位置するソッセゴ(Sossego)鉱山の銅廃棄物の溜め池から採集した沈殿物から単離した。トリコデルマ・コニンギオプシスを、サブローデキストロース寒天培地(SDA)(オクソイド、イングランド)で維持および活性化した(Kumar BN, Seshadri N, Ramana DKV, Seshaiah K, Reddy AVR (2011) Equilibrium, Thermodynamic and Kinetic studies on Trichoderma viride biomass as biosorbent for the removal of Cu (II) from water. Separ Sci Technol 46: 997-1004)。
【0066】
2.寒天培地での最小発育阻止濃度
単離した真菌の銅耐性を、スポットプレート法(spot plate method)によって最小発育阻止濃度(MIC)として決定した(Ahmad I, Ansari MI, Aqil F (2006) Biosorption of Ni, Cr and Cd by metal tolerante Aspergillus niger and Penicillium sp using single and multi-metal solution. Indian J Exp Biol 44: 73-76)。さまざまな濃度の銅(50〜2000mg・L
−1)を含有するSDAプレートを調製し、試験する真菌の種菌を金属および対照プレート(金属を含まないプレート)上にスポットした。プレートを、25℃で少なくとも5日間インキュベーションした。MICは、目に見える単離菌の成長を阻害する金属の最低濃度として定義する。
【0067】
3.生物吸着剤による銅ナノ粒子滞留の決定
3.1.吸着質溶液の調製
本試験で使用した化学薬品はすべて、分析グレードであり、さらに精製することなく使用した。希釈液はすべて、2回脱イオン水(ミリポアミリQ、伝導率18.2Ωcm
−1)で調製した。銅ストック溶液を、CuCl
22H
20(Carlo Erba、イタリア)を2回脱イオン水に溶解することによって調製した。このストック溶液を希釈することによって、作業溶液を調製した。
【0068】
3.2.バイオマス調製
真菌のバイオマスを、サブロー液体培地(Sb)(オクソイド、イングランド)で調製し、25℃で5日間、150rpmでインキュベーションした。インキュベーションした後、沈渣を採取し、2回脱イオン水で洗浄し、これを生菌バイオマスとした。死菌バイオマスの調製は、適当量の生菌バイオマスをオートクレーブした。乾燥バイオマスは、真菌マットを50℃でパリパリになるまで乾燥することを通して得た。乾燥したマットを粉砕して、均一なサイズの粒子を得た(Salvadori MR, Lepre LF, Ando RA, do Nascimento CAO, Correa B (2013) Biosynthesis and uptake of copper nanoparticles by dead biomass of Hypocrea lixii isolated from the metal mine in the Brazilian Amazon region. Plos One 8: 1-8)。
【0069】
3.3.生物吸着剤による銅ナノ粒子吸着の効率への物理化学的因子の影響に関する試験
銅の除去について、pH(2〜6)、温度(20〜60℃)、接触時間(5〜360分)、初期銅濃度(50〜500mg・L
−1)、および攪拌速度(50〜250rpm)を解析した。そのような実験を、プラスチックフラスコ中で、100mg L
−1のCu(II)テスト試験溶液を45mL用いて所望のpH、温度、金属濃度、接触時間、攪拌速度、および生物吸着剤投与量(0.15〜1.0g)に最適化した。
【0070】
幾つかの濃度(50〜500mg・L
−1)の銅(II)を、銅(II)ストック溶液の適切な希釈により調製した。pHはHCLまたはNaOHで調整した。次に、所望のバイオマス投与量を加え、フラスコの内容物を電気式温度自動調節往復振とう器で、必要とされる攪拌速度で所望の接触時間振とうした。振とう後、銅(II)溶液を、ミリポア膜を通して真空ろ過することによってバイオマスから分離した。ろ過液中の金属濃度を、フレーム原子吸光分光光度計(AAS)により決定した。金属除去の効率(R)を以下の方程式を用いて算出した。
R=(C
i−C
e)/C
i.100
(式中、C
iおよびC
eはそれぞれ、初期および平衡金属濃度である。)
金属取り込み能、q
eを以下の方程式を用いて算出した。
q
e=V(C
i−C
e)/M
(式中、q
e(mg・g
−1)は任意の時間における生物吸着剤の生物吸着能、M(g)はバイオマス投与量、およびV(L)は溶液の量である。)
【0071】
3.4.生物吸着等温式モデル
生物吸着は、次の吸着剤濃度、50〜500mg L
−1を用いてバッチ平衡法により分析した。フロイントリッヒおよびラングミュア等温式モデルを用いて、平衡データを当てはめた(Volesky B (2003) Biosorption process simulation tools. Hydrometallurgy 71: 179-190)。線形化ラングミュア等温式モデルは、
C
e/q
e=1/(q
m・b)+C
e/q
m
であり、式中、q
mは吸着剤の単分子層吸着能(mg・g
−1)、bはラングミュア吸着定数(L・mg
−1)である。線形化フロイントリッヒ等温式モデルは、
lnq
e=lnK
F+1/n.lnC
e
であり、式中、K
Fは生物吸着能に関連する定数、1/nは吸着剤の吸着強度に関する。
【0072】
3.5.生物吸着動態
Cu(II)生物吸着の速度動態の結果を、擬1次モデルおよび擬2次モデルを用いて解析した。線形擬1次モデル(Lagergren S (1898) About the theory of so called adsorption of soluble substances. Kung Sven Veten Hand 24: 1-39)は、以下の方程式によって表わすことができる。
log(q
e−q
t)=logq
e−K
1/2.303.t
(式中、q
e(mg・g
−1)およびq
t(mg・g
−1)はそれぞれ、平衡時間および任意の時間tおける吸着剤に吸着される金属の量であり、K
1(分
−1)は擬1次吸着プロセスの速度定数である。)
線形擬2次モデル(Ho YS, Mckay G (1999) Pseudo-second-order model for sorption process. Process Biochem 34: 451-465)は、以下の方程式によって表わすことができる。
t/q
t=1/K
2.q
e2+t/q
e
(式中、K
2(g・mg
−1・分
−1)は、擬2次の平衡速度定数である。)
【0073】
4.トリコデルマ・コニンギオプシスによる金属銅ナノ粒子の生合成
生菌バイオマスおよび乾燥バイオマスと比較して、高い銅金属イオン吸着能を示したトリコデルマ・コニンギオプシスの死菌バイオマスのみを、この試験では使用した。銅(II)溶液が100mg・L
−1の濃度における平衡モデルデータを使用して、トリコデルマ・コニンギオプシスの死菌バイオマスによる銅ナノ粒子の生合成を調べた。
【0074】
4.1.TEM観察
サイズ、形状、および生物吸着剤上の銅ナノ粒子を位置を決定するために、透過電子顕微鏡法(TEM)による解析を用い、検体の超薄切片を透過型電子顕微鏡(JEOL−1010)で観察した。
【0075】
4.2.SEM−EDS分析
銅ナノ粒子の形成前後の生体材料小さい断片の分析をピンスタブ上で行ない、次いで真空下において金でコーティングし、エネルギー分散型分光計(EDS)を備えたJEOL 6460 LVでSEMによって試験した。
【0076】
4.3.FTIR−ATR分析
赤外振動分光法(FTIR)を使用して、バイオマスに存在する官能基を同定し、銅ナノ粒子の存在によって引き起こされるスペクトル変動を評価した。赤外吸収スペクトルを、ブルカーモデルALPHA干渉分光計で得た。試料を、単一反射の全反射測定法アクセサリー(白金−結晶ダイヤモンドを用いたATR)を使用して、試料コンパートメントに直接置いた。4cm
−1のスペクトル分解能を用いて、試料各々について80スペクトルを蓄積した。
【0077】
銅山から単離されたトリコデルマ・コニンギオプシスをさまざまな銅濃度(50〜2000mg L
−1)における最小発育阻止濃度(MIC)に供し、その結果は、トリコデルマ・コニンギオプシスが銅に対する高い耐性(1057mg・L
−1)を示すことを示した。
【0078】
4.4.物理化学的因子の生物吸着への影響
本試験は、バイオマス投与量、pH、温度、接触時間、撹拌速度、および金属イオン濃度などの物理化学的因子もよって、トリコデルマ・コニンギオプシスによる銅除去が影響されることを示した。
【0079】
生物吸着剤投与量は、金属の所与の初期濃度に対する生物吸着剤の容量・能力を決定するため、重要なパラメーターである。
図7Aに見られるように、トリコデルマ・コニンギオプシスの生菌バイオマスおよび乾燥バイオマスによる銅に除去は、バイオマス濃度の増加とともに増加し、0.75g・L
−1で飽和に達したのに対し、死菌バイオマスでは、飽和は1.0g・L
−1で達せられた(
図7A)。
【0080】
死菌バイオマスによる銅の除去パーセント割合は、生菌バイオマスおよび乾燥バイオマスで観察された割合より大きかった(
図7A)。Cu(II)除去に関して、死菌バイオマスは次の有利な点を提供する:金属除去系が毒性に供されない、成長培地を必要としない、吸着金属イオンを容易に脱着できる、死菌バイオマスは再利用することができる。生菌バイオマスおよび乾燥バイオマスによる銅除去は、0.75g・L
−1超ではバイオマス濃度の増加とともに減少した。
【0081】
この結果は、死菌バイオマスが、生菌バイオマスおよび乾燥バイオマスバイオマスと比べて、銅に対してより高い親和性を有することを示す。バイオマス投与量の増加に伴う除去容量の増加は、全表面積より大きいことや、結果として結合部位の数がより多いことに帰することができる。
図7Bに示されるように、最大の銅の除去は、3種類のバイオマスで、pH5.0において見られた。より低いpH値では、トリコデルマ・コニンギオプシスの細胞壁が、正の電荷を帯びるようになり、それが生物吸着能の減少の原因となる。対照的に、より高いpH(pH5)では、細胞壁表面が負の電荷をより帯びるようになり、それによるバイオマスと正の電荷を帯びた金属イオンとの引力のためにトリコデルマ・コニンギオプシスのCu(II)の生物吸着は高い。
【0082】
最大の銅の除去は、3種類のバイオマスで、40℃において見られた(
図7C)。金属の生物吸着への温度の影響は、金属と細胞壁上のリガンドとの相互作用を示唆した。グラフ(
図7D)は3種類のバイオマスのすべてで、酵素触媒反応の特徴であるシグモイド型動態に従うことが観察された。死菌バイオマスに対する銅ナノ粒子形成の動態は、91%を超える粒子が反応の60分以内に形成されたことを示し、銅ナノ粒子の形成が指数関数的であることを示唆した。最適な銅除去は、3種類のバイオマスのすべてで、攪拌速度150rpmにおいて見られた(
図7E)。高攪拌速度では、ボルテックス現象が生じ、懸濁液はもはや均一ではなく、実際にも、金属除去を損なう(Liu YG, Fan T, Zeng GM, Li X, Tong Q et al. (2006) Removal of cadmium and zinc ions from aqueous solution by living Aspergillus niger. Trans Nonferrous Met Soc China 16: 681-686)。
【0083】
図7Fに示されるように、3種類のバイオマスで、銅吸着の%割合は、金属濃度(50〜500mg・L
−1)の増加とともに減少した。
4.5.吸着等温式および動態モデル
【0084】
ラングミュアおよびフロイントリッヒ等温式モデルを使用して、生物吸着データを当てはめ、生物吸着能を決定した。3種類のトリコデルマ・コニンギオプシスバイオマスから得られたCu(II)生物吸着に関するラングミュア等温式を
図8A、
図8B、および
図8Cに示す。等温式定数、ラングミュアおよびフロイントリッヒモデルによって推定される最大積載能力、回帰係数を、表3に示す。ラングミュアモデルは、フロイントリッヒモデルと比べて、より良くCu(II)生物吸着等温式を説明した。
【0085】
この試験で観察されたトリコデルマ・コニンギオプシスによるCu(II)の最大吸着率(21.1mg・g
−1)は、吸着率がそれぞれ6.2、1.52、15.08、19.0、19.6、15.85、および2.76mg・g
−1である、ウスラヒラタケ(Pleurotus pulmonaris)、シゾフィラム・コムーネ(Schizophyllum commune)、ペニシリウム属の複数種(Penicillium spp)、リゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizus)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、ピキア・スティピティス(Pichia stipitis)、ピクノポラス・サンギネウス(Pycnoporus sanguineus)などの他の公知の生物吸着剤に関して報告されている吸着率と同様かまたは高かった(Veit MT, Tavares CRG, Gomes-da-Costa SM, Guedes TA (2005) Adsorption isotherms of copper (II) for two species of dead fungi biomasses. Process Biochem 40: 3303-3308; Du A, Cao L, Zhang R, Pan R (2009) Effects of a copper-resistant fungus on copper adsorption and chemical forms in soils. Water Air Soil Poll 201: 99-107; Rome L, Gadd DM (1987) Copper adsorption by Rhizopus arrhizus, Cladosporium resinae and Penicillium italicum. Appl Microbiol Biotechnol 26: 84-90; Kumar BN, Seshadri N, Ramana DKV, Seshaiah K, Reddy AVR (2011) Equilibrium, Thermodynamic and Kinetic studies on Trichoderma viride biomass as biosorbent for the r
emoval of Cu (II) from water. Separ Sci Technol 46: 997-1004; Yilmazer P, Saracoglu N (2009) Bioaccumulation and biosorption of copper (II) and chromium (III) from aqueous solutions by Pichia stiptis yeast. J Chem Technol Biot 84: 604-610; Yahaya YA, Matdom M, Bhatia S (2008) Biosorption of copper (II) onto immobilized cells of Pycnoporus sanguineus from aqueous solution: Equilibrium and Kinetic studies. Hazard Mater 161: 189-195)。
【0086】
細菌由来の生物吸着剤との比較は、トリコデルマ・コニンギオプシスのCu(II)吸着率がバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)IAM1026の吸着率(20.8mg・g
−1)に匹敵することを示した(Nakajima A, Yasuda M, Yokoyama H, Ohya-Nishiguchi H, Kamada H (2001) Copper sorption by chemically treated Micrococcus luteus cells. World J Microb Biot 17: 343-347)。
【0087】
トリコデルマ・コニンギオプシスの3種類のバイオマスすべてのCu(II)生物吸着動態を、擬1次および擬2次モデルを用いて解析した。定数および回帰係数をすべて、表4に示す。
図8D、
図8E、および
図8Fに示されるように、本試験では、トリコデルマ・コニンギオプシスによる生物吸着は、擬2次動態モデルを用いて最も良く説明される。この吸着動態は、2価の金属の生物吸着剤への吸着に典型的である(Reddad Z, Gerent C, Andres Y, LeCloirec P (2002) Adsorption of several metal ions onto a low-cost biosorbents: kinetic and equilibrium studies. Environ Sci Technol 36: 2067-2073)。
【0088】
4.6.銅ナノ粒子の生合成
生物学的な系によるナノ粒子の形成の複雑な機序を研究することは、さらにより信頼でき、再現可能なその生合成の方法を決定するために重要である。真菌のバイオマスでのナノ粒子の形成の理解に向けて、一部分の死菌バイオマスをTEMによって調査した。トリコデルマ・コニンギオプシスにおけるナノ粒子に位置を調べると、電子顕微鏡像から、ナノ粒子は細胞壁に見られるが細胞質および細胞膜には見られず、対照ではナノ粒子が存在しないことが明らかになり、対照およびオートクレーブプロセスにより銅が浸潤したバイオマスでは、細胞質材料の萎縮などの超微細構造変化が観察された(
図9Aおよび
図9B)。細胞外に位置することは、生産プロセスにおける、より迅速で、大量にナノ粒子の獲得、容易な除去、バイオマスの再使用の可能性という有利な点を提供する。ナノ粒子の形状およびサイズは、ナノスケール材料の物理的、化学的、光学的、および電子的性質を制御する最も重要な特徴のうちの2つである(Alivisatos AP (1996) Perspectives on the physical chemistry of semiconductor nanocrystals. J Phys Chem 100: 13226-13239; Aizpurua J, Hanarp P, Sutherland DS, KaII M, Bryant GW, et al. (2003) Optical properties of gold nanorings. Phys Rev Lett 90: 57401-57404)。
【0089】
本試験では、
図9Bに示されるように、銅ナノ粒子は平均直径が87.5nmで、主として球形を示した。平均直径が328.27nmのナノ粒子の稀な凝集体が見られた(
図9C)。
【0090】
銅ナノ粒子の存在をスポットプロファイルSEM−EDS測定によって確認された。真菌のバイオマスによるCu(II)の生物吸着の前後に記録されたSEM顕微鏡写真をそれぞれ、
図10Aおよび
図10Bに示す。我々は、銅ナノ粒子が真菌バイオマスの表面に結合した後、不規則性を増加することによって、表面の変形が起こることを観察した。菌糸の試験領域で記録されたEDSスペクトルは、菌類の銅からのシグナルを示す(
図11Aおよび
図11B)。
【0091】
これとは別に、C、N、O、Na、P、Cl、およびKのシグナルは、銅ナノ粒子表面のキャッピング物質としてのタンパク質の存在を示す。そのようなシグナルは、菌類により分泌されたタンパク質によると見られ、銅ナノ粒子の合成および安定化(キャッピング物質)に関与しうる銅と生理活性分子との潜在的な相互作用を特定する、銅ナノ粒子の形成に関するFTIR−ATR測定によって支持されている。
【0092】
タンパク質中のアミノ酸残基間のアミド結合は、電磁スペクトルの赤外域における周知の特徴を生み出す。FTIRスペクトルは、アミドIおよびアミドIIの変角振動にそれぞれ相当する1649および1534cm
−1に、2つのバンドを示現する(
図12)。そのような形態は、銅ナノ粒子に結合したペプチド/タンパク質に起因し、キャッピング剤として作用するこれらの物質の可能性を示唆している(Bansal V, Ahamad A, Sastry M (2006) Fungus-mediated biotransformation of amorphous silica in rice husk to nanocrystalline Silica. J Am Chem Soc 128: 14059-14066)。
【0093】
この試験では、バイオマス試料を銅(II)イオンで飽和した後、純粋な試料に関するFT−IRスペクトルにおいて、幾つかのバンドシフトが、特にアミド基にあたるバンドで観察された。1626および1537cm
−1のバンドがそれぞれ、1622および1534cm
−1にシフトした(
図12)。そのシフトは、生物吸着が利用可能なバイオマス内の銅イオンとアミド基との相互作用によることを示唆する。1377および1068cm
−1に観察される2つのバンドはそれぞれ、芳香族および脂肪族アミンのC−N伸縮振動に当てられることができる(
図12)(Vigneshwaran N, Kathe AA, Varadarajan PV, Nachane RP, Balasubramanya RH (2007) Silver-protein (core-shell) nanoparticle production using spent mushroom substrate. Langmuir 23: 7113-7117)。
【0094】
そのような観察結果は、タンパク質の存在、および潜在的な安定化につながるタンパク質の銅ナノ粒子との結合を示す。おそらく死菌バイオマスでは、細胞からのタンパク質はオートクレーブ過程の間に遊離して、細胞表面に結合する。この観察結果は、球状形態の銅ナノ粒子は、たぶんナノ粒子の表面に結合し、それによって球状ナノ粒子の安定化剤として作用するタンパク質とともに存在することを示す。また、本試験で得られたFTIRの結果は、タンパク質のアミド基は強い親和性を有して金属に結合すること明らかにした。しかし、試験された銅のナノ粒子との相互作用に関与するタンパク質の種類は決定されないままである。そのような理解は、銅ナノ粒子を生産するための、より効率的な、環境に優しいプロセス(green process)につながり得る。
【表3】
【表4】