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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-6179(P2015-6179A)
(43)【公開日】2015年1月15日
(54)【発明の名称】乳酸菌増殖用組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20141212BHJP
   A23L 1/30 20060101ALI20141212BHJP
   A61P 3/02 20060101ALN20141212BHJP
   A61K 36/899 20060101ALN20141212BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20141212BHJP
【FI】
   C12N1/20 A
   A23L1/30 B
   A61P3/02
   A61K35/78 U
   A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-119090(P2014-119090)
(22)【出願日】2014年6月9日
(62)【分割の表示】特願2014-110763(P2014-110763)の分割
【原出願日】2014年5月29日
(31)【優先権主張番号】特願2013-113208(P2013-113208)
(32)【優先日】2013年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(72)【発明者】
【氏名】石井 茉里子
(72)【発明者】
【氏名】永瀧 達大
(72)【発明者】
【氏名】山口 和也
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD49
4B018MD86
4B018MD91
4B018ME14
4B018MF13
4B065AA30X
4B065BB26
4B065BC01
4B065BD43
4B065CA42
4C088AB73
4C088AC05
4C088BA07
4C088CA02
4C088CA11
4C088NA14
4C088ZC21
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】簡便かつ安価に乳酸菌を増殖させることができ、しかも乳酸菌の増殖促進効果が高い乳酸菌増殖用組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の乳酸菌増殖用組成物は、六条大麦の茎及び/又は葉を含有することを特徴とする。六条大麦が、倍取、シルキースノウ、はがねむぎ、カシマゴール、ファイバースノウ、シュンライ及びイチバンボシから選ばれる少なくとも1の品種の六条大麦であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
六条大麦の茎及び/又は葉を含有することを特徴とする乳酸菌増殖用組成物。
【請求項2】
六条大麦が、倍取、シルキースノウ、イチバンボシ、はがねむぎ、カシマゴール、シュンライ及びファイバースノウから選ばれる少なくとも1の品種の六条大麦であることを特徴とする乳酸菌増殖用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大麦の茎及び/又は葉(以下「茎葉」という)を用いた乳酸菌増殖用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
大麦は中央アジア原産とされ、イネ科に属する一年生又は越年生草本である。大麦は、穂形により、二条大麦と六条大麦等に大別される。二条大麦と六条大麦とでは、穂についている実の列数が異なり、穂を上から見ると二条大麦は2列に、六条大麦は6列に実がついている。六条大麦は、2〜3世紀に朝鮮を経て日本に渡来したとされ、雑穀として利用されるほか、麦茶の原料にも利用されている。一方、二条大麦は日本には欧米から明治時代に導入されたとされ、主に醸造用に用いられている。
【0003】
また、乳酸菌は、グルコース等の糖類から多量の乳酸を生成する細菌の総称であり、醤油、清酒、味噌等に見出される他、乳製品、穀類、腸等にも分布している。発酵乳、乳酸菌飲料、チーズ等の製造のために、乳酸菌の培養には獣乳を含む培地を使用することが多いが、乳酸菌の栄養要求性が厳格であるため、増殖に適さない菌株が多いという問題がある。このため、乳酸菌を増殖させるための物質として、培地中に、酵母エキス、麦芽エキス、ペプトン、アミノ酸等を添加することが知られているが、高価な上に培養条件が制限され、安価かつ簡便に、乳酸菌を増殖させることが難しいという問題がある。
【0004】
安価且つ簡便に乳酸菌を増殖できる組成物として、本出願人は、先に大麦の茎葉を用いた乳酸菌増殖用組成物を提案した(特許文献1)。特許文献1には、段落〔0013〕に、「前記大麦の品種としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二条大麦、四条大麦、六条大麦、裸麦などが挙げられる」と記載されている。特許文献1の実施例ではこれらのうち二条大麦のみを用いている。
しかしながら、二条大麦の茎葉を用いた乳酸菌増殖用組成物による乳酸菌増殖効果は、十分なものと言い難い。
【0005】
また、大麦の茎葉は、青汁用の飲食用組成物に用いられる植物素材としても用いられている。青汁用の飲食用組成物は、植物の緑葉を含む、乾燥粉末や搾汁粉末等の様々な加工物とした製品であり、簡易に野菜成分を摂取できる健康食品として利用されている。
【0006】
従来、青汁用の飲食用組成物に用いられる大麦の茎葉としては、二条大麦の茎葉が広く使用されている。また、六条大麦の茎葉を用いた青汁用の飲食用組成物も知られている(特許文献2参照)。更に非特許文献1には、「赤神力」(登録商標)という品種の六条大麦が、葉が大きく肉厚である等の理由から青汁用の飲食用組成物の原料に適している旨が記載されている。
【0007】
しかしながら、消費者の間には、青汁用の飲食用組成物について、その味等に関してマイナスイメージが少なからず存在し、大麦の茎葉を用いた青汁用の飲食用組成物についても同様である。大麦の茎葉を用いた青汁用の飲食用組成物について、このようなイメージを払拭するために、緑色を鮮やかにして見た目を美しくし、また、えぐみや苦味、青臭さ等を低下させ、風味を向上させることが求められている。しかしながら、大麦の茎葉を用いた青汁用の飲食用組成物は、色を鮮やかにしようとすると、甘さが低下したり、えぐみが増しやすい傾向があるとの説もあり、このため、従来の大麦の茎葉を用いた青汁用の飲食用組成物は、見た目の美しさと、風味の良好さとを両立させるという点で十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−31426号公報
【特許文献2】特開2011−51948号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“当社のこだわり”、[online]、日本薬品開発株式会社、[平成25年5月29日検索]、インターネット<http://www.jpd.gr.jp/commitment/material.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、乳酸菌の増殖促進効果が高い乳酸菌増殖用組成物を提供することにある。また、色が鮮やかであるため見た目が美しく、且つ風味が良好で嗜好性の高い青汁用の飲食用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、大麦の茎葉を用いた乳酸菌増殖用組成物の乳酸菌増殖作用、及び青汁用の飲食用組成物の緑色の鮮やかさや風味について鋭意研究したところ、驚くべきことに、六条大麦の茎葉を用いた乳酸菌増殖用組成物は、二条大麦の茎葉を用いた乳酸菌増殖用組成物に比べて、乳酸菌増殖効果が高いことを見出し、本発明を完成させた。また、特定品種の六条大麦の茎葉を用いた乳酸菌増殖用組成物は、青汁用の飲食用組成物として用いると、従来の二条大麦及び六条大麦のいずれを用いた青汁商品に比べても、色が鮮やかであるため見た目が美しく、且つ風味が良好で嗜好性が高いことを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明は、六条大麦の茎及び/又は葉を含有することを特徴とする乳酸菌増殖用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の乳酸菌増殖用組成物は、乳酸菌を良好に増殖させることができる。
また特定品種の六条大麦の茎葉を用いた乳酸菌増殖用組成物は、青汁用の飲食用組成物として用いると、色が鮮やかであるため見た目が美しく、且つ、風味が良好で嗜好性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施例及び比較例における乳酸菌増殖試験の結果を示す写真である。
図2図2は、「色の鮮やかさ」についての実施例及び比較例における官能評価の結果を示すグラフである。
図3図3は、「えぐみの弱さ及び甘さ」についての実施例及び比較例における官能評価の結果を示すグラフである。
図4図4は、「えぐみの弱さ及び美味しさ」についての実施例及び比較例における官能評価の結果を示すグラフである。
図5図5は、「青臭さの弱さ、甘みの強さ及び美味しさ」についての実施例及び比較例における官能評価の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明の乳酸菌増殖用組成物は、六条大麦の茎及び/又は葉(茎葉)を原料の一つとして用いている。六条大麦の品種としては様々なものがあることが知られているところ、本発明の乳酸菌増殖用組成物は、特定品種の六条大麦の茎葉を用いていることが好ましい。ここでいう特定品種とは、倍取、シルキースノウ、イチバンボシ、はがねむぎ、カシマゴール、シュンライ及びファイバースノウの7品種である。これらの品種の六条大麦は、例えば精麦用として、具体的には、麦味噌や麦茶等の原料として一般的に用いられているものであるが、乳酸菌増殖用組成物の原料としてはこれまで用いられていなかった。本発明の乳酸菌増殖用組成物が、これら7品種のいずれかを用いる場合、7品種のうち1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
前記乳酸菌増殖用組成物は、六条大麦の茎葉の加工物、特に特定品種の六条大麦の茎葉の加工物を含有することによって、乳酸菌を良好に増殖させることができる。特に、前記特定品種として、倍取、シルキースノウ、イチバンボシ、はがねむぎ、カシマゴール、シュンライ及びファイバースノウから選ばれる少なくとも1の品種を用いると、一層良好に、乳酸菌を増殖させることができる。
【0017】
前記の特定品種の大麦の茎葉は、成熟期前、すなわち分けつ開始期から出穂開始前期に収穫されることが好ましい。具体的には、品種の違いによっても異なるが、一般に、背丈が10cm以上、好ましくは10〜90cm、より好ましくは30〜60cm程度である大麦から、若い茎葉を収穫することが好ましいが、これらに限定されるものではない。大麦の茎葉は、収穫後、直ちに処理されることが好ましい。処理までに時間を要する場合、大麦の茎葉の変質を防ぐために低温貯蔵などの当業者が通常用いる貯蔵手段により貯蔵される。
【0018】
本発明の乳酸菌増殖用組成物は、前記の特定品種の六条大麦の茎葉として、該茎葉から得られる各種の加工物を用いることができる。そのような加工物としては、例えば、茎葉の乾燥粉末、茎葉の細片化物及びその乾燥粉末、茎葉の搾汁及びその乾燥粉末、茎葉のエキス及びその乾燥粉末等が挙げられる。
【0019】
例えば、大麦の茎葉を乾燥粉末化するには従来公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、大麦の茎葉に対して、乾燥処理及び粉砕処理を組み合わせた方法を用いることができる。乾燥処理及び粉砕処理はいずれを先に行ってもよいが、乾燥処理を先に行うことが好ましい。乾燥粉末化は、この方法に、更に必要に応じブランチング処理、殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理を組み合わせてもよい。また、粉砕処理を行う回数は1回でも、2回以上の処理を組合せてもよいが、粗粉砕処理を行った後に、より細かく粉砕する微粉砕処理を組合せることが好ましい。
ブランチング処理とは、茎葉の緑色を鮮やかに保つための処理であり、ブランチング処理の方法としては、熱水処理や蒸煮処理などが挙げられる。ブランチング処理は、80〜100℃、好ましくは90〜100℃の熱水または水蒸気中で、茎葉を60〜180秒間、好ましくは90〜120秒間処理することが好ましい。また、ブランチング処理として熱水処理を行う場合、熱水中に炭酸マグネシウムなどの炭酸塩や炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩を溶解させておくことで、茎葉の緑色をより鮮やかにすることができるため、好ましい。また、蒸煮処理としては、常圧または加圧下において、茎葉を水蒸気により蒸煮する処理と冷却する処理とを繰り返す間歇的蒸煮処理が好ましい。間歇的蒸煮処理において、水蒸気により蒸煮する処理は、好ましくは20〜40秒間、より好ましくは30秒間行われる。蒸煮処理後の冷却処理は、直ちに行われることが好ましく、その方法は、特に制限しないが、冷水への浸漬、冷蔵、冷風による冷却、温風による気化冷却、温風と冷風を組み合わせた気化冷却などが用いられる。このうち温風と冷風を組み合わせた気化冷却が好ましい。このような冷却処理は、茎葉の品温が、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、最も好ましくは40℃以下となるように行われる。また、ビタミン、ミネラル、葉緑素などの栄養成分に富んだ茎葉の粉末を製造するためには、間歇的蒸煮処理を2〜5回繰り返すことが好ましい。
また、殺菌処理とは、通常、温度・圧力・電磁波・薬剤等を用いて物理的・化学的に微生物細胞を殺滅させる処理である。乾燥処理及び粉砕処理に追加してブランチング処理を行う場合、ブランチング処理は乾燥処理の前に行われることが好ましい。また乾燥処理及び粉砕処理に追加して殺菌処理を行う場合、殺菌処理は、乾燥処理の後か、粉砕処理の前又は後に行われることが好ましい。
また、乾燥処理としては、茎葉の水分含量が10%以下、特に5%以下となるように乾燥する処理であることが好ましい。この乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により行われ得る。加熱による乾燥は、好ましくは40℃〜140℃、より好ましくは80〜130℃にて加温により茎葉が変色しない温度及び時間で行われうる。
また、粉砕処理としては、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などを用いて当業者が通常使用する任意の方法により粉砕する処理が挙げられる。粉砕された茎葉は必要に応じて篩にかけられ、例えば、30〜250メッシュを通過するものを茎葉の粉末として用いることが好ましい。粒径が250メッシュ通過のもの以下とすることで、茎葉の粉末のさらなる加工時に取り扱いやすく、粒径が30メッシュ通過以上のものとすることで、茎葉の粉末と他の素材との均一な混合が容易である。
【0020】
具体的な乾燥粉末化の方法としては、例えば、大麦の茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥し、その後粉砕する方法が挙げられる(特開2004−000210号を公報参照)。また例えば、大麦の茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで揉捻し、その後、乾燥し、粉砕する方法(特開2002−065204号公報を参照)も挙げられる。また例えば、大麦の茎葉を乾燥し、粗粉砕した後、110℃以上で加熱し、更に微粉砕する方法(特開2003−033151号公報を参照)も挙げられる。
【0021】
大麦の茎葉を細片化する方法としては、スライス、破砕、細断等、当業者が植物体を細片化する際に通常使用する方法を用いることができる。細片化の一例として、スラリー化してもよい。スラリー化は、大麦の茎葉をミキサー、ジューサー、ブレンダー、マスコロイダーなどにかけ、大麦の茎葉をどろどろした粥状(液体と固体の懸濁液)にすることにより行う。このようにスラリー化することにより、茎葉は、細片の80質量%以上が好ましくは平均径1mm以下、より好ましくは0.5mm以下、一層好ましくは0.1mm以下、最も好ましくは0.05mm以下となるように細片化され、流動性を有するようになる。
【0022】
大麦の茎葉を搾汁する方法としては、大麦の茎葉又はその細片化物を圧搾するか、又は、大麦の茎葉の細片化物を遠心又はろ過する方法を挙げることができる。代表的な例としては、ミキサー、ジューサー、等の機械的破砕手段によって搾汁し、必要に応じて、篩別、濾過等の手段によって粗固形分を除去することにより搾汁液を得る方法があげられ、具体的には、特開平08-245408号公報や特開平09-047252号公報に記載の方法が挙げられる。
また、大麦の茎葉のエキスを得る方法としては、大麦の茎葉又はその細片化物に、エタノール、水、含水エタノールなどの当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて加温して抽出する方法を挙げることができる。抽出物は、必要に応じて濃縮してもよい。
【0023】
本発明の乳酸菌増殖用組成物は、前記の加工物を用い、任意の形態とすることができる。本発明の乳酸菌増殖用組成物の形態としては、飲食などの経口摂取に適した形態、例えば、粉末状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、液状、飴状、ペースト状、クリーム状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、タブレット状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、チュアブル状、シロップ状、スティック状等の各形態が挙げられる。
【0024】
本発明の乳酸菌増殖用組成物は、前記の六条大麦の茎葉の加工物のみからなるものであってもよいが、前記の六条大麦の茎葉以外に、その他の成分を含んでいてもよい。前記のその他の成分としては、例えば、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、ゼラチン、コラーゲンペプチド、植物由来タンパク質等のタンパク質、難消化性デキストリン、ポリデキストロースなどの水溶性食物繊維、ビートオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖等のオリゴ糖、カルシウム、マグネシウム、鉄等のミネラル類、N−アセチルグルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類、乳、発酵乳、脱脂粉乳等の乳製品、豆乳、豆乳粉末等の豆乳製品、レモン、リンゴ、明日葉、ケール、甘藷、甘藷茎葉、じゃがいも、ニンジン、カボチャ、ニガウリ、トマト、グリーンピース、モロヘイヤ、スピルリナなどの植物又は植物加工品、乳酸菌、納豆菌、酪酸菌、麹菌、酵母などの微生物、を配合することができる。更に必要に応じて通常食品分野で用いられる、デキストリン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、麦芽糖、果糖、エリスリトール、トレハロース、マルチトール、キシリトール、でんぷん等の糖類、ステビア、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、ソーマチン、還元麦芽糖等の甘味料、クエン酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸等の酸味料、酸化チタン等の着色料、アラビアガム、キサンタンガム等の増粘剤、シェラック等の光沢剤、タルク、二酸化ケイ素、セルロース、ステアリン酸カルシウム等の製造用剤等を挙げることができる。その他の成分としては、これら以外にも、種々の賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などを挙げることができる。その他の成分の含有量は、本発明の乳酸菌増殖用組成物の形態等に応じて適宜選択することができる。
【0025】
乳酸菌増殖用組成物は、乳酸菌の増殖作用を良好とする観点から、粉末状や液体状であることが好ましい。前記の大麦の茎葉の加工物としては、例えば後述する実施例における評価例1の記載から明らかなように、本発明では、茎葉の乾燥粉末や搾汁といった複数の異なる加工物の形態において従来の二条大麦の茎葉に比べて高い乳酸菌増殖効果が得られるものであり、特定の加工物の形態に限定されるものではない。しかしながら、より一層高い乳酸菌増殖効果を得る観点等から、大麦の茎葉の加工物は、茎葉の乾燥粉末、茎葉の細片化物及びその乾燥粉末、茎葉の搾汁及びその乾燥粉末、茎葉のエキス及びその乾燥粉末から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。また、乳酸菌増殖用組成物は、大麦の茎葉の加工物以外の成分として、オリゴ糖、水溶性食物繊維、乳酸菌を含むことが好ましい。
【0026】
前記乳酸菌としては、糖類から多量の乳酸を生成する細菌であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Bifidobacterium bifidum 、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium mongoliense、Lactbacillus brevis、Lactbacillus gasseri、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus delburvecki、Lactobacillus casei、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus halivaticus、Lactobacillus pentosus、Lactobacillus plantarum、Lactobacilus paracasei、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus sporogenes、Lactobacillus sakei、Lactobacillus fructivorans、Lactobacillus hilgardii、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus fermentum、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis(Enterococcus faecalisと称されることもある))、Enterococcus faesium(Streptococcus faesiumと称されることもある)、Streptococcus thermophilus、Lactococcus lactis(Streptococcus lactisと称されることもある)、Leuconostoc mesenteroides、Leuconostoc oenos、Pediococcus acidilactici、Pediococcus pentosaceus、Staphylococcus carnosus、Staphylococcus xylosus、Tetragenococcus halophilus、Bacillus coagulans、及びBacillus mesentericusなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。乳酸菌増殖用組成物が乳酸菌を含有する場合、この乳酸菌は乳酸菌増殖用組成物が増殖対象とする乳酸菌と同一種のものであってもよく、異なる種のものであってもよい。
前記乳酸菌の性質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、耐熱性、耐酸性、耐糖性、耐塩性、有胞子性などが挙げられる。
前記乳酸菌の入手方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヨーグルトや野菜等の食品から単離された乳酸菌や市販品を用いてもよい。
【0027】
前記乳酸菌増殖用組成物の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、乳酸菌増殖用組成物は粉末状等の固体の形態の組成物とする場合、大麦の茎葉の加工物そのものを用いることによって調製できるほか、必要に応じて該加工物を、オリゴ糖、乳酸菌、水溶性食物繊維等を含む任意成分と混合することによって調製する方法等が挙げられる。また例えば、乳酸菌増殖用組成物を、後述するように乳酸菌用培地及び乳酸菌の培養方法に用いる場合は、無機塩類を含む溶媒に、固体の形態の乳酸菌増殖用組成物を分散又は溶解して分散液又は溶解液等の液体の形態の乳酸菌増殖用組成物を調製する方法等が挙げられる。この場合、任意成分を溶媒に分散又は溶解するタイミングは、大麦の茎葉の加工物の溶媒への分散又は溶解と同時である必要はなく、大麦の茎葉の加工物を分散又は溶解した前、又は後のいずれであってもよい。無機塩類を含む溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水などが挙げられるが、これらの中でも、リン酸緩衝生理食塩水(以下「PBS」ともいう。)が好ましい。このような乳酸菌増殖用組成物は、以下に示す、乳酸菌用培地及び乳酸菌の培養方法において好適に用いることができる。
【0028】
(乳酸菌用培地及び乳酸菌の培養方法)
前記乳酸菌用培地は、前記乳酸菌増殖用組成物を含有してなり、更に必要に応じて乳酸菌の生育に好適な成分を含有してなる。
前記乳酸菌の培養方法は、前記乳酸菌用培地を用いて乳酸菌を培養する方法である。
【0029】
前記乳酸菌増殖用組成物及び前記の乳酸菌用培地により増殖される乳酸菌としては、糖類から多量の乳酸を生成する細菌であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、上述の乳酸菌と同様の菌などが挙げられる。
【0030】
前記乳酸菌用培地における培地成分としては、前記乳酸菌増殖用組成物を含有するものであれば、特に制限はなく、通常乳酸菌に使用される培地の成分の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グルコース、オリゴ糖等の炭素源;ポリペプトン、酵母エキス、カゼイン等の窒素源;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の無機塩類などの乳酸菌の生育に好適な成分などが挙げられるが、前記リン酸緩衝生理食塩水と前記特定品種の大麦の茎葉の粉末を含有する乳酸菌増殖用組成物とからなる液体培地が、好適に乳酸菌を増殖させることができる点で好ましい。また、前記乳酸菌増殖用組成物を含む液体培地を、前培養において用いてもよく、本培養において用いてもよい。
【0031】
前記乳酸菌用培地における前記の大麦の茎葉の加工物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限値としては、0.002質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.1質量%以上が特に好ましく、上限値としては、90質量%以下が特に好ましい。前記含有量が、0.002質量%未満であると、乳酸菌が増殖されにくいことがある。
【0032】
前記乳酸菌用培地における滅菌条件としては、前記大麦の茎葉に変質が生じず、乳酸菌に用いることができる培地を滅菌できる条件であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、115℃〜126℃、15分間〜30分間で高圧蒸気滅菌することが好ましい。
【0033】
前記乳酸菌の培養条件(培地中のpH、溶存酸素、培養温度、及び培養時間等)としては、通常乳酸菌に使用される培養条件であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乳酸菌の科学と技術(乳酸菌研究集談会 編)等に記載の培養条件などが挙げられる。
【0034】
本発明の乳酸菌増殖用組成物は、生体内において乳酸菌を増殖させるものでありうる。また本発明の乳酸菌増殖用組成物は、生体外において乳酸菌を増殖促進させるものであってもよい。
【0035】
本発明の乳酸菌増殖用組成物は、これを用いることにより、安価かつ簡便に、乳酸菌を増殖させることができ、しかも従来の二条大麦の茎葉を用いた乳酸菌増殖用組成物に比べて、乳酸菌の増殖促進効果が高いものとなるので、例えば、乳酸菌を含有する素材、食品、食品素材、食品組成物等の添加物として好適に利用することができる。
また、同様に、本発明の乳酸菌増殖用組成物を含有する乳酸菌用培地は、これを用いることにより、安価かつ簡便に、乳酸菌を増殖させることができ、しかも従来の二条大麦の茎葉を用いた乳酸菌増殖用培地に比べて、乳酸菌の増殖促進効果が高いものとなるので、乳酸菌の培養に好適に用いることができ、安全性にも優れるため、例えば、乳酸菌を含有する素材、食品、食品素材、食品組成物等の添加物として好適に利用することができる。
【0036】
また、本発明の乳酸菌増殖用組成物は、青汁用の飲食用組成物としても用いることができる。以下、本発明の乳酸菌増殖用組成物を用いた青汁用の飲食用組成物(以下、「本発明の青汁用の飲食用組成物」ともいう)について説明する。
【0037】
本発明の青汁用の飲食用組成物は、六条大麦の茎葉を用いた青汁用の飲食用組成物であって、六条大麦として、倍取、シルキースノウ、サヌキハダカ、ダイシモチ、イチバンボシ、はがねむぎ及びカシマゴールのうちの少なくとも1つの品種を用いた青汁用の飲食用組成物である。本発明の青汁用の飲食用組成物はこれら特定品種の六条大麦の茎葉を用いていることによって、二条大麦や六条大麦品種「赤神力」等の若葉を用いた従来の青汁用の飲食用組成物に比べて、色が鮮やかであることによる見た目の美しさと、風味の良好さとを両立することができる。特に、本発明の青汁用の飲食用組成物は、粉末の形態とした場合、これを水と混合すると、緑色が鮮やかなものとなる。また、本発明の青汁用の飲食用組成物の風味について具体的に説明すると、本発明の青汁用の飲食用組成物は、従来の青汁用の飲食用組成物と比べて、上記のように緑色が鮮やかであるにも関わらず、甘みが強く且つえぐみが弱い。また、本発明の青汁用の飲食用組成物は、従来の青汁用の飲食用組成物と比べて、えぐみが弱く、青臭さも弱く、且つ美味しく摂取することができる。
特に本発明の青汁用の飲食用組成物を、風味を良好なものとしつつ色を一層鮮やかなものとするために、前記の7品種のうち、倍取、シルキースノウ、サヌキハダカ、ダイシモチ及びイチバンボシから選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0038】
前記7品種の少なくとも1種である特定品種の六条大麦の茎葉の加工物のうち、特に、該茎葉の乾燥粉末を用いることが、本発明の青汁用の飲食用組成物を、より一層色が鮮やかで風味が良好なものとできる点や、食物繊維の豊富なものとできる点等から好ましい。
【0039】
本発明の青汁用の飲食用組成物は、粉末状であることが、水と混合した時に色が鮮やかであるため好ましい。また、本発明の青汁用の飲食用組成物は、これが固体の形態である場合、上述したように、これを水と混合した液状体となし、該液状体を飲用するなど経口摂取することができるが、摂取する者の好み等に応じて、固体のまま経口摂取してもよい。また水だけでなく、牛乳、豆乳、果汁飲料、乳清飲料、清涼飲料、ヨーグルト等に添加して使用してもよい。また、栄養機能表示食品、特定保健用食品として用いても良いことは言うまでもない。
【0040】
本発明の青汁用の飲食用組成物は、大麦の茎葉に由来するビタミン類、ミネラル類、食物繊維等を多く含むため、これを摂取することは、健康維持に有用である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。しかし本発明の範囲はかかる実施例に限定されない。
【0042】
〔実施例1〕
原料として、背丈が約30cmで刈り取った倍取の茎葉を用いた。これを水洗いし、付着した泥などを除去し、5〜10cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した葉を、90〜100℃の熱湯で90秒間〜120秒間、1回のみブランチング処理し、その後、冷水で冷却した。続いて、得られた茎葉を、水分量が5質量%以下となるまで、乾燥機中で、20分間〜180分間、80℃〜130℃の温風にて乾燥させた。乾燥した茎葉を約1mmの大きさに粗粉砕処理した。得られた大麦の葉を、200メッシュ区分を90%以上が通過するように微粉砕処理し、茎葉の乾燥粉末試料を得た。
【0043】
〔実施例2〜9、比較例1〜13〕
実施例2〜9、比較例1〜13について、実施例1で用いた品種の代わりに、下記の表1に示す大麦品種を用いた以外は、実施例1と同様にして、茎葉の乾燥粉末試料を得た。また、なお、比較例9の大麦品種は、以下の評価例2−1〜3−3の標準品として用いた。
また、このうち実施例2、5、8、9及び比較例9の品種の大麦の茎葉からは、以下の方法で茎葉の搾汁試料も得た。
原料として、背丈が10〜90cmで刈り取った茎葉を用いた。これを水洗いし、付着した泥などを除去した。この葉を細片化し、この細片を搾汁することにより搾汁試料を得た。
【0044】
【表1】
【0045】
[評価例1]
実施例1、2、6、7及び比較例9、10で得られた茎葉の乾燥粉末試料について、生体内での乳酸菌増殖効果のモデル試験として、以下の<乳酸菌増殖試験1>を実施した。<乳酸菌増殖試験1>
(乳酸菌用の粉末試料入り培地の作成)
粉末試料0.1gを、50mlコニカルチューブにとり、食品衛生検査指針に準じて作製したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)50mlで懸濁させた。この懸濁液を0.5mlとり、9.5mlPBSで希釈して、粉末試料の含有量が0.01質量%であるPBS(以下「0.01%麦添加PBS」ともいう。)を得た。この0.01%麦添加PBSを試験管に3mlとり、そこに6mlのPBSを加え、粉末試料の含有量が0.0033質量%であるPBS(0.0033%麦添加PBS)を得た。これをオートクレーブにて121℃、20minの条件で滅菌し、乳酸菌用の粉末試料入り培地を得た。
【0046】
(乳酸菌の培養)
乳酸菌として、CELL BIOTECH製 Streptococcus faecalisの乾燥菌体(白色微粉末) 5×1011個/gを使用した。この乾燥菌体1gを50ml遠沈管にとり、PBS10mlで懸濁させた。この懸濁液を乳酸菌数の理論値が102個/ml(1×10-9g/ml)となるまで段階希釈したもの1mlを、前記で得られた乳酸菌用の粉末試料入り培地9mlに添加し、35℃、48hrの条件で静置培養を行った。これらの培養液について、培養開始より0、24、48hr時点におけるCFU測定を行った。CFU測定は、具体的には、BCP培地の寒天プレートに各培養時点の培養液100μlを付したものを、35℃で24時間インキュベートした後、コロニー数を計数することによって行った。
【0047】
コロニー数の計数に用いたプレートの写真を図1に示す。また、得られたCFU値(cfu/g)の平均値を、乳酸菌数として下記の表2に示す。具体的には、実施例1及び2につ
いては上記静置培養を三連で行い、該三連で行った静置培養のそれぞれで得られた培養液についてCFU測定を二連で行った計六連の平均値を示し、実施例6及び7並びに比較例9及び10については上記静置培養を一連で行い、得られた培養液のCFU測定を二連で行った計二連の平均値を示す。表3及び図1における参考例1は、陰性コントロールとして、PBS1mlを、乳酸菌用培地9mlに添加して同様に静置培養したものについて、同様のCFU測定を行った結果である。
【0048】
【表2】
【0049】
表2及び図1に示す結果から、六条大麦の茎葉の加工物である各実施例の粉末試料を用いて乳酸菌を培養すると、乳酸菌が良好に増殖することが判る。これに比べて、二条大麦の茎葉の加工物である各比較例の粉末試料を用いて乳酸菌を培養した場合、増殖しにくいことが判る。
【0050】
更に、実施例5、8、9及び比較例9で得られた茎葉の乾燥粉末試料並びに、実施例2、5、8、9及び比較例9で得られた搾汁試料について、上記<乳酸菌増殖試験1>と同様の<乳酸菌増殖試験2>を実施した。
<乳酸菌増殖試験2>
(乳酸菌用の粉末試料入り培地の作成)
<乳酸菌増殖試験1>と同様にして、粉末試料入り培地を作成した。
(乳酸菌用の搾汁試料入り培地の作成)
PBS10mlに搾汁試料3μlを添加した。搾汁試料のBrix値が10%であり、搾汁試料添加後のPBSの密度が1g/cmと仮定すると、「(3μl×10%)/10ml=0.003%」の計算式から、この培地中の固形分量は0.003質量%と計算された。これをオートクレーブにて121℃、20minの条件で滅菌し、乳酸菌用の粉末試料入り培地を得た。
(乳酸菌の培養)
乳酸菌として、CELL BIOTECH製 Streptococcus faecalisの乾燥菌体(白色微粉末)5×1011個/gを使用した。この乾燥菌体1gを50ml遠沈管にとり、PBS10mlで懸濁させた。この懸濁液を乳酸菌数の理論値が5×10個/mlとなるまで段階希釈した乳酸菌液100μlを、前記で得られた乳酸菌用の粉末試料入り培地9.9ml及び搾汁試料入り培地9.9mlにそれぞれ添加した。これ以外は、<乳酸菌増殖試験1>と同様にして、粉末試料入り培地に乳酸菌を添加した培養液については培養開始より8、24、32及び48hrの各時点におけるCFU測定を行った。また、搾汁試料入り培地に乳酸菌を添加した培養液については、培養開始より24及び48hrの各時点においてCFU測定を行った。これらのCFU測定は、<乳酸菌増殖試験1>と同様の方法で行った。なお各培養液の培養開始0hrのコロニー数は直接測定していないものの、1.6×10cfu/gと考えられる。これは、各培地に添加する前の乳酸菌液(理論値5×10個/ml)のCFU測定をしたところ1.6×10cfu/gであり、前記の各培養液においては、この乳酸菌液を100分の1に希釈しているためである。
【0051】
【表3】
【0052】
表3に示す結果から、六条大麦の茎葉の加工物として、茎葉の乾燥粉末を用いた場合だけでなく茎葉の搾汁を用いて乳酸菌を培養した場合においても、二条大麦の加工物である比較例の搾汁試料を用いた場合に比べて、乳酸菌を良好に増殖させることができることが判る。
【0053】
[評価例2]
実施例1〜5及び比較例1〜9の粉末試料1.8gを、水100mlと混合して各サンプルを得た。これらのサンプルのうち、比較例9の粉末試料から得られたサンプルを、標準品とした。
被験者として、健常な成人10名を無作為に選出した。これらの被験者10名に対し、以下の(1)〜(3)の官能評価を実施した。
【0054】
(1)評価例2−1(色の鮮やかさ)
前記の被験者10名に、実施例1〜5及び比較例1〜8の各サンプルについて、標準品である比較例9のサンプルと比べて色が鮮やかであるか否かを答えさせた。各サンプルについての「標準品に比べて緑色が鮮やかである」と答えた人の数を、色の鮮やかさの評価点として、図2のグラフに示す。図2に示すように、六条大麦(実施例1〜5及び比較例1)は、二条大麦(比較例2〜8及び比較例9)と比べて、色が鮮やかであり、嗜好性が高いことが判る。
【0055】
(2)評価例2−2(えぐみの弱さ及び甘さ)
前記の10名の被験者に、実施例1〜5及び比較例1〜8の各サンプルを、標準品である比較例9のサンプルと飲み比べさせ、標準品と比べて「えぐみが弱い」、甘いと感じるか否かについて、それぞれ答えさせた。各サンプルについての「標準品に比べてえぐみが弱い」、「標準品よりも甘い」とそれぞれ答えた人の数を、えぐみの弱さ、甘さの評価点として、図3のグラフに示す。図3に示すように、特定の六条大麦(実施例1〜5)は、従来から青汁に使用されている六条大麦(比較例1)及び二条大麦(比較例9)、並びにその他の二条大麦(比較例2〜8)と比べて、えぐみが弱く、甘いことから、飲みやすく嗜好性が高いことが判る。
【0056】
(3)評価例2−3(えぐみの弱さ及び美味しさ)
前記の10名の被験者に、実施例1〜5及び比較例1〜8の各サンプルを、標準品である比較例9のサンプルと飲み比べさせ、標準品と比べて、「えぐみが弱い」、「また飲みたい」と感じるか否かについて、それぞれ答えさせた。各サンプルについての「標準品に比べてえぐみが弱い」、「標準品に比べてまた飲みたい」とそれぞれ答えた人の数を、えぐみの弱さ、美味しさの評価点として、図4のグラフに示す。図4に示すように、特定の六条大麦(実施例1〜5)は、従来から青汁に使用されている六条大麦(比較例1)及び二条大麦(比較例9)、並びにその他の二条大麦(比較例2〜8)と比べて、えぐみが弱く、美味しいことから、飲みやすく嗜好性が高いことが判る。
【0057】
図2ないし図4の結果から明らかな通り、六条大麦として倍取、シルキースノウ、サヌキハダカ、ダイシモチ及びイチバンボシを用いた各実施例の粉末試料は、水と混合した時の緑色の鮮やかさに優れるだけでなく、えぐみが弱く且つ甘さが強いという点でも優れ、また、えぐみが弱く且つ美味しいという点でも優れていることが判る。これに対して、二条大麦を用いた各比較例の粉末試料は、色の鮮やかさの点、えぐみが弱く且つ甘いという点、及びえぐみが弱く且つ美味しいという点のいずれにおいても、各実施例の粉末試料に劣っていることが判る。また、六条大麦「赤神力」を用いた比較例の粉末試料は、色の鮮やかさは、各実施例の粉末試料と同等ではあるものの、えぐみが弱く且つ甘さが強いという点や、えぐみが弱く且つ美味しいという点で劣っていることが判る。よって、六条大麦の中でも、倍取、シルキースノウ、サヌキハダカ、ダイシモチ及びイチバンボシを用いることで、見た目及び味に優れ、風味が良好で嗜好性の高い青汁用の飲食用組成物を得ることが可能である。
【0058】
[評価例3]
実施例1、2、6、7及び比較例9〜13の粉末試料1.8gを、水100mlと混合して各サンプルを得た。
被験者として、健常な成人10名を無作為に選出した。これらの被験者10名に対し、以下の(4)〜(6)の官能評価を実施した。
(4)評価例3−1(青臭さの弱さ)
前記の10名の被験者に、実施例1、2、6、7及び比較例10〜13の各サンプルを、標準品である比較例9のサンプルと飲み比べさせ、標準品と比べて青臭さが弱いと感じるか否かを答えさせた。各サンプルについての「標準品と比べて青青臭さが弱い」と答えた人の数を、青臭さの弱さの評価点として図5のグラフに示す。
【0059】
(5)評価例3−2(甘みの強さ)
前記の10名の被験者に、実施例1、2、6、7及び比較例10〜13の各サンプルを標準品である比較例9のサンプルと飲み比べさせ、標準品と比べて、甘みが強いと感じるか否かを答えさせた。各サンプルについて「標準品と比べて甘みが強い」と答えた人の数を、甘みの強さの評価点として、図5のグラフに示す。
【0060】
(6)評価例3−3(美味しさ)
前記の10名の被験者に、実施例1、2、6、7及び比較例10〜13の各サンプルを標準品である比較例9のサンプルと飲み比べさせ、標準品と比べて、「美味しい」と感じるか否かを答えさせた。各サンプルについての「標準品と比べて美味しい」と答えた人の数を、美味しさの評価点として図5のグラフに示す。
【0061】
図5の結果から明らかな通り、六条大麦として倍取、シルキースノウ、はがねむぎ及びカシマゴールを用いた各実施例の粉末試料は、青臭さの弱さ、甘みの強さ、美味しさの各項目の評価点の合計が20点以上であり、風味が良好で、嗜好性が高いことが判る。これに対して、二条大麦を用いた比較例10〜13の粉末試料は、前記の各項目の評価点の合計が15点未満であり、風味の点で、各実施例の粉末試料に劣ることが判る。よって、六条大麦の中でも、倍取、シルキースノウ、はがねむぎ及びカシマゴールを用いることで、風味が良好で嗜好性の高い青汁用の飲食用組成物を得ることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2014年10月8日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
六条大麦の茎及び/又は葉を含有し、
六条大麦が、倍取、シルキースノウ、イチバンボシ、はがねむぎ、カシマゴール、シュンライ及びファイバースノウから選ばれる少なくとも1の品種の六条大麦であることを特徴とする乳酸菌増殖用組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明は、六条大麦の茎及び/又は葉を含有し、六条大麦が、倍取、シルキースノウ、イチバンボシ、はがねむぎ、カシマゴール、シュンライ及びファイバースノウから選ばれる少なくとも1の品種の六条大麦であることを特徴とする乳酸菌増殖用組成物を提供するものである。