【氏名又は名称原語表記】UNITED STATES GOVERNMENT AS REPRESENTED BY THE SECRETARY OF THE ARMY
【背景技術】
【0008】
水硬性セメント、無機鉱物フィラーおよびポゾラン、ならびに化学添加剤(可塑剤および水分散剤など)を含む繊維強化セメント質組成物は、住宅および/または商業構造の内壁および外壁を形成するために建設業で用いられている。しかし、このようなパネルの欠点は、それらが、弾道および爆風負荷に対して高度の耐性を与えるためには圧縮強度が十分でないことである。
【0009】
超強力セメント質組成物を作製するための現在の実践は、極めて高い材料強度を得るための効率的な粒子充填および極めて低い水投与量に依存している。これらの組成物における密度の高い粒子充填および極めて低い水使用を得るために用いられる原料ゆえに、セメント質混合物は、混合したての状態でドウ(dough)様の稠度とともに極めて硬いレオロジー挙動を示す。この硬い稠度により、これらの混合物は非常に加工が難しく、かつ薄いセメント系製品および複合体を作るための従来の製造工程において処理することを極めて困難にする。
【0010】
Belousofskyに付与された米国特許第4158082A号明細書には、耐衝撃性であり、かつポルトランド系セメントを使用し得るガラス繊維スキンを有する、積層セメント系構造が開示されている。
【0011】
Millerに付与された米国特許第4793892号明細書には、ポルトランドセメントを用いて、セメントコアおよびガラス繊維仕上げ面を有するコンクリートパネルを製造する装置が開示されている。
【0012】
Arfaeiに付与された米国特許第4948429A号明細書には、ポルトランドセメント、砂、フュームドシリカおよびポリエーテルを含むセメント質組成物が開示されている。
【0013】
Mandishに付与された米国特許第5724783号明細書には、多層とともにパネル枠に取り付けられた、多層を有するポルトランドセメントパネル層から構成される、建築パネルおよび組立システムが開示されている。
【0014】
Clearに付与された米国特許第6119422B1号明細書には、ガラス繊維強化メッシュの外側仕上げ面を有する耐衝撃性の強い構造用セメント質建築パネルが開示され、ここで、この複合体セメント質は、ガラス繊維メッシュの内側および外側面とともに骨材コアを有する。
【0015】
Murphyに付与された米国特許第6176920号明細書には、平滑化ヘッド、せん断機およびならし処理を用いる、多層のセメント質パネルを組み立てる方法が開示されている。
【0016】
Guerinetらに付与された米国特許第6309457B1号明細書には、ポルトランドセメント、ケイ砂(最大10mmサイズ、もしくは0〜5mmサイズ、または0〜0.4mmと0〜5mmサイズのブレンド)
、微細鉱物骨材(200ミクロン未満、好ましくは100ミクロン未満の寸法を有するフライアッシュまたはシリカ粉)
、第1の可塑剤(これは、少なくとも1種のアミノジ(アルケンホスホン酸)基を含む水溶性または水分散性有機化合物である)
、および第2の水溶性または水分散性可塑剤(これは、ポリカルボン酸タイプであり、ポリエーテル鎖を含む)を含むセルフレベリングセメント質組成物が開示されている。実施例1には、28日目の圧縮強度32MPa(約4600si)が示される。
【0017】
Isomuraらに付与された米国特許第6437027B1号明細書には、ポルトランドセメント、5mm未満のサイズのケイ砂
、および0.01〜2.5重量%のポリカルボキシレートを含むセメント質組成物が開示されている。
【0018】
Kerkarらに付与された米国特許第6849118B2号明細書には、ポルトランドセメント、0から6mmサイズのケイ砂
、およびポリカルボキシレート(ADVA可塑剤)を含むセメント質組成物が開示されている。
【0019】
Andersonらに付与された米国特許第6858074B2号明細書には、ポルトランドセメント、ケイ砂、フュームドシリカ、促進剤、遅延剤、およびポリカルボキシレート高性能減水剤を含むセメント質組成物が開示されている。
【0020】
Shendyらに付与された米国特許第6875801B2号明細書には、ポルトランドセメント、砂、フュームドシリカおよび0〜2重量%のポリカルボシレートを含むセメント質組成物が開示されている。
【0021】
Daczkoらに付与された米国特許第6942727B2号明細書には、ポルトランドセメント
、微細骨材(ケイ砂など、この微細骨材はNumber 4 sieveをほとんど完全に通過する材料である)、粗骨材(砂など、この粗骨材は、Number 4 sieveで優勢に保持される材料である)
、シリカフュームポゾラン
、セメントの乾燥重量に基づいて0.025〜0.7%のポリカルボキシレート分散剤
、構造用合成繊維を含む、高い初期強度のセメント質部材が開示されている。このセメント質部材は、壁パネルを作るために用いられ得る。セメント質部材は、69.0MPa(10,000psi)を超える24時間圧縮強度を示し得るが
、しかし、これらの組成物はポゾランを含まない。
【0022】
Hirataらの米国特許出願公開第2002/0004559号明細書には、ポルトランドセメント、砂、フュームドシリカおよび0.5重量%を超える、例えば、2重量%のポリエーテルを含むセメント質組成物が開示されている。
【0023】
Farrintonらの米国特許出願公開第2004/0149174号明細書には、ポルトランドセメント、砂、フュームドシリカおよび0.01〜0.2重量%のポリカルボキシレートを含むセメント質組成物が開示されている。
【0024】
Buryらの米国特許出願公開第2004/0198873号明細書には、ポルトランドセメント、ケイ砂、フュームドシリカおよび0.02〜2重量%のポリカルボキシレートを含むセメント質組成物が開示されている。
【0025】
Sproutsらの米国特許出願公開第2004/0211342号明細書には、ポルトランドセメント、ケイ砂、フュームドシリカおよび0.1〜2重量%のポリカルボキシレートを含むセメント質組成物が開示されている。
【0026】
Dulzerらの米国特許出願公開第2004/0231567号明細書には、ポルトランドセメント、砂、フュームドシリカおよび総乾燥セメント質結合材の0.1〜10重量%のポリカルボキシレートを含むセメント質組成物が開示されている。
【0027】
Aldeaの米国特許出願公開第2005/0139308号明細書には、ポルトランドセメント、フライアッシュ、シリカフューム、樹脂、砂、ガラス繊維、樹脂、水、促進剤、充填剤、硬化遅延剤、分散剤を含み得
、多層、および層間を平滑化する紙タオル(toweling)を含み
、地震および爆発に対して構造を強化するために用いられ得るFRP強化セメント質材料または複合体を用いるシステムおよび方法が開示されている。Aldeaの文献において、層は、紙タオルにより現場で(in situ)施され、枠に取り付けられ得る自立式パネルを形成するようには施されない。Aldeaの文献で作られた構造は、ガラス繊維マットに結合した2層のコンクリート層を有する。
【0028】
Lettkemanらの米国特許出願公開第2005/0239924号明細書には、ポルトランドセメント、細砂、フュームドシリカおよび0.05〜2.5重量%のポリカルボキシレートを含むセメント質組成物が開示されている。
【0029】
Browerらの米国特許出願公開第2005/0274294号明細書には、ポルトランドセメント、細砂、フュームドシリカおよび1〜4重量%のポリカルボキシレートを含むセメント質組成物が開示されている。
【0030】
Kernsらの米国特許出願公開第2006/0281836号明細書には、ポルトランドセメント、細砂、フュームドシリカおよびポリカルボキシレートを含むセメント質組成物が開示されている。
【0031】
Pintoの米国特許出願公開第2007/0125273号明細書には、ポルトランドセメント、細砂、フュームドシリカ、および1〜2重量%などのポリカルボキシレートを含むセメント質組成物が開示されている。
【0032】
その全体で参照により本明細書に組み込まれる、Tonyanらの米国特許出願公開第2007/0175126号明細書には、構造用セメント質パネルが開示されている。
【0033】
参照により本明細書に組み込まれる、Durstらの米国特許出願公開第2007/0228612号明細書には、弾道片の貫通を制限するためにも好適な耐爆風コンクリートが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0049】
A.パネル
本発明は、繊維強化された、寸法安定性のセメント質ボードパネルに関する。
図1は、本発明のパネル1の斜視図を示す。
【0050】
図1Aは、セメント質パネル1の対向する外側面に強化材料2のシートをさらに設けた、
図1のパネル1の側面図を示す。したがって、
図1のパネル1は、繊維強化セメント質コアを形成し、強化材料のシート2は、コアの対応する面にクラッディングを形成する。通常の強化シート材料には、繊維強化ポリマー(FRP)、またはその全体で参照により本明細書に組み込まれる、2008年3月3日に出願され、「CEMENT BASED LAMINATED ARMOR PANELS」と表題された米国仮特許出願第61/033,264号明細書により記載されたような他の材料が含まれる。
【0051】
通常、FRPスキン層は、セメント質コアの両面に接着して取り付けられる。例えば、繊維強化スキンは、エポキシ接着剤でコアの面に積層され得る。
【0052】
パネルには、セメント質組成物、およびガラス繊維などの強化繊維の水性混合物の硬化から得られた連続相コア11が含まれ、パネルは、24〜45重量%の無機セメント質結合材、35〜65重量%の150〜450ミクロンの無機フィラー
(例えばケイ砂)、5〜15重量%のポラゾラン
微小充填材(例えば、フィリカフューム)および0.25〜5.0重量%の流動化剤自己レベリング剤(ポリカルボキシレート系流動化剤など)、セメント質結合材の重量で、約0.005から約0.500%のアルカノールアミン(トリエタノールアミン)およびセメント質成分の重量で、約0.10から約1.80%の酸または酸性塩(酒石酸など)、セメント質組成物の中に分散された強化繊維(ガラス繊維など)ならびに6〜12%の水を含む。
【0053】
本発明のパネルを作るために用いられる主な出発材料は、無機セメント質結合材(例えば、ポルトランドセメントなどの水硬性セメント)
、無機鉱物フィラー(好まし
くはケイ砂など)、ポゾラン微小フィラー(フュームドシリカなど)、ポリカルボキシレート系化合物特にポリエーテル)から選択されるセルフレベリング剤、および水、ならびに強化繊維(ガラス繊維など)および任意選択添加剤(これは、セメント質材料スラリーに、そのスラリーがマットに形成される前に添加し得る)である。
【0054】
本発明のパネルには、強化繊維が実質的に均一に分布されるセメント質材料の連続相が含まれる。
図1のパネルにおいて、この連続相は、セメント質材料および強化繊維の水性混合物の硬化から生じる。
【0055】
B.配合
本発明のパネルを作るために用いられる要素は、以下により詳細に説明される。
【0056】
本発明の、セルフレベリングの一実施形態の成分の通常の重量割合、超高圧縮強度セメント質組成物は、表1に示される。無機セメント質結合材(水硬性セメント)およびポゾラン微小フィラーはともに、乾燥反応性粉末として知られている。
【0058】
以後、乾燥反応性粉末とも呼ばれる、無機セメント質結合材およびポゾラン微小フィラーが含まれる乾燥組成物成分の割合、および無機鉱物フィラーは表1Aに示される。
【0060】
C.ポゾラン微小フィラー
ポゾラン材料は、ASTM C618−97において、「それら自体、ほとんどまたは全くセメント質の価値をもたないが、微粉化した形態および水分の存在下で、常温で水酸化カルシウムと化学的に反応し、セメント質特性を有する化合物を形成するシリカ質、またはシリカ−アルミナ質材料」と定義される。1つのしばしば用いられるポゾラン材料はシリコン金属およびフェロシリコン合金製造の生成物である、シリカフューム、微粉化非晶質シリカである。特徴的には、それは高いシリカ含有量および低いアルミナ含有量を有する。
【0061】
ポゾラン材料は通常、表2に記載したメジアン粒径を有する。
【0063】
本発明の一実施形態では、シリコン金属およびフェロシリコン合金製造の反応の生成物である、シリカフューム、微粉化非晶質シリカは、好ましいポゾラン微小フィラーである。シリカフューム粒子の平均粒径は、極めて小さく、すなわち、約0.1ミクロン、またはポルトランドセメント粒子の平均粒径よりほぼ100分の1小さい。最も広い実施形態において、ポゾラン材料の平均粒径は、約50ミクロン未満でなければならず、典型的な粒径10ミクロン以下、より典型的には平均粒径1.0ミクロン以下を有する。好ましい実施形態では、ポゾラン材料の平均粒径は、0.1ミクロン以下であり、これは、最適な粒子充填、ポゾラン反応および圧縮強度発現を与えることがわかった。本組成物における無機ポゾラン微小フィラーは、本組成物において2つの重要な機能の役割を果す。
【0064】
ポゾラン微小フィラーの微細粒子は、混合物中に存在しているより大きな粒子間の種々の大きさの空間を充填することに重要な役割を果す。これらのフィラー粒子なしで、これらの空間は、未充填である、気泡を形成する、または水で充填されるようになる、のいずれかである。この空隙は究極的には、最終材料の密度および圧縮強度の両方の低下をもたす。これらの空間を充填する微小フィラーは、相当密度の高い微構造をもたらし、材料圧縮強度性能を高める。
【0065】
シリカフュームポゾランフィラーはまた、ポルトランドセメントの水和の結果として生じた水酸化カルシウムと反応する。この反応は、ケイ酸カルシウム水和物の形成をもたらし、これは、硬化セメント系組成物の強度および耐久性を向上させる、耐久性があって極めて強い結合材料である。
【0066】
種々の天然および人造材料が、ポゾラン特性を有するといわれており、軽石、真珠岩、珪藻土、凝灰岩、トラス、メタカオリン、マイクロシリカ、高炉スラグ微粉末およびフライアッシュが含まれる。シリカフュームは、本発明のパネルにおける使用に特に都合のよいポゾランであるが、他のポゾラン材料を用いることもできる。シリカフュームと対照的に、メタカオリン、高炉スラグ微粉末、および微粉フライアッシュは、非常に低いシリカ含有量および多量のアルミナを有するが、有効なポゾラン材料であることができる。シリカフュームが用いられる場合、これは、約5から20重量%、好ましくは10から15重量%の反応性粉末(反応性粉末
として、水硬性セメントのみ
、水硬性セメントおよびポゾランのブレンド
、または水硬性セメント、硫酸カルシウムアルファ半水和物、ポゾラン、および生石灰のブレンド
がある。)を構成する。他のポゾランが代用される場合、その量は、シリカフュームと同様な化学的性能を与えるように選択される。
【0067】
シリカフュームは、純粋のケイ砂を非常に細かい粉末に粉砕することによって作られた二酸化ケイ素のように、CAS番号87347−84−0において定義されたシリカ粉などの他の微細粒子の無機鉱物フィラーと非常に異なる。シリカ粉は一般に、コンクリート組成物およびプラスチックにおける安価なフィラーとして用いられる。
【0068】
CAS番号67256−35−3で定義されたシリカフュームは、過剰の酸素を有する酸水素炎中で四塩化ケイ素を反応させることによって、非常に異なる方法で作られる。得られた固体は、非常に軽く、綿毛状の注ぎ可能なポゾラン材料であり、これはセメント質組成物で用いられて、圧縮強度、結合強度および耐摩耗性を改善する。
【0069】
ポゾラン微小フィラー対無機セメント質結合材の比は、0.05から0.30の範囲、例えば、ポゾランフィラー5重量部から30重量部対セメント質結合材95から70重量部の範囲で広く有用であることがわかった。より好ましい比は、0.10から0.25であることがわかり、最も好ましい比0.15から0.20は、最終硬化組成物において、セルフレベリング性能、充填効率ポゾラン反応および制御された圧縮強度発現に最適を示すことがわかった。表2Cには、ポゾランフィラー/無機水硬性セメントの比の範囲が記載される。
【0071】
D.無機セメント質結合材(無機水硬性セメント)
好ましい無機セメント質結合材は、種々のクラスのポルトランドセメントから選択され、粗い粒径を有する市販のものが本組成物において最も好ましい。本発明のセメント質組成物に用いられるポルトランドセメントのブレーン粉末度は通常、2000から6000cm
2/グラムの範囲である。
【0072】
粗い粒径を有するポルトランドセメントの比較的低い水の要求は、より高い材料密度および向上した材料圧縮強度性能を有する混合物をもたらすことがわかった。
【0073】
E.無機鉱物フィラー
好ましい無機鉱物フィラーは、以下にさらに記載されるとおりの特定の粒径分布を有するケイ砂である。これらのフィラーは、本発明の組成物においていくつかの極めて重要な機能を有する。
【0074】
本発明のセメント質組成物で作られた最終生成物の寸法安定性は、無機鉱物フィラーの使用によって相当向上する。純粋ポルトランドセメント組成物は、様々な水熱条件下で非常に寸法不安定になりやすい。ケイ砂などの無機フィラーは、材料の機械的性能を犠牲にすることなく、材料の寸法安定性を改善するのに役立つ。
【0075】
純粋ポルトランドセメント組成物は、硬化が行われる際に、材料の抑制的な塑性収縮のために極めて、収縮および関連したクラックの発現をする傾向がある。抑制された塑性収縮の作用は、特にシリカフュームのようなポゾラン材料の存在下で、非常に低い水含有量を含む組成物に対してさらにより厳しくなる。ケイ砂は、抑制された塑性収縮によるクラックの発現を制御し、および一部の場合に無くすことにおいて重要な役割を果す。
【0076】
無機鉱物フィラーの粒径範囲の適切な選択は、本発明のセメント質混合物に対してより高い密度の粒子充填を与えることにおいて役立つことがわかった。より高い密度は、最終材料において本質的な欠陥を少なくし、これは、次に、その複合材料の機械的性能および圧縮強度を最終的に向上させる。
【0077】
セメント質混合物において用いられる無機物質フィラーの粒径およびフィラーの合計量は、混合物のセルフレベリング特性に著しく寄与することがわかった。無機鉱物フィラーが非常に細かい平均粒径を有する場合、鉱物は流れ特性が不良であり、セルフレベリング挙動を示さないことがわかった。さらに、無機鉱物フィラーの量が非常に高い、すなわち、臨界限度に達する場合、材料はやはり、流れ特性が不良であり、セルフレベリング挙動を示さないことがわかった。
【0078】
セルフレベリング特性および超高圧縮強度性能をもたらすことがわかった無機フィラーの粒径分布は、表2Bに示す。
【0080】
最終組成物にセルフレベリング挙動を与えることがわかった組成物の無機鉱物フィラー含有量は、無機フィラー対セメント質材料の重量比で記載して、乾燥基準で0.80から1.50:1.0の範囲内である。
【0081】
本発明の組成物における無機鉱物フィラーのメジアン粒径は、150から450ミクロン、より典型的には200から400ミクロンの範囲、好ましくは250から350ミクロンの範囲でなければならない。約250から約350ミクロンの範囲のメジアン粒径が用いられる場合、その組成物は、最適なセルフレベリング挙動、塑性収縮クラッキング制御、効率的な粒子充填および最適な圧縮強度発現を示すことがわかった。典型的な無機鉱物フィラーは、表2Cに記載したメジアン粒径を有する。
【0083】
最適な結果を与えることがわかった別のパラメータは、無機鉱物フィラー、例えば、ケイ砂対乾燥反応性粉末(無機セメント質結合材とポゾラン微小フィラー反応性粉末とを合わせた重量)の比である。良好な結果は、約0.75から1.50:1.0の比で得られ、より好ましい結果は、0.80から1.20:1.0の比においてであり、最適なセルフレベリング、効率的な粒子充填および圧縮強度発現は、0.90から1.10:1.0の比、例えば、ケイ砂などの無機鉱物フィラー90から110重量部対セメント質結合材およびポゾランフィランー合わせて100重量部で得られる。表2Dに、無機鉱物フィラー/乾燥反応性粉末比の範囲を記載する。
【0085】
F.水
水対無機セメント質結合材およびポゾランフィラー乾燥反応粉末の重量比は典型的には、0.35以下で維持され、典型的な比は約0.25から0.30:1.0未満であり、最適な粒子充填および圧縮強度は、水対反応性粉末の比0.20:1.0以下で得られる。表2Eに、水/乾燥反応性粉末比の範囲を記載する。
【0087】
G.セルフレベリング剤−流動化剤
ポリカルボキシレート化学に基づく有機混合物は、本発明の組成物においてもっぱら有効なセルフレベリング剤であり、硬化セメント質装甲パネルの長期圧縮強度の発現に対して必要な流動性および流れ特性を与えることがわかった。
【0088】
ポリカルボキシレート系組成物は、乾燥基準でセメント質材料の約0.25から5.00重量%、より典型的には0.50から3.0重量%の量で用いられる場合に有効であることがわかった。約0.25%未満のレベルの量は、セメント質材料の流動性および流れ特性に有意な改善を全く与えない。約5.0重量%を超えるポリカルボキシレート系流動化剤のレベルの使用は、圧縮強度の長期発現に対してかなりの悪影響をもたらす。表2Fに流動化剤の範囲を記載する。
【0090】
ポリカルボキシレート流動化剤が、本発明のセメント質組成物の他の成分との混合において特定の投入量で用いられる場合、セルフレベリングのセメント質組成物が得られる。
【0091】
典型的には、ポリカルボキシレート流動化剤は、乾燥反応性粉末の約0.75から1.50重量%、乾燥反応性粉末の約1.0から1.25%まで下方に減少させることができるが、アルカノールアミン、例えば、TEA、および酸添加剤、例えば、酒石酸が本発明で特定された量の範囲内で用いられる場合、依然として所望期間の流動性および長期圧縮強度発現を示す。
【0092】
本明細書を通して用いられるポリカルボキシレート系セルフレベリング剤という用語は、少なくとも側鎖の一部がカルボキシル基またはエーテル基を通してその主鎖に結合している、ペンダント側鎖のついた炭素主鎖を有するポリマーを指す。これらのポリカルボキシレート組成物の例は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,942,727B2号明細書、第4欄、16〜32行に見られる。ポリカルボキシレート分散剤は、水硬性セメントの水含有量を分散し、減少させることにおいて非常に有効である。これらの分散剤または流動化剤は、分散される粒子を囲むことによって作用し、次いで、個々のポリマー鎖間の反発力が粒子を離して、より流動性に保つ。
【0093】
セメント質組成物に用いられるポリカルボキシレート剤には、GLENIUM 3030NS、GLENIUM 3200 HES、GLENIUM 3000NS(Master Builders Inc.、Cleveland、Ohio)、ADVA(W.R.Grace Inc.、Columbia、Md.)、VISCOCRETE(Sika Stockholm、Sweden)、およびSUPERFLUX(Axim Concrete Technologies Inc.、Middlebranch、Ohio)の商標の下で販売される分散剤また減水剤が含まれ得るが、これらに限定されない。本発明において良好な結果を示した市販のポリカルボキシル化ポリエーテル組成物の二例は、W.R.Grace、Columbia、MDから市販されているAdva(登録商標)CastおよびAdva(登録商標)Cast500である。
【0094】
H.アルカノールアミンおよび酸/酸性塩
上述のように、アルカノールアミン、例えば、トリエタノールアミン(TEA)、および酸または酸性塩、例えば、酒石酸は、セメント質組成物の流動性を制御するために添加され得る。セメント質材料の約0.005重量%から約0.500重量%、より典型的には乾燥反応性粉末の0.010重量%から約0.250重量%、より好ましくは0.020重量%から0.100重量%、最も好ましくは約0.025重量%から0.075重量%のTEAの添加は、より低い量のレベリング剤である流動化剤の使用を可能にする。例えば、アルカノールアミンおよび酸/酸性塩の添加は、そうでなければ用いられる量の約1/3だけを用いる一方、パネルの圧縮強度の発現の所望速度を得ることを可能にする。
【0095】
さらに、アルカノールアミンおよび酸/酸性塩の添加は、硬化の期間を遅らせて、セメント質装甲パネルの取扱いおよび仕上げを可能にする。これはまた、パネルが取り扱われるために十分硬化する時間から、セメント質組成物がその完全に硬化した最終パネル形態に達する前に最終仕上げのためにサンドペーパーで研かれる時間の間の、パネルを取り扱うより長い期間を有することをセメント質組成物に可能にする。約0.005%未満の量では、硬化時間は早過ぎ、パネルの長期圧縮強度の発現における改善はない。
【0096】
0.500%を超えるTEAが用いられる場合、硬化は取扱いの期間を改善するためには早過ぎ、圧縮強度は、有効な耐爆風および弾道に対する、約69.0MPa(10,000psi)を超える、例えば、103.4MPa(15,000psi)または137.9MPa(20,000psi)から172.4から206.9MPa(25,000から30,000psi)の圧縮強度レベルを示すように、十分な期間にわたって発現しない。
【0097】
表2Gには、アルカノールアミノの範囲を記載する。本発明の実施形態における使用のための好適なアルカノールアミンの例には、1種または複数のモノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンが含まれる。
【0099】
上に検討したアルカノールアミンと組み合わせて、酸、例えば、酒石酸、または酸性塩の使用が、流動性および流れ特性に必要な流動化剤の量を減少させることにおいて有効であることがわかった。これはまた、セメント質材料の重量で、約0.10から約1.80%のレベルで時間とともに圧縮強度増加の発現を改善し、典型的な使用は、約0.20から1.20%であり、好ましい範囲は、重量で約0.30%から0.80%、より好ましい量は、重量で約0.40%から0.60%である。酒石酸が約0.10%未満で用いられる場合、圧縮強度の発現における改善はなく、またはセメント質材料の所要の流動性および流れ特性を示すのに必要な流動化剤の量の減少は全くない。約1.8重量%を超えるレベルで、圧縮強度の長期発現は、有効なセメント質装甲パネルとしての使用に必要な圧縮強度未満のレベルに低下する。
【0100】
流動性を改善するための好適な酸/酸性塩添加剤の他の例には、クエン酸、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム−カリウム、およびクエン酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
表2Hには、本発明の実施形態において用いられ得る酸および酸性塩の範囲が記載される。
【0103】
I.強化繊維
本発明のセメント質装甲パネルには通常、強化繊維、例えば、ガラス繊維またはスチール繊維が含まれる。しかし、強化繊維を含まない生成物も本発明の範囲内に入る。
【0104】
以下に詳細に説明されるように、本セメント質装甲パネルは通常、パネルが成形ライン上に堆積されるセメント質スラリーから作られるときに、セメント質層中に埋め込まれた、ゆったりと切断されたガラス繊維の1層または複数層で強化される。ガラス繊維は、長さで約0.5インチ(1.3cm)から約1.5インチ(3.8cm)の長さに切断される。ガラス繊維は、約5から25ミクロン(マイクロメートル)、典型的には約10〜15ミクロン(マイクロメートル)の直径を有するモノフィラメントである。
【0105】
セメント質装甲パネルは、最終セメント質装甲パネルに硬化させる前に、複合材料組成物全体の約0.5容量%から約6容量%、より典型的には約3容量%から約3.5容量%の量のガラス繊維で均一に強化される。総セメント質組成物は、無機結合材、無機鉱物フィラー、ポゾランフィラー、セルフレベリング剤、ならびに遅延剤および促進剤のような添加剤の総計を意味する。したがって、100立方フィート(2830リットル)の総組成物に関して、0.5から6立方フィート(14.2から170リットル)の繊維が存在する。セメント質装甲パネルはまた、複合体物品を作るために用いられる総湿潤組成物ならびに複合体物品自体の0.5から6容量%である。
【0106】
耐アルカリ性が重要である場合、耐アルカリガラス繊維(ARガラス繊維)、例えば、Nippon Electric Glass(NEG)350Yが用いられ得る。このような繊維は、そのマトリックスに優れた結合強度を与えることがわかっており、したがって、本発明のパネルに好ましい。このガラス繊維は、約5から25ミクロン(マートル)および典型的には約10から15ミクロン(マイクロメートル)の直径を有するモノフィラメントである。フィラメントは一般に、100フィラメントのストランドに合わされ、これは、約50のストランドを含むロービングに束ねられる。ストランドまたはロービングは一般に、例えば、約0.25から3インチ(6.3から76mm)、好ましくは0.5から1.5インチ(13から38mm)、より好ましくは1から1.5インチ(25から38mm)長の適切なフィラメントおよびフィラメントの束に切断される。
【0107】
好ましいガラス繊維の一部または全部の代わりに本発明のセメント質装甲パネルにおいて他の繊維を含めることもできる。このような他の繊維は、セルロース繊維(紙繊維など)
、ポリマー繊維(例えば、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミドおよび/またはアラミド繊維からなる群の1種または複数のメンバーであり得る。炭素繊維および金属繊維(スチール繊維など)はまた、セメント質装甲パネルを強化するために用いることができるが、ガラス繊維は、セメント質装甲パネルに優れた耐爆風性および弾道衝撃特性を与えた。
【0108】
J.追加の任意選択の添加剤
セメント質組成物における使用のための他の公知の添加剤、例えば、空気巻き込み添加剤、表面活性剤、促進剤、遅延剤、および追加の可塑剤も用いることができる。特に、減水剤(ポリナフタレンスルホネート、リグノ−スルホネートおよびメラミン−スルホネートなど)は、その連続相に添加することができ、ポリカルボキシレート系流動化剤と組み合わせて第2の可塑剤として作用する。
【0109】
K.高性能スキン−強化剤
装甲パネルの繊維強化されたセメント質コアは、セメント質コアの片面または両面に結合された高性能スキン強化材によって強化される。スキン強化材は、種々の高性能強化材料(繊維強化ポリマー積送品(FRP)、薄い金属積層品、複合体FRP−金属積層品、開放−ウィーブメッシュ、閉鎖−ウィーブメッシュなどから作られ得る。スキン強化材は、結合剤によってセメント質コアに結合される。例えば、接着剤を用いてスキンをコアに結合し得る。典型的な、好適な接着剤は、ウレタン(ホットメルトおよび室温)、エポキシおよび他のポリマー接着剤である。スキンは、パネルの一面または複数面に適用され得るか、またはパネルを完全に覆うことができ、例えば、長方形パネルは、両面および4つの端面全てを覆うことができる。
【0110】
あるいは、スキン強化材は、セメント質コア内に埋め込むことができ、したがって、結合剤の必要性を回避できる。
【0111】
パネルを覆う弾性材料は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2009−0004430A1号明細書(2007年6月27日に出願された、米国特許出願第11/819,340号明細書「reinforced Elastomeric Configuration Tailored to Meet a User’s Requirements for Protecting a Structure and a Structure comprised Thereof」に記載された種類のものであり得る。弾性材料をパネルに適用する方法も、米国特許出願公開第2009−0004430A1号明細書(米国特許出願第11/819,340号明細書)に提供されている。他のFRPも、本発明の構造と一緒の使用に好適である。
【0112】
繊維強化ポリマー積層品(ガラス繊維強化ポリエステル樹脂、ガラス繊維強化ポリエチレンおよびガラス繊維強化ポリプロピレン樹脂など)が通常用いられ、Crane Composites,Inc.から市販されているKemlite ArmorTuf(登録商標)ガラス繊維強化ポリエステル樹脂積層品織物が好ましい。FRP積層品は、連続形態、非連続形態、または両方の組合せで、ポリマー樹脂中に埋め込まれた強化繊維を含み得る。
【0113】
種々の繊維が、FRP積層品の強化材として用いられ得る。ガラス繊維、アラミド繊維、Kevlar(登録商標)フルオロポリマー繊維、およびスチール繊維などの金属繊維のような好ましい繊維が挙げられる。
【0114】
以下に記載されるように、セメント質コアの少なくとも一面に結合した高性能スキン強化材を有した繊維強化セメント質パネルの形態での最終硬化後に、パネルは、セメント質複合材料の望ましい耐爆風性および寸法安定性を示す。
【0115】
本発明のパネルの製造の簡単な説明
L.成形
成形ライン上で、最初に、AR−ガラス繊維などの切断繊維の層を多孔性コンベヤーベルト上の搬送装置に堆積させ、続けて、その切断繊維の層の上にセメント質スラリーの層を堆積させ、次いで、切断繊維の第2の層を堆積させてから、それら層を埋め込み装置に通過させて、ガラス繊維をランダムにセメント質スラリー層中に埋め込むことによって、セメント質パネルは形成される。次いで、第2の層を積み重ねて、約0.50インチ(1.3cm)厚のセメント質パネルを製造するために、この工程の2回目を繰り返す。セメント質スラリーのみの第3の層がパネルの上面に堆積され、スクリード板によって直ちに平らにされて、製品パネルの比較的平滑な上面を与える。
【0116】
М.硬化
次いで、得られたパネルは、平面上に保存され、湿式成形(キャスティング)後8から72時間の初期期間の間に周囲温度および湿度条件で硬化される。次いで、パネルを湿らせ、プラスチックで包装し、水分の損失を防止する。包装パネルは、140°F(60℃)で7日間硬化させる。
【0117】
N.仕上げ(面仕上げ)
面仕上げ機械も用いて、約0.50インチ(1.3cm)、例えば、0.53インチ(1.3cm)の厚さにパネルを合わせ、パネルの上面および底面に平滑面を得る。
【0118】
О.切断
乾式ソーイングまたはウォータージェット切断などの従来の切断方法を用いて、パネルを所望の寸法に切断する。
【0119】
本発明のセメント質組成物のフロー特性およびセルフレベリング強度は、スランプ試験を用いて特徴づけられた。以下の実験で用いたスランプ試験は、平滑プラスチック表面上に垂直に保った、直径5.08cm(2インチ)および長さ10.16cm(4インチ)の中空シリンダーを用いる。このシリンダーを、セメント質混合物で上端まで満たし、続けて、その上面を切り落とし、過剰のスラリー混合物を除去する。次いで、シリンダーを垂直に穏やかに持ち上げて、スラリーを底部から出させて、プラスチック面に広げ、円形のパティーを形成する。次いで、パティーの直径を、その材料のスランプとして測定および記録する。良好な流れ挙動を有する組成物は、より大きなスランプ値を生じる。
【0120】
セメント系製品を製造するための従来の高効率製造方法を利用するために、セメント質スラリーは、約5インチ(12.7cm)未満のスランプ値を有することが望ましい。5インチ(12.7cm)を超えるスランプ値を有するスラリーは、従来の製造方法を用いて、取扱いおよび処理することが難しい。
【0121】
流れ特性およびセルフレベリング挙動に対する様々な原料可変要素の影響は、以下に記載される実施例においてスランプ試験を用いて決定される。
【0122】
本発明のセメント質パネルコアを製造する生産ライン工程の詳細な説明
これから
図2を参照して、セメント質装甲パネル生産ラインは、図式的に示され、一般に10と指定される。この生産ライン10には、複数の脚13または他の支持体を有する支持フレームまたは成形テーブル12が含まれる。支持フレーム12上には、移動キャリヤ14、例えば、平滑な水不浸透性表面を有するエンドレスゴム様コンベヤーベルトが含まれるが、多孔性面が企図される。当技術分野でよく知られているように、支持フレーム12は、指定脚13または他の支持構造を含み得る、少なくとも1つのテーブル様セグメントからできていることができる。支持フレーム12には、フレームの遠位端18における主駆動ロール16、およびフレームの近位端22におけるアイドラーロール20も含まれる。また、少なくとも1つのベルト追跡および/またはテンション装置24は通常、所望のテンションを維持し、ロール16、20上のキャリヤ14の位置決めをするために設けられる。この実施形態において、移動キャリヤが近位端22から遠位端18への方向「T」に進むにつれて、パネルは連続的に生産される。
【0123】
この実施形態において、硬化前にスラリーを支持するためのクラフト紙、離型紙、またはプラスチックキャリヤからなるウェブ26が、キャリヤ14上に供給され、置かれて、スラリーを保護および/または清浄に保つ。
【0124】
しかし、連続ウェブ26よりもむしろ、比較的硬い材料の個別のシート(図示せず)、例えば、ポリマープラスチックのシートが、キャリヤ14上に置かれ得ることも企図される。
【0125】
本ライン10によって生産されるセメント質装甲パネルは、キャリヤ14上で直接成形されることも企図される。後者の状況においては、少なくとも1つのベルト洗浄ユニット28が設けられる。キャリヤ14は、当技術分野で知られているとおりの主駆動ロール16を駆動するモータ、プーリ、ベルトまたはチェーンの組合せによって支持フレーム12に沿って移動される。キャリヤ14の速度は、製造される製品に適するように変化させ得ることが企図される。
【0126】
P.チョッパー
本発明のこの実施形態において、セメント質装甲パネル生産は、長さ約0.5インチから約1.5インチ(1.3から3.8cm)および直径約5から約25マイクロメートル、典型的には直径10〜15マイクロメートルの、ゆったりとして切断されたガラス繊維30の層をウェブ26上のプラスチックキャリヤ上に堆積させることによって開始される。種々の繊維堆積および切断装置が、本ライン10で企図される。例えば、典型的なシステムは、それぞれから
ある長さの繊維またはひも34が、切断ステーションまたは装置(チョッパー36とも呼ばれる)に供給される、ガラス繊維コードのいくつかのスプール32を保持するラック31を用いる。通常、ガラス繊維の多くのストランドがそれぞれのチョッパーステーションで供給される。
【0127】
チョッパー36には、キャリヤ14の幅にわたって横方向に延在する延在刃40を半径方向に突出させ、かつアンビルロール42と、近接した、接触、回転関係にある回転刃付きロール38が含まれる。好ましい実施形態において、刃付きロール38およびアンビルロール42は、刃付きロール38の回転がアンビルロール42を回転させるような相対的に近接した関係で配置されるが、この逆も企図される。また、アンビルロール42は好ましくは、弾性支持材料で覆われ、これに対して刃40は、コード34を断片に切断する。ロール38上のブレード40の間隔は、切断繊維の長さを決定する。
図2に見られるように、チョッパー36は、近位端22の近くのキャリヤ14の上に配置されて、生産ライン10の長さの生産使用を最大にする。繊維ストランド34が切断されると、繊維は、キャリヤウェブ26上にゆったりと落ちる。
【0128】
Q.スラリー混合機
本生産ライン10には、一般的に44と指定される、スラリー供給ステーションまたはスラリーフィーダまたはスラリーヘッドボックス、およびこの実施形態においてスラリーミキサー47である、スラリー源が含まれる。スラリーフィーダ44は、スラリー46をキャリヤウェブ26上の切断繊維上に堆積させるためにスラリーミキサー47からスラリー46の供給を受ける。
【0129】
R.スラリーフィーダ装置
上に述べたように、これから
図2を参照して、一般的に44と指定される、スラリー供給ステーション、スラリーフィーダまたはスラリーボックスとも呼ばれる、本スラリー供給装置は、スラリーミキサー47からスラリー46の供給を受ける。
【0130】
好ましいスラリーフィーダ44には、キャリヤ14の進行方向「T」に対して横断的に配置される主計量ロール48を含む。随伴またはバックアップロール50は、計量ロール48に対して近接した、平行、回転関係に配置される。スラリー46は、2本のロール48、50間のニップ52の中に堆積される。
【0131】
スラリーフィーダ44はまた、計量ロール48の表面に隣接して取り付けられるスラリー供給装置44の側壁54に取り付けられたゲート132を有して、その間にニップを形成する。ゲート132は計量ロール48の上方にあり、ニップがゲート132とロール48の上部の間にあるようにする。ロール48、50およびゲート132は、ロール48とゲート132との間のニップがスラリー46の供給を保持すると同時に、ロール48、50は、互いに対して回転する、十分に近接した関係で配置される。ゲート132は、バイブレータ(図示せず)が設けられている。計量ロール48は、ニップ52からロール48およびゲート132間のニップに対して回転する。
【0132】
ゲート132は、計量ロール48の上の中心に置かれるか、または計量ロール48のわずかに上流の中心に置かれ得る。
【0133】
他の寸法も企図されるが、通常、計量ロール48は、随伴ロール50より大きい直径を有する。
【0134】
また、通常、ロール48、50の一方は、平滑なステンレススチールの外部を有し、他方、好ましくは、随伴ロール50は、その外部を覆う弾性非粘着材料を有する。
【0135】
振動ゲート132は、ゲート132上のスラリー46の重大な蓄積を防止し、計量ロール48上に堆積したスラリー46の厚さを制御するために役立つ。振動ゲート132は、清掃および保守のために壁マウントから容易に取り外すことができる。振動ゲートのより詳細な説明は、その全体で参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2008/0101150号明細書(2006年11月1日の出願第11/555,655号明細書)に見いだすことができる。
【0136】
通常、スラリーフィーダ44は、好ましくは非粘着材料、例えば、TEFLON(登録商標)材料などでできているか、またはそれで被覆されている、比較的硬い側壁54の対(一方が図示される)を有する。側壁54は、スラリー46が、スラリーフィーダ44の側面から漏れ出てニップ52の中へ注ぎこまれるのを防止する。好ましくは支持フレーム12(
図2)に固定された側壁54は、ロール48、50の端部に対して近接した関係で配置されて、スラリー46を保持する。しかし、側壁54は、ロールの端部に近接し過ぎて、ロール回転を妨げてはならない。
【0137】
本発明の重要な特徴は、スラリーフィーダ44が、移動キャリヤウェブ26上に比較的制御された厚みのスラリー46の平らな層を堆積させることである。好適な層の厚さは、約0.16インチ(0.4cm)から0.25インチ(0.6gm)の範囲である。しかし、生産ライン10で生産されるセメント質装甲パネルにおいて2層が好ましく、好適なパネルは約0.5インチ(1.3cm)であり、特に好ましいスラリー層の厚さは、0.25インチ(0.6cm)の範囲である。しかし、目標パネルに対して、成形厚さは約0.53インチ(1.35cm)であり、標準的な層の厚さは、通常2つの成形ステーションのそれぞれにおいて約0.265インチ(0.673cm)により近い。
【0138】
したがって、振動ゲート132と主計量ロール48の間の相対距離は、堆積されるスラリー46の厚さを変化させるために調整され得る。
【0139】
ウェブ26全体にわたってスラリー46の均一な堆積を確実にするために、スラリー46は、スラリーミキサーまたは貯蔵所47の出口と流体的に通じている第1の端部を有するホース56または同様な導管を通してスラリーフィーダ44に供給される。ホース56の第2の端部は、当技術分野でよく知られている種類の横方向に往復運動する、ケーブル駆動の流体で動くディスペンサに接続されている。したがって、ホース56から流れるスラリーは、横方向に往復する運動でフィーダ44中に注ぎ込まれ、ロール48、50およびスラリーフィーダ44の側壁54で規定された貯蔵所を満たす。
【0140】
計量ロール48の回転は、ロール48、50およびスラリーフィーダ44の側壁54で規定された貯蔵所からスラリー46の層を引き出す。
【0141】
本フィーダ装置44の別の特徴は、主計量ロール48および随伴ロール50が両方、同じ方向に駆動され、これがそれぞれの移動する外側面上のスラリーの未熟硬化の機会を最少にすることである。流体で動く、電気または他の好適なモータを含む駆動システム(図示せず)は、同じ方向に1つまたは複数のロールを駆動させるために主計量ロール48または随伴ソール50に接続されており、これは
図2で見る場合に、時計方向である。当技術分野でよく知られているように、ロール48、50のいずれか一方が駆動され、およびその他のロールは、プーリ、ベルト、チェーンおよびスプロケット、ギヤまたは他の知られている動力伝達技術によって接続されて、正のおよび共同の回転的関係を維持する。
【0142】
ロール48上の外面上のスラリー46が、移動キャリヤウェブ26に向かって動くときに、スラリーの全てがウェブ上に堆積され、ニップ52に向かって上方に戻らないことが重要である。このような上方への移動は、ロール48、50上のスラリー46の未熟硬化を容易にし、貯蔵所57からキャリヤウェブ26へのスラリーの滑らかな動きを妨げる。
【0143】
この上方への移動を防止するのを助けるために、スラリーフィーダ44は、主計量ロール48とキャリヤウェブ26との間に置かれたドクターブレード134を有する。ドクターブレード134は、スラリー46がキャリヤウェブ26上のガラス繊維層を均一に覆い、ニップ52およびフィーダ貯蔵所57に向けて上方に戻って行かないことを確実にする。ドクターブレード134はまた、未熟硬化スラリー46のない主計量ロール50を保つのに役立つ。
【0144】
ドクターブレード134は、Dubeyらに付与された米国特許第6,986,812号明細書の方法で用いられたワイヤのように、計量ロール48の表面からスラリーを取り除く。ドクターブレード134はまた、均一層またはカーテンにおいてスラリー46を集め、ウェブ上のガラス繊維層の上に約1.0から1.5インチ(2.54から3.81cm)の点までウェブの移動方向にスラリー46を下方に方向づけし、スラリー46でガラス繊維層を均一に覆うのにも役立つ。これは、ガラス繊維を覆うためにより薄いスラリーが用いられる場合に特に重要であるが、より薄いスラリーは、ワイヤの上に滴る傾向があるからである。
【0145】
S.スラリー供給装置の下流での処理
図2を再び参照して、本セメント質装甲パネル生産ラインの他の運転要素を簡単に説明するが、それらは以下の公報でより詳細に説明される。
【0146】
その全体で参照により組み込まれる、「SLURRY FEED APPARATUS FOR FIBER−REINFORCED STRUCTURAL CEMENTITIOUS PANEL PRODUCTION」と表題され,Dubeyらに付与された米国特許第6,986,812号明細書;および
全てがその全体で参照により本明細書に組み込まれる、以下の同時係属の、本発明の譲受人に譲渡された、米国特許出願;
「MULTI−LAYER PROCESS AND APPARATUS FOR PRUDUCING HIGH STRENGTH FIBER−REINFORCED STRUCTURAL CEMENTITIOUS PANELS」と表題された、Dubeyらの米国特許出願公開第2005/0064164A1号明細書(米国特許出願第10/666,294号明細書);
「EMBEDMENT DEVICE FOR FIBER−ENHANCED SLURRY」と表題された、Porterの米国特許出願公開第2005/0064055A1号明細書(米国特許出願第10/665,541号明細書);
2006年11月1日に出願され、「METHOD FOR WET MIXING CEMENTITIOUS SLURRY FOR FIBER−REINFORCED STRUCTURAL CEMENT PANELS」と表題された、米国特許出願第11/555,655号明細書;
2006年11月1日に出願され、「APPARATUS AND METHOD FOR MIXING CEMENTITIOUS SLURRY FOR FIBER−REINFORCED STRUCTURAL CEMENT PANELS」と表題された、米国特許出願第11/555,655号明細書;
2006年11月1日に出願され、「PANEL SMOOTHING PROCESS AND APPARATUS FOR FORMING A SMOOTH CONTINUOUS SURFACE ON FIBER−REINFORCED STRUCTURAL CEMENT PANELS」と表題された、米国特許出願第11/555,661号明細書;
2006年11月1日に出願され、「WET SLURRY THICKNESS GAUGE AND METHOD FOR USE OF SAME」と表題された、米国特許出願第11/555,665号明細書;
2006年11月1日に出願され、「MULTI−LAYER PROCESS AND APPRATUS FOR PRODUCING HIGH STRENGTH FIBER−REINFORCED STRUCTURAL CEMENTITIOUS PANELS WITH ENHANCED FIBER CONTENT」と表題された、Dubeyの米国特許出願公開第2007/0110970A1号明細書(米国特許出願第11/591,793号明細書);
2006年11月1日に出願され、「EMBEDMENT ROLL DEVICE」と表題された、Porterらの米国特許出願公開第2007/0110838A1号明細書(米国特許出願第11/591,957号明細書)。
【0147】
T.埋め込み装置
様々な埋め込み装置が企図され、シープフットローラーなどが含まれるが、これに限定されない。しかし、本実施形態において、埋め込み装置70には、フレーム12上のキャリヤウェブ14の移動の方向に対して横方向に取り付けられた、少なくとも一対のほぼ平行なシャフト76が含まれる。それぞれのシャフト76には、複数の比較的大きな直径のディスク74が設けられ、これらは、小さい直径のディスク(図示せず)によってシャフト上で互いに約0.1から約0.25インチ(0.25から0.63cm)、例えば、0.15インチ(0.38cm)の距離で軸方向に隔てられており、ここで、より長いおよびより小さいディスクが同軸上に置かれている。
【0148】
セメント質装甲パネル生産の間に、シャフト76およびディスク74は、シャフト76の長手方向の軸の周りで一緒に回転する。当技術分野でよく知られているように、シャフト76のいずれか一方または両方は、動力を供給され得る。一方のシャフト76のみが動力を供給される場合、他方は、ベルト、チェーン、ギヤ駆動または他の知られている動力伝達技術によって駆動され、駆動されるシャフトに対して対応する方向および速度を維持し得る。隣接の、好ましくは平行シャフト76のそれぞれのディスク74は、重なり合い、スラリー中に「混練」または「揉み」作用を生じさせるように互いにかみ合わされ、これにより、前に堆積された繊維68を埋め込む。さらに、ディスク74の近接した、互いにかみ合わされた、回転関係は、ディスク上のスラリー46の蓄積を防止し、実質的に、スラリーの塊の未熟硬化による生産ラインの不稼動時間をかなり減少させる「自浄」作用を生じさせる。
【0149】
シャフト76上のディスク74の互いにかみ合わされた関係には、小さい直径のスペーサディスク(図示せず)および比較的大きな直径の主ディスク74の対向する外面の、接近して隣接した配置が含まれ、これも自浄作用を促進する。ディスク74が接近した近傍で互いに対して(しかし好ましくは同一方向で)回転するときに、スラリーの粒子が、装置に捕捉されるようになり、未熟に硬化させることは困難である。互いに対して横方向に相殺されているディスク74の2つの組を設けることによって、スラリー46は、破壊の多作用下に置かれ、繊維68をスラリー46にさらに埋め込む「混練」作用を生じる。
【0150】
生産ライン10における使用に好適な埋め込み装置70の実施形態は、その全体で参照により本明細書に組み込まれる、「EMBEDMENT DEVICE FOR FIBER−ENHANCED SLURRY」と表題され、2003年9月18に出願され、米国特許出願公開第2005/0064055号明細書として公開された、同時係属の米国特許出願第10/665,541号明細書により詳細に開示されている。
【0151】
U.さらなる層の適用
繊維68が埋め込まれるとすぐに、パネル92の第一層77は、完了する。好ましい実施形態において、第一層77の高さまたは厚さは、0.25から0.27インチ(0.6から0.7cm)のおおよその範囲である。この範囲は、セメント質装甲パネルにおいて、同様の層と合わせられた場合に所望の強度および剛性を与えることがわかった。
【0152】
所望の厚さの構造セメント質パネルを構築するために、さらなる層が通常加えられる。そのためには、実質的にフィーダ44と同一の、第2のスラリーフィーダ78が、移動キャリヤ14に対して動作関係に設けられ、既存の層77の上へのスラリー46のさらなる層80を堆積するために配置される。
【0153】
次に、チョッパー36および66に実質的に同一である、さらなるチョッパー82が、フレーム12に対して動作関係に設けられ、ラック31に対して同様の方法で、フレーム12に対して構築および配置されたラック(図示せず)から供給された繊維68の第3の層を堆積する。繊維68は、スラリー層80上に堆積され、第2の埋め込み装置86を用いて埋め込まれる。埋め込み装置70に対して構造および配置が同様に、第2の埋め込み装置86は、移動キャリヤウェブ14に対してわずかに高く取り付けられ、第1の層77に支障を来たさないようにする。この方法において、スラリーおよび埋め込み繊維からなる第2の層80が生じる。
【0154】
これから
図2を参照して、硬化可能なスラリーおよび繊維のそれぞれの連続的な層と一緒に、さらなるスラリーフィーダステーション78、その後に繊維チョッパー82および埋め込み装置86が、生産ライン10に設けられる。好ましい実施形態において、最終スラリー層で頂面を覆われた2つの全体層が供給されて、セメント質装甲パネルを形成する。
【0155】
スラリーの最終層は、第3のスラリーフィーダステーション78内の層80の上に堆積されて、最終的なさらなる層88を生産し、これは、スクリードバー146を通過して、スラリーの上面を平滑にし、スラリーがカッターブレード98を用いて長さ{通常8フィート(244cm)長}に切断される前に、約0.5インチ(1.3cm)の名目厚さを有する均一層98を生じる。
【0156】
本発明の重要な特徴は、パネルが、硬化後に、不可欠な繊維強化密集体を形成する多層を有することである。各層における繊維の存在および配置が、本明細書で開示および記載されるように、特定の所望のパラメータによって制御され、およびその範囲内で維持されることを条件にして、本方法で生産されたパネル92を層間剥離させることは実質的に不可能である。
【0157】
V.成形および平滑化および切断
上記のとおりの繊維が埋め込まれた硬化可能なスラリーの2つの層の配置後に、上述のとおりのスクリードバーなどの成形装置は、パネル92の上面96を形成するようにフレーム12に対して設けられる。
【0158】
しかし、セメント質装甲パネル材料の過剰な厚さを削り取る成形装置は望ましくない。用いられない成形装置の例には、所望の寸法特性にパネルを合わせるように設計されたバネ負荷または振動板または振動レベリングスクリードなどが含まれ、セメント質装甲パネル材料とともに用いられないが、それらは、セメント質装甲パネル材料の過剰な厚さを削り取るからである。このような装置は、パネル面を有効に削り取らず、または平坦にしない。それらは、ガラス繊維が巻き上がり始める原因となり、パネルを平らにして平滑化する代わりにその表面を損なう。
【0159】
特に、生産ライン10には、パネル92の上面96を穏やかに平滑化するためにフレーム12に対して設けられた、スクリードバー146とも称される、平滑化装置が含まれ得る。スラリー46に振動をかけることによって、平滑化スクリードバー146は、パネル92中の繊維30、68の分布を容易し、より均一な上面96を与える。
【0160】
この時点で、スラリーの層は硬化を始めており、それぞれのパネル92は、典型的な実施形態において、ウォータージェットカッターである切断装置98によって互いに隔てられている。移動ブレードを含む、他の切断装置は、この操作に好適であると考えられるが、但し、それらが、本パネル組成物において好適に鋭い端部を生じ得ることを条件とする。切断装置98は、パネルが所望の長さ、通常8フィート(244cm)長を有して生産されるように、ライン10およびフレーム12に対して配置される。キャリヤウェブ14の速度は相対的に遅いので、切断装置98は、8フィート(244cm)長でウェブ14の移動方向に直角に切断するように取り付けられ得る。次いで、パネルを、スラリーが湿式キャスティングされた後、すなわち、スクリードバーを離れた後に、8〜72時間の間乾燥させることができる。
【0161】
生産ライン10には、少なくとも2つの層を生産するために十分な繊維切断ステーション36、66、スラリーフィーダ44、78および埋め込み装置70、86が含まれる。さらなる層は、生産ライン10に対して上記のとおりのステーションの繰り返しによって作製され得る。
【0162】
両面または側面が平滑であるセメント質装甲パネルを得るために、4フィート×8フィート(122cm×244cm)パネルの上面および下面の両方は、サンドペーパーがかけられ、次いで、その後の処理および梱包のために、所望の寸法{通常約2×2フィート(61cm×61cm)から最大約4×8フィート(122cm×244cm)、例えば、2.5×4フィート(76.2cm×122cm)}のパネルに場合によってのこぎりで切断される。
【0163】
W.圧縮強度発現の制御された速度
通常セメント質組成物は、圧縮強度発現の制御された速度を得るために硬化される。望ましくは、好ましくは27.6MPa(4000psi)未満、より好ましくは20.7MPa(3000psi)未満、最も好ましくは13.8MPa(2000psi)未満の5日目圧縮強度、ならびに137.9MPa(20,000psi)を超える、28日目およびその後の日を経た圧縮強度を有する超高強度セメント質複合材料が得られる。
【0164】
例えば、制御された圧縮強度発現の一部の所望の速度は、表2Iに記載される。
【0166】
X.スキンの適用
十分な硬化後に、切断パネルは、通常ニップローラにおいて、接着剤で被覆され、次いで、強化スキンがパネルの上面に置かれ、次いで、スキン強化層をセメント質コアに積層するために別の対のニップローラを通して加工される。次いで、パネルは裏返され、パネルの他方の側面に対して積層手順が繰り返される。
【0167】
一実施形態では、セメント質パネルは、サンドペーパーで研かれ、次いで、接着剤および繊維強化ポリマースキン層が、まだ湿っているセメント質コアに施され、次いで、FRPスキンを有するセメント質パネルは、スクリードバーまたはローラ下で加工される。
【0168】
Y.本発明のセメント質装甲パネルシステムの実施形態
セメント質装甲パネルは、コアの厚み約0.5インチ(1.3cm)、スキンの厚み0.085インチ(0.2cm)の、種々の寸法、例えば、30インチ×48インチ(76.2cm×21.9cm)サイズのパネルに生産され得る。これらのパネルは、フレーム構造に迅速に組み立てられ、軍事または民事利用のための保護囲いとして速い発現を可能にし得る。本発明のセメント質装甲パネルクラッディングを有するフレーム構造は、システムの片側が爆風力または発射体由来の高速度衝撃に曝される場合、エネルギーの吸収および消散を助けるように設計された、コンクリートまたは砂などのフレーム間の空洞に充填物を有し得る。本発明のセメント質装甲パネルでは、強く、剛性で、かつエネルギー吸収性である、高い質量の薄いスキンの囲いを与える連続保護シールドが提供される。
【0169】
セメント質装甲パネルを保持するためにフレーム構造が用いられる場合、このシステムは、保護囲いとして組み立てることができ、システム形状を保ち、規定された空間の周囲の保護を維持しながら、パネルがエネルギーの向きをそらし、吸収することを可能にさせる。モジュールパネルによるフレームの使用は、パネルシステムの迅速な組立を可能にする。
【0170】
フレーム構造は、
図23に示されるように、フレーム構造上の追跡システム中に「ゆったりと置かれた」セメント質装甲パネルで構成することができる。安全要件に基づいて、多層のセメント質装甲パネル200は、Zクリップ220でフレーム210に位置決めすることができ、
図20の横断面の詳細に示されるように、Zクリップ220はねじ221によってフレーム210に固定され、金属フレーム構造210上の1枚または複数のセメント質パネル200を受けて、保持するために開放溝222の状態にしておく。
【0171】
図21は、Zクリップ(またはZバー)220の斜視図を示す。
【0172】
図22は、フレーム部材221Bから直立した突起部221Aを挿入できる中空のくぼみ220Bを有するZクリップ220Aの第2の実施形態の側面図を示す。
【0173】
図23に示される通常の金属フレームは、交差構造支持体を有する金属イーゼル形状のフレーム210であることができる。あるいは、「H」または「C」形状のクリップを片側のフレームに取り付けるために用いることもでき、セメント質装甲パネルへのねじによる取り付けを要することなく、1枚または複数のセメント質パネルを受けるために開放溝の状態にしておく。この種のシステムは、非常に少ない機材で迅速に配備することができる。このシステムは、軍事用途、例えば、一時的な検問所、遠隔基地などにおける境界線保護、ならびに航空機のような機材および機械的装置の保護のために用いることができる。
【0174】
適所にセメント質装甲パネルを有するフレーム構造210の高さ「B」は、約6フィート(183cm)から20フィート(610cm)変わり得る。適所にセメント質装甲パネルを有するフレームの底部におけるフレーム構造「A」の幅は、4から10フィート(122から305cm)変わり得、フレームの上部「C」における幅は、通常2から6フィート(61から183cm)変わり得る。適所にセメント質装甲パネルを有するフレーム構造の高さおよび幅は、安全囲いの必要性およびフレームの組立のために利用できる範囲に依存する。
【0175】
セメント質装甲パネルのためにゆったりと置かれた構造の使用の利点は、パネルが、フレーム構造に定位置に固定されることなく、トラックにおいて移動し、より大きな弾道および爆風負荷を吸収する能力である。
【0176】
別の実施形態において、フレーム構造は、垂直壁組立体として構成することができ、
図24、
図25および
図26の実施形態に示されたように、パネル200は、フレームに留められた機械的留め具220および/またはエポキシなどの接着剤による接着剤接着を用いて、垂直フームに取り付けられる。これらの実施形態では、セメント質装甲パネルは、ハンマードリルなどの従来の工具を用いて予めドリルで穴を開けて、セメント質装甲パネル200およびフレーム構造210に機械的留め具を取り付けるためのパイロット穴を設けることができる。これらの実施形態において、パネルは30インチ×48インチ(76.2×122cm)より大きくてもよく、建築構造用の通常のモジュールは、48インチ×96インチ(122×239cm)である。
【0177】
図26に示されるように、フレームに留められたセメント質装甲パネル200を有するフレーム壁構造の高さは、通常約4フィート(122cm)から20フィート(610cm)、適所にあるパネルを有するフレーム構造の奥行きは、通常6インチ(15.2cm)から24インチ(61cm)変わり得る。奥行きは、必要に応じて、より重大な安全脅威に対して保護するために24インチ(61cm)から増加させ得る。適所にセメント質装甲パネル200を有する壁フレームの壁構造の幅および奥行きは、必要な安全囲いおよびフレームの組立のために利用できる範囲に依存する。
【0178】
図25に示される壁構成は、2フィート(61cm)から100フィート(30m)の範囲の壁の長さ「B」および4フィート(122cm)から20フィート(610cm)の高さ「A」を有し得る。床構造にも用いることができるフレームの構成は、安全に細心の注意を払うべき領域における建築物ならびに工業および輸送施設における安全のための永久的な構造に用いることができ、セメント質装甲パネルは、その構造用の構造支持を与え、せん断負荷に対する支持を与えるために用いることができる。
【0179】
セメント質装甲パネルクラッディングを有するフレーム構造は、フレーム壁中空におけるコンクリート、気泡コンクリート、砂、軽量骨材の充填材料と組み合わせて、さらなる爆風および安全保護を与えることもできる。
図27〜
図28では、セメント質コア11、およびフレーム210の両面に取り付けられた少なくとも一面上の積層繊維強化スキン層20(
図28)を含むセメント質装甲パネル200を有する代わりのフレーム構造が示され、フレーム210間の骨組み中空に、気泡コンクリートなどの充填材料250を有する壁構造を形成する。
【0180】
図27において充填材240を有する金属フレーム210上のセメント質装甲パネル200のパネル組立体は通常、6〜20フィート(183〜610cm)の高さ「A」および6〜48インチ(15.2〜122cm)の幅「B」を有することができる。
【0181】
別の実施形態では、セメント質装甲パネルは、外壁またはキャップ構造としてメーソンリーまたはコンクリート壁などの既存の構造の外面に取り付けて、耐弾道性および爆風性付加を与えることができる。セメント質装甲パネルは、センメト質装甲パネルに予めドリルで穴を開けた機械的留め具の取付けのために既存の壁の下地胴ぶちを用いて、壁に機械的に取り付けることができる。あるいは、外側仕上げ面上のスキン層を有するパネルは、壁に接着取り付けするか、または鏝で既存の壁構造に塗ることができるモルタルの層の上に施すことができる。
【0182】
本発明のセメント質装甲パネルシステムは、耐爆風境界線囲い、無理な侵入防護、「ジャージー障壁」タイプの交通管理侵入防護、歩道橋および交通流れ管理ならびに建築物入口および出口の出入管理などの用途に安全性および耐爆風性を与える。
【0183】
強化スキン層は、セメント質パネルの片面または両面に施すことができる。スキン層は、パネルに向上した曲げおよび引張強度を与えることを含む、多くの改善された特徴をセメント質パネルに与える。スキン層はまた、セメント質コアが弾道または爆風衝撃力に曝された場合、セメント質コアの断片化を防止するようにセメント質コアをとどめる。強化スキンは、1つまたは複数の面に施した場合、セメント質コアパネルに追加の強靭性を与え、面を施さないセメント質パネルよりもエネルギーを吸収するのに役立つ。積層FRP層などの強化スキンを有するセメント質装甲パネルは、セメント質パネルの元の状態を損なうことなく、多様な衝撃に耐えることができることもわかった。
【0184】
セメント質パネルの両面上の積層FRP層の使用の別の利点は、FRP積層面は、繊維強化スキン層をもたないセメント質装甲パネルよりも耐久性があり、これらの仕上げ面を施したパネルは、仕上げ面層をもたないセメント質パネルと比べて容易に清浄にでき、かつ維持できることである。
【0185】
本発明の典型的な使用本発明の選定された実施形態は、車両ならびに固定構造物に用いられ得る薄いコンクリート装甲パネルなどの安価な構造パネルを製作するために好適である。構造装甲パネルは、本発明の実施形態の改善された強靭性および強度のために、これまで実用的でなかった厚さに成形または押出することができる。例えば、パネルは、1人で持ち運べることに適応する大きさおよび厚さに製造することができる。これらの1人で持ち運べるパネルは、小兵器発泡の貫通に耐え、爆風および断片化作用を軽減させるために構造枠に取り付けるために構成され得る。
【0186】
軍隊は、土壌覆いから高価で高性能な軽量弾道セラミックまで様々な防護材料を使用する。適切に構成された、本発明の実施形態は、1人で運べる製品に加えて武力防護のための安価な解決策を提供する。本発明の実施形態の用途には、軍事および政府用途
、安価な弾道装甲に組み入れられた非常に高性能なコンクリート
、軽量構造形態
、例えば、板、溝、パイプ、管、I−およびWF−接合部品など
、コネクター
、防護建造物
、耐爆風パネル
、断片化軍需品防護
、車両上部外装
、耐強制侵入構造要素などが含まれるが、これらに限定されない。
【0187】
軍事用途において、このシステムは、検問所、遠隔基地、キャンプ防護ならびに軍事装置および機械設備のための防護の一時的な軍事設備のための迅速な架設を与え得る。より永久的な用途では、このパネルシステムは、基地周辺、基地入口の防護、基地構造物の防護および航空機エンクロージャを与える。
【0188】
商業的使用者に対して
、例えば、屋根瓦、壁パネル、床タイルなどの建築構造製品、
例えば、板、溝、パイプ、管、I−およびWF−断面などの軽量構造形体、耐大暴風および竜巻構造要素、耐強制侵入構造要素。
【0189】
民生および商業用途では、本セメント質装甲パネルは、空港、造船所、道路、鉄道駅および大量輸送施設などの輸送施設に防護を与え得る。本パネルシステムは、病院、化学施設、エネルギー施設および産業施設、ならびに学校、大使館および政府設備を防護するためにも用い得る。
【0190】
本セメント質装甲パネルから作られた本発明の壁システム組立体は、その全体で参照により本明細書に組み込まれる、「Non−Combustible Reinforced Cementitious Lightweight Panels and Metal Frame Systems for Shear Walls」について、Tonyanらの2005年12月30日に出願された、同時係属の米国特許出願第11/321,069号明細書に示されるように、金属フレームなどのフレームに機械的に留められている構造用セメント質パネルで作られたシステムで得られるせん断値と同様のせん断値を有する。
【0191】
セメント質装甲パネルで作られた本発明の壁システムのせん断強度は、用いられる機械的留め具およびフレーム構造上の留め具の間隔に依存する。組立体上の本セメント質装甲パネルのラッキング強度および本セメント質装甲パネル組立体の耐爆風特性はまた、せん断値に依存し、せん断値は同様に、フレーム上で用いられる本セメント質装甲パネルの単位面積(パネルの大きさ)当たり用いられる留め具の数に依存する。
【0192】
Z.セメント質材料の使用
本発明の選定された実施形態は、車両ならびに固定構造物に用いられ得る薄いコンクリート装甲パネルなどの安価な構造パネルを製作するために好適である。構造装甲パネルは、本発明の実施形態の改善された強靭性および強度のために、これまで実用的でなかった厚さに成形または押出することができる。例えば、パネルは、1人で持ち運べることに適応する大きさおよび厚さに製造することができる。これらの1人で持ち運べるパネルは、小兵器発泡の貫通に耐え、爆風および断片化作用を軽減するために構造枠に取り付けるために構成され得る。
【0193】
軍隊は、土壌覆いから高価で高性能な軽量弾道セラミックまで様々な防護材料を使用する。適切に構成された、本発明の実施形態は、1人で運べる製品に加えて武力防護のための安価な解決策を提供する。本発明の実施形態の用途には、軍事および政府用途
、安価な弾道装甲に組み入れられた非常に高性能なコンクリート
、例えば、板、溝、パイプ、管、I−およびWF−断面などの軽量構造形態、コネクター
、防護建造物
、耐爆風パネル
、断片化軍需品防護
、車両上部外装
、耐強制侵入構造要素などが含まれるが、これらに限定されない。
【0194】
商業的使用者に対して
、例えば、屋根瓦、壁パネル、床タイルなどの建築構造製品
、例えば、板、溝、パイプ、管、I−およびWF−断面の軽量構造形体
、耐大暴風および竜巻構造要素
、耐強制侵入構造要素など。
【実施例】
【0195】
本発明のセメント質組成物のフロー特性およびセルフレベリング挙動は、スランプ試験を用いて特徴づけた。以下の実験で用いたスランプ試験は、平滑プラスチック表面上に垂直に保った、直径5.08cm(2インチ)および長さ10.16cm(4インチ)の中空シリンダーを用いる。このシリンダーを、セメント質混合物で上端まで満たし、続けて、その上面を切り落とし、過剰のスラリー混合物を除去する。次いで、シリンダーを垂直に穏やかに持ち上げて、スラリーを底部から出させて、プラスチック面に広げ、円形のパティーを形成する。次いで、パティーの直径を、その材料のスランプとして測定および記録する。良好な流れ挙動を有する組成物は、より大きなスランプ値を生じる。
【0196】
セメント系製品を製造するための従来の高効率製造方法を利用するために、セメント質スラリーは、12.7cm(5インチ)未満のスランプ値を有することが望ましい。なぜなら、12.7cm(5インチ)を超えるスランプ値を有するスラリーは、従来の製造方法を用いて、取扱いおよび処理することが極めて難しいためである。
【0197】
流れ特性およびセルフレベリング挙動に対する様々な原料可変要素の影響は、以下に記載される実施例においてスランプ試験を用いて決定される。
【0198】
実施例1
スランプを、高さ4インチ(10.2cm)でそれぞれの端部で開放しており、かつ平坦で滑らかな面上に直立して置かれている)直径2インチ(5.1cm)のシリンダー中にスラリーを注ぎ入れ、スラリーの上部をならして落とすことによって、測定した。これは、全ての試験に対して規定の容量のスラリーを与える。次いで、シリンダーを直ちに持ち上げ、スラリーをシリンダーの開放した底端部から急に出させる。この行為は、スラリーの円形「パティー」を形成した。このパティーの直径は、インチで測定し、記録する。スラリーがより流動性であるほど通常、より大きな直径のパティーを生じる。
【0199】
表3は、セメント質混合物のスランプに対する無機鉱物フィラーとしてのケイ砂含有量の影響が示す。種々の混合物における他の原材料は、一定に保持される。結果が示すように、セメント質混合物のスランプは、混合物中のケイ砂含有量の増加とともに減少する。
【0200】
表3から表7に至る混合物についての典型的な配合を上に検討した表1に示す。
【0201】
【表3】
【0202】
実施例2
表4は、セメント質混合物のスランプに対するケイ砂の粒径の影響を示す。第1は、約200ミクロンのメジアン粒径を有し、第2は、約10ミクロンのメジアン粒径を有する、2種のケイ砂を用いた。他の原材料は、一定に維持した。表に示されるように、セメント質混合物のスランプは、組成物中のより微細なケイ砂の使用とともに著しく減少した。
【0203】
【表4】
【0204】
実施例3
表5は、他の原材料全てを一定に維持して、セメント質混合物のスランプに対するシリカフュームポゾラン微小フィラー含有量の影響を示す。混合物中のシリカフィームの含有量の増加とともにセメント質混合物のスランプは減少することを観察することができる。
【0205】
【表5】
【0206】
実施例4
表6は、セメント質混合物のスランプに対するセルフレベリング材の影響を示す。他の材料は一定のままにして、ポリカルボキシレートおよびポリナフタレン−スルホネート化学系化合物の2種の化学混合物を用いた。ポリカルボキシレート化学系混合物を含む混合物のスランプは、ポリナルタレン−スルホネート系添加剤を含む混合物よりかなり高かった。
【0207】
【表6】
【0208】
例えば、混合物9について、3.0重量部のセルフレベリング剤が、それぞれ100重量部のポルトランドセメントおよびシリカフュームの合計に対して存在する。
【0209】
実施例5
表7は、それ以外は同じである混合物についてのスランプ値に対するポリカルボキシレートセルフレベリング剤内容物の含有量の影響を示す。スランプは、混合物に用いられる剤の量の増加とともに増加することがわかる。
【0210】
【表7】
【0211】
実施例6
表8は、本発明のセルフレベリングセメント質組成物の圧縮強度を示す。これらの混合物は、通常137.9MPa(20,000psi)を超える超高圧縮強度を生じることが観察される。
【0212】
スランプは、混合物で4インチ高さ×2インチ直径(10.2cm高さ×5.1cm直径)の真ちゅうシリンダーを満たし、シリンダーの上端部をならして過剰の材料を取り除き、5秒以内にシリンダーを垂直に持ち上げ、スラリーを広げさせ、形成されたスラリーパティーの直径を測定することによって測定した。圧縮強度は、ASTM C109の試験方法に従って2インチ(5.1cm)立方体について決定した。スランプロスおよび圧縮強度増加は、それぞれ、7時間までおよび7日までの期間にわたって測定した。これらの混合物の圧縮強度も、試料を140°F(60℃)で7日水に浸し、その後、175°F(79.4℃)で通風オーブンにおいて4日乾燥させ、その後冷却および試験して、促進硬化条件下で評価した。
【0213】
【表8】
【0214】
実施例7
繊維強化セメント系パネルを、耐アルカリガラス繊維とともに本発明のセルフレベリングセメント質組成物を用いて、スプレーアップ法を用いて製造した。
【0215】
スプレーアップ法では、スラリーは、均一な混合物を得る目的を有して、いくつかの方法でガラス繊維と合わせることができる。ガラス繊維は通常、短い長さに切断されるロービングの形態である。好ましい実施形態において、スラリーおよび切断ガラス繊維は、パネル型中に同時にスプレーされる。好ましくは、スプレーは、好ましくは最大約0.25インチ(0.63cm)厚さの薄い層を製造するためにいくつかのパスで行われ、この層は、特定のパターンを有さずに、1/4から1インチ(0.63から2.5cm)厚さの均一なパネル中に積み重ねられる。例えば、一用途において、3×5フィート(91.4×152.4cm)のパネルは、長さおよび幅方向で6パスのスプレーで作製した。それぞれの層が堆積されるにつれて、スラリーおよびガラス繊維が密接な接触を得ることを確実にするためにローラを用いることができる。これらの層は、ローリング工程後にスクリードバーまたは他の適切な手段によって平らにすることができる。
【0216】
通常、圧縮空気を用いて、スラリーを噴霧化する。スラリーがスプレーノズルから現れると、スラリーは、スプレーガン上に取り付けられたチョッパー機構によってロービングから切断されたガラス繊維と混合される。スラリーおよびガラス繊維の均一な混合物は、上記のとおりのパネル型に堆積させる。
【0217】
製造パネルの公称厚さは、1/2インチ(1.27cm)であり、パネル中のガラス繊維の容量比率は3%であった。表9は、繊維強化された、セルフレベリングの超高強度のセメント質組成物の曲げ性能を示す。表9の配合は、表8の混合物17である。パネルの弾性率は43,474MPa(5000ksi)を超えていて、これは、完全密度の標準強度コンクリート材料の弾性率のほとんど2倍である。繊維強化パネルの曲げ強度は、20.7MPa(3,000psi)を超えていた。弾性率に対してASTM C1325試験法を用い、曲げ強度に対してASTM C947試験法を用いた。
【0218】
【表9】
【0219】
トリエタノールアミン(TEA)および酒石酸による実施例
以下の実施例は、適当な投与量での好ましいアルカノールアミンであるトリエタノールアミンおよび好ましい酸である酒石酸の混合剤を用いることの利点を例証するために提供する。混合物は全て、相対重量比0.85から0.15でセメンティング成分としてポルトランドセメントおよびシリカフューム、ならびにセメンティング成分に対する重量比1.05から1.00でフィラーとしてケイ砂を含む。水は、セメンティング成分に対する重量比0.22から1.00で用いた。カルボキシル化ポリエーテル流動化剤、トリエタノールアミン(TEA99Low Free Grade(LFG)85%TEAおよび15%水)および酒石酸の特定の化学混合剤を以下の実施例に記載した量で添加し、混合物の流動性、硬化時間および強度増加を制御した。
【0220】
成分の全ては、Hobart混合機中で高速で混合して均一な分散液を得る前に、密封プラスチック袋中75〜80°F
(23.9℃〜26,7℃)で少なくとも24時間予備調整した。混合物中での温度上昇は、それぞれの混合物の試料350g中に埋め込まれ、データ取得システムに接続された熱電対を用いて測定した。初期および最終硬化時間は、ASTM C266の方法に従ってGilmore針を用いて決定した。
【0221】
スランプおよび圧縮強度は、実施例6において上記した試験方法に従って決定した。
【0222】
実施例8
混合物流動性を制御するためにセメンティング成分の3重量%で流動化剤、およびセメンティング成分の0重量%(対照)、0.15重量%および0.30重量%の水準で酒石酸を用いて、上記手順に従って3種類の混合物を調製した。この試料混合物にTEAは添加しなかった。混合物のスランプは、対照に対して7.5インチ(19.1cm)、0.15%の酒石酸を含む混合物に対して10.3インチ(26.2cm)および0.30%の酒石酸を含む混合物に対して10.8インチ(27.4cm)であると決定した。
【0223】
図3は、キャスティング後の最初の30時間の間の混合物の温度上昇挙動を示す。
図3は、酒石酸を添加した混合物が、約10時間で硬化した対照混合物と比較して最初の24時間の間に硬化を示さないことを示す。
【0224】
図4は、最大7日間の圧縮強度増加を示す。
図4は、酒石酸を有する混合物が、対照と比較して混合後の最初の7日において比較的遅い速度の圧縮強度増加を示したが、7日目に、0.15%および0.30%の酒石酸混合物は、対照{131.5MPa(19065psi)}と比較してより高い強度{それぞれ、133.4MPa(19346psi)および163.9MPa(23759psi)}を得ることを示す。
【0225】
実施例9
この実施例では、酒石酸およびTEAの両方の添加の組み合わせ効果を評価した。混合物は全て、実施例8の比率でセメンティング成分、水および流動化剤を含み、TEAをポルトランドセメントの0.045重量%で全ての混合物に添加した。酒石酸は、セメンティング成分の0重量%、0.30重量%および0.40重量%であった。混合物のスランプは、それぞれ、対照ならびに0.30%および0.40%の酒石酸試料に対して5.9インチ(15.0cm)、9.9インチ(25.1cm)、および9.3インチ(23.6cm)であることを測定した。これらの混合物のスランプロスを測定して、
図5に示す。
図5は、TEAへの酒石酸の添加が、さらなる2〜3時間にわたって混合物の流動性延長をもたらしたが、その後、0.30%の酒石酸混合物に対しては約2時間および0.40%酒石酸混合物に対して3から3.5時間で急激な流動性降下、その後に硬化をもたらしたことを示す。
【0226】
対照と比較してこの作業性の期間延長は、パネルが成形ラインにおいて成形され、切断されるために十分な時間を与える一方、スランプロス直後の3〜4時間の硬化は、サギングなしに、成形後のパネルの輸送および取扱いを可能にさせる。酒石酸を含まない混合物は、混合後の最初の半時間内に急速なスランプロスを受け、約10〜11時間で硬化するまで粘度が高い塑性状態のままであった。
【0227】
図6は、キャスティング後の最初の30時間における3種の混合物の温度上昇挙動を示す。これは、酒石酸を含む混合物の比較的速い硬化を示す。
【0228】
図7は、混合後の最初の2〜3時間にわたっての試験混合物の圧縮強度増加を示す。酒石酸混合物は、遅い強度増加を示し、これは、パネルを仕上げるためのより多くの時間を与える。7日目に、両方の酒石酸混合物は、対象混合物より約10%高い強度を達成した。0%、0.30%および0.40%の酒石酸混合物に対する促進された強度は、それぞれ、155.5、157.6および140.8MPa(22549、22847および20418psi)であった。
【0229】
実施例10
実施例8および実施例9のものと同様な比率でセメント成分および水を用いて、混合物を調製した。酒石酸をセメンティング成分の0.40重量%で添加し、TEAをポルトランドセメントの0.045重量%で添加した。流動化剤(SP)の量は、セメンティング成分の1重量%、2重量および3重量%で変化させた。混合物の得られたスランプは、1%、2%および3%のSP混合物に対して、それぞれ、8.8インチ(22.4cm)、9インチ(22.9cm)、および10.3インチ(26.2cm)であった。スラリーの適当な作業性にとって、スランプは好ましくは5〜7インチ(12.7〜17.8cm)の範囲である。したがって、SPの水準は1%、すなわち、酒石酸が混合物に試験量で添加される場合の他の組成物の実施形態におけるその当初の量の三分の一だけに減少させることができる。
【0230】
図8は、混合物に対するスランプロスを示す。1%のSPを含む混合物は、その流動性を約20分間維持し、その後、スランプが急速に降下し、約2.5時間で最終的に硬化した。より多くのSPを含む混合物は、流動性をより長い期間維持したが、それらのスランプも急速に降下し、その後、混合物は硬化した。
【0231】
図9は、キャスティング後の最初の30時間の間のこれらの混合物の温度挙動を示し、SPの水準が高くなるにつれて、温度上昇は遅延した。
【0232】
図10は、これらの混合物の圧縮強度増加を示し、混合物の中で測定可能な差は認められなかった。促進強度は、1%、2%および3%のSP混合物に対して、それぞれ、182.2MPa(26145psi)、177.3MPa(25714psi)および131.7MPa(19096psi)であった。
【0233】
好ましくは27.6MPa(4000psi)未満、より好ましくは20.7MPa(3000psi)未満、最も好ましくは13.8MPa(2000psi)未満の1日目圧縮強度、ならびに137.9MPa(20,000psi)から206.9MPa(30,000psi)を超える、28日およびそれ以降を経た圧縮強度を有する超高強度セメント質組成物材料は、制御された圧縮強度増加の割合に対する要件を満たし、かつ最も好ましい、制御された圧縮強度の増加の割合は、セメント質複合材料が、5日目までで27.6MPa(4000psi)未満、最も好ましくは5日後に13.8MPa(2000psi)未満の圧縮強度、ならびに少なくとも69.0MPa(10,000psi)、好ましくは103.4MPa(15,000psi)を超える、より好ましくは137.9MPa(20,000psi)を超える、より好ましくは172.4から206.9MPa(25,000から30,000psi)を超える28日目およびそれ以降を経た圧縮強度を有する場合である。
【0234】
実施例11
実施例8〜実施例10に記載したものと同様の比率でセメンティング成分および水を含む混合物を、セメンティング成分の重量に基づいて1.5重量%のSPおよびポルトランドセメントの0.045重量%の水準でのTEAとともに作製した。酒石酸含有量は、セメンティング成分の0.40重量%、0.80重量%および2.0重量%で変化させた。混合物のスランプは、0.40重量%、0.80重量%および2.0重量%の酒石酸混合物に対して、それぞれ、8.8インチ(22.4cm)、8.9インチ(22.6cm)、および7.8インチ(19.8cm)と測定した。
【0235】
図11は、これらの混合物のスランプロスを示す。
図12は、温度上昇を示す。
図11および
図12に示されるように、0.80重量%を超える酒石酸含有量を有する混合物は、塑性のままであり、最初の24時間以内に硬化しなかった。
【0236】
図13は、これらの混合物の圧縮強度を示し、ここで、0.80重量%および2.0重量%の酒石酸を有する混合物は、強度増加の非常に遅い割合を示した。これは、特に成形後の最初の数時間における、取扱いおよび仕上げの観点からわずかに適切である。促進強度は、0.40重量%、0.80重量%および2.0重量%の酒石酸を含む混合物に対して、それぞれ、182.6MPa(26478psi)、169.3MPa(24543psi)、および7.3MPa(1057psi)であった。2.0重量%の酒石酸を有する混合物は、許容される強度増加を示さない。
【0237】
実施例12
本発明の装甲パネルの好ましい実施形態を
図1に示し、高密度で超高強度のセメント質コアは、離散した耐アルカリガラス繊維で強化されており、薄い積層品は、樹脂に埋め込まれた連続ガラス繊維から構成され、ポリウレタン接着剤などの接着剤でセメント質コアの両面に接着結合されている。
【0238】
耐アルカリガラス繊維で強化した半インチ(1.3cm)厚さで、超高強度のセメント質コアパネルを、連続法を用いて、上記実施例に従って製造した。パネル中の繊維の公称容量比率は、3.0%であった。製造したパネルは、サンドペーパーで平滑に研き、ガラス繊維強化ポリマー(FRP)積層品を、ポリウレタン接着剤を用いてセメント質両面に結合させた。このパネルを24インチ(61cm)の長さにわたって三分の1地点負荷試験下で曲げ試験をした。異なる調整状態下に置いたパネルの曲げ性能において、パネルを試験した。結果を表10に示す。
【0239】
【表10】
【0240】
上に表10で示されるように、パネルは、全ての場合に、55.2MPa(8000psi)を超える、優れた曲げ強度性能を達成した。
【0241】
個別のパネルまたは一群の合わせて積み重ねたパネルを打つ発射体の速度減衰の試験のために、セメント質装甲パネルを表11の配合を用いて本発明に従って調製した。
【0242】
【表11】
【0243】
図14は、面密度対(個別のセメント質装甲パネルまたは一群の合わせて積み重ねたパネルを打つ標準寸法の発射体の)速度減衰のグラフを示す。面密度は、試験パネルの単位面積当たりの質量である。
図14は、スチール繊維を有する未仕上げパネルと比較した本発明の未仕上げパネル(ガラス強化材を用いる)の速度減衰を示す。したがって、
図14は、スチール繊維を有する標準密度のセメント質材料に対する、ガラス繊維を有する本発明の非常に高い密度のセメント質材料の比較を示す。
図14のグラフで示されるように、その表面に強化FRP積層品強化スキンがない場合でさえも、本発明の表11の装甲セメント質コアパネルは、従来のスチール繊維強化セメント質装甲パネルよりも良好な速度減衰を与えた。
【0244】
図15は、本発明の未仕上げパネル(ガラス強化材を用いる)と比較した本発明の仕上げパネル(ガラス強化材を用いる)の速度減衰を示す。したがって、
図15は、本発明のパネルと一緒に仕上げ面を用いる、または仕上げ面を用いない、比較を示す。示されたデータは、速度減衰に関して、パネル上の仕上げ面の追加の影響を実証する。
図15のグラフは、同じセメント質コア構造を有するが、繊維強化仕上げ面層をもたない同様の数の積み重ねたセメント質コアパネルと比較して、セメント質コアパネルの両面にKemlite ArmorTuf(登録商標)の織られたガラス繊維強化ポリエステル積層品の繊維強化スキン層を有する、表11の配合の2、3および4枚のセメント質装甲パネルを打つ発射体の速度減衰を示す。これは、特に複数のパネルを用いる場合に、仕上げ面層をもたないパネルと比較して、仕上げパネルで達成された、パーセントの速度減衰における著しい改善を実証する。
【0245】
実施例13
この実施例は、配合に対して流動性およびセルフレベリング挙動を与えることにおいて、SPと酒石酸との間の関連する重要性を明らかにする。前の実施例におけるものと同様な比率でセメンティング成分および水を有する5つの混合物を評価し、SPおよび酒石酸は、表12に示す含有量においてである
。
【0246】
【表12】
【0247】
TEAを、ポルトランドセメントの0.045重量%の比率で混合物全てにおいて用いた。これらの混合物のスランプは、
図16に示す。混合物への酒石酸の添加により与えられた流動性向上にもかかわらず、この添加物単独では、混合物の適切な流動性および作業性に十分ではないことが分かる。SPが無い場合、硬い、非流動性混合物を生成した。
図17は、前の実施例で記載した混合物に対して同様の仕方で挙動した、混合物1のスランプロスを示す。硬化時間(初期および最終)も、Gillmore針を用いてこれらの混合物について測定した。これらの結果は
図18に示し、ここで、酒石酸含有量が0.08重量%を超えると、混合物の硬化は著しく遅延した(前の実施例でも示されたように)ことがわかる。
【0248】
実施例14
図19は、本発明のセメント質装甲パネル(積層品なし)と、United States Gypsum Companyから入手でき、参照により本明細書に組み込まれる、Tonyanらの米国特許出願公開第2006/0174572号明細書に従って作製された構造用セメント質パネル(やはり積層品なし)との比較を示す。
図19は、未仕上げ構造用セメント質パネル(ガラス強化材を用いる)と比較して本発明の未仕上げパネル(ガラス強化材を用いる)を示す。これは、13.8〜20.7MPa(2000〜3000psi)の範囲の圧縮強度、および70〜80pcf(1.12〜1.29g/cm
3)の範囲の密度を有する低密度コアである、低密度コアと比較して非常に高強度で、高密度コア組成物の比較である。
図19は、速度減衰に対する、標準強度コア(ガラス強化材を有する)と比較して、高密度で、高強度コア(ガラス強化材を有する)の影響を示す。
【0249】
本発明の特定の実施形態を示し、かつ説明してきたが、それらについて、そのより広い態様における、および以下の特許請求の範囲に述べたとおりの本発明から逸脱することなく、変更および修正が行われ得ることは当業者によって十分理解される。