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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-61819(P2015-61819A)
(43)【公開日】2015年4月2日
(54)【発明の名称】疎水性処理された金属酸化物
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/146 20060101AFI20150306BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20150306BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20150306BHJP
【FI】
   C01B33/146
   G03G9/08 374
   G03G9/08 381
   G03G9/08 375
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-226820(P2014-226820)
(22)【出願日】2014年11月7日
(62)【分割の表示】特願2010-514878(P2010-514878)の分割
【原出願日】2008年7月2日
(31)【優先権主張番号】11/774,465
(32)【優先日】2007年7月6日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100080919
【弁理士】
【氏名又は名称】田崎 豪治
(72)【発明者】
【氏名】フォミトチェフ,ドミトリー
(72)【発明者】
【氏名】フレス,ヨアヒム ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,ウィリアム アール.
(72)【発明者】
【氏名】トゥ,ハイルオ
【テーマコード(参考)】
2H500
4G072
【Fターム(参考)】
2H500AA09
2H500AA11
2H500BA27
2H500BA32
2H500CA34
2H500CB08
2H500CB12
2H500EA31D
2H500EA31F
2H500EA42D
2H500EA42F
2H500EA44D
2H500EA46D
2H500EA47D
2H500EA52D
2H500EA55D
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2H500EA62D
2H500EA64D
4G072AA28
4G072BB05
4G072CC13
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4G072GG03
4G072HH17
4G072HH30
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4G072MM02
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4G072MM31
4G072QQ06
4G072QQ07
4G072RR12
4G072SS12
4G072TT01
4G072TT02
4G072TT04
4G072TT06
4G072TT30
4G072UU30
(57)【要約】
【課題】本発明は、疎水性付与剤で表面処理された金属酸化物粒子を含む粒子組成物、およびその金属酸化物粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】粒子組成物は、塩基性水性分散体中で、第1の疎水性付与剤で表面処理された金属酸化物粒子を含む粒子組成物であり、その表面処理された金属酸化物粒子は、疎水性であり、一次凝集しておらず、タップ密度が75g/L〜650g/Lであり、かつ実質的に遊離アルカリ金属カチオンを含まず、ここで、第1の疎水性付与剤は、モノアルコキシシラン化合物、ジアルコキシシラン化合物およびトリアルコキシシラン化合物よりなる群から選ばれるアルコキシシラン化合物であり、そして表面処理された金属酸化物粒子は塩基性水性分散体から直接に乾燥され、乾燥粉末の形態を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性水性分散体中で、第1の疎水性付与剤で表面処理された金属酸化物粒子を含む粒子組成物であり、その表面処理された金属酸化物粒子は、疎水性であり、一次凝集しておらず、タップ密度が75g/L〜650g/Lであり、かつ実質的に遊離アルカリ金属カチオンを含まず、
ここで、第1の疎水性付与剤は、モノアルコキシシラン化合物、ジアルコキシシラン化合物およびトリアルコキシシラン化合物よりなる群から選ばれるアルコキシシラン化合物であり、そして表面処理された金属酸化物粒子は塩基性水性分散体から直接に乾燥され、乾燥粉末の形態を有する、
粒子組成物。
【請求項2】
金属酸化物粒子が第2の疎水性付与剤で表面処理される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
表面処理された金属酸化物粒子が300nm以下の平均粒径を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
表面処理された金属酸化物粒子が200m/g以下のBET表面積を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
金属酸化物粒子が1.7g/cm〜2.0g/cmまたは2.0g/cm〜2.3g/cmの真密度を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
表面処理された金属酸化物粒子の固相Si核磁気共鳴スペクトルが約0.4〜約10のT3:T2比を有し、ここでT2は、−56ppm〜−59ppmの範囲内に中心があるCP/MAS29Si NMRスペクトルにおける化学シフトを有するピークの面積強度であり、T3は、−65ppm〜−69ppmの範囲内に中心があるCP/MAS29Si NMRスペクトルにおける化学シフトを有するピークの面積強度である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
金属酸化物粒子がコロイドシリカ粒子であり、コロイドシリカ粒子がアルカリシリケートから任意に調製される請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
塩基性水性分散体がpH8〜11を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
表面処理された金属酸化物粒子は、20nm〜300nmの平均粒径を有し、ここで表面処理された金属酸化物粒子の平均粒径は、表面処理される前の分散体における平均粒径の30%以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
トナー粒子および請求項1〜9のいずれかに記載の粒子組成物を含むトナー組成物。
【請求項11】
(a)金属酸化物粒子の水性分散体を得ること、ここでその水性分散体は塩基性である、
(b)その分散体を第1の疎水性付与剤と一緒にして反応混合物を得ること、ここで、第1の疎水性付与剤は、モノアルコキシシラン化合物、ジアルコキシシラン化合物およびトリアルコキシシラン化合物よりなる群から選ばれるアルコキシシラン化合物である、ならびに
(c)反応混合物を乾燥して、表面処理された疎水性金属酸化物粒子を反応混合物から直接に得ること、ここでその表面処理された疎水性金属酸化物粒子は、乾燥粉末の形態を有し、一次凝集しておらず、タップ密度が75g/L〜650g/Lであり、かつ実質的に遊離アルカリ金属カチオンを含まない、
を含む、表面処理された疎水性金属酸化物粒子の製造方法。
【請求項12】
(b)において、さらに分散体を第2の疎水性付与剤と一緒にすることを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
分散体は、金属酸化物粒子を第1の疎水性付与剤と接触させる前に、水性金属酸化物分散体を水と混和し得る有機溶媒と混合することにより、調製される請求項11に記載の方法。
【請求項14】
分散体は、金属酸化物粒子を第2の疎水性付与剤と接触させる前に、水性金属酸化物分散体を水と混和し得る有機溶媒と混合することにより、調製される請求項12に記載の方法。
【請求項15】
水に対する有機溶媒の体積比が0.2〜2である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
反応混合物が40℃〜80℃の温度で、1時間以上維持される請求項11に記載の方法。
【請求項17】
分散体が、10wt%〜45wt%の金属酸化物粒子を含む請求項11に記載の方法。
【請求項18】
金属酸化物粒子がコロイドシリカ粒子であり、コロイドシリカ粒子がアルカリシリケートから任意に調製される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
塩基性水性分散体がpH8〜11を有する請求項11に記載の方法。
【請求項20】
表面処理された疎水性金属酸化物粒子は、20nm〜300nmの平均粒径を有し、ここで表面処理された金属酸化物粒子の平均粒径は、表面処理される前の分散体における平均粒径の30%以下である、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
疎水性金属酸化物は、高度の分散性を必要とする、数多くの用途に有用である物理的性質を有する。いくつかの疎水性金属酸化物粒子は、トナー用組成物における使用に望ましい物理的性質を有する。
【背景技術】
【0002】
未処理の金属酸化物粒子は、未処理のシリカ粒子の表面上の、ヒドロキシル基(−OH)のような極性基の存在により親水性である。親水性金属酸化物粒子を処理することにより、粒子の親水性の性質は減少され、それにより粒子の疎水性の変動する程度を付与する。多くの異なる方法が金属酸化物粒子の表面を処理するために知られている。しかし、金属酸化物粒子の水性分散体の直接処理は達成するのに不十分か困難であることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、付加的な、処理された金属酸化物粒子、特にトナー粒子の電荷を変更するのに有用な粒子、ならびに疎水性金属酸化物粒子を処理する付加的な方法、特に水性分散体から直接に疎水性金属酸化物粒子を調製するのに用いられ得る方法、に対する要望は残っている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、第1の疎水性付与剤、および任意に第2の疎水性付与剤で表面処理された金属酸化物粒子を含む粒子組成物を提供し、金属酸化物粒子は疎水性であり、一次凝集しておらず、そして実質的に遊離アルカリ金属カチオンを含まない。
【0005】
さらに、本発明は、トナー粒子、ならびに第1の疎水性付与剤、および任意に第2の疎水性付与剤で表面処理された金属酸化物粒子を含むトナー組成物を提供し、金属酸化物粒子は疎水性であり、一次凝集しておらず、そして実質的に遊離アルカリ金属カチオンを含まない。
【0006】
さらに、本発明は、(a)親水性金属酸化物粒子の水性分散体を得ること、ここでその水性分散体は酸性または塩基性である、(b)その分散体を第1の疎水性付与剤、および任意に第2の疎水性付与剤と一緒にして反応混合物を得、ならびに(c)反応混合物を乾燥して、疎水性金属酸化物粒子を得ること、ここでその疎水性金属酸化物粒子は、実質的に遊離アルカリ金属カチオンを含まない、を含む疎水性金属酸化物粒子の製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、第1の疎水性付与剤、および任意に第2の疎水性付与剤で表面処理された金属酸化物粒子を含む粒子組成物を提供し、金属酸化物粒子は疎水性であり、一次凝集しておらず、そして実質的に遊離アルカリ金属カチオンを含まない。
【0008】
金属酸化物粒子は、シリカ、アルミナ、セリアまたはチタニアのような、いかなる適切な種類の金属酸化物粒子も含み得る。好適には、金属酸化物粒子は、コロイドシリカ粒子のような、コロイド金属酸化物粒子である。コロイド金属酸化物粒子は、一次凝集しておらず、個別に離散した粒子であり、一般的に形状が球形状またはほとんど球形状であるが、他の形状(たとえば、通常楕円形、正方形または四角形の断面を持つ形状)を有し得る。このような粒子は、一次凝集した一次粒子の鎖様構造である、フュームまたは熱で調製された粒子とは構造的に異なる。
【0009】
本発明に従って表面処理された金属酸化物粒子を得るために処理され得る、一次凝集されていない金属酸化物(たとえばコロイド金属酸化物)は、商業的に入手し得、または種々の出発材料から公知の方法により調製され得る(たとえば、湿式法型の金属酸化物)。通常、コロイド金属酸化物出発材料はゾルとして利用し得、それは適切な溶媒中、最も多くは水単独で、または共溶媒および/または安定化剤とともに、コロイド金属酸化物の分散体である。たとえば、Akitoshi Yoshida, Silica Nucleation, Polimerization,and Growth Preparation of Monodispersed Sols, in Colloidal Silica Fundamentals and Applications 47-56(H.E. Bergna & W.O.Roberts, ends., 2006)参照.本発明に用いられるのに適した、商業的に入手し得るコロイドシリカの非制限的な例は、日産化学からのSNOWTEX(登録商標)製品、Nyacol Nanotechnologies,Inc.,から入手し得る NexSil(商標) およびNexSil A(商標)シリーズ製品、ならびに H.C. Starckから入手し得る Lavasil(登録商標)製品を含む。
【0010】
処理された金属酸化物粒子が調製され得る一次凝集されていない金属酸化物粒子は、一次凝集されていない金属酸化物粒子が製造されまたは分散体中で安定化された方法の結果として、アルカリ金属カチオンを含むことが多い。そのアルカリ金属カチオンは、粒子の内部ならびに粒子の表面に存在し得る。「遊離アルカリ金属カチオン」は、コロイドシリカの分散体水性相中で安定化された、または金属酸化物粒子の表面に存在するアルカリ金属カチオンをいい、金属酸化物粒子の内部に結合され、または取り込まれ得、したがって水性相に接近できないようなアルカリ金属カチオンではない。「合計アルカリ金属カチオン」含量は、遊離アルカリ金属カチオンおよび粒子の内部に存在するアルカリ金属カチオンの合計をいう。
【0011】
金属酸化物粒子は、実質的に遊離アルカリ金属カチオンを含まない。たとえば、金属酸化物粒子は約0.2wt%以下の遊離アルカリ金属カチオン含量を有する(たとえば、約0.15wt%以下、約0.1wt%以下、約0.05wt%以下、約0.03wt%以下、または約0.01wt%以下)。遊離アルカリ金属カチオン含量が減少され得る方法は、本発明の、他の態様に関してここに検討されている。
【0012】
金属酸化物粒子は、第1の疎水性付与剤、および任意に第2の疎水性付与剤で表面処理に供され、金属酸化物粒子の表面に疎水性を付与する。特定の理論に拘束されるものではないが、疎水性付与剤は、金属酸化物粒子の表面で表面ヒドロキシル基と反応して親水性基を他の、疎水性化学基に有効に置換すると考えられる。
【0013】
ここでその用語が用いられる、「疎水性」金属酸化物粒子は、疎水性の変動レベルまたは程度を含む。金属酸化物粒子に付与される疎水性の程度は、使用される処理剤の程度および量に依存して変動する。本発明による疎水性金属酸化物粒子は、約25%以上の(たとえば、約35%以上、約45%以上または約50%以上)、利用し得る金属酸化物表面の、反応されるヒドロキシル基を有するのが好ましいが、必ずしも限定されない。通常、本発明による疎水性金属酸化物粒子は、約85%以下の(たとえば、約75%以下または約65%以下)、利用し得る金属酸化物表面の、反応されるヒドロキシル基を有する。
【0014】
第1の疎水性付与剤は、いかなる適切な疎水性付与剤であってもよく、好適には疎水性化学基を有する金属酸化物粒子の表面でシラノール基と反応および/または置換することができる。たとえば、第1の疎水性付与剤は、アルコキシシラン化合物であり得る。そのアルコキシシラン化合物は、モノアルコキシシラン化合物、ジアルコキシシラン化合物またはトリアルコキシシラン化合物であり得る。アルコキシシランは、一般式:RSi(OR4−xを有する化合物を含み、ここで、RはC〜C30分岐および直鎖のアルキル、アミノアルキル、アルケニル、およびアミノアルケニル、C〜C10シクロアルキル、ならびにC〜C10アリールからなる群より選ばれ、RはC〜C10分岐または直鎖のアルキル、そしてxは整数1〜3である。適切なアルコキシシラン化合物は、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、等を含む。
【0015】
好適には、アルコキシシラン化合物はトリアルコキシシラン化合物である。トリアルコキシシラン化合物はいかなる適切なトリアルコキシシラン化合物であってもよい。たとえば、トリアルコキシシラン化合物は、式:RSi(ORを有し、ここで、RはC〜C30分岐および直鎖のアルキル、アミノアルキル、アルケニル、およびアミノアルケニル、ならびにC〜C10シクロアルキルからなる群より選ばれ、RはC〜C10分岐または直鎖のアルキルである。好適には、トリアルコキシシラン化合物は、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、ステアリルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ステアリルトリエトキシシラン、およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる。もっと好適には、トリアルコキシシラン化合物は、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、ステアリルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ステアリルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノブチルトリエトキシシラン、およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる。最も好ましくは、トリアルコキシシラン化合物は、オクチルトリエトキシシランである。さらに、第1の疎水性付与剤は、前述のいかなるものの混合物を含んでいてもよい。
金属酸化物粒子は、第2の疎水性付与剤で処理され得る。第2の疎水性付与剤は、いかなる適切な疎水性付与剤であってもよく、好適には疎水性化学基を有する金属酸化物粒子の表面でシラノール基と反応および/または置換することができる。第2の疎水性付与剤は、アザシラン(すなわち、Si-N-C結合を含む環状シラン)、アミノアルキルシラン(たとえば、アミノプロピルシラン)またはシラザンであり得る。シラザンは、いかなる適切なシラザンであってもよい。たとえば、シラザンは、モノシラザンまたはジシラザンであってもよい。好適には、シラザンはヘキサメチルジシラザンである。さらに、第2の疎水性付与剤は、前述のいかなるものの混合物を含んでいてもよい。
【0016】
処理された金属酸化物粒子は、いかなる適切な平均非二次凝集粒径も有し得る。その粒径は、非二次凝集粒子を囲む最小球の直径をいう。二次凝集粒子(アグロメレート)は、通常ファンデルワールス力により互いにゆるく付着された、いくつかの一次(primary)粒子からなる。これは一次凝集粒子(アグリゲート)と対照的であり、そこでは粒子が焼結する場合のように、一次粒子間の結合は比較的強い。その結果、解二次凝集は、アグロメレートに対して容易に達成され得る。たとえば、トナー粒子を有する、処理された金属酸化物粒子の分散体(乾式分散体)、または高速撹拌または音波処理を用いる、適切な液体(たとえばテトラヒドロフラン(THF))中の、処理された金属酸化物粒子の分散体は、二次凝集を戻すのに用いられ得る。しかし、有意の程度に一次凝集を戻すことは、かなり困難であるか、不可能でさえある。
【0017】
通常、処理された金属酸化物粒子は、約5nm以上(たとえば、約10nm以上、約15nm以上、約20nm以上、または約30nm以上)、そして通常約300nm以下(たとえば、約250nm以下、約200nm以下、約150nm以下、約130nm以下、または約100nm以下)の、非二次凝集平均粒径を有する。本発明の1つの態様によれば、金属酸化物粒子の非二次凝集平均粒径は、約100nm未満(たとえば、約90nm未満、約75nm未満、または約50nm未満)である。したがって、非二次凝集金属酸化物粒子の平均粒径は、約5nm〜約300nm(たとえば、約10nm〜約100nm、約20nm〜約80nm、約30nm〜約70nm、または約40nm〜約60nm)であり得る。
【0018】
処理された金属酸化物粒子は、好適には約200m/g以下のBET表面積を有する(BETと一般的にいわれる、S.Brunauer, P.H.Emmet and I.Teller, J.Am.Chemical Society, 60,309(1938)の方法により測定された)。通常、金属酸化物粒子は約15m/g以上のBET表面積を有する(たとえば、約20m/g以上、約25m/g以上、約30m/g以上、約40m/g以上、約50m/g以上、約55m/g以上、または約60m/g以上、)。金属酸化物粒子のBET表面積は、通常、約200m/g以下、さらには約180m/g以下、である(たとえば、約160m/g以下、約140m/g以下、約130m/g以下、約120m/g以下、約100m/g以下、約80m/g以下、約65m/g以下、約60m/g以下、約50m/g以下、または約40m/g以下)。好適には、金属酸化物粒子のBET表面積は、約15m/g〜約200m/g、そしてもっと好適には約20m/g〜約180m/gである(たとえば、約20m/g〜約160m/g、約20m/g〜約100m/g、約20m/g〜約80m/g、約20m/g〜約65m/g、または約20m/g〜約55m/g)。
【0019】
処理された金属酸化物粒子は、適切なタップ密度を有し得る。処理された金属酸化物粒子のタップ密度は、タップ体積計および次式:タップ密度(g /L)=(処理される金属酸化物粒子の質量g)×(1000/(処理される金属酸化物粒子の体積mL))を用いて測定され得る。
【0020】
処理された金属酸化物粒子のタップ密度は、通常、約650g/L以下、さらには約600g/L以下(たとえば、約550g/L以下、約500g/L以下、約420g/L以下、約400g/L以下、約350g/L以下、約290g/L以下、約250g/L以下、約230g/L以下、または約180g/L以下)である。金属酸化物粒子のタップ密度は、通常、約75g/L以上(たとえば、約85g/L以上、約95g/L以上、約100g/L以上、約125g/L以上、または約135g/L以上)である。したがって、金属酸化物粒子のタップ密度は、約75g/L〜約650g/L(たとえば、約110g/L〜約420g/L、約290g/L〜約650g/L、約290g/L〜約420g/L、約300g/L〜約420g/L、または約420g/L〜約650g/L)である。
【0021】
金属酸化物粒子(たとえば、親水性粒子)は、いかなる適切な真密度も有し得る。通常、金属酸化物粒子は約1.5g/cm以上の真密度を有する(たとえば、約1.7g/cm以上、約2.0g/cm以上、または約2.2g/cm以上)。金属酸化物粒子の真密度は、通常、約5g/cm以下、さらには約4g/cm以下である(たとえば、約3.5g/cm以下、約3g/cm以下、約2.8g/cm以下、約2.5g/cm以下、または約2.3g/cm以下)。好適には、金属酸化物粒子の真密度は、約1.5g/cm〜約5g/cm、そしてもっと好適には約1.5g/cm〜約4g/cmである(たとえば、約1.5g/cm〜約3.5g/cm、約1.5g/cm〜約3g/cm、約1.8g/cm〜約2.8g/cm、約2g/cm〜約2.5g/cm、または約2.2g/cm〜約2.4g/cm)。もっと好適には、金属酸化物粒子の真密度は、約1.7g/cm〜約2.0g/cm、または約2.0g/cm〜約2.3g/cmである。
【0022】
処理された金属酸化物粒子の炭素含量は、処理された金属酸化物粒子の処理レベルの指標として、したがってさらに疎水性の度合いの指標として、使用され得る。処理された粒子の炭素含量は、商業的に入手し得る炭素アナライザー(たとえば、Leco C-200)を用いて測定され得る。本発明により調製された、処理された金属酸化物粒子は、望ましくは炭素含量が約0.1wt%以上(たとえば、約0.15wt%以上、約0.2wt%以上、約0.25wt%以上、約0.3wt%以上、約0.4wt%以上、または約0.5wt%以上)である。処理された金属酸化物粒子の炭素含量は、通常、約8wt%未満(たとえば、約7wt%以下、約6wt%以下、約5wt%以下、約4wt%以下、または約3wt%以下、)である。このように、処理された金属酸化物粒子の炭素含量は、たとえば、約0.1wt%〜約8wt%(たとえば、約0.15wt%〜約6wt%、約0.15wt%〜約4wt%、約0.15wt%〜約2wt%、約1wt%〜約4wt%、約2wt%〜約5wt%、約3wt%〜約6wt%、または約4wt%〜約8wt%)である。
【0023】
本発明による第1の疎水性付与剤での金属酸化物粒子(たとえば、親水性粒子)の表面処理は、金属酸化物粒子表面に付着された、または金属酸化物粒子表面に間接的に付着された、置換ケイ素原子の種々のパターンを生じさせる。これらの置換パターンはMサイト、Dサイト、TサイトおよびQサイトとして、文献に言及されている。たとえば、Sindorf, Dean William, “Silicon-29 and Carbon-13 CP/MAS NMR Studies of Silica Gel and Bonded Silane Phases,”Department of Chemistry, Colorado State University, Fort Collins, Colorado, 1982 を参照されたい。CP/MAS29Si NMRスペクトルにおける共鳴信号に対するMサイト、Dサイト、TサイトおよびQサイトの相関は、Maciel, G., Sindorf, D.W., J.Am. Chem. Soc., 102:7607-7608(1980), Sindorf, D.W.,Maciel, G., J. Phys. Chem., 86:5208-5219(1982)およびSindorf, D.W.,Maciel, G., J.Am. Chem. Soc., 105:3767-3776(1983)において検討されている。
【0024】
本発明の1つの態様によれば、第1の疎水性付与剤での金属酸化物粒子(たとえば、親水性粒子)の表面処理は、T2およびT3サイトといわれる置換パターンを主に有する金属酸化物粒子を与える。ここで用いられるように、T2サイトは、さらにケイ素原子に結合された酸素原子への2つの結合を持つ第1の疎水性付与剤に由来するケイ素原子に相当し、少なくともその1つは金属酸化物粒子表面にあり、シラノール(Si-OH)基を含む酸素原子への1つの結合、および炭素原子への1つの結合である。T2サイトは、式(I):R-Si(OH)-(OSI-P1)(OSiP2)により表され、ここでRは、ここで定義されるように、第1の疎水性付与剤であり、P1およびPは、独立して、粒子表面上のケイ素原子および/またはもう1つのシラン含有分子のケイ素原子、への結合を示す。T2サイトに相当するSi原子は、CP/MAS29Si NMRスペクトルにおける−56ppm〜−59ppmの範囲の化学シフトを有する共鳴信号と相関し、そこでその化学シフトppmは標準テトラメチルシランに関して測定される。
【0025】
ここで用いられるように、T3サイトは、さらにケイ素原子に結合された酸素原子への3つの結合を持つ第1の疎水性付与剤に由来するケイ素原子に相当する。そのケイ素原子の少なくとも1つは金属酸化物粒子上のケイ素原子である。そのサイトは、式(II):R-Si(OSI-P1)(OSi-P2) (OSi-P)により表され、ここでRは、ここで定義されるように、第1の疎水性付与剤であり、P1、P、およびPは、独立して、粒子表面上のケイ素原子および/またはもう1つのシラン含有分子のケイ素原子、への結合を示す。T3サイトに相当するSi原子は、CP/MAS29Si NMRスペクトルにおける−65ppm〜−69ppmの範囲の化学シフトを有する共鳴信号と相関し、そこでその化学シフトppmは標準テトラメチルシランに関して測定される。
【0026】
本発明の処理された金属酸化物粒子は、T2に対するT3比(すなわち、T3:T2)が約0.4〜約10以上であるT3およびT2についてのCP/MAS29Si NMR ピーク強度を生じさせる置換パターンを有するのが好適であり、T3およびT2はここで定義されるとおりである。T3:T2比は、処理された金属酸化物粒子の調製に使用された、pHのような、特定の反応条件に、少なくとも一部は、依存する。ここで定義されるように、T2は、−56ppm〜−59ppmの範囲内に中心があるCP/MAS29Si NMRスペクトルにおける化学シフトを有するピークの面積強度である。T3は、−65ppm〜−69ppmの範囲内に中心があるCP/MAS29Si NMRスペクトルにおける化学シフトを有するピークの面積強度である。ピークの強度は、当業者によく知られている標準検定法を用いて計算された、引用範囲で生じるピークの近似位置における信号の最大ピーク高さ、またはピークの面積をいう。
【0027】
粒子組成物は、処理された金属酸化物粒子を含む、乾燥粒子組成物(たとえば乾燥した粉末)または湿った粒子組成物(たとえば分散体)として調合され得る。分散体は、いかなる適切な分散剤も含み得、好適には、それは水単独、または共溶媒、処理剤もしくは疎水性金属酸化物粒子の分散体に一般的に使用される種類の添加剤、と水との併用である。
【0028】
処理された金属酸化物粒子は、トナー組成物、アンチブロッキング剤、接着調節剤、ポリマー添加剤(たとえば、エラストマーおよびシリコーンゴムのようなゴム用)、耐摩耗被覆および膜、つや消し被覆および膜、レオロジー調節剤(たとえば、エポキシまたは液体ポリマー用)、および機械的/光学的調節剤(たとえば、複合体およびプラスチックス用)を含む(これらに限定されない)、多くの異なる用途に使用され得る。処理された金属酸化物粒子は、トナー組成物に特に有利である。それに関して、本発明は、トナー粒子、ならびに第1の疎水性付与剤および任意に第2の疎水性付与剤で表面処理された金属酸化物粒子を含むトナー組成物を提供し、金属酸化物粒子は疎水性であり、遊離アルカリ金属カチオンを実質的に含まない。
【0029】
トナー組成物に用いられる、処理された金属酸化物粒子のすべての態様は、本発明の金属酸化物粒子組成物に関して記載されるとおりである。したがって、処理された金属酸化物粒子は、一次凝集されていない粒子であり得る。しかし、トナー組成物に有用な金属酸化物粒子は、第1の疎水性付与剤で処理された、一次凝集された金属酸化物粒子をさらに含み、金属酸化物粒子は疎水性であり、遊離アルカリ金属カチオンを実質的に含まない。このような金属酸化物粒子は、本発明の処理された金属酸化物粒子に関して別に記載されるとおりであり、本発明方法により調製され得る。
【0030】
処理された金属酸化物粒子を含むトナー組成物は、たとえば、処理された粒子(たとえば約1wt%〜約5wt%の処理された粒子)を、好ましくは外部添加剤がなく、適切な平均粒径(たとえば9μm)を有する粉末トナー粒子(たとえばスチレンアクリレート)と、ブレンダーで混合することにより、調合され得る。処理された粒子を含むトナー組成物は、たとえばガラスジャー内で回転することにより、調製され得る(たとえば、トナー/キャリア比2/98で、30分間回転する)。キャリアは、たとえば、シリコーン樹脂で被覆された70μmのCu-Znフェライトであり得る。試料は、高湿度および高温度(30℃および相対湿度80%)または低湿度および低温度(18℃および相対湿度15%)で夜通し、標準的な湿度チャンバー内で調節され得る。
【0031】
処理された金属酸化物粒子は、適切なトナー組成物に使用され得、正帯電および負帯電トナー組成物を含む。特定の理論に拘束されるわけではないが、処理された金属酸化物粒子の存在は、金属酸化物粒子を含むトナー組成物の絶対摩擦帯電値を安定化し、増加させると考えられる。
【0032】
処理された金属酸化物粒子を含むトナー組成物の摩擦帯電は、正でも負でもよい。摩擦帯電測定は、この分野で知られる適切な方法および装置を用いて実施され得る(たとえば、Vertex T-50 トリボチャージャー)。測定は、30℃および相対湿度80%(HH)ならびに18℃および相対湿度15%(LL)で夜通し、標準的な湿度チャンバー内でトナー粒子を調節した後に、実施され得る。トナー粒子(たとえば、約4wt%の処理された金属酸化物粒子を含むトナー組成物の)は、好適には、HH条件で約-40μC/g〜約+15μC/g(たとえば、約-40μC/g〜約-20μC/g、約-40μC/g〜約0μC/g、約-5μC/g〜約+10μC/g、約0μC/g〜約+5μC/g、または+5μC/g〜約+10μC/g)の摩擦帯電を有する。トナー粒子は、好適には、LL条件で約-100μC/g〜約+25μC/g(たとえば、約-80μC/g〜約-50μC/g、約-80μC/g〜約0μC/g、約-5μC/g〜約+10μC/g、約+5μC/g〜約+35μC/g、または+10μC/g〜約+25μC/g)の摩擦帯電を有する。
【0033】
本発明の好適な態様において、処理された金属酸化物粒子は、トナー組成物の自由流動特性を改善するのに使用され得る。特定の理論に拘束されるわけではないが、処理された金属酸化物粒子、特にジェットミルされた粒子、の存在は、処理された粒子の比較的低いタップおよびバルク密度により、金属酸化物粒子を含むトナー組成物の自由流動を改善すると考えられる。本発明の関係において、自由流動は、7つの0.5mm排出孔を有し、25mm径と350mm長さの、接地された金属ロール管から排出されるトナーの%であり、40gのトナー組成物を含み、1分間に30rpmで合計30回転される。
【0034】
処理された金属酸化物粒子を含むトナー組成物は、約1wt%損失以上(たとえば、約1.5wt%損失以上、約2wt%損失以上、約2.5wt%損失以上、約3wt%損失以上、または約3.5wt%損失以上)の自由流動を有する。そのトナー組成物の自由流動は、約10wt%損失以下(たとえば、約8wt%損失以下、約7wt%損失以下、約6wt%損失以下、約5wt%損失以下、または約4wt%損失以下)である。好適には、そのトナー組成物の自由流動は、約1wt%損失〜約10wt%損失(たとえば、約1wt%損失〜約8wt%損失、約1wt%損失〜約7wt%損失、約1wt%損失〜約6wt%損失、約1wt%損失〜約5wt%損失、約1wt%損失〜約4wt%損失、約1.5wt%損失〜約8wt%損失、約2wt%損失〜約8wt%損失、約2.5wt%損失〜約8wt%損失、約3wt%損失〜約8wt%損失、または約3.5wt%損失〜約8wt%損失)である。
【0035】
さらに、ここで提供されるのは、疎水性金属酸化物粒子の製造方法であり、(a)金属酸化物粒子(たとえば親水性粒子)の水性分散体を得ること、ここでその水性分散体は酸性または塩基性である、(b)その分散体を第1の疎水性付与剤、および任意に第2の疎水性付与剤と一緒にして反応混合物を得、ならびに(c)反応混合物を乾燥して、疎水性金属酸化物粒子を得ること、ここでその疎水性金属酸化物粒子は、実質的に遊離アルカリ金属カチオンを含まない、を含む。第1および第2の疎水性付与剤は、本発明の処理された金属酸化物粒子に関して、ここに記載されているとおりである。
【0036】
好ましくは、金属酸化物粒子の水性分散体は、コロイド安定である。分散体のコロイド安定性は、粒子の実質的部分を不可逆的に二次凝集またはゲル化すること、または使用中に分散体が沈降すること、を防止する。本発明において使用される金属酸化物粒子の水性分散体は、動的光散乱により測定され、分散体中のシリカ平均粒径が、1時間以上(たとえば、約8時間以上、または約24時間以上)にわたって、もっと好ましくは2週間以上(たとえば、約4週間以上、または約6週間以上)にわたって、最も好ましくは8週間以上(たとえば、約10週間以上、または約12週間以上)にわたって、または約16週間以上でさえ、変化しないような程度のコロイド安定性を有するのが好適である。
【0037】
処理される前は、金属酸化物粒子の水性分散体は酸性、すなわちpHが約7未満、または塩基性、すなわちpHが7より大きい、であり得る。分散体のpHは、たとえば約12以下(たとえば、約11以下、約10以下、約9以下、約8以下、または約7以下)であり得る。通常、反応混合物のpHは、約1以上である(たとえば、約2以上、約3以上、約4以上、約5以上、または約6以上)。したがって、分散体のpHは、たとえば約1〜約12であり得る(たとえば、約1〜約5、約1〜約3.5、約1〜約2.5、約7〜約12、約8〜約11、約9〜約10.5、または約9.5〜約10.5)。分散体のpHは、たとえば分散体に酸または塩基を添加することにより、所望のレベルに調節され得る。
【0038】
金属酸化物粒子の水性分散体は、金属酸化物粒子の商業的に入手し得る分散体(たとえば商業的に入手し得るコロイド金属酸化物)により得られ得、そのいくつかの例は本発明の粒子組成物に関連して上に開示されている。あるいは、金属酸化物粒子の水性分散体は、いかなる適切な方法によっても調製され得る。たとえば、金属酸化物粒子の水性分散体は、高せん断ミキサーを用いて、水単独または水と共溶媒に、シリカ粒子を分散させることにより調製され得る。金属酸化物粒子はいかなる種類でもよく、湿式法金属酸化物(たとえば沈殿金属酸化物)および熱的に製造された金属酸化物(たとえばフューム金属酸化物)を含むが、これらに限定されない。あるいは、金属酸化物粒子の水性分散体は、金属酸化物前駆体から溶液中に調製され得る。たとえば、シリカ粒子の水性分散体は、金属シリケートのpHを約9〜約11に調節することにより調製され得、そこでは金属シリケートにより供給されるシリケートアニオンは重合を受けて水性分散体の形態で望ましい平均粒径を持つ、離散シリカ粒子を製造する。このような態様で金属酸化物の水性分散体を調製し、そのような分散体の粒径を制御する(たとえば、温度、濃度およびpHを調節することによる)ことは、この分野で通常、利用し得る。さらに、金属酸化物粒子の水性分散体を得る、他の適切な方法は、この分野で知られており、それらは本発明に使用され得る。好適には、金属酸化物粒子の水性分散体は、コロイド金属酸化物粒子、特にコロイドシリカ粒子、の水性分散体である。
【0039】
商業的に入手し得る製品により得られたか、またはある別の方法でえられたかによらず、金属酸化物粒子の水性分散体は、分散体の製造または安定化の結果として、遊離アルカリ金属カチオンを含み得る。その遊離アルカリ金属カチオンは、ナトリウム、カリウム、または他のI族金属カチオンであり得る。金属酸化物分散体の遊離アルカリ金属カチオン含量は、たとえば酸性イオン交換樹脂で処理することにより、減少され得る。あるいは、またはそれに加えて、金属酸化物粒子の塩基安定化された分散体の遊離アルカリ金属カチオン含量は、限外ろ過、たとえば透析および膜分離(difiltration)を用いて減少され得る。さらに、遊離アルカリ金属カチオン含量の減少は、分散体のpHを減少させ得る。所望ならば、アミンまたは水酸化アンモニウム(NHOH)の添加によりアルカリ金属含量を増加させることなく、そのpHが調節され得る。この点について、さらに、出発材料として金属酸化物のアンモニウム安定化水性分散体を用いることにより、本発明の好適な態様にしたがって、分散体のアルカリ金属カチオン含量を減少させる必要性を避けることができる。
【0040】
金属酸化物の水性分散体の遊離アルカリ金属カチオン含量の減少は、望まれる限度まで、第1および/または第2の疎水性付与剤が金属酸化物の水性分散体に添加される前に、または添加された後に、いつでも実施され得る。たとえば、その遊離アルカリ金属カチオン減少処理(たとえば、イオン交換、限外ろ過等)は、金属酸化物分散体の製造方法の一部として実施され得、または本発明で使用される前に(たとえば使用前の約1時間もしくはそれ未満、または使用前の約1日もしくはそれ未満、または使用前の1週間もしくはそれ未満)、商業的に入手し得る金属酸化物水性分散体について実施され得る。あるいは、遊離アルカリ金属カチオン減少処理は、第1および第2の疎水性付与剤の1つまたは両方が金属酸化物粒子の分散体と一緒にされた後に、用いられ得る。代わりに、もしくはそれに加えて、遊離アルカリ金属カチオン減少処理も、たとえば乾燥され、処理された金属酸化物粒子を水中にもしくは許容し得る溶媒中に分散させ、そしてその分散体のアルカリ金属含量を減少させることにより、処理された金属酸化物粒子のアルカリ金属含量を比較的遅い時間で減少させるのに用いられ得、その後、処理された金属酸化物粒子は、適切な方法により、単離および/または乾燥され得る。
【0041】
望ましくは、分散体が第1の疎水性付与剤と一緒にされるとき、分散体は、有機溶媒と混合され得る。有機溶媒は、いかなる適切な有機溶媒であってもよい。好適には、有機溶媒は、水溶性または水と混和し得るものである。もっと好適には、有機溶媒は、水溶性である。水溶性有機溶媒は、いかなる適切な水溶性有機溶媒であってもよく、たとえばアルコール(たとえば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2−プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、エチレングリコール、およびプロピレングリコール)、ケトン(たとえば、アセトンおよび2−ブタノン)、エーテル(たとえば、テトラヒドロフランおよび1,2−ジメトキシエタン)、およびそれらの組み合わせである。水および水溶性有機溶媒はいかなる順序で添加されてもよい。たとえば、水溶性有機溶媒の前に、水が添加され得、またはその逆である。特に塩基性安定化分散体が使用されるとき、水溶性有機溶媒の前に、まず水が添加されて固体濃度を適切な量に減少されるのが望ましい。特定の理論に拘束されるものではないが、水溶性有機溶媒の前に、水を添加することは、分散体をゲル化から防止すると考えられる。
【0042】
あるいは、分散体が第1の疎水性付与剤と一緒にされるとき、分散体は有機溶媒と一緒にされる必要がない。もっと具体的には、第1の疎水性付与剤を用いる、水中での金属酸化物粒子の処理は、有機溶媒なしに有効である。
【0043】
第1の疎水性付与剤、任意の第2の疎水性付与剤および有機溶媒は、使用されるとき、いかなる順序でも分散体に添加され得る。有機溶媒は、第1および/または第2の疎水性付与剤の前に添加されるか、またはその逆である。望ましくは、有機溶媒は、金属酸化物粒子を第1および/または第2の疎水性付与剤と接触させる前に、分散体に添加される。特定の理論に拘束されるものではないが、第1および/または第2の疎水性付与剤の添加前に、有機溶媒を最初の分散体添加することは、トナー組成物に使用されるとき、摩擦帯電に比較的大きい影響を有する、処理された金属酸化物粒子をもたらす、と考えられる。通常、反応混合物は、50wt%以下の有機溶媒を含み、好適には40wt%以下の有機溶媒を含む。
【0044】
分散体が水溶性有機溶媒と一緒にされるとき、水に対する水溶性有機溶媒の体積比は、いかなる適切な比であってもよい。通常、その比は、約10未満である(たとえば、約8以下、約6以下、約5以下、約3以下、約2以下、または約1以下)。その比は、約0.05以上(たとえば、約0.1以上、約0.5以上、約0.7以上、約1以上、または約1.2以上)であり得る。その比は、たとえば、約0.05〜約10である(たとえば、約0.1〜約5、または約0.2〜約2)。
【0045】
金属酸化物粒子(たとえば親水性粒子)を含む水性分散体は、いかなる適切な量の金属酸化物粒子を含み得る。通常、水性分散体は、約45wt%以下(たとえば、約35wt%以下、約25wt%以下、約15wt%以下、約10wt%以下、または約5wt%以下)の金属酸化物粒子を含む。水性分散体は、約5wt%以上(たとえば、約10wt%以上、約15wt%以上、約20wt%以上、約25wt%以上、または約30wt%以上)の金属酸化物粒子を含み得る。このように、水性分散体は、たとえば、約5wt%〜約45wt%(たとえば、約10wt%〜約45wt%、約15wt%〜約35wt%、または約15wt%〜約20wt%)の金属酸化物粒子を含み得る。
【0046】
親水性金属酸化物粒子を含む水性分散体添加される、第1の疎水性付与剤の量は、いかなる適切な量であってもよい。第1の疎水性付与剤の量は、通常、約50μmole/m2金属酸化物粒子未満(たとえば、約40μmole/m2金属酸化物粒子以下、約30μmole/m2金属酸化物粒子以下、約25μmole/m2金属酸化物粒子以下、約15μmole/m2金属酸化物粒子以下、約10μmole/m2金属酸化物粒子以下、または約5μmole/m2金属酸化物粒子以下)である。第1の疎水性付与剤の量は、約0.1μmole/m2金属酸化物粒子以上(たとえば、約0.25μmole/m2金属酸化物粒子以上、約0.5μmole/m2金属酸化物粒子以上、約1μmole/m2金属酸化物粒子以上、約1.5μmole/m2金属酸化物粒子以上、または約2μmole/m2金属酸化物粒子以上)であり得る。このように、第1の疎水性付与剤の量は、たとえば、約0.1μmole/m2金属酸化物粒子〜約50μmole/m2金属酸化物粒子(たとえば、約0.1μmole/m2金属酸化物粒子〜約10μmole/m2金属酸化物粒子、約1μmole/m2金属酸化物粒子〜約15μmole/m2金属酸化物粒子、約5μmole/m2金属酸化物粒子〜約25μmole/m2金属酸化物粒子、または約15μmole/m2金属酸化物粒子〜約40μmole/m2金属酸化物粒子)である。
【0047】
反応混合物は、第1および/または第2の疎水性付与剤が金属酸化物粒子を含む水性媒体と、完全にまたは所望の程度に反応することができる、いかなる温度および時間で維持され得る(たとえば、シリカ粒子のシラノール基と反応する)。通常、反応混合物は、約20℃〜約100℃(たとえば、約30℃〜約90℃、約40℃〜約80℃、または約55℃〜約70℃)で、約5分間以上(たとえば、約10分間以上、または約30分間以上)、または60分間以上(たとえば、約120分間以上、約180分間以上、または約240分間以上)、保持される。比較的長い反応時間(たとえば、約5時間以上、7時間以上、10時間以上、または約20時間以上)は、特定の反応条件(たとえば、温度および試薬濃度)に依存して要求され得る。
【0048】
反応混合物は、開放された、または閉じられた反応器中に充填され得る。反応混合物が空気雰囲気に維持される間、酸素はその反応雰囲気から除去され得、そこでは反応混合物は本質的に窒素、アルゴンまたはそれらの混合物からなる雰囲気下に維持され得る。
【0049】
第1および/または第2の疎水性付与剤は、いかなる適切な方法でも水性分散体と一緒にされ得る。金属酸化物の水性媒体は、第1の疎水性付与剤と一緒にされ得、第1の反応混合物を得、そしてその第1の反応混合物は、第1の疎水性付与剤が金属酸化物粒子を含む水性媒体と、ここに記載されるように反応することができる、いかなる温度および時間で維持され得る。通常、第1の反応混合物は、約20℃〜約80℃(たとえば、約40℃〜約80℃、約45℃〜約65℃、または約45℃〜約55℃)で、約1時間以上(たとえば、約1時間〜約24時間、約3時間〜約20時間、または約4時間〜約12時間)、保持される。通常、第1の反応混合物の処理時間は、約1時間〜約12時間である(たとえば、約5時間〜約10時間、または約6時間〜約8時間)。
【0050】
ついで、第2の疎水性付与剤は、第1の反応混合物に添加され得、第2の反応混合物を得、そしてその第2の反応混合物は、第2の疎水性付与剤が金属酸化物粒子を含む水性媒体と、ここに記載されるように反応することができる、いかなる温度および時間で維持され得る。通常、第2の反応混合物は、約30℃〜約80℃(たとえば、約40℃〜約80℃、約45℃〜約65℃、または約45℃〜約55℃)で、約1時間以上(たとえば、約1時間〜約24時間、約3時間〜約20時間、または約4時間〜約12時間)、保持される。通常、第2の反応混合物の処理時間は、約2時間〜約5時間である(たとえば、約2.5時間〜約4.5時間、または約3時間〜約4時間)。望ましくは、第2の反応混合物のpHは、約7〜約12である(たとえば、約8〜約11、または約9〜約10)。
【0051】
あるいは、水性分散体は、第2の疎水性付与剤と一緒にされ、第1の反応混合物を得る。この態様によれば、ついで第1の疎水性付与剤が第1の反応混合物に添加され、第2の反応混合物を得る。
【0052】
なおもう1つの代替において、第1および第2の疎水性付与剤が、同時にまたは実質的に同時に水性分散体と一緒にされ、反応混合物を得る。たとえば、成分は、金属酸化物粒子の水性分散体を含む反応容器に同時に、もしくは段階的に、2成分の添加の間が5分より多く経過しないように、一緒にされ得る。望ましくは、反応混合物のpHは、約7以上である(たとえば、約8以上、または約9以上)。好適には、反応混合物のpHは、約12以下である(たとえば、約11以下、または約10以下)。したがって、反応混合物のpHは、約7〜約12である(たとえば、約8〜約11、または約9〜約10)。通常、反応混合物は、約50℃〜約75℃(たとえば、約50℃〜約70℃、または約65℃〜約75℃)の温度で、約2時間〜約24時間(たとえば、約5時間〜約20時間、約8時間〜約12時間、または約9時間〜約11時間)維持される。
【0053】
第1および/または第2の疎水性付与剤での処理後に、金属酸化物粒子は反応混合物から単離され、乾燥される。疎水性金属酸化物粒子は反応混合物から単離された後に、乾燥され得、または疎水性金属酸化物粒子から反応混合物の揮発成分を蒸発させることにより、反応混合物から直接に乾燥され得る。反応混合物の揮発性成分の蒸発は、いかなる適切な方法、たとえば熱および/または減圧、を用いて達成され得る。熱が使用されるとき、疎水性金属酸化物粒子は、たとえば炉または他の類似の装置、またはスプレー乾燥を用いて、適切な乾燥温度に加熱され得る。
【0054】
スプレー乾燥は、反応混合物、またはその一部、をスプレーすることを含み、疎水性金属酸化物粒子を微細ミストとして乾燥チャンバーに導入し、そこでは微細ミストが熱い空気と接触され、反応混合物の揮発性成分の蒸発を生じさせる。
【0055】
選ばれる乾燥温度は、蒸発を必要とする反応混合物の特定成分に、少なくとも一部は依存する。通常、乾燥温度は、約40℃以上(たとえば、約50℃以上)であり、たとえば約70℃以上(たとえば、約80℃以上)、または約120℃以上(たとえば、約130℃以上)が挙げられる。このように、通常、乾燥温度は、約40℃〜250℃の範囲内(たとえば、約50℃〜200℃)であり得、たとえば約60℃〜200℃(たとえば、約70℃〜175℃)、または約80℃〜150℃(たとえば、約90℃〜130℃)である。
【0056】
疎水性金属酸化物粒子は、有用な蒸発速度を与えるいかなる圧力でも乾燥され得る。約120℃以上(たとえば、約120〜150℃)の乾燥温度が用いられるとき、約125kPa以下(たとえば約75〜125kPa)の乾燥圧力が望ましい。約120℃未満(たとえば、約40〜120℃)の乾燥温度で、約100kPa以下(たとえば約75kPa以下)の乾燥圧力が望ましい。もちろん、減圧(たとえば、約100kPa以下、約75kPa以下、または約50kPa以下の圧力)は、反応混合物の揮発性成分を蒸発させるための単独の方法として使用され得る。
【0057】
あるいは、疎水性金属酸化物粒子は、凍結乾燥により乾燥され得、反応混合物の揮発性成分は固相(すなわち、凍結)に転換され、ついで真空の適用により気相に転換され得る。たとえば、疎水性金属酸化物粒子を含む反応混合物は、適切な温度(たとえば、約−20℃以下、または約−10℃以下、または約−5℃以下、)にされ、反応混合物の揮発性成分を凍らせ、そしてこれらの反応混合物の揮発性成分を蒸発させて乾燥した疎水性金属酸化物粒子を与えるために、真空が適用される。
【0058】
疎水性金属酸化物粒子は、単離および/または反応混合物からの乾燥の前または後に洗浄され得る。疎水性金属酸化物粒子の洗浄は、適切な洗浄溶媒、たとえば水、水と混和し得る有機溶媒、水と混和しない溶媒、またはそれらの混合物、を用いて実施され得る。その洗浄溶媒は、反応混合物に添加され得、そして得られる混合物は適切に混合され、ついでろ過、遠心分離、または乾燥して、洗浄された疎水性金属酸化物粒子を単離する。あるいは、その疎水性金属酸化物粒子は、洗浄前に反応混合物から単離され得る。洗浄された疎水性金属酸化物粒子は、さらに追加の洗浄ステップで洗浄され得、ついでろ過、遠心分離、および/または乾燥ステップに送られる。
【0059】
疎水性金属酸化物粒子は、最初の分散体における金属酸化物粒子の全体的粒径に、少なくとも一部は依存する全体的粒径を有する。疎水性金属酸化物粒子の平均全体的粒径は、いかなる適切な方法でも測定され得、その多くの方法は、動的光散乱のようにこの分野で知られている。本発明方法により調製された、疎水性金属酸化物粒子の好適な平均径は、本発明の処理された金属酸化物粒子について記載されているとおりである。望ましくは、本発明方法により調製された、疎水性で、一次凝集していない粒子の平均粒径は、最初の分散体の金属酸化物粒子の平均粒径の約50%以内、好ましくは約30%以内(たとえば、約20%以内、約15%以内、約10%以内、または約5%以内、)である。好適には、疎水性金属酸化物粒子の平均粒径は、乾燥後にさらに減少される。疎水性金属酸化物粒子の粒径および二次凝集径を減少させる適切な方法は、湿式または乾式摩砕、ハンマーミルおよびジェットミルを含むが、これらに限定されない。
【0060】
疎水性で、一次凝集されていない金属酸化物に関する、本発明の製造方法および得られる製品のすべての態様は、本発明の処理された金属酸化物に関して、ここに記載されている。
【実施例】
【0061】
以下の例は、本発明をさらに説明するが、もちろんその範囲を制限するように解釈されるべきではない。
【0062】
オーバーヘッド撹拌モータおよび凝縮器付きの500mL三つ口丸底フラスコ、疎水性金属酸化物粒子が、商業的に入手し得るコロイドシリカ粒子を、第1の疎水性付与剤、および任意に第2の疎水性付与剤で処理することにより調製された。例は、特定された疎水性付与剤として、HMDZおよび/またはOTESを用いる。
【0063】
例で用いられた、商業的に入手し得るコロイドシリカ粒子は、表1に要約される。他に言及がなければ、コロイドシリカ粒子は、オーバーヘッド撹拌モータ、熱電対および凝縮器付きの適切な大きさの三つ口丸底フラスコ内で実施された。
【0064】
【表1】
【0065】
以下の例で言及されるトナー組成物は、4wt%の処理されたシリカ粒子を、外部添加剤がなく、平均粒径が9μmである粉末スチレンアクリレートブラックトナーと、実験室ブレンダーで混合することにより、調合された。トナー粒子の平均径は9μmであった。トナーは、ガラスジャー内でトナー/キャリア比2/98で、30分間回転することにより、調製された。キャリアは、シリコーン樹脂で被覆された70μmのCu-Znフェライトであった。試料は、高湿度および高温度(30℃および相対湿度80%)(「HH」)または低湿度および低温度(18℃および相対湿度15%)(「LL」)で夜通し、標準的な湿度チャンバー内で調節された。摩擦帯電測定は、Vertex T-50 トリボチャージャーを使用して実施された。
例1
この例は、処理された金属酸化物粒子を含むトナー組成物に対する、処理された金属酸化物粒子の遊離アルカリ金属カチオン含量の効果を示す。
【0066】
2つのシリカ組成物(組成物1Aおよび2B)が次のように調製された:表2に示されるシリカ分散体100gが反応容器に添加された。HMDZは表2に示される量で分散体に添加され、混合物は50〜55℃で、分散体の渦が撹拌翼の少なくとも頂部に延びるような速度で撹拌された。混合物は、8時間、反応に供された。ついで、混合物はガラス皿に注がれ。強制空気炉内で120〜130℃で乾燥された。
【0067】
トルエンでの抽出の前と後の、乾燥粒子の炭素含量が表2に示される。抽出は、シリカ0.5〜2g、トルエン約100mLを用いる、ソクスレー抽出であった。
【0068】
トナー組成物が、処理された粒子を用いて前述の方法により調製された。トナー組成物の摩擦帯電値も表2に示される。
【0069】
【表2】
【0070】
これらの結果は、遊離アルカリ金属カチオンを実質的に含まない、
処理された金属酸化物粒子を含むトナー組成物が、遊離アルカリ金属カチオンを比較的多く含む、処理された金属酸化物粒子を含むトナー組成物よりも、高い摩擦帯電を示すこと示す。
例2
この例は、処理された金属酸化物粒子を含むトナー組成物に対する、処理された金属酸化物粒子の遊離アルカリ金属カチオン含量の効果を示す。
【0071】
3つのシリカ組成物(組成物2A〜2C)が次のように調製された:脱イオン水100gが表3に示されるシリカ分散体100gに添加され、シリカ濃度は約20wt%に減少した。別のビーカーで、OTES3.6gがイソプロピルアルコール(IPA)90mLに溶解され、ついで連続して撹拌しながらシリカ分散体に添加された。反応混合物は、連続して撹拌され、70〜75℃で、8時間、加熱された。ついで、組成物2Aおよび2Bは、室温に冷却され、ガラス皿に注がれ。強制空気炉内で120〜130℃で乾燥された。組成物2Cは、室温に冷却され、10%酢酸が反応混合物に添加され、pHが約6に低下された。組成物2Cの処理されたシリカは、ろ過により分離され、過剰の脱イオン水で数回洗浄され、強制空気炉内で120〜130℃で乾燥された。
【0072】
トルエンでの抽出の前と後の、乾燥粒子の炭素含量が表3に示される。抽出は、シリカ0.5〜2g、トルエン約100mLを用いる、ソクスレー抽出であった。
【0073】
トナー組成物が、処理された粒子を用いて前述の方法により調製された。トナー組成物の摩擦帯電値も表3に示される。
【0074】
組成物2Aおよび2Cの乾燥粒子の全アルカリ金属カチオン含量はICPで測定された。その結果は、表4に示される。比較のために、表4は、未処理の、商業的に入手し得るシリカ分散体の全アルカリ金属カチオン含量を含み、それらもICPで測定された。
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
洗浄またはイオン交換の前後の全アルカリ金属カチオン含量の差異は、遊離アルカリ金属カチオン含量を示す。これらの結果は、遊離アルカリ金属カチオンを実質的に含まない、処理された金属酸化物粒子を含むトナー組成物が、遊離アルカリ金属カチオンを比較的多く含む、処理された金属酸化物粒子を含むトナー組成物よりも、高い摩擦帯電を示すこと示す(たとえば、組成物2Aを組成物2Bと比較されたい)。これらの結果は、金属酸化物粒子の遊離アルカリ金属カチオン含量が、金属酸化物粒子の中和および洗浄により減少したことも示す(たとえば、組成物2Aを組成物2Cと比較されたい)。
例3
この例は、第1の疎水性付与剤および第2の疎水性付与剤での金属酸化物粒子の処理を示す。
【0078】
3つのシリカ組成物(組成物3A〜3C)が次のように調製された:脱イオン水100gが表5に示されるシリカ分散体100gに添加され、シリカ濃度は約20wt%に減少した。組成物3A〜3Cは、次のように処理された:HMDZ3.2gが分散体に添加され、混合物は50〜55℃で、分散体の渦が撹拌翼の少なくとも頂部に延びるような速度で撹拌された。混合物は、5時間、反応に供された。
別のビーカーで、OTES2.2gがイソプロピルアルコール(IPA)90mLに溶解され、ついで連続して撹拌しながらシリカ分散体に添加された。反応混合物は、連続して撹拌され、70〜75℃で、5時間、加熱された。ついで、組成物2Aおよび2Bは、室温に冷却され、ガラス皿に注がれ。強制空気炉内で120〜130℃で乾燥された。組成物3Cは、70〜75℃で、5時間、OTESで処理され、ついで室温に冷却され、50〜55℃で、5時間、HMDZで処理されたことを除けば、組成物3A〜3Cに関する上記と同様にして調製された。
【0079】
トルエンでの抽出の前と後の、乾燥粒子の炭素含量が表5に示される。抽出は、シリカ0.5〜2g、トルエン約100mLを用いる、ソクスレー抽出であった。
【0080】
トナー組成物が、処理された粒子を用いて前述の方法により調製された。トナー組成物の摩擦帯電値も表6に示される。
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
これらの結果は、遊離アルカリ金属カチオンを実質的に含まない、処理された金属酸化物粒子を含むトナー組成物が、遊離アルカリ金属カチオンを比較的多く含む、処理された金属酸化物粒子を含むトナー組成物よりも、高い摩擦帯電を示すこと示す(たとえば、組成物3Aを組成物3Bと比較されたい)。これらの結果は、第1の疎水性付与剤および第2の疎水性付与剤で処理された金属酸化物粒子を含むトナー組成物は、処理の順序にかかわらず、同様に処理された金属酸化物粒子を含むトナー組成物と類似の摩擦帯電を示すことを示す。
例4
この例は、本発明の金属酸化物粒子の遊離アルカリ金属カチオン含量を測定する手順を示す。
イオン選択電極(ISE)が、処理および未処理のシリカ組成物における遊離アルカリ金属カチオン含量を測定するのに使用された。具体的には、Accument Na ISE(model#13-620-503)およびOakton Ion 6combination meterが処理および未処理のシリカ組成物における電位を測定するのに用いられた。既知のナトリウム濃度および固定イオン強度、の標準溶液を用いて、検量曲線が、測定電位(mV)をナトリウム濃度に関連させて作成された。検量曲線は、次式:mV=a*(ln[Na])−b,ここで定数aおよびbは、検量曲線から決定された。この実験について作成された検量曲線は、次の定数値:a=22.524およびb=172.59を有していた。
2つの未処理のシリカ粒子組成物の遊離アルカリ金属カチオン含量(組成物4A〜4B)が、上述のISE手順にしたがって水性コロイド分散体の電位を直接測定することにより測定された。
2つの処理されたシリカ粒子組成物(組成物4C〜4D)は次のように調製された: 脱イオン水100gが表7に示されるシリカ分散体100gに添加され、シリカ濃度は約20wt%に減少した。別のビーカーで、OTES3.6gがIPA90mLに溶解され、ついで連続して撹拌しながらシリカ分散体に添加された。反応混合物は、連続して撹拌され、70〜75℃で、8時間、加熱された。反応混合物は、室温に冷却され、ガラス皿に注がれ。強制空気炉内で120〜130℃で乾燥された。
乾燥された、処理されたシリカ組成物は、遊離アルカリ金属含量の測定を容易にするために水/アルコールスラリーに調合された。乾燥された、処理されたシリカ組成物スラリーは、次のように調製された:脱イオン水12.2g、IPA1.7gおよびイオン強度調節剤(ISA)が、スラリーを形成するために処理されたシリカ組成物0.42gに添加された。イオン強度調節剤(ISA)は、約10wt%の量で組成物のイオン強度を高く保持するためにスラリーに添加され、それにより測定される電位の変動を減少させた。ISAは、4モル塩化アンモニウムおよび4M水酸化アンモニウムからなる水性溶液である。処理されたシリカ組成物の遊離アルカリ金属含量は上述のISE手順にしたがって測定された。シリカ組成物の遊離アルカリ金属含量は、表7に示される。
【表7】
例5
この例は、第1の疎水性付与剤および第2の疎水性付与剤でコロイドシリカ粒子を処理する、疎水性金属酸化物粒子の調製を示す。
反応器は、SNOWTEX OYLコロイドシリカ分散体39kgを充填された。分散体を撹拌機で連続して撹拌しながら、ホモジナイザーを通して再循環させ、脱イオン水25kgが、そのコロイドシリカ濃度を約12wt%に減少させるために添加された。撹拌、再循環させながら、HMDZ2.51kgが分散体に添加された。反応混合物は約53℃に加熱され、3時間反応させた。そして、約26Lの分散体が移され、スプレー乾燥された。
IPA24.6kg(IPA/水体積比約0.7)が反応器の残りの分散体に添加された。OTES0.61kgが分散体に添加され、の添加後、混合物の撹拌は継続され、そして反応混合物は約70℃に加熱され、撹拌、再循環させながら、約5.5時間反応された。反応器への加熱が停止されたが、撹拌、再循環は夜通し継続された。スラリーは約125℃(乾燥機出口温度)の温度で次の日にスプレー乾燥された。乾燥機への入口温度は235℃であった。得られる粉末はサイクロン捕集器およびバグフィルターから捕集された。乾燥後に、粉末はジェットミルされた。
得られた粒子組成物は、炭素含量2.12wt%,表面積27.9m/gであった。粒子組成物のタップ密度が、種々のタップ数後に、測定され、その結果は、次のとおりであった:228g/L(0タップ), 297g/L(300タップ),304g/L(600タップ),308g/L(1250タップ),および312g/L(3000タップ)。
トナー組成物が、粒子組成物を用いて前述の方法により調製された。得られたトナー組成物の摩擦帯電値(HH)は-36μC/g, 摩擦帯電値(LL)は-71μC/gであった。
刊行物、特許出願および特許を含む、ここで引用されたすべての文献は、各文献が個別に、具体的に、引用により組み入れられるように指摘され、ここで十分に説明されているのと同様に、引用によりここに組み入れられる。
【0084】
本発明を説明する関係で(特に特許請求の範囲の関係で)の、用語「a」、「and」および 「the」ならびに同様な指示語の使用は、他に異なる指摘があるか、または文脈から異なることが明らかでない限り、単数および複数の両方を包含するように解釈されるべきである。用語「comprising」、「having」、「including」および「containing」は、異なる記載がなければ制約のない用語(すなわち、「含むが、限定されない」の意味)として解釈されるべきである。数値範囲の列挙は、もし異なる指摘がなければ、その範囲にあたる分離した値を個別に記載する方法として役立つことを意図したにすぎず、分離した値は個別にここに列挙されたかのように明細書に組み入れられる。ここで記載されるすべての方法は、他に異なる指摘があるか、または文脈から異なることが明らかでない限り、いかなる適切な順序でも実施され得る。すべての例、または例示的用語(たとえば、「のような」)の使用は、異なる請求項がなければ、本発明をもっとよく説明しようとするものであり、本発明の範囲を限定するものではない。明細書の用語は、本発明の実施に必要な、請求されていない構成を示すと解釈されるべきではない。
【0085】
本発明の好適な態様は、ここに記載され、本発明を実施するために発明者が知るベストモードを含む。これらの好適な態様の変形は、前述の記載を読む際に、当業者に明らかとなり得る。本発明者は、当業者が適切にそのような変形をなすことを期待し、さらに本発明者は、本発明がここに具体的に記載されたものと異なってじっしされるのを意図する。したがって、本発明は、適用法により許される限り、請求項に記載された主題の全変形および均等物を含む。さらに、その可能な変形において、上述の構成のいかなる組み合わせも、他に異なる指摘があるか、または文脈から異なることが明らかでない限り、本発明に包含される。