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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-61880(P2015-61880A)
(43)【公開日】2015年4月2日
(54)【発明の名称】フルオレン系化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 249/08 20060101AFI20150306BHJP
   C07C 251/66 20060101ALI20150306BHJP
   C07C 323/47 20060101ALI20150306BHJP
   C07C 319/20 20060101ALI20150306BHJP
   C07C 249/12 20060101ALI20150306BHJP
【FI】
   C07C249/08
   C07C251/66
   C07C323/47
   C07C319/20
   C07C249/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】85
(21)【出願番号】特願2014-262387(P2014-262387)
(22)【出願日】2014年12月25日
(62)【分割の表示】特願2014-505302(P2014-505302)の分割
【原出願日】2013年9月20日
(31)【優先権主張番号】特願2012-217856(P2012-217856)
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】394004860
【氏名又は名称】ダイトーケミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100183852
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 四郎
(72)【発明者】
【氏名】針原 誠
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智彦
(72)【発明者】
【氏名】桑村 勝二
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC44
4H006AC51
4H006AC59
4H006BD70
4H006BW13
4H006BW21
4H006TA04
4H006TC11
(57)【要約】
【課題】新規なフルオレン系化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の製造方法は、式(11)で表される化合物を所定のカルボン酸ハロゲン化物と反応させる工程、および、該反応により得られた化合物をニトロ化する工程、を含む。
【化1】


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(10)で表されるフルオレン系化合物の製造方法であって、
【化1】
式(11)で表される化合物を、RまたはRを含むカルボン酸ハロゲン化物と反応させて、それぞれ式(12)または式(13)で表される化合物を得る工程、および
【化2】
【化3】
式(12)または式(13)で表される化合物をニトロ化して、それぞれ式(14)または式(15)で表される化合物を得る工程、
【化4】
を含む製造方法:
式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜15の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、または、炭素数7〜11のフェニルアルキル基を表し、RおよびRは一緒になって環を形成してもよく;
式中、Rは式(2)または式(3)で表される基であって、
【化5】
式中、RおよびR5´は炭素数1〜17の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数2〜5の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜7の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜11のフェニルアルキル基、置換されていてもよい炭素数7〜10のフェノキシアルキル基、置換されていてもよい複素環基、または、置換されていてもよい縮合環基を表し;
式中、Rは炭素数1〜17の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜7の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜7の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜4の直鎖状もしくは分岐状のアミノアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜11のフェニルアルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された置換されていてもよい炭素数7〜10のフェニルアルキル基、置換されていてもよい縮合環基、または、置換されていてもよい複素環基を表し;
式中、Rは炭素数1〜16の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜10のフェニルアルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された置換されていてもよい炭素数7〜9のフェニルアルキル基、置換されていてもよい縮合環基、または、置換されていてもよい複素環基を表す。
【請求項2】
が式(2)で表される基である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
が式(2’’’)で表される基である、請求項2に記載の製造方法。
【化6】
(式(2’’’)中、R30〜R34は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜7の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基(アルキルオキシ基の酸素原子は式中の芳香環に結合している)、または1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキルチオ基(アルキルチオ基の硫黄原子は式中の芳香環に結合している)を表す。)
【請求項4】
30〜R34がそれぞれ独立して、水素原子、メチル基、または、メトキシ基である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
がo−トルイル基である、請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオレン系化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エチレン性不飽和結合を有する化合物、および、光重合開始剤を含む感光性組成物は、活性エネルギー線を照射することにより硬化し得る。そのため、感光性組成物は、光硬化性接着剤、光硬化性インク、感光性印刷版、各種フォトレジスト等、様々な用途に用いられている。
【0003】
光重合開始剤としては、例えば、カルバゾール骨格を含むオキシムエステル化合物が知られている(例えば、特許文献1〜3)。これらの化合物は、活性エネルギー線に対して優れた感度を有することから好適に用いられている。しかしながら、これらの化合物よりも、活性エネルギー線に対する感度が、さらに優れた光重合開始剤の開発が望まれている。また、これらの化合物は、溶解性においても改良の余地がある。さらに、光重合開始剤は様々な用途に用いられることから、活性エネルギー線に対する高い感度に加えて、各用途に要求される特性についても優れた性能を有することが望まれている。
【0004】
また、特許文献4および5には、フルオレン骨格を有するオキシムエステル化合物が開示されている。しかしながら、この化合物の合成方法等の具体的な開示はなく、この化合物が光重合開始剤として有用なものであるかも明らかではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−36750号公報
【特許文献2】国際公開第2002/100903号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2011/152066号パンフレット
【特許文献4】特開2008−100955号公報
【特許文献5】特開2010−15025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の従来の化合物が有する課題を解決することを目的とするものであり、新規なフルオレン骨格を有する化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、新規な2位および7位が置換されたフルオレン骨格を有する化合物を所定の方法で製造することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の製造方法は、一般式(10)で表されるフルオレン系化合物の製造方法であって、
【化1】
式(11)で表される化合物を、RまたはRを含むカルボン酸ハロゲン化物と反応させて、それぞれ式(12)または式(13)で表される化合物を得る工程、および
【化2】
【化3】
式(12)または式(13)で表される化合物をニトロ化して、それぞれ式(14)または式(15)で表される化合物を得る工程、
【化4】
を含む製造方法:
式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜15の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、または、炭素数7〜11のフェニルアルキル基を表し、RおよびRは一緒になって環を形成してもよく;
式中、Rは式(2)または式(3)で表される基であって、
【化5】
式中、RおよびR5´は炭素数1〜17の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数2〜5の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜7の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜11のフェニルアルキル基、置換されていてもよい炭素数7〜10のフェノキシアルキル基、置換されていてもよい複素環基、または、置換されていてもよい縮合環基を表し;
式中、Rは炭素数1〜17の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜7の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜7の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜4の直鎖状もしくは分岐状のアミノアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜11のフェニルアルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された置換されていてもよい炭素数7〜10のフェニルアルキル基、置換されていてもよい縮合環基、または、置換されていてもよい複素環基を表し;
式中、Rは炭素数1〜16の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜10のフェニルアルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された置換されていてもよい炭素数7〜9のフェニルアルキル基、置換されていてもよい縮合環基、または、置換されていてもよい複素環基を表す。
好ましい実施形態においては、Rは式(2)で表される基である。
好ましい実施形態においては、Rは式(2’’’)で表される基である。
【化6】
(式(2’’’)中、R30〜R34は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜7の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基(アルキルオキシ基の酸素原子は式中の芳香環に結合している)、または1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキルチオ基(アルキルチオ基の硫黄原子は式中の芳香環に結合している)を表す。)
好ましい実施形態においては、R30〜R34はそれぞれ独立して、水素原子、メチル基、または、メトキシ基である。
好ましい実施形態においては、Rはo−トルイル基である。
なお、本明細書では、下記の一般式(1)で表されるフルオレン系化合物について、本発明のフルオレン系化合物として説明する。
【化7】
一般式(1)中、Rはmが0、かつ、nが0の場合、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基で置換されたスルホニルオキシ基、置換されていてもよいフェニルスルホニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基で置換されたスルホニル基、置換されていてもよいフェニルスルホニル基、置換されていてもよい複素環式スルホニル基、または、置換されていてもよい縮合環式スルホニル基を表し、mが0、かつ、nが1の場合、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい複素環基、または、置換されていてもよい縮合環基を表し、mが1、かつ、nが1の場合、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基で置換されたスルホニルオキシ基、または、置換されていてもよいフェニルスルホニルオキシ基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜15の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、または、炭素数7〜11のフェニルアルキル基を表し、RおよびRは一緒になって環を形成してもよく;
は式(2)または式(3)で表される基であって、
【化8】
式(2)および(3)中、RおよびR5´は炭素数1〜17の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数2〜5の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜7の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜11のフェニルアルキル基、置換されていてもよい炭素数7〜10のフェノキシアルキル基、置換されていてもよい複素環基、または、置換されていてもよい縮合環基を表し;
式(2)中、Rは炭素数1〜17の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜7の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜7の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜4の直鎖状もしくは分岐状のアミノアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜11のフェニルアルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された置換されていてもよい炭素数7〜10のフェニルアルキル基、置換されていてもよい縮合環基、または、置換されていてもよい複素環基を表し;
式(3)中、Rは炭素数1〜16の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜10のフェニルアルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された置換されていてもよい炭素数7〜9のフェニルアルキル基、置換されていてもよい縮合環基、または、置換されていてもよい複素環基を表し;
mおよびnは0または1を表し、mが1の場合、nは1である。
好ましい実施形態においては、上記RまたはR5´はメチル基である。
好ましい実施形態においては、Rは式(2)で表される基であって、Rは炭素数1〜7の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜5の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜4の直鎖状または分岐状のアミノアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜11のフェニルアルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された置換されていてもよい炭素数7〜10のフェニルアルキル基、置換されていてもよい縮合環基、または、置換されていてもよい複素環基である。
好ましい実施形態においては、Rは式(3)で表される基であって、Rは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜10のフェニルアルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された置換されていてもよい炭素数7〜9のフェニルアルキル基、置換されていてもよい縮合環基、または、置換されていてもよい複素環基である。
好ましい実施形態においては、mおよびnが0であり、Rがハロゲン原子、もしくは、ニトロ基である、または、mが0、nが1であり、Rが置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい縮合環基、もしくは、置換されていてもよい複素環基である。
本発明の別の局面においては、光重合開始剤が提供される。該光重合開始剤は、上記フルオレン系化合物を少なくとも1種含む。
本発明のさらに別の局面においては、感光性組成物が提供される。該感光性組成物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する化合物、および、上記光重合開始剤を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の新規なフルオレン系化合物は、活性エネルギー線に対する高い感度を有する。また、本発明のフルオレン系化合物は、フルオレン骨格に結合する官能基を適宜選択することにより、さらに優れた特性(例えば、活性エネルギー線に対するさらに向上した感度、高い溶解性、および、より優れた透明性等)を有する光重合開始剤を提供することができる。そのため、本発明のフルオレン系化合物は、光重合開始剤として様々な用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(A)は、合成例4で得られたフルオレン系化合物について、露光前後での着色の度合い(吸収スペクトル)を測定した結果を示すグラフであり、図1(B)は、参考例1の化合物について、露光前後での着色の度合いを測定した結果を示すグラフである。
図2】合成例1で得られたフルオレン系化合物を含む感光性組成物により得られた透明硬化膜(実施例1)および黒色硬化膜(実施例10)のレーザー顕微鏡写真である。
図3】合成例2で得られたフルオレン系化合物を含む感光性組成物により得られた透明硬化膜(実施例2)および黒色硬化膜(実施例11)のレーザー顕微鏡写真である。
図4】合成例8で得られたフルオレン系化合物を含む感光性組成物により得られた透明硬化膜(実施例5)のレーザー顕微鏡写真である。
図5】合成例11で得られたフルオレン系化合物を含む感光性組成物により得られた透明硬化膜(実施例7)のレーザー顕微鏡写真である。
図6】従来の光重合開始剤を含む感光性組成物により得られた透明硬化膜(比較例1)および黒色硬化膜(比較例3)のレーザー顕微鏡写真である。
図7】合成例D−1で得られたフルオレン系化合物を含む感光性組成物により得られた透明硬化膜(実施例2−1)および黒色硬化膜(実施例2−11)のレーザー顕微鏡写真である。
図8】合成例D−3で得られたフルオレン系化合物を含む感光性組成物により得られた透明硬化膜(実施例2−2)および黒色硬化膜(実施例2−13)のレーザー顕微鏡写真である。
図9】合成例D−4で得られたフルオレン系化合物を含む感光性組成物により得られた透明硬化膜(実施例2−3)および黒色硬化膜(実施例2−14)のレーザー顕微鏡写真である。
図10】合成例D−12で得られたフルオレン系化合物を含む感光性組成物により得られた透明硬化膜(実施例2−7)および黒色硬化膜(実施例2−17)のレーザー顕微鏡写真である。
図11】合成例D−14で得られたフルオレン系化合物を含む感光性組成物により得られた透明硬化膜(実施例2−8)および黒色硬化膜(実施例2−18)のレーザー顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[A.フルオレン系化合物]
[A−1.本発明のフルオレン系化合物]
本発明のフルオレン系化合物は、一般式(1)で表される。
【化9】
【0012】
上記一般式(1)において、mが0、かつ、nが0の場合、すなわち、Rがフルオレン骨格に直接結合している場合、Rは水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基で置換されたスルホニルオキシ基、置換されていてもよいフェニルスルホニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基で置換されたスルホニル基、置換されていてもよいフェニルスルホニル基、置換されていてもよい複素環式スルホニル基、または、置換されていてもよい縮合環式スルホニル基を表す。上記一般式(1)において、mが0、かつ、nが0の場合、好ましくはRはハロゲン原子、またはニトロ基である。
【0013】
具体的には、mが0、かつ、nが0の場合、Rは水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、下記式で表されるアルキルスルホニルオキシ基:
【化10】
(式中、Rは炭素数1〜8の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または、炭素数1〜4の直鎖状のハロゲン化アルキル基を表す)、
【0014】
下記式で表される置換されていてもよいフェニルスルホニルオキシ基:
【化11】
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アリール基、または、ニトロ基を表す)、
【0015】
下記式で表されるアルキルスルホニル基:
【化12】
(式中、R10は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または、炭素数1〜4の直鎖状のハロゲン化アルキル基を表す)、
【0016】
下記式で表される置換されていてもよいフェニルスルホニル基:
【化13】
(式中、R11は水素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アリール基、または、ニトロ基を表す)、
【0017】
下記式で表される置換されていてもよい複素環式スルホニル基:
【化14】
(式中、R12は水素原子、または、ハロゲン原子を表し、R13は水素原子、水酸基、または、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基を表し、R14は水素原子、水酸基、または、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基を表す)、
【0018】
下記式で表される置換されていてもよい縮合環式スルホニル基:
【化15】
(式中、R15は水素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、水酸基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基で置換されたアミノ基、ハロゲン原子、または、ニトロ基を表し、R16は水素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、または、ニトロ基を表す)、
【0019】
上記Rは、好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。上記Rは、好ましくは水素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、または、ニトロ基であり、より好ましくはメチル基である。上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0020】
上記R10は、好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。上記R11は、好ましくは水素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、または、ニトロ基であり、より好ましくはメチル基である。上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0021】
上記R12は、好ましくは水素原子、または、ハロゲン原子である。上記R13は、好ましくは水素原子、メトキシ基、エトキシ基、または、水酸基である。上記R14は、好ましくは水素原子、メトキシ基、エトキシ基、または、水酸基である。
【0022】
上記R15は好ましくは水素原子である。上記R16は、好ましくは水素原子である。すなわち、Rが縮合環式スルホニル基である場合、該縮合環式スルホニル基は置換されていないことが好ましい。
【0023】
上記一般式(1)において、mが0、かつ、nが1の場合、すなわち、Rがカルボニル基を介してフルオレン骨格と結合している場合、Rは置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい複素環基、または、置換されていてもよい縮合環基を表す。一般式(1)において、mが0、かつ、nが1の場合、好ましくはRは置換されていてもよいフェニル基である。
【0024】
具体的には、mが0、かつ、nが1の場合、Rを含むフルオレン骨格との結合部分は下記式で表される置換されたフェニル基を含む構造:
【化16】
(式中、R17〜R21は、それぞれ独立して、水素原子、ニトロ基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜7の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、または、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルコキシ基を表す)、
【0025】
下記式で表される置換されていてもよい複素環を含む構造:
【化17】
【0026】
下記式で表される置換されていてもよい縮合環を含む構造:
【化18】
(式中、R22は水素原子、ニトロ基、水酸基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基を表し、R23は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基を表す)。
【0027】
上記R17〜R21は、それぞれ独立して、好ましくは、水素原子、ニトロ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、または、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基である。上記炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のハロゲン化アルキル基において、アルキル基の水素原子を置換するハロゲン原子としては、上記のハロゲン原子が挙げられる。ハロゲン原子で置換された炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基としては、具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
【0028】
また、上記R17〜R21のうち少なくとも1つの基がニトロ基である場合、他の基は、好ましくは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、または、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。
【0029】
上記R22は、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、または、水酸基である。上記R23は、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、水酸基、ハロゲン原子、または、シアノ基である。
【0030】
上記一般式(1)において、mが1、かつ、nが1の場合、すなわち、Rがカルボニル基およびフェニレン基を介してフルオレン骨格に結合している場合、Rはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基で置換されたスルホニルオキシ基(具体的には、炭素数1〜8の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基で置換されたスルホニルオキシ基、または、炭素数1〜4の直鎖状のハロゲン化アルキル基で置換されたスルホニルオキシ基)、または、置換されていてもよいフェニルスルホニルオキシ基を表す。
【0031】
具体的には、mが1、かつ、nが1の場合、Rを含むフルオレン骨格との結合部分は、以下の式で表されるスルホニルオキシ基:
【化19】
(式中、R24は、炭素数1〜8の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または、炭素数1〜4の直鎖状のハロゲン化アルキル基を表す)、
【0032】
以下の式で表される置換されていてもよいフェニルスルホニルオキシ基:
【化20】
(式中、R25は水素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、または、ニトロ基を表す)。
【0033】
上記R24は好ましくはメチル基である。上記R25は好ましくはメチル基である。
【0034】
上記一般式(1)において、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜15の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜11のフェニルアルキル基を表す。上記RおよびRは、一緒になって環を形成していてもよい。炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子としては、上記で例示したハロゲン原子が挙げられる。
【0035】
上記RおよびRは、好ましくは、それぞれ独立して、水素原子、または、炭素数2〜8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。
【0036】
上記一般式(1)において、Rは式(2)または式(3)で表される基である。上記一般式(1)において、Rは好ましくは式(2)で表される基である。
【化21】
【0037】
式(2)および(3)中、RおよびR5´は炭素数1〜17の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数2〜5の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜7の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜11のフェニルアルキル基、置換されていてもよい炭素数7〜10のフェノキシアルキル基、置換されていてもよい複素環基、または、置換されていてもよい縮合環基を表す。上記RおよびR5´は、好ましくはメチル基である。
【0038】
上記1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜7の直鎖状または分岐状のアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、2−エトキシエチル基、ブトキシメチル基、(2−ブトキシエトキシ)メチル基、2−メチルチオエチル基等が挙げられる。
【0039】
上記置換されていてもよいフェニル基の置換基としては、例えば、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アリール基、または、ニトロ基が挙げられる。
【0040】
上記置換されていてもよい炭素数7〜11のフェニルアルキル基としては、例えば、フェニルメチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、クロロフェニルメチル基、ニトロフェニルメチル基等が挙げられる。
【0041】
上記置換されていてもよい炭素数7〜10のフェノキシアルキル基としては、例えば、フェノキシメチル基、1−フェノキシエチル基、2−フェノキシエチル基、3−フェノキシプロピル基、4−フェノキシブチル基、クロロフェノキシメチル基、ニトロフェノキシメチル基等が挙げられる。
【0042】
上記置換されていてもよい複素環基、および、置換されていてもよい縮合環基としては、上記Rの項で例示した置換されていてもよい複素環基および置換されていてもよい縮合環基が挙げられる。
【0043】
上記式(2)において、Rは炭素数1〜17の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜7の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜7の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜4の直鎖状もしくは分岐状のアミノアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜11のフェニルアルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された置換されていてもよい炭素数7〜10のフェニルアルキル基、置換されていてもよい縮合環基、または、置換されていてもよい複素環基を表す。上記Rは好ましくは、炭素数1〜17の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜7の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜7の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜4の直鎖状もしくは分岐状のアミノアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜11のフェニルアルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された置換されていてもよい炭素数7〜10のフェニルアルキル基、置換されていてもよい縮合環基、または、置換されていてもよい複素環基であり、さらに好ましくは炭素数1〜7の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜3の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、炭素数3〜6の環状のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜4の直鎖状もしくは分岐状のアミノアルキル基、任意の適切な基で置換されたフェニル基、置換されていてもよい縮合環基、または、置換されていてもよい複素環基である。
【0044】
上記式(2)は、具体的には下記式で表されるアルキル基を含む構造:
【化22】
(式中、R26は炭素数1〜17の直鎖状または分岐状のアルキル基を表す);
【0045】
下記式で表される1以上のエーテル結合またはチオエーテル結合を含む構造:
【化23】
(式中、R27は、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基(アルキルオキシ基の酸素原子は式中の炭素原子に結合している)、または1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルチオ基(アルキルチオ基の硫黄原子は式中の炭素原子に結合している)を表す);
好ましくは、下記式で表される1以上のエーテル結合またはチオエーテル結合を含む構造:
【化24】
(式中、R28は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表す);
【0046】
下記式で表される置換されていてもよいフェニル基を含む構造:
【化25】
(式中、R29は、単結合、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキレンオキシ基(アルキレンオキシ基の酸素原子は式中の芳香環に結合している)、または、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキレンチオ基(アルキレンチオ基の硫黄原子は式中の芳香環に結合している)を表し、R30〜R34は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜7の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基(アルキルオキシ基の酸素原子は式中の芳香環に結合している)、または1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキルチオ基(アルキルチオ基の硫黄原子は式中の芳香環に結合している)を表す);
【0047】
下記式で表される置換されていてもよい炭素数2〜4の直鎖状もしくは分岐状のアミノアルキル基を含む構造:
【化26】
(式中、R52は、炭素数2〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、R53、R54は、それぞれ独立して、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、R59CO、またはR60COOを表し、R59およびR60は、それぞれ独立して、上記Rで例示した基と同じ基を表す);
好ましくは、下記式で表される置換されていてもよい炭素数2〜4の直鎖状もしくは分岐状のアミノアルキル基を含む構造:
【化27】
(式中、R39およびR40は、それぞれ独立して、水素原子、または、メチル基を表し、R41およびR42は、上記Rで例示した基と同じ基を表す);
【0048】
下記式で表される置換されていてもよい縮合環を含む構造:
【化28】
(式中、R43は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、または、水酸基を表し、R44は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、または、シアノ基を表す);
【0049】
下記式で表される置換されていてもよい複素環を含む構造:
【化29】
【0050】
26は、好ましくは炭素数1〜7の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、より好ましくは炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基である。また、炭素数3〜10の環状のアルキル基は、好ましくは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、または、アダマンチル基であり、さらに好ましくはシクロヘキシル基である。
【0051】
27は、好ましくは、1のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、1のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断されてもよい炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基(アルキルオキシ基の酸素原子は式中の炭素原子に結合している)、または1のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルチオ基(アルキルチオ基の硫黄原子は式中の炭素原子に結合している)を表す。
【0052】
28は、好ましくはメチル基である。
【0053】
30〜R34は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、OCH(R36)CHOR37で表される直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基(アルキルオキシ基の酸素原子は式中の芳香環に結合しており、R36およびR37は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、またはエチル基を表し、好ましくは水素原子、または、メチル基を表す)、SR38で表される直鎖状もしくは分岐状のアルキルチオ基(アルキルチオ基の硫黄原子は式中の芳香環に結合しており、R38は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、好ましくはメチル基を表す)であり、より好ましくは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または、メトキシ基である。
【0054】
53、R54は、それぞれ独立して、好ましくは、R59CO、またはR60COOを表す(上述のように、R59およびR60は、それぞれ独立して、上記Rで例示した基と同じ基を表す)。
【0055】
39およびR40は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子、または、メチル基である。R41およびR42は、好ましくはメチル基である。
【0056】
43は、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、または、水酸基である。R44は、好ましくは水素原子、メチル基、シアノ基、または、ハロゲン原子である。
【0057】
上記式(3)において、Rは炭素数1〜16の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜10のフェニルアルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された置換されていてもよい炭素数7〜9のフェニルアルキル基、置換されていてもよい縮合環基、または、置換されていてもよい複素環基を表す。上記Rは、好ましくは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよい炭素数7〜10のフェニルアルキル基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された置換されていてもよい炭素数7〜9のフェニルアルキル基、置換されていてもよい縮合環基、または、置換されていてもよい複素環基である。
【0058】
上記式(3)は、具体的には、下記式で表されるアルキル基を含む構造:
【化30】
(式中、R45は炭素数1〜16の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基を表す)、
【0059】
下記式で表される置換されていてもよいフェニル基を含む構造:
【化31】
(式中、R35は、単結合、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキレンオキシ基(アルキレンオキシ基の酸素原子は式中の芳香環に結合している)、または、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキレンチオ基(アルキレンチオ基の硫黄原子は式中の芳香環に結合している)を表し、R46〜R50はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキルチオ基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アリール基、ベンジル基、または、ベンジルオキシ基を表す)、
【0060】
下記式で表される置換されていてもよい縮合環基を含む構造:
【化32】
(式中、R51は水素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、または、水酸基を表す)、
【0061】
下記式で表される置換されていてもよい複素環基を含む構造:
【化33】
【0062】
45は、好ましくは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基、または、炭素数1〜2の直鎖状のハロゲン化アルキル基である。
【0063】
46〜R50は、それぞれ独立して、好ましくは、水素原子、メチル基、または、メトキシ基である。
【0064】
51は、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、または、水酸基である。
【0065】
一般式(1)において、mはフェニレン基の数を表す。上記mは0または1である。また、一般式(1)において、nはカルボニル基の数を表す。上記nは0または1である。一般式(1)において、mおよびnが0、または、mが0であり、かつ、nが1であることが好ましい。
【0066】
上記一般式(1)で表されるフルオレン系化合物としては、具体的には、以下の化合物が挙げられる。
【化34】
【化35】
【化36】
【0067】
[A−2.フルオレン系化合物の合成]
本発明のフルオレン系化合物は、例えば、以下の反応スキームにより合成され得る。
【0068】
まず、所望のRおよびRを有するフルオレン系化合物は、例えば、フルオレンとRまたはRを含むハロゲン化物(X−R、および、X−R、XおよびXは、それぞれ独立して、臭素、塩素、ヨウ素を表し、RおよびRは上記の通りである)と、任意の適切な塩基とを反応させることによって得られ得る(反応I)。
【化37】
【0069】
上記XまたはXで表されるハロゲン原子は、好ましくは、臭素またはヨウ素である。
【0070】
上記塩基としては、任意の適切な塩基を用いることができ、例えば、無機塩基または有機塩基が挙げられる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、ジアザビシクロウンデセン、ブチルリチウム、カリウム tert−ブトキシド、ナトリウム tert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、および、ナトリウムエトキシド等が挙げられる。上記塩基は、好ましくは、ブチルリチウム、カリウム tert−ブトキシド、ナトリウム tert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、および、ナトリウムエトキシドである。
【0071】
上記X−RおよびX−Rとしては、任意の適切なハロゲン化物を用いることができる。上記ハロゲン化物としては、例えば、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を有するアルキルハロゲン化物、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のハロゲン化アルキル基を有するハロゲン化物、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜15の直鎖状または分岐状のアルキル基を有するハロゲン化物、炭素数1〜11のアルキル基で置換されたベンゼンハロゲン化物、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数1〜5のアルキル基を有するベンゼンハロゲン化物、ハロゲン原子で置換されたベンゼンハロゲン化物、アミノ基で置換されたベンゼンハロゲン化物、炭素数7〜11のフェニルアルキルハロゲン化物、および、炭素数2〜12の直鎖状または分岐状のアルキル基を有するアルキルジハロゲン化物等が挙げられる。
【0072】
より具体的には、例えば、RおよびRとして炭素数1〜22の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を導入する場合に用いるハロゲン化物としては、メチルヨージド、エチルブロマイド、プロピルブロマイド、シクロプロピルブロマイド、ブチルブロマイド、2−メチルプロピルブロマイド、tert−ブチルブロマイド、シクロブチルブロマイド、ペンチルブロマイド、1−メチルブチルブロマイド、2−メチルブチルブロマイド、3−メチルブチルブロマイド、シクロブチルメチルブロマイド、シクロペンチルブロマイド、ヘキシルブロマイド、シクロヘキシルブロマイド、4−メチルペンチルブロマイド、1−エチルブチルブロマイド、2−エチルブチルブロマイド、ヘプチルブロマイド、シクロヘプチルブロマイド、1−エチルペンチルブロマイド、シクロヘキシルメチルブロマイド、オクチルブロマイド、1−メチルへプチルブロマイド、2−エチルヘキシルブロマイド、ノニルブロマイド、デシルブロマイド、ウンデシルブロマイド、ドデシルブロマイド、トリデシルブロマイド、テトラデシルブロマイド、ペンタデシルブロマイド、ヘキサデシルブロマイド、ヘプタデシルブロマイド、オクタデシルブロマイド、エイコシルブロマイド、ドコシルブロマイド等が挙げられる。
【0073】
また、例えば、RおよびRとして炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のハロゲン化アルキル基を導入する場合に用いるハロゲン化物としては、2−クロロエチルブロマイド、3−クロロ−2−メチルプロピルブロマイド、3−クロロプロピルブロマイド、4−クロロブチルブロマイド、5−クロロペンチルブロマイド、6−クロロヘキシルブロマイド、7−クロロペンチルブロマイド、3,4−ジクロロブチルブロマイド、2,2,2−トリフルオロエチルブロマイド、3,3,3−トリフルオロプロピルブロマイド、4,4,4−トリフルオロブチルブロマイド、ヘプタフルオロプロピルブロマイド、ノナフルオロブチルブロマイド、トリデカフルオロヘキシルブロマイド、ペンタデカフルオロへプチルブロマイド、ヘプタデカフルオロオクチルブロマイド、ノナデカフルオロノニルブロマイド、パーフルオロデシルブロマイド、2−クロロエチルヨージド、3−クロロプロピルヨージド、4−クロロブチルヨージド、5−クロロペンチルヨージド、6−クロロヘキシルヨージド、2,2,2−トリフルオロエチルヨージド、3,3,3−トリフルオロプロピルヨージド、4,4,4−トリフルオロブチルヨージド、ヘプタフルオロプロピルヨージド、ノナフルオロブチルヨージド、トリデカフルオロヘキシルヨージド、ヘプタデカフルオロオクチルヨージド、パーフルオロデシルヨージド等が挙げられる。
【0074】
また、例えば、RおよびRとして1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜15の直鎖状または分岐状のアルキル基を導入する場合に用いるハロゲン化物としては、ブロモエチルメチルエーテル、ブロモエチルエチルエーテル、ブロモメトキシプロパン、3−(2−メトキシエトキシ)プロピルブロマイド、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチルブロマイド、2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチルブロマイド、2−クロロエチルメチルスルフィド、2−クロロエチルエチルスルフィド、3−クロロプロピルドデシルスルフィド等が挙げられる。
【0075】
また、例えば、RおよびRとして置換されていてもよいフェニル基を導入する場合に用いるハロゲン化物としては、ブロモベンゼン、ヨードトルエン、ブロモフルオロベンゼン、ブロモチオアニソール、ブロモアニソール、ブロモベンゾニトリル、ブロモエチルベンゼン、ブロモ−tert−ブチルベンゼン、ブロモクメン、ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、ブロモトリメチルシリルベンゼン、ブロモエチニルベンゼン、ブロモベンジルシアニド、ブロモニトロベンゼン、ブロモフェニルピペリジン、ブロモビフェニル、ブロモメタンスルホニルベンゼン、ベンジルオキシブロモベンゼン、(トリフルオロメチル)ヨードベンゼン等が挙げられる。
【0076】
また、例えば、RおよびRとして炭素数7〜11のフェニルアルキル基を導入する場合に用いるハロゲン化物としては、ベンジルブロマイド、(ブロモエチル)ベンゼン、フェニルプロピルブロマイド、フェニルブチルブロマイド、フェニルペンチルブロマイド、(トリフルオロメチル)ベンジルブロマイド、(トリフルオロメトキシ)ベンジルブロマイド等が挙げられる。
【0077】
また、例えば、RおよびRが一緒になって環を形成する場合に用いるハロゲン化物としては、ジブロモエタン、ジブロモペンタン、ジブロモヘキサン、ジブロモドデカン等が挙げられる。
【0078】
およびRが、1以上のエーテル結合で中断された炭素数2〜15の直鎖状または分岐状のアルキル基である場合には、所望のRおよびRを有するフルオレン系化合物は、例えば、エステル基を導入する反応、次いで導入されたエステル基を還元して水酸基を得る反応、次いで水酸基をアルキル化する反応によっても得られ得る。上記反応は以下の反応スキームによって表され得る(反応I’)。
【化38】
【0079】
上記のエステル基導入反応は、例えば、フルオレンと、ハロゲン化アルキルカルボン酸アルキルエステルとを反応させることによって行われ得る(反応I’(a))。この反応は、任意の適切な塩基の存在下で行われ得る。
【0080】
上記ハロゲン化アルキルカルボン酸アルキルエステルとしては、任意の適切な化合物を用いることができる。Rが、R62−CH−O−R64で表される基(R62はフルオレン環に結合する基であって、1以上のエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜7(好ましくは1〜4)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、R64は、1以上のエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜13(好ましくは1〜4)の直鎖状または分岐状のアルキル基を表す)であり、且つ、Rが、R63−CH−O−R65で表される基(R63はフルオレン環に結合する基であって、1以上のエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜7(好ましくは1〜4)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、R65は、1以上のエーテル結合で中断されていてもよい炭素数1〜13(好ましくは1〜4)の直鎖状または分岐状のアルキル基を表す)である場合、上記ハロゲン化アルキルカルボン酸アルキルエステルは、R62またはR63を含むことが好ましい。R62またはR63を含むハロゲン化アルキルカルボン酸アルキルエステルとしては、例えば、X−R62−COOR66またはX−R63−COOR67(XおよびXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、好ましくは臭素、塩素、ヨウ素を表し、R66およびR67は、それぞれ独立して、炭素数1〜7の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R62およびR63は上記の通りである)により表されるハロゲン化アルキルカルボン酸アルキルエステルが挙げられる。
【0081】
上記塩基としては、例えば、無機塩基または有機塩基が挙げられる。上記塩基としては、具体的には、反応Iに用いた塩基が挙げられる。上記塩基は、好ましくは、ブチルリチウム、カリウム tert−ブトキシド、ナトリウム tert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、および、ナトリウムエトキシドである。
【0082】
上記の導入されたエステル基を還元して水酸基を得る反応は、例えば、反応I’(a)によって得られた化合物に、還元剤を作用させることによって行われ得る(反応I’(b))。
【0083】
上記還元剤としては、任意の適切な還元剤を用い得る。上記還元剤としては、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、ボラン等が挙げられる。
【0084】
上記の水酸基をアルキル化する反応は、例えば、反応I’(b)によって得られた化合物に、アルキル化剤を作用させることによって行われ得る(反応I’(c))。この反応は、任意の適切な塩基の存在下で行われ得る。
【0085】
上記アルキル化剤としては、任意の適切なアルキル化剤を用いることができる。Rが、R62−CH−O−R64で表される基であり、且つ、Rが、R63−CH−O−R65で表される基である場合、上記アルキル化剤としては、例えば、X10−R64またはX11−R65(X10およびX11は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、好ましくは臭素、塩素、ヨウ素を表し、R64およびR65は上記の通りである)により表されるアルキルハロゲン化物が挙げられる。
【0086】
上記塩基としては、例えば、無機塩基または有機塩基が挙げられる。上記塩基としては、具体的には、水素化ナトリウム、アルキルマグネシウムブロマイド等のグリニア試薬等、および反応Iに用いた塩基が挙げられる。上記塩基は、好ましくは、水素化ナトリウムである。
【0087】
なお、RおよびRが水素原子の場合、反応IおよびI’は省略される。
【0088】
次いで、所望のRおよびRを有するフルオレン化合物と、上記Rが式(2)で表される基である場合には上記Rを含むカルボン酸ハロゲン化物とを、上記Rが式(3)で表される基である場合には上記Rを含むカルボン酸ハロゲン化物とを、任意の適切なルイス酸の存在下で反応させる(反応II)。
【化39】
【0089】
上記Rを含むカルボン酸ハロゲン化物、および、Rを含むカルボン酸ハロゲン化物に含まれるハロゲン原子(XおよびX3´)は、好ましくは塩素、臭素、または、ヨウ素である。
【0090】
上記ルイス酸としては、任意の適切なルイス酸を用いることができる。該ルイス酸としては、例えば、塩化アルミニウム、塩化鉄、四塩化チタン等が挙げられる。上記ルイス酸は、好ましくは塩化アルミニウムである。
【0091】
上記Rを含むカルボン酸ハロゲン化物としては、任意の適切なカルボン酸ハロゲン化物を用いることができる。例えば、炭素数1〜17の直鎖状、分岐状または環状のアルキルカルボン酸ハロゲン化物、炭素数1〜7の直鎖状または分岐状のハロゲン化アルキルカルボン酸ハロゲン化物、1以上のエーテル結合またはチオエーテル結合で中断されている炭素数2〜7の直鎖状または分岐状のアルキルカルボン酸ハロゲン化物、置換されていてもよいフェニルカルボン酸ハロゲン化物、置換されていてもよい炭素数7〜11のフェニルアルキルカルボン酸ハロゲン化物、置換されていてもよい炭素数7〜10のフェノキシアルキルカルボン酸ハロゲン化物、置換されていてもよい縮合環式カルボン酸ハロゲン化物、または、置換されていてもよい複素環式カルボン酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0092】
なお、Rが置換されていてもよい炭素数2〜4のアミノアルキル基である場合、所望のRおよびRを有するフルオレン化合物と、炭素数2〜4の不飽和結合を有するアルキルカルボン酸ハロゲン化物とを反応させ、次いで、オキシム化反応、アシル化反応を行うことにより誘導される。または、所望のRおよびRを有するフルオレン化合物と、炭素数2〜4のハロゲン化アルキルカルボン酸ハロゲン化物を反応させ、次いで、アミノ化反応を行うことにより誘導される。ハロゲン化アルキルカルボン酸ハロゲン化物としては、例えば4−クロロブチリルクロライド等が挙げられる。
【0093】
上記Rを含むカルボン酸ハロゲン化物としては、任意の適切なカルボン酸ハロゲン化物を用いることができる。例えば、炭素数2〜17の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキルカルボン酸ハロゲン化物、炭素数2〜7の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキルカルボン酸ハロゲン化物、置換されていてもよい炭素数7〜11のフェニルアルキルカルボン酸ハロゲン化物、置換されていてもよい炭素数7〜10のフェノキシアルキルカルボン酸ハロゲン化物、置換されていてもよい縮合環式酢酸ハロゲン化物、または、置換されていてもよい複素環式酢酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0094】
上記Rが式(2)で表される基であり、上記Rが1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された置換されていてもよい炭素数7〜10のフェニルアルキル基である場合、または、上記Rが式(3)で表される基であり、上記Rが1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断された置換されていてもよい炭素数7〜9のフェニルアルキル基である場合には、反応IIにより得られた下記の化合物に、さらに下記の反応II’を施してもよい。
【化40】
【0095】
上記反応II’中、R56は直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、1以上のエーテル結合もしくはチオエーテル結合で中断されたアルキレン基を表し、R57は置換されていてもよいフェニル基または置換されていてもよいフェニルアルキル基を表し、−R56−O−R57および−R56−S−R57は、−Rまたは−CH−Rに対応し、Xはハロゲン原子を表す。
【0096】
ハロゲン原子(X)は、好ましくは塩素、臭素、または、ヨウ素である。
【0097】
反応II’は、ハロゲン交換剤の存在下で行ってもよい。ハロゲン交換剤としては、任意の適切なハロゲン交換剤を用いることができる。ハロゲン交換剤としては、例えば、アルカリ金属ハロゲン化物(例えば、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウム、および臭化カリウム)、四級アンモニウム塩(例えば、テトラブチルアンモニウムブロマイド、およびテトラブチルアンモニウムヨージド等)が挙げられる。
【0098】
反応II’は、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、任意の適切な塩基を用いることができる。塩基としては、例えば無機塩基および有機塩基が挙げられる。塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウム)、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、カリウム tert−ブトキシド、水素化ナトリウム、およびジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。
【0099】
次いで、反応IIおよび/または反応II’で得られたフルオレン系化合物と所望のRを付与し得る化合物とを反応させることにより、所望のRを有するフルオレン系化合物が得られる(反応III)。
【0100】
上記mが0、かつ、nが0である場合、すなわち、上記Rがフルオレン骨格に直接結合した化合物を合成する場合であって、かつ、Rがハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基で置換されたスルホニル基、置換されていてもよいフェニルスルホニル基以外の基である場合、例えば、反応IIおよび/または反応II’で得られたフルオレン系化合物と所望のRを付与し得る化合物と反応させることにより、所望のRを有するフルオレン化合物が得られる(反応III−i)。
【化41】
【0101】
例えば、Rとしてニトロ基を有するフルオレン系化合物を合成する場合、上記所望のR、RおよびRを有するフルオレン系化合物を、常法によりニトロ化し、Rとしてニトロ基を有するフルオレン系化合物が得られる。
【0102】
また、例えば、Rとしてハロゲン原子を有するフルオレン系化合物を合成する場合、上記反応IIおよび/または反応II’で得られたフルオレン系化合物を、常法によりニトロ化し、次いで、還元、ザンドマイヤー反応を経ることにより、Rとしてハロゲン原子を有するフルオレン系化合物が得られる。
【0103】
また、例えば、Rとしてアルキルスルホニルオキシ基、または、置換されていてもよいフェニルスルホニルオキシ基を有するフルオレン系化合物を合成する場合、上記反応IIおよび/または反応II’で得られたフルオレン系化合物を、常法によりニトロ化し、次いで、還元、ザンドマイヤー反応にて水酸基を導入した後、任意の適切な化合物と反応させることにより、アルキルスルホニルオキシ基、または、置換されていてもよいフェニルスルホニルオキシ基を有するフルオレン系化合物が得られる。該水酸基導入後のフルオレン系化合物と反応させる化合物としては、例えば、メタンスルホニルクロライド、エタンスルホニルクロライド、ベンゼンスルホニルクロライド、パラトルエンスルホニルクロライド、トリフルオロメタンスルホニルクロライド等が挙げられる。
【0104】
上記mが0、かつ、nが0であって、かつ、Rがハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基で置換されたスルホニル基、置換されていてもよいフェニルスルホニル基、置換されていてもよい縮合環式スルホニル基、置換されていてもよい複素環式スルホニル基である場合、例えば、反応IIおよび/または反応II’で得られたフルオレン系化合物と所望のRを付与し得るスルホン酸ハロゲン化物とを反応させることにより、所望のRを有するフルオレン系化合物が得られる(反応III−ii)。所望のRを付与し得るスルホン酸ハロゲン化物におけるハロゲンXとしては、上記XおよびX3´と同じハロゲン原子を好適に用いることができる。
【化42】
【0105】
上記所望のRを付与し得るスルホン酸ハロゲン化物としては、任意の適切なスルホン酸ハロゲン化物を用いることができる。例えば、該スルホン酸ハロゲン化物としては、メタンスルホニルクロライド、ベンゼンスルホニルクロライド、チオフェンスルホニルクロライド、ピリジンスルホニルクロライド、トリフルオロメタンスルホニルクロライド等が挙げられる。
【0106】
また、上記mが0、かつ、nが1の場合(反応III−iii)、上記mが1、かつ、nが1である場合(反応III−iv)、上記反応IIおよび/または反応II’で得られたフルオレン系化合物と所望のRを含むカルボン酸ハロゲン化物とを反応させればよい。該所望のRを含むカルボン酸ハロゲン化物におけるハロゲンXおよびXとしては、上記XおよびX3´と同じハロゲン原子を好適に用いることができる。
【化43】
【0107】
上記Rを含むカルボン酸ハロゲン化物としては、任意の適切なカルボン酸ハロゲン化物を用いることができる。例えば、反応III−iiiに用いられるカルボン酸ハロゲン化物としては、ベンゾイルクロライド、トルオイルクロライド、メトキシベンゾイルクロライド、テノイルクロライド、ナフトイルクロライド等が挙げられる。
【0108】
また、Rとしてハロゲン原子で置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基または置換されていてもよいフェニルスルニホルオキシ基を有するフルオレン系化合物を合成する場合、上記反応III−ivにおいて、パラ位に任意の適切な保護基により保護された水酸基を持つカルボン酸ハロゲン化物を用いることが好ましい。該保護基としては、例えば、アセチル基、ピバロイル基等が挙げられる。
【0109】
また、上記保護された水酸基を持つカルボン酸ハロゲン化物を用いた場合は、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミンなどの塩基を用いて脱保護を行い、所望するスルホン酸ハロゲン化物と反応させることによりアルキルスルホニルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基を有するフルオレン化合物を得ることができる。該アルキルスルホニルオキシ基を導入するためのスルホン酸ハロゲン化物としては、メタンスルホニルクロライド、イソプロピルスルホニルクロライド、1−オクタンスルホニルクロライド、2−クロロエタンスルホニルクロライド等が挙げられる。また、該フェニルスルホニルオキシ基を導入するためのスルホン酸ハロゲン化物としては、ベンゼンスルホニルクロライド、パラトルエンスルホニルクロライド、4−メトキシベンゼンスルホニルクロライド、4−イソプロポキシフェニルスルホニルクロライド、2,4−ジクロロベンゼンスルホニルクロライド、4−シアノベンゼンスルホニルクロライド、4−ニトロベンゼンスルホニルクロライド等が挙げられる。
【0110】
次いで、所望のRを置換させたフルオレン系化合物と、ヒドロキシルアミン塩酸塩、亜硝酸エステル、塩化ニトロシル等とを反応させることにより、Rに隣接したカルボニル基をオキシム基に変換、または、Rに隣接した炭素にオキシム基を導入する(反応IV)。
【化44】
【0111】
次いで、上記反応IVで得られたフルオレン系化合物と、所望のR、R5´基を付与し得る化合物とを反応させることにより、オキシム基の末端の水酸基を所望のR、R5´基に置換し得る(反応V)。
【化45】
【0112】
上記所望のRまたはR5´を付与し得る化合物としては、任意の適切な化合物を用いることができる。例えば、炭素数1〜17の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を付与し得る化合物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、デカン酸無水物、ステアリン酸無水物、イソ酪酸無水物、ピバル酸無水物などの酸無水物、および、シクロヘキサンカルボニルクロライド、2−プロピルバレリルクロライド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルクロライドなどの酸ハロゲン化物等が挙げられる。また、炭素数2〜5の直鎖状または分岐状のハロゲン化アルキル基を付与し得る化合物としては、例えば、3−クロロプロピオニルクロライド、5−クロロバレリルクロライド、3−クロロピバロイルクロライド、6−ブロモヘキサノイルクロライドなどの酸ハロゲン化物等が挙げられる。また、1以上のエーテル結合またはチオエーテル結合で中断された炭素数2〜7の直鎖状または分岐状のアルキル基を付与し得る化合物としては、例えば、メトキシアセチルクロライド、エトキシアセチルクロライド、ブトキシアセチルクロライド、3−(メチルチオ)プロピオニルクロライド、(2−ブトキシエトキシ)アセチルクロライドなどの酸ハロゲン化物等が挙げられる。また、置換されていてもよいフェニル基を付与し得る化合物としては、例えば、4−メトキシフェニル酢酸無水物などの酸無水物、および、ベンゾイルクロライド、トルオイルクロライド、3,5−ジメチルベンゾイルクロライド、4−メトキシベンゾイルクロライド、4−シアノベンゾイルクロライド、4−ニトロベンゾイルクロライド、4−フェニルベンゾイルクロライド、クロロベンゾイルクロライドなどの酸ハロゲン化物等が挙げられる。また、置換されていてもよい炭素数7〜11のフェニルアルキル基を付与し得る化合物としては、例えば、フェニルアセチルクロライド、フェニルプロピオニルクロライド、クロロフェニルアセチルクロライド、4−フェニルブチリルクロライド、6−フェニルヘキサノイルクロライド、ニトロフェニルアセチルクロライドなどの酸ハロゲン化物等が挙げられる。また、置換されてもよい炭素数7〜10のフェノキシアルキル基を付与し得る化合物としては、例えば、フェノキシアセチルクロライド、フェノキシプロピオニルクロライド、クロロフェノキシアセチルクロライド、ニトロフェノキシアセチルクロライド等が挙げられる。また、置換されていてもよい複素環基を付与し得る化合物としては、例えば、2−テノイルクロライド、チオフェン−2−アセチルクロライド、クロロニコチノイルクロライド、2−フロイルクロライド、キノリンカルボニルクロライドなどの酸ハロゲン化物等が挙げられる。また、置換されていてもよい縮合環基を付与し得る化合物としては、例えば、ナフトイルクロライド、2−エトキシ−1−ナフトイルクロライド、アントラセンカルボン酸クロライドなどの酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0113】
なお、上記の反応I〜IIIはこの順に行う必要はなく、適宜、反応工程の順序を変更して行ってもよい。
【0114】
上記の各反応に用いる溶媒としては、反応に用いる化合物等に応じて、任意の適切な溶媒を用いることができる。また、上記の各反応においては、必要に応じて、任意の適切な触媒の存在下で反応を行ってもよい。
【0115】
[B.光重合開始剤]
本発明の光重合開始剤は、上記フルオレン系化合物を少なくとも1種含む。本発明の光重合開始剤は、上記フルオレン系化合物を含むことにより、従来の光重合開始剤(例えば、カルバゾール骨格を含む化合物)よりも活性エネルギー線に対する高い感度を有し得る。また、従来の光重合開始剤よりも優れた特性(例えば、溶解性または透明性)をも有する光重合開始剤を提供し得る。
【0116】
また、本発明の光重合開始剤は、フルオレン骨格に結合する官能基を適宜選択することにより、従来の光重合開始剤よりも優れた特性を有する光重合開始剤を提供し得る。例えば、上記化合物1、4、8、D−4、D−8、および、D−12を少なくとも1種含む光重合開始剤は、より優れた溶解性を有し得る。また、上記化合物1、2、8、11、D−1、D−2、D−3、D−4、D−12および、D−14を少なくとも1種含む光重合開始剤は、活性エネルギー線に対してさらに高感度を有し得る。さらに、例えば、上記化合物4、6、8、9、11、および、D−8を少なくとも1種含む光重合開始剤は、より優れた透明性を有する感光性組成物および成形体を提供し得る。
【0117】
本発明の光重合開始剤は、所望の特性や感度等に応じて、上記フルオレン系化合物を2種以上含んでいてもよい。また、上記フルオレン系化合物以外の任意の適切な他の光重合開始剤と組み合わせて用いられてもよい。
【0118】
[C.感光性組成物]
本発明の感光性組成物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する化合物、および、上記光重合開始剤を含む。上記の通り、本発明の光重合開始剤は、活性エネルギー線に対する高い感度を有する。そのため、より低コストで、活性エネルギー線に対する高い反応性を有する感光性組成物を提供し得る。
【0119】
上記少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、感光性組成物に適用可能な任意の適切な化合物を用いることができる。例えば、エチレン、プロピレン等の不飽和脂肪族炭化水素;(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和一塩基酸;1個のカルボキシル基と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート等の不飽和多塩基酸;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の不飽和一塩基酸とアルコール、多価アルコールまたは多価フェノールのエステル;マレイン酸無水物等の不飽和多塩基酸の酸無水物;(メタ)アクリルアミド等の不飽和一塩基酸と多価アミンのアミド;アクレロイン等の不飽和アルデヒド;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル;スチレン、ビニルベンジルグリシジルエーテル等の不飽和芳香族化合物;メチルビニルケトン等の不飽和ケトン;ビニルアミン、アリルアミン等の不飽和アミン化合物;アリルアルコール等のビニルアルコール;ビニルメチルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のビニルエーテル;マレイミド、N−フェニルマレイミド等の不飽和イミド類;インデン類;1,3−ブタジエン等の脂肪族共役ジエン類;ポリスチレン、ポリシロキサン等の重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類;ビニルクロライド、水酸基含有ビニルモノマーとポリイソシアネート化合物のビニルウレタン化合物、水酸基含有ビニルモノマーとポリエポキシ化合物のビニルエポキシ化合物、カルド樹脂等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、2種以上の化合物を用いる場合には、それらを予め共重合し、共重合体として用いてもよい。
【0120】
また、上記少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として、エチレン性不飽和結合を有するアルカリ現像性化合物を用いることにより、本発明の感光性組成物をアルカリ現像性感光性樹脂組成物としてもよい。該エチレン性不飽和結合を有するアルカリ現像性化合物としては、アクリル酸エステルの共重合体、フェノールおよび/またはクレゾールノボラックエポキシ樹脂、多官能エポキシ基を有するポリフェニルメタン型エポキシ樹脂、エポキシ化合物に不飽和一塩基酸を作用させ、さらに多塩基酸無水物を作用させて得られた樹脂を用いることができる。
【0121】
上記不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸等が挙げられる。また、上記多塩基酸無水物としては、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物等が挙げられる。
【0122】
上記感光性組成物における光重合開始剤の含有量は、用途や用いるフルオレン系化合物の特性に応じて、任意の適切な値に設定され得る。上記感光性組成物における光重合開始剤の含有量は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を含む化合物100重量部に対して、例えば、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは1重量部〜20重量部である。
【0123】
本発明の感光性組成物は、上記少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する化合物、および、光重合開始剤以外に、任意の適切な他の添加剤を含み得る。該他の添加剤としては、例えば、界面活性剤、可塑剤、充填剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、触媒、分散助剤、増感剤、架橋剤、顔料、染料、無機化合物、色材、溶媒、重合禁止剤、等が挙げられる。
【0124】
上記溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルアセテート、プロピレングリコールメチルアセテート等のエーテルエステル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。該溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上の溶媒の混合溶媒としてもよい。上記溶媒は、好ましくはケトン類、セロソルブ系溶媒、または、エーテルエステル系溶媒である。これらの溶媒を用いることにより、優れた相溶性が得られる。
【0125】
本発明の感光性組成物は、任意の適切な用途に適用され得る。上記の通り、本発明の光重合開始剤はフルオレン系化合物に置換する官能基を適宜選択することにより、優れた特性を有し得る。そのため、感光性組成物が適用され得る用途において、さらに優れた効果を発揮し得る感光性組成物を提供し得る。
【0126】
上記感光性組成物の用途としては、特に制限はなく、任意の適切な用途に用いることができる。例えば、光硬化性塗料;光硬化性インキ;光硬化性接着剤;印刷版;印刷インク;歯科用組成物;ホログラフィ記録用材料;画像記録材料等の記録材料;プリント配線基板;カラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末、デジタルカメラ等のカラー表示の液晶表示素子におけるカラーフィルター;めっき用マスク;ソルダーレジスト;磁気記録材料;光スイッチ;電子回路;各種フォトレジスト材料または保護膜等の各種用途に使用することができる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。また、部は重量部を意味する。
【0128】
[合成例1]化合物1の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物1)を合成した。
【化46】
反応容器に、テトラヒドロフラン(THF) 250.0重量部、および、カリウム tert−ブトキシド(KTB) 42.2重量部を仕込み、フルオレン 25.0重量部を添加した。次いで、反応容器に、プロピルブロマイド 40.7重量部を滴下した。この液を40℃に加熱し、3時間攪拌した。次いで、この液を室温まで冷却し、酢酸エチル、および、水を注入して、油層を分離し、水洗を2回繰り返した。次いで、油層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、この濾過液を濃縮して、9,9−ジプロピルフルオレン 37.7重量部(収率100%、HPLC純度92%)を得た。
得られた9,9−ジプロピルフルオレン 37.0重量部と、塩化メチレン 370.0重量部と、塩化アルミニウム 29.6重量部とを反応容器に仕込み、攪拌した。この液を10℃に冷却し、o−トルオイルクロライド 22.8重量部を滴下し、さらに4時間攪拌した。10℃以下に冷却した370.0重量部の水に、この反応液を注入して、油層を分離し、炭酸カリウム水溶液にて洗浄した。次いで、油層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾過液を濃縮することで、化合物1−A 51.2重量部(収率94%、HPLC純度85%)を得た。
得られた化合物1−A 50.0重量部と酢酸 500.0重量部とを反応容器に仕込み、発煙硝酸 10.8重量部を滴下し、この液を80℃に加熱した。この反応液に濃硫酸 13.3重量部を滴下し、80℃で3時間攪拌した。攪拌後、室温まで冷却し、水、酢酸エチルを注入し油層を分離し、水、炭酸カリウム水溶液にて洗浄を繰り返した。次いで、油層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾過液を濃縮した。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製し、化合物1−B 33.7重量部(収率60%、HPLC純度99%)を得た。
得られた化合物1−B 30.0重量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 90.0重量部と、ピリジン 34.4重量部とを反応容器に仕込み攪拌した。次いで、ヒドロキシルアミン塩酸塩 30.3重量部を添加し、140℃に加熱し、4時間攪拌した。この反応液を室温まで冷却し、水、酢酸エチルを注入し油層を分離し、再度、水、希塩酸、塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。次いで、油層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾過液を濃縮することで化合物1−C 28.0重量部(収率90%、HPLC純度96%)を得た。
得られた化合物1−C 25.0重量部、酢酸エチル 125.0重量部を反応容器に仕込み、無水酢酸 13.8重量部を滴下し、室温にて5時間攪拌した。この反応液に水、酢酸エチルを注入し油層を分離し、炭酸カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。次いで、油層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾過液を濃縮した。得られた生成物を酢酸エチル/ヘキサンにて再結晶化を行い、化合物1を17.3重量部(収率63%、HPLC純度99%)得た。得られた化合物1の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.20−8.27(m:2H)、7.77−7.82(m:2H)、7.70−7.73(d:1H)、7.28−7.45(m:4H)、7.12(dd:1H)、2.17(s:3H)、2.06(s:3H)、2.00(t:4H)、0.52−0.72(m:10H)
【0129】
[合成例2]化合物2の合成
プロピルブロマイドをヘキシルブロマイドに変更した以外は合成例1と同様にして、化合物2を合成した。得られた化合物2は、収率40%、HPLC純度99%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.27(dd:1H)、8.20(d:1H)、7.81(d:1H)、7.73(d:1H)、7.67(d:1H)、7.54(dd:1H)、7.40(dt:1H)、7.28−7.36(m:2H)、7.13(d:1H)、2.15(s:3H)、2.08(s:3H)、2.00(t:4H)、0.97−1.12(m:12H)、0.78(t:6H)、0.50−0.60(m:4H)
【0130】
[合成例3]化合物3の合成
o−トルオイルクロライドをシクロヘキサンカルボニルクロライドに変更した以外は合成例1と同様にして、化合物3を合成した。得られた化合物3は、収率17%、HPLC純度97%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.20−8.30(m:2H)、7.76−7.85(m:2H)、7.40−7,45(m:1H)、7.18−7.22(m:1H)、3.24−3.34(m:0.5H、異性体)、2.68−2.78(m:0.5H、異性体)、1.12−2.20(m:17H)、0.58−0.74(m:10H)
【0131】
[合成例4]化合物4の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物4)を合成した。
【化47】
合成例1と同様にして、得られた9,9−ジプロピルフルオレン 37.0重量部と、塩化メチレン 370.0重量部と、塩化アルミニウム 29.6重量部とを反応容器に仕込み、攪拌した。この液を10℃に冷却し、o−トルオイルクロライド 22.8重量部を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌した。次いで、この反応液に塩化アルミニウム 29.6重量部、アセチルクロライド 12.8重量部を添加し、室温まで加熱し、3時間攪拌した。この反応液を冷水に注入し、油層を分離し、炭酸カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。次いで、油層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾過液を濃縮した。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製し、化合物4−A 43.7重量部(収率72%、HPLC純度99%)を得た。
化合物4−A 30.0重量部と、エタノール 300.0重量部と、トリエチルアミン(TEA) 8.1重量部とを反応容器に仕込み、攪拌した。次いで、ヒドロキシルアミン塩酸塩 7.6重量部を添加し、3時間攪拌した。この反応液に水、酢酸エチルを注入し油層を分離し、水、希塩酸、塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。次いで、油層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾過液を濃縮することで化合物4−B 28.2重量部(収率90%、HPLC純度99%)を得た。
得られた化合物4−B 25.0重量部と、酢酸エチル 125.0重量部とを反応容器に仕込み、無水酢酸 13.9重量部を滴下し、室温にて3時間攪拌した。この反応液に水、酢酸エチルを注入し油層を分離、炭酸カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。次いで、油層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾過液を濃縮した。得られた生成物をメタノールにて再結晶化を行い、化合物4を19.2重量部(収率70%、HPLC純度98%)得た。得られた化合物4の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:7.91(s:1H)、7.76(dd:3H)、7.70(d:1H)、7.42(dd:1H)、7.26−7.37(m:4H)、2.46(s:3H)、2.36(s:3H)、2.30(s:3H)、2.00(t:4H)、0.62−0.72(m:10H)
【0132】
[合成例5]化合物5の合成
o−トルオイルクロライドを1−ナフトイルクロライドに変更した以外は合成例4と同様にして、化合物5を合成した。得られた化合物5は、収率25%、HPLC純度97%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.52(s:1H)、7.26−7.91(m:12H)、2.36(s:3H)、2.30(s:3H)、2.00(t:4H)、0.62−0.72(m:10H)
【0133】
[合成例6]化合物6の合成
プロピルブロマイドをヘキシルブロマイドに変更した以外は合成例4と同様にして、化合物6を合成した。得られた化合物6は、収率30%、HPLC純度99%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:7.87(s:1H)、7.79(d:2H)、7.72−7.60(m:3H)、7.25−7.47(m:4H)、2.47(s:3H)、2.36(s:3H)、2.31(s:3H)、1.97−2.05(m:4H)、0.96−1.18(m:12H)、0.77(t:6H)、0.53−0.65(m:4H)
【0134】
[合成例7]化合物7の合成
o−トルオイルクロライドをベンゾイルクロライドに変更した以外は合成例4と同様にして、化合物7を合成した。得られた化合物7は、収率30%、HPLC純度99%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:7.78−7.87(m:7H)、7.75(brs:1H)、7.58−7.63(m:1H)、7.48−7.66(m:2H)、2.48(s:3H)、2.31(s:3H)、2.00(t:4H)、0.62−0.72(m:10H)
【0135】
[合成例8]化合物8の合成
プロピルブロマイドをヘキシルブロマイドに、o−トルオイルクロライドをベンゾイルクロライドにそれぞれ変更した以外は合成例4と同様にして、化合物8を合成した。得られた化合物8は、収率32%、HPLC純度99%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:7.79−7.86(m:7H)、7.75(s:1H)、7.59−7.66(m:1H)、7.48−7.55(m:2H)、2.47(s:3H)、2.31(s:3H)、1.98−2.07(m:4H)、0.98−1.18(m:12H)、0.77(t:6H)、0.55−0.68(m:4H)
【0136】
[合成例9]化合物9の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物9)を合成した。
【化48】
プロピルブロマイドに代えてヘキシルブロマイドを用いた以外は、合成例1と同様にして得られた9,9−ジヘキシルフルオレン 50.0重量部と、塩化メチレン 500.0重量部と、塩化アルミニウム 29.9重量部とを反応容器に仕込み、攪拌した。この液を10℃に冷却し、p−フルオロベンゾイルクロライド 26.1重量部を滴下した。滴下終了後、反応液を室温まで加温し、3時間攪拌した。次いで、この反応液に塩化アルミニウム 29.9重量部、クロトノイルクロライド 15.6重量部を添加し、20時間攪拌した。この反応液を冷水に注入し、油層を分離し、炭酸カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。次いで、油層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾過液を濃縮した。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製し、化合物9−A 21.1重量部(収率35%、HPLC純度99%)を得た。
化合物9−A 20.0重量部と、エタノール 200.0重量部と、トリエチルアミン 7.7重量部とを反応容器に仕込み、攪拌した。次いで、ヒドロキシルアミン塩酸塩 6.0重量部を添加し、80℃まで加温して3時間攪拌した。室温まで冷却後、この反応液に水、酢酸エチルを注入し油層を分離し、水、希塩酸、塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。次いで、油層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾過液を濃縮することで化合物9−B 21.8重量部(収率100%、HPLC純度80%)を得た。
得られた化合物9−B 20.0重量部と、酢酸エチル 100.0重量部とを反応容器に仕込み、無水酢酸 13.8重量部を滴下し、室温にて20時間攪拌した。この反応液に水、酢酸エチルを注入し油層を分離、炭酸カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。次いで、油層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾過液を濃縮した。得られた油状生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製し、化合物9を7.5重量部(収率30%、HPLC純度97%)得た。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:7.86(q:2H)、7.75−7.83(m:6H)、7.18(t:2H)、4.84(brs:1H)、3.14−3.36(m:2H)、2.33(s:3H)、2.25(s:3H)、2.00−2.10(m:4H)、1.92(s:3H)、0.98−1.20(m:15H)、0.76(t:6H)、0.58−0.67(m:4H)
【0137】
[合成例10]化合物10の合成
p−フルオロベンゾイルクロライドをp−トリフルオロメチルベンゾイルクロライドに変更した以外は合成例9と同様にして、化合物10を合成した。得られた化合物10は、収率22%、HPLC純度97%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:7.70−7.88(m:10H)、4.84(brs:1H)、3.14−3.36(m:2H)、2.33(s:3H)、2.25(s:3H)、2.00−2.10(m:4H)、1.92(s:3H)、0.98−1.20(m:15H)、0.76(t:6H)、0.58−0.67(m:4H)
【0138】
[合成例11]化合物11の合成
p−フルオロベンゾイルクロライドを2−テノイルクロライドに変更した以外は合成例9と同様にして、化合物11を合成した。得られた化合物11は、収率28%、HPLC純度96%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:7.73−7.93(m:7H)、7.67(dd:1H)、7.20(q:1H)、4.74−4.96(brs:1H)、3.14−3.36(m:2H)、2.34(s:3H)、2.24(s:3H)、2.02−2.10(m:4H)、1.91(s:3H)、0.94−1.20(m:15H)、0.76(t:6H)、0.56−0.68(m:4H)
【0139】
[合成例12]化合物12の合成
p−フルオロベンゾイルクロライドをp−ニトロベンゾイルクロライドに変更した以外は合成例9と同様にして、化合物12を合成した。得られた化合物12は、収率19%、HPLC純度97%あった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.37(m:2H)、7.97(d:1H)、7.50−7.88(m:6H)、7.25−7.50(m:1H)、4.84(brs:1H)、3.10−3.36(m:2H)、2.23―2.40(m:4H)、1.90―2.16(m:9H)、0.98−1.20(m:15H)、0.76(t:6H)、0.50−0.67(m:4H)
【0140】
[合成例13]化合物13の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物13)を合成した。
【化49】
プロピルブロマイドに代えてヘキシルブロマイドを用いた以外は、合成例1と同様にして得られた9,9−ジヘキシルフルオレン 50.0重量部と、塩化メチレン 500.0重量部と、塩化アルミニウム 29.9重量部とを反応容器に仕込み、攪拌した。この液を10℃に冷却し、2,5−ジメチルフェニルアセチルクロライド 30.0重量部を滴下した。滴下終了後、反応液を室温まで加温し、3時間攪拌した。この反応液を冷水に注入し、油層を分離し、炭酸カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。次いで、油層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾過液を濃縮した。得られた固形物にメタノール 120重量部を加えて60℃に加温し、1時間攪拌した。溶液を冷却後、水 25重量部を加えて濾過し、化合物13−A 50.2重量部(収率70%、HPLC純度90%)を得た。
化合物13−A 50.0重量部と、塩化メチレン 500.0重量部と、塩化アルミニウム 34.7重量部とを反応容器に仕込み、攪拌した。この液を10℃に冷却し、p−ニトロベンゾイルクロライド 19.3重量部を滴下した。滴下終了後、反応液を40℃に加温し、5時間攪拌した。この反応液を冷水に注入し、油層を分離し、炭酸カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。次いで、油層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾過液を濃縮し、化合物13−B 63.5重量部(収率97%、HPLC純度80%)を得た。
化合物13−B 60.0重量部と、テトラヒドロフラン 300.0重量部とを反応容器に仕込み、攪拌した。この溶液に亜硝酸イソアミル(亜硝酸イソペンチル) 12.3重量部を加え、28%のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を18.4重量部添加し、室温で1時間攪拌した。この液に酢酸エチルと水を加えて油層を分離し、水にて2回洗浄した。次いで、油層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾過液を濃縮して得られた油状物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製し、化合物13−C 22.0重量部(収率35%、HPLC純度95%)を得た。
化合物13−C 20.0重量部と、氷酢酸 60.0重量部とを反応容器に仕込み、攪拌した。この溶液に無水酢酸 6.2重量部加え、40℃に加温して5時間攪拌した。水 800.0重量部とメタノール 80.0重量部の混合液に、室温まで冷却した反応液を注入し、析出した結晶を濾過し、化合物13を15.1重量部(収率71%、HPLC純度98%)得た。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.29−8.38(m:4H)、8.24(d:1H)、7.87−8.03(m:2H)、7.78−7.90(m:2H)、7.37−7.46(m:3H)、7.25(s:1H)、2.35(s:6H)、2.22(s:3H)、1.97−2.10(m:4H)、0.98−1.20(m:12H)、0.76(t:6H)、0.57−0.70(m:4H)
【0141】
[合成例14]化合物14の合成
p−ニトロベンゾイルクロライドをp−フルオロベンゾイルクロライドに変更した以外は合成例13と同様にして、化合物14を合成した。得られた化合物14は、収率14%、HPLC純度95%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.15(d:1H)、7.85−8.00(m:2H)、7.78−7.90(m:4H)、7.37−7.46(m:3H)、7.25(s:1H)、7.01−7.10(m:2H)、2.35(s:6H)、2.22(s:3H)、1.97−2.10(m:4H)、0.98−1.20(m:12H)、0.76(t:6H)、0.57−0.70(m:4H)
【0142】
[合成例15]化合物15の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物15)を合成した。
【化50】
合成例1と同様にして得られた9,9−ジプロピルフルオレン 50.0重量部と、塩化メチレン 500.0重量部と、塩化アルミニウム 29.9重量部とを反応容器に仕込み、攪拌した。この液を10℃に冷却し、アセチルクロライド 15.7重量部を滴下した。滴下終了後、反応液を室温まで加温し、3時間攪拌した。この反応液を冷水に注入し、油層を分離し、炭酸カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。次いで、油層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、無水硫酸マグネシウムを濾別し、濾過液を濃縮した。得られた油状物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製し、化合物15−A 26.3重量部(収率45%、HPLC純度100%)を得た。
化合物15−A 25.0重量部と、メタノール 125.0重量部とを反応容器に仕込み、攪拌した。この溶液にトリエチルアミン 17.3重量部と、ヒドロキシルアミン塩酸塩 17.8重量部を加え、室温で3時間攪拌した。この液に水 125.0重量部を加えて析出した結晶を濾過し、化合物15−B 18.4重量部(収率70%、HPLC純度99%)を得た。
化合物15−B 15.0重量部と、テトラヒドロフラン 75.0重量部とを反応容器に仕込み、無水酢酸 10.0重量部をゆっくりと加え、室温3時間攪拌した。水 80.0重量部とメタノール 20.0重量部の混合液に反応液を注入し、析出した結晶を濾過し、化合物15を11.9重量部(収率70%、HPLC純度100%)を得た。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:7.78(s:1H)、7.72(s:3H)、7.30−7.40(m:3H)、2.35(s:3H)、2.28(s:3H)、1.92−2.02(m:4H)、0.55−0.70(m:10H)
【0143】
[合成例16]化合物16の合成
ジプロピル化を省略した以外は合成例15と同様にして、化合物16を合成した。得られた化合物16は、収率33%、HPLC純度98%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.00(s:1H)、7.72−7.85(m:3H)、7.58(d:1H)、7.30−7.43(m:2H)、3.95(s:2H)、2.46(s:3H)、2.26(s:3H)
【0144】
[合成例D−1]化合物D−1の合成
o−トルオイルクロライドをベンゾイルクロライドに変更した以外は合成例1と同様にして、化合物D−1を合成した。得られた化合物D−1は、収率15%、HPLC純度99%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.20−8.32(m:2H)、7.32−7.88(m:9H)、1.95−2.15(m:7H)、0.55−0.75(m:10H)
【0145】
[合成例D−2]化合物D−2の合成
o−トルオイルクロライドを4−tert−ブチルベンゾイルクロライドに変更した以外は合成例1と同様にして、化合物D−2を合成した。得られた化合物D−2は、収率12%、HPLC純度93%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.20−8.32(m:2H)、7.67−7.87(m:3H)、7.28−7.56(m:5H)、1.97−2.08(m:7H)、1.36(d:9H)、0.58−0.72(m:10H)
【0146】
[合成例D−3]化合物D−3の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物D−3)を合成した。
【化51】
合成例1と同様にして得られた9,9−ジプロピルフルオレン 50.0重量部に酢酸 250重量部を加えて溶解させた後、濃硫酸 29.4重量部を加えて40℃に加温した。濃硝酸 29.0重量部を加えて1時間攪拌した後、水に反応液を注入した。析出した結晶を濾過し、2−ニトロ−9,9−ジプロピルフルオレン 54.3重量部(収率92%、HPLC純度100%)を得た。
2−ニトロ−9,9−ジプロピルフルオレン 50.0重量部に、塩化メチレン 500重量部と無水塩化アルミニウム 45.1重量部を加えた後、アセチルクロライド 26.6重量部を加えて40℃に加温して4時間攪拌した。反応液を冷却後、氷水に反応液を注入し、分液した。油層を5%重曹水、水にて洗浄後、濃縮し、化合物D−3A 25.1重量部(収率44%、HPLC純度99%)を得た。
化合物D−3A 20重量部に、エタノール 200重量部、ヒドロキシルアミン塩酸塩 16.5重量部、および無水酢酸ナトリウム 19.4重量部を加えて40℃に加温して2時間攪拌した。反応液を氷冷し、析出した結晶を濾過し、化合物D−3B 20.9重量部(収率100%、HPLC純度94%)を得た。
化合物D−3B 20重量部に酢酸エチル 200重量部を加えて溶解した後に無水酢酸 17.4重量部を加えて室温で5時間攪拌した。水を加えて分液し、5%重曹水、水にて洗浄した。油層を濃縮し、メタノールにて再結晶化することで化合物D−3 16.9重量部(収率75%、HPLC純度99%)を得た。得られた化合物D−3の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.27(dd:1H)、8.23(d:1H)、7.78−7.85(m:4H)、2.47(s:3H)、2.30(s:3H)、2.05(t:4H)、0.55−0.72(m:10H)
【0147】
[合成例D−4]化合物D−4の合成
プロピルブロマイドを3−メチルブチルブロマイドに変更して、9,9−ジ(3−メチルブチル)フルオレンを得た以外は、合成例D−3と同様にして化合物D−4を合成した。得られた化合物D−4は収率30%、HPLC純度98%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.28(dd:1H)、8.20(d:1H)、7.82(t:3H)、7.70(s:1H)、2.46(s:3H)、2.30(s:3H)、2.02−2.13(m:4H)、1.28(sep:2H)、0.62(d:12H)、0.34−0.50(m:4H)
【0148】
[合成例D−5]化合物D−5の合成
プロピルブロマイドをシクロヘキシルブロマイドに変更して、9−シクロヘキシルフルオレンを得た以外は、合成例D−3と同様にして化合物D−5を合成した。得られた化合物D−5は収率20%、HPLC純度97%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.40(s:1H)、8.30(d:1H)、8.00(s:1H)、7.75−7.90(m:3H)、4.03(s:1H)、2.45(s:3H)、2.26(s:3H)、0.8−1.8(m:11H)
【0149】
[合成例D−6]化合物D−6の合成
プロピルブロマイドを1,5−ジブロモペンタンに変更して、スピロ[シクロヘキサン1,9’−フルオレン]を得た以外は、合成例D−3と同様にして化合物D−6を合成した。得られた化合物D−6は収率5%、HPLC純度99%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.56(d:1H)、8.30(dd:1H)、8.03(d:1H)、7.78−7.88(m:3H)、2.47(s:3H)、2.30(s:3H)、1.62−2.00(m:10H)
【0150】
[合成例D−7]化合物D−7の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物D−7)を合成した。
【化52】
合成例1と同様にして得られた9,9−ジプロピルフルオレン 50.0重量部に塩化メチレン 500重量部を加えて溶解後に氷冷し、塩化アルミニウム 39.9重量部を加えた後、アセチルクロライド 16.0重量部を滴下して2時間攪拌した。塩化アルミニウム 79.9重量部、4−ニトロベンゾイルクロライド 55.6重量部を加えて40℃まで加温して5時間攪拌した。反応液を冷却後、氷水に注入して、分液した後、2回水洗し、油層を濃縮した。得られた固体をメタノールにて懸濁して濾過し、化合物D−7A 61.0重量部(収率69%、HPLC純度89%)を得た。
化合物D−7A 50重量部に、エタノール 500重量部、ヒドロキシルアミン塩酸塩 31.5重量部、および無水酢酸ナトリウム 37.2重量部を加えて40℃に加温して2時間攪拌した。反応液を氷冷し、析出した結晶を濾過し、化合物D−7B 51.7重量部(収率100%、HPLC純度80%)を得た。
化合物D−7B 50重量部に酢酸エチル 500重量部を加えて溶解した後に無水酢酸 33.5重量部を加えて室温で5時間攪拌した。水を加えて分液し、5%重曹水、水にて洗浄した。油層を濃縮し、メタノールにて再結晶化することで化合物D−7 12.2重量部(収率22%、HPLC純度98%)を得た。得られた化合物D−7の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.37(d:2H)、7.96(d:2H)、7.89(s:1H)、7.73−7.84(m:5H)、2.47(s:3H)、2.30(s:3H)、2.00−2.07(m:4H)、0.60−0.72(m:10H)
【0151】
[合成例D−8]化合物D−8の合成
アセチルクロライドを2−メチルプロピオニルクロライドに変更した以外は合成例D−7と同様にして化合物D−8を合成した。得られた化合物D−8は、収率33%、HPLC純度98%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.35−8.42(m:2H)、7.70−8.00(m:6H)、7.43−7.50(m:1H)、7.18−7.23(m:1H)、3.60(sep:0.5H、異性体)、3.08(sep:0.5H、異性体)、2.28(s:1.5H、異性体)、1.97−2.10(m:4H)、1.94(s:1.5H、異性体)、1.20−1.30(m:6H)、0.60−0.75(m:10H)
【0152】
[合成例D−9]化合物D−9の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物D−9)を合成した。
【化53】
合成例1と同様にして得られた9,9−ジプロピルフルオレン 20.0重量部に、塩化メチレン 200重量部と無水塩化アルミニウム 16.0重量部を加えた後プロピオニルクロライド 7.5重量部を加えて室温で2時間攪拌した。塩化アルミニウム 32.0重量部、4−ニトロベンゾイルクロライド 22.2重量部を加えて40℃まで加温して5時間攪拌した。反応液を冷却後、氷水に注入し、分液した後、2回水洗し、油層を濃縮した。得られた固体をメタノールにて懸濁して濾過し、化合物D−9A 29.1重量部(収率80%、HPLC純度95%)を得た。
化合物D−9A 25重量部に、テトラヒドロフラン 250重量部、濃塩酸 85.8重量部、および亜硝酸イソアミル 19.3重量部を加えて室温で12時間攪拌した。反応液を水に注入し、酢酸エチルを加えて分液した。水にて2回洗浄後、油層を濃縮し、黄色オイル状物を得た。このオイル状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製し、化合物D−9B 16.0重量部(収率60%、HPLC純度95%)を得た。
化合物D−9B 15重量部に酢酸エチル 150重量部を加えて溶解した後に無水酢酸 9.5重量部を加えて室温で24時間攪拌した。水を加えて分液し、5%重曹水、水にて洗浄した。油層を濃縮し、化合物D−9 14.7重量部(収率90%、HPLC純度98%)を得た。得られた化合物D−9の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.37(d:2H)、8.25−8.20(m:2H)、7.97(d:2H)、7.88(t:3H)、7.77(dd:1H)、2.35(s:3H)、2.30(s:3H)、1.98−2.22(m:4H)、0.62−0.74(m:10H)
【0153】
[合成例D−10]化合物D−10の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物D−10)を合成した。
【化54】
合成例1と同様にして得られた9,9−ジプロピルフルオレン 50.0重量部に、塩化メチレン 500重量部と無水塩化アルミニウム 39.9重量部を加えた後クロトノイルクロライド 21.3重量部を加えて室温で2時間攪拌した。無水塩化アルミニウム 39.9重量部、2−チオフェンスルホニルクロライド 54.7重量部を加えて室温で24時間攪拌した。反応液を氷水に注入し、分液した後、2回水洗し、油層を濃縮した。得られた固体をメタノールで懸濁して濾過し、化合物D−10A 15.8重量部(収率17%、HPLC純度90%)を得た。
化合物D−10A 15重量部に、エタノール 150重量部、ヒドロキシルアミン塩酸塩 5.6重量部、およびトリエチルアミン 6.6重量部を加えて78℃に昇温して5時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、水に滴下し、析出した結晶を濾過し、化合物D−10B 16.2重量部(収率98%、HPLC純度96%)を得た。
化合物D−10B 15重量部に酢酸エチル 150重量部を加えて溶解した後に無水酢酸 20.9重量部を加えて35℃に加温して5時間攪拌した。水を加えて分液し、5%重曹水、水にて洗浄した。油層を濃縮し、メタノールで再結晶化することで化合物D−10 15.5重量部(収率83%、HPLC純度97%)を得た。得られた化合物D−10の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.02(d:1H)、7.93−7.98(m:1H)、7.84−7.77(m:4H)、7.72(dd:1H)、7.64(dd:1H)、7.08−7.11(m:1H)、4.84(brs:1H)、3.15−3.30(m:2H)、2.33(s:3H)、2.24(s:3H)、1.95−2.10(m:4H)、1.80(s:3H)、1.13−1.24(m:3H)、0.50−0.72(m:10H)
【0154】
[合成例D−11]化合物D−11の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物D−11)を合成した。
【化55】
反応容器にテトラヒドロフラン 500.0重量部およびカリウム tert−ブトキシド 68.7重量部を仕込み、2−ブロモフルオレン 50.0重量部を添加した。次いで、反応容器に、プロピルブロマイド 56.1重量部を滴下した。この液を40℃に加熱し、3時間攪拌した。この反応液を室温まで冷却した後に酢酸エチル、水を注入して分液し、油層を2回水洗した。油層を濃縮し、2−ブロモ−9,9−ジプロピルフルオレン 67.2重量部(収率100%、HPLC純度92%)を得た。
得られた2−ブロモ−9,9−ジプロピルフルオレン 50.0重量部、塩化メチレン 500.0重量部、および無水塩化アルミニウム 30.4重量部を反応容器に仕込み、0℃に冷却した。クロトノイルクロライド 20.6重量部を滴下して室温に加温し、4時間攪拌した。氷水に反応液を注入して、分液し、5%重曹水、水にて洗浄した。油層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製して、化合物D−11A 15.1重量部(収率25%、HPLC純度80%)を得た。
得られた化合物D−11A 15.0重量部に、エタノール 150.0重量部、ヒドロキシルアミン塩酸塩 10.5重量部、および無水酢酸ナトリウム 12.4重量部を添加し、40℃に加熱し、5時間攪拌した。この反応液を室温まで冷却し、水、酢酸エチルを注入して分液し、油層を水、希塩酸にて洗浄した。油層を濃縮し、化合物D−11B 10.9重量部(収率65%、HPLC純度83%)を得た。
得られた化合物D−11B 10.0重量部に、酢酸エチル 100.0重量部と無水酢酸 18.3重量部を加えて、40℃に加温して5時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、水を加えて分液し、油層を水、5%重曹水にて洗浄後、濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製し、化合物D−11 7.1重量部(収率55%、HPLC純度96%)を得た。得られた化合物D−17の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:7.67−7.78(m:3H)、7.58(d:1H)、7.45−7.50(m:2H)、4.82(brs:1H)、3.14−3.32(m:2H)、2.32(s:3H)、2.24(s:3H)、1.92−2.30(m:4H)、1.89(s:3H)、1.2(d:3H)、0.55−0.72(m:10H)
【0155】
[合成例D−12]化合物D−12の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物D−12)を合成した。
【化56】
合成例D−3と同様にして得られた、2−ニトロ−9,9−ジプロピルフルオレン 50.0重量部に、塩化メチレン 500重量部および無水塩化アルミニウム 45.1重量部を加えた後、4−クロロブチリルクロライド 47.7重量部を加えて室温で2時間攪拌した。反応液を氷水に注入し、分液した後、油層を2回水洗し、濃縮した。得られた固体をメタノールで懸濁して濾過し、化合物D−12A 50.8重量部(収率100%、HPLC純度98%)を得た。
化合物D−12A 20.0重量部に、エタノール 200重量部、ヒドロキシルアミン塩酸塩 8.7重量部、およびトリエチルアミン 10.3重量部を加えて60℃で3時間攪拌した。反応液を水に注入し、酢酸エチルを加えて分液し、水にて2回洗浄後、油層を濃縮乾固した。得られた固体をメタノールにて再結晶化して、化合物D−12B 25.6重量部(収率100%、HPLC純度92%)を得た。
化合物D−12B 25重量部に酢酸エチル 250重量部を加えて溶解した後に無水酢酸 18.5重量部を加えて室温で5時間攪拌した。水を加えて分液し、5%重曹水、水にて洗浄した。油層を濃縮して得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製し、化合物D−12 17.9重量部(収率65%、HPLC純度98%)を得た。得られた化合物D−17の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.28(dd:1H)、8.23(d:1H)、7.79−7.86(m:4H)、3.62(t:2H)、3.12(t:2H)、2.31(s:3H)、2.01−2.14(m:6H)、0.56−0.72(m:10H)
【0156】
[合成例D−13]化合物D−13の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物D−13)を合成した。
【化57】
合成例D−12で得られた化合物D−12A 20重量部に、テトラヒドロフラン 200重量部、濃塩酸 78.1重量部、および亜硝酸イソアミル 8.8重量部を加えて室温で5時間攪拌した。反応液を水に注入し、酢酸エチルを加えて分液した。水にて2回洗浄後、油層を濃縮し、化合物D−13B 20.8重量部(収率97%、HPLC純度88%)を得た。
化合物D−13B 20重量部に酢酸エチル 200重量部を加えて溶解した後に無水酢酸 14.8重量部を加えて室温で16時間攪拌した。水を加えて分液し、5%重曹水、水にて洗浄した。油層を濃縮し、得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製し、化合物D−13 14.1重量部(収率62%、HPLC純度98%)を得た。得られた化合物D−13の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.29(dd:1H)、8.25(d:1H)、8.17−8.21(m:2H)、7.88(dd:2H)、3.83(t:2H)、3.36−3.41(m:2H)、2.31(s:3H)、2.00−2.12(m:4H)、0.58−0.72(m:10H)
【0157】
[合成例D−14]化合物D−14の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物D−14)を合成した。
【化58】
合成例D−2にて得られた化合物D−12A 20重量部に、テトラヒドロフラン 200重量部、ヨウ化カリウム 2.1重量部、および4−クロロベンゼンチオール 7.6重量部を加え、室温で攪拌しながら水酸化ナトリウム 2.1重量部を加えた。混合液を50℃まで加温して2時間攪拌後、室温まで冷却して水、酢酸エチルを加えて分液した。水、希塩酸にて洗浄後、油層を濃縮して得られた生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製し、化合物D−14A 16.0重量部(収率63%、HPLC純度93.8%)を得た。
化合物D−14A 15重量部に、エタノール150重量部、ヒドロキシルアミン塩酸塩 5.1重量部、およびトリエチルアミン 6.1重量部を加えて60℃に加温して10時間攪拌後室温に冷却した。反応液に水、酢酸エチルを加えて分液した。水にて2回洗浄後、油層を濃縮し、化合物D−14B 15.4重量部(収率100%、HPLC純度87%)を得た。
化合物D−14B 15重量部に、酢酸エチル 150重量部および無水酢酸 8.8重量部を加え、室温で5時間攪拌した。水を加えて分液し、5%重曹水、水にて洗浄後、油層を濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製し、化合物D−14 10.5重量部(収率65%、HPLC純度98%)を得た。得られた化合物D−14の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.29(dd:1H)、8.22(d:1H)、7.71−7.85(m:4H)、7.20−7.27(m:4H)、3.07(t:2H)、2.98(t:2H)、2.27(s:3H)、1.85−2.08(m:6H)、0.55−0.72(m:10H)
【0158】
[合成例D−15]化合物D−15の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物D−15)を合成した。
【化59】
合成例D−14にて得られた化合物D−14A 20重量部に、テトラヒドロフラン 200重量部、28%ナトリウムメトキシド メタノール溶液 9.5重量部、および亜硝酸イソアミル 5.8重量部を加えて室温で2時間攪拌した。反応液を水に注入し、酢酸エチルを加えて分液した。水にて2回洗浄後、油層を濃縮し、化合物D−15B 17.3重量部(収率82%、HPLC純度65%)を得た。
化合物D−15B 15重量部に酢酸エチル 150重量部を加えて溶解した後に無水酢酸 8.6重量部を加えて室温で4時間攪拌した。水を加えて分液し、5%重曹水、水にて洗浄した。油層を濃縮し、得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製し、化合物D−15 5.7重量部(収率36%、HPLC純度100%)を得た。得られた化合物D−15の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.29(dd:1H)、8.25(d:1H)、8.16−8.21(m:2H)、7.88(dd:2H)、7.30(d:4H)、3.25(m:4H)、2.21(s:3H)、2.00−2.12(m:4H)、0.58−0.72(m:10H)
【0159】
[合成例D−16]化合物D−16の合成
プロピルブロマイドをベンジルブロマイドに変更した以外は合成例4と同様にして、化合物D−16を合成した。得られた化合物D−16は、収率10%、HPLC純度98%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:7.93(s:1H)、7.75(d:1H)、7.70(s:1H)、7.60(d:1H)、7.40−7.50(m:3H)、7.28−7.35(m:3H)、6.85−7.00(m:6H)、6.40(d:4H)、3.40(q:4H)、2.42(s:3H)、2.34(s:3H)、2.31(s:3H)
【0160】
[合成例D−17]化合物D−17の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物D−17)を合成した。
【化60】
合成例1と同様にして得られた、9,9−ジプロピルフルオレン 20.0重量部に塩化メチレン 200重量部と無水塩化アルミニウム 12.8重量部を加えた後1−ナフトイルクロライド 18.3重量部を加えて室温で2時間攪拌した。反応液を氷水に注入し、分液した後、2回水洗し、油層を濃縮した。得られた固体をメタノールで懸濁して濾過し、化合物D−17A 35.9重量部(収率100%、HPLC純度98%)を得た。
化合物D−17A 30.0重量部に、エタノール 300重量部、ヒドロキシルアミン塩酸塩 37.1重量部、および無水酢酸ナトリウム 43.8重量部を加えて78℃で24時間攪拌した。反応液を冷却後、水に注入し、酢酸エチルを加えて分液した。水にて2回洗浄後、油層を濃縮した。得られた固体をメタノールにて再結晶化し、化合物D−17B 25.0重量部(収率81%、HPLC純度98%)を得た。
化合物D−17B 20重量部に酢酸エチル 200重量部を加えて溶解した後に無水酢酸 13.2重量部を加えて室温で6時間攪拌した。水を加えて分液し、5%重曹水、水にて洗浄した。油層を濃縮して得られた固体をメタノールにて再結晶化し、化合物D−17 17.6重量部(収率81%、HPLC純度97%)を得た。得られた化合物D−17の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:7.96(q:2H)、7.81(s:1H)、7.28−7.70(m:11H)、1.85−2.00(m:7H)、0.62(d:10H)
【0161】
[合成例D−18]化合物D−18の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物D−18)を合成した。
【化61】
反応容器にフルオレン 25.0重量部と脱水したテトラヒドロフラン 300.0重量部を入れ、窒素ガスで置換後−20℃まで冷却した。ノルマルブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液) 59.7重量部を加えてゆっくりと室温まで加温した後、1時間攪拌した。反応液を−78℃に冷却し、1,1,1−トリフルオロ−3−ヨードプロパン 31.0重量部を加え、ゆっくりと室温まで加温した後、1時間攪拌した。再度−78℃まで冷却してノルマルブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液) 59.7重量部を加えて室温まで加温後、1時間攪拌した。さらに−78℃まで冷却して1,1,1−トリフルオロ−3−ヨードプロパン 31.0重量部を加えて室温まで加温して1時間攪拌した。反応液に90%酢酸を加えた後、飽和食塩水とヘキサンを加えて分液した。油層を水洗し、濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製し、9,9−ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−9H−フルオレン 28.5重量部(収率66%、HPLC純度98%)を得た。
無水塩化アルミニウム 14.0重量部に塩化メチレン 250重量部を加え、攪拌しながらアセチルクロライド 6.6重量部を加えて氷冷した。この混合液中に、9,9−ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−9H−フルオレン 25.0重量部を塩化メチレン 25.0重量部に溶かして加え、室温に加温して1時間攪拌した。反応液を氷水に注入し、分液した後、2回水洗し、油層を濃縮した。得られた固体をメタノールで再結晶化し、化合物D−18A 25.9重量部(収率93%、HPLC純度98%)を得た。
化合物D−18A 25.0重量部に、エタノール 250重量部、ヒドロキシルアミン塩酸塩 17.4重量部、および無水酢酸ナトリウム 20.5重量部を加え、40℃に加温して6時間攪拌した。反応液に水を注入後、析出した結晶を濾過し、化合物D−18B 25.2重量部(収率97%、HPLC純度99%)を得た。
化合物D−18B 20.0重量部に、酢酸エチル 200重量部および無水酢酸 14.7重量部を加え、室温で24時間攪拌した。水を加えて分液し、水にて洗浄後、油層を濃縮した。得られた固体をメタノールにて再結晶化し、化合物D−18 21.6重量部(収率98%、HPLC純度99%)を得た。得られた化合物D−18の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:7.72−7.86(m:4H)、7.36−7.47(m:3H)、2.46(s:3H)、2.22−2.39(m:7H)、1.16−1.40(m:4H)
【0162】
[合成例D−19]化合物D−19の合成
以下の合成方法により、フルオレン系化合物(化合物D−19)を合成した。
【化62】
反応容器にカリウム tert−ブトキシド 60.8重量部とテトラヒドロフラン 300重量部を加えて0℃に冷却した。フルオレン 30重量部をテトラヒドロフラン 90重量部に溶解してカリウム tert−ブトキシド溶液に滴下した。0℃で10分間攪拌した後、ブロモ酢酸 tert−ブチルエステル 105.6重量部を滴下し、0℃で1時間攪拌後、室温まで加温し、さらに1時間攪拌した。酢酸エチル、水を加えて分液後、油層を濃縮し、化合物D−19A 71.2重量部(収率100%、HPLC純度93%)を得た。
テトラヒドロフラン 500重量部に水素化アルミニウムリチウム 13.0重量部を加えて0℃に冷却し、テトラヒドロフラン 100重量部に溶かした化合物D−19A 70重量部を滴下した。室温まで加温して1時間攪拌後、40℃に加温し、さらに1時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、飽和ロッシェル塩水溶液を加えてクエンチして分液後、油層を希塩酸にて洗浄後、濃縮し、化合物D−19B 29.8重量部(収率60%、HPLC純度98%)を得た。
化合物D−19B 25.0重量部をテトラヒドロフラン 200重量部に溶解し、0℃に冷却後水素化ナトリウム(60%オイルディスパージョン) 9.8重量部を加えて10分攪拌した。メチルヨージド 30.7重量部を加えて室温まで加温して1時間攪拌した。90%酢酸を加えた後、酢酸エチル、水を加えて分液し、油層を飽和食塩水にて洗浄後濃縮した。得られた固体をメタノールにて再結晶化し、化合物D−19C 27.8重量部(収率100%、HPLC純度100%)を得た。
無水塩化アルミニウム 17.7重量部に塩化メチレン 250重量部を加え、アセチルクロライド 8.3重量部を加えて氷冷した。この混合液中に、化合物D−19C 25.0重量部を塩化メチレン 25.0重量部に溶かして加え、室温に加温して1時間攪拌した。反応液を氷水に注入して分液し、油層を2回水洗し、濃縮した。得られた固体をメタノールにて再結晶化し、化合物D−19D 22.4重量部(収率78%、HPLC純度98%)を得た。
化合物D−19D 20.0重量部に、エタノール 200重量部、ヒドロキシルアミン塩酸塩 17.1重量部、および無水酢酸ナトリウム 20.2重量部を加え、40℃に加温して24時間攪拌した。反応液に水を注入後析出した結晶を濾過し、化合物D−19E 19.4重量部(収率93%、HPLC純度99%)を得た。
化合物D−19E 15.0重量部に、酢酸エチル 150重量部、および無水酢酸 13.5重量部を加え、室温で3時間攪拌した。水を加えて分液し、水にて洗浄後、油層を濃縮した。得られた固体をメタノールにて再結晶化し、化合物D−19 12.4重量部(収率74%、HPLC純度100%)を得た。得られた化合物D−19の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:7.68−7.85(m:4H)、7.33−7.50(m:3H)、3.00(s:6H)、2.66(q:4H)、2.45(s:3H)、2.38(q:4H)、2.28(s:3H)
【0163】
[合成例D−20]化合物D−20の合成
無水酢酸をベンゾイルクロライドに変更した以外は、合成例1と同様にして化合物D−20を合成した。得られた化合物D−20は収率30%、HPLC純度98%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.25(d:2H)、7.99(d:1H)、7.82(d:1H)、7.74(d:1H)、7.69(dd:2H)、7.33−7.55(m:7H)、7.23(d:1H)、2.21(s:3H)、2.00−2.12(m:4H)、0.54−0.74(m:10H)
【0164】
[合成例D−21]化合物D−21の合成
無水酢酸を3−(メチルチオ)プロピオニルクロライドに変更した以外は、合成例1と同様にして化合物D−21を合成した。得られた化合物D−21は収率25%、HPLC純度98%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.21−8.28(m:2H)、7.86(s:1H)、7.81(d:1H)、7.73(d:1H)、7.29−7.45(m:4H)、7.14(d:1H)、2.58−2.69(m:4H)、2.17(s:3H)、1.98−2.07(m:7H)、0.55−0.71(m:10H)
【0165】
[合成例D−22]化合物D−22の合成
無水酢酸をチオフェン−2−アセチルクロライドに変更した以外は、合成例1と同様にして化合物D−22を合成した。得られた化合物D−22は収率30%、HPLC純度99%であった。得られた化合物の構造は、H−NMRスペクトル(CDCl)により確認した。H−NMRスペクトルを以下に示す。
δ[ppm]:8.25(dd:1H)、8.21(d:1H)、7.85(d:1H)、7.79(d:1H)、7.70(d:1H)、7.36−7.43(m:2H)、7.30(d:2H)、7.16(dd:1H)、7.08(d:1H)、6.88(q:1H)、6.73(d:1H)、3.82(s:2H)、2.07(s:3H)、2.01(t:4H)、0.52−0.70(m:10H)
【0166】
[合成例D−23]化合物D−23の合成
無水酢酸をシクロヘキサンカルボニルクロライドに変更した以外は、合成例1と同様にして化合物D−23を合成した。得られた化合物D−23は収率30%、HPLC純度97%であった。
【0167】
[合成例D−24]化合物D−24の合成
無水酢酸を3−クロロプロピオニルクロライドに変更した以外は、合成例1と同様にして化合物D−24を合成した。得られた化合物D−24は収率30%、HPLC純度98%であった。
【0168】
[合成例D−25]化合物D−25の合成
無水酢酸をメトキシアセチルクロライドに変更した以外は、合成例1と同様にして化合物D−25を合成した。得られた化合物D−25は収率30%、HPLC純度98%であった。
【0169】
[合成例D−26]化合物D−26の合成
無水酢酸をフェニルアセチルクロライドに変更した以外は、合成例1と同様にして化合物D−26を合成した。得られた化合物D−26は収率30%、HPLC純度99%であった。
【0170】
[物性評価]
以上の合成例で得られたフルオレン系化合物について、以下の物性評価を行った。また、比較のため、以下の参考例1および参考例2の光重合開始剤についても同様に物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0171】
(参考例1)
光重合開始剤として、以下の式で表される化合物C−1を用いた。
【化63】
【0172】
(参考例2)
光重合開始剤として、以下の式で表される化合物C−2を用いた。
【化64】
【0173】
(吸光係数)
化合物1、2、4、6、8、9、11、12、13、15、16、D−1、D−3、D−4、D−7、D−8、D−9、D−12、D−14、D−15、D−20、C−1、およびC−2の0.001%(wt/vol)テトラヒドロフラン溶液を調製し、吸光度を分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名「U−3900H」)で測定した。分光光度計で得られた吸収スペクトルから、波長280nm〜400nmにおける吸収極大波長(λmax)を読み取った。

(融点、分解点)
化合物1、2、4、6、8、9、11、12、13、15、16、D−1、D−3、D−4、D−7、D−8、D−9、D−12、D−14、D−15、D−20、C−1、およびC−2を5.0mg用いて、熱分析装置(TG−DTA)(株式会社リガク製、商品名「Thermo Plus EVO TG 8120」)により測定した。

(溶解度)
化合物1、4、8、15、16、D−1、D−3、D−4、D−7、D−8、D−9、D−12、D−20、C−1、およびC−2を、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル100重量部に室温でそれぞれ溶解し、各溶媒に対する光重合開始剤の溶解量を測定した。溶解量について、下記評価基準に従って溶解性を評価した。なお、化合物2、9、11、12、13、D−14、およびD−15については、得られた化合物が液体であるため、溶解度を測定しなかった。
A:10重量部以上溶解
B:5重量部以上、10重量部未満の範囲で溶解
C:2重量部以上、5重量部未満の範囲で溶解
D:2重量部未満溶解
【0174】
【表1】
【0175】
(透明性)
光重合開始剤には透明性が求められているので、露光後の光重合開始剤による着色の影響を確認した。具体的には以下のように、光重合開始剤そのものの露光前後での着色(変色)の度合いを、吸光度を測定することにより評価した。合成例4の化合物4の40g/L テトラヒドロフラン溶液を調製し、当該溶液を光路長1cmの蓋付き石英製UVセル(12.5×12.5×58mm)に入れた。分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名「U−3900H」)を用いて、露光前の当該溶液の吸収スペクトルを測定した。その後、露光装置(ウシオ電機株式会社製、商品名「マルチライト」(ML−251A/B)、光学ユニット(PM25C−100))を用いて、UVセルの石英面に垂直に365nmの紫外線を850mJ/cm照射し、当該溶液の吸収スペクトルを再度測定した。この操作を繰り返し行い、紫外線の照射による当該溶液の吸光度変化を測定した。さらに、合成例4の化合物4に代えて、参考例1の化合物C−1を用いて同様の実験を行った。図1(A)は、化合物4についての測定結果を示すグラフであり、図1(B)は、化合物C−1についての測定結果を示すグラフである。
【0176】
図1(A)のグラフの横軸は、吸収スペクトルの測定波長(nm)を示し、縦軸は、当該波長における吸光度(Abs.)を示す。紫外線照射前の測定結果を実線で示し、総量850mJ/cmの紫外線を照射した後の測定結果を点線で示し、総量1700mJ/cmの紫外線を照射した後の測定結果を破線で示し、総量2550mJ/cmの紫外線を照射した後の測定結果を丸付き実線で示す。図1(B)のグラフについても同様である。図1(A)に示された測定結果を、図1(B)に示された測定結果と比較すると、露光前後での化合物4の吸光度の上昇度合いは、露光前後での化合物C−1の吸光度の上昇度合いよりも低いことが明らかになった。したがって、露光による化合物4の着色の影響は小さいことが示された。
【0177】
透明感光性組成物の評価
[実施例1]
合成例1で得られたフルオレン系化合物(化合物1)0.192重量部(0.4mmol)、酸基含有アクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製、商品名「サイクロマーP(ACA)200M」、PGMEAを用いて固形分体含量を20重量%に調整したもの)13.2重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「KAYARAD DPHA」)0.40重量部、および、PGMEA 6.0重量部を室温にて30分間攪拌・混合した後、5μmのメンブレンフィルターで濾過し、感光性組成物を得た。
【0178】
[実施例2〜10および実施例2−1〜2−10]
使用したフルオレン系化合物、および、その使用量を表2に記載の通りにした以外は実施例1と同様にして、感光性組成物を得た。なお、光重合開始剤であるフルオレン系化合物の使用量は、各実施例および比較例において、同モル量となる量を使用した。
【0179】
(比較例1および2)
光重合開始剤およびその使用量を表2に記載のとおりにした以外は実施例1と同様にして、感光性組成物を得た。
【0180】
【表2】
【0181】
[評価1]
実施例1〜9、実施例2−1〜2−10、および比較例1で得られた感光性組成物をガラス基板上にスピンコーター(株式会社共和理研製、商品名「K−359SD1」)を用いて、乾燥膜厚が1.0μmとなるように塗布した。塗布後のガラス基板を送風乾燥機を用いて、90℃で10分間乾燥し、塗膜(感光層)を形成した。次いで、この膜にネガマスク(マスク幅:20μm)を介して高圧水銀ランプ(カール・ズース株式会社製、商品名「マスクアライナー」)を用いて、5mJ/cm、10mJ/cm、20mJ/cm、40mJ/cm、60mJ/cm、80mJ/cmで露光した。次いで、0.1重量%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液に浸漬した後、純水でリンスし、残存する硬化膜について、以下の評価を行った。結果を表3に示す。なお、比較例1の組成物は、露光エネルギー量が10mJ/cmでは硬化膜を形成することができなかった。実施例1、2、5、7、比較例1、実施例2−1、2−2、2−3、2−7、および2−8の感光性組成物を用いて得られた透明硬化膜の顕微鏡写真を図2〜11に示す。

(20μmパターン線幅)
各露光エネルギー量におけるパターン像を、カラー3Dレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、商品名「VK−X110」)を用いて拡大観察(×2000)し、パターンの幅を計測した。線幅の値が大きいほど、高感度であることを表す。
【0182】
【表3】
【0183】
本発明のフルオレン系化合物を含む感光性組成物は、露光エネルギー量が10mJ/cmであっても、パターンを形成することができた。一方、従来の光重合開始剤を用いた感光性組成物である比較例1は、露光エネルギー量が10mJ/cmの場合にはパターンを形成することができなかった。さらに、露光エネルギー量が80mJ/cmの場合、実施例1〜7、ならびに実施例2−1、2−2、2−3、2−7および2−8の感光性組成物は、いずれも比較例1の感光性組成物よりも優れた感度を有していた。なかでも、実施例1および2、ならびに実施例2−2の感光性組成物は、特に優れた感度を有していた。
【0184】
[評価2]
(組成物の平均透過率)
実施例1〜9、実施例2−1〜2−10、および比較例1〜2で得られた感光性樹脂組成物について、それぞれ、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名「U−3900H」、石英セル、光路長;1cm)を用いて、400nm〜700nmにおける平均透過率(%)を測定した。結果を表4に示す。

(透明硬化膜の透過率)
実施例1〜9、実施例2−1〜2−10、ならびに比較例1および2で得られた感光性組成物を用いて、露光エネルギー量を80mJ/cmとした以外は評価1と同様にして透明硬化膜を形成した。得られた透明硬化膜について、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名「U−3900H」、石英セル、光路長;1cm)を用いて、400nmにおける透過率(%)、および、400〜700nmにおける平均透過率(%)を測定した。400nmにおける透過率が高いほど、黄色の着色が少ないことを示す。また、塗膜の透過率が高いほど、形成されるパターンの透過性が高いことを示す。結果を表4に示す。
【0185】
【表4】
【0186】
本発明のフルオレン系化合物を用いた実施例1〜9および実施例2−1〜2−10を用いた透明硬化膜では、実用上十分な透明性を有する塗膜が得られた。特に、実施例3、5、6、7、8、および2−5の感光性組成物を用いた場合、高い透明性を有する透明硬化膜が得られた。
【0187】
黒色感光性組成物の評価
[実施例10]
合成例1で得られたフルオレン系化合物(化合物1)0.196重量部(0.4mmol)、カルド樹脂(PGMEAを用いて固形分含有量を20重量%に調製したもの)5.9重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「KAYARAD DPHA」)0.4重量部、カーボンブラックのPGMEA分散液(固形分濃度:20重量%) 10重量部、および、PGMEA 3.5重量部を室温にて30分間混合・攪拌し、5μmメンブレンフィルターにて濾過し、感光性組成物を得た。
【0188】
[実施例11〜15および実施例2−11〜2−20]
使用したフルオレン系化合物、および、その使用量を表5に記載の通りにした以外は実施例10と同様にして、感光性組成物を得た。
【0189】
(比較例3)
光重合開始剤およびその使用量を表5に記載のとおりにした以外は実施例10と同様にして、感光性組成物を得た。
【0190】
【表5】
【0191】
[評価3]
実施例10〜15、実施例2−11〜2−20、および比較例3で得られた感光性組成物をガラス基板上にスピンコーター(株式会社共和理研製、商品名「K−359SD1」)を用いて、乾燥膜厚が1.0μmとなるように塗布した。塗布後のガラス基板を送風乾燥機を用いて、90℃で10分間乾燥し、塗膜(感光層)を形成した。次いで、この膜にネガマスク(マスク幅:20μm)を介して高圧水銀ランプ(カール・ズース株式会社製、商品名「マスクアライナー」)を用いて10mJ/cm、20mJ/cm、40mJ/cm、60mJ/cm、80mJ/cmで露光した。次いで、0.1重量%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液に浸漬した後、純水でリンスし、残存する硬化膜について、以下の評価を行った。結果を表6〜8に示す。また、実施例10、11、および、比較例3の感光性組成物を用いて得られた黒色硬化膜の顕微鏡写真を図2、3および6に示し、実施例2−11、2−13、2−14、2−17、および2−18の感光性組成物を用いて得られた黒色硬化膜の顕微鏡写真を図7〜11に示す。

(20μmパターン線幅)
各露光エネルギー量におけるパターン像を、カラー3Dレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、商品名「VK−X110」)を用いて拡大観察(×2000)し、パターンの幅を計測した。線幅の値が大きいほど、高感度であることを表す。

(パターンの直進性)
各露光エネルギー量におけるパターン像の外観を目視により評価した。良好な直線状のパターンが形成されたものを良好、パターン像の歪みや端部に凹凸が確認されたものを不良とした。

(パターンの剥がれ)
0.1%TMAH水溶液に浸漬現像後の硬化膜の外観を目視により評価した。外観変化がなく、硬化膜の剥離もなかったものを良好とした。

(残渣)
0.1%TMAH水溶液に浸漬現像後、未露光部分における塗膜の残存有無を目視により評価した。未露光部分における塗膜の残存の無いものをなしとした。
【0192】
【表6】
【表7】
【表8】
【0193】
20μmパターン線幅による評価において、実施例10〜15および実施例2−11〜2−20の感光性組成物は、いずれの露光エネルギー量においても、パターンを形成することができた。なかでも、実施例10、11、ならびに実施例2−11〜2−14および2−17〜2−20は、全ての露光エネルギー量で、従来の光重合開始剤を用いた比較例3よりも高い感度を示した。同様に、パターンの直進性・パターンの剥がれ・残渣の評価においても、実施例10、11、ならびに実施例2−11〜2−14および2−17〜2−20は、従来の光重合開始剤を用いた比較例3よりも良好な結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0194】
本発明のフルオレン系化合物は、光重合開始剤として好適に用いることができる。本発明のフルオレン系化合物は高い感度を有するため、様々な用途に好適に用いられ得る。本発明のフルオレン系化合物を含む光重合開始剤は、従来の光重合開始剤と同等以上の性能を発揮する。また、より感度の高い光重合性開始剤であるフルオレン系化合物を用いることで、光重合開始剤の使用量を低減しても従来の光重合開始剤と同等の性能を維持することが可能となり、感光性組成物製造におけるコストの低減が可能である。さらに、より感度の高いフルオレン系化合物を使用することで、反応時の露光エネルギーを低減することが可能となり、エネルギー消費量をも低減させることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11