【課題】 本発明の課題は、良好な硬化性、低黄変、光安定性及び玩具、食品包装用途のための低毒性、低マイグレーション性を兼ね備えつつ、オフセット印刷機の印刷速度においても優れた硬化性を有する紫外線硬化型コーティングニス組成物の印刷方法を提供することにある。
【解決手段】 光重合開始剤組成物、重合性アクリレートモノマー、及び重合基を有する樹脂オリゴマーを含有する紫外線硬化型コーティングニス組成物の印刷方法であって、前記光重合開始剤組成物が、数平均分子量320以上1300以下であるα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤であり、かつ照射される紫外線の積算光量が20〜200mJ/cm
光重合開始剤組成物、重合性アクリレートモノマー、及び重合基を有する樹脂オリゴマーを含有する紫外線硬化型コーティングニス組成物の印刷方法であって、前記光重合開始剤組成物が、数平均分子量320以上1300以下であるα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤であり、かつ照射される紫外線の積算光量が20〜200mJ/cm2の範囲において良好に硬化し、オフセット印刷機に備えられたインラインコーターユニットにより塗工されることを特徴とする紫外線硬化型コーティングニス組成物の印刷方法。
前記光重合開始剤組成物が、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2-ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン)、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ〕フェニル}−2−メチルプロパノンからなる群から選ばれる1つ以上である請求項1に記載の紫外線硬化型コーティングニス組成物の印刷方法。
前記光重合開始剤組成物が全量の4〜25重量%、重合性アクリレートモノマーが全量の30〜85重量%、重合基を有する樹脂オリゴマーが全量の10〜50重量%である請求項1又は2に記載の紫外線硬化型コーティングニス組成物の印刷方法。
更に、数平均分子量400以上1500以下であり、波長250〜450nmにおける極大吸収を280〜340nmの範囲に有する芳香族3級アミン化合物を、全量の1〜8重量%含有する請求項1〜3の何れか1つに記載の紫外線硬化型コーティングニス組成物の印刷方法。
光重合開始剤組成物、重合性アクリレートモノマー、及び重合基を有する樹脂オリゴマーを含有する紫外線硬化型コーティングニス組成物であって、前記光重合開始剤組成物が、数平均分子量320以上1300以下であるα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤であることを特徴とする紫外線硬化型コーティングニス組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、数平均分子量320以上1300以下であるα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤、重合性アクリレートモノマー、及び重合基を有する樹脂オリゴマーの全てを適量含有した紫外線硬化型コーティングニス組成物をオフセット印刷機に供えられたインラインコーターユニットによって塗工することで目的とする本発明の効果を奏するものである。
【0015】
本発明のここで述べる紫外線硬化型コーティングニス印刷物の印刷方法で使用する光重合開始剤組成物は、数平均分子量320以上1300以下であるα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤である。
【0016】
前記α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤について、数平均分子量320を下回ると、内包物への光重合開始剤成分移行の移行に伴うマイグレーション量が増加する傾向にあり、数平均分子量1300を超えると、光重合開始剤の結晶化に伴う再析出による保存安定性低下、印刷後の塗膜硬化性の低下に繋がる。また上記開始剤成分をエステル化等の手法により多価アルコール類や脂肪酸類等の共役二重結合を有さない成分を化学的に結合させることによって、数平均分子量1300を超えても溶解性に優れる化合物を提供することも技術的には可能であるが、これら数平均分子量1300を超える誘導体は化合物中における開始剤の実効成分濃度(紫外線吸収能を有する共役二重結合の割合)が低下することから十分な硬化性を得ることが困難である。
【0017】
着色系インキで優れた低マイグレーション性を示す、数平均分子量320以上1300以下であるα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンー1(数平均分子量:366.5)、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(数平均分子量:380.5)や、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(数平均分子量418.5)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド(数平均分子量348.0)は、硬化反応による硬化皮膜の変色(黄変)、光安定性の低下があるため無色透明系のコーティングニスでの使用は好ましくない。
【0018】
前記した数平均分子量320以上1300以下であるα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2-ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(数平均分子量:340.4)、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン)(数平均分子量:424.57)、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ〕フェニル}−2−メチルプロパノン(数平均分子量:342.39)等があげられ、これらはどれか1つ以上含まれればよく、複数組み合わせて用いてもよい。同じα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(数平均分子量:204.3)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(数平均分子量:164.2)等はこれらに含まれない。また無色透明系コーティングニスにおいては2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(数平均分子量256.3)が広範囲で使用されるが、低マイグレーション性が劣るため使用は好ましくない。
【0019】
前記α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤のコーティングニス組成物中の含有率は、コーティングニス中の不揮発分100重量%に対し4〜25重量%の範囲にあることが好ましい。4重量%未満の添加量では良好な硬化性を得ることが困難であり、また25重量%を超える添加量では、開始剤量が過剰となり、保存安定性の低下(開始剤成分の析出)や低マイグレーション性能の低下をもたらすことから好ましくない。
【0020】
前記α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤の他、特許第2514804号に記載される、開始剤分子に重合性基を導入したフェニルケトン系組成物群もコーティングニス硬化性と低マイグレーション性を付与する目的で利用できる。例えば具体的には、この組成物群のうち4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンが「ダロキュアZLI3331」の名称で過去にメルク社(現BASF社)より販売されており、本発明において利用することができる。またα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤を高分子量化し重合性基を導入した組成物(数平均分子量約1100)が「イルガキュアLEX201」の名称でBASF社より販売されており、低マイグレーション性能に優れており同様に本発明において好適に利用することができる。
【0021】
食品包装用コーティングニスに用いる光重合開始剤自体の安全性、毒性の有無に関して具体例を上げると、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノプロパン−1−オンであるIRGACURE907(BASF社製)は極めて優れた硬化性を有し、紫外線硬化型組成物において特に広範に使用されているが、生殖毒性の高懸念物質であることから(GHS分類:生殖毒性区分1B(生殖能力)および1B(胎児))、これに依存する事なく、なお且つ低マイグレーション性、低臭気、光安定性、優れた硬化性等、コーティングニスに必要とされるより高い要求特性を満足させ、且つオフセット印刷機に備えられたコーターユニットにより印刷可能としたのが本発明である。
【0022】
更に光重合開始剤の例として、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドであるDAROCURE TPO(BASF社製)は優れた内部硬化性能を有し、同様に広範に使用されているが、安全性面では旧第二種監視化学物質として公示され、長期毒性の疑いがあることから、これに依存する事なく、なお且つ低マイグレーション性、低臭気、光安定性、優れた硬化性、オフセット印刷機に備えられたコーターユニットで印刷可能なコーティングニスに必要とされるより高い要求特性を満足させたのが本発明である。
【0023】
本発明の印刷方法に使用する紫外線硬化型コーティングニス組成物の必須成分である重合性アクリレートモノマーは、後述の例に示されるが、紫外線硬化型コーティングニス中の不揮発分100重量%に対して、30〜85重量%含有し、更に好ましくは40〜70重量%である。
【0024】
本発明の印刷方法に使用する紫外線硬化型コーティングニス組成物に低マイグレーション性能を発現させる点においては、より反応性の高い2官能以上のアクリレートモノマーを用いることが好ましいが、用途に応じて印刷基材への接着性、硬化塗膜の柔軟性等の必要物性を得る為に、適宜単官能アクリレートモノマーを単独もしくは併用することが可能である。なお本発明の印刷方法においてモノマー成分としてメタクリレートモノマーを適宜併用することも可能であるが、より硬化性の優れるアクリレートモノマーを主モノマーとして用いることが好ましい。
【0025】
前記単官能アクリレートモノマーとしては、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0026】
前記2官能以上のアクリレートモノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、2−ブチルー2−エチルー1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等の2価アルコールのジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールのポリアクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリアクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに2モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレート、グリセリン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリアクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリアクリレート、ビスフェノールA1モルに2モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリアクリレート等が挙げられる。
【0027】
本発明の印刷方法に用いる紫外線硬化型コーティングニス組成物に更に良好な硬化性および低マイグレーション性能を発現させる目的として、前記アクリレートモノマーのうち、4官能以上のアクリレートモノマーを併用することが可能であり、例としてジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等をあげることができ、これらは単独でも複数組合せて用いてもよい。中でもジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートは組成物の硬化性を大きく向上させる点において好ましい材料であり、紫外線硬化型コーティングニス中の不揮発分100重量%に対して、5〜30重量%の範囲で用いてもよい。
【0028】
更に、本発明の印刷方法に用いる紫外線硬化型コーティングニス組成物の必須成分として、重合基を有する樹脂オリゴマーが挙げられる。分子中に重合性基を有さない非反応性樹脂類(イナート樹脂)と比較して反応性が高く、より優れた硬化性と低マイグレーション性を付与することが可能である。本発明で述べる重合基を有する樹脂オリゴマーとしては、1分子中に少なくとも1つ以上の重合性基を有するエポキシアクリレート化合物、ウレタンアクリレート化合物、ポリエステルアクリレート化合物等を、単独で使用しても、いずれか1種以上を組合せて使用してもよい。重合基を有する樹脂オリゴマーの使用量は、紫外線硬化型コーティングニス中の不揮発分100重量%に対して、10〜50重量%の範囲にあることが好ましい。使用量が10重量%未満の場合、硬化塗膜の柔軟性を得ることが困難であり、50重量%を超える場合は、一般にこれら重合性樹脂オリゴマー類は高粘度である為に本発明の実施例で述べる組成においてコーティングニスとして好適な粘度を得ることが困難となる。また一方で粘度調整の為に低粘度の低分子モノマー類(一般に単官能及び2官能アクリレートモノマー)を多量併用することで重合性オリゴマーが50重量%を超える割合で添加した場合は、好適な粘度を得ることができたとしても低マイグレーション性が損なわれる。
【0029】
前記重合性基を有する樹脂オリゴマー成分のうち、エポキシアクリレートとは、ポリエポキシドとアクリル酸またはその無水物を反応させて得られるアクリレートである。ポリエポキシドとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等や、ビスフェノール型エポキシ樹脂の芳香環を水素添加したものが挙げられる。エポキシアクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシアクリレートが好ましい。
【0030】
前記ポリエポキシドとしては、1分子中に好ましくは平均2〜5個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましい。前記エポキシ樹脂のなかでもビスフェノール型エポキシ樹脂が硬度と伸度のバランスの優れた硬化塗膜を形成できるため好ましい。また、ポリエポキシドは単独で使用できる他、2種以上を併用することもできる。ポリエポキシドと、アクリル酸との反応は、通常、50℃〜150℃の範囲の温度で、1〜8時間程度、行なわれる。反応の際、好ましくは、触媒が用いられる。触媒としては、具体例としては、トリエチルアミン、ジメチルブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等のアミン類、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩、又は第四級ホスホニウム塩、そのほか、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類や、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等を挙げることができる。
【0031】
上述した重合性基を有する樹脂オリゴマー成分のうち、ウレタンアクリレートとは、分子内にウレタン結合を持つアクリレートである。例えば、水酸基含有アクリレート、ポリイソシアネート、およびポリオールを反応させて得ることができる。尚、目的に応じて、ポリオールを原料に用いず、水酸基含有アクリレートとポリイソシアネートとからなるウレタンアクリレートを使用することも可能である。
【0032】
前記水酸基含有アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシアルキルアクリレート、およびそのエーテル伸長物、ラクトン伸長物等が使用でき、さらには、各種のポリオールについて、その水酸基の一部がアクリレートとなった構造のもの、その他にグリシジルアクリレートの各種カルボン酸エステル等も使用できる。具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルアクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノアクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート、ポリ( エチレングリコール・プロピレングリコール) モノアクリレート、ポリ( プロピレングリコール・テトラメチレングリコール) モノアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン伸長物の他に、グリセロールモノアクリレート、グリセロールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)ジアクリレート等や、グリシジルアクリレートの酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸、脂肪酸等の酸付加物等も使用できる。
【0033】
前記ウレタンアクリレートに使用するポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、環状脂肪族ポリイソシアネート、イソシアヌレート構造をもつポリイソシアネート等が使用できる。具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジオールジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添メチレンジフェニルジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の他に、イソシアヌレート骨格を形成する1,6−ヘキサンジオールジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体等が挙げられる。
【0034】
前記ウレタンアクリレートに使用するポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール等が使用でき、場合によってはポリシロキサンやフルオロオレフィン共重合物等により変性したもの等も使用できる。
【0035】
前記重合性基を有する樹脂オリゴマー成分のうち、ポリエステルアクリレートとは、1分子中に少なくとも2個のアクリロイル基を有する飽和または不飽和ポリエステルアクリレートである。例えば、多塩基酸またはその無水物、ポリオール、アクリル酸またはその無水物をエステル化して得られる。尚、目的に応じて、多塩基酸またはその無水物を用いず、ポリオールとアクリル酸またはその無水物とからなるポリエステルアクリレートを使用することも可能である。この他に、常法により合成されたポリエステルのカルボキシル基と、エポキシ基を有するアクリレートを反応させて得られるポリエステルアクリレートも使用可能である。
【0036】
前記多塩基酸としては、例えば、芳香族多塩基酸、鎖状脂肪族多塩基酸、環状脂肪族多塩基酸等が使用できる。ポリオールとしては、例えば、アルキレンポリオール等が使用できる。
【0037】
前記ポリエステルの原料となるグリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ジメチロールシクロヘキサン、水素化ビスフェノールA、2,4,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール等に代表されるアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等に代表されるポリアルキレングリコール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロムビスフェノールA等に代表される2価フェノールとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドに代表されるアルキレンオキサイドとの付加反応生成物などがある。トリオールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオールなどがある。テトラオール単位としてはペンタエリスリトール、ジグリセロール、1,2,3,4−ブタンテトラオールなどがある。また、グリコール類と酸成分の一部として水酸基又はカルボキシル基を有するポリエチレンテレフタレート等の重縮合物も使用できる。
【0038】
前記二塩基酸(無水物)としては、o−フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラクロルフタル酸、テトラブロモフタル酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,1,2−ドデカン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ハイミッタ酸、ヘット酸などがあり、3塩基酸単位としては、トリメリット酸、アコニット酸、ブタントリカルボン酸、6−カルボキシ−3−メチル−1,2,3,6−ヘキサヒドロフタル酸などがあり、4塩基酸単位としてはピロメリット酸、ブタンテトラカルボン酸などがある。α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロルマレイン酸及びこれらのエステル等が挙げられる。芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸及びこれらのエステル等があり、脂肪族或いは脂環族飽和二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、グルタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びこれらのエステル等があり、それぞれ単独或いは併用して使用される。
【0039】
モノエポキシ化合物としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、スチレンオキサイド、フェニルダリシジルエーテルなどが挙げられる。また、ポリエポキシ化合物としては、いわゆるジエポキシ化合物を好適に使用することができ、例えば日刊工業新聞社発行プラスチック材料講座1「エポキシ樹脂」(昭和11年5月10日発行、縞本邦之編著)第19頁〜第48頁に記載されたエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0040】
更に本発明の印刷方法に用いる紫外線硬化型コーティングニス組成物では、硬化性を更に向上させるための手段として、増感剤として数平均分子量400以上1500以下であり波長250〜450nmにおける極大吸収を280〜340nmの範囲に有する芳香族3級アミン化合物を添加してもよい。中でもアルキルアミノベンゾエート化合物である2官能アミン誘導体のポリ(エチレングリコール)ビスジメチルアミノベンゾエート(数平均分子量488〜532)、4官能アミン誘導体のポリ(エチレングリコール)ビスジメチルアミノベンゾエート(数平均分子量860)は比較的分子量が高くマイグレーションし難い点において好ましい。同じアルキルアミノベンゾエート化合物であるエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート(数平均分子量193.2)、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート(数平均分子量193.2)、2−エチルヘキシル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート(数平均分子量277.4)、等はこれらに含まれない。アルキルアミノベンゾエート以外の芳香族3級アミンとしてはアルキルアミノベンゾフェノン化合物があり、中でも4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(数平均分子量324.47)は硬化性に優れ低マイグレーション性を示すが波長250〜450nmにおける極大吸収波長が365nmと高く硬化反応による硬化皮膜の変色(黄変)が激しいためコーティングニスのような色材を含まない無色透明系組成物での使用は好ましくない。
【0041】
前記した芳香族3級アミン化合物の紫外線硬化型コーティングニス組成物中の含有率は、紫外線硬化型コーティングニス中の不揮発分100重量%に対して、1〜8重量%の範囲にあることが好ましい。1重量%未満の添加量では硬化速度の更なる向上が得られない点で望ましくなく、また8重量%を超えて添加しても、使用しただけの効果が認められず好ましくない。
【0042】
また無色透明系コーティングニスにおいては、水素引き抜き型光重合開始剤であるベンゾフェノン(数平均分子量182.22)、4−メチルベンゾフェノン(数平均分子量196.24)、O−メチルベンゾイルベンゾエート(数平均分子量240.25)等が広範に使用されるが低マイグレーション性が劣るため使用は好ましくない。
【0043】
〔粘度の記述:水性接着剤特許より抜粋する〕
また本発明の印刷方法に用いる紫外線硬化型コーティングニス組成物の溶液粘度範囲は、ザーンカップ粘度計No.4を用いた液温25℃における秒数が10秒〜80秒の範囲にあることが好ましく、20秒〜50秒の範囲にあることがより好ましく、例えばインクジェット印刷で用いられる組成物と比較して高粘度である。本発明の印刷方法に用いる紫外線硬化型コーティングニス組成物の粘度が10秒未満の場合はすなわち高粘度成分である樹脂オリゴマーが十分な量使用できず硬化塗膜の柔軟性や機械的物性が得られない。また粘度が80秒を超える場合は良好な塗工適性が得られず均一なコーティングニス塗膜を得ることが困難となる。コーティングニスはニス供給タンクに温度調節機能を有するヒーター装置等を設置することで、コーター内へ供給するコーティングニスの液温を適宜室温〜60℃の範囲で調整してもよく、最適な塗膜表面状態を得るべく液温を変更するものであるが、この場合においても紫外線硬化型コーティングニス組成物の粘度は上述の範囲に収まることが好ましい。また本発明の印刷方法に用いる紫外線硬化型コーティングニス組成物は実質的に有機溶剤等の揮発性成分を含有しないことを特徴としており、揮発成分を含まない組成物の状態にあって上述の粘度範囲に収まることが好ましい。
【0044】
本発明の印刷方法で使用する印刷基材としては特に限定は無く、例えばカタログ、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等の印刷に用いられる上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、ナイロン、ポリ乳酸、ポリカーボネート等のフィルム又はシート、セロファン、アルミニウムフォイル、その他従来から印刷基材として使用されている各種基材を挙げることが出来る。
【0045】
本発明の印刷方法で述べる紫外線硬化型コーティングニス組成物は、オフセット印刷機に備えられたインラインコーターユニットにより印刷物に塗工されることを特徴としており、印刷基材上、および印刷基材表面にオフセット印刷により印刷されたオフセットインキ組成物上に塗工され、下刷りオフセットインキの有無に関わらず良好な硬化性および低マイグレーション性を得ることが可能である。
【0046】
オフセット印刷機は多数の印刷機メーカーによって製造販売されており、一例としてハイデルベルグ社、小森コーポレーション社、三菱重工印刷紙工機械社、マンローランド社、リョービ社、KBA社等を挙げることができ、またシート形態の印刷用紙を用いる枚葉オフセット印刷機、リール形態の印刷用紙を用いるオフセット輪転印刷機、いずれの用紙供給方式においても本発明を好適に利用することが可能である。更に具体的には、ハイデルベルグ社製スピードマスターシリーズ、小森コーポレーション社製リスロンシリーズ、三菱重工印刷紙工機械社製ダイヤモンドシリーズ等のオフセット印刷機を挙げることができ、本発明で述べる紫外線硬化型コーティングニス組成物はこれらオフセット印刷機に供えられたインラインコーターユニットで好適に塗工され、良好な硬化性、低黄変、光安定性および低マイグレーション性を提供することができる。
【0047】
本発明の印刷方法で使用する紫外線硬化型コーティングニス組成物と組み合わせて用いられる下刷りオフセットインキとしては、一般に製造販売されている公知公用の紫外線硬化型オフセットインキや酸化重合型オフセットインキ、熱乾燥型(ヒートセット)オフセットインキ、浸透乾燥型オフセットインキ等を利用することが可能であるが、より優れた硬化性や光沢が得られる点において紫外線硬化型オフセットインキを選択することがより好ましく、紫外線硬化型オフセットインキの例としてダイキュアアビリオインキシリーズ(DICグラフィックス社製)等を挙げることができる。
【0048】
前記オフセット印刷機に備え付けられたインラインコーターユニットによるニスの塗工方式は、ロールコーター方式およびチャンバーコーター方式が広範に利用され、本発明の印刷方法で述べる紫外線硬化型コーティングニス組成物はどちらの方式においても好適に使用することが可能であるが、コーティングニスの塗布量をより厳密にコントロール出来る点においてチャンバーコーターがより好ましい。チャンバーコーターはアニロックスロール表面に均一に刻まれた細孔(セル)内部にコーティングニスを供給し、アニロックスロール上をドクターでかきとることによってニス量を均一化できる機構を有しており、ニス量を変更する場合にはセル容積の異なるアニロックスロールを用いる(
図1参照)。
【0049】
印刷基材および印刷物に塗布する本発明の印刷方法で使用する紫外線硬化型コーティングニス組成物の最適塗布厚みは、紫外線照射前のウェット状態で1〜8マイクロメートルの範囲にあることが好ましく、2〜6マイクロメートルの範囲にあることがより好ましい。ニスの塗布厚みが1マイクロメートル未満の場合は良好な光沢が得られず、8マイクロメートルを超える場合はニス表面のムラ(泳ぎ)が発生しやすくなり、また紫外線照射ランプより与えられる紫外線エネルギーがニス層で多く消費されることより、下地に紫外線硬化型オフセットインキを使用する場合は、インキ層の硬化不良が発生しやすくなることから好ましくない。
【0050】
本発明の印刷方法で使用する紫外線硬化型コーティングニス組成物の製造は、従来の紫外線硬化型コーティングニスと同様に、前記重合性アクリレートモノマー、重合基を有する樹脂オリゴマー、光重合開始剤、増感剤、その他添加剤等を配合してミキサー等で撹拌混合することで製造される。
【実施例】
【0051】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0052】
〔コーティングニス組成物の製造方法〕
表1〜表5の組成に従って、実施例1〜11および比較例1〜9の紫外線硬化型コーティングニスをミキサーにて分散混合せしめることによって得た。
尚、レベリング剤としてポリエーテルで修飾したポリシロキサンであるTEGO GLIDE 450(エボニック社製)0.5重量%を、ワックスとしてポリオレフィンワックスであるS381−N1(シャムロック社製)0.2重量%を、蛍光増白剤としてユビテックスOB(BASF社製)0.1重量%を、全ての実施例および比較例に共通に添加した。
【0053】
〔印刷物の製造方法〕
かくして得た紫外線硬化型コーティングニス組成物を、簡易展色機(RIテスター、豊栄精工社製)を用い、コーティングニス0.40mlを使用して、RIテスターのゴムロール及び金属ロール上に均一に引き伸ばし、ミルクカートン紙(ポリエチレンラミネート紙、テトラ・レックス、テトラパック社製)の表面に約220cm
2の面積範囲に均一に塗布されるように展色し、印刷物を作製した。この条件におけるコーティングニスの塗布厚みは約3.5マイクロメートルであった。なおRIテスターとは、紙やフィルムにインキやコーティングニスを展色する試験機であり、インキやコーティングニスの転移量や印圧を調整することが可能である。
【0054】
〔UVランプ光源による硬化方法〕
コーティングニス塗布後の印刷物にUV照射を行い、コーティングニス皮膜を硬化させた。水冷メタルハライドランプ(出力80W/cm1灯)およびベルトコンベアを搭載したUV照射装置(アイグラフィックス社製、コールドミラー付属)を使用し、印刷物をコンベア上に載せ、ランプ直下(照射距離11cm)を以下に述べる所定条件で通過させた。各条件における紫外線照射量は紫外線積算光量系(ウシオ電機社製UNIMETER UIT−150−A/受光機UVD−C365)を用いて測定した。
【0055】
〔コーティングニス組成物の評価方法1:硬化性〕
硬化性は、照射直後に紙擦り法にて印刷物表面の傷付きの有無を確認した。前記UV照射装置のコンベア速度(m/分)を変化させながら印刷物に紫外線を照射し、照射直後にニス硬化塗膜の表面にコート紙(王子製紙社製「OKトップコートプラス57.5kg、A判」)を重ね、硬化塗膜表面にコート紙を力強く擦りつけた際に傷付きが無い最速のコンベア速度を記載した。従ってコンベア速度が速いほどコーティングニスの硬化性が良好である。
【0056】
〔コーティングニス組成物の評価方法2:光安定性〕
作成したコーティングニスを20g準備し、直径5センチメートルのガラス製シャーレに入れ蓋をせず上部を解放した状態で、蛍光灯(パナソニック製、3波長型昼白色、Hf蛍光灯、FHF32EX−N−H)から30cmの直下に静置し5分後にコーティングニスが硬化しているかどうか目視および触診で確認し、次の3段階で評価した。本評価項目において硬化が確認できる組成では印刷機コーターユニット上でのコーティングニスの皮張り、コーティングニスの粘度上昇が発生し印刷適性面での不良が発現し易くなる。
○:全く硬化しない。
△:若干の硬化が確認できる。
×:硬化が確認できる。
【0057】
〔コーティングニス組成物の評価方法3:開始剤溶解性〕
作成したコーティングニスを冷蔵庫内(4℃)にて1週間保管し、その後コーティングニス中の光重合開始剤の溶解性低下に伴う析出の状態を目視で確認し、次の3段階で評価した。光重合開始剤が析出し結晶化した場合、ニス溶液に結晶生成に伴う濁りや沈殿物の発生が確認される。本評価項目において析出の発生する組成では、冬場等、低温環境下においては十分な製品性能を発揮することが出来ない。
○:析出は見られない。
△:ごく僅かに析出が確認できる。
×:析出が確認できる。
【0058】
〔印刷物の評価方法1:黄変性〕
紫外線照射直後におけるニス硬化皮膜の変色(黄変)に起因する色変化を確認し次の3段階で評価した。
○:色変化が全く無い、もしくは殆ど無い。
△:若干の黄変が確認できる。
×:明確に黄変による色変化が確認できる。
【0059】
〔印刷物の評価方法2:低マイグレーション性〕
低マイグレーション性の評価に関しては、基本的な評価手順は欧州印刷インキ評議会であるEuPIA(European Printing Ink Association)のガイドライン(EuPIA Guideline on Printing Inks、applied to the non−food contact surface of food packaging materials and articles、November 2011(Replaces the September 2009 version))に準拠した。
先ず前記印刷物はコンベア速度40m/min.で2回UV照射することによりコーティングニス層を硬化させた。本条件における紫外線積算光量は約100mJ/cm
2であった。続いて印刷物上面の硬化コーティングニス層にミルクカートン白紙(以後、コーティングニスが展色されていない非印刷状態のミルクカートン紙をミルクカートン白紙と呼ぶ)の裏面が接するよう重ね合わせ、油圧プレス機を用いてプレス圧力40kg/cm
2、室温25℃雰囲気下で48時間加圧することで、硬化コーティングニス層中の未反応成分をミルクカートン白紙の裏面に移行(マイグレーション)させた(
図2及び3参照)。プレス後にミルクカートン白紙を取り外して成形し、1000ml容積の液体容器を作製した。この液体容器においてコーティングニス成分の移行した裏面は内側に面している。次に擬似液体食品として用意したエタノール水溶液(エタノール95重量%と純水5重量%の混合溶液)1000mlを液体容器に注ぎ密閉した。なお、本条件においてエタノール水溶液1000mlと接触する液体容器内面の総面積はおよそ600cm
2であった。密閉した液体容器を室温25℃雰囲気下で24時間静置し、ミルクカートン白紙裏面に移行したコーティングニス成分をエタノール水溶液中に抽出した。この後液体容器からエタノール水溶液を取り出し、液体クロマトグラフ質量分析にて使用した開始剤の同定及び各々の溶出濃度(マイグレーション濃度)を定量し、各開始剤成分のマイグレーション濃度の合計値から、3段階でマイグレーション性能を評価した。例として、開始剤A、B、C3種を使用した紫外線硬化型コーティングニスを用いた印刷物においては、開始剤Aのマイグレーション濃度が10ppb、開始剤Bのマイグレーション濃度が5ppb、開始剤Cのマイグレーション濃度が15ppbであった場合、開始剤成分のマイグレーション濃度の合計値は、A+B+C=10+5+15=30ppbと評価される。なお液体クロマトグラフ質量分析の定量に際しては、使用する全開始剤について各々上記エタノール水溶液を用いた検量線を予め作成し、これを用いることで算出した。
○:30ppb未満。
△:30ppb以上〜60ppb未満。
×:60ppb以上。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
表1〜5中の数値は重量%である。
表1〜5に示す諸原料及び略を以下に示す。
・KIP150:オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン)、数平均分子量424.57、 Lamberti社製
・Irgacure127:2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2-ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、数平均分子量340.4、BASF社製
・KIP160:2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ〕フェニル}−2−メチルプロパノン、数平均分子量342.39、 Lamberti社製
・Esacure One:オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン)、数平均分子量424.57、Lamberti社製
・Irgacure369:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、数平均分子量366.5、 BASF社製
・Irgacure819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、数平均分子量418.5、BASF社製
・DAROCURE TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、数平均分子量348.0、BASF社製
・Irgacure184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、
数平均分子量204.3、 BASF社製
・Irgacure651:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、数平均分子量256.3、 BASF社製
・アロニックスM−400:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(製品中のペンタアクリレートの割合:40〜50重量%)、東亞合成社製
・SR494NS:エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、サートマー社製
・MIRAMER M−220:トリプロピレングリコールジアクリレート、MIWON社製
・MIRAMER M−284:ポリエチレングリコール分子量300(PEG300)ジアクリレート、MIWON社製
・DICLITE UE−8200T:ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート(重合性基を有するエポキシアクリレート)、DIC社製
・UNIDIC V3212:非反応性ポリエステル樹脂40重量%と、DPHA(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)30重量%と、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート30重量%の混合物、DIC社製
・GENOPOL AB1:ポリ(エチレングリコール)ビスジメチルアミノベンゾエート、数平均分子量860、RAHN AG社製
・Omnipol ASA:ポリ(エチレングリコール)ビスジメチルアミノベンゾエート、数平均分子量488〜532、IGM社製
・EAB―SS:4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、数平均分子量324.47、大同化成工業社製
・LUNACUR EDB:エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、数平均分子量193.24、EUTEC CHEMICAL社製
・DAROCUR EHA:2−エチルヘキシル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、数平均分子量277.4、BASF社製
【0066】
(数平均分子量の測定)
尚、本発明におけるGPCによる数平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMH
HR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
【0067】
実施例に述べる紫外線硬化型コーティングニス組成物による印刷方法では、紫外線照射により良好な硬化性が得られた。また各原材料を前記の重量%の範囲で配合することにより、本願発明の必要特性である印刷機上における光安定性、開始剤溶解性、内包物へのマイグレーションの低減、といった評価項目において良好な結果となった。
【0068】
比較例の結果においては、α−ヒドロキシケトン系以外の開始剤では分子量320以上であっても光安定性、開始剤溶解性、黄変性に問題があり、また分子量320未満の開始剤は低マイグレーション性が劣る結果であった。また増感剤についても極大吸収波長が高いアルキルアミノベンゾフェノンは黄変性の問題があり、分子量400未満のものは低マイグレーション性が劣る結果であった。また重合性の樹脂オリゴマーを用いずに非反応性樹脂を用いた場合は硬化性および低マイグレーション性が劣る結果であった。
なお比較例1および2の結果については、開始剤溶解性が特に劣り製造直後から室温においても開始剤が析出してしまったことから、硬化性や低マイグレーション性の評価を行うことが出来なかった。