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特開2015-62028アフィニティークロマトグラフィーのための媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-62028(P2015-62028A)
(43)【公開日】2015年4月2日
(54)【発明の名称】アフィニティークロマトグラフィーのための媒体
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20150306BHJP
   G01N 30/32 20060101ALI20150306BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20150306BHJP
【FI】
   G01N30/88 201R
   G01N30/88 201G
   G01N30/88 101K
   G01N30/32 A
   G01N30/88 J
   G01N30/26 A
   G01N30/88 201Y
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-238453(P2014-238453)
(22)【出願日】2014年11月26日
(62)【分割の表示】特願2013-149417(P2013-149417)の分割
【原出願日】2008年7月9日
(31)【優先権主張番号】60/958,912
(32)【優先日】2007年7月10日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナーニン・ピアン
(72)【発明者】
【氏名】センデイル・ラーマスワルミ
(72)【発明者】
【氏名】ニール・ソイス
(72)【発明者】
【氏名】チエン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン・ウオン
(57)【要約】
【課題】大量の生産タンパク質の結合および精製にとって十分な容量を有するクロマトグラフィー材料を作り出す必要性がある。
【解決手段】本発明は一般に、クロマトグラフィー用の固相担体に関する。特定の実施形態において、本発明は、アフィニティークロマトグラフィーに適した固相担体を、同固相担体を使用する方法、システムおよびキットと共に提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
630Åより大きく1000Åより小さい細孔径および55μmより大きく70μmより小さい平均シリカ粒径を有するシリカ粒子を含む、アフィニティークロマトグラフィーの実施に適した固相担体。
【請求項2】
シリカ粒子がビードである、請求項1に記載の固相担体。
【請求項3】
シリカ粒子が、782Åから932Åの範囲の細孔径を有する、請求項1に記載の固相担体。
【請求項4】
シリカ粒子が、55μmから67μmの範囲の平均粒径を有する、請求項1に記載の固相担体。
【請求項5】
シリカ粒子が、粒状ガラス、調節された細孔ガラス、コロイド状シリカ、ケイ灰石、乾燥シリカゲルおよびベントナイトから選択される材料からなる、請求項1に記載の固相担体。
【請求項6】
固相担体に結合したアフィニティーリガンドをさらに含む、請求項1に記載の固相担体。
【請求項7】
アフィニティーリガンド密度が10g/Lより大きい、請求項6に記載の固相担体。
【請求項8】
標的分子に対するアフィニティーリガンドの動的容量が49g/Lに等しいまたはそれより大きい、請求項6に記載の固相担体。
【請求項9】
アフィニティーリガンドが、免疫グロブリンの一部と特異的に結合する、請求項6に記載の固相担体。
【請求項10】
アフィニティーリガンドが、免疫グロブリンのFc領域の一部と結合する、請求項9に記載の固相担体。
【請求項11】
アフィニティーリガンドが、プロテインA、プロテインGまたはいずれかの機能性変異体から選択される、請求項9に記載の固相担体。
【請求項12】
約839Åの孔径、63μmの平均粒径およびビードに結合したプロテインAまたはこの機能性変異体を含むアフィニティーリガンドを含む調節された細孔ガラスビード。
【請求項13】
約700Åの孔径、55μm±13μmの平均粒径およびビードに結合したプロテインAまたはこの機能性変異体を含むアフィニティーリガンドを含む調節された細孔ガラスビード。
【請求項14】
(a)標的分子を含む混合物をアフィニティークロマトグラフィーマトリックス[このマトリックスは、(1)630Åより大きく1000Åより小さい細孔径および55μmより大きく70μmより小さい平均粒径を有するシリカ粒子を含む固相担体および(2)固相担体に結合した標的分子に対して特異性を有するアフィニティーリガンドを含む。]に接触させる段階、および
(b)アフィニティークロマトグラフィーマトリックスから標的分子を溶出する段階
を含む標的分子を分離する方法。
【請求項15】
アフィニティークロマトグラフィーマトリックスがハウジング内に収容され、接触させる段階が、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスの上に、600cm/時間から900cm/時間の範囲の最大流速で標的分子を含む混合物を流す段階を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
標的分子が、免疫グロブリンの少なくとも一部を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
標的分子が、単クローン抗体または多クローン抗体を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
標的分子が、免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部を含む融合タンパク質を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
アフィニティーリガンドが、プロテインAまたはこの機能性変異体を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
アフィニティーリガンドが、10g/Lまたはそれ以上の密度にてシリカ粒子に結合している、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
標的分子が、酸性pHを有するバッファによりアフィニティークロマトグラフィーマトリックスから溶出される、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
アフィニティークロマトグラフィーマトリックスが、標的分子について少なくとも45g/リットルの動的結合容量を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
630Åより大きく1000Åより小さい細孔径および55μmより大きく70μmより小さい平均粒径を有するシリカ粒子を含むアフィニティークロマトグラフィー固相担体並びに少なくとも1つの容器を備えるキット。
【請求項24】
固相担体との結合に適したアフィニティーリガンドをさらに含む、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
アフィニティークロマトグラフィー固相担体の充填に適したカラムをさらに含む、請求項23に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にクロマトグラフィーの分野に関する。ある特定の実施形態において、本発明は、クロマトグラフィーで使用するための固相担体、例えば、アフィニティークロマトグラフィー用媒体をおよび同固相担体を使用する方法およびキットならびにクロマトグラフィープロセスを実施するためのシステムを提供する。
【背景技術】
【0002】
アフィニティークロマトグラフィーは、単クローン抗体(Mab)を含めたタンパク質の研究、開発および製造において重要な役割を担っている。アフィニティークロマトグラフィー媒体は一般的に、標的分子と相互作用することができる結合リガンドを有する固相担体を含む。アフィニティークロマトグラフィーは、固相担体上に配置されたビードなどのリガンドが通常標的分子に対して選択的であるため、有用である。この選択性により、優れた収率および標的分子の高速で経済的な精製が可能となる。単クローン抗体を含めた免疫グロブリン(例えば、IgG)について、プロテインAは、大部分のサブクラスと結合する選択的アフィニティーリガンドである。Boyle,M.D.PおよびReis,K.J.,1987,Biotechnology,5:697。プロテインGは、IgGについての別のアフィニティーリガンドである。Hermanson,G.T.;Mallia,A.K.;Smith,P.K.Immobilised Affinity Ligand Techniques,Academic Press,1992。
【0003】
プロテインAおよびプロテインGの両方とも1以上のIgGと結合することができる。これらは共に、樹脂、膜または他の媒体などの多孔質クロマトグラフィ担体上に一旦固定されると、多クローンIgGまたは単クローン抗体(Mab)の精製および商業生産に有用である。
【0004】
プロテインAは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)から天然型で分離することができる。ProSep vA−HCおよびn−Protein A Sepharose Fast Flowなどの現在市販されているプロテインA媒体製品は、黄色ブドウ球菌から得られたプロテインA(天然またはn−Protein A)が使用されている。ProSep−rAおよびMabSelect(登録商標)などの他の市販のアフィニティー媒体製品は、大腸菌(E.coli)(組み換え型またはr−Protein A)において組み換えにより製造されるプロテインAが採用されている。例えば、米国特許第5,151,350号を参照のこと。他の修飾組み換え型のプロテインAについても記載されている。例えば、米国特許第5,084,559号、米国特許第6,399,750号、米国特許出願公開第2005/0143566号を参照のこと。システイン残基を含むプロテインAリガンドも知られている。米国特許第5,084,559号、米国特許第6,399,750号。システインアミノ酸の添加により、ベースマトリックスまたは樹脂へのリガンド結合が促進される。プロテインAのBドメインに対する修飾についても記載されている。米国特許出願公開第2005/0143566号。
【0005】
アフィニティークロマトグラフィー媒体の性能を決定し得るいくつかのパラメーターがある。選択性、有効物質移動、結合容量および充填層の透過率はすべて、所望の分離に影響を及ぼす媒体の実用性の決定において役割を担う。樹脂の選択性は、リガンドおよびその特性による。性能特性の多くは、ベースマトリックス特性の組合せおよび相互作用、リガンド結合に使用する化学修飾のタイプおよびリガンドの特性によって決まる。
【0006】
ベースマトリックスは、媒体の加圧流特性の決定において役割を担い、吸着に影響を及ぼすためにその中へ標的分子が拡散しなければならない「有効細孔径」も決定する。合成および天然ポリマーについて、多くの場合、材料の細孔径と観測された剛性との間に関係がある。通常、細孔径が大きくなればなるほど、材料の剛性はより小さくなる。このことは、アガロースなどのヒドロゲルに特に当てはまる。非修飾アガロースで作製された材料は非常に剛性に乏しく、架橋結合による化学修飾を行って初めて所望の剛性が得られる。米国特許第4,973,683号。これらの課題を克服しようと試みるために、さらなる化学架橋が開発され、これにより適切な加圧流特性を有する粒子が提供される。例えば、米国特許第6,602,990号、GE Healthcare Catalog 2007を参照のこと。しかしながら、これらの材料は依然として圧縮性で、これにより動作流速が制限され、さらに圧力が通常<2バールに制限され、従って生産性およびエンドユーザーが利用可能な動作ウインドウが制限される。アガロースまたは修飾アガロースを用いて作製された市販のプロテインAアフィニティー媒体としては、Protein A Sepharose Fast Flow(登録商標)、r−Protein A Sepharose Fast Flow(登録商標)、Mabselect(登録商標)およびMabselect Xtra(登録商標)が挙げられる。米国特許出願公開第2006/0134805号。Mabselect Xtra(登録商標)は、アガロース担体について細孔径、粒径およびリガンド密度が調整されている修飾アガロースの別の形態である。GE Healthcare Catalog 2007。
【0007】
シリカをベースとする固相担体は、アガロース担体に伴う欠点の多くが問題とならない。シリカ(例えば、ガラス)またはセラミックを含む固相担体を用いる1つの利点は、本質的に非圧縮性であることである。これにより、媒体の機械的特性からの媒体細孔径の切り離しが可能となる。媒体の機械的特性、例えば圧縮性により、最大加圧流性能がほぼ決まる。従って、シリカをベースとする固相単体は基本的に、切り離された細孔径および加圧流特性を有し、これにより一方の特性を他方に影響を及ぼすことなく変更することができる。多孔質シリカに基づくアフィニティー媒体、特に調節された細孔ガラス(CPG)は、容量が大きく加圧流特性が適切であるため、商業的実用性が見出されている。McCue,J.et.al.,2003,Journal of Chromatography,989:139。これまでは、1000Åおよび700Åの細孔径および56μmから100μmの粒径を有する材料が記述されている。McCue,Justin et.al.Presentation,225th ACS National Meeting,New Orleans,LA,United States,March 23−27,2003(2003)。とりわけ、粒径および細孔径が小さいと容量は大きくなったが、容量の改善は減圧流特性の点で付加的であった。従って、特に、タンパク質治療薬および他の生物製剤のための大規模な調製方法の生産能力を考えると、容量の改善の必要性は依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,151,350号明細書
【特許文献2】米国特許第5,084,559号明細書
【特許文献3】米国特許第6,399,750号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0143566号明細書
【特許文献5】米国特許第4,973,683号明細書
【特許文献6】米国特許第6,602,990号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0134805号明細書
【特許文献8】国際公開第90/09237号
【特許文献9】米国特許第5,874,165号明細書
【特許文献10】米国特許第3,932,557号明細書
【特許文献11】米国特許第4,772,635号明細書
【特許文献12】米国特許第4,210,723号明細書
【特許文献13】米国特許第5,250,6123号明細書
【特許文献14】欧州特許出願公開第1352957号明細書
【特許文献15】国際公開第2004/074471号
【特許文献16】米国特許第5,260,373号明細書
【特許文献17】国際公開第95/19374号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Boyle,M.D.PおよびReis,K.J.,1987,Biotechnology,5:697
【非特許文献2】Hermanson,G.T.;Mallia,A.K.;Smith,P.K.Immobilised Affinity Ligand Techniques,Academic Press,1992
【非特許文献3】GE Healthcare Catalog 2007
【非特許文献4】McCue,J.et.al.,2003,Journal of Chromatography,989:139
【非特許文献5】McCue,Justin et.al.Presentation,225th ACS National Meeting,New Orleans,LA,United States,March 23−27,2003(2003)
【非特許文献6】Nilksson et al.(1987)Protein Engineering 1(2):107
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在、単クローン抗体の生産は、バイオリアクター内の哺乳類細胞の発酵により、10,000から20,000リットルの規模で行われている。清澄化の後、これらの量は、通常プロテインAカラムである第1のクロマトグラフィー段階により処理しなければならない。発酵プロセスおよび技術が向上するにつれて、未処理産物中のタイター濃度が継続的に増大し、得られるタイターは1g/L以上となる。これらのより高いタイター発酵バッチは、総生産タンパク質量>20kgをもたらすことができる。総タンパク質/バッチの増大により、プロテインAカラム結合容量についての要求が増大している。従って、これら大量の生産タンパク質の結合および精製にとって十分な容量を有するクロマトグラフィー材料を作り出す必要性がある。本明細書中に記載する本発明の様々な実施形態はこの必要性に応じ、また他の必要性にも同様に応じる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要旨
様々な実施形態において、本発明は、これまでに記載されたアフィニティークロマトグラフィー媒体と比較して、より高い容量、例えば、動的容量およびより高い充填層の透過率を兼ね備えている改善されたアフィニティークロマトグラフィー媒体を提供し、従ってプロセスのスループットが向上し、これによりコストおよび時間が節約され、また他の利益がもたらされる。
【0012】
ある実施形態において、本発明は、630Åより大きく1000Åより小さい細孔径および55μmより大きく、例えば55μmより大きく、70μmより小さい平均粒径を有するシリカ粒子を含む、アフィニティークロマトグラフィーの実施に適した固相担体を提供する。粒径は、以下に記載する光散乱手段によって測定することができるが、粒径を測定する他の方法を使用することもできることは当業者に理解される。この固相担体は、粒径分布が例えば平均で+/−13μmである粒子を含むことができる。この固相担体は、1つ以上のアフィニティーリガンドをさらに含むことができる。
【0013】
他の実施形態において、本発明は、直径≧3.2cmを有するカラムにおける充填層高さが20cmである場合に、破過10%における動的容量(Qd)≧45g/L(グラム/リットル)および流量≧400cm/時間における圧力降下≦2バールを有するアフィニティークロマトグラフィー媒体、例えばシリカを含む固相担体を提供する。このアフィニティークロマトグラフィー媒体は、1つ以上のアフィニティーリガンドをさらに含むことができる。
【0014】
さらに他の実施形態において、本発明は、839Åの細孔径および63μmの平均粒径およびビードに結合したプロテインAまたはこの機能性変異体を含むアフィニティーリガンドを含む調節された調節された細孔ガラスビードを提供する。
【0015】
さらに他の実施形態において、本発明は、700Åの細孔径および55μmの平均粒径(粒径分布+/−13μmを有する。)およびアフィニティーリガンドを含む調製された細孔ガラス粒子、例えばビードを提供する。アフィニティーリガンドは、粒子に結合したプロテインAまたはこの機能性変異体を含むことができる。
【0016】
さらなる実施形態において、本発明は、混合物から標的分子を分離する方法を提供する。この方法は、(a)標的分子を含む混合物をアフィニティークロマトグラフィーマトリックス[このマトリックスは、(1)630Åより大きく1000Åより小さい細孔径および55μmより大きく70μmより小さい平均粒径を有するシリカ粒子を含む固相担体および(2)固相担体に結合した標的分子に対して特異性を有するアフィニティーリガンドを含む。]に接触させる段階、および、(b)アフィニティークロマトグラフィーマトリックスから標的分子を溶出する段階、を含む。
【0017】
さらに他の実施形態において、本発明は、混合物から標的分子を分離する方法を提供する。この方法は、a)標的分子を含む混合物をアフィニティークロマトグラフィーマトリックスに接触させる段階、およびb)アフィニティークロマトグラフィーマトリックスから標的分子を場合により溶出する段階を含み、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、カラムなどのハウジング内に収容され、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスにより充填されたカラムは、少なくとも400cm/時間の最大流速を有し、マトリックスは、1)シリカ粒子および、2)標的分子に対して特異性を有するアフィニティーリガンドを含み、標的分子についてのマトリックスの動的容量は、破過10%で少なくとも45g/リットルである。
【0018】
さらに他の実施形態において、本発明は、混合物から標的分子を分離するためのシステムを提供する。このシステムは、a)アフィニティークロマトグラフィーマトリックス(このマトリックスは、1)630Åより大きく1000Åより小さい細孔径および55μmより大きく70μmより小さい平均粒径を含むシリカ粒子ならびに、2)固相担体に結合した標的分子に対して特異性を有するアフィニティーリガンドを含む固相担体を含む。)、ならびに、b)アフィニティークロマトグラフィーマトリックスを収容するためのハウジングとを備える。このシステムは、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスからの標的分子の溶出を検出するための手段を場合により備えることができる。
【0019】
さらなる実施形態において、本発明は、混合物から標的分子を分離するためのシステムを提供する。このシステムは、a)アフィニティークロマトグラフィーマトリックス(このアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、カラムなどのハウジング内に収容され、このアフィニティークロマトグラフィーマトリックスで充填されたカラムは、少なくとも400cm/時間の最大流速を有し、このマトリックスは、1)シリカ粒子および2)標的分子に対して特異性を有するアフィニティーリガンドを含み、標的分子についてのマトリックスの動的容量は、少なくとも45g/リットルである。)を有する。このシステムは、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスからの標的分子の溶出を検出するための手段を場合により備えることができる。
【0020】
他の実施形態において、本発明は、700Åより大きく1000Åより小さい細孔径および55μmより大きく70μmより小さい平均粒径およびシリカ粒子を含むアフィニティークロマトグラフィーマトリックスと、少なくとも1つの容器とを備えるキットを提供する。
【0021】
さらなる実施形態において、本発明は、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスおよび少なくとも1つの容器とを備えるキットを提供する。このキットにおいて、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、カラムなどのハウジング内に収容され、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスにより充填されたカラムは、少なくとも400cm/時間の最大流速を有し、このマトリックスは、1)シリカ粒子および2)標的分子に対して特異性を有するアフィニティーリガンドとを含み、標的分子についてのマトリックスの動的容量は、少なくとも45g/リットルである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のある実施形態によるアフィニティー媒体についての動的容量および充填層の透過率を示すグラフである。
【0023】
発明の詳細な説明
ある実施形態において、本発明は、改善された動的容量、より短い滞留時間でのより大きい流量を有する大きいクロマトグラフィーマトリックスを提供する。ある実施形態において、本発明は、規定の細孔径および規定の平均粒径を有するシリカ粒子からなる改善されたアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを提供する。この改善されたマトリックスは、例えば、層の高さ20cm、圧力<2バールでカラムにマトリックスを充填した場合、マトリックスを用いて分離することができる標的分子について、例えば30g/Lを超える動的容量の向上、ならびに、例えば400cm/時間を超える最大流速の向上をもたらす。特定の実施形態において、本発明は、破過10%で滞留時間2分における動的容量が49g/Lを超えるアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを提供する。従って、本発明によるアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、タンパク質などの標的分子を混合物から精製するための改善された組成物を提供し、この場合標的分子は、1g/L以上を含めた様々な濃度で存在することができる。
【0024】
定義
ここにおいて使用されるアフィニティーリガンドは、混合物中の非標的分子と比較して、混合物中に見られる標的分子とより大きい親和力で特異的に結合するタンパク質などの分子を指す。アフィニティーリガンドの例としては、プロテインA、プロテインGまたはいずれかの機能性変異体を挙げることができ、この場合標的分子は、免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンのFc領域または免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部からなる分子でよい。適切なアフィニティーリガンドの他の例としては、任意の公知の酵素を挙げることができ、この場合標的分子は酵素の基質となる。または、基質はアフィニティーリガンドとして働くこともでき、この場合基質に対して特異的な酵素が標的分子となる。アフィニティーリガンドのさらに他の例としては、抗体、例えば単クローン抗体、多クローン抗体が挙げられ、この場合標的分子は、抗体の可変領域と結合するエピトープを含む。
【0025】
ここにおいて使用される機能性変異体は、天然アミノ酸配列において少なくとも1つの変性を有するが、天然配列に伴われている少なくとも1つの機能をなお維持しているタンパク質を指す。天然配列には、本来自然に発生するアミノ酸配列が含まれる。アミノ酸の変化としては、1つ以上のアミノ酸の別のアミノ酸への置換、1つ以上のアミノ酸の削除および/または1つ以上のアミノ酸の追加またはこれらのいずれかの組合せを挙げることができる。天然配列に対して行われる追加、削除および置換の組合せのような切り詰めも考えられる。機能性変異体は、タンパク質の断片またはドメインを含むこともできる。一例として、機能性変異体は、その天然配列と比較して変性アミノ酸を少なくとも1つ有するプロテインAの全長分子、全長プロテインA分子の断片、または変異体が天然プロテインAに伴われている少なくとも1つの機能、例えば免疫グロブリンのFc部分と特異的に結合する能力を維持するならば、天然配列と比較して変化したアミノ酸を少なくとも1つ有する全長プロテインA分子の断片を含むことができる。機能性変異体の追加の例には、ドメイン、例えば、プロテインAのA、B、C、DおよびEドメインならびにZドメインまたはプロテインZ(文献(Nilksson et al.(1987)Protein Engineering 1(2):107)に記載されているプロテインAのBドメインの変異体)が含まれる。機能性変異体のアミノ酸配列は、天然アミノ酸配列と少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも98%同一であり得、天然配列に伴われている少なくとも1つの機能をなお維持している。
【0026】
ここにおいて使用されるタンパク質は、アミノ酸のポリマーを含み、特定の長さを必要とする。従って、この定義は、タンパク質、ペプチドおよびポリペプチド、ならびに、例えばグリコシル化またはPEG化を含めたタンパク質に対する任意の発現後の修飾を含むものである。
【0027】
ここにおいて使用されるシリカには、シリカおよびシリカから誘導され得るいずれもの物質(これにはガラスが含まれるがこれに限定されない。)が含まれる。
【0028】
アフィニティークロマトグラフィー媒体
アフィニティークロマトグラフィー媒体は、通常固相担体および固相単体に結合したアフィニティーリガンドを含む。固相担体にアフィニティーリガンドを結合させる方法は、当分野で公知である。例えば、PCT公開WO90/09237、Hermanson et al.1992,Immobilized Affinity Ligand Techniques,Academic Press、米国特許第5,874,165号、第3,932,557号、第4,772,635号、第4,210,723号、第5,250,6123号、欧州特許出願EP1352957A1、WO2004/074471を参照のこと。アフィニティーリガンドは、1つ以上の共有結合によって固相担体と結合することができる。共有結合は、アフィニティーリガンドの1つ以上の化学官能基を、固相担体の1つ以上の化学官能基と反応させることによって形成することができる。求核結合法を、適切な官能基と共に使用することができる。化学官能基の例として、ヒドロキシル基、アミン基、チオール基、カルボニル基等を挙げることができる。または、固相担体の表面の官能基を活性化することもできる。適切な基として、NHSエステル、エポキシドまたはアルデヒドを挙げることができる。アフィニティーリガンドを固相担体に直接結合させることも、または介在リンカー分子を使用してアフィニティーリガンドを固相担体に結合させることもできる。リンカーは、例えば立体障害を克服し、従って標的分子のアフィニティーリガンドへの結合を容易にするために役に立つことができる。適切なリンカーの設計は、十分に当業者の範囲内である。
【0029】
固相担体は、当分野で公知のいずれもの適切な材料で構成することができる。従って固相担体は、いずれもの多孔質材料を含むことができる。一例として、多孔質材料は、膜、ビード、ゲル、カセット、カラム、チップ、スライド、プレートまたはモノリスの形をとることができる。さらに、多孔質材料は、不ぞろいな形の粒子を含むこともできる。多孔質材料は、有機もしくは無機分子、または有機および無機分子の組合せで構成することができ、またアフィニティーリガンドとの反応および/またはアフィニティーリガンドの結合に適した1つ以上の官能基、例えばヒドロキシル基で構成することができる。多孔質材料は、親水性化合物、疎水性化合物、疎油化合物、親油化合物またはこれらの任意の組合せで構成することもできる。
【0030】
ある実施形態において、固相担体(例えば、粒子)は、無機分子などの硬質材料で構成することができる。適切な無機分子として、ケイ質材料を挙げることができる。適切なケイ質材料の例には、粒状ガラス、調節された細孔ガラス、コロイド状シリカ、ケイ灰石、シリカゲルおよびベントナイトが含まれる。固相担体が調節された細孔ガラス粒子で構成されているいくつかの実施形態において、この粒子は700Åを超える細孔径を有することができる。さらなる実施形態において、細孔径は1000Å未満でよい。他の実施形態において、細孔径は、630Åから1175Å、720Åから950Å、782Åから932Å、800Åから932Åの範囲の寸法を有することができる。ある実施形態において、細孔径は839Åでよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、本発明は、シリカ粒子からなる先に記載したアフィニティークロマトグラフィー媒体と比較して、標的分子に対する結合容量(例えば、動的結合容量)が強化されたシリカ粒子からなるアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを提供する。動的結合容量は、関心があるマトリックスの充填層に取り込まれるタンパク質を監視することによって測定することができる。最初は、タンパク質が完全に吸着され、カラムから出る貫流分画中にタンパク質は観測できない。カラムがさらにタンパク質で飽和する(タンパク質容量が利用される)につれて、タンパク質初期濃度の分画が貫流分画中に観測され始めることになる。最終的に、カラムが完全に飽和し、貫流中のタンパク質濃度が、カラムに入る初期タンパク質濃度と等しくなる(タンパク質容量のすべてが利用される)。実際には、貫流中のタンパク質を失うことなくカラムをできる限り充填することが望まれる。従って、貫流分画中の低レベルのタンパク質濃度または「破過」(全タンパク質濃度の1から10%)における動的容量により、使用時の充填容量の代表的測定値がもたらされる。従って、破過1%または10%で異なるアフィニティーマトリックスを比較することにより、エンドユーザーに対して有用な容量の比較が提供される。従って、本発明によるクロマトグラフィーマトリックスは、少なくとも40g/L、少なくとも45g/L、少なくとも50g/L、少なくとも60g/Lの動的結合容量を、標的分子について有することができる。いくつかの実施形態において、動的容量は50g/Lでよい。他の実施形態において、クロマトグラフィー媒体の動的容量が40g/Lから60g/L、40g/Lから50g/L、40g/Lから49g/L、42g/Lから49g/L、41g/Lから47g/L、50から60g/Lの範囲に及ぶことができる。特定の実施形態において、本発明は、破過10%で滞留時間2分における動的容量が49から60g/Lであるアフィニティークロマトグラフィー媒体を提供する。他の実施形態において、本発明は、破過1%で滞留時間2分における動的容量が40から55g/Lであるアフィニティークロマトグラフィー媒体を提供する。
【0032】
シリカ粒子は、用途に応じて適切ないずれの寸法でもよい。この粒子は、55μmを超える平均粒径を有することができる。この粒子は、100μm未満の平均粒径を有することができる。ある実施形態において、平均粒径は55μmから90μm、60μmから80μm、60μmから70μm、55μmから67μmの範囲に及ぶことができる。特定の一実施形態において、平均粒径は63μmである。粒径分布は±30μm、±25μm、±20μm、±13μmでよい。特定の一実施形態において、本発明は±13μmの粒径分布を有する。
【0033】
本発明の実施に際して、関心がある標的分子の特異的結合パートナーであるならば、いずれものアフィニティーリガンドを使用することができる。アフィニティーリガンドは、全長タンパク質であっても、全長タンパク質の機能性変異体であってもよい。アフィニティーリガンドは、全長タンパク質または機能性変異体の単量体、二量体または多量体でよい。タンパク質リガンドの例としては、プロテインA、プロテインG、抗体のFc受容体、ホルモンまたは成長因子に対する受容体を挙げることができる。例えば、米国特許第5,151,350号、第5,084,559号、第5,260,373号、PCT公開番号WO95/19374号を参照のこと。他の実施形態において、タンパク質リガンドは免疫グロブリン、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEまたはこれらの機能性変異体でよい。
【0034】
固相担体に結合するアフィニティーリガンドの量は、用途および標的分子に依存しよう。アフィニティーリガンドは、通常1g/L、5g/L、10g/L、15g/L、20g/Lを超える密度(固相担体1リットル当たりのリガンドのグラム数)で固相担体に結合させられる。リガンド密度は、1g/Lから20g/L、5g/Lから15g/L、10g/Lから15g/L、12g/Lから14g/L、の範囲に及ぶことができる。
【0035】
アフィニティーリガンドは、自然に発生する分子であっても、加工分子であってもよい。ある実施形態において、固相担体への結合もしくは固相担体上のタンパク質リガンドの配向を、または両方を容易にするために、自然に発生するアフィニティーリガンドを遺伝学的に変性することが望ましいであろう。従って、使用する会合する基に応じて、当業者は荷電基もしくは疎水基、または両方をアフィニティーリガンド中に設計することができる。これらの変更は、アフィニティーリガンド内のどこにでも加えることができる。
【0036】
特定の一実施形態において、アフィニティーリガンドはプロテインAまたはこの機能性変異体である。プロテインAまたはこの機能性変異体は、例えば、大腸菌(E.coli)などの原核細胞において、組み換えにより製造することができる。別の実施形態において、アフィニティーリガンドは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)から得られるプロテインAでよい。いくつかの実施形態において、アフィニティーリガンドは、天然プロテインAまたはこの機能性変異体の1つ以上のドメイン、例えば、A、B、C、DまたはEドメインを含むことができる。他の実施形態において、アフィニティーリガンドは、プロテインZ(プロテインAの変性Bドメイン)でよい。例えば、米国特許出願公開第2005/0143566号を参照のこと。プロテインAリガンドの性能を向上させる改変も考えられる。アフィニティーリガンドは、プロテインAの単量体、またはこの機能性変異体、例えば2つ以上のユニットからなるプロテインAの多量体、またはこの機能性変異体でよい。
【0037】
標的分子としては、選択したタンパク質リガンドに特異的に結合する任意の分子を挙げることができる。タンパク質リガンドがプロテインAまたはプロテインGである場合、標的分子は、IgGサブクラスの免疫グロブリンまたはIgGのFc部分からなる分子を含むことができる。標的分子の具体例は、単クローン抗体を含むことができる。免疫グロブリンの機能性変異体および断片も、選択したアフィニティーリガンドに結合する能力を保持するならば、標的分子として考えられる。標的分子は融合タンパク質、例えば、Enbrel(登録商標)(Amgen、Thousand Oaks、CA)などの免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部からなる分子でもよい。
【0038】
標的分子を精製する方法
ある実施形態において、本発明は、混合物から標的分子を精製する方法を提供する。この方法は、標的分子が選択的にクロマトグラフィーマトリックスに結合するような条件下で、例えばアフィニティークロマトグラフィー媒体からなるクロマトグラフィーマトリックスを、標的分子を含む混合物に接触させること、および場合により、1つ以上の条件を変更することによって、例えば、溶出緩衝液を適用する段階によって、マトリックスから標的分子を溶出することを含むことができる。溶出緩衝液は、例えば、実際にマトリックスに適用した混合物のpHとは異なるpHを有することができ、またはマトリックスに適用した元の混合物と比較してより高濃度の塩を有することができる。この方法は、場合により1回以上の洗浄段階を含むことができる。この洗浄段階は、例えば、標的分子がマトリックスと結合した後であり、標的分子をマトリックスから溶出する前に行うことができる。例えば、残留結合材料のマトリックスを取り除くために、標的分子の溶出後に追加の洗浄段階を場合により行うこともできる。洗浄緩衝液は、酸性pHまたは塩基pHを有することができる。
【0039】
本発明のアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、混合物から標的分子を精製する任意の公知の方法において使用することができる。従って、標的分子を含む混合物にマトリックスを直接加えるバッチ組成でマトリックスを使用することができる。標的分子を含む混合物がマトリックスを含むカラムを通過するように、マトリックスをカラムに充填することもできる。
【0040】
この方法は、他の公知のアフィニティークロマトグラフィー法と比較して、(例えば、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスを含むカラムにわたって)最大流速を増大させることができる。粒径および細孔径を調整することによって、標的分子の結合および流量を共に向上させることができ、従って収率も効率も共に増大させることができる。いくつかの実施形態において、本発明は、混合物から標的タンパク質を分離する方法を提供する。混合物は、ハウジング、例えばカラムに収容されているアフィニティークロマトグラフィーマトリックスに接触し、混合物は、少なくとも400cm/時間、少なくとも500cm/時間、少なくとも600cm/時間、少なくとも700cm/時間、少なくとも800cm/時間、少なくとも900cm/時間の最大流速で、媒体を含むカラムの中を流れる。ある実施形態において、最大流速は、400cm/時間から1000cm/時間、400cm/時間から900cm/時間、500cm/時間から900cm/時間、600cm/時間から900cm/時間、700cm/時間から900cm/時間、600cm/時間から800cm/時間、700cm/時間から800cm/時間の範囲に及ぶことができる。
【0041】
流速は、アフィニティークロマトグラフィー媒体の層高さによって決定することができる。例えば、流速が100から700cm/時間の範囲に及ぶ場合、層高さは10から30cmの範囲に及ぶことができる。マトリックスの透過率が、使用することができる流量を制限し得る。アガロースの媒体は、例えば層高さ20cmにおいて流量>500cm/時間で、通常使用することができない。調節された細孔ガラス媒体は、層高さ20cmにおいて1000から2500cm/時間で実施することができ、これら調節された細孔ガラス媒体は層高さ30cmで構成することができ、および流量>500cm/時間をなおもたらすことができる。多くの場合、流速により媒体が充填されたカラムの生産性が限定され、このことはタンパク質精製プロセスの経済性(economics)およびスループットに大きく影響を及ぼし得る。
【0042】
現在、これらの流速制限を作り出す1つの要因は、タンパク質精製に使用される装置である。大部分のシステムが、比較的低い圧力、<3バールで動作し、許容範囲は通常2バール未満である。より高い圧力により、アガロース及び他の限定された媒体についての流速の窓が広がり得るが、非圧縮性の調節された細孔ガラスは圧力の上昇をよりよく利用することができる一方で、アガロースなどの圧縮性媒体は、剛性の制限により、付加的な流速の増大を見ることができるだけである。
【0043】
クロマトグラフィーシステム
いくつかの実施形態において、本発明は、混合物から標的分子を分離するためのシステムを提供する。このシステムは、シリカ粒子を含むアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを含み得る。このシステムは、クロマトグラフィーマトリックスの充填に適した1つ以上のカラムを含めた、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスの収容に適したハウジングをまた含み得る。カラムは、金属またはプラスチックを含めた任意の適切な材料で構成することができる。このシステムは、混合物の流れをクロマトグラフィーマトリックスにわたって促進するために、1つ以上のポンプを備えることができる。適切なポンプには、蠕動ポンプ、パルスポンプおよび/または容積式ポンプが含まれる。このシステムは、高圧液体クロマトグラフィーシステム(HPLC)中圧液体クロマトグラフィーシステム(MPLC)または低圧液体クロマトグラフィーシステム(LPLC)の形をとることができる。このシステムは、クロマトグラフィー媒体からの溶離液の量を検出するための1つ以上の手段を含むことができる。検出器は、多波長検出または単一波長検出を利用する、光をベースとする検出器であり得る。適切な検出器には、可視波長の光を検出することができる分光光度計、紫外線吸収検出器、蛍光検出器が含まれる。検出器は、レーザー光源を利用する光散乱検出器であっても、または酸化可能もしくは還元可能な物質に反応する電気化学検出器であってもよく、電気出力は、電極の表面で起こる反応によって生成される電子流である。このシステムは、クロマトグラフィー媒体からの溶出物質のクロマトグラムを提供するための1つ以上のプリンタを備えることもできる。システムは、1台以上のパーソナルコンピューターを備えることもできる。パーソナルコンピューターは、溶出分画の吸光度または蛍光などのデータを記録するために適していよう。加えてコンピューターは、溶出分画中の標的分子の濃度を算出するために適切なソフトウエアを装備することができる。クロマトグラフィーマトリックスに試料を加え、1種以上の適切な緩衝液でマトリックスを洗浄し、場合により適切な溶出緩衝液で標的分子をマトリックスから溶出させるように、コンピューターを使用してアフィニティークロマトグラフィーを実行するプロセスを自動化することもできる。このシステムは、コンピューター制御の自動化洗浄段階を提供することもでき、これによりクロマトグラフィー媒体が、適切な洗浄試薬との使用後に再生される。
【0044】
キット
本発明は、クロマトグラフィー固相担体および少なくとも1つの容器を備えるキットも提供する。クロマトグラフィー固相担体は、規定の細孔径および規定の粒径を有するシリカ粒子を含むアフィニティークロマトグラフィー固相担体であり得る。シリカ粒子は、以下に記載する粒子属性のいずれかを含むことができる。このキットは、場合により1つ以上のアフィニティーリガンドを含むことができる。固相担体に結合したアフィニティーリガンドを固相担体に提供することも、またはアフィニティーリガンドを固相担体とは別に提供することもできる。このキットは、1つ以上のカラムなど、固相担体を収容するためのハウジングを場合により備えることができ、ハウジングを固相担体で充填することができる。このキットは、場合により1種以上の試薬を含むこともできる。固相担体とアフィニティーリガンドとを別々に提供する場合には、試薬として、固相担体にアフィニティーリガンドを結合させるための試薬を挙げることができる。結合試薬としては、例えば、ヒドロキシル官能基と反応する試薬を挙げることができる。他の場合により用いられる試薬としては、例えば非特異的に結合した分子の除去に適した洗浄緩衝液、例えばリン酸緩衝生理食塩水もしくは水、およびアフィニティークロマトグラフィー媒体からの標的分子の溶出に適した溶出緩衝液、例えば酸性pHを有する溶液を挙げることができる。このキットは、場合により1つ以上の対照を含むことができる。対照としては、免疫グロブリンなどの標的分子、および/またはプロテインA、プロテインG、いずれかの機能性変異体などのアフィニティーリガンドが挙げられる。このキットは、場合により取扱説明書を備えることができる。この取扱説明書は、以下、固相担体にアフィニティーリガンドを結合させること、シリカ固相担体を含むアフィニティークロマトグラフィー媒体でカラムを充填すること、シリカ固相担体を含むアフィニティークロマトグラフィー媒体を用いて標的分子を分離すること、使用後にクロマトグラフィー媒体を洗浄すること、使用前にクロマトグラフィー媒体の平衡化することのうちの1つ以上に関する指針を提供することができる。
【実施例1】
【0045】
細孔径が異なるシリカアフィニティーマトリックス
WO90/09237に記載されている固相担体にプロテインAを結合させるための方法に従って、細孔径が500Åから1200Åである調節された細孔ガラスビード(各50mL、平均粒径63μm)をプロテインAで官能基化した。プロテインAリガンド密度12から14g/Lを実現した。リガンド結合の後、各々体積150mLの(順に)、pH8で0.15MのNaClを有する0.1Mのトリス、その後0.05Mの酢酸で試料を3サイクル洗浄した。その後、試料を平衡化し、PBSw/アジド中で保存した。下記実施例5において説明するように、流れの滞留時間2分で動的IgG結合容量について試料を試験した。細孔径が異なるアフィニティーマトリックスについての特性を表1に示す。
【0046】
【表1】
【実施例2】
【0047】
粒径および粒径分布が異なるシリカアフィニティーマトリックス
WO90/09237に記載されている固相担体にプロテインAを結合させるための方法に従って、記載の平均粒径(光散乱により測定される。)を有する調節された細孔ガラスビード(細孔径700Å、各50mL)をプロテインAで官能基化した。プロテインAリガンド密度12から14g/Lを実現した。リガンド結合の後、各々体積150mLの(順に)、pH8で0.15MのNaClを有する0.1Mのトリス、その後0.05Mの酢酸で試料を3サイクル洗浄した。その後、試料を平衡化し、PBSw/アジド中で保存した。下記実施例5において説明するように、流れの滞留時間2分で動的IgG結合容量について試料を試験した。細孔径が異なるアフィニティーマトリックスについての特性を表2に示す。
【0048】
【表2】
【実施例3】
【0049】
粒径分布を伴う粒径65μmおよび細孔径840Åを有するシリカアフィニティーマトリックスの特性
WO90/09237に記載されている固相担体にプロテインAを結合させるための方法に従って、調節された細孔ガラスビード(細孔径839Å、平均粒径63μm、体積50mL)をプロテインAで官能基化した。プロテインAリガンド密度13g/Lを実現した。リガンド結合の後、各々体積150mLの(順に)、pH8で0.15MのNaClを有する0.1Mのトリス、その後0.05Mの酢酸で試料を3サイクル洗浄した。その後、試料を平衡化し、PBSw/アジド中で保存した。下記実施例5において説明するように、動的IgG結合容量について試料を試験した。このアフィニティーマトリックスについての特性を図1に示す。
【実施例4】
【0050】
粒径分布を伴う粒径55μmおよび細孔径700Åを有するシリカアフィニティーマトリックスの特性
WO90/09237に記載されている固相担体にプロテインAを結合させるための方法に従って、調節された細孔ガラスビード(細孔径700Å、平均粒径55±13μm、体積50mL)をプロテインAで官能基化した。プロテインAリガンド密度13g/Lを実現した。リガンド結合の後、各々体積150mLの(順に)、0.1Mのトリス緩衝液、pH8で0.15MのNaCl、0.05Mの酢酸、PBSw/アジドで試料を洗浄した。下記実施例5において説明するように、動的IgG結合容量について試料を試験した。このアフィニティーマトリックスについての特性を図1に示す。
【実施例5】
【0051】
IgG動的容量の決定
プロテインA媒体を、オムニフィット(omnifit)カラム(直径0.66cm、層高さ7cm)(Bio Chem Valve,Inc.,Boontown,NJ)に充填し、多クローンヒト免疫グロブリン(IgG)の動的結合容量について試験した。これらのカラムをPBS緩衝液(pH7.4)で平衡化し、この同じ緩衝液を用いて同等の流量条件下でカラムにタンパク質(2g/L)を充填した。破過10%における容量を使用して異なる媒体を比較した。
【実施例6】
【0052】
アフィニティーマトリックスの平均粒径および粒径分布の決定
レーザー回折Malvern Mastersizer S(633nm)(Worcestershire,UK)を用いて、調節された細孔ガラスの粒径分布を決定した。回転子速度は2500に設定した。関心があるCPG試料を、最適な検出のためのオブスキュレーション(obscuration)15から20%達するまでMilli−Q水に懸濁させた。Mie理論を用いて生成した平均粒径を報告する。
【0053】
本明細書および特許請求の範囲で使用する材料、反応条件などの量を表す数字はすべて、用語「約」によってすべての場合においては変更されるものと理解すべきである。従って、特に指示がない場合は、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメーターは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変わることがある近似値である。少なくとも、また特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しない試みとして、各数値パラメーターは、有効桁数および通常の四捨五入手法の観点で解釈すべきである。
【0054】
当業者には明らかなように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の多くの変更および変形を行うことができる。本明細書中に記載されている特定の実施形態は、ほんの一例として提供されているにすぎず、決して限定的なものではない。本明細書および実施例は例示として見なされるにすぎないものであり、本発明の真の範囲および精神は添付の特許請求の範囲によって示される。
図1
【外国語明細書】
2015062028000001.pdf