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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-62066(P2015-62066A)
(43)【公開日】2015年4月2日
(54)【発明の名称】光学的メタポラライザ・デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20150306BHJP
【FI】
   G02B5/30
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-206264(P2014-206264)
(22)【出願日】2014年10月7日
(62)【分割の表示】特願2011-514878(P2011-514878)の分割
【原出願日】2009年6月20日
(31)【優先権主張番号】61/146,298
(32)【優先日】2009年1月21日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】509208479
【氏名又は名称】レイブンブリック,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107674
【弁理士】
【氏名又は名称】来栖 和則
(72)【発明者】
【氏名】ウィル マッカーシー
(72)【発明者】
【氏名】リチャード エム.パワーズ
(72)【発明者】
【氏名】ウォンジュン パーク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】吸収型ポラライザまたは反射型ポラライザに通常発生する光減衰量(光損失量)より少ない光減衰量で偏光を行うメタポラライザ・デバイスを提供する。
【解決手段】メタポラライザ・デバイスは、ある極性を有する光を透過するとともに、他の極性を有する光を、透過した光と同じ極性に近づくように回転させる。メタポラライザ・デバイスから出射する光は、大きな偏光を受けるが、メタポラライザ・デバイスの光の全透過率は、50%を十分に超えることが可能であるとともに、理論的限界値の100%に近づくことも可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光を行う方法であって、
光を、複数のサブ波長特徴部であって伝導性を有するものを有する構造体であって透過性および誘電性を有するものを透過させる工程を含み、
前記複数のサブ波長特徴部は、見かけのキャパシタンスと見かけのインダクタンスとを有し、
それら見かけのキャパシタンスおよび見かけのインダクタンスは、第1光軸方向についての値と、第2光軸方向についての値とが互いに異なり、
前記光のうち、第1直線極性を有する部分は、前記構造体内の実効誘電率および実効透磁率に遭遇し、それら実効誘電率および実効透磁率は、前記第1直線極性を有する前記光に実質的な影響を与えない自由空間の実効誘電率および実効透磁率と実質的に同じであり、
前記光のうち、第2直線極性を有する部分は、前記構造体内の実効誘電率であって、前記第1直線極性を有する前記光が遭遇する前記実効誘電率より大きいものと、前記構造体内の実効透磁率であって、前記第1直線極性を有する前記光が遭遇する前記実効透磁率より小さいものとに遭遇し、
当該方法は、さらに、
前記光のうち、前記第2直線極性を有する部分の電場の位相を、前記第2直線極性を有する前記光の磁場に応じて変化させ、それにより、前記第2直線極性を、回転により、その第2直線極性の向きに対してより前記第1直線極性の向きに対してより近い向きを有す第3直線極性に変化させる工程と、
前記光のうち、前記第3直線極性を有する部分を出射する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記光のうち、前記第1直線極性を有する前記部分は、単一の第1の光子であり、
前記光のうち、前記第2直線極性を有する前記部分は、単一の第2の光子であり、
当該方法は、さらに、
入射した光子に発生するリターデーションの量を、前記入射した光子の直線偏光に応じて連続的に変化させる工程であって、その連続的変化は、前記第1および第2の光子間のリターデーション差が、前記第1および第2の光子間の偏光方位角差と一致するかまたはそれに接近するように行われるものと
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2直線極性を有する前記光が遭遇する前記実効誘電率および前記実効透磁率は、共に負の値である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2直線極性を有する前記光が遭遇する前記実効誘電率および前記実効透磁率は、共に正の値である請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記第3直線極性は、前記第1直線極性と実質的に等価である請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
さらに、
前記光を、前記複数のサブ波長特徴部を有する複数の構造体であって直列に並んだものを透過させ、それにより、前記第2直線極性を、回転により、反復的に、最終的に出力される光の直線極性に変化させる工程を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
偏光を行うデバイスであって、
誘電性媒質(dielectric medium)であって透過性を有するものと、
その誘電性媒質上に支持され、複数のサブ波長伝導性エレメントより成る構造体と
を含み、
前記複数のサブ波長伝導性エレメントは、容量性および誘導性を有する複数の容量性・誘導性特徴部であって、それら容量性・誘導性特徴部のサイズおよび向きに応じて実効誘電率および実効透磁率を示すものを形成し、
前記複数のサブ波長伝導性エレメントは、前記構造体内において軸方向に並ぶように配置されており、その配置は、第1直線極性を有する入射光が遭遇する、第1光軸方向に沿った複数の容量性・誘導性特徴部と、第2直線極性を有する入射光が遭遇する、第2光軸方向に沿った複数の容量性・誘導性特徴部とが互いに異なるように行われ、
前記第1直線極性を有する前記入射光は、前記構造体内の第1実効誘電率および第1実効透磁率に遭遇し、それら第1実効誘電率および第1実効透磁率は、前記第1直線極性を有する前記入射光に実質的な影響を与えない自由空間の実効誘電率および実効透磁率と実質的に同じであり、
前記第2直線極性を有する前記入射光は、前記構造体内の、前記第1実効誘電率より大きな第2実効誘電率と、前記構造体内の、前記第1実効透磁率より小さな第2実効透磁率とに遭遇し、
前記第2直線極性を有する前記入射光の電場の位相が変化させられ、それにより、前記第2直線極性が、回転により、その第2直線極性の向きに対してより前記第1直線極性の向きに対してより近い向きを有する第3直線極性に変化させられ、その変化は、前記光のうち、前記第3直線極性を有する部分が当該デバイスを透過するように行われるデバイス。
【請求項8】
前記複数のサブ波長伝導性エレメントは、さらに、複数のユニット・セルから成る配列を含み、
それらユニット・セルは、互いに連結された複数本のナノスケール・ワイヤにより形成され、
それらナノスケール・ワイヤは、水平軸線に関しても垂直軸線に関しても対称であるが、対角軸線に関しては非対称である請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記複数のサブ波長伝導性エレメントは、さらに、前記誘電性媒質上において、複数の行と複数の列との配列を成すように、複数の金属製ドットが配列されたグリッドを含み、
当該デバイスは、さらに、
前記複数の金属製ドットのそれぞれの列に隣接して配置され、各列内における複数の金属製ドットを誘導的に結合するナノスケール・ワイヤを含む請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
前記ナノスケール・ワイヤは、
(a)連続体または不連続体であることと、
(b)凹凸表面を有することと
うちの少なくとも一つを採用している請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
前記ナノスケール・ワイヤは、
(a)連続体または不連続体であることと、
(b)凹凸表面を有することと
うちの少なくとも一つを採用している請求項9に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本出願は、2008年6月19日に出願された米国仮特許出願第61/074,095号であって、発明の名称が「光学的メタポラライザ・デバイス」であるものと、2009年1月21日に出願された米国仮特許出願第61/146,298号であって、発明の名称が「光学的メタポラライザ・デバイス」であるものとに関連しており、それら出願の開示内容は、引用により全体的に本明細書に合体する。
【0002】
本明細書に開示されている技術は、Defense Advanced Research Projects Agency Grant No. W31P4Q-08-C-0293による支援を受けて開発され、この技術につき、米国連邦政府がいくつかの特定の権利を保有する。
【技術分野】
【0003】
本明細書に開示されている技術は、吸収型ポラライザまたは反射型ポラライザに通常発生する光減衰量(光損失量)より少ない光減衰量で偏光を行う技術に関する。
【背景技術】
【0004】
世界中で使用されている非常に多くの液晶デバイスは、吸収型ポラライザであり、その吸収型ポラライザは、自身を透過する光のうちの50%よりわずかに多い量の光を吸収によって減衰させる。一般的には、その吸収型ポラライザは、ポラロイド(登録商標)・フィルムであって、例えば、一軸延伸させられたヨウ素含浸ポリマから製作されたものである。
【0005】
赤外光を吸収するのではなく反射するワイヤ・グリッド・ポラライザ(WGPs)が、1960年代から、例えば、Sriramらに発行された米国特許第4,512,638号において詳細に説明されてきた。この種のデバイスは、サブ波長スケールの配列であって、透過性基板上において近接して互いに平行に並んだ複数本の金属ワイヤの配列によって構成されており、その配列は、ある直線極性を有する光であって前記複数本の金属ワイヤに入射するものは反射する一方、異なる直線極性(opposite linear polarity)を有する光は前記透過性基板を透過するように行われる。1990年代および2000年代におけるナノスケールのリソグラフィ技術の出現に伴い、広帯域のワイヤ・グリッド・ポラライザであって、ハイ・エンドな光学機器、投影型LCDディスプレイおよびレーザ技術と共に使用される用途において、可視光および紫外線の波長に至るまでの波長の光を偏光させて反射するものを製作することが可能となり、このことは、例えば、Perkinsらに発行された米国特許第6,122,103号および第6,288,840号に詳細に説明されている。
【0006】
より最近では、低コストな反射型ポラライザ・フィルム(low-cost reflective polarizer films)であって、ポリマ積層型分布ブラッグ・リフレクタ(layered-polymer distributed Bragg reflector (DBR))の特性を延伸ポリマ・ポラライザ(stretched-polymer polarizer)に組み合わせたものが登場した。この種の反射型ポラライザは、減衰された光を、吸収するのではなくリキャプチャ(recapturing)することによって輝度を向上させるためにビデオ・ディスプレイにおいて使用されており、このことは、例えば、Weberらに発行された米国特許第7,038,745号、およびVerrallらに発行された米国特許第6,099,758号に詳細に説明されている。この種の反射型ポラライザは、鏡内で起こるような鏡面反射、白色に塗装された被膜内で起こるような拡散反射、またはそれら2つの反射の組み合わせを行うことが可能である。
【0007】
さらに、反射型ポラライザは、複数の特定の種類の液晶から製作することが可能である。ワイヤ・グリッド・ポラライザおよび延伸ポリマ・ポラライザは、直線偏光を行うのに対し、それら液晶ポラライザ(LCPs)は、概して円偏光を行う。このように、ある円偏光を有する光(すなわち、右回り/右手系または左回り/左手系)は、透過し、異なる円偏光(opposite circular polarization)を有する光は、吸収または反射される。
【0008】
種々の反射型ポラライザは、液晶系ビデオ・ディスプレイおよびサーモレフレクティブ・光フィルタの部品である。典型的には、それら反射型ポラライザは、円偏光ポラライザではなく直線偏光ポラライザであり、なぜなら、高コントラスト比および広視野角を円偏光ポラライザを用いて達成するのはより困難であるからである。
【0009】
さらに、極性を回転させる極性回転化材料(polarity-rotating materials)の多数の例が存在し、それら極性回転化材料は、「リターダ(retarders)」、「ウェーブブロック(waveblocks)」または「ウェーブプレート(waveplates)」としても知られている。いくつかの事例においては、それら極性回転化材料は、構造デバイス(特定の構造を有するデバイス)であって、例えば、ねじれネマティック液晶セルまたは液晶ポリマのようなものであるが、より頻繁に起こることは、それら極性回転化材料は、複屈折材料(birefringement materials)、すなわち、屈折率が方向に依存するという性質を示す材料であるということである。この種のデバイスは、一般的には、複数の波長を有する範囲にわたり作用し、さらに、その波長範囲内において、それらデバイスは、いかなる極性を有する光に対しても画一的に作用するとともに、一方向に通過する光子は時計回りに回転させられるのに対し、逆方向に通過する光子は反時計回りに回転させられるように、可逆的(reversibly)に作用する。これに対し、「ファラデー・ローテータ(回転子)」は、不可逆的な方法(a non-reversible way)で光の偏光状態を回転させる。すなわち、ファラデー・ローテータを一方向に通過し、その後、別の方向に反射する光子は、全体として0回転(回転していない/net-zero rotation)ではなく、2回転する。しかしながら、非常に効率のよいファラデー・ローテータの材料、例えば、テルビウム・ガリウム・ガーネット(terbium gallium garnet)であっても、有意義な回転(meaningful rotation)を達成するために、強い磁場および長い光路を必要とし、そのため、大部分の用途のためにそのような材料を使用することは非現実的である。
【0010】
「メタマテリアル」、すなわち、サブ波長特徴部(sub-wavelength features)を組み込んだナノ構造マテリアルの別の複数の例が存在し、それらサブ波長特徴部は、光の波動と干渉し、その干渉は、当該メタマテリアルが、「実効誘電率」εeff 、「実効透磁率」μeffおよび「実効屈折率」neff を有し、それにより、「波動インピーダンス」がZ=√(μeff/εeff)で表されるように行われ、それらパラメータは、当該メタマテリアルを製作するために用いられる物質が有するそれらパラメータとは顕著に異なる。当該デバイスの構造(特に、誘導性(インダクタとしての性質)および容量性(キャパシタとしての性質)を有する特徴部)次第で、上述の複数のパラメータが同時に負の値となること(自然界に存在する材料においては発生しないこと)も可能である。このように、メタマテリアルの使用により、従来の光学機器に成立する「法則」を「破る」デバイスを構成することが可能となり、さらに、従来の回折限界をはるかに超える分解能(resolutions)を達成することも、近傍界(近接場)特徴部を遠方界に拡張することも可能となる。しかし、メタマテリアルは、εeffとμeffが同じ符号を有するときのみ、概して透過性を示し、すなわち、「共に正」(言い換えると、「右回り」または「正の屈折」)および「共に負」(言い換えると、「左回り」または、「負の屈折」)である材料は、同じ程度の透過性を示すが、「一方のみが正」である材料は、不透過性を示す。このようなメタマテリアルを使用するデバイスの一例は、誘電率も透磁率も負である平面構造マイクロ波アンテナであって、メアンダ・ラインまたは空間充填曲線に基づくものである。Barbagallo, S.らの共著による “Synthesis of novel metamaterials,” Chapter 2 (VDM Verlag 2008年)を参照されたい。
【0011】
メタマテリアルの別の例は、伝送線路トポグラフィ(transmission line topography)に基づくものであり、この伝送線路トポグラフィは、直列キャパシタおよびシャント・インダクタが周期的に搭載されたものである。 Iyerが著者である “Negative refraction metamaterials,” Chapter 1, (Wiley 2005年)を参照されたい。この構造により、伝送線路トポグラフィにおいて周期的に並ぶ各ユニット・セル(unit cells)が有するキャパシタンス値およびインダクタンス値を調整することにより、εeff、μeffおよびneff のそれぞれの値を、すべてが正の値であるか、すべてが負の値であるか、または、正の値と負の値とが組み合わされた値であるように制御することが可能となるとともに、ユニット・セルのサイズを調整することにより、当該デバイスが動作する波長範囲を調節することが可能となる。「プラズモニック・ナノワイヤ複合メタマテリアル(plasmonic nanowire composite metamaterials)」が、誘電性基板(dielectric substrate)上またはその誘電性基板の内部において、不規則的にであるかまたは周期的に、および、1個ずつであるかまたは1対ずつ、分布している複数のメタリック・ナノワイヤ・セグメントから構成されたものとして説明される。Sarychev らの共著による“Negative refraction metamaterials,” Chapter 8, (Wiley 2005年)を参照されたい。それらワイヤ・セグメントの長さ、直径、密度および間隔次第で、複合メタマテリアルが有するεeff 、μeffおよびneff を、ある波長範囲にわたり、すべてが正の値となるか、すべてが負の値となるか、または、正の値と負の値とが組み合わされた値となるように調整し得る。
【0012】
平面構造であり、かつ、対角的に対称である種々の「ユニット・セル」すなわち「粒子」すなわち「人工原子」は、透過性誘電性基板上に金属製ワイヤが平面的に並んだ配列から構成され、それらユニット・セルは、等間隔な2次元配列として配列される場合には、いくつかの特定の波長範囲にわたる負の誘電率を含む様々な特性を有するメタマテリアルを提供する。Padilla, W. J., らの共著による“Electrically resonant terahertz metamaterials: Theoretical and experimental investigations” Physical Review B 75, 041102(R) (2007年)を参照されたい。それら特性は、主体的に(主位的に)、ユニット・セルのサイズおよびユニット・セル間の間隔に依存し、また、副次的に(補充的に)、ユニット・セルの形状に依存する。一般的に、それらユニット・セルの形状は、それらユニット・セルが作用することが意図される波長の6分の1と20分の1との間の範囲内にある。
【0013】
互いに一致しないεeffおよびμeffの値(すなわち、いずれかのパラメータは、自由空間におけるそのパラメータの値に近いが、他方のパラメータは、大きな正の値または大きな負の値を有する場合)を採用すれば、光子の極性を、その光子の電気的位相および磁気的位相を、いくつかの異なる量で変化させることにより、回転させることが可能である。このように、この種のメタマテリアルは、ある種のウェーブ・ブロック、すなわち、光子の極性を特定の波長範囲内において、特定の距離を横切るように、特定の量だけ回転させるデバイスとして作用することが可能である。これらの効果は周波数に依存し、また、種々の周波数応答を設計によって調整することが可能である。
【0014】
さらに、メタマテリアルは、入射光の有する極性に応じて、実効誘電率、実効透磁率および実効屈折率(よって、すべての光学特性)が異なるように、設計することが可能である。このような設計の一例は、カイラル平面構造体であり、この構造体は、透過性基板上に配置された、アルミニウム製ナノワイヤより成る「フィッシュ・スケール(魚のうろこ状)」のパターンにより構成される。Fedotov, V. A.らの共著による“Asymmetric propagation of electromagnetic waves through a planar chiral structure,” Physical Review Letters 97, 167401, (17 October 2006年)を参照されたい。本質的には、この構造体は、一種のワイヤ・グリッド・ポラライザであり、とはいえ、この構造体は、直線偏光された光ではなく、円偏光された光を反射するとともに透過する。この構造体のカイラル的性質は、異なる極性が不規則的に混じり合う光(例えば、太陽光)につき、前記ワイヤ・グリッド・ポラライザのうちのいずれの表面が注目されるかによって変化するという理由で、この構造体は、非対称的な透過性という更なる特性、すなわち、当該構造体は、自身を一方向に通過する光に対し、他の方向に通過する光に対してより強い透過性を有するという特性を有する。
【0015】
別の例は、二層メタマテリアル(bi-layered metamaterial)であり、これは、リターダまたはウェーブ・プレートに類似する方法(ただし、はるかにより薄板の構造体)で、円偏光された光の有する方位角を変化(回転)させることが可能なものである。Rogacheva, A.V.らの共著による “Giant gyrotropy due to electromagnetic-field coupling in a bilayered chirals Structure,” Physical Review Letters 97, 177401 (27 October 2006年)を参照されたい。さらに別の例は、平面カイラル・メタマテリアルであり、これは、円偏光された光の方位角を、それの回転角が入射時の方位角(input azimuth)に応じて変化するように、回転させることが可能なものである。Zhang, Wが著者である“Giant optical activity in dielectric planar metamaterials with two-dimensional chirality,” Journnal of Optics A: Pure and Applied optics, 8, pp. 878-90 (2006年)を参照されたい。実用的な用途は、それら2つのデバイスのいずれについても議論されていない。それら2つのデバイスはいずれも、カイラルであるため、非軸対称性を有し、このことにより、それらデバイスの製造可能性が制限される。さらに、それらデバイスはカイラルであるため、それら構造体は、直線偏光された光ではなく、円偏光された光に対して作用し、このことにより、それら構造体の、ビデオ・ディスプレイおよび光学リミッタのようなデバイスにおける潜在的な実用性が制限され、その理由は、上述されており、すなわち、円偏光された光を用いて、高コントラスト比および広視野角を実現することはより困難であるからである。、
【0016】
本明細書の背景技術の欄に存在する情報であって、本明細書に引用されているすべての文献およびそれら文献についての説明のすべてを含むものは、技術的な参照のみを目的としており、本発明の範囲が拘束されるべき主題であると考えるべきではない。
【発明の概要】
【0017】
以上説明した種類の反射型および吸収型ポラライザは、いずれも正の値であるεeff、μeffおよびneff を有する極性応答型メタマテリアル(polarity-sensitive metamaterials)として分類され、そのメタマテリアルによれば、ある極性を有する光が反射または吸収される一方、別の極性を有する光(alternate polarity of light)が透過する。本明細書に開示されている技術により、ある極性を有する複数の光子の極性を選択的に回転させる構造体であって、別の極性を有する複数の光子に対する影響が非常により少ないものが提供される。
【0018】
従来のポラライザにおいては、吸収型であるか反射型であるかを問わず、入射光のうちの少なくとも50%が、当該ポラライザとの相互作用により減衰させられるかもしれない。この現象が起きるのは、典型的な光源からの前記入射光が、ランダムに偏光された複数の光子により構成されているからである。それら光子であって、当該ポラライザの極性に対して平行である極性を有するものは、大部分が当該ポラライザを透過する一方、少しの部分のみが反射および/または吸収を行い、また、前記複数の光子であって、当該ポラライザの極性に対して直角である極性(perpendicular polarity)を有するものは、少しの部分が透過する一方、大部分が反射および/または吸収を行う。このように、液晶ビデオ・ディスプレイのような偏光デバイスにおいては、当該デバイスが有する全透過率が、ほぼ透過状態において、一般的には、50%より十分に低く、しばしば30%というように低い。残りの光エネルギーは、当該デバイスに再吸収され、最終的には、余熱(waste heat)として放散される。したがって、従来のポラライザを使用すると、偏光デバイスが有する輝度、エネルギー効率および全光束に対して厳しい制約が課される。
【0019】
ここでは、そのポラライザが約100%の効率を有すると仮定されており、これは、説明をする関係上、便利であるとともに説明を単純化する仮定である。より効率が低いポラライザが存在可能である点と、そのようなポラライザは、偏光されていない光に対して50%より高い透過率を示すとともに、当該ポラライザの極性に合致しない偏光状態を有する光を、100%よりはるかに低い比率で遮断(rejection)する点とを理解すべきである。この種のポラライザは、ビデオ・ディスプレイおよび光学フィルタにおいて使用される場合、非常に低いコントラスト比を有することになり、したがって、不適切なものであると考えられる。それにもかかわらず、市販されている多くのポラライザは、100%よりはるかに低い効率を有する。さらに、多くのポラライザは、当該ポラライザと極性が合致する光子を高い比率で遮断し、これは、当該ポラライザの偏光効率が高い場合であっても、全透過率が低いことになる。それにもかかわらず、この書類の目的を果たすため、本出願人は、すべての種類の吸収型および反射型ポラライザが、約100%の効率を有し、さらに、当該ポラライザと合致する偏光状態を有する光子に対して約100%の透過率をも有するという、前記単純化のための仮定を引き続き採用する。この仮定は、液晶ディスプレイおよび他の偏光用光学機器の分野における当業者にとって馴染みのあることである。
【0020】
この枠組みの範囲内において、メタマテリアル、すなわち、金属性(メタリック)および誘電性を有する材料より成るナノスケールの配列が、本明細書に開示されており、このメタマテリアルは、入射光の極性と共に変化する実効パラメータεeff、μeffおよびneff を有しており、その変化は、ある直線極性を有する光は、大部分が透過する一方、その直線極性に対して直角な極性を有する光は、大部分が、それの極性が、前記透過した光の極性により一致するように回転させられるように、行われる。この書類の解釈上、結果物としてのデバイスは、「メタポラライザ(メタ偏光器、メタ偏光子、メタ偏光を行うデバイス、metapolarizer)」として知られるべきである。従来のポラライザと同様に、このメタポラライザは、単一の極性を有する光を専ら(または、少なくとも主体的に)透過させる。しかし、従来のポラライザとは異なり、このメタポラライザは、前述の目的を達成するために、入射光の大部分を吸収も反射もしない。その結果、偏光されていない入射光またはランダムに偏光された入射光に対してこのメタポラライザが示す全透過率は、50%をはるかに超え、また、実際には、偏光効率が100%に近い場合であっても、理論的な限界範囲の100%に接近する。
【0021】
この技術の用途は、ビデオ・ディスプレイ、液晶光シャッタおよびサーモアブソープティブ(温度によって光吸収特性が変化する)光減衰器またはサーモリフレクティブ(温度によって光反射特性が変化する)光減衰器(例えば、温度に応答して反射性および/または吸収性が変化する窓フィルム)において用いられる従来のポラライザに取って替わるという特定の用途であるが、これに限定されない。この技術のいくつかの実施態様は、偏光された光が楕円化することを防止し、ひいては、ねじれネマティック液晶ディスプレイのようなデバイスのコントラスト比における阻害を防止するため、非カイラル構造で製作される。
【0022】
この書類の解釈上、「メタリック」という用語は、高密度の伝導電子(例えば、高密度でドーピングされた半導体、または量子井戸、量子ワイヤもしくは量子ドット内に閉じ込められた電子ガスを含む)を有する物質、材料、構造体またはデバイスを意味し、また、「誘電性(dielectric)」という用語は、密度が低いかゼロである伝導電子を有する物質、材料、構造体またはデバイスを意味する。この書類の読者は、この定義が、この書類の解釈上、誘電性媒質(dielectric medium)としてみなすことが可能である自由空間(free space)を含むことに注意すべきである。「メタマテリアル」という用語は、人工的な材料であって、誘電性基板上または誘電性媒質の内部において金属性または誘電性を有する複数の特徴部(その分布がランダムであるか、周期的であるか、フラクタルであるかを問わない)による製作されたものを意味するが、それら特徴部のサイズは、自然の原子より大きく、かつ、当該材料が影響を及ぼすように意図された光の波長よりかなり小さい。「複屈折性(birefringent)」という用語は、光の方向と共に変化する屈折率を有する物質または材料を意味する。
【0023】
そして、メタポラライザが、メタマテリアル構造体であって、極性に特化されたウェーブブロックと極性回転型(吸収型とも反射型とも異なる)ポラライザとの両方により形成されたものである。当該媒質を通過する、ある直線極性を有する光は、影響を受けず、別の直線極性を有する光は、第1極性に近づくように、ある角度回転させられる。したがって、吸収型または反射型のポラライザの透過率が50%を超えることができない(偏光効率が100%よりかなり低いということがない限り)一方、メタポラライザは、100%に近い透過率を有することが可能である。
【0024】
以上述べたことを達成するために、そのメタマテリアルは、次の特性を有する。
1)ある極性を有する光に対する透過率(transparency)は、自由空間を0で表し、当該メタマテリアルの極性の向きであって、入射光の極性の向きと同じ(平行である)ものを‖で表すと、
〜 Z
|ε| 〜 |μ
で表され、ここに、εおよび μは、同じ符号を有し(当該メタマテリアルが、通常は不透明であっても、光学的に半透過性を有するほどに薄いというわけではない限り)、εの虚数部は小さく、そして、|n|は、1.0に近く、かつ、実質的には2.0より小さい。よって、
μ 〜 μ and ε 〜 ε
となる。
すなわち、当該メタマテリアルのうち、‖方向を向いている表面のいくつかの断面は、ガラスのような純粋な誘電体に類似している。前記表面上の、いかなる誘導性または容量性を有する特徴部も、広い間隔を隔てて並んでおり、すなわち、その間隔は、影響を受ける光の波長の4分の1よりはるかに大きい。
2)他の極性を有する光に対する高度な偏光であって、最小の吸収または反射を伴うものは、当該メタマテリアルの極性の向きであって、入射光の極性の向きとは異なる(直角な)ものを⊥で表すと、
≪ ∞,
| > |μ|
で表され、ここに、εおよび μは、同じ符号を有し(当該メタマテリアルが、通常は不透明であっても、光学的に半透過性を有するほどに薄いというわけではない限り)、εの虚数部は小さく、そして、|n|は、1.0に近く、かつ、2.0より小さい。よって、
μ = 小さな数 and ε = 大きな数
となる。
すなわち、当該メタマテリアルのうち、⊥方向を向いている表面のいくつかの断面は、高い容量性と、低い誘導性とを有する構造体に類似しており、その構造体は、実質的な誘導的結合を行うことを見込んで、前記波長の6分の1以下の範囲内の隙間を隔てて並んでいる複数の特徴部を有する。
【0025】
この発明の概要の欄は、選択されたいくつかの概念を簡単に紹介するために設けられており、それら概念はまた、後に、発明を実施するための形態の欄において詳述する。この発明の概要の欄は、特許請求の範囲の欄に記載された主題の重要なまたは本質的な特徴を特定することを意図していないし、特許請求の範囲の欄に記載された主題の範囲を限定することも意図していない。本発明の特徴、詳細、実用性および効果は、後述の、本発明の種々の実施形態についての文章による説明において、さらに詳細に提示され、それら実施形態は、添付した図面において図示されるとともに後続する特許請求の範囲の欄において定義されている。
【0026】
相互に深く関連する複数の構成要素については、同様な符号が多くの図面において付されることに注目されたい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、従来技術に由来するとともに、負の屈折率を有するマイクロ波アンテナを概略的に示す図である。このアンテナは、低共振周波数帯域につき、小さな電気的サイズと広い帯域との間における良好な妥協点を、低クロス偏光(すなわち、一つの偏光状態のみについて応答すること)と共に提供する。前記電気的サイズは、1次共振周波数波長の約7分の1である。
【0028】
図2図2は、従来技術に由来するとともに、従来の部品のみ組み込んだ、損失の多い極性回転型ポラライザを概略的に示す図である。
【0029】
図3図3は、従来技術に由来するとともに、4種類の平面構造メタマテリアル・ユニット・セルを概略的に示す図であり、それらユニット・セルは、負の誘電率を示すことが可能であるとともに、垂直線に関しても水平線に関しても対角線に関しても対称性を示している。そのユニット・セル・サイズは、前記共振波長の約7分の1と約10分の1との間である。
【0030】
図4図4は、4種類の平面構造メタマテリアル・ユニット・セルを概略的に示す図であり、それらユニット・セルは、図3に示すバージョンからの変形であって、負の誘電率を示すことが可能であるとともに、垂直線に関しても水平線に関しても対称性を示すが、対角線に関しては対称性を示さないように、変形されたものである。
【0031】
図5図5は、メタポラライザの別の例示的な実施形態を概略的に示す図であり、この実施形態は、誘電性基板上に複数の金属製ドットが、配慮された間隔を隔てて並んだ平面配列として構成されている。
【0032】
図6図6は、メタポラライザのいくつかの例示的な実施形態に使用される平坦なワイヤおよび凹凸表面を有するワイヤであって、容量性を有するギャップを組み込んでいるものを概略的に示す斜視図である。
【0033】
図7図7は、メタポラライザの別の例示的な実施形態を概略的に示す平面図であり、この実施形態は、複数のワイヤ対が、配慮されたサイズを有するとともに配慮された間隔を隔てて並んだ平面配列として構成されている。
【0034】
図8図8は、図7に示す実施形態の、垂直偏光についての挙動であって、従来のアンテナに類似するものを示す3次元プロットである。
【0035】
図9図9は、図7に示す実施形態の、水平偏光についての挙動であって、従来のアンテナに類似するものを示す3次元プロットである。
【0036】
図10図10は、図7に示す実施形態であって任意に選択可能な部品として誘導性シャントを有するものの、垂直偏光についての挙動であって、従来のアンテナに類似するものを示す3次元プロットである。
【0037】
図11図11は、図7に示す実施形態であって任意に選択可能な部品として誘導性シャントを有するものの、水平偏光についての挙動であって、従来のアンテナに類似するものを示す3次元プロットである。
【0038】
図12A図12Aは、実効誘電率εeff、実効透磁率μeffおよび実効屈折率neffを、ある極性を有する光につき、入射した光子の電場および磁場について示す2次元プロットである。
図12B図12Bは、実効誘電率εeff、実効透磁率μeffおよび実効屈折率neffを、別の極性を有する光につき、入射した光子の電場および磁場について示す2次元プロットである。
図12C図12Cは、実効誘電率εeff、実効透磁率μeffおよび実効屈折率neffを、さらに別の極性を有する光につき、入射した光子の電場および磁場について示す2次元プロットである。
図12D図12Dは、実効誘電率εeff、実効透磁率μeffおよび実効屈折率neffを、さらに別の極性を有する光につき、入射した光子の電場および磁場について示す2次元プロットである。
【0039】
図13A図13Aは、理想光源の性能を示す2次元プロットである。
図13B図13Bは、標準的なポラライザの性能を示す2次元プロットである。
図13C図13Cは、効率が100%であるメタポラライザの性能を示す2次元プロットである。
【0040】
図14図14は、メタポラライザの別の例示的な実施形態を概略的に示す図であり、このメタポラライザは、前記誘電性基板上において垂直方向に延びる複数の伝送線路型ユニット・セルを組み込んでいる。
【0041】
図15図15は、メタポラライザの別の例示的な実施形態を概略的に示す平面図であり、このメタポラライザにおいては、図7に示す複数のワイヤ対が、複数のユニット・セルであって、垂直軸線に関しては対称であるが、水平軸線および対角線に関しては対称でないものに置換されている。
【0042】
図16図16は、メタポラライザの別の例示的な実施形態を概略的に示す図であり、このメタポラライザは、凹凸表面を有する複数のワイヤ・セグメントより成る空間充填曲線型アンテナを用いている。
【0043】
図17図17は、メタポラライザの別の例示的な実施形態を概略的に示す図であり、このメタポラライザは、2以上のメタマテリアル層を採用する。
【0044】
図18図18は、メタポラライザの別の例示的な実施形態を概略的に示す図であり、このメタポラライザにおいては、サブ波長空間周波数を有する複屈折材料より成る複数の複屈折性ストリップが、複屈折度値を、平行に偏光されている光子と、直角に偏光されている光子との間において互いに異なる値となるように生成するために用いられている。
【0045】
図19図19は、メタポラライザのさらに別の例示的な実施形態を概略的に示す図であり、このメタポラライザにおいては、前記複数の複屈折性ストリップにおいて、形状(構造)に依拠する複屈折性が、材料に依拠する複屈折性を置換している。
【0046】
図20図20は、メタポラライザを、光シャッタまたはビデオ・ディスプレイ・ピクセルにおいて用いる一例を、明状態すなわち透過状態で概略的に示す図である。
【0047】
図21図21は、メタポラライザを、光シャッタまたはビデオ・ディスプレイ・ピクセルにおいて用いる一例を、暗状態すなわち不透過状態で概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本明細書に開示されているいくつかのメタマテリアルは、実効透磁率および実効誘電率(εeffおよびμeff)を、共に正(DPS)であるか、一方のみ負(SNG)であるか、または共に正(DNG)である状態で有しており、それらメタマテリアルは、実効透磁率および実効誘電率が、光の極性が異なれば、それに応じて異なるようになっている。例えば、ある直線極性を有する入射光につき、εeff およびμeffは、当該メタマテリアルが、最小の反射、吸収または位相変化を伴いつつ、主として(largely、大部分が、支配的に)透過性を示すようになっている。その直線極性に対して直角な極性を有する入射光につき、εeffおよびμeffは、当該メタマテリアルが、最小の反射および吸収を伴いつつ、主として透過性を示すが、実質的な位相変化効果を伴い、その効果は、光子の電場および磁場の相対的位相(位相差)を、前記光子の前記極性が回転させられるように、変化させることを意味する。このように、当該メタマテリアル製のデバイスは、メタポラライザとして機能し、そのメタポラライザは、当該デバイスからの出射光が、全体的にまたは主として単一の極性によって構成されるが、その出射光の強度が、当該デバイスへの入射光であって、偏光されていないかまたはランダムに偏光されたものの強度の50%より大きいものである。理論的な限界の範囲内において、当該デバイスの透過率は、100%に近い。
【0049】
図1は、従来技術に由来するとともに、負の屈折率を有するマイクロ波アンテナの概略図であり、このアンテナは、“Synthesis of Novel Metamaterials” (S. Barbagallo著、 VDM Verlag、 2008年)の第2章に開示されている。このアンテナは、平面構造型の、「メアンダ・ライン(meander line)型」または「フラクタル(fractal)型」または 「空間充填曲線(space filling curve)型」のマイクロ波アンテナであり、このマイクロ波アンテナは、負の誘電率εおよび負の透磁率μを有しており、放射波のうちのある極性に対して支配的に応答し、他の極性に対してはほとんど影響を及ぼさない。このアンテナは、さらに、前記波の磁場に対してより、電場に対してより大きな影響を及ぼす。その結果、この構造体がアンテナとして使用されることを意図される一方、メタポラライザとして開示されることも、詳細に説明されることも、メタポラライザとして採用されることもないが、自由空間または誘電性基板上において電気的に絶縁される場合には、この構造体は、メタポラライザにとって望ましい多くの属性を有する。上述のように、当該デバイスは、マイクロ波周波数範囲内においてのみ動作する。
【0050】
図2は、Powersらが発明者である米国特許出願公開第2009/0015902号明細書において既に提示されており、極性回転型ポラライザ・デバイスの一例を示す概略図であり、この極性回転型ポラライザ・デバイスは、従来の光学部品のみを組み込んでいる。この極性回転型ポラライザ・デバイスは、反射型ポラライザ201と、ミラー202と、デポラライザ(ウェーブブロック)203とにより構成されている。反射型ポラライザ201と一致する極性を有する光がその反射型ポラライザ201に入射すると、その光は、反射型ポラライザ201を透過する。しかし、反対の極性を有する光が反射型ポラライザ201に入射すると、その光は、ミラー202に対して45度を成す方向に反射され、そのミラー202は、さらに、その反射光を、最初の進行方向と同じかまたはそれに近い方向に再度進行するように、45度の角度で反射する。この時点においては、その反射光は、パーマネントな(permanent)デポラライザ(リターダ、ウェーブブロックまたはウェーブプレートとしても知られている)203を通過し、そのデポラライザ203は、前記反射光の極性を特定量(例えば、90度)だけ回転させる。よって、前記反射光の極性が、現時点では、前記透過した光の極性と一致する。したがって、当該極性回転型ポラライザ・デバイスは、自身に入射する光の約100%を透過させ、同時に、前記光のすべてが同じ偏光状態を有することを確保する。しかし、ミラー202は、自身のちょうど背後から入射する光の透過を遮断してしまうため、当該構造体の全透過率は、標準的なポラライザのそれと同様に、50%より低い。
【0051】
図3は、従来技術(Padillaらの共著による“Electrically resonant terahertz metamaterials: Theoretical and experimental investigations,” Physical Review B 75, 041102(R) ,2007年)に由来するとともに、4種類の平面構造メタマテリアル・ユニット・セル301,301’,301’’および301’’’を示す概略図であり、各ユニット・セル301,301’,301’’,301’’’は、垂直線に関しても水平線に関しても対角線に関しても対称である。Padillaらの文献が開示していることは、その対称性のおかげで、それらユニット・セル301,301’,301’’および301’’’は大きな容量性を有しているが、インダクタンスをほとんど有しないかゼロであるということである。Padillaらの文献がさらに開示していることは、ユニット・セル・サイズが、共振波長の約7分の1と約10分の1との間にあり、かつ、ユニット・セル間隔が、共振波長の約5分の1と約7分の1との間にあると、それらユニット・セル301,301’,301’’および301’’’が等間隔で並んだ複数の平面配列により、メタマテリアルであって、共振波長よりわずかに短い波長範囲内において負の実効誘電率εeff を有するとともに、ユニット・セルの構成態様またはユニット・セル間隔による影響をほとんど受けない実効透磁率μeffを有するものが生成されるということである。このように、アレイ間隔およびユニット・セル・サイズが固定されていても、それらユニット・セル301,301’,301’’および301’’’の形状が変更されると、与えられた波長範囲内において実効屈折率neff が異なる値を示し、それにより、前記メタマテリアルが異なる光学特性を示す。それらユニット・セル301,301’,301’’および301’’’は、本明細書においては、例示のみを目的として示されている。さらに、Padillaらにより開示された前記メタマテリアルは、光が有するすべての偏光状態(極性)に対して画一的に(一様に)作用し、よって、メタポラライザとして機能することは不可能である。
【0052】
図4は、4種類の平面構造メタマテリアル・ユニット・セル401,401’,401’’および401’’’を概略的に示す図であり、それらユニット・セル401,401’,401’’および401’’’は、図3に示すバージョンから変形されている。それらユニット・セル401,401’,401’’および401’’’は、負の誘電率εを示すことが可能であるとともに、垂直に関しても水平線に関しても対称性を示すが、対角線に関しては対称性を示さない。それら構造体は、Padillaらの文献内のいくつかの例から適用されており、それら構造体は、対角線に関する対称性を有しないという理由で、それら構造体は、非アイソトロピック(異方性)効果および/または極性に応答する効果または極性に特化された効果を奏することが可能である。このように対角線に関する対称性を有しないことにより、ユニット・セル401,401’,401’’および401’’’が有するインダクタンスが増加し、ひいては、それらユニット・セル401,401’,401’’および401’’’の平面配列から製作されるメタマテリアルの実効透磁率μeffが増加する。このように、配列の間隔およびユニット・セル・サイズが固定されていても、実効透磁率μeffは、実効誘電率εeffと共に、ユニット・セル401,401’,401’’および401’’’の形状の設計次第で、調整され、それにより、個別の要望に応じた電気的特性および磁気的特性を有する平面構造メタマテリアルが作成される。それらユニット・セル401,401’,401’’および401’’’は、例示のみを目的として、本明細書において示され、本発明の範囲を限定するものとして考えるべきではない。
【0053】
図5は、メタポラライザの一実施形態を概略的に示す平面図であり、そのメタポラライザは、誘電性基板500の上に複数の金属製ドット501が、配慮された間隔を隔てて並んだ配列により構成されている。一般的に説明するに、誘電性表面上の複数の金属製ドットは、電気的に絶縁されているとともに、かなり余分な電荷を蓄積することが可能であるか、または時間と共に電荷の分布を変化させることが可能である。この構成態様により、前記複数の金属製ドットの容量性が増加し、このことにより、それの実効誘電率の絶対値が増加する傾向と、それの実効透磁率の絶対値が減少するかまたは保持される傾向とが発生する。大きな誘電率および小さな透磁率は、また、低いインピーダンスを生成し、このことにより、反射率が最小化し、また、前記誘電性表面を直角に通過する光子が有する磁気的成分に対してより、それの電気的成分に対してより大きな位相変化が発生し、それにより、前記光子の極性が回転する。
【0054】
前記複数のドットが、対称性を有するグリッド内において等間隔で配列される(regularly spaced)場合には、上述の効果は、いかなる極性を有する入射光子に対しても一様に発生する。しかし、その配列に代えて、それらドットが、複数の行と複数の列を成すように配列されるとき、列間の間隔は、例えば、影響を受ける波長の約半分(例えば、可視光スペクトルの中央にある緑色の光については、275nm)であり、かつ、一つの列内におけるドット間の間隔は、例えば、前記列間の間隔よりはるかに小さい(概略的には、影響を受ける波長の約6分の1(すなわち、緑色の光については、92nm)以下である)場合には、それらドットは、特定の入射極性のみを有する複数の入射光子の位相に影響を与える。それらドットの直径は、より小さく、概略的には、波長の20分の1(緑色の光については、27.5nm)であり、その結果、それらドットは、当該デバイスの全表面積の10分の1より少ない面積を覆っており、よって、それらドットは、当該デバイスを通過する光を減衰させる有意義な原因要素にはならない。
【0055】
ある直線極性を有する光子であって、前記ドットが配列している面に対して直角な方向に進行しているものがこの構造体と相互作用すると、この光子は、多数のドットを「見る(see,影響を受ける)」ことになり、ひいては、高い誘電率と、前記光子の電気的成分に対する大きな位相変化とを「見る」ことになる。反対の(すなわち、直角の)直線極性を有する光子が相互作用すると、その光子は、少数のドット、ひいては、より低い誘電率と、より小さな位相変化とを「見る」ことになる。
【0056】
この構造体が有する実効誘電率、実効透磁率および実効屈折率は、すべて正の値をとる。しかし、この構造体は、任意に選択可能な連続ワイヤ(図示しない)を、複数のドットの各列の真上、真下またはそれに隣接する位置に配置することにより、負の屈折率を有することが可能であり、それにより、この構造体が接地プレーン(または、伝送線路に類似する場合には、接地ワイヤ)として、または、誘導性結合を文字通り行う原因要素として機能する。それに代わるかまたはそれに追加するに、前記金属製ドットは、他の種類のメタマテリアル・ユニット・セルに置換することが可能であり、そのメタマテリアル・ユニット・セルは、図3に示す形状の例(すなわち、垂直線に関しても水平線に関しても対角線に関しても対称であり、よって、本質的に、容量性を支配的に有するもの)を含むが、これに限定されない。前記ユニット・セルそれ自体では、入射光子の偏光状態(極性)に対して敏感に応答しないが、この構造体全体では、前記ユニット・セル間隔の非アイソトロピ(異方性)のおかげで、偏光状態(極性)に対する応答が、偏光状態(極性)が平行であるか直角であるかによって異なる。
【0057】
いずれの場合でも、図5に示す実施形態におけるように、前記2次元配列の非対称性のおかげで、多数のユニット・セルにより、ある極性を有する光が、他の極性を有する光よりかなり大きく回転させられ、それにより、それらユニット・セルはメタポラライザとして機能する。よって、この構造体は、例えば、液晶ビデオ・ディスプレイにおいて、ポラライザに起因する約50%のエネルギー損失を低減するために採用される。
【0058】
図6は、ワイヤ・グリッド・ポラライザのような光学デバイスにおける2本のワイヤを示す斜視図である。しかし、ここでは、2つの異なる種類のワイヤが例示を目的として示されている。各々、表面が平坦であり、かつ、断面が矩形である多数本のワイヤ602は、互いに平行に等間隔で配置される場合には、ワイヤ・グリッド・ポラライザ、すなわち、反射型直線偏光ポラライザであって、それの極性と一致する極性を有する光を透過させるが、それとは直角の極性を有する光を反射するものを構成する。また、そのワイヤ間隔より大きい波長を有する光と、前記反射される極性を有する複数の光子とについては、平坦なワイヤ602は、平坦で固体の金属製フィルムに非常に似た挙動を示す。したがって、そのポラライザ(ワイヤ602)の表面からの反射光は、鏡面光であり、その結果、きれいで、鏡に似た外観を呈する。
【0059】
しかし、それに代えて、凹凸表面を有する複数本のワイヤ604であって、(光の波長に比較して)小さい特徴物もしくは大きい特徴物または両方を有するものが使用される場合、そのポラライザ(ワイヤ604)の「表面」は、適当な波長と極性とを有する光子から「見られる(seen)」と、平坦表面ではなく凹凸表面に見え、ここに、(光の波長に比較して)小さい特徴物および大きい特徴物の両方を適用することが可能である。鏡面反射光は、一般的に、微視的に平坦な表面を必要とし、一方、凹凸表面からの反射光は、一般的に、拡散性を有するため、この種のポラライザからの反射光は、鏡面化された外観ではなく、白色であるかまたは金属的なグレー色の外観を呈する。反射光のうちある部分は、ほとんどすべての種類の金属性・誘電性構造体であってメタマテリアルを含むものにおいて不可避的に存在するため、反射光の性質を制御することが望ましい。よって、凹凸表面を有するワイヤ604から製作されたメタマテリアルは、鏡面反射光ではなく、拡散反射光を生成し、このことは、光シャッタ、「スマート・ウィンドウ(smart window)」デバイスおよびビデオ・ディスプレイにおいて使用することが望ましい。
【0060】
また、メタマテリアルが有する多くの波長依存光学パラメータは、そのメタマテリアルを製作するために使用される金属製エレメントの直径に直接的または間接的に関係し、また、凹凸表面を有するワイヤは、それの直径が、そのワイヤに沿った方向における位置よって変化するため、メタマテリアルの帯域(すなわち、そのメタマテリアルが応答する波長範囲)は、そのメタマテリアルを、表面が平坦である金属性エレメントではなく、凹凸表面を有する金属性エレメントから製作することにより、広帯域化することができる。
【0061】
さらに、サブ波長サイズの割れ目すなわちギャップ606を平坦なワイヤ602または凹凸のあるワイヤ604の内部に配置すると、ワイヤ604の直列キャパシタンスが増加する。ある構造体の実効誘電率εeff がその構造体の直列キャパシタンスに比例し、かつ、実効透磁率μeffが直列キャパシタンスの逆数に比例する(反比例する)という理由で、それらの容量性ギャップ606の配置およびサイズは、結果的に生じるメタマテリアルの光学特性に深い影響を与える。よって、凹凸を有する特徴物および/または容量性ギャップは、本明細書に開示されている複数のメタマテリアル構造体のいずれにも、それらメタマテリアル構造体の光学特性を微調整するために、追加することが可能であることを理解すべきである。
【0062】
図7は、メタポラライザの別の実施形態を概略的に示す平面図であり、ここにおいては、そのメタポラライザの実効誘電率および実効透磁率が、誘電性基板700上における、互いに平行なナノワイヤ・セグメント701を1対とする複数対のナノワイヤ・セグメント(ワイヤ対)701により制御される。実効誘電率εeffおよび 実効透磁率μeffは、主に、ナノワイヤ・セグメント701の各々の長さおよび直径に依存しており、それらナノワイヤ・セグメント(ワイヤ対)701は、アンテナとして作用し、よって、特定の共振波長範囲において、この構造体の電磁的応答に大きい影響を与える。与えられた波長λにつき、約λ/8以上のワイヤ長と、約6.875:1のアスペクト比(長さ=44nm、かつ、直径=6.3nmであり、それぞれ、λ=350nmである紫色の光について)とを有すると、λ以上の波長範囲において、大きな負の誘電率が発生する。しかしながら、同じワイヤ長につき、実効透磁率μeffの大きさは、波長λより約30%短い波長において極大値を示すとともに、その波長が増加するにつれて、自由空間が有する誘電率に接近するように減衰する。 図5に示す金属製ドットとは異なり、平行ワイヤ対701から成る複数のユニット・セルは、垂直線に関しても水平線に関しても対称であるが、対角線に関しては対称性を示さず、したがって、大きなインダクタンスとキャパシタンスを有している。
【0063】
よって、波長λにおいて、ワイヤ対701は、大きな負の実効誘電率と小さな負の実効透磁率とを発生させ、そのような条件は、極性を回転させる効果のために既に確認されている。さらに、図5に示すように、本実施形態における複数のメタマテリアル特徴物(ワイヤ対701)は、複数の列を成すように間隔をあけて配列されており、ここにおいて、各列内におけるエレメント(ワイヤ対701)間の間隔は、列自体の間隔よりかなり小さい。よって、ある直線極性を有する光は、多数のワイヤ対701に遭遇し、ひいては、大きな回転を受ける一方で、前記ある直線極性と直角な極性を有する光は、前記ある直線極性を有する光が遭遇するワイヤ対701より少数のワイヤ対701に遭遇し、ひいては、小さな回転を受ける。その結果、ある極性を有する光は、他の極性を有する光に比べて大きく回転させられ、すなわち、この構造体がメタポラライザ(メタ偏光器)である。
【0064】
ワイヤ対701によって生成される実効誘電率および実効透磁率は、また、それらワイヤ対701の密度、すなわち、空間内の一定容積当りに存在するワイヤ対701の数にも強く依存している。しかし、各ワイヤ対701内におけるワイヤ同士の実際の間隔が、それらワイヤ対701の共鳴特性、ひいては、極性の回転角に影響を与えるが、当該デバイスは、そのデバイスが動作する方法を基本的に変化させることなく、ワイヤ間隔の大きな範囲(変化)に耐えることができる。 それの理想値は、同図に示すように、約λ/9かも知れないが、このことにより、λ/20のからλ/4までの範囲内のいくつかの値で機能することが証明されたというように限定されることを本出願人は希望しておらず、その範囲外にある多くの値も同様に、メタ偏光効果(メタポラライザとしての効果)を生成するかも知れない。
【0065】
やや反直観的であるが、このメタポラライザの性能は、誘電性基板700のワイヤ対701の向き、すなわち、「クロック・アングル」にほとんど依存しないが、それらワイヤ対701の従来からの偏光特性は、それらワイヤ対701のクロック・アングルが大きく変化すると、損なわれる。機能的に等価である別の説明を行うと、対角的に対称である構造体内における複数の電子についての共鳴振動モードもまた、対称である(すなわち、すべての共鳴電子が互いに平行に運動する)一方、対角的に非対称であるかまたは逆対称的である(antisymmetric)複数のユニット・セルについては、その構造体内における複数の異なる部分において電子が非対称的にまたは逆対称的に運動する。あるワイヤ内の複数の電子が一方向に運動するとともに、そのワイヤと平行であるかまたはほぼ平行である別の近傍のワイヤ内の複数の電子が反対の方向またはほぼ反対の方向に運動する場合、この共鳴は、「観測者」(例えば、入射する光子)にとっては循環電流のように「見え」、よって、この共鳴は、あるユニット・セルを包囲する電場がこのメタマテリアルの実効誘電率εeff を変化させることとちょうど同じように、このメタマテリアルの実効透磁率μeffを変更することが可能である磁場を生成する。
【0066】
機能的に等価である第3の説明を行うと、互いに平行であるかまたはほぼ平行である2本のワイヤ701は、文字通りの伝送線路を形成し、このとき、各ワイヤは、他のワイヤにとってのグランドとして機能するとともに、各端部における誘電性基板(例えば、自由空間)がソースおよび負荷の両方として機能する。以上説明したいくつかの類似性(アナロジ)は、説明のみを目的としており、メタマテリアルについての上述のいくつかの原理を利用するメタポラライザ・デバイスについてのいずれの実施形態の範囲も限定するものとして考えるへきではない。
【0067】
図7に示す実施形態においては、実効誘電率εeffおよび実効透磁率μeffが、主に、それぞれのワイヤ・セグメント701の長さと直径とに依存し、それらワイヤ・セグメント701は、伝送線路として作用し、よって、特定の共振波長範囲において、このメタポラライザの電磁的応答に大きい影響を与える。例えば、与えられた波長λにつき、約λ/8以上のワイヤ長と、約6.875:1のアスペクト比(長さ=44nm、かつ、直径=6.3nmであり、それぞれ、λ=350nmである緑色の光について)とを有すると、λ以上の波長範囲において、大きな負の誘電率が発生する。しかしながら、同じワイヤ長につき、実効透磁率μeffの大きさは、波長λより約30%短い波長において極大値を示すとともに、その波長が増加するにつれて、自由空間が有する誘電率に接近するように減衰する。
【0068】
よって、波長λにおいて、ワイヤ対701は、大きな負の実効誘電率と小さな負の実効透磁率とを発生させ、そのような条件のうちのいくつかは、極性を回転させる効果のために既に確認されている。複数のワイヤ対701が、誘電性基板700上において、対称的であり、かつ、周期的である配列で分布される縮退事例(例えば、ユニット・セル間の水平方向スペースは、あるユニット・セル内のワイヤ間のスペースと同一であり、また、ユニット・セル間の垂直方向スペースは、あるユニット・セル内のワイヤの長さと同一である場合)においては、極性を回転させる効果が、平行であるかまたは直角である直線極性を有する複数の光子に画一的に発生し、よって、メタ偏光効果が発生しない。しかし、図5におけるように、本実施形態における複数のメタマテリアル特徴物(ワイヤ対701)は、複数の列を成すように間隔をあけて配列されており、ここにおいて、各列内におけるエレメント(ワイヤ対701)間の間隔は、列自体の間隔よりかなり小さい。よって、ある直線極性を有する光は、多数のワイヤ対701に遭遇し、ひいては、大きな回転を受ける一方で、前記ある直線極性と直角な極性を有する光は、前記ある直線極性を有する光が遭遇するワイヤ対701より少数のワイヤ対701に遭遇し、ひいては、小さな回転を受ける。その結果、ある極性を有する光は、他の極性を有する光に比べて大きく回転させられ、それにより、この構造体がメタポラライザとして作用する。
【0069】
ワイヤ対701によって生成される実効誘電率および実効透磁率は、また、それらワイヤ対701の密度、すなわち、空間内の一定容積当りに存在するワイヤ対701の数にも強く依存している。しかし、各ワイヤ対701内におけるワイヤ同士の実際の間隔が、それらワイヤ対701の共鳴特性、ひいては、極性の回転角に影響を与えるが、当該デバイスは、そのデバイスが動作する方法を基本的に変化させることなく、ワイヤ間隔の大きな範囲(変化)に耐えることができる。 それの理想値は、同図に示すように、約λ/9かも知れないが、このことにより、λ/20のからλ/4までの範囲内のいくつかの値で機能することが証明されたというように限定されることを本出願人は希望しておらず、その範囲外の多くの値も同様に、メタ偏光効果を生成するかも知れない。
【0070】
やや反直観的であるが、このメタポラライザの性能は、誘電性基板700のワイヤ対701の向き、すなわち、「クロック・アングル」にほとんど依存しないが、それらワイヤ対701の従来からの偏光特性は、それらワイヤ対701のクロック・アングルが大きく変化すると、損なわれる。同様に、このメタマテリアルの主要な機能は、同じ列内におけるワイヤ対701間の垂直方向における間隔にほとんど依存しないが、ただし、前記ワイヤ対701間の垂直方向における間隔が、誘電性基板700上におけるワイヤ対701の全体密度と、列と行との間での相対密度とであって、いずれもメタ偏光効果を発生させるものに影響を与える点を除く。それら値を変更すると、各極性を有する光子が受ける実際の回転角が変化し、このとき、密度がゼロという極端な値を取ると、回転角がゼロとなる。
【0071】
ワイヤ対701の密度がしきい値より高く、かつ、そのために同じ列内におけるワイヤ対701の間隔がしきい値より小さいとすると、ワイヤ対701間の容量性および誘導性の結合が、通常の機能を阻害するという干渉を生成し、よって、このメタマテリアルの電磁的応答を大きく変更する。同図に示すλ/8という間隔は、このメタポラライザ・デバイスが正常に機能する範囲内にあり、その範囲は、λ/0(すなわち、無限であり、これは縮退事例である)から約λ/20までの範囲であると思われる。
【0072】
同じ列内の間隔がゼロであり、かつ、列間の間隔が、同じワイヤ対701内のナノワイヤ・セグメント間の間隔と等しいという縮退事例においては、このデバイスは、メタ偏光効果を発生しない従来のワイヤ・グリッド・ポラライザとなる。
【0073】
任意に選択可能なシャント(並列)・インダクタ702が、同じワイヤ対701内のワイヤ間に追加されており、この追加の目的は、そのワイヤ対701のインダクタンスを増加させ、よって、このメタマテリアルの実効誘電率εeffおよび実効透磁率μeffを調整することにあるが、その追加は、ナノワイヤ・セグメントの長さ、直径および間隔を変更するという作業に代わるか、または、その作業に追加するように行われる。これに代えて、ワイヤ対701を、別の種類のユニット・セル(図4に示す種類のユニット・セルを含むが、これに限定されない)に置換することが可能であり、そのユニット・セルは、垂直線に関しても水平線に関しても対称であるが、対角線に関しては非対称である。前述のように、この種のユニット・セルの実際の形状により、ユニット・セル間の間隔が固定されている場合でも、キャパシタンスとインダクタンスとの双方を正確に制御することが可能であり、よって、ユニット・セルの実際の形状は、このエメタマテリアルの実効誘電率εeff および実効透磁率μeff に影響を与える。
【0074】
さらに、例えば図4に示すユニット・セルによって示されているように、各ユニット・セル内の種々の特徴物を追加したり、削除したり、または、変形したりすることにより、このメタマテリアルの実効誘電率εeff および実効透磁率μeff を調整することが可能である。それらユニット・セルは、ワイヤ対701(シャント・インダクタ702を有するかまたは有しない)と同様に、対角線に関して非対称であるという理由で、それらユニット・セルは、光子に対する応答を、平行な極性を有する光子と、直角な極性を有する光子との間において互いに異にする。よって、本実施形態については、メタ偏光効果が、ユニット・セル間隔における異方性と、各ユニット・セルそれ自体の異方性との双方から発生する。
【0075】
図8は、図7に示す実施形態の、垂直偏光についての挙動であって、従来のアンテナに類似するものを示す3次元プロットである。本実施形態は、アンテナ自体ではなく、しかも、意図されているのは、放射波のうちの多くの部分を吸収することでも放射することでもなく、本実施形態の構造体を通過する放射波の挙動を変更することであるが、仮想的な電圧パルスを当該構造体に印加し、その結果発生する放射パターンを検討する際に、分析・評価に役立つ値が依然として存在する。前記3次元プロットが示すように、その放射は、非常に対称的であるとともに全方位的であり、これは、垂直偏光についてのメタマテリアルの応答が強いことと、前記放射波が、当該構造体の内部にある前記複数本のナノワイヤに対してかなりほぼ平行である場合を除き、垂直偏光についてのメタマテリアルの応答が入射角にほとんど依存していないこととを示している。
【0076】
図9は、図7に示す実施形態の、水平偏光についての挙動であって、従来のアンテナに類似するものを示す3次元プロットである。この3次元プロットが示すように、この水平偏光についてのメタマテリアルの応答の理論値がゼロであり、これは、この水平偏光を有する光子が、前記メタマテリアルと全く相互作用しないことを意味する。現実世界におけるデバイスに存在する位置ずれおよび欠陥が原因で、実際の応答は、ほぼゼロではないが、多くの状況においては無視できるほどに小さい。
【0077】
図10は、図7に示す実施形態であって任意に選択可能な部品として誘導性シャント(シャント・インダクタ)702を有するものの、垂直偏光についての挙動であって、従来のアンテナに類似するものを示す3次元プロットである。図8におけるように、垂直偏光についてのメタマテリアルの応答が非常に対称的であるとともに全方位的であり、これは、垂直偏光についてのメタマテリアルの応答が強いことと、その応答が、入射角にほとんど依存していないこととを示している。
【0078】
図11は、図7に示す実施形態であって任意に選択可能な部品として誘導性シャント(シャント・インダクタ)702を有するものの、水平偏光についての挙動であって、従来のアンテナに類似するものを示す3次元プロットである。図9とは異なり、当該構成の応答はゼロではないが、この水平偏光にとっては小さい。よって、任意に選択可能な部品としての誘導性シャント(シャント・インダクタ)702を使用することは、特定のいくつかのパラメータについて有利である可能性がある一方、2つの直線偏光の間での「クロストーク」(RFアンテナの設計においては、「クロス偏光(クロス偏波、交差偏光、交差偏波, cross polarization)」としても知られている)を発生させる可能性があり、よって、このメタポラライザの効率を低下させる可能性がある。
【0079】
図12A図12Dは、図7に由来するメタマテリアルの性能において、実効誘電率εeff、実効透磁率μeffおよび実効屈折率neffを、光の極性ごとに、入射した光子の電場および磁場について示す一連の2次元グラフである。2つの直角な方向の各々についての波長と実効屈折率neffとの関係は、平行な直線極性を有する光子と、直角な直線極性を有する光子との間で、互いに異なる。ある極性は、約1.3の複屈折度値(屈折率)(図12D参照)の影響を受ける(experience,経験する、直面する)一方、他の極性は、約1.5の複屈折度値(屈折率)(図12B参照)の影響を受ける。この状況は、リターデーション(位相遅れ)という観点で、各光子が受ける回転の量における異方性であって、連続的に変化し、かつ、極性に依存するものとして説明することが可能である。いずれの2つの光子についても、それら2つの光子間におけるリターデーション差がそれら光子の極性方位角差と一致する場合には、その結果は、「完全な」メタポラライザであることを示す。そのリターデーション差がゼロである場合には、その結果は、通常のウェーブプレートであることを示す。それらの間において、種々の偏光の角度が存在し、このメタマテリアルによって両方の偏光(極性)が回転させられる一方、一方の偏光が、他方の偏光より大きく回転させられる。したがって、入力された光子がランダムに偏光されている場合でも、出力される光子は、強い偏光バイアスを示すであろう。すなわち、メタ偏光効果が発生したのである。さらに、実効パラメータεeffおよびμeffのそれぞれの虚数部が小さな値であることは、この構造体が最小の吸収を行い、よって、高い透過性を示すことを示している。したがって、2つの極性間における回転角度差について達成される特定の量(例えば、ねじれネマティック型ビデオ・ディスプレイという用途については、90度)は、光子が通過する平面構造メタマテリアル層の数の関数である(に依存する)。
【0080】
前記一連の2次元プロットが示すように、実効屈折率neffは、入射した光子のうちの電気的成分と、磁気的成分とについて互いに異なる値を有し、このことは、前記光子の極性が、Maxwell方程式によって要求されるように、前記光子のうちの電気的成分と磁気的成分とが90度離れていることを維持するために、回転することを意味する。さらに、実効屈折率neffの、前記電気的成分と前記磁気的成分との間の差は、水平偏光に対してより、垂直偏光に対してより大きく、このことは、このメタポラライザ・デバイスが、ある極性を、別の極性より大きな角度で回転させることを意味する。実用的には、それら2次元プロットは、ある極性を他の極性より約15%だけ多く回転させ、それにより、偏光されていない光またはランダムに偏光されている光に対する全透過率を約7%だけ増加させる。よって、このメタポラライザ・デバイスは、原則として、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)型ラップトップ用画面の消費エネルギーを約7%だけ減少させる。
【0081】
さらに、この構造体の吸収率も非常に低い(すなわち、それの誘電率および透磁率のそれぞれの虚数部がゼロに近い)という理由で、図7に示す平面構造メタマテリアル層を複数、積層し、それにより、段階的な回転(回転が順に行われる)が行われる効果を生成することが実用的である。すなわち、2層は、30%のメタ偏光効果(ひいては、15%の省エネルギー)を生成し、6層は、90%のメタ偏光効果(ひいては、45%の省エネルギー)を生成する。この特定のメタマテリアルより成る6層以上の層は、100%に近いメタ偏光(すなわち、約50%の省エネルギー)を生成する。しかし、不透過性、反射性および半透過性を有する材料をそれぞれかなり多くの量有するデバイスにおいて、それら材料の全透過率が、新たな層が追加するにつれて低下するとともに、あるポイントにおいて(このポイントは、このメタポラライザの効率と、このメタポラライザを構成する複数の材料の透過率とに依存する)、このメタポラライザを用いることに由来する透過率の増加が、別の層を追加することに由来する透過率の低下によって追い抜かれるであろう。よって、用いられる層の数に実用的な限度がある。別の手法は、上述のユニット・セルの形状および間隔を、メタ偏光の目標量(例えば、約100%)が単一層によって達成されるまで、各極性のうちの各成分についての実効パラメータεeff、μeffおよびneffのそれぞれの目標値を実現することを目的として、調整することである。
【0082】
図13A図13Cは、理想的な無極性光源の挙動と、反射型、吸収型または拡散型である標準的なポラライザの挙動と、効率が100%であるメタポラライザ(約400nmのカットオフ波長を有する)の挙動とをそれぞれ表す複数の2次元グラフの組み合わせである。それらグラフが示すように、標準的なポラライザは、偏光されていない光に対して約40%に過ぎない透過率を有し、一方、そのメタポラライザは、100%の透過率に近づくことが可能である。しかし、それらデバイスはいずれも、単一の直線極性を有する光を透過させる。よって、明らかに、そのメタポラライザは、効率、輝度、バッテリ寿命または全エネルギー光束が重要である、偏光という用途について優れている。
【0083】
図14は、メタポラライザの別の実施形態を示す斜視図であり、この図においては、このメタポラライザが、複数の、文字通りの伝送線路ユニット・セルにより構成され、それらユニット・セルは、誘電性基板1400上において垂直方向に延びており、その結果、それらユニット・セルは、誘電性基板1400に直角に入射する光についてウェーブガイド(導波路)として作用することが可能である。各ユニット・セルは、2つの金属製ストリップ1401であって、厚さdを有する誘電体(例えば、空虚な空間)によって互いに分離されている。各ユニット・セルの高さおよび厚さに応じ、各ユニット・セルは、特徴的な(固有な)共振周波数を、前述の、結果物としてのメタマテリアルの実効誘電率εeffおよび実効透磁率μeffに対する既知の効果と共に有する。本実施形態における特徴物(構成要素)のサイズおよび性能は、図7に示す実施形態とほぼ同じであり、それと同様にして、複数の金属製ストリップ1401を、任意に選択可能なシャント・インダクタ1402によって結合することが可能である。
【0084】
図15は、メタポラライザの別の実施形態を示す斜視図であり、この図においては、図7に示す複数のワイヤ対が、各々、長手形状である複数の分割リング型(スプリットリング型)レゾネータ1501であって、誘電性ギャップ1502を包囲するものに置換されている。それら構造体1501,1502は、このメタポラライザの実効誘電率εeffおよび実効透磁率μeffをより高精度に(より微細に)制御することが可能であり、その制御は、レゾネータ1501における2本のワイヤの間隔(等価伝送線路モデルの直列キャパシタンスに比例する)の微調整と、レゾネータ1501の長さ(等価伝送線路モデルの並列インダクタンスに比例する)の微調整とによって行われる。一般に、このような構造体は、図7に示す実施形態より、かなりより高い誘導性を示し、そのため、この構造体の等価インピーダンスであって、少なくとも、自由空間の377オームに匹敵するものに適合するほど大きなキャパシタンスが維持されるように配慮しなければならない。この構造体(レゾネータ1501)は、垂直線に関して対称であるが、この構造体は、水平線に関しても対角線に関しても対称ではなく、よって、各ユニット・セルのうち互いに平行である部分において電子が対称的に共振(共鳴)するための最小の能力を示す。むしろ、それら共鳴電子は、逆対称的に運動する傾向があり、強い電場を必要とすることなく、循環電流、ひいては、磁場を発生させる。
【0085】
同じ特性を有する他の多数のユニット・セルに置き換えることが可能であり、一般に、それらユニット・セルは、1つの軸線のみに関して対称であり、図4に示すユニット・セルと共通することは必ずしも必要ではないかもしれないが、水平軸線に関する対称性を排除するために、いくつかの特定の部品が省略され、移動させられ、または変形させられる。完全に対称であるユニット・セルも実現可能であるが、計算コストが非常に高価であるか、および/または再現もしくは製作が困難である。
【0086】
メタポラライザを、そのように高い誘導性を示すユニット・セルを用いて製作する場合には、この構造体の等価インピーダンスであって、少なくとも、自由空間の377オームに匹敵するものに適合するほど大きなキャパシタンスが維持されるように配慮される。この構造体の、ある極性を有する光についてのインピーダンスが、自由空間のインピーダンスをはるかに超えるように増加するにつれて、当該メタマテリアルと、そのメタマテリアルの周囲にある自由空間(または他の誘電性材料)との間の界面に結果的に発生するインピーダンス不一致により、その極性につき、高い反射係数(反射率)が発生する。前記レゾネータが無限の高さを有するという縮退事例においては、この構造体は、その極性に対して100%の反射率を示す一方、その極性に直角な極性に対して最小の効果を及ぼし、よって、この構造体は、メタポラライザとしてではなく、ワイヤ・グリッド・ポラライザとして作用する。
【0087】
図16は、メタポラライザの一実施形態を概略的に示す図であり、そのメタポラライザにおいては、負の屈折率を有する複数の平面構造アンテナであって、図1に示すものと似ているものが、複数列を成すように配列されている。この構造体は、図7および図15に示すものと共通し、なぜなら、個々のユニット・セルがメタ偏光効果を有するからである。この空間充填構造体において、各々、水平方向に延びる複数の容量性ギャップ1601の合計長さは、各々垂直方向に延びる複数の容量性ギャップ1602の合計長さの2倍とちょうど一致するかまたはほぼ一致する。よって、ある極性を有する光が、他の極性を有する光が遭遇する(見る、see)キャパシタンスより多いキャパシタンスに遭遇し(see)、ひいては、前記ユニット・セルを上述のようにメタポラライザとして作用させるための、他の極性についてより高い誘電率εとより低い透磁率μとに遭遇する(see)。さらに、特徴物の、水平方向と垂直方向との双方における複数のサイズにより、このメタポラライザ・デバイスの動作帯域が、より小型のユニット・セル(例えば、図3図4図7および図14に示すいくつかのユニット・セル)についての動作帯域より広帯域化することが可能である。このことは、フラクタル型アンテナに類似しており、そのフラクタル型アンテナは、種々のサイズを有する複数の1/4波長アンテナであって、各々、それぞれ互いに異なる中心波長に応答するものの集まりであると考えられる。
【0088】
さらに、それらユニット・セルは、より大きな格子構造体内に配列されており、その格子構造体は、自身の偏光効果、すなわち、ある極性を有する光が、他の極性を有する光よりはるかに多数のユニット・セルに遭遇する(encounter,直面する、接触する、影響を受ける)という効果を有する。よって、先行するいくつかの実施形態と同様に、ある極性を有する光が、他の極性を有する光が遭遇する誘電率εおよび透磁率μとはかなり異なる誘電率εおよび透磁率μに遭遇し、また、この構造体は全体として、メタポラライザとして作用する。この構造体が可視波長帯域においてメタポラライザとして採用される場合には、各ユニット・セルの幅が、図1に示すマイクロ波アンテナの幅の2000分の1より小さく、この構造体についてのいかなる従来の用途からも、スケールの点で、大きく異なる。このサイズ範囲内の構造体であれば、今でこそ、ナノテクノロジを用いた方法によって製作可能となる。多くの用途について、このメタポラライザ構造体を、平坦な表面を有するナノワイヤからではなく、凹凸表面を有するナノワイヤから製作することも望ましく、その目的は、波長応答性をさらに広帯域化し、また、当該構造体からのいかなる反射光も拡散させる(例えば、グレアを軽減する)ことにある。
【0089】
より一般的な意味においては、メタマテリアルまたはアンテナを設計する分野において通常の知識・技能を有する読者であれば、複雑な複数のユニット・セルがフラクタルな特性(すなわち、種々のサイズを有する複数の容量性セグメント)を示すことを理解するであろうし、そのフラクタルな特性は、前記ユニット・セルが応答可能である帯域の幅を増加させるように作用する。よって、同図に示す前記複数のユニット・セルは、「フラクタル化された正方形」として考えることが可能であるとともに、そのユニット・セルのフラクタル的寸法を増加させる一方で、その寸法を一定に維持することにより、短い波長に対する応答を広帯域化する傾向が発生する。
【0090】
図17は、本発明の別の例示的な実施形態を示す図であり、この実施形態においては、誘電体上の平面構造メタマテリアルより成る、互いに分離した2つのメタマテリアル層1701および1702が積層されている。それら2つのメタマテリアル層1701および1702は、互いに同一であるか、同一の実施形態についての、互いにやや異なる複数のバージョン(特徴物のサイズが、互いに異なる複数の波長に応答するように調整されている)か、または、互いに異なる複数の実施形態である。光子1703がメタマテリアル層1701および1702を通過するとき、その光子1703は、それの極性に応じて、かつ、この構造体の誘電率εおよび透磁率μであって各メタマテリアル層1701,1702内において光子1703が遭遇するものに基づき、回転させられるか、または、何ら変化させられない。この構造体は、例えば、特定の極性を有する光子が多層メタポラライザを通過することによってその光子が受けることになる回転角の量を増加させる際に、有用である。これに代えて、この多層構造体を、ある色の可視光についてはメタマテリアル層1701においてメタポラライザとして作用するとともに、別の色の可視光についてはメタマテリアル層1702においてメタポラライザとして作用する一方で、残りの可視スペクトルは変化させないデバイスを製作するために、ある例示的な方法で使用することが可能である。例えば、互いに異なる複数の波長について複数の特定の偏光状態を与えるという目的のため、任意の数のメタマテリアル層を積層して、少なくとも一つの目標波長範囲にわたって動作するメタポラライザを製作することができる。
【0091】
図18は、本発明の別の例示的な実施形態を示す図であり、本実施形態においては、透過性を有する複屈折材料(典型的には誘電体であるが、本明細書の説明に合致する金属材料がもし存在するのであれば、それを採用してもよい。)より成る複数のストリップ、バーまたはストライプ1801であって、複数の非複屈折性ギャップ1802と交互に並んでいるものが、メタ偏光効果を実現するために採用されている。光子が、複屈折材料より成るブロックまたはフィルムに遭遇すると、その光子の極性が、前記複屈折材料の複屈折度値Δnおよび厚さdに応じた(比例する)量だけ、回転させられる。しかし、そのような複屈折材料製モノリシック・フィルムがストリップまたはバーに置換される(例えば、前記フィルムのうちの複数の部分に対してエッチングまたはナノインデンテーション(ナノ押し込み)を行うことによって置換される)と、その実効複屈折度値それ自体が、偏光状態(極性の向き)に依存する量となる。前記バーの空間周波数が、光の波長(例えば、λ/4波長以下であるが、より大きな空間周波数もほぼ同様に作用する可能性があるため、λ/4波長以下であるという記載による限定解釈は望ましくない)よりはるかに小さく、また、複屈折材料のうち前記光子によって「見える」部分をfで表し、当該複屈折材料の誘電率をεで表し、また、非複屈折材料(自由空間であるか、空気であるか、透過性フィルタ材料であるかを問わない)の部分をfで表し、それの誘電率をεで表すと、直角な方向に偏光されている光子についての実効誘電率εは、
ε = fε + fε
で表され、また、平行な方向に偏光されている光子についての実効誘電率εは、
1/ε = f/ε + f/ε
で表される。よって、その光学的非アイソトロピ(異方性)により、異なる極性を有する光子が、複屈折材料の異なる量、ひいては、異なる量の回転を「見る」。当業者であれば理解されることは、複屈折材料の直線バーまたはライン1801を、非直線ラインまたはフラクタル・ラインもしくは空間充填ラインに、本実施形態の本質的な機能を損なうことなく、置換することが可能であるということである。
【0092】
当業者である読者がさらに理解することは、いくつかの定義により、本実施形態が、技術的には、メタマテリアルではなく、フォトニック材料であるということであり、なぜなら、本実施形態は、誘導性を有する共鳴(すなわち、アンテナのように)要素を有しないからである。しかし、この書類の解釈上、その区別は、機能的な(実用的な)ものではなく、学術的なものであり、なぜなら、本実施形態のメタ偏光効果は、他の実施形態のそれと等価であるからである。
【0093】
図19は、上述の実施形態から派生した実施形態を示しており、本実施形態においては、前記材料の物理的な複屈折度値が、非複屈折材料の形状(構造)に依拠する複屈折度値に置換されている。この場合、各バーまたはストリップ1801が、複数の、より狭いストリップ1901の集まりに置換されており、それらストリップ1901は、上述と同一の、誘電率についての一定の関係に従い、形状に依拠する複屈折度値を示す。上述と同様に、ストリップ1901間のギャップ1902は、非複屈折材料により構成されているが、本実施形態においては、ギャップ1902は、誘電性材料(固体であるか、液体であるか、気体であるか、自由空間であるかを問わない)によって充填されなければならないという別の要件が存在し、その誘電性材料は、光子が、バー(ストリップ)1901を、それの周辺の媒質とは異なるものとして「見る」ことが可能であるように、かなり異なる屈折率を有する。上述と同様に、前記直線ライン(ストリップ)1901を、フラクタルな空間充填形状を含む非直線ラインに、本実施形態の本質的な機能を損なうことなく、置換することが可能である。
【0094】
図20は、本発明の用途の一例を概略的に示す図であり、ここにおいては、メタポラライザ2001が、第2の標準的なポラライザ2003およびデポラライザ2002(ウェーブブロック)と一緒に、かつ、液晶光シャッタまたはビデオ・ディスプレイ・ピクセルにおけるように、使用される。同図においては、メタポラライザ2001の極性と一致する極性を有する入射光が、そのメタポラライザ2001に入射し、そこを透過する。メタポラライザ2001の極性とは反対の極性を有する光が、そのメタポラライザ2001に入射し、その光の極性が、メタポラライザ2001の極性と一致するように、位相変化させられるかまたは回転させられる。本実施形態においては、メタポラライザ2001の出力光の偏光状態(極性)が、第2のポラライザ2003の偏光状態とは反対の偏光状態(極性)である。
【0095】
図20は、本実施形態の作動を透過状態で示し、この透過状態においては、偏光された光が、デポラライザ2002(それの一例が液晶媒質である)に入射し、そのデポラライザ2002は、規則配列状態(organized state)(例えば、ねじれネマティック状態)にあり、よって、デポラライザ2002を通過するすべての光の極性を回転させるように機能し、なぜなら、メタポラライザ2001を出射する光は、すべて同じ極性を有するからである。このデポラライザ2002による回転は、第2のポラライザ(すなわち、アナライザ)2003の極性に一致し、その第2のポラライザ2003は、標準的な反射型または吸収型ポラライザである。デポラライザ2002によってデポラライザされて出射する光は、第2のポラライザ2003の極性に一致するため、その第2のポラライザ2003を透過する。したがって、本実施形態においては、当該デバイスは、この透過状態において、約100%の透過率を有する。
【0096】
図21は、図20におけるのと同じ用途の例を概略的に示す図であるが、不透過状態で示す点で図20とは異なる。この不透過状態においては、デポラライザ2102は、不規則配列状態(disorganized state)(すなわち、液晶媒質の液体状態もしくはアイソトロピック状態、または、ねじれネマティック・ディスプレイにおいて一般的である、分子が電気的に配列されている状態)にあり、このデポラライザ2102を通過する光の極性を変化させない。したがって、メタポラライザ2101を出射する光が、第2のポラライザ2103の極性とは反対の極性を有するため、その光のうちの約100%が、吸収されるか、または戻る側に反射される。よって、当該デバイスは、約0%の透過率を有する。
【0097】
本明細書においては、例示的な複数の実施形態が図示されるとともに文章によって説明されているが、本発明がそれら具体的な構成態様に限定されることはないと理解すべきである。任意に選択可能な部品であって、被膜、フィルム、スペーサ、充填材、接地ワイヤ、接地プレーンまたは支持構造体の如きものを、特定の用途または特定の製法の必要性を満たすように、追加することが可能であるとともに、本発明の主旨から逸脱することなく、ある部品を省略したり置換することにより、いくつかの実施形態の低級版を提供してもよい。例えば、メタマテリアル製のワイヤを、不完全な導体または半導体から製作したり、注目している波長範囲内において、実質的な色覚異常を含む反射スペクトルを有する材料(例えば、銅)から製作してもよい。
【0098】
前述の種々の層についての実際の構成(配列)は、本明細書に記載されているものとは異なるものとすることが可能であり、また、本発明の本質的な構造および機能を変更することなく、選択される材料および波長に応じて、互いに異なる複数の層(different layers)を、いくつかの単一層(single layers)、単一物体(single objects)、単一デバイス(single devices)または単一材料(single materials)として合体させることが可能である。例えば、本明細書において詳細に説明されているいくつかの実施形態のうちのいずれでもよいが、その実施形態における複数本のワイヤまたはワイヤ・セグメントのすべてまたは一部を、波長応答を広帯域化したり、自由空間または他の周辺媒質とは一致しないインピーダンスに起因する反射光を拡散させることを目的として、凹凸表面を有する複数本のワイヤまたはワイヤ・セグメントに置換することが可能である。
【0099】
本明細書に開示されているメタポラライザ・デバイスについてのいくつかの実施形態によれば、従来技術では不可能であるいくつかの効果が得られる。第1に、このメタポラライザによれば、通常の吸収型または反射型ポラライザと一緒に使用する場合に、液晶ビデオ・ディスプレイ、光シャッタおよびサーモリフレクティブまたはサーモアブソープティブな光減衰器が、透過状態において透過率が100%に近づくことが可能となる。第2に、このメタポラライザを、偏光型ビデオ・ディスプレイの輝度を増加させるという目的および/または消費電力を削減するという目的のために使用することが可能である。第3に、このメタポラライザを、いくつかの用途、例えば、眼鏡、望遠鏡、顕微鏡、カメラ、センサ、建材、ビデオ・ディスプレイ、プロジェクタおよびレーザ光学機器を含むが、それらに限定されないもののために、通常の反射型または吸収型のポラライザに代えて使用することが可能である。第4に、このメタポラライザを、入射光の極性を回転させるために、ビデオ・ディスプレイおよび他の光学的用途において、従来のウェーブブロックに代えて使用することが可能である。 本明細書に開示されている技術は、次の各態様で実施することが可能である。
(1) 偏光を行う方法であって、
光を、複数のサブ波長特徴部であって伝導性を有するものを有する構造体であって透過性および誘電性を有するものを透過させる工程を含み、
前記複数のサブ波長特徴部は、見かけのキャパシタンスと見かけのインダクタンスとを有し、
それら見かけのキャパシタンスおよび見かけのインダクタンスは、第1光軸方向についての値と、第2光軸方向についての値とが互いに異なり、
前記光のうち、第1直線極性を有する部分は、前記構造体内の実効誘電率および実効透磁率に遭遇し、それら実効誘電率および実効透磁率は、前記第1直線極性を有する前記光に実質的な影響を与えない自由空間の実効誘電率および実効透磁率と実質的に同じであり、
前記光のうち、第2直線極性を有する部分は、前記構造体内の実効誘電率であって、前記第1直線極性を有する前記光が遭遇する前記実効誘電率より大きいものと、前記構造体内の実効透磁率であって、前記第1直線極性を有する前記光が遭遇する前記実効透磁率より小さいものとに遭遇し、
当該方法は、さらに、
前記光のうち、前記第2直線極性を有する部分の電場の位相を、前記第2直線極性を有する前記光の磁場に応じて変化させ、それにより、前記第2直線極性を、回転により、その第2直線極性の向きに対してより前記第1直線極性の向きに対してより近い向きを有す第3直線極性に変化させる工程と、
前記光のうち、前記第3直線極性を有する部分を出射する工程と
を含む方法。
(2) 前記光のうち、前記第1直線極性を有する前記部分は、単一の第1の光子であり、
前記光のうち、前記第2直線極性を有する前記部分は、単一の第2の光子であり、
当該方法は、さらに、
入射した光子に発生するリターデーションの量を、前記入射した光子の直線偏光に応じて連続的に変化させる工程であって、その連続的変化は、前記第1および第2の光子間のリターデーション差が、前記第1および第2の光子間の偏光方位角差と一致するかまたはそれに接近するように行われるものと
を含む(1)項に記載の方法。
(3) 前記第2直線極性を有する前記光が遭遇する前記実効誘電率および前記実効透磁率は、共に負の値である(1)または(2)項に記載の方法。
(4) 前記第2直線極性を有する前記光が遭遇する前記実効誘電率および前記実効透磁率は、共に正の値である(1)または(2)項に記載の方法。
(5) 前記第3直線極性は、前記第1直線極性と実質的に等価である(1)または(2)項に記載の方法。
(6) さらに、
前記光を、前記複数のサブ波長特徴部を有する複数の構造体であって直列に並んだものを透過させ、それにより、前記第2直線極性を、回転により、反復的に、最終的に出力される光の直線極性に変化させる工程を含む(1)または(2)項に記載の方法。
(7) 偏光を行うデバイスであって、
誘電性媒質(dielectric medium)であって透過性を有するものと、
その誘電性媒質上に支持され、複数のサブ波長伝導性エレメントより成る構造体と
を含み、
前記複数のサブ波長伝導性エレメントは、容量性および誘導性を有する複数の容量性・誘導性特徴部であって、それら容量性・誘導性特徴部のサイズおよび向きに応じて実効誘電率および実効透磁率を示すものを形成し、
前記複数のサブ波長伝導性エレメントは、前記構造体内において軸方向に並ぶように配置されており、その配置は、第1直線極性を有する入射光が遭遇する、第1光軸方向に沿った複数の容量性・誘導性特徴部と、第2直線極性を有する入射光が遭遇する、第2光軸方向に沿った複数の容量性・誘導性特徴部とが互いに異なるように行われ、
前記第1直線極性を有する前記入射光は、前記構造体内の第1実効誘電率および第1実効透磁率に遭遇し、それら第1実効誘電率および第1実効透磁率は、前記第1直線極性を有する前記入射光に実質的な影響を与えない自由空間の実効誘電率および実効透磁率と実質的に同じであり、
前記第2直線極性を有する前記入射光は、前記構造体内の、前記第1実効誘電率より大きな第2実効誘電率と、前記構造体内の、前記第1実効透磁率より小さな第2実効透磁率とに遭遇し、
前記第2直線極性を有する前記入射光の電場の位相が変化させられ、それにより、前記第2直線極性が、回転により、その第2直線極性の向きに対してより前記第1直線極性の向きに対してより近い向きを有する第3直線極性に変化させられ、その変化は、前記光のうち、前記第3直線極性を有する部分が当該デバイスを透過するように行われるデバイス。
(8) 前記複数のサブ波長伝導性エレメントは、さらに、前記誘電性媒質上において、 複数の行と複数の列との配列を成すように、複数の金属製ドットが配列されたグリッドを含み、
前記複数の金属製ドットは、前記誘電性媒質の全表面積の10分の1より狭い領域を覆っており、
互いに隣接した列上における金属製ドット間の第1間隔は、偏光が行われるべき入射光の波長の半分に実質的に等しく、
互いに隣接した行上における金属製ドット間の第2間隔は、偏光が行われるべき入射光の波長の6分の1に実質的に等しく、
各金属製ドットの直径は、偏光が行われるべき入射光の波長の20分の1に実質的に等しい(7)項に記載のデバイス。
(9) 前記複数のサブ波長伝導性エレメントは、さらに、複数のユニット・セルから成る配列を含み、
それらユニット・セルは、互いに連結された複数本のナノスケール・ワイヤにより形成され、
それらナノスケール・ワイヤは、水平軸線に関しても垂直軸線に関しても対称であるが、対角軸線に関しては非対称である(7)項に記載のデバイス。
(10) さらに、
前記複数の金属製ドットのそれぞれの列に隣接して配置され、各列内における複数の金属製ドットを誘導的に結合するナノスケール・ワイヤを含む(8)項に記載のデバイス。
(11) 前記複数のサブ波長伝導性エレメントは、さらに、各々、負の屈折率を有する複数の平面構造アンテナが一列に並んで成る配列を含み、
前記複数の平面構造アンテナは、水平方向における複数の容量性ギャップと、垂直方向における複数の容量性ギャップとを有し、
前記水平方向における複数の容量性ギャップの全長は、前記垂直方向における複数の容量性ギャップの全長の2倍の長さに実質的に等しい(7)項に記載のデバイス。
(12) 前記ナノスケール・ワイヤは、
(a)連続体または不連続体であることと、
(b)凹凸表面を有することと
うちの少なくとも一つを採用している(9)項に記載のデバイス。
(13) 前記ナノスケール・ワイヤは、
(a)連続体または不連続体であることと、
(b)凹凸表面を有することと
うちの少なくとも一つを採用している(10)項に記載のデバイス。
(14) さらに、ウェーブブロック・デポラライザと、標準的なポラライザとを含み、
そのウェーブブロック・デポラライザは、前記入射光が前記構造体から出力された光を受光するのに適した位置に配置されるとともに、透過状態において、入射光の直線極性を回転させる一方、不透過状態において、前記入射光の前記直線極性に対して中立であり、
前記標準的なポラライザは、前記入射光が前記ウェーブブロック・デポラライザから出力された光を受光するのに適した位置に配置されるとともに、前記入射光が、前記透過状態にある前記ウェーブブロック・デポラライザから出力された光の直線極性に一致するとともに、前記第1直線極性および前記第3直線極性とは実質的に反対の直線極性を有するように選択され、
前記ウェーブブロック・デポラライザが前記透過状態にある場合、当該デバイスは、偏光依存型ビデオ・ディスプレイまたは光シャッタ・デバイスの輝度を増加させる(13)項に記載のデバイス。
(15) 前記ウェーブブロック・デポラライザが前記不透過状態にある場合、前記標準的なポラライザは、すべての前記入射光を反射する(14)項に記載のデバイス。
(16) 前記複数のサブ波長伝導性エレメントは、さらに、互いに平行なナノスケール・ワイヤを1対とする複数対のナノスケール・ワイヤの配列を含み、
各ナノスケール・ワイヤの長さは、偏光が行われるべき入射光の波長の8分の1に実質的に等しく、
各ナノスケール・ワイヤの直径の、前記長さに対するアスペクト比は、1:6.875に等しい(7)項に記載のデバイス。
(17) 前記複数のサブ波長伝導性エレメントは、さらに、複数のナノスケール・ワイヤ・シャント・インダクタ・セグメントを含み、
各ナノスケール・ワイヤ・シャント・インダクタ・セグメントは、各対の、互いに平行なナノスケール・ワイヤ内において、それらナノスケール・ワイヤの間に配置される(15)項に記載のデバイス。
【0100】
方向についてのすべての言及(例えば、近位、遠位、上側、下側、内側、外側、上方向、下方向、左方向、右方向、横方向、前側、後側、上端、下端、上方に、下方に、垂直、水平、時計方向および反時計方向)は、読者が本発明を理解することを助けるために、区別という目的においてのみ使用され、本発明を、特に、位置、向きまたは使用法に関して本発明を限定することはない。接続に関する言及(例えば、装着、連結、接続および接合)は、広く解釈すべきであり、特記されない限り、集まった複数の要素間に介在する中間部材、および複数の要素間の相対運動を含むことが可能である。したがって、接続に関する言及は、2つの要素が直接的に接続されるとともに互いに一体的であることを必ずしも意味しない。本明細書に添付された例示的な図面は、本発明の説明のみを目的としており、それら図面に表された寸法、位置、順序および相対的なサイズを変更することが可能である。
【0101】
上述の説明書、いくつかの例およびデータは、本発明の例示的ないくつかの実施形態の構成および用法についての完全な説明を提供する。以上、本発明の種々の実施形態を、ある程度の具体性を有するか、または、少なくとも一つの個別の実施形態を参照しながら、説明してきたが、当業者であれば、本発明の主旨からも範囲からも逸脱することなく、前述の開示された実施形態に対して多くの変更を加えることが可能である。特に、前記説明された技術は、パーソナル・コンピュータから独立して採用することが可能である。したがって、他の実施形態を対象とすることが可能である。上述の説明に含まれるとともに本明細書に添付された添付図面に図示されたすべての事項は、具体的な複数の実施形態のみについての説明であると解釈すべきであって、本発明を限定するものではないことを意図する。細部または構造についての変更を、後続する特許請求の範囲において定義される本発明の基本的な要素から逸脱することなく行うことが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
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図13B
図13C
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図21