【実施例】
【0016】
実施例に係るコイルばねの成形方法について説明する。まず、実施例に係るコイルばねについて簡単に説明する。実施例に係るコイルばねは、自動車等に装備されるストラット型懸架装置用のコイルばねである。
図4に示すようにコイルばねSは、その中央に円筒部S
1が成形され、その両端にピッグテールS
2が成形されている。コイルばねSが用いられるストラット型懸架装置は、コイルばねSの内側に配置されるショックアブソーバを備えている。ストラット型懸架装置では、路面からタイヤに作用する外力の方向とショックアブソーバの軸線とが一致しない。このため、ショックアブソーバに横力が作用し、乗り心地を低下させる等の問題が生じる。かかる問題を解決するために、コイルばねSの荷重軸を所望の角度に傾斜させ、ショックアブソーバに作用する横力を低減することが必要となる。例えば、コイルばねSの円筒部S
1の中心軸と、ピッグテールS
2の中心軸とをずらしたり、ピッグテールS
2のピッチを調整して座巻部を傾斜させたりしている。したがって、本実施例に係るコイルばねSには、その荷重軸を所望の角度に傾斜させるために、ピッグテールS
2を所望の形状に成形することが求められている。
【0017】
上述したコイルばねSを製造するには、まず、ばね鋼(例えば、SUP6,SUP9,SUP9A,SUP11A等)を所定寸法の線材に加工する。次いで、
図1に示すように、所定寸法に加工された線材を加熱炉で加熱し、加熱された線材を一次成形用の芯金(第1の芯金の一例)に巻き付けて円筒状に1次成形する(S10)。1次成形された線材(以下、半製品形状の線材という)は、
図2に示すように、一端にはピッグテールS
2が成形されているが、他端にはピッグテールS
2が成形されていない。すなわち、半製品形状の線材は、円筒部S
1が成形されると共に円筒部S
1の一端にピッグテールS
2が成形される。ただし、円筒部S
1の他端にはピッグテールS
2が成形されていない。
【0018】
次いで、半製品形状とした線材の他端(ピッグテールS
2が成形されていない端部)にピッグテールS
2を成形する(S12)。これによって、
図4に示すコイルばねSが製造される。なお、ステップS12の成形工程は、半製品形状の線材が300℃以上に加熱された状態で実施されることが好ましい。例えば、ステップS10の成形工程に続いて時間を空けずにステップS12の成形工程を実施することで、半製品形状の線材が300℃以上の状態でピッグテールS
2を成形することができる。すなわち、加熱された線材が降温する期間にステップS12を実行することで、ステップS12を実行するときの線材の温度を高くすることができる。このように構成することで、ピッグテールS
2を成形する時の加工力を小さくでき、後述する成形装置10の大型化を抑制することができる。以下、半製品形状とした線材に対して行うステップS12のピッグテールS
2の成形について、詳細に説明する。
【0019】
まず、半製品形状とした線材(以下、単に線材という場合がある。)の端部にピッグテールS
2を成形する成形装置10について説明する。
図2に示すように、成形装置10は、本体(12,14,16,18)と、本体(12,14,16,18)に回転可能に取付けられた回転軸20と、線材Sの端部近傍の特定部位をクランプするクランプ機構(30,32(第2のクランプの一例))を備えている。
【0020】
本体(12,14,16,18)は、ベース12と、ねじ軸14と、移動テーブル16と、スライダ18を備えている。ベース12内には、図示しない駆動装置(モータ等)が配設されており、この駆動装置はねじ軸14に接続されている。ねじ軸14は、z軸方向(鉛直方向:成形開始時における回転軸20の軸線(すなわち、x軸)と直交する方向)に伸びており、その下端がベース12に回転可能に支持されている。ベース12内の駆動装置を作動させると、それによってねじ軸14が回転する。ねじ軸14には、移動テーブル16が螺合している。ねじ軸14が回転すると、移動テーブル16はz軸方向(鉛直方向)に移動するようになっている。移動テーブル16の上面にはスライダ18が載置されている。スライダ18は、図示しない駆動装置(モータ)によって駆動され、移動テーブル16の上面に対してx軸方向(成形開始時における回転軸20の軸線(すなわち、x軸)の方向)及びy軸方向(x軸及びz軸と直交するy軸の方向)に進退動すると共に、z軸(鉛直軸)周りに揺動回転する。
【0021】
回転軸20は、スライダ18に取付けられている。回転軸20は、クランプ機構(30,32)側に伸びており、その一端がスライダ18に支持されている。回転軸20の一端は、スライダ18に対してその軸線周りに回転可能に支持されると共に、y軸周りに揺動可能に取付けられている。図示しない駆動装置が作動すると、回転軸20がその軸線周りに回転すると共に、スライダ18側の端部を支点としてy軸周りに揺動回転する。
【0022】
回転軸20の他端には、芯金26(第2の芯金の一例)と、クランプ24(第1のクランプの一例)が設けられている。
図2,3に示すように芯金26は、円柱状の部材であり、線材Sが巻き付けられる外周面26aを有している。外周面26aには、外周方向に突出する突出部26bが成形されている。突出部26bには、半製品形状とした線材Sの一端が当接するようになっている。クランプ24は、半製品形状とした線材Sの一端を把持する。具体的には、線材Sの一端は、その端面が芯金26の突出部26bに当接した状態で、クランプ24と芯金26の外周面26aに挟持されることで、芯金26にクランプされる。クランプ24は、図示しない駆動装置によって、線材Sの一端をクランプする状態と、クランプしない状態とに切換えられる。なお、芯金26及びクランプ24は回転軸20に固定されているため、回転軸20が回転すると、それに応じて芯金26及びクランプ24も回転する。
【0023】
クランプ機構(30,32)は、ベース12に対してx軸(+)の方向に離間した位置に配置される。具体的には、ベース12に対してx軸(+)の方向に離間した位置に基台28が設けられ、その基台28上にクランプ機構(30,32)が設けられる。クランプ機構(30,32)は、図示しない駆動装置によって、線材Sをクランプする状態(クランプ30,32が互いに当接する状態)と、線材Sをクランプしない状態(クランプ30,32が互いに離間する状態)とに切換えられる。基台28はベース12に対して位置が変化しないため、クランプ機構(30,32)もベース12に対して位置が変化しない。
【0024】
また、成形装置10は、成形装置10の各部を制御する制御装置34を備えている。制御装置34は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータによって構成される。制御装置34には、コイルばねSの設計形状(ピッグテールS
2の形状を含む)を規定するCADデータが入力されるようになっている。制御装置34は、入力されたCADデータに基づいて、上述した各駆動装置を制御する。これによって、ピッグテールS
2を成形する際に、移動テーブル16がz軸方向に移動し、スライダ18がx軸方向及びy軸方向に移動し、また、スライダ18がz軸周りに揺動し、さらに、回転軸20がその軸周りに回転すると共にy軸周りに揺動する。さらに、制御装置34は、クランプ24及びクランプ機構(30,32z)を制御することで、線材Sをクランプした状態と、クランプしない状態とに切換える。制御装置34が成形装置10の各部を制御することで、半製品形状とした線材Sの端部にピッグテールS
2が成形される。
【0025】
上述した成形装置10によって半製品形状とした線材Sの端部にピッグテールS
2を成形する場合の、成形装置10の動作について説明する。まず、半製品形状とした線材Sを成形装置10にセットする。具体的には、制御装置34は、各駆動装置を駆動して、移動テーブル16、スライダ18及び回転軸20を初期位置に移動させる。次いで、図示しないロボット等によって成形装置10内に半製品形状の線材Sを搬入する。半製品形状の線材Sが搬入されると、制御装置34は、クランプ機構(30,32)を駆動して線材Sの特定部位をクランプすると共に、クランプ24を駆動して線材Sの端部(ピッグテールS
2が成形されていない側の端部)を芯金26にクランプする。
【0026】
次いで、制御装置34は、線材Sの端部及び特定部位をクランプした状態で、コイルばねSの最終製品形状を規定するCADデータに基づいて、移動テーブル16、スライダ18及び回転軸20を駆動する各駆動装置を制御する。これによって、移動テーブル16がz軸方向に移動、及び/又は、スライダ18がx軸方向に移動、及び/又は、スライダ18がy軸方向に移動、及び/又は、スライダ18がz軸周りに揺動回転、及び/又は、回転軸20をその軸周りに回転、及び/又は、回転軸20をy軸周りに揺動回転させる。その結果、半製品形状とした線材Sの端部にピッグテールS
2が成形される。
【0027】
ここで、ピッグテールS
2を成形する際に、回転軸20をその軸周りに回転させると、芯金26の外周面26aに線材Sが巻き付けられる。芯金26の外周面26aに線材Sを巻き付けてピッグテールS
2を成形するため、ピッグテールS
2を精度よく成形することができる。また、ピッグテールS
2を成形する際に、移動テーブル16とスライダ18を移動させ、また、スライダ18と回転軸20を搖動回転することで、ピッグテールS
2の軸線及びピッチを任意に制御することができる。その結果、CADデータで規定される最終製品形状となるように、ピッグテールS
2が成形される。
【0028】
ピッグテールS
2が成形されると、クランプ24を駆動して線材Sの端部を解放すると共に、クランプ機構(30,32)を駆動して線材Sの特定部位を解放する。次に、図示しないロボット等によって、最終製品形状としたコイルばねSを成形装置10から搬出する。これによって、半製品形状の線材SにピッグテールS2が成形される。
【0029】
上述したことから明らかなように、本実施例のコイルばねの成形方法では、半製品形状とした線材Sの端部にピッグテールS
2を成形する際にスライダ18(回転軸20及び芯金24)をx軸方向に移動させることで、成形するピッグテールS
2のピッチを任意のピッチに制御することができる。また、ピッグテールS
2を成形する際にテーブル16とスライダ18及び回転軸20が適宜移動することで、ピッグテールS
2を所望の形状に成形することができる。特に、制御装置34がCADデータに基づいてテーブル16、スライダ18及び回転軸20を駆動するため、CADデータで規定された形状(設計形状)のコイルばねSを成形することができる。
【0030】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0031】
例えば、上述した実施例では、回転軸20(芯金26)をx軸方向、y軸方向及びz軸方向に移動可能とすると共に、y軸周り及びz軸周りに搖動回転可能としたが、本発明はこのような形態に限られない。例えば、回転軸20(芯金26)をx軸方向、y軸方向及びz軸方向にのみ移動可能な構成してもよいし、あるいは、回転軸20(芯金26)をx軸方向に移動可能とすると共にy軸周り及びz軸周りに搖動可能な構成としてもよいし、さらには、これらの移動形態のいくつかを適宜選択して構成としてもよい。このような構成によっても、ピッグテールのピッチを調整することができる。また、上述した実施例では、回転軸20が一体で構成されていたが、回転軸を基端部と先端部の2部材で構成してもよい。かかる場合、基端部に対して先端部をy軸(基端部の軸線に直交する水平方向に伸びる軸)の周りに揺動回転可能、及び/又は、z軸(y軸に直交する鉛直方向に伸びる軸)の周りに揺動回転可能としてもよい。すなわち、クランプ24の位置を調整する移動機構は、種々の構成を採ることができる。さらに、芯金26は必ずしも必要ではなく、芯金26を用いることなくピッグテールを成形してもよい。
【0032】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。