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特開2015-63491ジフルオロシクロプロパン化合物類の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-63491(P2015-63491A)
(43)【公開日】2015年4月9日
(54)【発明の名称】ジフルオロシクロプロパン化合物類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/275 20060101AFI20150313BHJP
   C07C 23/04 20060101ALI20150313BHJP
【FI】
   C07C17/275
   C07C23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-199096(P2013-199096)
(22)【出願日】2013年9月26日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、先導的物質変換領域(ACT−C)、「エン反応と関連技術の展開、炭素−フッ素結合の活性化による(触媒的)不斉CCFの開発、および炭素−水素結合の活性化による触媒的(不斉)フルオロメチル化反応の開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】591180358
【氏名又は名称】東ソ−・エフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】三上 幸一
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄三
(72)【発明者】
【氏名】根岸 千幸
(72)【発明者】
【氏名】相川 光介
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC21
4H006AC30
4H006BB12
4H006EA31
(57)【要約】
【課題】 ジフルオロシクロプロパン化合物類を効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】
(CF32Zn・(DMPU)2 (1)
(式中、DMPUはN,N’−ジメチルプロピレンウレアを示す)
で表される室温下において安定で、反応試剤として有用なビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体と、オレフィン類又はアセチレン類を反応させ、ジフルオロシクロプロパン化合物類を得る方法を用いる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記、式(1)
(CF32Zn・(DMPU)2 (1)
(式中、DMPUはN,N’−ジメチルプロピレンウレアを示す)で表されるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体と、
下記一般式(2)
【化1】
(式中、R1、R2、R3及びR4は各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル、iso−ブロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基または置換フェニル基を示し、R1、R2、R3及びR4の全てが水素原子であることはない)で表されるオレフィン類、又は、下記一般式(3)
【化2】
(式中、R5及びR6は各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル、iso−ブロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基または置換フェニル基を示し、R5及びR6の全てが水素原子であることはない)で表わされるアセチレン類と、
を反応させる、
下記一般式(4)
【化3】
(式中、R1、R2、R3及びR4は前記一般式(2)と同じである)、又は、下記一般式(5)
【化4】
(式中、R5及びR6は前記一般式(3)と同じである)で表されるジフルオロシクロプロパン化合物類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリフルオロメチルハライド、ジアルキル亜鉛及びN,N’−ジメチルプロピレンウレア(以下、DMPUと略す)より調製される取り扱いが容易なビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体を用いたジフルオロシクロプロパン化合物類の製造方法に関する。ジフルオロシクロプロパン化合物類は医農薬及び電子材料の合成中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体を用いたジフルオロシクロプロパン化合物類の製造方法は知られていない。
一方、ジフルオロシクロプロパン化合物類の製造方法は数多く知られており、例えばトリフルオロメチルトリメチルシランを用いる方法(例えば非特許文献1参照)、クロロジフルオロメチルトリメチルシランを用いる方法(例えば非特許文献2参照)、トリフルオロ酢酸ナトリウムを用いる方法(例えば非特許文献3参照)、ジブロモジフルオロメタンを用いる方法(例えば非特許文献4参照)等がある。
【0003】
これらの内、非特許文献1および非特許文献2に記載の方法は、高価なシラン化合物を用いるという課題があり、又、非特許文献3に記載の方法は、工業的な取り扱いが困難なラジカル開始剤を用いるという課題があった。
さらに、非特許文献4に記載の方法は、使用するジブロモジフルオロメタンの沸点が22.8℃と低く、液体として取り扱いが困難という課題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ワング,フェイ(Wang,Fei)ら,Angewante Chimie, International Edition (2011年), 50(31), 7153〜7157頁
【非特許文献2】ワング,フェイ(Wang,Fei)ら,Chemical Comunications (Cambrige, United Kingdam) (2011年),47(8), 2411〜2413頁
【非特許文献3】チャング,イング(Chang,Ying)ら,Chemistry Letters (2005年), 34(10), 1440〜1441頁
【非特許文献4】フリッツ,ハインツ P(Fritz, Heinz P), Zeitschrift fuer Naturforschung, Teil B:Anorganische Chemie, Organische (1981年), 36B(11), 1375〜1380頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来の課題を克服し、取り扱いが容易なビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体を用いた新たなジフルオロシクロプロパン化合物類の製造方法を提供することにある。また本発明の目的は、経済的なビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体を用いたジフルオロシクロプロパン化合物類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決する方法について鋭意検討した結果、2分子のN,N’−ジメチルプロピレンウレアと錯体を形成したビス(トリフルオロメチル)亜鉛を粉末として取り出すことができ、その熱安定性が高く、安定であることを見出した。さらに該化合物がジフルオロシクロプロパン化合物類の製造原料として使用可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、下記、式(1)
(CF32Zn・(DMPU)2 (1)
(式中、DMPUはN,N’−ジメチルプロピレンウレアを示す)
で表されるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体と、
下記一般式(2)
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R1、R2、R3及びR4は各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル、iso−ブロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基または置換フェニル基を示し、R1、R2、R3及びR4の全てが水素原子であることはない)で表されるオレフィン類、又は、下記一般式(3)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R5及びR6は各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル、iso−ブロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基または置換フェニル基を示し、R5及びR6の全てが水素原子であることはない)で表わされるアセチレン類と、
を反応させる、
下記一般式(4)
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、R1、R2、R3及びR4は前記一般式(2)と同じである)、又は、下記一般式(5)
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、R5及びR6は前記一般式(3)と同じである)で表されるジフルオロシクロプロパン化合物類の製造方法を提供するものである。
つまり、本発明においては、式(1)のビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体と一般式(2)のオレフィン類とを反応させれば一般式(4)のジフルオロシクロプロパン化合物類が、式(1)のビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体と一般式(3)のアセチレン類とを反応させれば一般式(5)のジフルオロシクロプロパン化合物類が、製造できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、取り扱いが容易となる、安定化されたビス(トリフルオロメチル)亜鉛を用いることで、工業的にジフルオロシクロプロパン化合物類の製造ができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明に用いられる式(1)で表される(CF32Zn・(DMPU)2は、有機溶剤中、ジアルキル亜鉛、トリフルオロメチルハライド及びDMPUを、所定時間反応を行なった後、残渣をろ取または溶剤を留去することにより得られる固体を、ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体に不活性なジエチルエーテル等の溶剤で洗浄、乾燥することにより製造される。
【0018】
反応に用いられるジアルキル亜鉛、トリフルオロメチルハライド及びDMPUを加える順序は特に制限されるものではないが、DMPUを有機溶媒に加え、その後トリフルオロメチルハライドをバブリング等しながら、あるいはせずに供給し、ジアルキル亜鉛を滴下等しながら行えばよい。
反応によりビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体が生成するが、通常、生成した錯体は固体として析出する。ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体を含む生成物はこの後、反応液から残渣をろ紙や適当なフィルタ等によりろ取し、または溶剤を留去することで、ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体を含む固体を得ることができる。
【0019】
得られたビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体を含む固体は、ジエチルエーテル等の溶剤と接触させ、ろ取または溶剤留去等、本分野で通常用いられる方法により洗浄することができる。さらに、本分野で通常用いられる方法により乾燥することで、ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の固体粉末を得ることができる。
この粉末は通常、白色の色調である。後記するように、DSC(示差走査熱量測定)による測定では、160〜180℃(Top:169℃)に発熱ピークが認められ、150℃以下では安定である。これに対し、ビス(トリフルオロメチル)亜鉛のグライム錯体では室温下で分解、ジグライムとの錯体においても安定な温度としては110℃と低く(非特許文献1参照)、本発明によるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体は極めて安定である。
【0020】
本発明に用いられるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の製造に適用可能なジアルキル亜鉛としては、具体的にはジメチル亜鉛またはジエチル亜鉛を挙げることができる。
本発明に用いられるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の製造に適用可能なトリフルオロメチルハライドとしては、具体的には、トリフルオロメチルブロミドまたはトリフルオロメチルヨージドを挙げることができ、反応に具するジアルキル亜鉛に対して、1.2〜40モル倍量、好ましくは2.0〜20モル倍量使用する。
【0021】
本発明に用いられるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の製造において、使用するDMPUは、ジアルキル亜鉛に対して、1.1〜5.0モル量、好ましくは1.5〜4.0モル量使用する。
本発明に用いられるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の製造において、適用可能な有機溶剤としては、反応に不活性なものであればあらゆるものが適用可能であるが、具体的には例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素類が挙げられ、反応に具するジエチル亜鉛に対して3〜30重量倍量使用する。また、ジエチル亜鉛を所定の濃度含有する該溶液を購入し、反応に用いても良い。
【0022】
本発明に用いられるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の製造における反応温度及び時間は−80〜40℃の温度範囲で、1〜100時間の反応時間である。反応温度−20℃以上で反応を行う場合は、使用するトリフルオロメチルヨージドの沸点が−22.5℃のため、加圧系で反応を実施しても良い。
本発明に用いられるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の製造の後処理としては、窒素またはアルゴン気流下中でろ過または減圧下溶剤を留去の後、1〜20重量倍量のエーテルまたはヘキサンで洗浄、乾燥することにより本発明のビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体を得ることができる。
【0023】
本発明において、一般式(2)乃至一般式(4)における置換フェニル基とは、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基。4−メトキシフェニル基を示す。
【0024】
本発明において用いられる一般式(2)で表わされるオレフィン類としては、具体的には例えば、n−プロペン、n−2−ブテン、2−メチル−2−ブテン、2,3−ジメチル−2−ブテン、n−2−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、2,3−ジメチル−2−ペンテン、スチレン、2−フルオロスチレン、3−フルオロスチレン、4−フルオロスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、3−ブロモスチレン、4−ブロモスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、α−メチルスチレン、2−フルオロ−α−メチルスチレン、3−フルオロ−α−メチルスチレン、4−フルオロ−α−メチルスチレン、2−クロロ−α−メチルスチレン、3−クロロ−α−メチルスチレン、4−クロロ−α−メチルスチレン、2−ブロモ−α−メチルスチレン、3−ブロモ−α−メチルスチレン、4−ブロモ−α−メチルスチレン、2−メチル−α−メチルスチレン、3−メチル−α−メチルスチレン、4−メチル−α−メチルスチレン、2−メトキシ−α−メチルスチレン、3−メトキシ−α−メチルスチレン、4−メトキシ−α−メチルスチレン等が挙げられる。
【0025】
本発明の一般式(3)で表わされるアセチレン類としては、具体的には例えば、プロピン、1−ブチン、2−ブチン、1−ペンチン、2−ペンチン、1−ヘキチン、2−ヘキチン、3−ヘキチン、フェニルアセチレン、4−フルオロフェニルアセチレン、4−クロロフェニルアセチレン、4−ブロモフェニルアセチレン等が挙げられる。
本発明の一般式(4)で表わされるジフルオロシクロプロパン化合物類としては、具体的には例えば、1,1−ジフルオロ−2−メチルシクロプロパン、1,1−ジフルオロ−2,3−ジメチルシクロプロパン、1,1−ジフルオロ−2,2,3−トリメチルシクロプロパン、1,1−ジフルオロ−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパン、1,1−ジフルオロ−2−エチル−3−メチルシクロプロパン、1,1−ジフロロロ−2−エチル−3,3−ジメチルシクロプロパン、1,1−ジフルオロ−2,3,3−トリメチルシクロプロパン、2,2−ジフルオロシクロプロピルベンゼン、1−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)−2−フルオロベンゼン、1−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)−3−フルオロベンゼン、1−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)−4−フルオロベンゼン、1−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)−2−クロロベンゼン、1−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)−3−クロロベンゼン、1−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)−4−クロロベンゼン、1−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)−2−ブロモベンゼン、1−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)−3−ブロモベンゼン、1−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)−4−ブロモベンゼン、1−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)−2−メチルベンゼン、1−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)−3−メチルベンゼン、1−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)−4−メチルベンゼン、1−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)−2−メトキシベンゼン、1−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)−3−メトキシベンゼン、1−(2,2−ジフルオロシクロプロピル)−4−メトキシベンゼン、2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピルベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−2−フルオロベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−3−フルオロベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−4−フルオロベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−2−クロロベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−3−クロロベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−4−クロロベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−2−ブロモベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−3−ブロモベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−4−ブロモベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−2−メチルベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−3−メチルベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−4−メチルベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−2−メトキシベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−3−メトキシベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−4−メトキシベンゼン等が挙げられる。
【0026】
本発明の一般式(5)で表わされるジフルオロシクロプロパン化合物類としては、具体的には例えば、2,2−ジフルオロ−1−メチル−1−シクロプロペン、2,2−ジフルオロ−1−エチル−1−シクロプロペン、2,2−ジフルオロ−1,3−ジメチル−1−シクロプロペン、2,2−ジフルオロ−1,3−ジメチル−1−シクロプロペン、2,2−ジフルオロ−1−n−プロピル−1−シクロプロペン、2,2−ジフルオロ−1−エチル−2−メチル−1−シクロプロペン、2,2−ジフルオロ−1−n−ブチル−1−シクロプロペン、2,2−ジフルオロ−1−メチル−2−n−プロピル−1−シクロプロペン、2,2−ジフルオロ−1,3−ジエチル−1−シクロプロペン、(2,2−ジフルオロ−1−シクロプロペニル)ベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−シクロプロペニル)−4−フルオロベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−シクロプロペニル)−4−クロロベンゼン、1−(2,2−ジフルオロ−1−シクロプロペニル)−4−ブロモベンゼン等が挙げられる。
【0027】
本発明の一般式(4)又は一般式(5)で表されるジフルオロシクロプロパン化合物の製造方法としては、反応に不活性な溶剤中、式(1)で表されるビス(トリフルオロメチル)亜鉛粉末、一般式(2)で表わされるオレフィン類又は一般式(3)で表されるアセチレン類及び必要に応じて塩類を仕込み、所定の温度、時間、反応を行う。
本発明の一般式(4)又は一般式(5)で表されるジフルオロシクロプロパン化合物の製造で、式(1)で表されるビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DMPU錯体の使用量としては、使用する一般式(3)で表わされるオレフィン類又は一般式(4)で表わされるアセチレン類に対して、0.5〜4.0モル量の範囲が好ましい。
【0028】
本発明の一般式(4)又は一般式(5)で表されるジフルオロシクロプロパン化合物の製造で、使用可能な溶剤は、反応に不活性なものであれば特に制限されないが、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられ、反応に使用する一般式(2)で表されるオレンフィン類又は一般式(3)で表わされるアセチレン類に対して、1〜50重量倍量使用することが好ましい。
【0029】
本発明の一般式(4)又は一般式(5)で表されるジフルオロシクロプロパン化合物の製造で、必要に応じて適用可能な塩類としては、具体的には例えば、反応の効率化の点からヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウム等が挙げられ、これらの内でもヨウ化ナトリウム、ヨウ化カルシウムが好ましく、特にヨウ化ナトリウムが好ましく用いられる。またこれらは、反応に使用する一般式(2)で表されるオレンフィン類又は一般式(3)で表わされるアセチレン類に対して、0.5〜4.0モル量使用するとよい。
【0030】
本発明の一般式(4)又は一般式(5)で表されるジフルオロシクロプロパン化合物の製造の反応温度及び時間は、通常、塩類を使用しない場合は30〜100℃の温度範囲、塩類を使用する場合は10〜40℃の温度範囲で、12〜48時間の反応時間とするとよい。
本発明の一般式(4)又は一般式(5)で表されるジフルオロシクロプロパン化合物の製造後の後処理としては、衆知の方法で実施可能で、例えば、5%塩酸を添加、エーテルで抽出、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過、濃縮することにより、粗製の一般式(3)又は一般式(4)で表されるジフルオロシクロプロパン化合物類、さらに必要に応じて、蒸留精製、シリカゲルカラムクロマトグラフィーでの精製等を行っても良い。
【実施例】
【0031】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
参考例1 ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・(ジメチルプロピレンウレア)2錯体の調製
撹拌子を備えた50mlの丸底二口フラスコに、アルゴン雰囲気下、ヘキサン(15ml)及びN,N’−ジメチルプロピレンウレア(2.41ml、20mmol、以下DMPUと略す)を入れ、撹拌しながら−60℃に冷却した。次いでこれに、トリフルオロメチルヨージド(9.8g、50mmol)をバブリングして供給した後、ジエチル亜鉛(1.0M−ヘキサン溶液、10ml、10mmol)を滴下した。同温度で20分撹拌の後、−20℃で72時間反応を行った。
【0032】
反応終了後、余剰のトリフルオロメチルヨージド及び未反応のジエチル亜鉛を減圧下、留去することにより粗製のビス(トリフルオロメチル)亜鉛・(DMPU)2錯体を白色固体として得、次いでジエチルエーテル(15ml×3回)で洗浄、減圧乾燥することによりビス(トリフルオロメチル)亜鉛・(DMPU)2錯体を白色固体として得た(4.15g、収率90%)。
1H−NMR(300MHz,DMF−d7)δ3.25(t,8H)、2.84(s,12H)、1.94(quin,4H)。
19F−NMR(282MHz,DMF−d7)δ−42.8(s,3F)。
熱安定性は、DSC測定において、160〜180℃(Top:169℃)に発熱ピークが認められ、150℃以下では安定であった。なお、非特許文献1では、グライム錯体は20℃で分解し、ジグライム錯体は110℃で分解と記載されており、得られたDMPU錯体は熱安定が優れていることが判明した。
実施例1 1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−4−フルオロベンゼンの調製
【0033】
【化5】
【0034】
撹拌子を備えた試験管に、アルゴン雰囲気下、(CF32Zn・(DMPU)2錯体(92mg、0.2mmol)、4−フルオロ−α−メチルスチレン(13.4μL、0.1mmol)及びジクロロメタン(1mL)を入れ、65℃で12時間反応を行った。反応終了後、冷却した反応液をベンゾトリフルオリドを内部標準として用いた19F−NMRでの定量において、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−4−フルオロベンゼン(上記化学式(6)に示す)が76%の収率で生成していた。
実施例2 1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)ベンゼンの調製
【0035】
【化6】
【0036】
実施例1の4−フルオロ−α−メチルスチレン(13.4μL、0.1mmol)に替えて、α−メチルスチレン(11.8mg、0.1mmol)用いた以外実施例1と同じ操作を行い、目的物の1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)ベンゼン(上記化学式(7)に示す)を収率61%で得た。
実施例3 1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)ベンゼンの調製
実施例2の反応温度を50℃とした以外実施例2と同じ操作を行い、目的物の1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)ベンゼンを収率35%で得た。
実施例4 1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)ベンゼンの調製
実施例2のジクロロメタン(1mL)をトルエン(1mL)に替えた以外実施例2と同じ操作を行い、目的物の1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)ベンゼンを収率60%で得た。
実施例5 1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)ベンゼンの調製
実施例2のジクロロメタン(1mL)をテトラヒドロフラン(1mL)に替えた以外実施例2と同じ操作を行い、目的物の1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)ベンゼンを収率29%で得た。
実施例6 1,1−ジフルオロ−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンの調製
【0037】
【化7】
【0038】
実施例1の4−フルオロ−α−メチルスチレン(13.4μL、0.1mmol)に替えて、2,3−ジメチル−2−ブテン(8.4mg、0.1mmol)用いた以外実施例1と同じ操作を行い、目的物の1,1−ジフルオロ−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパン(上記化学式(8)に示す)を定量的に得た。
実施例7 1−フェニル−2,2−ジフルオロ−1−シクロプロペンの調製
【0039】
【化8】
【0040】
実施例1の4−フルオロ−α−メチルスチレン(13.4μL、0.1mmol)に替えて、フェニルアセチレン(10.2mg、0.1mmol)用いた以外実施例1と同じ操作を行い、目的物の1−フェニル−2,2−ジフルオロ−1−シクロプロペン(上記化学式(9)に示す)を収率32%で得た。
実施例8 1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−4−フルオロベンゼンの調製
【0041】
【化9】
【0042】
撹拌子を備えた試験管に、アルゴン雰囲気下、無水ヨウ化ナトリウム(30mg、0.2mmol)、(CF32Zn・(DMPU)2錯体(92mg、0.2mmol)、4−フルオロ−α−メチルスチレン(13.4μL、0.1mmol)及びジクロロメタン(1mL)を入れ、室温下、12時間反応を行った。反応終了後反応液を、ベンゾトリフルオリドを内部標準として用いた19F−NMRでの定量において、1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−4−フルオロベンゼン(上記化学式(10)に示す)が85%の収率で生成していた。
実施例9 1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)ベンゼンの調製
【0043】
【化10】
【0044】
実施例8の4−フルオロ−α−メチルスチレン(13.4μL、0.1mmol)に替えて、α−メチルスチレン(11.8mg、0.1mmol)用いた以外実施例8と同じ操作を行い、目的物の1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)ベンゼン(上記化学式(11)に示す)を収率65%で得た。
実施例10 1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)−4−フルオロベンゼンの調製
実施例9の無水ヨウ化ナトリウム(29mg、0.1mmol)に替えて無水ヨウ化カルシウム(33mg、0.2mmol)を用いた以外実施例9と同じ操作を行い、目的物の1−(2,2−ジフルオロ−1−メチルシクロプロピル)ベンゼンを収率33%で得た。
実施例11 1,1−ジフルオロ−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンの調製
【0045】
【化11】
【0046】
実施例8の4−フルオロ−α−メチルスチレン(13.4μL、0.1mmol)に替えて、2,3−ジメチル−2−ブテン(8.4mg、0.1mmol)用いた以外実施例8と同じ操作を行い、目的物の1,1−ジフルオロ−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパン(上記化学式(12)に示す)を収率81%で得た。
実施例12 1−フェニル−2,2−ジフルオロ−1−シクロプロペンの調製
【0047】
【化12】
【0048】
実施例8の4−フルオロ−α−メチルスチレン(13.4μL、0.1mmol)に替えて、フェニルアセチレン(10.2mg、0.1mmol)用いた以外実施例8と同じ操作を行い、目的物の1−フェニル−2,2−ジフルオロ−1−シクロプロペン(上記化学式(13)に示す)を収率6%で得た。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明により、室温下において安定で取り扱いが容易なビス(トリフルオロメチル)亜鉛粉末を用いた各種ジフルオロシクロプロパン化合物類の製造が可能となった。